今夏の移籍市場を席巻したサウジアラビアの移籍期間終了、移籍金総額1510億円…その87%は政府が保有する4クラブが投資

2023.09.08 23:35 Fri
Getty Images
今夏の移籍市場で大暴れをして見せたのはサウジアラビアのクラブたち。豊富な資金力を見せつけ、ヨーロッパから数々の選手を獲得した。突如現れた脅威とも言えるサウジアラビア。これまでも数人の選手が移籍していたが、ここまで実績と知名度を誇り、キャリアの最盛期にいる選手が移籍を果たしたのは初めてのことだ。
Jリーグからも名古屋グランパスのFWマテウス・カストロがアル・タアーウンへと移籍。横浜F・マリノスのFWアンデルソン・ロペスも狙われていると報道があったほど。そのターゲットは世界各国に向いている。

そんなサウジアラビアの移籍市場も7日をもって終了。ヨーロッパのクラブ、特にプレミアリーグのクラブにとっては脅威であった市場が閉じた中、話題をさらった移籍市場の動きをまとめてみた。

◆移籍金の総額は約1510億8000万円
衝撃的な移籍を繰り返していたサウジ・プロ・リーグのクラブたち。『Transfermarkt』のデータによれば、今夏の移籍市場で費やした移籍金の総額は、9億5438万ユーロ(約1510億8000万円)にものぼるという。

2カ月ちょっとの移籍期間でこれほどまでの投資ができる資金力は、世界のどの国を見ても考えられないこと。一時期話題になっていたカタールも、ここまで投資できず、一昔前に“爆買い”が話題になった中国スーパーリーグでも、この規模は不可能だった。

衝撃の投資額だが、その87%はある4クラブが占めているという。それは、アル・ヒラル、アル・ナスル、アル・アハリ、アル・イテハド。サウジアラビアの政府系ファンド「PIF」の傘下に入った4クラブであり、プレミアリーグのニューカッスルも傘下に入っている。

国家を挙げての強化体制を敷き、基本的なビッグネームの移籍はこの4クラブが中心。一部アル・イテファク、アル・シャバブといったクラブも選手を獲得したが、目立っているのは4クラブということだ。

今夏の移籍市場が開く前に行われた4クラブのグループ化は、世界のサッカーに大きな影響を与えることに。中でも、アル・ヒラルが群を抜いて投資しており、投資額は3億5310万ユーロ(約558億6000万円)となっている。当然のことだが、この金額は世界中のどのクラブよりも多い事になる。

ちなみに、2位はアル・アハリで1億9750万ユーロ(約312億1000万円)、3位はアル・ナスルで1億6510万ユーロ(約261億円)、4位はアル・イテハドで1億1939万ユーロ(約188億8000万円)となっている。

◆欧州から大量の戦力が流出

移籍金を最も投じたアル・ヒラルが獲得した選手は、FWネイマール(パリ・サンジェルマン)、FWマウコム(ゼニト)、MFルベン・ネヴェス(ウォルバーハンプトン)、FWアレクサンダル・ミトロビッチ(フルアム)、MFセルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチ(ラツィオ)、DFカリドゥ・クリバリ(チェルシー)、GKボノ(セビージャ)となっている。どの選手も代表チームでプレーしており、ヨーロッパでも実績のある選手だ。

ちなみに、2位のアル・アハリはスペインの新星とも言われたMFガブリ・ベイガ(セルタ)を獲得し驚かせた他、MFリヤド・マフレズ(マンチェスター・シティ)、DFロジェール・イバニェス(ローマ)、FWアラン・サン=マクシマン(ニューカッスル)、DFめリフ・デミラル(アタランタ)、GKエドゥアール・メンディ(チェルシー)、MFフランク・ケシエ(バルセロナ)を獲得した。なお移籍金はかかっていないが、FWロベルト・フィルミノもリバプールから獲得している。

その他にも、FWカリム・ベンゼマ(レアル・マドリー→アル・イテハド)、FW左ディオ・マネ(バイエルン→アル・ナスル)、MFジョーダン・ヘンダーソン(リバプール→アル・イテファク)、MFファビーニョ(リバプール→アル・イテハド)、DFアイメリク・ラポルテ(マンチェスター・シティ→アル・ナスル)など挙げればキリがない。

