プロサッカー選手が児童養護施設の子供たちの未来を支援…『F-connect』が新たな試みをスタート
2024.02.07 19:00 Wed
「フッドボールで繋げる、フッドボールが繋げる」をコンセプトに、子供たちを支援する活動に取り組む、Jリーガーたちが新たな試みをスタートさせている。Jリーグが通称“シャレン!(社会連携活動)”という、Jリーグを中心にスポーツだけでなく、様々な地域の課題を、社会という視点・物差しから連携し、豊かなまちづくりに貢献するための活動に取り組んでいるなか、プロサッカー選手の有志による、児童養護施設の子供たちを支援する活動が行われている。
2015年に小池純輝(クリアソン新宿)、梶川諒太(藤枝MYFC)の2選手を中心に設立された一般社団法人『F-connect』は、野村直輝(大分トリニータ)、三鬼海(FC町田ゼルビア)、山崎浩介(サガン鳥栖)、松澤香輝(ベガルタ仙台)、神田夢実(標準流浪/香港)、佐藤凌我(アビスパ福岡)という男子の現役選手。小林海青(SSDナポリ/イタリア)、村松智子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)、西村清花(ディオッサ出雲FC)の女子現役選手、現役時代に横浜FC、FC琉球でプレーした新井純平が在籍。
“会いに行く”、“試合に招待する”、“また会いに行く”をコンセプトに、サッカー、フットボールを通じた児童養護施設の子供たちへの支援活動に取り組んでいる。
児童養護施設は全国に約600か所あり、保護者のいない児童や虐待されている児童、その他環境上養護を要する、主に1歳から18歳までの児童を養育し、自立のための援助を行うことを目的とする施設だ。
2015年に公私ともに親交がある梶川とともにF-connectの活動をスタートした小池は、「18歳で施設から自立しなければならないことも知らなかった」と語った児童養護施設への支援活動のきっかけを語った。
小池は浦和レッズでプロキャリアをスタートし、これまでザスパ草津(現ザスパクサツ群馬)、水戸ホーリーホック、東京ヴェルディ、ジェフユナイテッド千葉、愛媛FCで活躍。今シーズンからJFLのクリアソン新宿に活躍の場を移した。
そういったなか、2014年から2015年まで在籍した横浜FC時代の経験がF-connectの活動を決意させるものになったという。
「2014年ですね。横浜FCのスタッフの方から、ちょっとプライベートでお願いがあるという形で、その方が交流のあった鎌倉の施設でしたが、そこにちょっと顔を出してもらえないか、という依頼を受けました。プライベートだったので、当時梶川が湘南(ベルマーレ)にいて、よく会ったりもしていたので、カジを誘って初めて施設を訪問させていただきました」
「そのときはサッカー選手の“あるある”、だと思うんですけど、ちょっと地元の少年団に顔出してよとか、それぐらいの感覚での訪問でした。でも、自分たちが想像していた以上に歓迎していただいて、それも嬉しかったですし、一緒にやったサッカーも楽しかったです」
「その後に(横浜FCが本拠地とする)三ツ沢にも応援に来てくれました。僕はサイドのポジションをやっていて、試合内容とか関係なく90分間、『小池選手、頑張れ』っていう声がすぐそばでずっと聞こえていて、それがすごく嬉しかったです。やっぱりサッカーっぽくない応援はちょっと目立ちますし、違う感じでの応援がすごく心に残りました」
「そのシーズンオフに今度は僕ら発信で遊びに行かせてくださいという形で、12月だったのでサンタクロースみたいな格好をして、お菓子を自分たちで詰め合わせて持っていきましたが、小学2年生以下の子供たちだったので、正直忘れられちゃっているのかなという思いもありましたが、ちゃんと覚えてくれていて歓迎してくれて本当に嬉しかったです」
「そして、自分たちはサッカー選手なので、サッカーを通じて、子供たちが笑顔になれるきっかけとか、何か目標とか夢を持てるようなきっかけ作りができたらいいな、っていうふうにカジと話すようになって、翌年の15年にフットボールで繋げるとか、フットボールが繋げるっていうのをコンセプトにやろうっていうので、フットボール・コネクトの略で、エフコネクトと名前を付けて始めたっていうのが経緯です」
そのF-connectの活動においてはさまざまな支援の形があるなか、設立当初から現在に至るまで、直接的なふれあいや“経験”という部分を重視しているという。
「神奈川の別の施設に初めて行ったときに、外に出て一緒にボールを蹴ろうって声をかけましたが、最初にボールを蹴ってくれる子はサッカーが好きで、なおかつ積極的な2、3人だけで、他の子たちはその横で様子を見ているだけでした。ただ、やっていくなかで1人、2人とその数が増えていって、帰るころにはみんなが1個のボールを追いかけるみたいな感じで、それも嬉しかったです。また、帰りに職員の方に挨拶したときに、普段だったら絶対にサッカーをやってない子が一緒になってボールを追いかけて驚きました、ということを言ってもらえました」
「僕がサッカー選手だったから一緒に蹴ってくれたのか、それとも単に楽しそうだったから一緒に入ってくれたのかは分からなかったですが、何かそういう瞬間にアスリートの価値とか、スポーツの価値みたいなものを感じることができました」
「最初に活動を始めたときに支援の方法というか、いろいろ考えていたなかで、最初はボールを各施設に送ることを考えていました。ただ、もしかしたら、僕たちの気持ちだけで自己満で終わってしまうのではないかという部分もあったので、少し職員の方にこういう活動をしたくて、どういう関わり方が、子供たちにとっていいですか、というふうなご相談をさせていただきました」
「そのときに職員の方は、18歳で施設を出て自立しなければならない環境のなかで、なかなか夢とか目標を持ちづらい環境ですと、そのなかで小池さん、梶川さんは、サッカー選手という自身の夢を叶えられた人たちなので、そういう人と関わって、何か化学反応じゃないですけど、何か気持ちが変わってくれたりとか、何か夢とか目標を持ってもらえるようなきっかけになってくれたら嬉しいので、触れ合ってほしいっていうことをお聞きして、それで直接会うことを大切にしています」
「それこそ僕たちが行くことの価値と言いますか、僕らもアスリートの価値とか、スポーツの価値を気づかされる機会にもなりますし、もしかしたら子供たちに何か目標を持つきっかけになってもらえるっていう気持ちもあって、そういったふれあいが大切ではないかというふうに考えています」
その後、F-connectは神奈川県を中心に、各選手の所属クラブのホームタウンなど、各地で施設訪問、試合招待といった支援活動をスタート。
その活動において特徴的なのは、「人」としての人生を“歩みながら”「競技者」としての人生を歩むための『デュアルキャリア』という考えだ。
以前からアスリートのセカンドキャリアの問題が取り沙汰されるなか、F-connectでは児童養護施設の支援活動を通して、選手自ら訪問先へのアポイントメントやチケット手配、パートナー企業開拓のための営業など、選手自身のキャリアアップや現役引退後のキャリアにつながる活動を行っている。
サッカークラブにおいては選手が“円”の中心にいるなか、以前から新しい気づきや学びが少ないと感じていた小池は、F-connectの活動を「アスリートとビジネスマンの中間」と位置づけて捉えているという。
「最初はカジと2人で立ち上げて、最初にTシャツを作って、それを300枚作って販売しました。自分で梱包して発送しましたが、そういう作業とかも、ひと通り自分たちでやるっていうところを大事にしました」
「サッカークラブで言うと、チームを“円”にすると選手ってやっぱ中心にいて、コーチングスタッフやフロントスタッフ、サポーターの方もみんな選手の方を見てくださるので、極端な話、サッカーさえしていれば成り立ってしまう環境がそこにはあります。自分から“円”の外に出ていかないと、新しい気づきとか学びが少ないなっていうのは、感覚としてありました」
「この活動のなかで、自分が運営側に回ってTシャツを作るのもそうですし、イベントをやるのも自分たちで企画して、何が必要だとかを考えるようになった部分は、アスリートとビジネスマンの中間というか、選手だけではなかなか経験しないようなことを、一足先にそこで経験するところが自然とできているのかなっていうふうに思っています」
