フランクフルト戦での浦和の大卒ルーキーは新鮮な発見/六川亨の日本サッカー見聞録

2022.11.18 13:05 Fri
©超ワールドサッカー
元日本代表のキャプテンである長谷部誠が率いるE・フランクフルトと、彼の古巣である浦和レッズが激突した「さいたまシティカップ」が16日に埼玉スタジアムで行われ、浦和が4-2の勝利を収めた。

浦和サポーターお目当ての長谷部は左膝の負傷からか、出場したのは後半30分過ぎ。リベロではなく3-4-3の右ボランチに入ったものの、それまでに多くの選手が交代したため手探りでプレーしていた印象は否めない。
対する浦和も前半は若手主体だったが、後半からはGK西川周作、CBアレクサンダー・ショルツ、左SB明本考浩、ボランチに岩尾憲伊藤敦樹、右MFダヴィド・モーベルグ、トップ下に小泉佳穂、FW松尾佑介とレギュラークラスを並べた。

結果は浦和が前半に2点をリードしたものの、後半は2-2のイーブンでトータル4-2。しかしGK西川の4度にわたる決定機阻止がなければ浦和は逆転負けを喫していただろう。

むしろ試合としては前半の若手主体のチームの方が面白かった。
ボランチの大卒ルーキー安居海渡(流経大)は、フランクフルトのプレスを少しも怖がらずにDFラインからパスを受けると、巧みなターンで前を向いて攻撃を組み立てていた。同じく大卒ルーキーの右SB宮本優太(流経大)は右サイドを何度もアップダウンして攻守に貢献し、試合終盤に足をつるまでピッチで存在感を示した。

彼ら以外にも両サイドのアタッカーとしてスピードとトリッキーなドリブルを披露したMF松崎快やCB知念哲也といった大卒3シーズン目の今季移籍組は、普段のリーグ戦ではなかなかプレーを見る機会がないだけに、「こんな選手もいたの?」と新鮮な驚きでもあった。

後半の“主力組“に比べ、前半の“若手組“はアピールしようという気持ちが強かったので、それがチームとして勢いの差となったのかもしれない。こうした戦力を来シーズンは新監督がどのようにまとめあげるのか。

そして改めて思ったのは、江坂任は当たり前だけど「巧い」ということだ。相手のアタックにさりげなく身体を入れたり手を使ったりしてブロックし、自分に有利な体勢から攻撃を仕掛けていく。ポジションを選ばずに攻撃に絡めるのも彼の最大の持ち味だろう。もうあと5歳若ければ、フランクフルトのグラスナー監督もきっと興味を示したはずだ。


