大岩ジャパン国内最後のテストマッチが終了/六川亨の日本サッカーの歩み
2024.03.26 10:00 Tue
大岩ジャパンの集大成となる国内最後のテストマッチが終わった。あとは来月カタールへ乗り込んで、まずはグループリーグを突破。そして上位3カ国に入ればパリへのキップを手にすることができる。とはいえそれが、簡単な道のりではないことを再認識させられたテストマッチ2試合だった。
U-23ウクライナ戦こそ2-0の勝利を収めた。しかし対戦相手は全員が“国内組”。ルスラン・ロタン監督自身「本来は海外組を招集したかったが、それは難しかった」と、五輪チームへの選手の招集には強制力がないことを指摘した。これは世界共通の悩みのタネだけに仕方がないだろう。ましてヨーロッパ勢は五輪にさほど価値を見いだしていない。
このため今回来日したウクライナも、スペシャルなストライカーやパサー、ドリブラーのいない平凡なチーム。国内は戦争状態に陥っているだけに、強化が思うように進まないのも仕方のないところ。それでも真面目に、フェアに闘う姿勢は清々しさすら感じた。
そんなウクライナに対し、日本は久々に代表へ復帰したFW荒木遼太郎が“違い”を見せた。前線に張るのではなく、バイタルエリアにちょっと下がってプレーを開始することでプレッシャーを避け、得意の右足シュートでウクライナ・ゴールを脅かした。もう一人の代表復帰組であるFW染野唯月は前線で張ることが多かったため、東京Vで見せているようなゴールへの嗅覚を発揮することはできなかったのは残念だった。
攻撃陣はそれなりにJリーグでポジションをつかんだ選手が増えて層の厚みが増した印象を受けた。MF小見洋太は後半33分からの出場にとどまったが、もう少し長く見たい選手。その一方で、五輪のエースストライカーと期待される細谷真大はアジアカップ以降、ちょっと精彩を欠いているというか、自信を失っているように感じられてならない。持ち味である強引な突破が陰を潜めている印象だ。
思い起こせば96年アトランタ五輪と2008年北京五輪はOA枠を使わなかったが、12年ロンドン五輪(吉田麻也、徳永悠平とGK林彰洋)以降、16年リオ五輪(塩谷司、藤春廣輝とFW興梠慎三)、そして21年東京五輪(吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航)と五輪代表はOA枠で守備的な選手をいつも起用してきた。
これも日本サッカーの新たな問題点として検証しつつ、JFAとJリーグは解決策を探す努力をすべきではないだろうか。そしてパリ五輪予選で手遅れにならないといいのだが……。
U-23ウクライナ戦こそ2-0の勝利を収めた。しかし対戦相手は全員が“国内組”。ルスラン・ロタン監督自身「本来は海外組を招集したかったが、それは難しかった」と、五輪チームへの選手の招集には強制力がないことを指摘した。これは世界共通の悩みのタネだけに仕方がないだろう。ましてヨーロッパ勢は五輪にさほど価値を見いだしていない。
このため今回来日したウクライナも、スペシャルなストライカーやパサー、ドリブラーのいない平凡なチーム。国内は戦争状態に陥っているだけに、強化が思うように進まないのも仕方のないところ。それでも真面目に、フェアに闘う姿勢は清々しさすら感じた。
攻撃陣はそれなりにJリーグでポジションをつかんだ選手が増えて層の厚みが増した印象を受けた。MF小見洋太は後半33分からの出場にとどまったが、もう少し長く見たい選手。その一方で、五輪のエースストライカーと期待される細谷真大はアジアカップ以降、ちょっと精彩を欠いているというか、自信を失っているように感じられてならない。持ち味である強引な突破が陰を潜めている印象だ。
それでも充実しつつある攻撃陣に比べ、ダブル・ボランチ(藤田譲瑠チマと松木玖生)と両SBはともかく、CB陣の人材不足、というか経験不足は明らかだ。これは大岩ジャパンだけでなく森保ジャパンにも共通した悩みのタネでもある。
思い起こせば96年アトランタ五輪と2008年北京五輪はOA枠を使わなかったが、12年ロンドン五輪(吉田麻也、徳永悠平とGK林彰洋)以降、16年リオ五輪(塩谷司、藤春廣輝とFW興梠慎三)、そして21年東京五輪(吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航)と五輪代表はOA枠で守備的な選手をいつも起用してきた。