欧州のビッグクラブから30歳前後の選手が大量に流出した今夏の移籍市場。各クラブも資金力では対抗できず、非常に苦しい夏を過ごすこととなった。

◆移籍期間の差が大きな懸念点にも

選手たちを引き抜かれるクラブたちだが、その分高額な移籍金を手にすることができるため、戦力ダウンというだけではないのも事実。余剰戦力や、世代交代での選手の入れ替え、選手獲得のための資金調達など、様々な思惑も影響した結果、大量の移籍が実現したとも言える。

例えば、ネイマールはパリ・サンジェルマン(PSG)にとっては完全な不良債権となってしまっていた。ファンからも退団を求められ、ピッチ上のパフォーマンス以外には大きな不満を持たれていた中、売りに出せる状況であれば手放したいと考えたのがPSG。その結果、9000万ユーロ(約142億2000万円)という大金と引き換えに移籍することとなった。

思惑が一致するという点では一定の成果があるが、問題は移籍期間の差。ヨーロッパの主要リーグは9月1日で市場が閉まったが、サウジアラビアは7日まで開いていた。この1週間にわたる差が、大きな悩みとなる。

ヨーロッパの主要リーグのクラブとすれば、補強ができなくなったタイミングで主力選手が退団する可能性があるということ。実際には、リバプールがエースであるエジプト代表FWモハメド・サラーを狙われ、総額2億ポンド(約368億5000万円)もの金額を提示されたが拒否した。このタイミングで抜かれては、チームは冬まで補強ができないため、大きな痛手となってしまう。

一方で、移籍市場が閉鎖した後に余剰戦力を売却できるというメリットも少なからずある。チームとして現金化したい選手を手放すためにはうってつけ。他のリーグよりも高額な移籍金を手にするチャンスがあるということだ。メリットもデメリットもあるが、今後はこの期間の差も大きな争点となる可能性がある。

◆冬の移籍市場はどうなる?

ひとまず、突如発生した夏の脅威は去ることとなった。ただ、4カ月後にはまた同じ状況が来ないとは言い切れない。特に2024年夏に契約が切れる選手に関しては、1月になれば自由に交渉が可能。夏にフリーで手放す可能性が発生し、高額な報酬でオファーを受ければ、太刀打ちできない可能性が高い。

クラブとしては1月までにチームに留めたい選手との契約延長に動く必要があり、その動きはこれから活発になる可能性がある。セルティックの日本代表MF旗手怜央もターゲットに上がっていただけに、ヨーロッパで活躍すれば日本人もターゲットになり得るということだ。

選手側も今夏の移籍には懐疑的であったとしても、この半年の様子を窺って考えを変える可能性が出ないとは言い切れない。よく知る選手からの勧誘があれば、移籍を希望する可能性もある。多くのクラブは、再び警戒心を高めていく必要がありそうだ。

そしてこれはJリーグにとっても関係ない話ではない。マテウスが移籍したように、市場としてJリーグも見られているということ。助っ人が引き抜かれる可能性は十二分にある。サラリーで対抗しようと思っても、まずそこで立ち向かえるクラブは存在しないはずだ。

加えて、サウジ・プロ・リーグのクラブはAFCチャンピオンズリーグ(ACL)に出場する。今シーズンはアル・フェイハ、アル・イテハド、アル・ヒラル、アル・ナスルが出場するが、超大型補強をしたクラブのうち3チームが出場しており、今後はより多くの選手が来る可能性も。外国人枠の撤廃など、ACLのレギュレーションも変化するだけに、ヨーロッパのスター選手とアジアの舞台で対戦する可能性も高まりそうだ。