2015年の設立後、順調に活動を続けてきたが、2020年の新型コロナウイルスのパンデミック発生後は、施設訪問、試合招待というメインの活動が困難な状況に。この間にオンラインでの交流などを続けていたものの、初めて停滞期を迎えることになった。
そういったなか、2021年には『プロサッカー選手がつくる畑で児童養護施設の子ども達と泥んこになりたい』をテーマに、長野県飯綱町にて農業体験を目的とした『エフコネファーム』をスタートすることになった。
以前から農業に関心があり、愛媛FC時代には畑を借りて農業体験を経験していた小池は、命を育てることの重みや地域とのつながりを含めて新たなチャレンジの意義を語る。
「元々、ちょっと農業に興味があって愛媛FCのときには、知り合いの方の畑をお借りして野菜作りをしていました。基本的にはそこの方々に管理をお願いして要所で一緒に作業させていただく形でしたが、収穫までの過程を経験しながら大根とかほうれん草とかを収穫できました。スーパーで売っているようなまっすぐな大根ではなくて、何か足が何本もあるような、ちょっといびつな形のものが取れましたが、自分にとってスーパーで売られている大根とは全然違う価値が出て、その過程に関わっていたりとか、成長していく様子を見ていたというだけで、次元が違うものになるという経験ができました」
「あと畑に行くたびに管理してくださっている方の隣の家の方とバーベキューをしたりとか、地域の方との交流があって、それもすごく楽しくて、何かエフコネクトでもそういう場作りと言うか、何か子供たちが経験したり体験したりするような場を作れないかな、というふうに思うようになりました」
「そういったときに長野の方でサポートいただける方がいて、僕自身も父親が長野県出身で、毎年のように遊びに行っていたので、その空気感とか景色とかっていうものに馴染みがありました。最終的に現地に行かせていただいて、ゆかりのある長野の地でそういう活動ができたらな、という形でした」
「なかなかコロナのときとかは間が空いてしまったりとか、オンラインでの交流をした施設もありましたが、よりオフラインで会うことの価値みたいなものがすごく高まった感じもしていましたし、これまでそんなに頻繁に会えたわけではないですけど、交流してきたなかで少しずつ子供たちとの信頼関係も築けているというのは感じてもいました。そういったなかで子供たちが実際に長野に遊びに来てくれました」
「一昨年は新井純平が1泊2日の農業体験を一緒にできましたが、昨年はスケジュール的に選手がちょっと行けなさそうな状況でしたが、僕らがいなくても大丈夫です、という感じで、選手がいないなら行かないじゃなくて、農業体験自体を楽しみにしてくれている子供たちがいるっていうところは嬉しい部分でした」
「子供たちの反応とかは職員の方からも伺ったりしていて、普段食べているトウモロコシとかはカットされて茹でられているものですが、自分たちで畑から収穫してその場で食べるとていう経験をしたことがある子は、おそらくいなかったと思います。そして、収穫から食べるところとか、バーベキューをしている姿を写真で見ると、本当に嬉しそうに感じましたし、楽しんでくれていたっていう話も聞いたので良かったです」
そのエフコネファーム創設から3年を経て、2024年春には「プロサッカー選手がつくる農業体験宿泊施設に児童養護施設の子ども達を招待したい!」をテーマに、エフコネファームのある飯綱町に子供たちが泊まれる宿泊施設「エフコネベース」をオープンさせることが決定した。
小池と梶川とともに理事を務め運営面を担う沼澤つとむさんの長野への移住によって、これまでは夏休みや2カ月に1度といったようにスポット的に子供たちと農業体験を実施してきた。そして、その活動をより定期的に継続的に実施していくなか、エフコネベースは拠点としての役割を担う。
さらに、地元コミュニティとの交流の活発化、児童養護施設以外の子供たちや企業の福利厚生といった部分での農業体験、研修といった新たな試み、将来的には施設出身者が管理者や運営者として活動に携わっていくことも視野に入れている。
パートナー企業のサポートによって古民家を購入・リフォームし、物件準備が進む一方、宿泊施設として機能させるために家具・家電・布団などの室内設備を揃える必要があり、2024年1月5日(金)~同2月11日(金)の期間を通じてクラウドファンディングが実施されている。
「昨年、一昨年でいうと宿泊費とかも、やはり人数分かかってしまいますし、なかなか『またすぐおいでよ』、っていうふうに言えなかった部分が、エフコネベースを作ることで、かなり気軽に子供たちが来られる状況を作れると思います。そういう意味では他の施設に新たに連絡をさせていただいたりとか、体験機会を増やせるのではないかと考えています」
「もちろん僕らが行ったときに泊まれたりとか、ベースを起点にいろいろなことができるのではないか、というところですね。あとは地元の方との交流もできると思いますし、地元でのイベントだったりとか、農業体験、研修とか、そんなものもできると思いますので、かなり幅は広がるのではないかなという期待をしています」
2021年にエフコネファームのプロジェクトをスタートした際にも実施したクラウドファンディングに関しては、当然のことながら資金調達がメインではある。ただ、そのクラウドファンディングを通じて新たに自分たちの活動を知った人たちの支援の輪の広がり、常日頃から賛助会員として活動を支援している既存の協力者の人たちに、より一層その支援の意義を再認識する契機にしたいとの考えもあるという。
「2021年にエフコネファームを作ったときにもクラウドファンディングをやらせていただきましたが、ご支援いただいた方たちにはご自身が支援したものが、子供たちの活動につながっているんだというふうに思ってもらいたいですし、そういう方がたくさん増えてくると、また違った関わり方ができると考えています」
最後に、小池はまもなく10年目を迎えるF-connectの今後について語った。
「やっぱりスポーツの価値に気づかされたっていうのはすごく大きくて、活動を始めたころは、自分たちが何かをしたい。でも何をしてあげられるかわからないというところからスタートしましたが、やっていくなかで何か自分たちが子供たちに影響を与えられるかもしれないという気持ちに変わっていったり、いろんなことに気づかされたり、学ばせてもらっているな、という部分があります。劇的なものというよりは、そういうものが少しずつ積み上がってきて、もうまもなく10年目を迎えられますが、活動を続けてこられたのかなと思います」
「やっぱり、子供たちは18歳ぐらいで自立を求められるなか、自立するところのサポートという意味ではエフコネクトの中で運営側に回ってもらうというところも考えています。ただ、それは受け入れるための体制が整っていないとできないことなので、そこには大きな課題はあると感じています」
「また、より多くの施設と交流や支援ができるのが一番ですが、今は関わっている子供たちのために何かできないか、という段階です。あとは遅かれ早かれ僕も選手を辞めますし、現役の選手がいることに価値があると思っているので、そういう意味では若い選手たちの中で一緒に活動したいと思ってくれる子を増やしていくことも、今後の目標のひとつでもありますね」
「ただ、プロサッカー選手としてまずはその選手たちがしっかりと成長していくことが大事ですし、僕自身もまだまだ頑張ろうと思っているので、ぜひそこも応援していただきつつ、新たな拠点もできたので、いろんな方々と交流の場を作れればと思っています」
インタビュー・文・岸上敏宏/超ワールドサッカー編集部
写真提供:F-connect
2015年に小池純輝(クリアソン新宿)、梶川諒太(藤枝MYFC)の2選手を中心に設立された一般社団法人『F-connect』は、野村直輝(大分トリニータ)、三鬼海(FC町田ゼルビア)、山崎浩介(サガン鳥栖)、松澤香輝(ベガルタ仙台)、神田夢実(標準流浪/香港)、佐藤凌我(アビスパ福岡)という男子の現役選手。小林海青(SSDナポリ/イタリア)、村松智子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)、西村清花(ディオッサ出雲FC)の女子現役選手、現役時代に横浜FC、FC琉球でプレーした新井純平が在籍。