これも日本サッカーの新たな問題点として検証しつつ、JFAとJリーグは解決策を探す努力をすべきではないだろうか。そしてパリ五輪予選で手遅れにならないといいのだが……。
大岩剛
ルスラン・ロタン
荒木遼太郎
染野唯月
小見洋太
細谷真大
藤田譲瑠チマ
松木玖生
森保一
吉田麻也
徳永悠平
林彰洋
塩谷司
藤春廣輝
興梠慎三
酒井宏樹
遠藤航
U-23日本代表
日本
オリンピック
大岩剛の関連記事
U-23日本代表の関連記事
オリンピックの関連記事
記事をさがす
|
|
大岩剛の人気記事ランキング
1
新理事会と残念だった西尾隆矢の報復/六川亨の日本サッカー見聞録
JFA(日本サッカー協会)は4月18日、宮本恒靖JFA新会長と新理事による最初の理事会(年度的には第6回)を開催した。既報のとおり技術委員長には影山雅永氏(JFAテクニカルダイレクター)が就任し、新たに各種部会が設置され、代表チームの強化を担当する技術委員会強化部会の部会長には山本昌邦氏(ナショナルチームダイレクター)が就任。ユース育成部会の部会長にはU-18日本代表監督で、解説者の城彰二氏の弟の城和憲氏が就任した。 理事会後の記者会見に臨んだ湯川和之専務理事は、かつては読売クラブの選手で、90年代初めにJFAへ転出。日本代表のマネジャーとしてチームに帯同し、日本の成長を見守ってきた。宮本会長とは97年のワールドユース(現U-20W杯)で選手とマネジャーという間柄。「今日はカジュアルな形での理事会が行われた」と変化を報告しつつ、「新理事にはサッカー界の説明をしました。今まで当り前のことが当り前にできない」と、半数近くが初めてJFAの理事になったことで、サッカー界の現状説明に時間を費やしたことも明かした。 また7月13日(土)には能登半島地震復興支援マッチとして、金沢のゴーゴーカレースタジアムでなでしこジャパンの壮行試合が開催されることも報告された。対戦相手やキックオフ時間などの詳細は未定となっている。 理事会の報告はここまでで、影山技術委員長はドーハへ行っていないとのことだが、U-23アジアカップの初戦、中国戦に関してはCB西尾隆矢のレッドカードに触れないわけにはいかないだろう。いくら相手に背後から身体をぶつけられたからといって、エルボーでの報復は問答無用で一発退場だ。ましてVARがあるのだから、どんな言い訳も通用しない。 大事な初戦、それも開始17分と早い時間帯での軽率なプレーは非難されても仕方がない。まして今大会のグループリーグは中2日の連戦だ。できればターンオーバーで戦いたかったところ、初戦から日本は総力戦による“緊急事態”に追い込まれた。本来ならDF陣のリーダーにならなければいけない西尾だけに、あまりに軽率なプレーは今後の起用にも影響するかもしれない。 森保一監督はカタールのアジアカップで失点を重ねながらもガマン強くGK鈴木彩艶を起用し続けた。果たして大岩剛監督は“汚名返上”の機会を西尾に与えるのかどうか。出場停止が何試合になるかわからないものの、こちらも注目である。 今回の西尾とは違うケースだが、04年に中国で開催されたアジアカップの準決勝、バーレーン戦で遠藤保仁が不運なレッドカードで退場処分になったことがある。パスを出して前線へ走り出した遠藤に、背後からバーレーンの選手が近寄ってきた。遠藤の振った腕が偶然にもバーレーン選手の顔に当たると、オーバーに倒れ込む。すると主審は遠藤にレッドカードを出したのだった。 当時はVARなどない。そしてカードが出てしまえば取り消しようがない。0-1とリード許し、さらに10人になった日本だが、中田浩二と中澤佑二、玉田圭司の2ゴールで4-3の大逆転を演じた。 当時もいまも、日本を相手にどうやったら少しでも有利な状況に持ち込めるか各国は必死に研究しているだろう。まずは挑発に乗らないこと。そして今回のケースでは、主審は見ていなくてもぶつかられたら西尾は倒れてもよかった。ただ、Jリーグでそうしたプレーは推奨されていないし、日本人のメンタリティーからしても相手を欺くようなプレーはやりにくい。 となれば、やはり相手の挑発には乗らないことと、球離れを早くしてフィジカルコンタクトを避けるのが、体力の温存やケガの予防につながるのではないだろうか。明日のUAEもどんな罠を仕掛けてくるのか、油断のならない相手であることは間違いないだろう。 2024.04.19 17:00 Fri2
選手採点&寸評:U23イスラエル代表 0-1 U23日本代表【パリ五輪】
