なぜ工藤孝太は最終節後に立田悠悟と胸をぶつけ合ったのか?ファジアーノ岡山での成長を支えた師弟関係
2025.12.30 20:00 Tue
ファジアーノ岡山は12月6日、明治安田J1リーグ第38節で清水エスパルスと対戦し、1-2で勝利を収めた。11試合ぶりの勝利に沸くピッチで、岡山のDF工藤孝太は真っ先にDF立田悠悟のもとへ向かった。J1の壁にぶつかり続けた若きDFと、自らの過去を重ねて支え続けた先輩。2026シーズンも共闘が決まった、2人の熱き師弟関係を紐解く。
11試合ぶりの勝利の喜びをサポーターと分かち合うため、試合を終えた岡山の選手たちがアウェイ席に向かって歩き出す。その時、DF工藤孝太はチームメイトの間をかき分け、ある選手を探した。3バックを形成したDF立田悠悟だ。2人は大きく振りかぶって手のひらを合わせた後、胸と胸をぶつけた。満面の笑みを浮かべながら荒々しく爆発させた感情には、5歳上の先輩に対する1年間の感謝が込められていた。
「嬉しくて、勝手にああいうふうな喜び方になっていました。最近は僕と悠悟くんが一緒に出場する機会がなくて、今日は一緒に出て勝つことができたんで良かった。1年間すごく支えてもらいましたし、時には成長するために厳しい言葉も掛けてくれる、すごく良い先輩です」
2025シーズンに浦和レッズから育成型期限付き移籍で岡山に加入した工藤は、初挑戦のJ1で大きく飛躍した。25試合に出場し、1952分間プレー。これはDF田上大地、DF立田悠悟に次いで、チーム内のDFでは3番目の数字である。
「こんなに出られるとは思っていなかった」
想定以上の出場機会を得ることはできたものの、決して順風満帆ではなかった。
国内最高峰の舞台では、強力なアタッカーとのマッチアップが日常茶飯事だ。日本代表としてワールドカップを戦った選手、海外でのプレー経験のある選手、これから世界に羽ばたいていくであろうポテンシャルを秘めた選手、日本人を超越したスピードやフィジカルを持つ外国籍助っ人…。2024シーズンに武者修行先のギラヴァンツ北九州でJ3優秀選手賞を受賞していたとは言え、2つ上のカテゴリーへの適応は負荷の高いものだった。
「最初の方は不安もありましたし、昨年J3でプレーしている分、練習の強度も含めてそもそものレベルが高かったんで苦労しました」
第11節鹿島アントラーズ戦でFWチャヴリッチに背後に抜け出されて逆転ゴールを許し、第16節柏レイソル戦ではFW細谷真大にマークを外されて先制点を与えてしまった。
「これがJ1だ」と言わんばかりに質の高さを突きつけられ、「僕がチームの足を引っ張ってしまった」と口にするほど悔しさを募らせた試合もあった。しかし、立ちはだかる壁から逃げることはなかった。
「絶対に取り返したい」
内に秘めた反骨心を燃やし、毎日のトレーニングと目の前の試合に向き合う。そんなギラギラとした野心を察知していたのが、立田だった。
「彼の姿は、自分の若い時と被るんです。彼には失礼かもしれないけど、すごくわかりやすいというか。自信がない時は『どうしよう』と迷って、すごくミスする。でも、自信がある時はすごく調子が良い。波がある感じ」(立田)
工藤は浦和のユースから、立田は清水のユースから。2人には高校卒業後にDFとしてトップチームに昇格したという共通点がある。そして、立田は高卒2年目の20歳の時からコンスタントにJ1のピッチに立ってきた選手だ。経験値が重要視されるセンターバックというポジションを若い頃から任され、日本のトップカテゴリーで戦ってきた。当時は現状の自分よりも能力の高い相手FWを迎え撃つことも多かっただろう。少し背伸びをするようにして力を蓄えてきた期間は、ミスや悔しさなど痛みを伴う日々だったに違いない。その経験があったからこそ、立田は工藤に歩み寄った。
「今は彼がすごく努力したから、波が少なくなってきたと思うんですけど、(自分と)重なる部分で(当時の)自分が気づくことができなかったことを早めに伝えておけばというふうに思っていました」(立田)
工藤は立田からのアドバイスを取り入れるだけでなく、自分からも積極的に学びを探した。全体練習後は横並びで会話しながらジョギングをし、2人で居残り練習をすることもあった。一緒に焼肉を食べに行くなど、ピッチ外でも行動を共にした。
「左右は違いますけど同じポジションなので、何を考えているのかを聞いたり。悠悟くんを見ながら、どのシチュエーションで、どんなコーチングをしているのかを見たり。すごく参考にさせてもらっています。この1年間で自分でもわかるくらい成長していると僕も思っていて、それは悠悟くんと長い時間一緒にいさせてもらったからこそ」
お手本となる先輩からたくさんのことを吸収し、トライを続けることでJ1基準を身につけ、序盤戦では課題としていた背後の対応も克服してみせた。
「試合をこなしていく中で、対応の仕方や相手の駆け引きで積み上げてきたものがあったし、アウェイのマリノス戦とアウェイの鹿島戦では2連勝ができて結果にも繋がった。そこからは気持ちが安定して、強気にメンタルを保てるようになりました。手応えを持ち始めた期間でもあったし、自分でも変わったかなと感じるくらい自信になりました」
立田も「かわいい」後輩の成長を認めている。
「自分から伝えたりすることはありますけど、それ以上にたぶん彼自身が自分で考えてやっていることも多いと思う。あとは、試合に出て自信を持てるようになった。顔つきや髪型の変化も、自信の表れというか。自信を持ってやることは、後ろの選手にとって大事なこと。ただ、それでもミスが起こる時はあるんで、そういった時には自分が矢面に立てればなと思います」(立田)
自力でJ1残留を掴んだ第37節川崎フロンターレ戦の同点ゴールのキッカケとなったのは、背後のMF家長昭博を気に掛けながら前に出た工藤のパスカットだった。
「もともとパスカットを狙っていたわけじゃなくて、背後を抜けようとする選手が後ろにいたんで、良い身体の向きを作って、まずは背後の対応ができた。ボールも見えていましたし、ある程度の相手の立ち位置を認識できていました。その中で、相手選手のボールが少し手前にミスのような形で来た。あのシーンは特別難しいことをしたわけではないんですけど、最終的にゴールに繋がったのは良かったです」
第38節清水戦の79分には、相手陣内に鋭く飛び出してMF乾貴士の縦パスをカットし、勢いそのままに持ち運び、際どいミドルシュートを放った。
「パスカットして得点の確率が高い選手にパスを出そうかなと思ったんですけど、誰かから『やり切れ』と言われたんで、思い切って打ちました。決めたかったですけど、ああいうのも決め切れる選手になりたい」