児童養護施設は全国に約600か所あり、保護者のいない児童や虐待されている児童、その他環境上養護を要する、主に1歳から18歳までの児童を養育し、自立のための援助を行うことを目的とする施設だ。
■サッカーを通じた夢を持てるようなきっかけ作り
2015年に公私ともに親交がある梶川とともにF-connectの活動をスタートした小池は、「18歳で施設から自立しなければならないことも知らなかった」と語った児童養護施設への支援活動のきっかけを語った。
小池は浦和レッズでプロキャリアをスタートし、これまでザスパ草津(現ザスパクサツ群馬)、水戸ホーリーホック、東京ヴェルディ、ジェフユナイテッド千葉、愛媛FCで活躍。今シーズンからJFLのクリアソン新宿に活躍の場を移した。
そういったなか、2014年から2015年まで在籍した横浜FC時代の経験がF-connectの活動を決意させるものになったという。
「2014年ですね。横浜FCのスタッフの方から、ちょっとプライベートでお願いがあるという形で、その方が交流のあった鎌倉の施設でしたが、そこにちょっと顔を出してもらえないか、という依頼を受けました。プライベートだったので、当時梶川が湘南(ベルマーレ)にいて、よく会ったりもしていたので、カジを誘って初めて施設を訪問させていただきました」
「そのときはサッカー選手の“あるある”、だと思うんですけど、ちょっと地元の少年団に顔出してよとか、それぐらいの感覚での訪問でした。でも、自分たちが想像していた以上に歓迎していただいて、それも嬉しかったですし、一緒にやったサッカーも楽しかったです」
「その後に(横浜FCが本拠地とする)三ツ沢にも応援に来てくれました。僕はサイドのポジションをやっていて、試合内容とか関係なく90分間、『小池選手、頑張れ』っていう声がすぐそばでずっと聞こえていて、それがすごく嬉しかったです。やっぱりサッカーっぽくない応援はちょっと目立ちますし、違う感じでの応援がすごく心に残りました」
「そのシーズンオフに今度は僕ら発信で遊びに行かせてくださいという形で、12月だったのでサンタクロースみたいな格好をして、お菓子を自分たちで詰め合わせて持っていきましたが、小学2年生以下の子供たちだったので、正直忘れられちゃっているのかなという思いもありましたが、ちゃんと覚えてくれていて歓迎してくれて本当に嬉しかったです」
「そして、自分たちはサッカー選手なので、サッカーを通じて、子供たちが笑顔になれるきっかけとか、何か目標とか夢を持てるようなきっかけ作りができたらいいな、っていうふうにカジと話すようになって、翌年の15年にフットボールで繋げるとか、フットボールが繋げるっていうのをコンセプトにやろうっていうので、フットボール・コネクトの略で、エフコネクトと名前を付けて始めたっていうのが経緯です」
フットボールを通じた子供たちとのふれあい
■アスリート、スポーツの価値とは
そのF-connectの活動においてはさまざまな支援の形があるなか、設立当初から現在に至るまで、直接的なふれあいや“経験”という部分を重視しているという。
「神奈川の別の施設に初めて行ったときに、外に出て一緒にボールを蹴ろうって声をかけましたが、最初にボールを蹴ってくれる子はサッカーが好きで、なおかつ積極的な2、3人だけで、他の子たちはその横で様子を見ているだけでした。ただ、やっていくなかで1人、2人とその数が増えていって、帰るころにはみんなが1個のボールを追いかけるみたいな感じで、それも嬉しかったです。また、帰りに職員の方に挨拶したときに、普段だったら絶対にサッカーをやってない子が一緒になってボールを追いかけて驚きました、ということを言ってもらえました」
「僕がサッカー選手だったから一緒に蹴ってくれたのか、それとも単に楽しそうだったから一緒に入ってくれたのかは分からなかったですが、何かそういう瞬間にアスリートの価値とか、スポーツの価値みたいなものを感じることができました」
「最初に活動を始めたときに支援の方法というか、いろいろ考えていたなかで、最初はボールを各施設に送ることを考えていました。ただ、もしかしたら、僕たちの気持ちだけで自己満で終わってしまうのではないかという部分もあったので、少し職員の方にこういう活動をしたくて、どういう関わり方が、子供たちにとっていいですか、というふうなご相談をさせていただきました」
「そのときに職員の方は、18歳で施設を出て自立しなければならない環境のなかで、なかなか夢とか目標を持ちづらい環境ですと、そのなかで小池さん、梶川さんは、サッカー選手という自身の夢を叶えられた人たちなので、そういう人と関わって、何か化学反応じゃないですけど、何か気持ちが変わってくれたりとか、何か夢とか目標を持ってもらえるようなきっかけになってくれたら嬉しいので、触れ合ってほしいっていうことをお聞きして、それで直接会うことを大切にしています」
「それこそ僕たちが行くことの価値と言いますか、僕らもアスリートの価値とか、スポーツの価値を気づかされる機会にもなりますし、もしかしたら子供たちに何か目標を持つきっかけになってもらえるっていう気持ちもあって、そういったふれあいが大切ではないかというふうに考えています」
■“円”の外に出ていく
その後、F-connectは神奈川県を中心に、各選手の所属クラブのホームタウンなど、各地で施設訪問、試合招待といった支援活動をスタート。
その活動において特徴的なのは、「人」としての人生を“歩みながら”「競技者」としての人生を歩むための『デュアルキャリア』という考えだ。
以前からアスリートのセカンドキャリアの問題が取り沙汰されるなか、F-connectでは児童養護施設の支援活動を通して、選手自ら訪問先へのアポイントメントやチケット手配、パートナー企業開拓のための営業など、選手自身のキャリアアップや現役引退後のキャリアにつながる活動を行っている。
サッカークラブにおいては選手が“円”の中心にいるなか、以前から新しい気づきや学びが少ないと感じていた小池は、F-connectの活動を「アスリートとビジネスマンの中間」と位置づけて捉えているという。
「最初はカジと2人で立ち上げて、最初にTシャツを作って、それを300枚作って販売しました。自分で梱包して発送しましたが、そういう作業とかも、ひと通り自分たちでやるっていうところを大事にしました」
「サッカークラブで言うと、チームを“円”にすると選手ってやっぱ中心にいて、コーチングスタッフやフロントスタッフ、サポーターの方もみんな選手の方を見てくださるので、極端な話、サッカーさえしていれば成り立ってしまう環境がそこにはあります。自分から“円”の外に出ていかないと、新しい気づきとか学びが少ないなっていうのは、感覚としてありました」
「この活動のなかで、自分が運営側に回ってTシャツを作るのもそうですし、イベントをやるのも自分たちで企画して、何が必要だとかを考えるようになった部分は、アスリートとビジネスマンの中間というか、選手だけではなかなか経験しないようなことを、一足先にそこで経験するところが自然とできているのかなっていうふうに思っています」
眠っているサッカーシューズを子供たちに届ける活動
■コロナ禍での農業体験という新たな試み
2015年の設立後、順調に活動を続けてきたが、2020年の新型コロナウイルスのパンデミック発生後は、施設訪問、試合招待というメインの活動が困難な状況に。この間にオンラインでの交流などを続けていたものの、初めて停滞期を迎えることになった。
そういったなか、2021年には『プロサッカー選手がつくる畑で児童養護施設の子ども達と泥んこになりたい』をテーマに、長野県飯綱町にて農業体験を目的とした『エフコネファーム』をスタートすることになった。
畑作りからスタート
以前から農業に関心があり、愛媛FC時代には畑を借りて農業体験を経験していた小池は、命を育てることの重みや地域とのつながりを含めて新たなチャレンジの意義を語る。
「元々、ちょっと農業に興味があって愛媛FCのときには、知り合いの方の畑をお借りして野菜作りをしていました。基本的にはそこの方々に管理をお願いして要所で一緒に作業させていただく形でしたが、収穫までの過程を経験しながら大根とかほうれん草とかを収穫できました。スーパーで売っているようなまっすぐな大根ではなくて、何か足が何本もあるような、ちょっといびつな形のものが取れましたが、自分にとってスーパーで売られている大根とは全然違う価値が出て、その過程に関わっていたりとか、成長していく様子を見ていたというだけで、次元が違うものになるという経験ができました」