【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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ACLのラウンド16で、甲府はアウェーこそ0-3と完敗したが、ホーム国立競技場での試合は終盤に1-1のタイスコアに追いつくなど粘りを見せた。相手の蔚山にはGKチョ・ヒョンウ、DFキム・ヨングォン、ソル・ヨンウらアジアカップでベスト4の守備陣が揃っている。にもかかわらずホームでの善戦を含め、グループリーグ突破など貴重な経験を積めたACLではなかったか。 一方、残念な結果に終わったのが川崎Fだった。山東泰山との試合では、信じられないミスからの失点もあったが、「気迫の違い」を感じた。きれいなサッカーで勝てればいいが、それをできないときにどうするか。反則を推奨するつもりはないが、「ここはイエロー覚悟でストップする」という執念で山東が上回っていたのではないか。その原因がどこにあるのか、アジアカップでの日本にも通じるような気がしてならない敗戦だった。 山東泰山の粘りは正直予想外だったが、クウェートのアハマド・アルアリ主審はうまくゲームをコントロールしたのではないだろうか(アジアカップでは日本対バーレーン戦の主審を担当)。そこで思い出したのが、19日のJリーグ開幕PRイベントに出席した野々村芳和チェアマンの「2024年の取り組み」の1つである「より多くの外国籍審判員の招へい」だった。 野々村チェアマンは、「ヨーロッパの審判だけでなく、次回のW杯やACLを制覇すると考えた時、アメリカや中東の審判を多く連れてきたいと思っている。日本人の審判が世界基準のレフェリングを体感することも重要だ」との構想を明らかにした。 Jリーグは「世界基準」を選手に肌で体感してもらうため、少々の反則では笛を吹かない。フィジカルコンタクトに慣れ、インテンシティの高いプレーを実感するためでもある。ところがアジアカップで目の当たりにした主審の基準は、「接触プレーがあるとすぐに笛を吹く」だった。 Jリーグの基準なら、そのままプレー続行となるところ、すぐに笛を吹いてプレーを止める。そしてサウジアラビアやカタールなど国内でプレーしている選手は、大げさに痛がったりする。これではワールドカップで勝てるはずもない。 だからといって日本の選手も痛がるふりをするよりは、アジア全体のレフェリング技術の向上にJFAとJリーグで貢献するようにした方が、アジアのサッカーのレベルそのものの向上につながるのではないだろうか。 アジアカップの決勝では中国のマー・ニン(馬寧)主審が笛を吹いた。日本対イラン戦も彼だったが、優柔不断な印象が強く、とても巧いとは思えなかった(こちらは個人的な印象です。イラン戦の決勝点につながるロングスローに関しては、主審よりも第1、第2の副審を務めた両オーストラリア人に問題があると思う)。逆に言うと、まだまだアジアのレフェリーは、世代交代もありアジア・レベルにとどまっているということなのかもしれない。 中東をはじめ中央アジアや東南アジア、極東を含めてレフェリーを招待し、Jリーグで笛を吹くことで切磋琢磨してレベルの向上を図れたら、それはそれで素敵なことではないだろうか。 最後に、Jリーグの開幕PRイベントでは95年5月15日の開幕戦、ヴェルディ川崎対横浜マリノスの映像が流された。ゲストで登壇した松木安太郎氏もかなり若いが、マイヤーの先制点に始まり、ラモン・ディアスの決勝点など懐かしい映像に見入った。 そして今週日曜の25日、国立競技場で東京ヴェルディ対横浜F・マリノスの開幕戦がある。30年前の映像についてトークセッションに参加したマリノスGK飯倉大樹は当時の試合について「VHS(ビデオテープ)やダイジェストですり切れるほど見ていました」と振り返った。 彼は1986年生まれのため、93年当時は小学1年生になったばかり。たぶんテレビで眩い開幕セレモニーに心をときめかせたのではないだろうか。そして、なぜダイジェストの名前が出てきたのかというと、それは表紙にあったのだろう。国立での記念すべき開幕戦だが、当時はまだフィルムの時代のため、ナイターの試合は粒子が荒れてしまい、いまのデジタルのようにクリアに再現できない。 それでも記念すべきJリーグ開幕戦のため、ディアスのゴール後の両手を広げたガッツポーズを表紙にした。一方ライバル紙であるマガジンは16日のデーゲーム、鹿島対名古屋戦でハットトリックを達成したジーコを表紙にした。もちろん、この試合を含めて全カードをテレビで観戦してから表紙を決めたのだが、インパクトの強さと多くの観客が集まったことで、ディアスを表紙に選んだ。それが31年後に、現役選手の口から「ダイジェスト」の誌名を聞くとはまったくの想定外の出来事だった。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2024.02.22 18:15 Thu

