【2022年カタールへ期待の選手vol.115】本番2カ月前にカタールW杯正GKに名乗り!エクアドル戦のMVP/シュミット・ダニエル(シント=トロイデン/GK)

2022.09.30 20:45 Fri
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ドイツ、コスタリカ、スペインという強豪国と中3日でグループリーグを戦わなければならない2022年カタールワールドカップ(W杯)の日本代表。森保一監督も「初戦のプレッシャーや相手の力を踏まえた時、普段より想像以上に大きなエネルギーを使うので、心身ともに中3日で回復できない状況も起こり得る」と見ており、そのためには選手の入れ替えが必要不可欠と考えている様子だ。そこで、27日のエクアドル戦(デュッセルドルフ)は23日のアメリカ戦(同)から先発11人全員を入れ替え、完全なるターンオーバーを実施。谷口彰悟(川崎)と伊藤洋輝(シュツットガルト)の両センターバック(CB)、柴崎岳(レガネス)と田中碧(デュッセルドルフ)の両ボランチなど実戦経験が少ない面々の連係不足が見て取れたが、強度と球際の迫力に優れた相手を何とかしのぎ切り、スコアレスドローに持ち込んだ。

もちろんW杯本番を視野に入れると、ドイツに勝ち点3を奪うのは非常にハードルが高いため、2戦目のコスタリカ戦での白星が必須。となれば、今回のエクアドルとの2戦目は引き分けでは足りない。
ただ、後半38分のエネル・バレンシア(フェネルバフチェ)のPKを決められていたら、負けていた可能性が大だった。そう考えると、一撃を阻止したシュミット・ダニエルの貢献度の高さは特筆に値する。彼がマン・オブ・ザ・マッチに選ばれるのも当然のなりゆきと言えるだろう。

197cmの高さを誇るシュミットは、以前から「規格外の日本人守護神」として期待されてきた。日本代表デビューは森保ジャパン発足直後の2018年11月のベネズエラ戦(大分)。もともとボランチだったこともあり、足元の技術やつなぎのうまさで見る者を驚かせた。そこから代表にコンスタントに呼ばれるようになり、2019年アジアカップのウズベキスタン戦(アルアイン)にも出場。2019年夏にベルギーに赴いてからも地道な努力を続け、少しずつ成長してきた。

とはいえ、日本代表には川島永嗣(ストラスブール)、権田修一(清水エスパルス)という経験豊富なライバルがいる。特に森保ジャパン発足後は権田の評価が高く、アジアカップ以降の公式戦でほぼフル稼働。2021年9月から始まった最終予選でも10試合中9試合に先発した。シュミットは出場権獲得後の今年3月のベトナム戦(埼玉)では出番を与えられるかと思いきや、その一戦に出たのは川島。自身の序列の低さを痛感させられたのではないか。

しかしながら、W杯に向けて本格始動した6月シリーズ以降、森保監督の起用法に微妙な変化が生まれる。シュミットは4連戦のうち最初のパラグアイ戦(札幌)とチュニジア戦(吹田)に出場。後者は0-3で完敗を喫したものの、「敵に脅威を与えられる世界基準のサイズとビルドアップ能力を誇る守護神を使いたい」という指揮官の思惑が透けて見えるようになった。

それが9月シリーズになって顕著となり、今回のシュミットは権田の背中打撲の影響もあって、アメリカ戦の後半とエクアドル戦に出場。スーパーセーブを連発する。本人が長年の課題と言い続けたシュートストップの部分も目覚ましい進化を感じさせたのだ。

エクアドル戦前に行われたデュッセルドルフでのメディア対応で、シュミットは24日にスペインの猛攻を止め続けたスイスの守護神、ヤン・ゾマー(ボルシアMG)を引き合いに出し、「スペインやドイツの強豪に勝つには最後の部分でGKのビッグセーブが絶対に必要。ゾマーはそれをほぼ日常的にやっている。アメリカ戦のようなゲームではないと思うし、エクアドル相手にピンチの場面があれば、自分にできるところをアピールしていければと思います」と意気込んでいた。

その言葉通り、ゾマーを超えるほどの強烈インパクトを残したシュミット。森保監督も「ピンチも多かった中、ダンが最後の砦としてビッグセーブをしてくれたことで、試合がより引き締まったと思いますし、フィールドの選手たちが勇気を持って落ち着いて戦えることにつながったのかなと思っています」と絶賛していた。

常に謙虚な本人は「今日の自分のパフォーマンスは80点くらいかな。20点分はハイボールの部分。CKとかでもっと力強さというか『空中戦、大丈夫だ』という安心感を与えられるプレーがもうちょっとできたらいい」と自分に厳しかったが、これでW杯本大会の正守護神に大きく近づいたのは間違いないだろう。

「ここで序列が変わった? そうは思わないですね。やっぱり2次予選、最終予選で何試合も苦しい試合があった中、ゴンちゃんがチームを救ってくれた。これは親善試合ですし、差はあると思います」とシュミットはあくまで慎重な姿勢を貫いたが、これだけチームに勢いをつけられる守護神を使わない手はない。