農業を通じて命の重み、食への理解を深める
「あと畑に行くたびに管理してくださっている方の隣の家の方とバーベキューをしたりとか、地域の方との交流があって、それもすごく楽しくて、何かエフコネクトでもそういう場作りと言うか、何か子供たちが経験したり体験したりするような場を作れないかな、というふうに思うようになりました」
「そういったときに長野の方でサポートいただける方がいて、僕自身も父親が長野県出身で、毎年のように遊びに行っていたので、その空気感とか景色とかっていうものに馴染みがありました。最終的に現地に行かせていただいて、ゆかりのある長野の地でそういう活動ができたらな、という形でした」
「なかなかコロナのときとかは間が空いてしまったりとか、オンラインでの交流をした施設もありましたが、よりオフラインで会うことの価値みたいなものがすごく高まった感じもしていましたし、これまでそんなに頻繁に会えたわけではないですけど、交流してきたなかで少しずつ子供たちとの信頼関係も築けているというのは感じてもいました。そういったなかで子供たちが実際に長野に遊びに来てくれました」
「一昨年は新井純平が1泊2日の農業体験を一緒にできましたが、昨年はスケジュール的に選手がちょっと行けなさそうな状況でしたが、僕らがいなくても大丈夫です、という感じで、選手がいないなら行かないじゃなくて、農業体験自体を楽しみにしてくれている子供たちがいるっていうところは嬉しい部分でした」
「子供たちの反応とかは職員の方からも伺ったりしていて、普段食べているトウモロコシとかはカットされて茹でられているものですが、自分たちで畑から収穫してその場で食べるとていう経験をしたことがある子は、おそらくいなかったと思います。そして、収穫から食べるところとか、バーベキューをしている姿を写真で見ると、本当に嬉しそうに感じましたし、楽しんでくれていたっていう話も聞いたので良かったです」
■新たな挑戦、新たな拠点
そのエフコネファーム創設から3年を経て、2024年春には「プロサッカー選手がつくる農業体験宿泊施設に児童養護施設の子ども達を招待したい!」をテーマに、エフコネファームのある飯綱町に子供たちが泊まれる宿泊施設「エフコネベース」をオープンさせることが決定した。
小池と梶川とともに理事を務め運営面を担う沼澤つとむさんの長野への移住によって、これまでは夏休みや2カ月に1度といったようにスポット的に子供たちと農業体験を実施してきた。そして、その活動をより定期的に継続的に実施していくなか、エフコネベースは拠点としての役割を担う。
昨年行われた子供たちの農業体験
さらに、地元コミュニティとの交流の活発化、児童養護施設以外の子供たちや企業の福利厚生といった部分での農業体験、研修といった新たな試み、将来的には施設出身者が管理者や運営者として活動に携わっていくことも視野に入れている。
パートナー企業のサポートによって古民家を購入・リフォームし、物件準備が進む一方、宿泊施設として機能させるために家具・家電・布団などの室内設備を揃える必要があり、2024年1月5日(金)~同2月11日(金)の期間を通じてクラウドファンディングが実施されている。
「昨年、一昨年でいうと宿泊費とかも、やはり人数分かかってしまいますし、なかなか『またすぐおいでよ』、っていうふうに言えなかった部分が、エフコネベースを作ることで、かなり気軽に子供たちが来られる状況を作れると思います。そういう意味では他の施設に新たに連絡をさせていただいたりとか、体験機会を増やせるのではないかと考えています」
「もちろん僕らが行ったときに泊まれたりとか、ベースを起点にいろいろなことができるのではないか、というところですね。あとは地元の方との交流もできると思いますし、地元でのイベントだったりとか、農業体験、研修とか、そんなものもできると思いますので、かなり幅は広がるのではないかなという期待をしています」
2021年にエフコネファームのプロジェクトをスタートした際にも実施したクラウドファンディングに関しては、当然のことながら資金調達がメインではある。ただ、そのクラウドファンディングを通じて新たに自分たちの活動を知った人たちの支援の輪の広がり、常日頃から賛助会員として活動を支援している既存の協力者の人たちに、より一層その支援の意義を再認識する契機にしたいとの考えもあるという。
「2021年にエフコネファームを作ったときにもクラウドファンディングをやらせていただきましたが、ご支援いただいた方たちにはご自身が支援したものが、子供たちの活動につながっているんだというふうに思ってもらいたいですし、そういう方がたくさん増えてくると、また違った関わり方ができると考えています」
最後に、小池はまもなく10年目を迎えるF-connectの今後について語った。
「やっぱりスポーツの価値に気づかされたっていうのはすごく大きくて、活動を始めたころは、自分たちが何かをしたい。でも何をしてあげられるかわからないというところからスタートしましたが、やっていくなかで何か自分たちが子供たちに影響を与えられるかもしれないという気持ちに変わっていったり、いろんなことに気づかされたり、学ばせてもらっているな、という部分があります。劇的なものというよりは、そういうものが少しずつ積み上がってきて、もうまもなく10年目を迎えられますが、活動を続けてこられたのかなと思います」
「やっぱり、子供たちは18歳ぐらいで自立を求められるなか、自立するところのサポートという意味ではエフコネクトの中で運営側に回ってもらうというところも考えています。ただ、それは受け入れるための体制が整っていないとできないことなので、そこには大きな課題はあると感じています」
「また、より多くの施設と交流や支援ができるのが一番ですが、今は関わっている子供たちのために何かできないか、という段階です。あとは遅かれ早かれ僕も選手を辞めますし、現役の選手がいることに価値があると思っているので、そういう意味では若い選手たちの中で一緒に活動したいと思ってくれる子を増やしていくことも、今後の目標のひとつでもありますね」
「ただ、プロサッカー選手としてまずはその選手たちがしっかりと成長していくことが大事ですし、僕自身もまだまだ頑張ろうと思っているので、ぜひそこも応援していただきつつ、新たな拠点もできたので、いろんな方々と交流の場を作れればと思っています」
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「フッドボールで繋げる、フッドボールが繋げる」をコンセプトに、子供たちを支援する活動に取り組む、Jリーガーたちが新たな試みをスタートさせている。 Jリーグが通称“シャレン!(社会連携活動)”という、Jリーグを中心にスポーツだけでなく、様々な地域の課題を、社会という視点・物差しから連携し、豊かなまちづくりに貢献するための活動に取り組んでいるなか、プロサッカー選手の有志による、児童養護施設の子供たちを支援する活動が行われている。 2015年に小池純輝(クリアソン新宿)、梶川諒太(藤枝MYFC)の2選手を中心に設立された一般社団法人『F-connect』は、野村直輝(大分トリニータ)、三鬼海(FC町田ゼルビア)、山崎浩介(サガン鳥栖)、松澤香輝(ベガルタ仙台)、神田夢実(標準流浪/香港)、佐藤凌我(アビスパ福岡)という男子の現役選手。小林海青(SSDナポリ/イタリア)、村松智子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)、西村清花(ディオッサ出雲FC)の女子現役選手、現役時代に横浜FC、FC琉球でプレーした新井純平が在籍。 “会いに行く”、“試合に招待する”、“また会いに行く”をコンセプトに、サッカー、フットボールを通じた児童養護施設の子供たちへの支援活動に取り組んでいる。 児童養護施設は全国に約600か所あり、保護者のいない児童や虐待されている児童、その他環境上養護を要する、主に1歳から18歳までの児童を養育し、自立のための援助を行うことを目的とする施設だ。 <div style="text-align:left;font-size:large;">■サッカーを通じた夢を持てるようなきっかけ作り</div> 2015年に公私ともに親交がある梶川とともにF-connectの活動をスタートした小池は、「18歳で施設から自立しなければならないことも知らなかった」と語った児童養護施設への支援活動のきっかけを語った。 