前向きにボールを奪いに行く。どちらのプレーも木山隆之監督が求める強気な守備対応だが、自分の背後のスペースを恐れていては選択が難しいプレーでもある。だが、工藤はJ1でのトライアンドエラーによって背後のスペースを管理できるようになり、「前に出て行っても大丈夫」という確信を自分自身で持ち、強気かつ的確な守備対応を身につけたのだ。
2025シーズンの閉幕を告げるホイッスルが鳴った後、「全然勝てていなかったんで、自分がスタートから出て勝つことができたのは率直にうれしいです」と11試合ぶりの勝利に安堵したものの、満足はしていなかった。
「僕自身のプレーにはミスもありました。そこは悠悟くんも注意してくれましたし、僕も満足していない。悠悟くんと一緒に出て勝てたことは良かったですけど、自分としては全然満足できる内容ではなかったんで、オフシーズンでもしっかりと進化して、また来シーズンも頑張りたいです」
2025年12月29日、岡山への期限付き移籍期間の延長が発表された。2026シーズンも、工藤は立田からたくさんのことを学びながら、さらなる成長を追い求めていく。
取材・文=難波拓未
#浦和レッズ から #ファジアーノ岡山 に
— 超WORLDサッカー! (@ultrasoccer) December 29, 2025
期限付き移籍していた #工藤孝太 が
移籍期間を延長
「現状に満足することなく
今年以上の成長ができるように
来シーズンもファジアーノ岡山のために
覚悟を持って闘います」
2025シーズンは#J1 25試合1アシスト#fagiano pic.twitter.com/2wgkd2Cs42
11試合ぶりの勝利の喜びをサポーターと分かち合うため、試合を終えた岡山の選手たちがアウェイ席に向かって歩き出す。その時、DF工藤孝太はチームメイトの間をかき分け、ある選手を探した。3バックを形成したDF立田悠悟だ。2人は大きく振りかぶって手のひらを合わせた後、胸と胸をぶつけた。満面の笑みを浮かべながら荒々しく爆発させた感情には、5歳上の先輩に対する1年間の感謝が込められていた。
2025シーズンに浦和レッズから育成型期限付き移籍で岡山に加入した工藤は、初挑戦のJ1で大きく飛躍した。25試合に出場し、1952分間プレー。これはDF田上大地、DF立田悠悟に次いで、チーム内のDFでは3番目の数字である。
第3節のガンバ大阪戦でJ1デビューを飾ると、3バックの左でJ1昇格に貢献したDF鈴木喜丈のコンディション不良もあり、徐々にプレータイムを伸ばしていく。
「こんなに出られるとは思っていなかった」
想定以上の出場機会を得ることはできたものの、決して順風満帆ではなかった。
国内最高峰の舞台では、強力なアタッカーとのマッチアップが日常茶飯事だ。日本代表としてワールドカップを戦った選手、海外でのプレー経験のある選手、これから世界に羽ばたいていくであろうポテンシャルを秘めた選手、日本人を超越したスピードやフィジカルを持つ外国籍助っ人…。2024シーズンに武者修行先のギラヴァンツ北九州でJ3優秀選手賞を受賞していたとは言え、2つ上のカテゴリーへの適応は負荷の高いものだった。
「最初の方は不安もありましたし、昨年J3でプレーしている分、練習の強度も含めてそもそものレベルが高かったんで苦労しました」
第11節鹿島アントラーズ戦でFWチャヴリッチに背後に抜け出されて逆転ゴールを許し、第16節柏レイソル戦ではFW細谷真大にマークを外されて先制点を与えてしまった。
「これがJ1だ」と言わんばかりに質の高さを突きつけられ、「僕がチームの足を引っ張ってしまった」と口にするほど悔しさを募らせた試合もあった。しかし、立ちはだかる壁から逃げることはなかった。
「絶対に取り返したい」
内に秘めた反骨心を燃やし、毎日のトレーニングと目の前の試合に向き合う。そんなギラギラとした野心を察知していたのが、立田だった。
「彼の姿は、自分の若い時と被るんです。彼には失礼かもしれないけど、すごくわかりやすいというか。自信がない時は『どうしよう』と迷って、すごくミスする。でも、自信がある時はすごく調子が良い。波がある感じ」(立田)
工藤は浦和のユースから、立田は清水のユースから。2人には高校卒業後にDFとしてトップチームに昇格したという共通点がある。そして、立田は高卒2年目の20歳の時からコンスタントにJ1のピッチに立ってきた選手だ。経験値が重要視されるセンターバックというポジションを若い頃から任され、日本のトップカテゴリーで戦ってきた。当時は現状の自分よりも能力の高い相手FWを迎え撃つことも多かっただろう。少し背伸びをするようにして力を蓄えてきた期間は、ミスや悔しさなど痛みを伴う日々だったに違いない。その経験があったからこそ、立田は工藤に歩み寄った。
「今は彼がすごく努力したから、波が少なくなってきたと思うんですけど、(自分と)重なる部分で(当時の)自分が気づくことができなかったことを早めに伝えておけばというふうに思っていました」(立田)
工藤は立田からのアドバイスを取り入れるだけでなく、自分からも積極的に学びを探した。全体練習後は横並びで会話しながらジョギングをし、2人で居残り練習をすることもあった。一緒に焼肉を食べに行くなど、ピッチ外でも行動を共にした。
「左右は違いますけど同じポジションなので、何を考えているのかを聞いたり。悠悟くんを見ながら、どのシチュエーションで、どんなコーチングをしているのかを見たり。すごく参考にさせてもらっています。この1年間で自分でもわかるくらい成長していると僕も思っていて、それは悠悟くんと長い時間一緒にいさせてもらったからこそ」
お手本となる先輩からたくさんのことを吸収し、トライを続けることでJ1基準を身につけ、序盤戦では課題としていた背後の対応も克服してみせた。
「試合をこなしていく中で、対応の仕方や相手の駆け引きで積み上げてきたものがあったし、アウェイのマリノス戦とアウェイの鹿島戦では2連勝ができて結果にも繋がった。そこからは気持ちが安定して、強気にメンタルを保てるようになりました。手応えを持ち始めた期間でもあったし、自分でも変わったかなと感じるくらい自信になりました」
立田も「かわいい」後輩の成長を認めている。
「自分から伝えたりすることはありますけど、それ以上にたぶん彼自身が自分で考えてやっていることも多いと思う。あとは、試合に出て自信を持てるようになった。顔つきや髪型の変化も、自信の表れというか。自信を持ってやることは、後ろの選手にとって大事なこと。ただ、それでもミスが起こる時はあるんで、そういった時には自分が矢面に立てればなと思います」(立田)