30日、パリ・オリンピックのグループD最終節のU-23イスラエル代表vsU-23日本代表が行われ、0-1で日本が勝利。グループステージ3連勝で首位通過を決め、U-23スペイン代表との準々決勝に臨む。 超WSの選手採点と寸評は以下の通り。 ▽U-23日本代表採点 <div style="text-align:center;"><img src="https://image.ultra-soccer.jp/1200/img/2024/fom20240730_isr_jpn_tw.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;">©️超ワールドサッカー<hr></div> ※採点は10点満点。及第点は「5.5」、「0.5」刻みで評価 ※出場時間が15分未満の選手は原則採点なし GK 1 小久保玲央ブライアン 7.0 最初のシュートをしっかりセーブ。カウンターでのピンチも守り切る。何度もチームを救うセーブ。 DF 2 鈴木海音 6.0 初出場で徐々に慣れ、インターセプトなど読みの鋭さを見せる。終始冷静な対応を見せた。 3 西尾隆矢 6.0 本職ではない右サイドバックで先発。先に動いて相手を自由にさせない。キャプテンとしてプレー。 5 木村誠二 6.5 セットプレーでターゲットマンに。安定した守備ラインを統率し、カウンターにも冷静に対応。 21 内野貴史 6.0 初出場で攻守に積極的なプレーを見せる。ハードなプレーを続けた。 MF 6 川﨑颯太 6.0 初先発で落ち着いた対応。ポジショニングとボール奪取で安定したプレーも負傷交代。 →8 藤田譲瑠チマ - 出場時間が短く採点なし。ピッチに入るとチームが一気に落ち着いた。 7 山本理仁 6.0 3試合連続先発も中盤での守備で見事な対応。攻撃にも絡みリズムを作る。 →19 植中朝日 5.5 トップ下、ボランチでプレー。攻守に安定したプレーを見せる。 13 荒木遼太郎 6.5 トップ下のポジションから流動的に動きボールに積極的に絡む。後半はボランチに下がりプレーも慣れないポジションで守備の強度を出せず。 →11 細谷真大 - 出場時間が短く採点なし。五輪初ゴールはチームを勝利に導く決勝ゴール。 18 佐藤恵允 6.5 初先発で鋭い仕掛けを何度も見せる。周囲との連係もこれまで以上に噛み合いダイレクトクロスで決勝ゴールをアシスト。最後まで走り続けるハードワーク。 20 山田楓喜 5.5 正確なクロスでCKから合わせていく。仕掛けという点では物足りなさも。 →14 三戸舜介 6.0 カットインから鋭いミドル。仕掛けや繋ぎなど攻撃にリズムを作る。 FW 9 藤尾翔太 6.0 前線で体を張り、サイドに流れてもプレー。最後までゴールを目指してプレーした。 監督 大岩剛 6.5 突破を決めたことでターンオーバーを敢行。序盤はパフォーマンスが上がらずも、徐々に運動量含めて上回っていき、交代策もハマり3連勝。 ★超WS選定マン・オブ・ザ・マッチ! 小久保玲央ブライアン(日本) 3試合連続でゴールを守り3連続クリーンシート。イスラエルの鋭いカウンターからのピンチも全てセーブ。最後尾で圧倒的な存在感を見せた。 U-23イスラエル代表 0-1 U-23日本代表 【得点者】 0-1:90分+1 細谷真大(日本) <span class="paragraph-title">【動画】エース・細谷真大が決めた!土壇場決勝ゴール!</span> <span data-other-div="movie"></span> <script>var video_id ="Nbz64_THalM";var video_start = 0;</script><div style="text-align:center;"><div id="player"></div></div><script src="https://web.ultra-soccer.jp/js/youtube_autoplay.js"></script> 2024.07.31 06:14 Wed3
「今年中には絶対トップデビュー」久保建英以来の中学生参加となった15歳MF長南開史、柿谷曜一朗コーチから刺激、ロス五輪も「入れるなら入りたい」
