【2022年カタールへ期待の選手vol.56】同期・久保建英を刺激にセレッソで出番増と結果にこだわる。U-19代表でもエースに!/西川潤(セレッソ大阪/FW)

2020.11.03 14:30 Tue
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秋晴れに見舞われた10月下旬の千葉・JFA夢フィールド。U-19日本代表の面々が2021年に延期されたAFC・U-19選手権(ウズベキスタン)に向け、強化合宿に挑んでいた。新型コロナウイルスの影響で活動休止になっていた彼らにとって、今回は再開後4回目の活動。とりわけ注目されるのがFW争いだ。年明け早々にマンチェスター・シティ移籍という報動が流れた斉藤光毅(横浜FC)を筆頭に、今季鹿島アントラーズで出番を得ている染野唯月らが名を連ねる中、バルセロナから興味を示された西川潤(セレッソ大阪)も帯同。アグレッシブにゴールを目指していた。影山雅永監督も「FWに関しては点を取れる選手が一番ほしい」と強調していたが、それを実行に移せる重要な戦力と考えていい。

というのも、西川は2019年U-20ワールドカップ(ポーランド)に飛び級で参加した経験があるからだ。この大会のFW陣では年長の田川亨介(FC東京)や宮代大聖(川崎)に次ぐ位置づけではあったが、韓国とのラウンド16の大一番に先発。決定的チャンスも迎えた。が、惜しくも結果は残せず、チームも敗戦。不完全燃焼感を抱えて帰国を余儀なくされた。その悔しさを糧に挑んだ同年秋のU-17ワールドカップ(ブラジル)ではオランダ、セネガルという難敵相手にゴール。ポテンシャルの高さを世界に見せつけたのだ。

年代別代表での輝かしい実績を引っ提げ、今季からセレッソ大阪の一員となり、2月22日のJ1開幕・大分トリニータ戦でベンチ入りするところまでは順調だった。ところが、直後にコロナが拡大し、長期中断。プロキャリアの第一歩を踏み出したばかりの西川としても戸惑いはあったはずだ。

「実家に帰って自宅でサッカーの動画を見て戦術の勉強をしたり、トレーニングも日課にしてました。グランドに出た時、少しでもいい状態でやれるように過ごしてました」と本人も可能な限りの努力をしたというが、7月4日の再開前後にケガをしたのもあって、8月15日の柏レイソル戦までベンチ入りできない日々を強いられた。それでもその一戦でいきなりプロ初ゴールを奪うあたりはやはり非凡。スピードと決定力を兼ね備えた逸材であることを実証した。彼自身も少なからず手ごたえをつかんだことだろう。

その後、コンスタントにベンチ入りし、試合終盤に送り出されているが、プレー時間の少なさゆえ、思うように結果を残せていない。ロティーナ監督から右サイドハーフ要員に位置付けられたことも1つの足かせになっていた様子。指揮官は当初、モンテディオ山形から個人昇格してきた坂元達裕と西川を併用する構えだったが、異彩を放ち続ける坂元の存在感が日に日に大きくなり、西川が割を食う形になったのだ。

けれども、最近になって彼はFW要員の仲間入りを果たした。「ジュンは前でプレーした方がよさが出る」とロティーナ監督もコメント。ゴールに近いエリアでプレーできるチャンスが広がったのだ。もちろんFW陣はブルーノ・メンデス奥埜博亮を筆頭に、調子を上げてきた豊川雄太鈴木孝司らがひしめいていて、競争を勝ち抜くのは容易ではないが、本職に近い役割の方が西川も勝負しやすいはず。直近の24日の浦和レッズ戦でも17分間のプレー時間を与えられ、ガムシャラにゴールに突き進む姿勢が目立った。こうしたアグレッシブなトライを続けていれば、いつか必ず結果はついてくるはず。本人もそう考えているに違いない。

同期の久保建英(ビジャレアル)がスペインで着実に存在感を高め、斉藤光毅にも海外移籍話が浮上する中、西川が焦りを感じる部分は少なからずあるだろう。「僕はいずれ欧州でプレーしたい」と前々から公言していた選手だけに「早く外で出た方がいいのではないか」と迷うのも当然かもしれない。