自力でJ1残留を掴んだ第37節川崎フロンターレ戦の同点ゴールのキッカケとなったのは、背後のMF家長昭博を気に掛けながら前に出た工藤のパスカットだった。
「もともとパスカットを狙っていたわけじゃなくて、背後を抜けようとする選手が後ろにいたんで、良い身体の向きを作って、まずは背後の対応ができた。ボールも見えていましたし、ある程度の相手の立ち位置を認識できていました。その中で、相手選手のボールが少し手前にミスのような形で来た。あのシーンは特別難しいことをしたわけではないんですけど、最終的にゴールに繋がったのは良かったです」
第38節清水戦の79分には、相手陣内に鋭く飛び出してMF乾貴士の縦パスをカットし、勢いそのままに持ち運び、際どいミドルシュートを放った。
「パスカットして得点の確率が高い選手にパスを出そうかなと思ったんですけど、誰かから『やり切れ』と言われたんで、思い切って打ちました。決めたかったですけど、ああいうのも決め切れる選手になりたい」
前向きにボールを奪いに行く。どちらのプレーも木山隆之監督が求める強気な守備対応だが、自分の背後のスペースを恐れていては選択が難しいプレーでもある。だが、工藤はJ1でのトライアンドエラーによって背後のスペースを管理できるようになり、「前に出て行っても大丈夫」という確信を自分自身で持ち、強気かつ的確な守備対応を身につけたのだ。
2025シーズンの閉幕を告げるホイッスルが鳴った後、「全然勝てていなかったんで、自分がスタートから出て勝つことができたのは率直にうれしいです」と11試合ぶりの勝利に安堵したものの、満足はしていなかった。
「僕自身のプレーにはミスもありました。そこは悠悟くんも注意してくれましたし、僕も満足していない。悠悟くんと一緒に出て勝てたことは良かったですけど、自分としては全然満足できる内容ではなかったんで、オフシーズンでもしっかりと進化して、また来シーズンも頑張りたいです」
2025年12月29日、岡山への期限付き移籍期間の延長が発表された。2026シーズンも、工藤は立田からたくさんのことを学びながら、さらなる成長を追い求めていく。
取材・文=難波拓未
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6日、明治安田J1リーグ第15節の名古屋グランパスvsファジアーノ岡山が豊田スタジアムで行われた。
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2025.05.06 16:56 Tue
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なぜファジアーノ岡山は1ー2の敗戦でも熱狂したのか?江坂任が終了間際に決めた“意地の一発”が持つ価値
最後の最後に意地を見せた。 90+5分、工藤孝太が力を振り絞って左サイドを駆け上がり、ウェリック・ポポのパスを受けて左足でクロスを蹴り込む。ボールが鋭い軌道でゴール前に飛んでいく。両チームの選手は試合終盤で足が重く、ボールウォッチャーになっていた。しかし、ただ1人だけボールに合わせて足を動かし続けていた選手がいた。ファジアーノ岡山の江坂任である。 腕章を巻いた背番号8は相手DFの間に立ってフリーの状況を作ると、飛び出してくるGKよりも先にボールに反応。走り込みながらヘディングシュートを叩きつけるようにして流し込んだ。 「ゴール前に行かないといけない中で、(途中出場の)ポポが流れたりしながら起点になってくれていたんで、逆に自分がゴール前に入っていかないといけないなと感じていた。うまく入れたと思うし、孝太もすごく良いボールをくれた。タイミングと入り方が良かったんじゃないかなと思います」 ネットが揺れた瞬間、記者席の前にはファジレッド一色の光景が広がった。スタンドから祈るように戦況を見つめていたファン・サポーターが一斉に立ち上がる。タオルマフラーが魂を宿したかのように暴れまくる。赤色に輝くペンライトが天を向いて己の存在を主張する。破裂音に近い歓声が発生し、JFE晴れの国スタジアムは歓喜という名の情熱を放出した。 残り時間は1分あるかないか。なおかつ0-2を1-2にしたゴールである。引き分けにして勝点1を獲得するゴールではない。だが、スタジアムは「よくやった」ではなく「ここからだ」という気迫で溢れかえっていた。 最後まであきらめない。それはこのクラブの文化であり、伝統だ。ピッチに立つ選手だけでなく、チームを導いてきた監督やコーチングスタッフ、クラブをゼロから作ってきたフロントスタッフ、どんな時も寄り添い励ましながら心を一つに共に戦ってきたサポーター。関わる全ての人たちが紡いできたものである。さらに、2013年の(当時J2)アウェイ神戸戦は84分と85分に連続得点を奪い、90 + 3分にもゴールを決めて、0-3から3-3に追いついた試合だった。受け継いできたものが、7月20日に憑依していた。 その後のラストプレーで、岡山の選手たちが一心不乱にゴールに向かっていく。その一挙手一投足に爆音の歓声と拍手が起こり、最後まで全員で戦った。 結果的には1-2での敗戦となり、勝点は獲得できなかった。だが、試合後にサポーターは挨拶する選手をスタンディングオベーションで迎えていた。力の差を見せつけられる悔しい試合にはなったが、J1連覇中の神戸から奪った1点は非常に大きな価値がある。 「今日われわれは力が及ばなかったと思います。でも、選手たちは自分たちの力を全て出そうと思って戦ったのは間違いないこと。最後に自分たちが1点を取れたことに対して、もしファン・サポーターの人たちが『次もっと頑張れよ』というスタンスで選手たちを後押ししてくれるのであればうれしいし、また頑張って戦っていきたいというふうに思えるので、本当にありがたい」(木山隆之監督) 試合後ミックスゾーンに現れた江坂は凛とした表情で、意地の一発を呼び込んだ残り15分の戦いの重要性を語ってくれた。 「やっぱりああやってゴールを目指すところを(ファン・サポーターには)求められていると思うし、それが自分たちの良さでもある。ボール保持というよりも、ああやってゴールに、ゴールに。前に前に行って、追い越していくところは、自分たちがやりたいことでもあるし、サポーターも見たいことではあると思う。そこから点が取れた。追いつけなかったし勝てなかったですけど、そういうのをやっぱり試合を通してやれればなと思います」 神戸が中3日の連戦だったことや終盤で運動量や強度が落ちたことに加え、2点差があったからこそ押し込めた面もあったが、「残り15分で真ん中が(佐藤)龍(之介)と(宮本)英治の3人になった時にボールが少し回り始めた。やっぱりああいう時間を前半あるいは後半のスタートくらいから出せれば、チャンスはもう少し作れたかなと。少し遅かったと感じたので、修正を試合中に早めにできれば良かった」という気づきを得ることができた。 川崎製鉄株式会社水島サッカー部にルーツを持つ神戸との“J1での川鉄ダービー”は2連敗となった。だが、諦めの悪い人たちが生んだ終了間際のゴールと熱狂。最後にパンチを食らわせた“弟”が悔しさの中で“兄”からもぎ取ったものは、計り知れないほど大きい。 取材・文=難波拓未 2025.07.23 17:00 Wed4