中学3年生ながらU-18Jリーグ選抜としてプレーしたU-17日本代表MF長南開史(柏レイソルU-18)が、日本高校サッカー選抜との一戦を振り返った。 8日、国立競技場でNEXT GENERATION MATCHが行われ、Jクラブのアカデミーチーム(U-18)に所属する選手が選ばれたU-18Jリーグ選抜と、第103回全国高校サッカー選手権大会の優秀選手を中心に集められた日本高校サッカー選抜が対戦。試合は4-1でU-18Jリーグ選抜が勝利した。 長南は日本代表MF久保建英(レアル・ソシエダ)以来となる中学生でのメンバー入り。左サイドバックで先発すると、その後は左右のサイドハーフでもプレーし、後半アディショナルタイムにはダメ押しの4点目を決めた。 国立競技場での一戦に「こういう大きい舞台でやるのは初めてで、最初は少し緊張しましたが、いつも通りのプレーができたし、点も決められたので嬉しいです」と試合後に話した15歳。ゴール左上隅に決めた自身のゴールも振り返った。 「結果をずっと出したくて、点を決められたら良いなと思っていたので、嬉しかったです」 「狙いは特になかったですが、シュートを打ちたいなと思っていたので、とりあえずコースはどこでも良いからシュートを打とうと思ったら、ニア上の良いコースに行ったので良かったです」 また、今回のU-18Jリーグ選抜には、2024シーズン限りで現役を引退した元日本代表FW柿谷曜一朗もコーチとして参加。得点に繋がるアドバイスを受けていたという。 「前半終わった時に、『お前速いから、縦行ってシュートを打て』と言われた。あの点のシーンもその言葉がよぎって、縦に行ってシュートを打てたので良かったです」 さらに、今回の活動を通じて意識が変化する言葉ももらったとのこと。当面の目標は「今年中には絶対トップデビュー」と話したが、その先も見据え始めているようだ。 「柿谷さんが言っていたのは、『今の目標のもう一個上を行け』みたいなこと。たしかにその通りだなと思って。今だったらトップデビューという目標があるけど、そこを踏み台にして海外に行けるくらいの選手になっていかないといけないなと思ったので、それが印象に残っています」 自身のポジションについても話した長南。サイドハーフよりはサイドバックを好むという。 「右サイドバックをずっとプレミア(リーグ)とかでやっていたので、そこが良かったですけど、今日左をやってみて左も意外と楽しいなと思いました」 「サイドハーフが持った時にオーバーラップとかで攻撃参加する方が自分的には良いので、サイドバックの方が良いです」 今回の試合はU-23日本代表を率いる大岩剛監督も視察。12日から始まるU-17日本代表のパラグアイ遠征メンバーに入っている長南だが、2028年のロサンゼルス・オリンピック(五輪)メンバーにも「入れるなら入りたいです」と思いを明かした。 <span class="paragraph-title">【動画】ニア上を射抜いた長南開史のゴール!</span> <span data-other-div="movie"></span> <script>var video_id ="cCBykE1etqk";var video_start = 247;</script><div style="text-align:center;"><div id="player"></div></div><script src="https://web.ultra-soccer.jp/js/youtube_autoplay.js"></script> 2025.02.09 15:03 Sun4
大岩五輪監督にはノルマが必要/六川亨の日本サッカー見聞録
JFA(日本サッカー協会)は12月16日の理事会で、24年のパリ五輪を目指すU-21日本代表監督に大岩剛氏、23年のU-20W杯を目指すU-19日本代表の監督には冨樫剛一氏、同じく23年のU-17W杯を目指すU-16日本代表の監督には森山佳郎氏が就任することを承認した。 3氏のプロフィールについてはすでに当サイトで紹介済みなので省略する。理事会後の会見に臨んだ反町康治JFA技術委員長は大岩氏の起用について「選手のほとんどがJリーグに出ているか出始めている。大人のフットボールをやっているのでJ1の監督経験が必要」と説明した。 これまでサムライブルーの監督に関して名前が上がった日本人には、「J1リーグ優勝」が暗黙の了解としてあった。ロシアW杯を率いた西野朗元監督であり、森保一現監督であり、彼ら以外では名古屋の監督に就任した長谷川健太氏、川崎Fの鬼木達現監督だった。 この点に関して反町技術委員長は「鹿島では17年に2位になっている。