とはいえ、Jリーグと年代別代表で確固たる結果を残してからステップアップした方が成功に近づくのは確か。現在、森保ジャパンでレギュラーを確保している冨安健洋(ボローニャ)と堂安律(ビーレフェルト)も2017年U-20ワールドカップ(韓国)で活躍した直後に渡欧し、1年後にはA代表入りをつかんだ。10月のカメルーン戦(ユトレヒト)で初キャップを踏んだ菅原由勢(AZ)にしても昨年のU-20ワールドカップ直後にオランダへ渡り、UEFAヨーロッパリーグなどを経験してA代表につなげている。

西川も目下、苦境にあえいでいるかもしれないが、2021年にU-19アジア予選を戦い、U-20の大舞台で活躍し、直後に海外へ赴いてブレイクするというステップを辿れば、A代表は自ずから見えてくる。2022年カタールワールドカップは11~12月開催だから、その分、アピールの時間が長くなるということ。それも彼にとっての追い風だ。だからこそ、雌伏の時である今を大事にするしかない。

「タケ(久保)は同世代で地元も一緒。自分も負けないように頑張りたい」と本人は一足先に海外へ羽ばたいたライバルに追いつこうと躍起になっている。その向上心を忘れず自己研鑽を続けば、輝かしい未来は開けるはず。それだけの潜在能力とスター性が西川潤には確かに備わっている。

【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
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【2022年カタールへ期待の選手vol.81】U-24フランス戦MVPとも言われる存在感。マルチタスクで東京五輪金メダルに貢献へ/旗手怜央(川崎フロンターレ/MF)