岡山、浦和からDF工藤孝太を育成型期限付き移籍で獲得!「勝利に貢献できるように日々の練習から精進していきます」
ファジアーノ岡山は5日、浦和レッズからDF工藤孝太(21)を育成型期限付き移籍で獲得した。移籍期間は2026年1月31日までで、浦和との公式戦には出場できない。 工藤は浦和の育成育ちで、2021年にトップチームへ二種登録されると、2022年に正式昇格。その後、2023年に藤枝MYFC、2024年にはギラヴァンツ北九州へ育成型期限付き移籍。 北九州で迎えた2024シーズンは、J3リーグで36試合に出場し2得点を記録し、J3優秀選手賞にも選出された。 J1初昇格の岡山へ活躍の場を移す工藤は、3クラブそれぞれでコメントしている。 ◆ファジアーノ岡山 「ファジアーノ岡山に関わる全ての皆さま。2025シーズン、ファジアーノ岡山でプレーさせていただきます、工藤孝太です。ファジアーノ岡山に強い覚悟を持って来ました。このチャンスをくださったファジアーノ岡山への感謝の気持ちを忘れず、ファジアーノ岡山のために全身全霊で戦い、勝利に貢献できるように日々の練習から精進していきます。そして、チームとともに大きく成長する1年にします。よろしくお願いします」 ◆浦和レッズ 「浦和レッズを愛する全てのみなさま。いつも熱い応援ありがとうございます。2025シーズンは育成型期限付き移籍という形でファジアーノ岡山でプレーすることを決断しました」 「ギラヴァンツ北九州ではプロになってから初めてシーズンを通して試合に出続けることができました。そして成長を実感でき、自信も得ることができた1年間でした。ただ、浦和レッズでプレーするには上のカテゴリーで経験を積み、もっと成長する必要があると感じました。ファジアーノ岡山でも自分自身と向き合い2024シーズンの自分よりも成長できるように覚悟をもって精進し続けます」 ◆ギラヴァンツ北九州 「ギラヴァンツ北九州に関わる全ての皆様。1年間本当にありがとうございました。去年、ほとんど試合に出ていなかった自分をギラヴァンツ北九州は僕を信じて拾ってくれました。その恩を返したいという思い、ここで自分の価値を示さなければ後がないという危機感、このチームで昇格したい、色々な思いを持って1年間闘いました」 「初めて北九州の応援を感じた開幕戦のバス待ちでは北九州の応援はかっこいいなと思いましたし鳥肌が立ちました。勝ち帽子が生まれることになったきっかけのアウェイ今治戦では、雨の中にも関わらず多くのサポーターがホームのような雰囲気を作って僕たちの背中を押してくれたのを覚えています」 「初めての個人チャント。ギラフェスでの勝利したあとにサポーターと一緒に歌ったGLORIA。僕をターゲットに選び続けてくれたおかげでJリーグ初ゴールを決めることができたホーム岐阜戦。振り返ると色々な人に支えられていたんだなと感謝しかありません」 「また、北九州は住みやすく、人も温かい方ばかりで本当に恵まれた北九州での1年間でした。ギラヴァンツ北九州、北九州の街が大好きになりました。 北九州での日々は僕の財産です」 「北九州を離れるのは寂しいですが、この先のサッカー人生を考えた時により厳しい環境でプレーすることが必要だと考え、この決断をしました。これからも簡単な道ではないですが北九州で得た自信や経験を活かしてこれからも努力を続けたいと思います。そしてギラヴァンツ北九州が今年果たせなかったJ2昇格を来年こそは果たせると信じています。1年間本当にありがとうございました」 2025.01.05 10:50 Sun5
U-18日本代表候補が発表! 鳥栖のDF中野伸哉やU-20でもプレーしたMF中村仁郎やMF甲田英將ら
日本サッカー協会(JFA)は10日、U-18日本代表候補メンバーを発表した。 今回発表されたメンバーは、「IBARAKI Next Generation Match 2021」に参加するチーム。トレーニングキャンプを行ったのち、18日に鹿島アントラーズユース、19日にU-20 ALL IBARAKI、U-20関東大学リーグ選抜のどちらかと、3位決定戦か決勝で対戦する。 船越優蔵監督が率いるチームには、高体連からは来季のFC町田ゼルビア加入内手が決まっているGKバーンズ・アントン(大成高校)のみが参加。あとは、U-20日本代表としてもプレーしたMF中村仁郎(ガンバ大阪ユース)、MF甲田英將(名古屋グランパスU-18)らJリーグクラブのユース選手と、JFAアカデミー福島U18のDF松田隼風となった。なお、内田篤人ロールモデルコーチも参加する。 トレーニングキャンプは13日からスタート。大会終了の19日までの活動となる。 今回発表されたU-18日本代表候補メンバーは以下の通り。 ◆U-18日本代表候補メンバー GK バーンズ・アントン(大成高校) 春名竜聖(セレッソ大阪U-18) DF 工藤孝太(浦和レッズユース) 菊地脩太(清水エスパルスユース) 中野伸哉(サガン鳥栖U-18) 貫真郷(大宮アルディージャU18) 松田隼風(JFAアカデミー福島U18) 田中隼人(柏レイソルU-18) MF 豊田晃大(名古屋グランパスU-18) 吉田温紀(名古屋グランパスU-18) 中村仁郎(ガンバ大阪ユース) 甲田英將(名古屋グランパスU-18) 藤原健介(ジュビロ磐田U-18) 山崎太新(横浜FCユース) 安部大晴(V・ファーレン長崎U-18) 福井太智(サガン鳥栖U-18) 北野颯太(セレッソ大阪U-18) FW 千葉寛汰(清水エスパルスユース) 真家英嵩(柏レイソルU-18) 坂本一彩(ガンバ大阪ユース) 2021.12.10 17:40 Friファジアーノ岡山の人気記事ランキング
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山根永遠がファジアーノ岡山にもたらすものとは? 「多彩な球種は福森晃斗が認めるほど」横浜FC番記者が明かす“トリセツ”