小池は浦和レッズでプロキャリアをスタートし、これまでザスパ草津(現ザスパクサツ群馬)、水戸ホーリーホック、東京ヴェルディ、ジェフユナイテッド千葉、愛媛FCで活躍。今シーズンからJFLのクリアソン新宿に活躍の場を移した。 そういったなか、2014年から2015年まで在籍した横浜FC時代の経験がF-connectの活動を決意させるものになったという。 「2014年ですね。横浜FCのスタッフの方から、ちょっとプライベートでお願いがあるという形で、その方が交流のあった鎌倉の施設でしたが、そこにちょっと顔を出してもらえないか、という依頼を受けました。プライベートだったので、当時梶川が湘南(ベルマーレ)にいて、よく会ったりもしていたので、カジを誘って初めて施設を訪問させていただきました」 「そのときはサッカー選手の“あるある”、だと思うんですけど、ちょっと地元の少年団に顔出してよとか、それぐらいの感覚での訪問でした。でも、自分たちが想像していた以上に歓迎していただいて、それも嬉しかったですし、一緒にやったサッカーも楽しかったです」 「その後に(横浜FCが本拠地とする)三ツ沢にも応援に来てくれました。僕はサイドのポジションをやっていて、試合内容とか関係なく90分間、『小池選手、頑張れ』っていう声がすぐそばでずっと聞こえていて、それがすごく嬉しかったです。やっぱりサッカーっぽくない応援はちょっと目立ちますし、違う感じでの応援がすごく心に残りました」 「そのシーズンオフに今度は僕ら発信で遊びに行かせてくださいという形で、12月だったのでサンタクロースみたいな格好をして、お菓子を自分たちで詰め合わせて持っていきましたが、小学2年生以下の子供たちだったので、正直忘れられちゃっているのかなという思いもありましたが、ちゃんと覚えてくれていて歓迎してくれて本当に嬉しかったです」 「そして、自分たちはサッカー選手なので、サッカーを通じて、子供たちが笑顔になれるきっかけとか、何か目標とか夢を持てるようなきっかけ作りができたらいいな、っていうふうにカジと話すようになって、翌年の15年にフットボールで繋げるとか、フットボールが繋げるっていうのをコンセプトにやろうっていうので、フットボール・コネクトの略で、エフコネクトと名前を付けて始めたっていうのが経緯です」 <div style="text-align:center;"><img src="https://image.ultra-soccer.jp/1200/img/2023/get20240206_101_tw1.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:center;font-size:small;">フットボールを通じた子供たちとのふれあい</div> <div style="text-align:left;font-size:large;">■アスリート、スポーツの価値とは</div> そのF-connectの活動においてはさまざまな支援の形があるなか、設立当初から現在に至るまで、直接的なふれあいや“経験”という部分を重視しているという。 「神奈川の別の施設に初めて行ったときに、外に出て一緒にボールを蹴ろうって声をかけましたが、最初にボールを蹴ってくれる子はサッカーが好きで、なおかつ積極的な2、3人だけで、他の子たちはその横で様子を見ているだけでした。ただ、やっていくなかで1人、2人とその数が増えていって、帰るころにはみんなが1個のボールを追いかけるみたいな感じで、それも嬉しかったです。また、帰りに職員の方に挨拶したときに、普段だったら絶対にサッカーをやってない子が一緒になってボールを追いかけて驚きました、ということを言ってもらえました」 「僕がサッカー選手だったから一緒に蹴ってくれたのか、それとも単に楽しそうだったから一緒に入ってくれたのかは分からなかったですが、何かそういう瞬間にアスリートの価値とか、スポーツの価値みたいなものを感じることができました」 「最初に活動を始めたときに支援の方法というか、いろいろ考えていたなかで、最初はボールを各施設に送ることを考えていました。ただ、もしかしたら、僕たちの気持ちだけで自己満で終わってしまうのではないかという部分もあったので、少し職員の方にこういう活動をしたくて、どういう関わり方が、子供たちにとっていいですか、というふうなご相談をさせていただきました」 「そのときに職員の方は、18歳で施設を出て自立しなければならない環境のなかで、なかなか夢とか目標を持ちづらい環境ですと、そのなかで小池さん、梶川さんは、サッカー選手という自身の夢を叶えられた人たちなので、そういう人と関わって、何か化学反応じゃないですけど、何か気持ちが変わってくれたりとか、何か夢とか目標を持ってもらえるようなきっかけになってくれたら嬉しいので、触れ合ってほしいっていうことをお聞きして、それで直接会うことを大切にしています」 「それこそ僕たちが行くことの価値と言いますか、僕らもアスリートの価値とか、スポーツの価値を気づかされる機会にもなりますし、もしかしたら子供たちに何か目標を持つきっかけになってもらえるっていう気持ちもあって、そういったふれあいが大切ではないかというふうに考えています」 <div style="text-align:left;font-size:large;">■“円”の外に出ていく</div> その後、F-connectは神奈川県を中心に、各選手の所属クラブのホームタウンなど、各地で施設訪問、試合招待といった支援活動をスタート。 その活動において特徴的なのは、「人」としての人生を“歩みながら”「競技者」としての人生を歩むための『デュアルキャリア』という考えだ。 以前からアスリートのセカンドキャリアの問題が取り沙汰されるなか、F-connectでは児童養護施設の支援活動を通して、選手自ら訪問先へのアポイントメントやチケット手配、パートナー企業開拓のための営業など、選手自身のキャリアアップや現役引退後のキャリアにつながる活動を行っている。 サッカークラブにおいては選手が“円”の中心にいるなか、以前から新しい気づきや学びが少ないと感じていた小池は、F-connectの活動を「アスリートとビジネスマンの中間」と位置づけて捉えているという。 「最初はカジと2人で立ち上げて、最初にTシャツを作って、それを300枚作って販売しました。自分で梱包して発送しましたが、そういう作業とかも、ひと通り自分たちでやるっていうところを大事にしました」 「サッカークラブで言うと、チームを“円”にすると選手ってやっぱ中心にいて、コーチングスタッフやフロントスタッフ、サポーターの方もみんな選手の方を見てくださるので、極端な話、サッカーさえしていれば成り立ってしまう環境がそこにはあります。自分から“円”の外に出ていかないと、新しい気づきとか学びが少ないなっていうのは、感覚としてありました」 「この活動のなかで、自分が運営側に回ってTシャツを作るのもそうですし、イベントをやるのも自分たちで企画して、何が必要だとかを考えるようになった部分は、アスリートとビジネスマンの中間というか、選手だけではなかなか経験しないようなことを、一足先にそこで経験するところが自然とできているのかなっていうふうに思っています」 <div style="text-align:center;"><img src="https://image.ultra-soccer.jp/1200/img/2023/get20240206_100_tw2.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:center;font-size:small;">眠っているサッカーシューズを子供たちに届ける活動</div> <div style="text-align:left;font-size:large;">■コロナ禍での農業体験という新たな試み</div> 2015年の設立後、順調に活動を続けてきたが、2020年の新型コロナウイルスのパンデミック発生後は、施設訪問、試合招待というメインの活動が困難な状況に。この間にオンラインでの交流などを続けていたものの、初めて停滞期を迎えることになった。 