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アジアカップ2023の決勝戦からまだ1週間も経っていないが、すでにずいぶんと昔のような感覚がある。これも日本がベスト8で姿を消したからだろうか。お隣の韓国ではユルゲン・クリンスマンの責任を問う声、解任を求める声が日増しに高くなっていると思っていたら、ソン・フンミンとイ・ガンインがヨルダン戦の前日に仲違いをしたとの報道があった。(※注:クリンスマン監督は16日に解任) 延長戦にもつれたラウンド16のサウジアラビア戦、準々決勝のオーストラリア戦とも2人の活躍があっての勝利だっただけに、チームマネジメントの難しさを改めて痛感させられる出来事だった。 さて日本である。JFAの技術委員会は2月8日に会合を開き、森保一監督の続投を決定した。カタールW杯から1年2ヶ月が経過し、その間の評価を下すにはちょうどいい頃合いだろう。ドイツとトルコには欧州での試合で勝ったし、代表Aマッチの連勝記録も更新した。アジアカップでは残念な結果に終わったものの、試合である以上、勝つときもあれば負けるときもある。森保監督の続投に「ケチ」をつけるつもりはない。 しかしながら、反町康治・技術委員長のズームによる報告だけでアジアカップの総括を済ませたことに違和感を覚える。というか、納得がいかないのだ。そんなに簡単に済ませていい、今回の敗退とは思えないからだ。 ここは森保監督と、山本昌邦TD(テクニカルダイレクター)出席のもと、ベトナム戦の苦戦やイラク戦とイラン戦の敗因などについて説明して欲しかった。 もともと日本はロングボール戦法を苦手とする。そんなことは20年以上前から指摘されていたし、サムライブルーだけでなく、なでしこジャパンの弱点でもある。それを熟知している韓国や、女子ではアメリカ、イングランド、ドイツといったヨーロッパ勢はポゼッション・スタイルではなくキック・アンド・ラッシュを仕掛けて来る。いまさら中東勢がロングボールを多用し、前線に屈強なFWがいてポストプレーを防げなかったのが敗因だとしたら、「何年日本のサッカーの、何を見て来たのか」と言いたくなる。 GK鈴木彩艶の身体能力の凄さは他のGKにはない魅力だし、将来性が豊かなのも理解できる。さらに4月にはカタールでパリ五輪のアジア最終予選もある。経験を積ませたいのはわかるが、それもイラク戦までではなかったか。チームの沈滞ムードを変え、守備陣の負担を軽減する意味でもインドネシア戦からは前川黛也をGKに起用すべきではなかったか。 そして、これも結果論になるが、エイメン・フセインのいるイラクやサルダール・アズムンのイランのように長身FWがいる相手には町田浩樹を含めて3BKを採用するプランはなかったのか。元々ケガを抱えていた板倉滉はイラク戦の終了間際に再び負傷し、インドネシア戦はメンバー外になっている。バーレーン戦まで中6日間あったとはいえ、彼を起用しなければならないほど町田や谷口彰悟、渡辺剛は信頼がおけなかったのか(彼らを起用して負ければ、それはそれで批判されるが)。 それ以外にも、様々な疑問を持った記者がいるだろう。そうした疑問に森保監督と山本TDには直接答えて欲しかったというのが正直な気持ちだし、それはファン・サポーターも同じではないだろうか。 3月にはW杯アジア2次予選が再開され、北朝鮮とのホーム&アウェー戦が控えている。もちろん2試合とも勝利を期待しているが、こうした疑問を抱えたままだと今ひとつスッキリしないというか、森保ジャパンに対して懐疑的な目を向けてしまいがちだ。 北朝鮮戦にGK大迫敬介は間に合うのか。監督批判をした守田英正は再招集されるのか。海外組でCLやEL出場組のコンディションはどうなのかなど、メンバー発表も気になるところである。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2024.02.16 18:35 Fri