12月17日、横浜FCの山根永遠がファジアーノ岡山に加入することが発表された。J1昇格の歓喜も、残留争いの苦しみも知る彼の移籍リリースには、横浜FCサポーターからたくさんの「ありがとう」をはじめ別れを惜しむ声が集まった。そして、岡山のサポーターは活躍を期待している。山根永遠とは、どんな選手なのか。編集部に所属しながら岡山の番記者を務める難波拓未が、横浜FCの番記者である青木ひかるに“取扱説明書”を教えてもらった。 <blockquote class="twitter-tweet"><p lang="ja" dir="ltr"><a href="https://twitter.com/hashtag/%E6%A8%AA%E6%B5%9CFC?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#横浜FC</a> の <a href="https://twitter.com/hashtag/%E5%B1%B1%E6%A0%B9%E6%B0%B8%E9%81%A0?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#山根永遠</a> が<a href="https://twitter.com/hashtag/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%8E%E5%B2%A1%E5%B1%B1?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#ファジアーノ岡山</a> に完全移籍<br><br>「ファジアーノ岡山は<br>みんなで戦えるチームだと<br>試合を通して感じました。<br>みんなが全力で走るので<br>僕のプレースタイルと合いそうで<br>今からとても楽しみです」<br><br>2025年は <a href="https://twitter.com/hashtag/J1?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#J1</a> 30試合1得点3アシスト<a href="https://twitter.com/hashtag/fagiano?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#fagiano</a> <a href="https://t.co/aQ5JONmT8E">pic.twitter.com/aQ5JONmT8E</a></p>— 超WORLDサッカー! (@ultrasoccer) <a href="https://twitter.com/ultrasoccer/status/2001146006193496561?ref_src=twsrc%5Etfw">December 17, 2025</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> ■3つの武器『運動量・クロス・タスク遂行力』 難波「山根選手のピッチ内での武器を教えてください」 青木「まず一番に挙げたいのは、圧倒的な運動量とタフネスですね。ウイングバックとして90分間サイドを上下動できるスタミナはもちろんですが、スピードや強度が試合終盤まで落ちない選手です。さらに驚くのは『怪我への耐性』です。以前、全治に1カ月は掛かるだろうという怪我を負った時も、わずか2週間ほどでグラウンドに戻ってきたことがありました。驚異的なリカバリー能力は、試合数が多くなる2026年を戦う上で大きな武器になると思います」 難波「クロス数の多い選手ということですが、攻撃面はどうですか?」 青木「山根選手のクロスは、『質より量』のタイプです。右足を振る思い切りの良さが、チャンスを呼び込みます。ですが、蹴るだけでなく球種が豊富なんです。横浜FCで共にプレーしたキックの名手・福森晃斗選手(北海道コンサドーレ札幌への復帰が決定)も、山根選手のクロスの球種の多さは高く評価していました。DFとGKの間に素早く流し込むようなボールや、ファーサイドにふわりと落とすボールなど、カーブもストレートも蹴り分けられる選手です」 難波「福森選手も認めるほどなんですね!山根選手の積極的なクロス供給は大きなプラスになりそうです。守備面での不安はありませんか?」 青木「1対1の強度は高く、試合を通しても大崩れしている印象はありません。特に『特定のタスク』を与えられると強いですね。FC町田ゼルビアとの対戦時は、『今日は相馬(勇紀)を完璧に抑えろ』と任されたんですけど、完璧に役割を遂行してみせました。責任感が強く、任された仕事に全力で取り組む時の集中力の高さは圧巻でした」 難波「岡山はマンツーマンで対応することが多いので、特にウイングバックの選手はマッチアップする相手が明確になりやすい。木山隆之監督の求める守備の規律も、役割が明確であれば高いレベルで応えてくれそうですね」 ■ハロウィンで1人コスプレするほど超ムードメーカー 難波「岡山の加入リリースには『移籍は毎回緊張しますが』とありましたが、人見知りだったりするんですか?」 青木「あ、あれは最初だけです(笑)。馴染んでしまえば、完全なムードメーカーですよ。練習中は基本的に明るいテンションで前向きに取り組みますし、チームメイトとわちゃわちゃしている姿もたくさん見てきました。四方田修平前監督が『永遠がうるさい』と笑いながら言っていることもあったんですけど、愛嬌があって可愛がられる選手だと思います。新加入選手には気さくに声を掛けて、チームに馴染みやすいように働きかけていました。また、チームが連敗して雰囲気が沈んだ時、1人でハロウィンのコスプレをして練習場に現れたこともありましたね」 難波「それは岡山にとって貴重な存在ですね。現ムードメーカーの木村太哉選手との化学反応も楽しみです」 青木「奥様が非常に協力的で社交的なところも、山根選手が岡山に溶け込むことを助けてくれるんじゃないかなと思います。食事のサポートでコンディション面がすごく向上しただけでなく、奥さん同士など家族ぐるみの付き合いも活発だったようで、チームの結束を強めようとしてくれていたのかなと。山根家そのものが、チームのコミュニケーションを底上げするような存在でした。横浜FCのファン・サポーターが移籍を惜しんでいるのは、プレーはもちろん、その『人間性』に惹かれていたからだと思います」 難波「山根選手は、現在岡山でコーチを務める大槻毅さんを『お父さん』のように慕っているんですよね?」 