そういったなか、2021年には『プロサッカー選手がつくる畑で児童養護施設の子ども達と泥んこになりたい』をテーマに、長野県飯綱町にて農業体験を目的とした『エフコネファーム』をスタートすることになった。 <div style="text-align:center;"><img src="https://image.ultra-soccer.jp/1200/img/2023/get20240206_101_tw4.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:center;font-size:small;">畑作りからスタート</div> 以前から農業に関心があり、愛媛FC時代には畑を借りて農業体験を経験していた小池は、命を育てることの重みや地域とのつながりを含めて新たなチャレンジの意義を語る。 「元々、ちょっと農業に興味があって愛媛FCのときには、知り合いの方の畑をお借りして野菜作りをしていました。基本的にはそこの方々に管理をお願いして要所で一緒に作業させていただく形でしたが、収穫までの過程を経験しながら大根とかほうれん草とかを収穫できました。スーパーで売っているようなまっすぐな大根ではなくて、何か足が何本もあるような、ちょっといびつな形のものが取れましたが、自分にとってスーパーで売られている大根とは全然違う価値が出て、その過程に関わっていたりとか、成長していく様子を見ていたというだけで、次元が違うものになるという経験ができました」 <div style="text-align:center;"><img src="https://image.ultra-soccer.jp/1200/img/2023/get20240206_101_tw3.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:center;font-size:small;">農業を通じて命の重み、食への理解を深める</div> 「あと畑に行くたびに管理してくださっている方の隣の家の方とバーベキューをしたりとか、地域の方との交流があって、それもすごく楽しくて、何かエフコネクトでもそういう場作りと言うか、何か子供たちが経験したり体験したりするような場を作れないかな、というふうに思うようになりました」 「そういったときに長野の方でサポートいただける方がいて、僕自身も父親が長野県出身で、毎年のように遊びに行っていたので、その空気感とか景色とかっていうものに馴染みがありました。最終的に現地に行かせていただいて、ゆかりのある長野の地でそういう活動ができたらな、という形でした」 「なかなかコロナのときとかは間が空いてしまったりとか、オンラインでの交流をした施設もありましたが、よりオフラインで会うことの価値みたいなものがすごく高まった感じもしていましたし、これまでそんなに頻繁に会えたわけではないですけど、交流してきたなかで少しずつ子供たちとの信頼関係も築けているというのは感じてもいました。そういったなかで子供たちが実際に長野に遊びに来てくれました」 「一昨年は新井純平が1泊2日の農業体験を一緒にできましたが、昨年はスケジュール的に選手がちょっと行けなさそうな状況でしたが、僕らがいなくても大丈夫です、という感じで、選手がいないなら行かないじゃなくて、農業体験自体を楽しみにしてくれている子供たちがいるっていうところは嬉しい部分でした」 「子供たちの反応とかは職員の方からも伺ったりしていて、普段食べているトウモロコシとかはカットされて茹でられているものですが、自分たちで畑から収穫してその場で食べるとていう経験をしたことがある子は、おそらくいなかったと思います。そして、収穫から食べるところとか、バーベキューをしている姿を写真で見ると、本当に嬉しそうに感じましたし、楽しんでくれていたっていう話も聞いたので良かったです」 <div style="text-align:left;font-size:large;">■新たな挑戦、新たな拠点</div> そのエフコネファーム創設から3年を経て、2024年春には「プロサッカー選手がつくる農業体験宿泊施設に児童養護施設の子ども達を招待したい!」をテーマに、エフコネファームのある飯綱町に子供たちが泊まれる宿泊施設「エフコネベース」をオープンさせることが決定した。 小池と梶川とともに理事を務め運営面を担う沼澤つとむさんの長野への移住によって、これまでは夏休みや2カ月に1度といったようにスポット的に子供たちと農業体験を実施してきた。そして、その活動をより定期的に継続的に実施していくなか、エフコネベースは拠点としての役割を担う。 <div style="text-align:center;"><img src="https://image.ultra-soccer.jp/1200/img/2023/get20240206_101_tw6.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:center;font-size:small;">昨年行われた子供たちの農業体験</div> さらに、地元コミュニティとの交流の活発化、児童養護施設以外の子供たちや企業の福利厚生といった部分での農業体験、研修といった新たな試み、将来的には施設出身者が管理者や運営者として活動に携わっていくことも視野に入れている。 パートナー企業のサポートによって古民家を購入・リフォームし、物件準備が進む一方、宿泊施設として機能させるために家具・家電・布団などの室内設備を揃える必要があり、2024年1月5日(金)~同2月11日(金)の期間を通じてクラウドファンディングが実施されている。 「昨年、一昨年でいうと宿泊費とかも、やはり人数分かかってしまいますし、なかなか『またすぐおいでよ』、っていうふうに言えなかった部分が、エフコネベースを作ることで、かなり気軽に子供たちが来られる状況を作れると思います。そういう意味では他の施設に新たに連絡をさせていただいたりとか、体験機会を増やせるのではないかと考えています」 「もちろん僕らが行ったときに泊まれたりとか、ベースを起点にいろいろなことができるのではないか、というところですね。あとは地元の方との交流もできると思いますし、地元でのイベントだったりとか、農業体験、研修とか、そんなものもできると思いますので、かなり幅は広がるのではないかなという期待をしています」 2021年にエフコネファームのプロジェクトをスタートした際にも実施したクラウドファンディングに関しては、当然のことながら資金調達がメインではある。ただ、そのクラウドファンディングを通じて新たに自分たちの活動を知った人たちの支援の輪の広がり、常日頃から賛助会員として活動を支援している既存の協力者の人たちに、より一層その支援の意義を再認識する契機にしたいとの考えもあるという。 「2021年にエフコネファームを作ったときにもクラウドファンディングをやらせていただきましたが、ご支援いただいた方たちにはご自身が支援したものが、子供たちの活動につながっているんだというふうに思ってもらいたいですし、そういう方がたくさん増えてくると、また違った関わり方ができると考えています」 最後に、小池はまもなく10年目を迎えるF-connectの今後について語った。 「やっぱりスポーツの価値に気づかされたっていうのはすごく大きくて、活動を始めたころは、自分たちが何かをしたい。でも何をしてあげられるかわからないというところからスタートしましたが、やっていくなかで何か自分たちが子供たちに影響を与えられるかもしれないという気持ちに変わっていったり、いろんなことに気づかされたり、学ばせてもらっているな、という部分があります。劇的なものというよりは、そういうものが少しずつ積み上がってきて、もうまもなく10年目を迎えられますが、活動を続けてこられたのかなと思います」 「やっぱり、子供たちは18歳ぐらいで自立を求められるなか、自立するところのサポートという意味ではエフコネクトの中で運営側に回ってもらうというところも考えています。ただ、それは受け入れるための体制が整っていないとできないことなので、そこには大きな課題はあると感じています」 「また、より多くの施設と交流や支援ができるのが一番ですが、今は関わっている子供たちのために何かできないか、という段階です。