《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》

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リバプールの正守護神を務めるブラジル代表GKアリソン・ベッカー(31)に対し、サウジアラビアからの関心が強まっているという。イギリス『TEAMtalk』が伝えた。 2018年夏に6700万ポンド(約134億2000万円)でローマからリバプールへと加入したアリソン。以降、ユルゲン・クロップ監督の下でチームの守護神として活躍。シュートセーブだけでなく、ビルドアップを含めてチームの重要な選手となった。 これまでプレミアリーグ、チャンピオンズリーグ(CL)、FAカップ、EFLカップなど7つのトロフィーを獲得したアリソン。2023-24シーズンは、ケガの影響もありながら、プレミアリーグで28試合に出場。公式戦でも32試合に出場していた。 そのアリソンは2027年夏までリバプールとの契約が残っている中、今夏のサウジアラビアクラブのターゲットになっているとのこと。昨夏も噂には上がったが、どうやら今夏は本気のようで、巨額の契約をオファーする可能性があるという。 一方で、リバプールにとってはアリソンの退団は望ましくない。当然正守護神が抜けることは大きな痛手となるが、控えGKのアイルランド代表GKクィービーン・ケレハー(25)に退団の可能性が。ウォルバーハンプトンが狙っているとされ、2人GKが抜けるという最悪の事態は避けたいところだ。 ただ、アリソンの関係者によると、本人はヨーロッパに留まる希望を持っているとのこと。CLで再びプレーしたいという気持ちに加え、ブラジル代表の正守護神の座を守りたいという思いも強いという。 それでもサウジアラビア行きを完全否定はしない様子。気持ちが揺らぐほどのとんでもないオファーを出すことができるのか、動きにいも注目が集まる。 2024.06.04 10:25 Tue

C・ロナウドが大号泣…3人退場、PK戦までもつれたキングスカップはアル・ヒラルが優勝し国内3冠! C・ロナウドは無冠に終わる

5月31日、キングスカップ決勝が行われ、アル・ヒラルvsアル・ナスルが対戦。PK戦までもつれた試合は、5-4でアル・ヒラルが勝利した。 サウジ・プロ・リーグで優勝したアル・ヒラルと、2位に終わったアル・ナスルの対戦。アル・ヒラルはセルビア代表FWアレクサンダル・ミトロビッチやFWマウコム、ポルトガr愚代表MFルベン・ネヴェス、セネガル代表DFカリドゥ・クリバリ、モロッコ代表GKボノらが先発出場。アル・ナスルはポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドやセネガル代表FWサディオ・マネ、クロアチア代表MFマルセロ・ブロゾビッチらが先発した。 試合は開始早々にマネがビッグチャンスを掴むも生かせず。すると7分、マウコムのボックス際からのクロスをミトロビッチがファーサイドでヘッドで合わせ、アル・ヒラルが先制する。 先制を許したアル・ナスルはC・ロナウドらがゴールに迫るも、GKボノが立ちはだかりゴールを許さず。後半早々にはC・ロナウドがクロスを華麗にバイシクルシュートで合わせるも、右ポストを直撃。オフサイドではあったが、華麗なプレーを見せた。 すると迎えた53分にアクシデント。カウンターからアル・ヒラルがビッグチャンスを迎えマウコムが独走かと思われたが、ボックス外に飛び出したGKダビド・オスピナがなぜか手で抑え込みに行き一発退場。数的不利となる。 しかし、今度は87分にアリ・アル・ブライヒが一発退場。相手の挑発に乗り、頭突きを見舞ったことで数的同数に。するとその直後の88分にロングスローをアイマン・ヤヒヤ・アーメドがヘッドで合わせ、アル・ナスルが土壇場で同点に追いつく。 奇跡のような展開となった中、今度はアル・ヒラルがピンチに。90分、勝ち越しを目指し攻め込んでいた中、左からのクロスに飛び込んだクリバリがクロスをキャッチしたGKに遅れて接触。これが2枚目のイエローカードとなり退場。延長戦はアル・ヒラルが数的不利となったものの、互いに得点を奪えず、PK戦にもつれ込んだ。 PK戦は、アル・ヒラルの1人目であるルベン・ネヴェスが左ポストに当てて失敗。後攻のアル・ナスルはアレックス・テレスが務めるも、大きく外してしまう展開となる。 2人目はミトロビッチ、C・ロナウドと共に成功。そのまま成功が続いた中、サドンデスに突入すると、アル・ヒラルの6人目を務めたサウド・アブドゥルハミドのシュートがセーブされるピンチに。アル・ナスルは決めれば勝利だったが、アリ・アル・ハッサンのシュートはGKボノがセーブする。 アル・ヒラルは7人目が成功。しかし、アル・ナスルは、7人目のメシャリ・アル・ネメルのシュートを再びGKボノがセーブ。アル・ヒラルがPK戦を制してリーグとカップ、そしてスーパーカップの3冠を達成。さらに、国内では無敗の優勝を成し遂げ、負傷離脱中のネイマールもピッチを走って祝福し大騒ぎ。一方で自身はリーグの得点記録を塗り替えるなどしたC・ロナウドは1つもタイトルを獲得できないシーズンとなり、ピッチに倒れて号泣する姿が印象的だった。 <span class="paragraph-title">【動画】PK戦の結末…C・ロナウドはタイトルなしで大号泣</span> <span data-other-div="movie"></span> <script>var video_id ="J2EbRBV38aY";var video_start = 1578;</script><div style="text-align:center;"><div id="player"></div></div><script src="https://web.ultra-soccer.jp/js/youtube_autoplay.js"></script> 2024.06.01 21:55 Sat