青木「そうなんです。大槻さんとはプライベートでも交流があるそうで、彼がサッカー人生で壁にぶつかった時に導いてくれた恩義を感じているようです。過去の対戦時には、大槻さんに山根選手のお子さんを抱っこしてもらったり、本当の家族のような付き合いです。今回の決断には大槻さんの存在が大きかったと思います」 ■岡山とマッチする、ひたむきさと純粋さ 難波「それは岡山サポーターにとっても胸が熱くなるエピソードです。岡山での展望ですが、柳貴博選手の退団が決定していて、本山遥選手はヴィッセル神戸から期限付き移籍で加入していたので、山根選手は右ウイングバックがメインになりそうです」 青木「左ウイングバックでもプレーできますが、シーズン前にサイドを決めて『ここが自分の仕事場だ』と自信を持ってタッチラインを駆け上がる状態を作れれば、とても大きな力を発揮します。横浜FCでは左サイドでのパスワークで相手を引きつけ、右サイドでフリーの山根選手がクロスを上げるパターンが効果的でした。また、シャドーやボランチとのパス交換から抜け出したり、タイミングの良いオーバーラップやワンツーで深い位置に切れ込むプレーを武器としていました。ただし、非常に繊細な一面もあり、チームが勝てない時は責任を感じて深く落ち込んでしまうこともある。そんな時にサポーターが温かく背中を押してあげれば、彼は何度でも立ち上がって走り出します」 難波「岡山としては、彼のスピードを活かして相手のラインを下げさせ、守備でも前からハメに行くスタイルでそのスプリント力を活かしたい。何より、彼のひたむきさは岡山の雰囲気に間違いなくマッチします」 青木「最後に、山根選手をよろしくお願いします。彼はのびのびとプレーしている時が一番強い。言葉足らずで誤解を招くこともあるかもしれませんが、それは山根選手が『純粋』で『一生懸命』だからこそ。横浜FCでも、主力としてチームのJ1昇格にも貢献した素晴らしい選手です」 難波「任せてください。岡山のサポーターは、ひたむきに走る選手が大好きですから。不器用なところも丸ごと愛して、彼を乗せてあげたいですね。山根選手の熱量とJFE晴れの国スタジアムが共鳴すれば、チームもさらにパワーアップするはずです。2026年、岡山の右サイドを駆け上がり、満面の笑みでサポーターの元へ駆け寄る姿を見られることが楽しみです」 ■編集後記 運動量やスプリント力に優れている選手だと認識していましたが、福森晃斗選手がクロスについて認めているとは驚きでした。実は、ファジアーノ岡山は2024シーズンに横浜FCとの対戦で、福森選手に1試合3アシストを記録されているんです。“天敵”とも言える選手からのお墨付きは、山根選手への期待を膨らませるものでした。さらに、岡山のウイングバックは、マンツーマンディフェンスを採用していることから対面の相手選手に1対1で負けない、勝っていくという対人守備の強さを求められます。その点において、2025年に1試合で1ゴール1アシストを記録されたFC町田ゼルビアの相馬勇紀選手を封じ込めるほどのパフォーマンスを発揮していた事実も心強い。チームにピッタリな選手という印象が強まりました。ファジレッドに身を包み、JFE晴れの国スタジアムのサイドを駆け抜ける姿が楽しみで仕方ありません! 取材・文=難波拓未 2025.12.23 19:30 Tue2
煌めいた左足と越えられなかった壁。ファジアーノ岡山・加藤聖が長友佑都との対決で固めた決意
「チームが勝てていない状況で自分が出て勝てれば、大きなアピールになると思っていたんで、本当に今日に懸ける思いは強かった」 明治安田J1リーグ第35節でファジアーノ岡山はFC東京と対戦。契約の都合により出場できないMF佐藤龍之介に代わり、左ウイングバックで先発に名を連ねたのはMF加藤聖だった。第33節のアルビレックス新潟戦では先発フル出場し、佐藤がFIFA U-20ワールドカップ(W杯)から戻ってきた前節のセレッソ大阪戦では出番なし。5歳下の後輩とのポジション争いにおいて、非常に大事な一戦に覚悟を持って臨んだ。 前半はFC東京にボールを握られる展開だったが、岡山は[5-4-1]と[4-4-2]を使い分け、左右の揺さぶりに対応していく。加藤も最終ラインに下がり逆サイドからのクロスをケアしながら、マッチアップの日本代表DF長友佑都に強くアプローチ。チームとしても個人としても良い形でボールを奪う場面も作った。 しかし、岡山の攻撃が活性化しない。「良い形で取った後の1本目が繋がらない。それが攻撃の波を作れない原因。慌てず一度持つ、そういう選択肢も入れないといけない」と加藤も反省を口にした。 マイボールの時間が作れないということは、加藤がタッチラインを駆け上がる時間がないことを意味する。正確かつ鋭い左足のキックを武器に持つ背番号50は、自らのドリブルで相手を突破したり局面を打開するよりも、シャドーやボランチとのパス交換でマークを外しながら深い位置まで進入していく形を得意としている。左足の一振りで決定機を作れる場所に、自分自身を持っていくことができなかった。 特徴を生かしにくい展開ではあったが、20分に伝家の宝刀を振り抜く状況を自ら作る。相手陣内の左サイドでFW一美和成がこぼれ球に反応すると、スペースに転がったボールに加藤がいち早く反応。MF小泉慶に足を引っ掛けられて、FKを獲得した。 キッカーは、加藤。両手で丁寧にボールを置き、軸足を何度も踏み込んでぬかるんだピッチを確認し、呼吸を整えてから左足を振り抜く。鋭いカーブの掛かったボールは小泉と長友の間を通過し、急減速してニアに飛び込んだMF江坂任の右足にピタリと届いた。 「雨だからとか言い訳はできません。キッカーである以上、どんな状況でも良いボールを蹴れないといけないので」 シュートは相手GKの好セーブに防がれたが、我慢強く戦う前半における最大の決定機は、相手に守備の機会を与えないほどの精度を持つ加藤の左足にしか作れないものだった。 後半開始早々に先制点を許してからFC東京が自陣に引いたため、岡山はパスを繋げて相手ゴールに向かっていく。左サイドでコンビを組むDF鈴木喜丈と江坂のところからは効果的な前進の回数を増やすも、加藤は長友の壁を越えられない。背後のスペースを突き、相手を置き去りにしてクロスを上げるシーンをあまり作れず。タッチライン沿いで相手のマークを引きつけパスワークに加わった結果、味方を押し出すことはできていたが、前半に希望と可能性を示した左足は影を潜めた。 スタートから送り出した木山隆之監督は、試合後の会見で「やっぱりもっとやらないと。攻守に悪くないけど、もっと期待しているんで。対面している長友選手は代表選手だけど39歳。