勝点は川崎Fと同じで、得失点差の2位だった(勝点72で並んだものの、川崎Fは+32、鹿島は+31で川崎Fが初優勝した)。18年はACLで優勝している。アジアの戦いを熟知しているのも要素の1つ」と大岩監督の実績をフォローした。 ACLの優勝は高く評価できるものの、1回だけで「アジアの戦いを熟知している」と断言できるのか。「選手のほとんどが海外組」のサムライブルーでは、「海外での監督経験が必要」ではないのかと突っ込みたくなったが、それは“重箱の隅をつつく”ようで大人げない。 これまで五輪代表の監督はW杯後に決まってきた。しかし東京五輪はホストカントリーとして予選がないため、17年10月に森保一氏が監督に就任。今回の大岩氏もW杯の前年と早い時期での監督就任となった。このため「五輪は日本サッカー界では重要な位置を占めている。東京ではメダルに届かなかったので、次のパリではメダルに届いて欲しい」と反町技術委員長も期待を込める。 その一方で「能力の高い選手はサムライブルーに行く。この年代は登竜門になって欲しい」(反町技術委員長)と、久保建英や堂安律らはサムライブルーでの活動をメインにしながら、最後に五輪代表に合流したチーム作りの難しさも指摘した。 過去の例では、チーム発足時と、OA枠も含めた最終メンバーでは大幅に顔ぶれが変わるのが五輪代表でもあった。それだけ選手の成長曲線も著しく、“生もの”なのが五輪代表と言っていい。 そんなチームに、注文をつけたいことが1つある。森保監督が五輪の監督に就任したのは17年のこと。ついでに高倉麻子監督がなでしこジャパンの監督に就任したのは16年のこと。2人と東京五輪ではメダル獲得を期待され、本人もその目標を口にしてきた。 しかし森保監督は5年、高倉監督は6年に渡って代表チームの監督を務めたものの、メダルを獲得できなかっただけでなく、代表チームの強化が進んでいるかどうか、チェックされることなく五輪を迎え、あえなく敗退した。 その反省を踏まえ、日本代表と五輪代表の監督には一定のノルマを設けるべきではないだろうか。森保監督は、五輪代表監督に就任した翌年18年の1月に中国で開催されたAFC U-23選手権(現U-23アジアカップ)に参加。グループリーグは3連勝で突破したものの、準々決勝で優勝したウズベキスタンに0-4と完敗した。このときのウズベキスタンは圧倒的な強さを誇った。 しかし同年のロシアW杯後は日本代表の監督も兼任することで、五輪代表チームは横内昭展コーチが指揮を執ることになった。この変則態勢のため、本来なら東京五輪の出場権を賭けた20年1月のU-23アジアカップが森保監督を評価する唯一の公式戦となったが、グループリーグ3連敗であっけなく敗退。チームの完成度が低いのは当然だが、森保監督もどんなタイプの選手がいるのか、適性を見ているという印象を受けた。男女とも五輪が1年延期になったのは不幸中の幸いと思ったものだ。 その点、大岩監督は五輪代表に専念できる。まずは来年の22年5月にウズベキスタンで開催されるAFC U-23アジアカップが初の公式戦となり、9月には中国でのアジア大会が待っている。大岩監督にとって大一番は、24年に予定されているAFC U-23アジアカップでパリ五輪の出場権を獲得すること。16年に日本が韓国を逆転で下して優勝したように五輪キップをつかんで欲しいが、森保監督の五輪代表監督としての5年間を見ていると、その前にノルマというかハードルを設けてチームの成長を検証すべきではないか。 なかなかベストメンバーを組めないという制約もあるが、何もせずに監督任せで「メダルは取れませんでした」では、技術委員会もJFAも無責任すぎると言われても仕方ないだろう。 2021.12.18 11:45 Sat5
パワハラで処罰された監督で思うこと/六川亨の日本サッカー見聞録