東京五輪1次リーグ突破のかかった7月28日のU-24フランス戦(横浜)。三好康児(アントワープ)、相馬勇紀(名古屋)と、試合ごとに左サイドアタッカー要員を入れ替えてきた森保一監督が大一番に抜擢したのが、旗手怜央(川崎F)だった。 右太ももの張りで別メニュー調整が続いていた三笘薫(川崎F)ではなく、旗手を選んだことは、傍目から見てもサプライズに映ったが、背番号13をつける男は序盤からグイグイと飛ばした。開始早々の8分にペナルティエリア手前から強烈シュートをお見舞いし、対面に位置するランダル・コロ・ムアニ(ナント)に激しく寄せていく。 そして前半27分の久保建英(レアル・マドリード)の先制弾のシーンでは、上田綺世(鹿島)の強烈シュートを相手GKポール・ベルナルドーニ(アンジェ)が弾いた瞬間、いち早くこぼれ球に反応した。DFを引きつける鋭い動きで久保がフリーになったのは確か。黒子の仕事で彼は1点目をお膳立てしたのだ。 旗手の活躍はこれだけではなかった。前半34分の酒井宏樹(浦和)の追加点の場面では、久保との連携で起点となり、後半25分の三好の3点目をアシスト。前田大然(横浜)が入ってきた後半34分以降は左サイドバック(SB)に下がってプレーした。 今回のフランスがU-24世代のベストチームではないにせよ、これだけ屈強で大柄な面々と対峙しても全く動じず、互角以上の強度と運動量を発揮し、4-0勝利の原動力になれるとは、本人も想像していなかったかもしれない。日頃、辛口のサッカー解説者・セルジオ越後氏もサッカー専門誌上で「フランス戦のMVP」に挙げるほど、旗手は大きなインパクトを残した。 疲労蓄積が進み、出場停止やケガ人が出る可能性も高い決勝トーナメント以降は彼のような“伏兵"がさらに効果的な働きをしなければいけない。その布石を打てたことで、本人も大いに自信を深めたに違いない。 振り返れば1年半前の2020年1月。旗手はAFC・U-23選手権(タイ)惨敗の屈辱感を胸に秘め、川崎フロンターレの大卒新人として新たな一歩を踏み出していた。その時点で半年後の東京五輪は遠く、彼自身も「五輪は夢のまた夢」と発言していた。 しかしながら、新型コロナウイルスの影響で1年延期が決定。その間、彼は川崎で力を蓄えた。同期の三笘が華々しい活躍を見せる傍らで、旗手自身は試合に出られないことも多かったが、シーズン終盤に左SBで起用されてから状況が一変。「攻撃から守備まで柔軟にこなすマルチタスク」として評価を一気に上げ、森保監督と横内昭展コーチに認められる形になった。 僕は試合に出られるなら何でもいい。SBにしても、前のポジションにしても、見えるものも毎試合変わりますし、それに対して臨機応変に対応していかないといけない。今はその対応がうまくいっているんじゃないかと思います」と本人も語っていたが、前目のポジションで五輪に出ることはあまり考えていなかったはず。あくまでSBとして世界と対峙することを主眼に置いていたはずだ。けれども、ふたを開けてみれば、アタッカーとしての存在感を大いに発揮する形になっているのだから、サッカーはどう転ぶか分からない。ポリバレント性が評価されていなかったら、18人のメンバー入りもなかったわけだから、本当に幸運の男だ。こういうラッキーボーイが出現してこそ、日本は高いステージまで勝ち上がり、53年ぶりのメダルに手が届くのだ。 決勝トーナメント以降の旗手の起用法は森保監督の胸先三寸だろう。ただ、遠藤航(シュツットガルト)と田中碧(デュッセルドルフ)、中山雄太(ズヴォレ)が1枚ずつ警告をもらっていることを考えると、この先は左SBでの出場が増えそうだ。遠藤か田中に何かあれば、中山は板倉滉(フローニンゲン)とともにボランチをこなさなければいけなくなる。そういった状況が31日の準々決勝・ニュージーランド戦(カシマ)で起きないとも限らない。だからこそ、万能プレーヤーには最高の準備をしてもらう必要がある。 「対戦相手がどこであろうと僕自身は試合ができることが毎回楽しみ。国際舞台を経験できる機会というのはなかなかないこと。今回、五輪という素晴らしい場なので、そこでしっかりやりたいと思ってます。 どこで出ても重要になるのは、連携やプレー1つ1つの精度。自分のやりたいことと周りにいる選手のやりたいことを意思疎通し、個人的なミスやパスミスを減らしていくこと。そういった基本的なことをしっかりやれれば、得点失点にしっかりつながるんじゃないかと思ってます」 大会直前に地に足の着いたコメントをしていた旗手。そんな言い回しを聞いていても、人間的に一皮剥けた印象もある。今、ここで頂点まで突き進み、彼自身もステップアップのチャンスをつかめれば、静岡学園高校時代の恩師・川口修監督から託された「UEFAチャンピオンズリーグに出るような選手になれ」という高みにも手が届くかもしれない。 いい流れが来ている今のタイミングを逃す手はない。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2021.07.31 14:45 Sat
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【2022年カタールへ期待の選手vol.80】冨安負傷のアクシデントに冷静に対処。守備のマルチタスクが東京五輪躍進のカギを握る/板倉滉(フローニンヘン/DF)

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【2022年カタールへ期待の選手vol.79】スペイン指揮官に絶賛された22歳の守備の要。東京五輪メダル獲得で名門クラブへ飛躍か?/冨安健洋(ボローニャ/DF)