聖は24歳。いろんな駆け引きや技術的なところで敵わなかったとしても、もっとアクティブに、もっと相手に向かっていってやってほしいという思いは、彼には常々持っているんで。技術だけじゃなくて、そのメンタリティーの部分とか闘争心の部分でもっと求めたいと思っていますし、やってほしいです」と期待しているからこその厳しい評価を口にした。 71分にMF柳貴博との交代で逆サイドのタッチラインからピッチを出ると、ベンチに戻る足取りは重く、顔も下を向いていた。その後、チームは同点に追いつくも、後半終了間際に2失点を許して1-3で敗戦した。 「自分が出ている時間で勝ち越しまで持っていきたかったし、フルで出たかったという思いもありますけど、とにかく与えられた時間で自分が何かを残したかったという気持ちがあったので、悔しかった」 長友というレジェンドを相手に圧倒的な活躍を示すことができていれば、佐藤を再びシーズン序盤にプレーしていた右サイドに追いやることにも繋がったかもしれない。「前半はうまく守れたというか、自由にさせないことはある程度できた」と、課題として取り組んでいるタイトに守る部分で一定の手応えを得られていたからこそ、攻撃面で圧倒的なものを出せず、巡ってきたチャンスを生かしきれなかったことに悔いが残る。 今シーズンは残り3試合。次節は佐藤も元気な状態でピッチに戻ってくる。だが、加藤の心は折れていない。 「日本サッカーのレジェンドと言える選手とのマッチアップも楽しみだったし、ここを抑えて上に行きたい気持ちもあった。もっと成長して、次はぶち抜けるように頑張りたいです」 試合後の取材で何度も口にした、“ぶち抜く”。マッチアップの相手選手を突破し、置き去りにし、サイドを制圧する。その言葉を体現するプレーを待っているし、「加藤聖ならできる」と信じている。 取材・文=難波拓未 2025.10.27 20:00 Mon3
「末吉祭り」ファジアーノ岡山の末吉塁がJ1初先発で躍動!『スタッツリーダー』総なめの活躍にファン大興奮
【明治安田J1リーグ】ファジアーノ岡山 0ー0 横浜FC(9月23日/JFE晴れの国スタジアム) ファジアーノ岡山のMF末吉塁が、J1初先発で圧倒的な存在感を放った。試合後にクラブ公式SNSが投稿した「スタッツリーダー」では6部門のうち4部門を獲得。「末吉祭り」と言わんばかりの活躍が、ファンの間で話題になっている。 <blockquote class="twitter-tweet"><p lang="ja" dir="ltr">本日のスタッツリーダー<br><br>シュート数: <a href="https://twitter.com/hashtag/%E5%B2%A9%E6%B8%95%E5%BC%98%E4%BA%BA?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#岩渕弘人</a><br>パス成功数: <a href="https://twitter.com/hashtag/%E6%9C%AB%E5%90%89%E5%A1%81?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#末吉塁</a><br>ドリブル数: <a href="https://twitter.com/hashtag/%E6%9C%AB%E5%90%89%E5%A1%81?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#末吉塁</a><br>チャンスクリエイト: <a href="https://twitter.com/hashtag/%E7%94%B0%E9%83%A8%E4%BA%95%E6%B6%BC?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#田部井涼</a><br>タックル数: <a href="https://twitter.com/hashtag/%E6%9C%AB%E5%90%89%E5%A1%81?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#末吉塁</a><br>こぼれ球奪取: <a href="https://twitter.com/hashtag/%E6%9C%AB%E5%90%89%E5%A1%81?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#末吉塁</a><a href="https://twitter.com/hashtag/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%8E%E5%B2%A1%E5%B1%B1?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#ファジアーノ岡山</a> <a href="https://t.co/55quVfUUX5">pic.twitter.com/55quVfUUX5</a></p>— ファジアーノ岡山スタッフ公式 (@fagiano_koho) <a href="https://twitter.com/fagiano_koho/status/1970444009559781453?ref_src=twsrc%5Etfw">September 23, 2025</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> J1第31節で岡山は、横浜FCと対戦。昨シーズンのJ1昇格プレーオフの決勝戦でゴールを決めた末吉は、ここまで負傷の影響によって出番をほとんど得られていなかった。しかし、左ウイングバックの位置で今シーズン初先発すると、自身の持ち味を思う存分に発揮した。 15分、相手陣内での鋭い出足でクリアボールをカット。ヘディングでFW岩渕弘人に預けると、そのままサイドを抜け出す。前方のスペースを指で差してボールを要求し、ワンツーの形でボールを引き取る。勢いそのままにペナルティーエリアの左に潜り込み、マイナスに折り返してCKを獲得した。 その1分後には、相手選手に身体をつかまれながらも、強引にターン。後ろからスライディングを受けて倒れそうになりながらだったが、踏ん張ってえぐるように突破した。際どいクロスボールを供給した。 23分にも左サイドを縦に突破。完全に止まった状態から一気にトップスピードに達するような緩急をつけたドリブルで切れ込み、左足でマイナス方向にクロス。