早いもので、東日本大震災から11年の歳月が過ぎた。当日は超ワールドサッカーの原稿を書き終え、Fリーグを取材に代々木体育館へ行こうと思っていたら、突然の大揺れに立っていられず、思わずベッドに腰掛けた。揺れはしばらく続き、気持ち悪くなったほどだった。 テレビをつけると、信じられない光景が次々と映し出された。仙台にはベガルタというJクラブがあり、日韓W杯の試合会場となった、ちょっと不便だけど立派なスタジアムもある。それだけにサッカー関係者にとっては思い入れのある都市の一つだろう。いまなお復興への歩みを重ねているだけに、微力ながら応援したいと思わずにいられない。 そしてJリーグである。7日には第50回となる新型コロナウイルス対策連絡会議が開催された。冒頭で司会を務めた村井満チェアマンは「2年にわたる会議は隔週で開催されました。今日は私にとって最後の会議」であることを表明。NPB(日本野球機構)の斉藤惇コミッショナーも「サッカーと野球が非常に仲良く1つの問題に取り組むことができた。村井チェアマンの個性でもある。サッカーと野球にこだわらず、お互いに気持ちをシェアし、専門家の先生も1回も休まず参加してくれた」と感謝の言葉を述べた。 村井チェアマンの功績に関しては、15日の退任後に多くのメディアが検証するだろう。自分自身もその一助となれるよう、現在は『まん延防止』のためストップしているが、密かに村井チェアマンと一緒に取材を進めている最中だ。早ければ今月末にも紹介できると思うので、その際は当コラムで紹介したいと思っている。 さて、鳥栖の金明輝前監督と東京Vの永井秀樹前監督への処分が昨日のJFA(日本サッカー協会)理事会で承認された。詳細は当サイトでも報じているので割愛するが、鳥栖の金前監督にはS級コーチングライセンスからA級ジェネラルコーチングライセンスへの降級処分、永井前監督には1年間のS級ライセンス停止処分が下された。 S級ライセンスからA級ジェネラルコーチングライセンスへの降級処分は今回が史上初のケースになり、かなり重い処分と言える。さらにJFAが指定する研修と社会奉仕活動への参加も課された。 処分そのものに異論はない。ただ、難しいのは、どこまでがパワハラなのかという認定度ではないだろうか。現京都の監督も湘南の監督時のパワハラで処分を受けた。しかし、曺貴裁監督の指導で成長できたという選手もいた。 選手も試合に出られてこそ価値があるわけで、年俸やボーナスに影響してくる。「使ってくれる監督」=「いい監督」というのは古今東西、変わらない。このため、どこまでがパワハラ(セクハラ)なのか、定義は難しいし(ケースバイケースのため)、個人情報の保護という側面もある。しかしながら、具体的な暴力行為やどんな暴言だったのかを開示してくれないと(例題でもいいので)、判断基準も不明確なため抑止力にならない気がしてしまうのだ。 9日には大岩剛監督が率いるU-21日本代表(候補)が、Jのチームと45分×2本の練習試合を実施した。その試合を取材していて、指導者らしき人物が選手に対し、「おい、お前~」という指示をだした。一緒に取材していた同業者と、「いまの発言はパワハラになるのかどうか」で話し合った。 もしかしたらユース年代の指導では当たり前のことかもしれないが、そうしたことも含めてJFAはガイドラインを示すべきではないだろうか。金氏も永井氏も、悪意があっての行動とは思えない。それは日本全国、どこの指導者、特に近年は学校の先生ではなくプロの指導者が増えている高校サッカーの現場では、今後は切実な問題になるような気がするからでもある。 明確な基準さえあれば、父兄はもちろん我々メディアもアドバイスできる可能性があるのではないだろうか。 2022.03.11 12:30 FriU-23日本代表の人気記事ランキング
1
新理事会と残念だった西尾隆矢の報復/六川亨の日本サッカー見聞録
JFA(日本サッカー協会)は4月18日、宮本恒靖JFA新会長と新理事による最初の理事会(年度的には第6回)を開催した。既報のとおり技術委員長には影山雅永氏(JFAテクニカルダイレクター)が就任し、新たに各種部会が設置され、代表チームの強化を担当する技術委員会強化部会の部会長には山本昌邦氏(ナショナルチームダイレクター)が就任。ユース育成部会の部会長にはU-18日本代表監督で、解説者の城彰二氏の弟の城和憲氏が就任した。 理事会後の記者会見に臨んだ湯川和之専務理事は、かつては読売クラブの選手で、90年代初めにJFAへ転出。日本代表のマネジャーとしてチームに帯同し、日本の成長を見守ってきた。宮本会長とは97年のワールドユース(現U-20W杯)で選手とマネジャーという間柄。「今日はカジュアルな形での理事会が行われた」と変化を報告しつつ、「新理事にはサッカー界の説明をしました。今まで当り前のことが当り前にできない」と、半数近くが初めてJFAの理事になったことで、サッカー界の現状説明に時間を費やしたことも明かした。 また7月13日(土)には能登半島地震復興支援マッチとして、金沢のゴーゴーカレースタジアムでなでしこジャパンの壮行試合が開催されることも報告された。