「基本的に一番よく知っているのは久保(建英=レアル・マドリー)だが、今日は冨安(健洋=ボローニャ)が非常に重要な選手であると見せていたと思う。こういった国際的な試合で戦うことに長けている。非常に目立っていたと思うし、日本の攻撃の中でも非常にいい活躍をしていた」 東京五輪前最後のテストマッチとなった17日のU-24スペイン戦(神戸)。堂安律(PSV)とカルロス・ソレール(バレンシア)のゴールで1-1のドローに終わった一戦の後、敵将のルイス・デ・ラ・フエンテ監督が名指しで絶賛したのが、22歳の若き守備の要だ。 最終ラインからのタテパスに抜け出そうとしたラファ・ミル(ウォルバーハンプトン)の動きを見るや、果敢に体を寄せてピンチを阻止した開始5分のプレーに始まり、この日の冨安はスペインの好機を毎回のようにストップ。「日本の壁」として立ちはだかっていた。キャプテン・吉田麻也(サンプドリア)の戦術眼と統率力、ダニ・オルモ(RBライプツィヒ)とフアン・ミランダ(レアル・ベティス)を1人で2枚止めた酒井宏樹(浦和)の1対1の強さも追い風になったのだろうが、冨安が強豪国からも一目置かれていることが鮮明になったのは確かだ。 「麻也さんとはA代表でもずっと横で組ませてもらっていますし、そういう先輩が五輪に来てくれてホントに嬉しく思ってます。でも麻也さんに頼ってばかりではなく、麻也さんを超えるような存在の選手が出てこないと日本サッカーのためにならない。自分がそういう存在になっていきたい」と今回の合宿がスタートした時、新たな意欲を口にした冨安。2018年10月のパナマ戦(新潟)でA代表デビューした頃は「まだまだ先輩についていくのがやっとです」という謙虚な口ぶりだっただけに、心身両面での大きな成長を感じさせる。 当時はベルギー1部・シント=トロイデンという小クラブの一員でしかなかったが、2019年夏に赴いたイタリア・セリエAのボローニャでは強国の守備文化を体感。クリスティアーノ・ロナウド(ユベントス)やズラタン・イブラヒモビッチ(ミラン)、ロメル・ルカク(インテル)ら世界トップFWと対峙し、駆け引きや体の使い方などに磨きをかけた。さらには左右のサイドバックでもプレーし、サッカー観も大いに広がった。こうした高度な経験値があるからこそ、本人は「世界的に見てもレベルの高いリーグでやっているので、東京五輪でも普段通り、プレーできればいい」と自然体を貫けている。もともと10代の頃からベテラン選手のような落ち着きと冷静さを持ち、成人した頃には「20歳のおじいちゃん」の異名を取っていた男だが、どんな状況になっても動じないのは本当に頼もしい。これまでA代表で今野泰幸(磐田)や森重真人(FC東京)、槙野智章(浦和)、昌子源(G大阪)らとコンビを組んできた吉田もより大きな安心感を持って大舞台に挑めるはずだ。 そこであえて冨安に注文したいのは、自身もコメントしているように、吉田のようなリーダーシップや統率力を示すこと。