いよいよイラン戦。まさかのタレミ出場停止/六川亨の日本サッカー見聞録

ドーハで戦っている森保ジャパンに激震が走った。発端は一部週刊誌の報道で、伊東純也が2人の女性から刑事告訴されたというもの。これに対し伊東側の弁護士も虚偽告訴容疑の告訴状を出すなど、予断を許さない状況になっている。日本代表が国際大会の最中に告訴されるという、かつてない前代未聞の大事件だけに、今後の進捗状況を慎重に見守る必要があるだろう。 さてバーレーン戦である。終わってみれば3-1の順当勝ちで、上田綺世のヘッドや浅野拓磨の2発が決まっていれば5-1、6-1のスコアもありえたほど力の差はあった。グループリーグでのイラクは立ち上がりのハイプレッシャーで日本の出足を封じると、スローインからの素早いアーリークロスによる展開とGK鈴木彩艶のミスもあり先制するなど日本を苦しめた。 しかし一発勝負のラウンド16ともなれば、どのチームも慎重にならざるを得ない。これがグループリーグと決勝トーナメントでの戦い方の違いで、それはW杯にも共通しているだろう。だからこそ森保一監督は選手層の底上げを図り、対戦相手に応じてターンオーバーしても戦力ダウンしないチーム作りを目指している。 バーレーン戦でも後半19分に1-2と反撃されたが、中村敬斗に代えて三笘薫、久保建英に代えて南野拓実を投入。スタメン出場の2人を休ませつつ、攻撃に変化をもたらせようとした。初めてリザーブメンバーに入った三笘は森保監督も起用するタイミングを考えていただろうし、南野はやはり久保のポジションか、浅野が入ってからは1トップの位置でもプレーしたが、そのどちらかが一番生きるだろう(守備のリスクも減るため)。 三笘は40分に得意の左サイドからドリブルを仕掛け、簡単に2人を抜いて浅野に決定的なパスを出した。まだ長い距離を何度も攻め上がるのは難しいかもしれないが、キレのあるドリブルは復活しつつある。そして浅野は……スピードに乗っていたため瞬時にパスに反応できなかったのか、足を滑らせて転倒してしまいチャンスを生かせなかった。試合を終わらせる「クローザー」として森保監督は起用したのだろうが、その期待に応えることはできなかった。 日本が順当にバーレーンを下したのに対し、現地時間19時キックオフのイラン対シリア戦ではイランがまさかの大苦戦だった。 試合開始から攻め込み、メフディ・タレミがPKから先制点を決めたまではよかった。しかしその後はシリアの予想外の反撃に遭い、後半19分にPKから同点に追いつかれると、試合終了間際にはタレミが2枚目のイエローで退場処分を受けてしまう。ドリブル突破を後ろから押し倒してしまっての警告だが、反則をしてまで止めなければならないシーンではなかっただけに、終盤のシリアの反撃に「タレミでも焦っているのか」と思ったほどだ。 延長戦でも決着はつかずにPK戦へと突入した試合は、先行のイランが5人とも確実にシュートを決めて日本の待つ準々決勝へと齣を進めた。 その準々決勝である。イランがグループリーグ終了から中7日、日本は中6日と休養十分でのラウンド16だったが、日本が90分間余裕を持って戦ったのに対し、イランは90分間気の抜けないハードな接戦を演じ、PK戦にまでもつれた。そして両チームは中2日で激突する。試合の消耗度という点で、日本にはアドバンテージがある。 加えてタレミの出場停止は日本にさらなるアドバンテージをもたらすことは間違いない。 イランの攻撃は、1トップのサルダル・アズムンとトップ下のタレミの2人で完結するほど完成度が高い。アズムンはポストプレーに長けた長身FWでキープ力もある。そして彼は前線で攻撃の起点になるだけでなく、バイタルエリアに下がってボールをさばくこともある。するとタレミが入れ替わるように前線へ飛び出しフィニッシャーとなるのだ。そのコンビネーションの完成度はかなり高く、今大会で1、2を争う破壊力である。 日本としてはアズムンのポストプレーをラインコントロールとマンマークで封じつつ、タレミも警戒しないといけない。ポジション的には遠藤航か守田英正になるだろうが、フィジカル的にタレミに対応できる守備能力の高い選手となると板倉滉という選択肢もあると考えていた。しかし、そうなると冨安健洋のパートナーは谷口彰悟か町田浩樹ということになり一抹の不安を感じていた。 しかし今大会3ゴールのタレミが日本戦は出場停止となるため、イラン攻撃陣の脅威も半減する。あとはバーレーン戦でFWアブドゥラ・ユセフを完封したように、アズムンを孤立させればいい。そして早い時間帯に先制できれば、5度目のアジア制覇へ視界も一気に開けるに違いない。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2024.02.02 10:00 Fri