ハフィーニャ諦めないサウジのクラブ、移籍金169億円以上投じる覚悟

バルセロナのブラジル代表FWハフィーニャ(27)は依然としてサウジアラビア方面から熱視線を浴びているようだ。スペイン『ムンド・デポルティボ』が報じた。 リーズ・ユナイテッドからバルセロナに加わってもうすぐ2年が経とうとしているハフィーニャ。スペイン代表FWラミン・ヤマルの台頭もあった今シーズンは、両ウイングを精力的にこなしつつ、公式戦10ゴール13アシストを記録した。 そんな27歳への関心を継続しているのがサウジ・プロ・リーグのクラブ。昨夏オファーを送りながらハフィーニャ側に拒否されていたが、有力クラブの1つが今夏も獲得に動くという。 獲得に向けてはあらゆる手段を尽くす構えとのこと。リーズからは移籍金5800万ユーロ(約98億6000万円)+ボーナスでバルセロナへやってきたハフィーニャだが、サウジアラビアのクラブは最低でも1億ユーロ(約169億9000万円)を用意する可能性があり、本人に対しても現在の給与の2倍を提示するという。 一方、家族と共にカタルーニャの地で快適に過ごしているハフィーニャは、やはりバルセロナ残留が最優先。自身のよく知るプレミアリーグのビッグクラブから目も眩むようなオファーが届いた場合のみ、退団を検討する可能性があるようだ。 万が一移籍へ心が傾くとしても、まずはハンジ・フリック新監督の評価が気になるところ。バルセロナとの契約は2027年6月まで残っている。 2024.05.31 17:46 Fri

サウジ勢から注目されるべナセル…基本線残留もミランは柔軟に対応へ

ミランのアルジェリア代表MFイスマエル・ベナセル(26)にサウジアラビア勢が近寄る。 近年ケガがちも万全ならミランの主力というベナセル。イタリア『カルチョメルカート』はこの26歳について、「イブラに続いてジルーとケアーも抜けるミラン…中心となってリーダーシップを発揮すべき段階に」と評価する。 その一方で、イスラム世界のフットボーラーを代表する1人であるベナセルには、サウジ・プロフェッショナルリーグ勢から熱視線が送られていることも紹介。ベナセル自身、将来的なサウジ参戦の意向を周囲に伝えているという。 ただ、それは早くても2025年夏。選手キャリアの終盤に差し掛かる2026年以降でも問題ないと考えているようで、そもそもミランとの契約を2027年6月まで残している。 ミランとしては、今後数日でマイク・メニャンおよびテオ・エルナンデスとの契約延長交渉をグッと進める方針とみられ、ベナセルはタイアニ・ラインデルスやフィカヨ・トモリらと共に、メニャン&テオに続く優先度とされる。 今日現在の見通しとしては、ベナセルは基本的にミラン残留で売却なし。ミランは先方のオファー次第で柔軟に対応するとのことだ。 <span class="paragraph-title">【写真】ベナセルがジルーら退団組へ敬意を表す</span> <span data-other-div="movie"></span> <blockquote class="twitter-tweet"><p lang="it" dir="ltr">Mi mancherete…<br><br>I vostri nomi rimarranno incisi nella storia di questo club e nelle nostre memorie <a href="https://t.co/fE4V58qeqZ">pic.twitter.com/fE4V58qeqZ</a></p>&mdash; Ismaël Bennacer (@IsmaelBennacer) <a href="https://twitter.com/IsmaelBennacer/status/1794501460396507216?ref_src=twsrc%5Etfw">May 25, 2024</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> 2024.05.29 14:45 Wed
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