対戦相手やキックオフ時間などの詳細は未定となっている。 理事会の報告はここまでで、影山技術委員長はドーハへ行っていないとのことだが、U-23アジアカップの初戦、中国戦に関してはCB西尾隆矢のレッドカードに触れないわけにはいかないだろう。いくら相手に背後から身体をぶつけられたからといって、エルボーでの報復は問答無用で一発退場だ。ましてVARがあるのだから、どんな言い訳も通用しない。 大事な初戦、それも開始17分と早い時間帯での軽率なプレーは非難されても仕方がない。まして今大会のグループリーグは中2日の連戦だ。できればターンオーバーで戦いたかったところ、初戦から日本は総力戦による“緊急事態”に追い込まれた。本来ならDF陣のリーダーにならなければいけない西尾だけに、あまりに軽率なプレーは今後の起用にも影響するかもしれない。 森保一監督はカタールのアジアカップで失点を重ねながらもガマン強くGK鈴木彩艶を起用し続けた。果たして大岩剛監督は“汚名返上”の機会を西尾に与えるのかどうか。出場停止が何試合になるかわからないものの、こちらも注目である。 今回の西尾とは違うケースだが、04年に中国で開催されたアジアカップの準決勝、バーレーン戦で遠藤保仁が不運なレッドカードで退場処分になったことがある。パスを出して前線へ走り出した遠藤に、背後からバーレーンの選手が近寄ってきた。遠藤の振った腕が偶然にもバーレーン選手の顔に当たると、オーバーに倒れ込む。すると主審は遠藤にレッドカードを出したのだった。 当時はVARなどない。そしてカードが出てしまえば取り消しようがない。0-1とリード許し、さらに10人になった日本だが、中田浩二と中澤佑二、玉田圭司の2ゴールで4-3の大逆転を演じた。 当時もいまも、日本を相手にどうやったら少しでも有利な状況に持ち込めるか各国は必死に研究しているだろう。まずは挑発に乗らないこと。そして今回のケースでは、主審は見ていなくてもぶつかられたら西尾は倒れてもよかった。ただ、Jリーグでそうしたプレーは推奨されていないし、日本人のメンタリティーからしても相手を欺くようなプレーはやりにくい。 となれば、やはり相手の挑発には乗らないことと、球離れを早くしてフィジカルコンタクトを避けるのが、体力の温存やケガの予防につながるのではないだろうか。明日のUAEもどんな罠を仕掛けてくるのか、油断のならない相手であることは間違いないだろう。 2024.04.19 17:00 Fri2
レーティング:U-23ギニア 1-2 U-23日本《トゥーロン国際大会》
▽U-23日本代表は25日、トゥーロン国際大会グループB第3節でU-23ギニア代表と対戦し、2-1で勝利した。超WSの選手採点結果と寸評は以下のとおり。 ▽U-23日本採点 GK 1 櫛引政敏 5.5 失点に絡むも後半は安定したプレーでチームを支えた DF 2 ファン・ウェルメスケルケン・際 4.5 ポジショニングや判断の悪さが目立つ低調な出来 (→井手口陽介 5.5) ハードワークは見せたが、攻守にもの足りない 3 三浦弦太 5.5 相手のスピードに苦戦も大崩れせず 5 植田直通 5.5 急造の最終ラインを何とか統率 13 三丸拡 6.0 前半に一度不用意なボールロストがあったものの、高精度のクロスから先制点をアシスト MF 14 前田直輝 5.5 前後半に見せ場があったものの、後半の絶好機を決め切れず。アピールに失敗 15 喜田拓也 5.5 ボランチと慣れない右サイドバックで奮闘。ミスはあったが、気迫は見せた 19 鎌田大地 6.0 フィニッシュの精度こそ欠いたものの、1アシストなど要所で起点に (→大島僚太 5.0) チーム全体のパフォーマンスもあり、目立ったプレーはなかった 7 原川力 5.5 攻守に最低限の仕事はこなしたが、ゲームキャプテンとしては少しもの足りない 18 南野拓実 6.0 さすがの決定力で決勝点を記録 (→浅野拓磨 5.5) 終盤に見せ場を作ったが、味方とうまく絡めず、攻撃を停滞させてしまった FW 20 富樫敬真 6.0 貴重な先制点を記録。ポジションを移した後半はやや停滞も前半は上々の出来 (→野津田岳人 5.0) ほとんど攻撃に絡めなかった 監督 手倉森誠 6.0 負傷者と疲労を抱えながら何とか選手をやり繰りし、嬉しい大会初勝利 ★超WS選定マン・オブ・ザ・マッチ! 富樫敬真(U-23日本) ▽この試合で傑出したパフォーマンスを披露した選手はいなかったが、先発起用に応える先制点を記録するなど、リオ五輪メンバー入りに向けてアピールした横浜F・マリノスの若手ストライカーをMOMに選出。 U-23ギニア 1-2 U-23日本 【U-23ギニア】 バンガリー・スマー(前10) 【U-23日本】 富樫敬真(前3) 南野拓実(前39) 2016.05.26 02:10 Thu3