言葉で周りを説き伏せるタイプではないが、自国開催という特別な重圧のかかる今回の大舞台では本当に何が起きるか分からない。吉田と酒井が揃って出場停止になることもあり得るからだ。 96年アトランタ大会以降の五輪代表を振り返っても、最高成績を残した2000年シドニー五輪のチームも1次リーグ突破のかかるブラジルとの3戦目で中田英寿と森岡隆三(清水アカデミー・ヘッド・オブ・コーチング)の攻守の2枚看板が揃って出場停止になった。そこで中村俊輔(横浜FC)と宮本恒靖が抜擢されたが、ブラジルという難敵には勝てなかった。日本は何とか2位通過を果たしたが、本当に薄氷の突破だった。同じような状況が東京五輪で起きないとも限らないのだ。 そういった時、やはり守備陣を力強く牽引できるのは冨安しかいない。「チームとして金メダルという目標を掲げているので、僕もピッチの上で貢献できればいい」という気合を主体的行動でより示していくべきなのだ。「サッカーに年齢は関係ない」と田中碧(デュッセルドルフ)も強調していたが、冨安はもはや若手ではない。A代表の主力として吉田や酒井同様の立場にいる。そのことをしっかりと示してくれれば、9月から始まる2022年カタールワールドカップ(W杯)アジア最終予選、本大会、そしてその先の日本代表にとっても力強い要素になる。「自分が未来の日本を背負っている」という覚悟を、彼はピッチ内外で今こそ見せつける必要がある。 ここでメダル獲得の原動力になれれば、名門クラブへのステップアップも約束されるだろう。すでにトッテナムへの移籍話が佳境に入っていると言われるが、どこへ行ったとしても定位置争いはこれまで以上に厳しくなる。東京五輪で異彩を放ち、強烈なインパクトを残した状態で新天地に赴けば、周囲も一目置いてくれるだろう。より前向きな環境で新たなキャリアを踏み出せる可能性も高まるのだ。 あらゆる意味で冨安にとって今回の大舞台は重要なターニングポイント。まずは22日の初戦・南アフリカ戦(東京)からスムーズな入りを見せることが肝要だ。 「2017年U-20W杯(韓国)でも同じ南アからスタートしたけど、僕がオウンゴールして失点してから始まった。あの大会自体はいい印象を持っていないし、やられた感覚が強いんで、今回は初戦をしっかり勝ってスタートしたい」と本人も言うように、4年前の苦い過去を糧にすることも大切だ。 来るべき東京五輪は、目覚ましい進化を遂げ、世界トップの仲間入りを果たす冨安健洋の雄姿を目に焼き付けたいものである。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2021.07.19 21:30 Mon
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【2022年カタールへ期待の選手vol.78】五輪本大会でカギを握る控え組。190㎝の左利きDFは要所要所で存在感を示せるか?/町田浩樹(鹿島アントラーズ/DF)