これをFW木村太哉がスルーし、DF工藤孝太が反応する。シュートは打てなかったが、相手ディフェンスを慌てさせるチャンスを作り出した。 後半も左サイドで上下動を繰り返し、守備では横浜FCの右サイドに決定的な仕事を許さず、攻撃では深い位置に切れ込んでいった。 79分にMF柳貴博と交代でピッチを退くまで、積極的な仕掛けや粘り強く集中した対人守備といった持ち味を余すことなく発揮した。 試合後のクラブ公式Xによると、パス成功数、ドリブル数、チャンスクリエイト、タックル数、こぼれ球奪取の4部門でチームトップの数字を記録していた。 完全復活を印象づけた活躍に、ファンもSNS上で反応。「末吉さんスタッツえぐ!こんな選手隠れてたんですか!!選手紹介のときの拍手が一際大きくて感動したのだよ」「末吉だらけ!」「るいるいの日だ〜」「スタッツが示すとおり、J1の舞台でも末吉は昨年と変わらない働きが出来る事と、勝ち点1積み上げた事が今日の収穫。末吉の切り裂くドリブルには胸が躍りました!」「やっぱスタッツで見ても今日の末吉抜群に良かったんだ」「ルイくん圧巻のパフォーマンス、待ってたぞ」「相手のペナルティエリアに侵入して行く動きは得点のにおいがしてた。頼もしかった」「フルタイム出場でなかったにもかかわらず、STATS LEADERSの4項目に顔を出す塁くん!」「キレキレだったね!」「末吉さんの元気なプレーが見られて嬉しかった」「あの生き生きとした塁くんがピッチに戻って来てくれた!!」「ルイルイくんはたしかに光ってたなぁ」「末吉祭り」「次節以降も期待だ」「末吉劇場やん」と興奮している。 圧巻のパフォーマンスを見せた背番号17はJリーグ公式コメントによると、「チームとしても3連敗をしていてすごく苦しい状況だったんですけど、こういったときにチャンスを与えてもらって、まずは自分たちの今までやってきたベースをしっかりと出そう、みんなで戦う姿勢をまず見せようということを確認して臨みました。そこはしっかり出せたかなと思います。このベースがあって、プラスα攻撃の質を上げていきたいなと思います」と総括。「自分の仕掛けていく前への推進は、いまいるウイングバックの誰よりもあると思っているので、そこをまず見せたかったし、強く守備をして目の前の相手に負けないところも自分の良さだと思うので、そこはしっかり出せたかなと思います」と手応えを感じているようだ。 木山隆之監督も「本当にすごかったです。彼は今年ケガをして、なかなかピッチに帰ってこられない時間があって、ピッチに帰ってきてからも途中交代で2回短い時間で出たことはあったけど、(佐藤)龍之介もいるし、(加藤)聖もいて、出番がなかった中、今日に懸ける思いとか、J1でプレーする意味とか、そういうのを本当に感じさせてくれるプレーをしてくれた。プレーのクオリティーだけじゃない価値をピッチの中で見せてくれたので、本当に素晴らしかったと思います」と称賛した。 試合はスコアレスドローに終わったが、末吉の今後の活躍に目が離せない。 2025.09.24 19:00 Wed4
2025シーズンのホームグロウン制度、14クラブが不遵守も罰則なし…最多はFC東京の15名
Jリーグは22日、各クラブの2025シーズンのホームグロウン選手の人数を発表した。 ホームグロウン制度は、各クラブが選手育成にコミットし、アカデミーの現場を変えていくことを目的に導入したもの。12歳の誕生日を迎える年度から21歳の誕生日を迎える年度までの期間において、990日以上、自クラブで登録していた選手が対象となる。 期限付移籍の選手は、移籍先クラブでの登録となり、21歳以下の期限付移籍選手の育成期間は、移籍元クラブでカウント。JFA・Jリーグ特別指定選手は、ホームグロウン選手とはみなされない。 2025シーズンに関しては、J1のクラブは4名、J2・J3のクラブは2名以上と定められている中、14クラブが不遵守となっており、昨シーズンから2クラブ増えることとなった。 明治安田J2リーグではいわきFCと藤枝MYFCが昨シーズンに続いて「0人」、明治安田J3リーグではヴァンラーレ八戸、福島ユナイテッドFC、栃木シティ、SC相模原、FC大阪、高知ユナイテッドSC、テゲバジャーロ宮崎が「0人」、ザスパ群馬、FC岐阜、奈良クラブが「1人」となっている。 これまで不遵守となったクラブは、翌シーズンのプロA契約選手の「25名枠」から不足人数分減じられることとなっていたが、2026シーズンからはプロ契約の区分が撤退されるため、処分はない。 なお、全部60クラブで最も多くホームグロウン選手を登録しているのはFC東京で15名。続いて13名の鹿島アントラーズとサンフレッチェ広島、12名の柏レイソル、11名の川崎フロンターレ、RB大宮アルディージャと続いている。 <h3>◆明治安田J1リーグ(合計160人)</h3> 鹿島アントラーズ:13人 浦和レッズ:7人 柏レイソル:12人 FC東京:15人 東京ヴェルディ:9人 FC町田ゼルビア:4人 川崎フロンターレ:11人 横浜F・マリノス:9人 横浜FC:4人 湘南ベルマーレ:8人 アルビレックス新潟:7人 清水エスパルス:7人 名古屋グランパス:5人 京都サンガF.C.:8人 ガンバ大阪:8人 セレッソ大阪:7人 ヴィッセル神戸:6人 ファジアーノ岡山:2人 サンフレッチェ広島:13人 アビスパ福岡:5人 <h3>◆明治安田J2リーグ(合計83人)</h3> 北海道コンサドーレ札幌:8人 ベガルタ仙台:4人 ブラウブリッツ秋田:2人 モンテディオ山形:4人 いわきFC:0人 水戸ホーリーホック:1人 RB大宮アルディージャ:11人 ジェフユナイテッド千葉:5人 ヴァンフォーレ甲府:7人 カターレ富山:2人 ジュビロ磐田:6人 藤枝MYFC:0人 レノファ山口FC:2人 徳島ヴォルティス:3人 愛媛FC:3人 FC今治:2人 サガン鳥栖:7人 V・ファーレン長崎:5人 ロアッソ熊本:4人 大分トリニータ:7人 <h3>◆明治安田J3リーグ(合計40人)</h3> ヴァンラーレ八戸:0人 福島ユナイテッドFC:0人 栃木SC:3人 栃木シティ:0人 ザスパ群馬:1人 SC相模原:0人 松本山雅FC:9人 AC長野パルセイロ:3人 ツエーゲン金沢:2人 アスルクラロ沼津:8人 FC岐阜:1人 FC大阪:0人 奈良クラブ:1人 ガイナーレ鳥取:2人 カマタマーレ讃岐:2人 高知ユナイテッドSC:0人 ギラヴァンツ北九州:4人 テゲバジャーロ宮崎:0人 鹿児島ユナイテッドFC:2人 FC琉球:2人 2025.04.22 22:10 Tue5