韓国対マレーシア戦は想定外のドローで日本の相手はバーレーンに/六川亨の日本サッカー見聞録

1月12日に始まったアジアカップ2023も25日でグループリーグの全試合が終了した。日本がイラクに完敗して2位通過となったのは当初の予想と違ったものの、イラクの勝利は順当だっただけに、グループAからDの各1位(カタール、オーストラリア、イラン、イラク)とグループF1位のサウジアラビアは予想通りといったところ。 そうした中で想定外だったのが韓国の入ったグループEだ。韓国は初戦こそバーレーンを3-1と一蹴したが、ヨルダン戦は1-2とリードを許し、アディショナルタイムのゴールで2-2のドローに追いついた。 前日の日本はイラクに2点のリードを許し、CKから遠藤航のゴールで1点を返すのが精いっぱい。しかし韓国はドローに持ち込むあたり、粘り強さと勝負強さを感じたものだ。 この結果、グループEはヨルダンと韓国が1勝1分けの勝点4で並び、得失点差でヨルダンが1位、韓国が2位で最終戦を迎えた。韓国の相手は2連敗で最下位のマレーシア、ヨルダンはマレーシアを1-0で下したバーレーン(1勝1敗)が相手。韓国が勝点3を奪うのは確実だろうし、ヨルダンもドロー狙いを遂行すると思われた。 ところが「サッカーは何が起こるかわからない」から面白い。元々バーレーンはカウンターに定評があり、2000年以降の日本も苦しめられた経験がある。FIFAランクもバーレーン86位、ヨルダン87位と拮抗していたこともあり、結果はバーレーンが1-0の勝利を収めて2勝1敗で勝点を6に伸ばした。 そして韓国である。1トップに長身FWチョ・ギュソン(ミッティラン/デンマーク)を据え、トップ下にソン・フンミン(トッテナム)、右MFイ・ガンイン(パリ・サンジェルマン)、左MFチョン・ウヨン(シュツットガルト)、ボランチにイ・ジェソン(マインツ)とファン・インボム(ツルヴェナ・ズヴェズダ)、CBにキム・ミンジェ(バイエルン)と並ぶ豪華な布陣は日本に勝るとも劣らない。 しかし、ボール保持率で圧倒的にマレーシアを上回りながら、攻撃は両サイドからのアーリークロスという単調な攻めに終始。FWチョ・ギュソンはファーサイドに流れてヘディングシュートを狙ったものの、クロスはその前にマレーシアCBに跳ね返されて彼まで届かない。それでも前半21分に左CKから先制点を奪ったが、後半6分には自陣ゴール前でファン・インボムが不用意なボールキープを奪われ同点ゴールを許してしまう。 さらに後半17分には左SBソル・ヨンウが相手の足ごとボールをクリアしてPKを与え、まさかの逆転弾。マレーシア・サポーターが詰めかけた会場が大いに沸いたのはいうまでもない。 リードを許したユルゲン・クリンスマン監督は、後半19分に機能しないFWチョ・ギュソンをファン・ヒチョン(ウォルバーハンプトン)に代えると、後半20分には失点に絡んだファン・インボム、後半31分にはソル・ヨンウをベンチに下げる。かなりシビアな采配と感じたものだ。 しかし、その甲斐あってか後半38分にイ・ガンインのFKからバーに当たった跳ね返りがGKの伸ばした手の甲に当たってゴールに飛び込み同点に追いつくと、アディショナルタイム1分には交代出場のオ・ヒョンギュ(セルティック)が倒されて獲得したPKをソン・フンミンが左下に決めて逆転に成功する。さすが韓国と感心せざるを得なかった。 ところが試合はまだ終わらない。アディショナルタイムは12分だったが、手元の時計で15分過ぎに(公式記録は45分+12分)交代出場のロメル・モラレスが値千金の同点弾をゴール右下に突き刺した。マレーシアベンチが大騒ぎになったのは言うまでもない。 後半の韓国はサイドバックの攻撃参加も絡めて両サイドを何度もえぐってマイナスのクロスを供給したが、マレーシア選手の身体を張ったブロックに阻まれたり、そのこぼれ球からのシュートも人の壁とGKによって無力化されたりした。 ボール保持率が高い割に、サイド攻撃にこだわった、効率の悪い攻撃に見えたものの、それが韓国伝統のストロングポイントでもあるのだろう。そしてソン・フンミンは、トップ下ではなくFWで起用した方が怖い選手だと思ったものだ。 25日は午前中に森保一監督と現地で取材している記者とのティータイムがセッティングされ、1時間ほど意見交換する機会があった。その場では、日本の決勝トーナメント1回戦の相手は韓国であることが無言の了解事項だった。 ところが韓国がマレーシアと3-3で引分けたため2位に後退。日本の相手はバーレーンということになった。韓国ほどの総合力はないだろうが、カタールとは目と鼻の先にある国だけに、大勢のサポーターがチームを後押しする可能性がある。 194センチの長身FWユスフ以外にも警戒すべき選手はいるだろう。日本は2位でのグループリーグ通過だが、1週間のインターバルがあることは、対戦相手の分析はもちろん、三笘薫の復帰にも好材料と考えたい。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2024.01.26 23:10 Fri

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