2カ月後のドイツ戦(ドーハ)で日本屈指の大型GKがスタメンでピッチに立てるか否か。それはシントトロイデンでの一挙手一投足次第。ここから11月までのシュミットのさらなる前進を願ってやまない。

【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。

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【新しい景色へ導く期待の選手】「スペイン戦が終わった時にどデカい声でブラボーと叫んでいる」。その光景を現実にすべく代表キャリアの全てを注ぐ!/長友佑都(FC東京/DF)

森保ジャパンの命運を左右するスペイン戦が12月1日夜(日本時間2日早朝)に迫った。泣いても笑ってもこの一戦で日本代表の行く末が決まる。自身のキャリアの集大成として挑んでいるベテラン勢は「絶対にここで終わらせない」という強い思いで戦うはずだ。 その筆頭がフィールドプレーヤー初のW杯4回出場を果たした長友佑都(FC東京)。彼のキャップ数は140に達し、W杯出場試合数も日本人最多の13に伸びた。2010年南アフリカ、2018年ロシアと2度ベスト16入りしている彼にまだ果たせていないのが、ベスト8進出。新たな景色を見るためにも、相手がスペインだろうが何だろうが負けられない。持てる全て力を注ぎ込んで、勝ち点3を取りに行くしかない。 今大会に向けても、誰よりもチームを盛り上げ、いい雰囲気を作ろうと努めてきた。「ハット・金髪・赤髪」と3段階でヘアチェンジしたのもその一環。36歳の大ベテランが派手なパフォーマンスをすれば、失敗した時にどれだけの批判を食らうか本人もよく分かっていたが、代表の士気を高めるためにあえてアクションを起こした。 その甲斐あって、23日の初戦・ドイツ戦で歴史的勝利を飾り、日本中が歓喜に沸いた。長友本人も取材ゾーンに現われるや否や、決勝弾を叩き出した浅野拓磨(ボーフム)と熱い抱擁をかわし、「ブラボー」を大声で叫んだほど、過去にない興奮状態だった。 チームもハイテンションになり、このまま勢いに乗れれば理想的だったが、27日のコスタリカ戦で落とし穴にハマってしまう。スペインに0-7で敗れて原点回帰を図ってきたコスタリカの堅守を崩せず、停滞感に包まれる。そして後手の踏み続けた終盤にミスから失点。一気に状況が険しくなった中、スペインとの大一番を向かえるのである。 「ドイツ戦は戦い方がハッキリしていて、明確に戦えましたけど、コスタリカ戦は最低引き分けでもいいということで、サッカーが慎重になりすぎた。リスクをかけて攻撃するシーンが少なかった。裏を狙ったり、サイドで強引に突破したり、ミドルシュートを打ったりと、大胆さを欠いたところが反省点」と彼はズバリ指摘した。 ただ、逆にスペイン戦は「勝ちに行く」という意思統一ができている。ドイツ相手に6割以上ボールを支配した世界最高峰の国を倒すのは並大抵のことではないが、メンタル的にはプラスと言っていい。 問題はどうやって勝つかだ。この3日間、選手たちはこれまで通りの[4-2-3-1]で行くのか、5バックで引き気味に行くのかといった激論を交わしてきたというが、いずれにしても相手の中盤とサイドをガッチリ封じないと、どこかでスキが生まれてしまうのは事実。ボールの奪いどころを明確にしていくことが奇跡への絶対条件となる。 左サイドバック(SB)で先発するであろう長友がマッチアップするのは、推進力の高いフェラン・トーレス(バルセロナ)が濃厚。メンバーを代えてくるとすれば、ニコ・ウィリアムズ(アスレティック・ビルバオ)の可能性もある。 どちらも能力の高い選手だけに、1対1で負けたら話にならない。地上戦での長友は計算できるが、できるだけ高い位置でボールを奪いたいところ。相手は即時奪回能力が高いから、そこで失ったら守備負担が増えていくだけ。そういった悪循環に陥らないように、マイボールにできる時間を増やし、体力消耗や集中力低下を回避するような賢く効率的な試合運びを見せなければならないのだ。 失点をゼロに抑えていれば、相手も焦れてくるはず。そこで畳みかければ希望が見えてくるだろう。ドイツ戦でできたのだから、スペイン相手にやれないわけがない。長友はしっかり後方からアタッカー陣を支えるべきだ。 「僕は過去3回、グループ3戦目を戦っていますけど、ロシアの時は何の怖さも感じなかった。W杯を楽しむゾーンに入っていた。今はあの時の感じです。ただただ侍魂で挑んでいくんだって強い気持ちが100%あるんで、絶対に突破できる。スペインが相手だからこそ、そういう気持ちが強い。非常に楽しみです」と熱い男は目をギラつかせた。 スペインのルイス・エンリケ監督の会見では、スペインメディアは決勝トーナメント以降の戦いにフォーカスした質問が次々と飛び出した。彼らにしてみれば「コスタリカに取りこぼした日本には勝って当然」という考えなのだろう。指揮官自身も「我々は7試合戦うつもりでここに来ている」と自信を見せた。そういった過信が落とし穴になる可能性は少なくない。老獪な長友はそこを突いていける選手。インテル、ガラタサライ、マルセイユといった名門クラブで修羅場をくぐった経験値を今こそ示すべきだ。 「今日(28日の練習)のストレッチの時に『1分間頭を空っぽにして』とフィジカルコーチに言われたんですけど、僕がスペインが終わった時にメチャメチャどデカい声で『ブラボー』と言っている光景が浮かんできたんですよ。現実になるなと。今までも降りてきたものは現実になってきてるんで」 その言葉通り、未来を現実にするのは自分自身、そして日本代表だ。高い高いハードルを越えて、長友佑都の存在価値を世界に示してほしいものである。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.12.01 22:00 Thu
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【新しい景色へ導く期待の選手】右のスピードスターがドイツを切り裂く。最終予選のスターからW杯のスターへ!/伊東純也(スタッド・ランス/FW)