あとは遅かれ早かれ僕も選手を辞めますし、現役の選手がいることに価値があると思っているので、そういう意味では若い選手たちの中で一緒に活動したいと思ってくれる子を増やしていくことも、今後の目標のひとつでもありますね」 「ただ、プロサッカー選手としてまずはその選手たちがしっかりと成長していくことが大事ですし、僕自身もまだまだ頑張ろうと思っているので、ぜひそこも応援していただきつつ、新たな拠点もできたので、いろんな方々と交流の場を作れればと思っています」 インタビュー・文・岸上敏宏/超ワールドサッカー編集部 写真提供:F-connect <span class="paragraph-title">エフコネベース プロジェクト概要</span> <span data-other-div="movie"></span> <div id="cws_ad"><blockquote class="twitter-tweet"><p lang="ja" dir="ltr">24年1/5(金)クラファン開始のお知らせ<br><br>前回の <a href="https://twitter.com/hashtag/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#クラファン</a> から2年間農業体験プロジェクトを推進。2024年は <a href="https://twitter.com/hashtag/%E3%82%A8%E3%83%95%E3%82%B3%E3%83%8D%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%A0?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#エフコネファーム</a> に続く、第2弾 <a href="https://twitter.com/hashtag/%E3%82%A8%E3%83%95%E3%82%B3%E3%83%8D%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B9?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#エフコネベース</a> が始動<br>子ども達がいつでも泊まりに来れる農業体験宿泊施設の設備投資にご支援をお願いします‼️<br><br>詳しくは<a href="https://t.co/n5DuJZ5xtG">https://t.co/n5DuJZ5xtG</a> <a href="https://t.co/Oy7CrrVIs2">pic.twitter.com/Oy7CrrVIs2</a></p>— F-connect (@F_connect_) <a href="https://twitter.com/F_connect_/status/1741408850824311000?ref_src=twsrc%5Etfw">December 31, 2023</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script></div> 2024.02.07 19:00 Wed2
長期離脱乗り越えた福岡FW佐藤凌我が古巣の東京V戦で7カ月ぶりのリーグ戦復帰…「ヴェルディ戦で復帰できたことが嬉しい…」
アビスパ福岡のFW佐藤凌我が、大きなケガを乗り越えた末に迎えた待望の古巣初対戦を振り返った。 福岡は28日、味の素スタジアムで行われた明治安田J1リーグ第10節で東京ヴェルディと対戦し、0-0のドローに終わった。 4試合連続ドローに終わったこの一戦は福岡にとって悔しいものとなったが、昨年9月に行われたルヴァン・カップのFC東京戦で、左ヒザ前十字じん帯および外側半月板を損傷する重傷を負い、長いリハビリの末に7カ月ぶりのリーグ戦復帰を果たした佐藤にとっては特別なものとなった。 2021年に明治大学から東京Vに加入した佐藤は、在籍2年間でJ2リーグ2年連続2桁ゴールを記録し、若きエースストライカーとして台頭。その後、昨年に生まれ故郷のJ1クラブである福岡へ覚悟を持って移籍し、徐々に結果を残し始めたタイミングで前述のケガを負っていた。 全治8カ月と診断されていたものの、懸命なリハビリの末に今月17日に行われた松本山雅FCとのルヴァンカップで公式戦に復帰。そして、「日程表が出た時」から意識していた古巣との一戦でのリーグ戦復帰に照準を合わせてきた中、その目標通りに28日の試合で7カ月ぶりにJ1のピッチに戻ってきた。 同じく古巣初対戦となったMF北島祐二に代わってハーフタイム明けに投入された佐藤は、[3-4-2-1]の2シャドーの一角でプレー。豊富な運動量を武器に、守備では東京V時代に培った献身的な守備で相手のビルドアップをけん制し、攻撃では中盤と前線を行き来しながら積極的にボールに絡んで、後半序盤の押し込む展開に寄与。 59分にはMF紺野和也の右サイドからのグラウンダーの折り返しに対して、良いタイミングでゴール前に飛び込んだが、「触れば得点という場面、フォワードとして決めないといけない部分だった」と、ヴェルディファンにはお馴染みのワンタッチシュートでの恩返しゴールとはならなかった。 同試合後、佐藤はプロキャリアをスタートした思い入れのあるクラブ相手のリーグ復帰戦を感慨深げに振り返った。 「ようやくこうやってリーグに復帰できたこと、古巣のヴェルディ戦で復帰できたことをすごく嬉しく思います」 「日程表が出た時に、本当にここで復帰するという強い気持ちを持ってリハビリに取り組んできたので、まずそのピッチに立てたことはすごく幸せに思いますし、使ってくれた監督、トレーナーだったり、本当に長いリハビリを支えてくれた方々に感謝したいなと思います」 「(7カ月前に負傷したものの)2年間ヴェルディでプレーしたいいイメージの方が強くあるスタジアムなので、その部分では本当に久しぶりにまたこうやってこのスタジアムでプレーできて楽しかったです」 非常に濃い日々を過ごした古巣との初対戦では、「元チームメイトや古巣とやるというのは初めてのことだったので、楽しかったです」とMF森田晃樹や大学の後輩でもあるMF稲見哲行らとのマッチアップを楽しんだ。 同じく初めて対戦相手として対峙したヴェルディサポーターとの再会については、違和感を覚えながらも試合後のゴール裏への挨拶での温かな歓迎を含め改めて強い絆を感じるものになったという。 「すごく変な気持ちというか、すごく楽しみにしていた部分ではあるので、改めて敵としてやってみて素晴らしいサポーターだなと思いました」 「(対戦相手としてカモンヴェルディのチャントを聞いた印象は)懐かしいというか、敵として聞くのは初めてだったので嬉しかったです」 「(試合後のゴール裏への挨拶では)すごく拍手で迎え入れてくださったので、すごく嬉しく思いますし、もっともっと成長した姿をこれから見せられるようにしたいです。また次は福岡で次はこっちのホームでいい勝負ができればと思います」 また、共に惜しまれつつも、昨シーズン限りで東京Vを離れ、現在はそれぞれ藤枝MYFC、クリアソン新宿でプレーするMF梶川諒太、MF小池純輝という偉大な2人の先輩は、佐藤が東京V時代に公私両面で大きな影響を受けていた。 その梶川はこの試合前に自身のX(旧ツイッター)で「祐二スタメン! 凌我メンバーイン! どんだけ楽しみな一戦なんや。ヴェルディも2人も頑張れー」と、後輩2人と古巣の対戦を心から楽しみにしている投稿も行っていた。 その“兄貴分”について話を振ると、「純輝さんだったり、梶くんは本当にヴェルディ時代からお世話になっていましたし、ケガした時もリハビリの最中もすごく気にかけてくれていたので、今日見ていてくれたとしたら、すごく嬉しく思います。欲を言えば、やっぱり点を決めていいところを見せたかったですけど、それはまた持ち越しということで、次にそういう姿を見せられるように頑張りたいと思います」と、古巣のサポーター同様にJ1の舞台での活躍を見せていきたいと今後に向けた決意を示した。 2024.04.29 07:15 Mon3
通算7年過ごした東京V退団の小池純輝が想い語る…「僕らが持っていた愛情をみんなが持ってヴェルディの価値を高めてほしい」