「(出場可能選手枠が)22人に広がったという話を聞いた時、非常に嬉しかったですし、ケガ人が出なければ試合に出ることができないバックアップメンバーとは違って、大枠ではありますけど、試合に出る可能性が出てきたというだけで自分のモチベーションは高い。ポジションにこだわらず、どこであれ最善を尽くす気持ちでいます」 こう語るのは、当初、東京五輪バックアップ枠の1人に位置付けられた町田浩樹(鹿島)。鈴木彩艶(浦和)、瀬古歩夢(C大阪)、林大地(鳥栖)とともにイザという時に備えてチームに帯同することになっていた。 しかし、ご存じの通り、コロナ禍の特別ルールで登録が22人に拡大。彼らにもチャンスが巡ってきた。このうち林は12日のU-24アルゼンチン戦(ヨドコウ)に1トップでスタメン出場。2回の決定機こそ逃したが、前線でタメを作り、堂安律(PSV)ら2列目を巧みに生かし、本番の戦力に急浮上した。 町田ら守備陣は、吉田麻也(サンプドリア)、冨安健洋(ボローニャ)という鉄壁のDFコンビがいるため、出番を得るのは容易ではない。ただ、短期決戦の大舞台では予期せぬアクシデントも起こり得る。 実際、真夏の高温多湿の気象条件の中、中2日ペースで6試合を戦う五輪はどの大会よりも過酷だ。「6試合全部同じメンバーでは戦えない」と吉田も語気を強めていたが、1次リーグ3戦のうちにさまざまなメンバーを使っておかないと、決勝トーナメント突入後はエネルギー切れにならないとも限らない。町田ら控え組がいい準備をして、短時間でも良い仕事をしてくればければ、金メダルという大目標には辿り着くことはできない。そういう意味で彼らの存在はやはり大きいのだ。 ホンジュラス戦を振り返っても、町田は後半35分に吉田と交代。その後、左サイドバック(SB)の中山雄太(ズウォレ)の足がつり、交代を余儀なくされたことで左SBを務め、堂安が奪った3点目のシーンでは、左を駆け上がる相馬勇紀(名古屋)をしっかりとサポートしてみせた。短時間でも賢く確実なプレーができれば、出場可能性はより広がる。そういう意味で、背番号20をつける長身DFは好印象を残したのはないだろうか。 そもそも茨城県つくば市出身の町田は、中学時代から常勝軍団・鹿島のアカデミーに所属。勝利のメンタリティを胸に刻みながら成長した。2016年にトップ昇格した頃は小笠原満男(鹿島アカデミーアドバイザー)や曽ヶ端準(トップGKコーチ)もバリバリの現役だったし、柴崎岳(レガネス)や昌子源(G大阪)も在籍。内田篤人(JFAロールモデルコーチ)も2018年1月にはドイツから復帰し、ハイレベルな要求の中で自己研鑽を続けてきた。 「周りの選手には代表の常連にいるような選手ばかり。レベルが物凄く高かったし、彼らとトレーニングできて、自分の経験になりました。特に満男さんは試合の勝ちへのこだわりは人一倍すごかった。僕もあそこまで突き詰めていかないといけないと感じましたね」 神妙な面持ちでこう語る町田。とはいえ、それだけ選手層が厚ければ、公式戦に出るのもより一層、難しくなる。2017年U-20ワールドカップ(W杯=韓国)の頃は出番をつかめておらず、本大会メンバーから落選。本人も「そういう扱いは仕方ない」と納得しつつも、悔しさを噛み締めていたという。 状況が大きく変化したのは、2019年だ。2018年夏に植田直通(ニーム)が欧州移籍に踏み切り、2019年1月にも昌子がフランスへ赴いたことで、町田に出場機会が訪れたのだ。翌2020年にはザーゴ前監督が就任。190㎝のレフティであり、パス出しやフィード力に秀でた彼は高く評価され、主力の一角を占めるようになった。その立場は今年4月に相馬直樹監督が就任してからも不動だ。そうやって所属クラブで存在感を増したからこそ、森保一監督も最後の最後で彼を東京五輪本番要員に招集したのだろう。 「やっぱり自国開催でできるチャンスは少ないし、一生に一度出れるか出れないかという大会なので、いい準備をして一丸となって戦っていきたいと思います」と彼自身も大いに気合を入れている。 「自分の特徴である空中戦の強さや左足をより磨いていきたい。そこは他の選手が持っていない武器」と本人も自信をのぞかせたように、190㎝という高さは吉田や冨安にもないストロングポイント。屈強な相手との競り合いでは大いに威力を発揮する。攻撃時もリスタートからの得点という部分で町田にかかる期待は大きい。もしかすると、彼が五輪本番のどこかで大きな仕事をやってのけることも考えられるのだ。 日本として53年ぶりに五輪でメダルを獲得しようと思うなら、そういうラッキーボーイの存在は必要不可欠だ。林はその筆頭と言えるが、町田も勝負どころで使えるカード。自分がチームの命運を握る存在になるかもしれないことを、彼自身も自覚しつつ、まずは17日のU-24スペイン戦(神戸)に備えてほしい。スペイン相手に強烈なインパクトを残せれば、本大会のここ一番で起用される可能性はますます高まるのだから。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2021.07.16 22:00 Fri
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【2022年カタールへ期待の選手vol.77】ドイツ2部→1部での成功という「遠藤航コース」を歩めるか?まずは東京五輪で活躍を/田中碧(デュッセルドルフ/MF)