日本代表対決のスタメン発表! OAの3名はベンチスタート
3日、日本代表vsU-24日本代表の一戦が札幌ドームで行われる。 キリンチャレンジカップ2021のジャマイカ代表戦が、ジャマイカ代表が来日できなかったことを受けて急遽中止に。その後、対戦相手にU-24日本代表を指名し、異例の日本代表対決が実現した。 カタール・ワールドカップ(W杯)アジア2次予選を戦う日本代表と、東京オリンピック出場に向けてメンバー選考を続けるU-24日本代表の一戦。互いに主力選手を起用して臨む。 日本代表はDF長友佑都(マルセイユ)、MF鎌田大地(フランクフルト)、MF南野拓実(サウサンプトン)、FW大迫勇也(ブレーメン)と日本代表の主軸を先発起用した。 一方のU-24日本代表はオーバーエイジの3名はベンチスタート。MF久保建英(ヘタフェ)、MF中山雄太(ズヴォレ)、MF板倉滉(フローニンヘン)らが起用された。 今回の試合は、フィールドプレーヤーが7名、GK1名が交代可能なレギュレーション。後半の交代枠は3回までとなるが、負傷交代の場合は含まれない。 ★日本代表スタメン[4-2-3-1] ※並びは予想 GK:シュミット・ダニエル DF:室屋成、植田直通、谷口彰悟、長友佑都 MF:橋本拳人、守田英正 MF:原口元気、鎌田大地、南野拓実 FW:大迫勇也 監督:森保一 ★U-24日本代表スタメン[4-2-3-1] ※並びは予想 GK:大迫敬介 DF:菅原由勢、橋岡大樹、町田浩樹、旗手怜央 MF:中山雄太、板倉滉 MF:三好康児、久保建英、遠藤渓太 FW:田川亨介 監督:横内昭展 2021.06.03 18:42 Thu4
【パリ行きの命運を託された23選手】頭脳とテクニックに優れた万能型CB、世代を代表する柱・鈴木海音
パリ・オリンピックのアジア最終予選を兼ねるAFC U23アジアカップが15日に開幕する。出場16カ国が4組に分かれてのグループステージから始まる五輪出場もかけた戦いは約2週間ちょっとのスケジュール的にも勝ち上がれば勝ち上がるほど総力戦が必至。ここではパリ行きの命運が託されたU-23日本代表の23選手を紹介し、鈴木海音にフォーカスする。 ■鈴木海音(DF/ジュビロ磐田) 静岡県出身の鈴木は中学生の時に磐田に加入。U-15、U-18とアカデミーで育ち、2020年4月にトップチーム昇格。プロ契約を結んだ。 U-15から世代別の日本代表を経験しているこの世代のエリート。2018年のAFC U-16選手権では見事優勝に貢献。2019年のU-17ワールドカップにも出場したが、チームはベスト16で敗退となった。 鈴木のプレースタイルの特長は、そのバランス感覚。ディフェンダーとしては堅実な守備を見せ、しっかりと安定感を与えるプレーが特徴。一方で、攻撃時には積極的に参加する他、キックの精度も高く、ロングフィードも得意とする。 182cmという飛び抜けて上背があるわけではないが、空中戦を得意としており、対人守備の能力も高い。テクニックと賢さ、そして強さを持ち合わせた万能型のCBと言って良い。 特に試合を読む力、戦術理解度が高く、攻守両面でプレー選択がしっかりとできるところが特徴。また、ポジショニングに長けているため、守備時には危険なゾーンをカバーし、攻撃時にはタイミングを間違えずに前線に上がる動きに加え、足元の技術とポジショニングはビルドアップをする際にも大きな力となる。もちろん一対一の守備も得意で、ボールを奪いにいく動きや、決定機の前に潰しに行くことも得意としている。 2022年には栃木SCへ育成型期限付き移籍を経験し、リーグ戦34試合に出場するなど、多くの試合経験を積んで帰還。2023年はJ2を戦うチームで22試合に出場し初ゴールも記録。チームのJ1昇格に寄与した。 守備陣の経験値に若干の不安を抱えるパリ五輪世代。アジアの戦いも経験しており、世代別の国際経験が豊富な鈴木。対戦相手の特徴に合わせ、試合展開を読んでプレーができる鈴木が守備陣を牽引していけるのか注目が集まる。 2024.04.15 11:00 Mon5