今シーズン限りで東京ヴェルディを退団することになったMF小池純輝(36)が、7年間を過ごした最愛のクラブへの想いを語った。 小池は浦和レッズの下部組織育ちで、2006年にトップチーム昇格。ザスパ草津(現:ザスパクサツ群馬)、水戸ホーリーホック、横浜FC、ジェフユナイテッド千葉、愛媛FCでもプレー。東京Vには、水戸から2012年に加入。一度離れたが、2019年に再加入。 永井秀樹監督(現:ヴィッセル神戸SD)率いるポゼッションスタイルのチームにおいては、“ワイドストライカー”と称される得点力が求められるサイドアタッカーとして躍動。右ウイング、右サイドハーフを主戦場に卓越したオフ・ザ・ボールの動き出し、シュート精度を武器にゴールを量産し、復帰1年目には自身キャリア初のシーズン二桁得点となる16ゴールを記録。32歳にしてゴールスコアラーとしての能力を開花させると、2021シーズンにはキャリアハイを更新する17ゴールを記録し、同シーズンのJ2日本人最多得点者となった。 だが、城福浩新体制での1年半ではハイプレス・ハイラインを志向する新たなスタイルにおいて、より運動量と守備強度、フィジカル能力が求められるサイドハーフのポジション争いで苦戦。今季のJ2での出場はわずか1試合の出場にとどまった。それでも、ピッチ内外で傑出したプロフェッショナル、チームプレーヤーとして振る舞い、若手の多いスカッドにおいて精神的な支柱の一人として支え、16年ぶりのJ1昇格に貢献した。 昇格決定後の7日にクラブから契約満了が発表された小池は、9日に千人以上のサポーターを集めたファン感謝イベント『VERDY FAMILY FES.2023 inヴェルディグラウンド』で、ファン・サポーターへヴェルディの選手として最後の別れを告げた。 同イベント後に囲み取材に応じた小池は通算7シーズンを過ごし、プライベートでも「自然と緑を選ぶようになる」と語るほど愛する特別なクラブへの想いを語った。 「2012年からの2年を含め合計7年いさせてもらい、自然と緑を選ぶようになるというか、緑を好むようになるというか、ヴェルディが本当に身近な存在となり、当たり前のように(よみうり)ランドに通っていたので、僕自身7クラブでプレーさせてもらいましたが、やっぱりヴェルディというクラブへの愛着は強いものがあります。本当に良い7年間でした」 これまで在籍したJ2のほとんどのクラブでは常に主力を担ってきた小池だけに、出場機会を得られずにいたこの1年半が非常に厳しいものであったことは想像に難くない。 それでも、ぶれることなく真摯に日々のトレーニングに励む姿勢は多くの若手選手に“プロフェッショナル”とは何たるかを示すものとなった。小池自身も、もがき苦しんだこの1年半の日々において周囲からの敬意を感じる言葉に救われた部分は少なくなかったという。 「自分はあの時のサッカーに点を取らせてもらったと思っていますし、この1年半はなかなか出場できなかったですが、そこは自分の力不足だと思っています。ただ、変わらずというか年間を通してピッチに立ち続けることを意識して取り組んできました。その取り組みを周りの選手がああいうふうに言ってくれたりするのを聞くと、自分のことをちゃんと見てくれている人がいたんだと思いますし、それは素直に嬉しく思います」 また、奇しくも同じタイミングで契約満了が発表された“コイカジ”のコンビの名で知られる盟友・梶川諒太と共に、SNSやYouTubeでの活動、キッチンカーの運営などでクラブの魅力発信にも貢献してきた小池。 以前は閑古鳥が鳴く本拠地でのプレーも経験していた選手の一人として、5万3000人を超える観客を集め、16年ぶりの悲願を達成した国立競技場での清水エスパルスとの昇格プレーオフ決勝を特別な想いで見守っていた。 「(昇格プレーオフでは)ヴェルディというクラブが持つ力を感じましたし、これがJ1に行くとその力がより高まると言いますか、それは今年1年だけでなくこれまでJ2が長かったですが、その時々の選手や監督、スタッフ。ずっと応援してくれたサポーターもそうですが、そういう人たちが繋いでくれたからこそ、この間の舞台だったと思います。そういうことを感じながら見ていました」 さらに、ファン・サポーターとも強い信頼関係で結ばれる36歳は、“12人目の緑の戦士”にも言及。前述のファミフェスでは梶川、現役引退を決断したMF奈良輪雄太と共に、誰よりも多くの労いの言葉をかけられていた。 「僕自身もサポーターの方々といろんな接点を持ちたいと思っていて、それはSNSとかもそうですが、YouTubeやキッチンカーをやったりとか、そういう接点を増やすなかでいろいろ知ってもらったり、興味を持ってもらえればいいなとずっと思っていました。そういう応援してくれる方々にずっと喜んでほしいと思ってやってきました。そこはある意味ですごく良いコミュニケーションが取れていたのかなと思います」 「コロナの時期は無観客試合も経験しましたし、自分たちは普段サッカーをやっているだけでなく、そういう応援してくださっている方々に支えてもらっているからこそ、こういう舞台でやれていることを改めて感じました。みなさんと最後にJ1に昇格して喜び合えたことを心から良かったと思います」 「クラブに対する愛情を持ってやってきたと思います。それが通じてくれていたんだなと感じる部分。そういうふうに思ってくれる人がたくさんいたことは選手として本当に幸せなことだと思います」 最後に、小池はJ1昇格を掴み取り、名門復活を期すクラブへエールを送っている。 「ヴェルディの良さは、このよみうりランドでトップからベレーザからアカデミーの選手までここで練習するというのは、なかなか他のクラブではできないことだと思います。そういうなかで日ごろから選手同士が触れ合うことができますし、この環境は本当に素晴らしいと思います。それによってどんどん新たな選手が出てくると思いますし、育成の指導者の方々が愛情を持って育ててくれた選手が毎年のように上がってくるので、本当に(森田)晃樹に関しては高卒から知っていますし、技術があって素晴らしい選手であることも分かっていました。今年1年で本当に大きく成長したのは自分の目から見てもそう思いましたし、今後が楽しみでしかないです」 「自分たちも歴代の素晴らしい先輩方が繋いできてくれたおかげでこの舞台でやれていたと思います。自分は一選手ですが、ヴェルディというクラブの価値は本当に高いと思っているので、そういうものを次はJ1の舞台でみんなは示せると思うので、僕はチームを離れますが、僕らが持っていた愛情を同じようにみんなが持ってヴェルディの価値を高めてくれれば嬉しいです」 なお、来年5月に37歳となることを考えれば、現役引退もひとつの選択肢となるが、「このままでは終われない」とサッカーへの情熱を燃やす小池は新天地での現役続行を希望している。 2023.12.12 19:00 Tue4
東京V退団のMF小池純輝がクリアソン新宿に完全移籍「ワクワクしています」
日本フットボールリーグ(JFL)のクリアソン新宿は5日、東京ヴェルディを退団していたMF小池純輝(36)が完全移籍で加入することを発表した。 小池は浦和レッズの下部組織育ちで、2006年にトップチーム昇格。ザスパ草津(現:ザスパクサツ群馬)、水戸ホーリーホック、横浜FC、ジェフユナイテッド千葉、愛媛FCでもプレーした。 東京Vには、水戸から2012年に加入。一度離れたが、2019年に再度加入していた。 東京VではJ2通算211試合51得点、天皇杯で7試合に出場していた。今シーズンはJ2で1試合、天皇杯で2試合に出場していた。 小池はクラブを通じてコメントしている。 「はじめまして。東京ヴェルディから加入しました、小池純輝です。今シーズンよりクリアソン新宿で新しいチャレンジができることにワクワクしています」 「クリアソンと出会ったのは2013年でした。知人からのご紹介でCEOの丸山さん、COOの剣持さんとお会いしたのがきっかけです。ある時は群馬まで試合の応援に行ったり、またある時には忘年会に参加させていただいたり、クリアソンの皆さんはいつも優しく受け入れてくださいました」 「当時は応援していた立場でしたが、今シーズンからは選手としてクリアソンで戦えることを嬉しく思います。クリアソン新宿と共にスポーツの価値を通じて、真の豊かさを創造し続ける存在となれるように、そしてJリーグに昇格できるようにチャレンジしていきます。どうぞ、よろしくお願いいたします」 2024.01.05 11:35 Fri5