7月22日の東京五輪初戦・南アフリカ戦まで3週間あまり。7月5日のU-24日本代表再始動に向け、すでに堂安律(ビーレフェルト)ら欧州組が自主トレに入っているが、7月1日から新たに欧州組の仲間入りを果たす田中碧(デュッセルドルフ)も間もなく帰国。大舞台に向けて本格的に動き出す。 目下、ウズベキスタンでAFCチャンピオンズリーグ(ACL)に参戦中の川崎フロンターレから「遠征に帯同しない」と発表された時点で、海外移籍決定秒読み段階に入っていた田中碧。6月26日(日本時間27日未明)にドイツ2部のフォルトゥナ・デュッセルドルフとの正式契約が明らかにされた。当初は買い取りオプション付きのレンタル移籍だが、本人はいずれ欧州で大きく羽ばたくという野心を抱いている。 「あえてドイツ2部に行く必要はない」「もう少し待っていれば1部からのオファーが来る」といった意見もSNSなどで散見されたが、デュッセルドルフはかつて原口元気(ウニオン・ベルリン、18年1月~6月)と宇佐美貴史(G大阪、17年夏~19年夏)もプレーした名門。彼らは2部からスタートして1部昇格を経験したが、田中碧も同じ道を歩む可能性も少なくないだろう。 ドイツ屈指の日本人街として知られるデュッセルドルフは初めての欧州移籍選手にとっては恵まれた環境。スタジアムや練習環境も1部と比べてもそん色はない。加えて言うと、三菱養和出身のアペルカンプ真大が在籍。日本語の話せる仲間がいることで、新天地適応はよりスムーズに進むだろう。 昨季終盤のデュッセルドルフの布陣を見ても、アペルカンプは35歳のアンカー、アダム・ボジェクや27歳のマルセル・ゾボトカらとともに中盤を形成していた。ボジェクは経験値は高いものの、年齢的なことを考えるとフルシーズンは厳しい。そこに田中碧が入り込むチャンスは大いにある。そういった要素を複合的に検証し、欧州でのファーストステップを考えるうえで適切なクラブだと判断したからこそ、彼はドイツ2部からの出発を決めたのだ。 決断に当たっては、6月のU-24日本代表活動で初めてボランチコンビを組んだ遠藤航(シュツットガルト)の存在も大きかったと見られる。 「遠藤航選手は日本で一番のボランチ。隣でプレーさせてもらっているすごく幸せですし、学ぶものは多い。守備の強度の部分、球際の部分、前に出ていく部分、予測の質と回数の多さ…、そういうところは今まで一緒にやってきた選手の中では段違い」と田中碧自身も絶賛していたが、その遠藤航もまたベルギーからドイツ2部を経由してドイツ1部・デュエル王に飛躍した選手である。 おそらく代表活動期間中に移籍に関する相談もしただろうが、遠藤航は背中を力強く押してくれたはず。中盤の選手が海外で成功しようと思うなら、屈強で大柄な相手との駆け引きやボール奪取のタイミング、パス出しの感覚を体得し、持てる力をピッチで最大限表現できる状況を作らなければいけない。フィジカル色の強いドイツ2部はある意味、理想的な環境とも言える。ここでコンスタントに出場機会を得て、自信と経験を蓄えていけば、近い将来のステップアップやA代表定着も見えてくる。日本屈指の逸材である田中碧はそういう軌跡を辿らなければいけないのだ。 21-22シーズンのドイツ2部開幕は7月23日。それを視野に入れると、本来は今からキャンプに合流し、戦術理解を深める方が成功の早道だ。が、彼には直近の東京五輪という大舞台が待っている。そこで決勝まで勝ち上がるとすれば、デュッセルドルフ合流は8月中旬になってしまうため、直後からの活躍というのは難しいかもしれない。それでも、五輪メダルを引っ提げて新天地に赴けば、周囲からの見方も違ってくる。ブンデス1部デュエル王の遠藤航と揃って大活躍すれば、ひと際インパクトも大きくなるだろう。そうやって見る者を驚かせた状態でドイツでの新たなキャリアを踏み出せれば、まさに理想的。そのためにも、1次リーグ3戦にまずは全力を注ぐことが肝要だ。 南ア、メキシコ、フランスという相手はどこも難敵。フランスは2010年南アフリカ・ワールドカップやユーロ2016に参戦経験のあるFWアンドレ=ピエール・ジニャック(ティグレス)らオーバーエージ枠3人を含むメンバーを発表。現在ユーロ2020を戦っているキリアン・ムバッペ(PSG)らは選外になったものの、タレント揃いなのは間違いない。 初戦から着実に勝ち点を積み重ねていかなければ、メダルという大目標には手が届かない。それは王者・川崎で帝王学を学んできた田中碧にはよく分かっていること。1つ1つのプレーの精度をより高め、攻守両面で効果的な仕事をしていくことが強く求められている。 「フロンターレはほとんどの試合で勝っているし、リードしてゲームをコントロールする時間が長いと思うけど、負けている時にどういうプレーが効果的かボールを奪いに行けるかどうかはもっと見たい」と吉田麻也(サンプドリア)も注文をつけていた。果たしてその要求に応えられるのか。日本のダイナモとして眩い光を放つことができるのか。 東京五輪開幕が今から楽しみでならない。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2021.06.28 22:15 Mon
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