2018年9月の森保ジャパン発足から4年2カ月。その集大成となる2022年カタール・ワールドカップ(W杯)が23日の初戦・ドイツ戦からついにスタートする。 98年フランスからの過去6大会を見ても、初戦で勝ち点を奪った2002年日韓、2010年南アフリカ、2018年ロシアの3大会は決勝トーナメントに進出している。史上最高のベスト8の壁を越えようと思うなら、初戦から勢いがつくような好ゲームを見せ、最低引き分け以上の結果を手にすることが必要不可欠だ。 4度目出場の川島永嗣(ストラスブール)、長友佑都(FC東京)らが中心となって、その重要性をチーム全体に徹底させていることだろう。 対するドイツは、2021年夏のハンジ・フリック監督就任以降、攻守の切り替えと連動性が大いに高まった。とりわけ、バイエルン・ミュンヘン勢を主体とした中盤は世界最高峰との評価もある。ボランチのヨシュア・キミッヒ、レオン・ゴレツカ、トップ下のトーマス・ミュラーらは同じチームというメリットを生かし、高度な連携連動とトランジションを体現してくる。 日本としては、その相手を捕まえながら、高い位置でボールを奪い、数少ない得点機をモノにするというしたたかな戦い方を成功させることが肝要だ。 特にドイツの守備陣はハイラインを取るうえ、攻撃時には3枚になるため、背後のスペースが大きな狙い目になる。16日のオマーン戦(マスカット)でも何度も繰り返し相手に背後を突かれ、決定機を作られていた。オマーンの暑さと時差に苦しんだ部分はあったものの、鎌田大地(フランクフルト)が「ドイツ代表はバイエルンより強くない」と語ったように突きどころは必ずあるのだ。 そこで、キーマンの1人と位置づけられるのが、右サイドの伊東純也(スタッド・ランス)。彼のタテのスピードは、強豪国と言えどもそうそう止められないはずだ。 「シンプルにいい形で奪ったら、ワンタッチで出して、サイドの背後のスペースを狙っていくのがいいんじゃないかという話になっている。自分はそこをうまく突けるように狙っていきたいなと思います」と本人もタテへの推進力を前面に押し出す構えだ。 確かに、右サイドでDF陣を引っ張れれば、中が空いて、鎌田や左サイドに陣取るであろう久保建英(レアル・ソシエダ)らが飛び出せる。鎌田は世界的名守護神、マヌエル・ノイアー(バイエルン)が要注意選手に挙げたほど、ドイツ全体が警戒してくる。その彼にマークが集まれば、伊東自身が中へ切り込んでフィニッシュに持ち込めるシーンも生まれそうだ。むしろ、彼にとっては、そうやって高度な決定力を発揮するチャンスが訪れるのは望むところだろう。 「6月のブラジル戦もそうだったけど、強豪は少ないチャンスでもしっかり決めて、そこから流れを作ってきますからね。(2020年11月に)メキシコとやった時も決定力の差をしみじみ感じた。今回はドイツやスペインと当たるわけだから、しっかりチャンスをモノにできるようにしたいです」 本人もこう意気込んでいただけに、今こそ「イナズマ純也」の切れ味鋭いシュート力を見せつけるべき時である。 「もともと自分はそんなに点を取るタイプじゃない」とも謙遜する伊東だが、最終予選では最終予選4ゴール・2アシスト・PK奪取。全12得点の半分以上に絡んだ。そのポテンシャルをアジアレベルにとどめるのではなく、世界の大舞台でも示せれば、本当に理想的。そのうえで、日本のエースに躍り出てくれれば最高のシナリオだ。 同じ金髪で12年前の南アフリカの地でブレイクした本田圭佑は1つの見本と言っていい。 「W杯のエースと言われると、日本ではやっぱ本田さんのイメージがありますよね。何だかんだで点を取るのはホントにすごい。本田さんのゴールで一番覚えているのは、南アのデンマーク戦のFK。俺はまだ大学生だったけど、テレビで見てて『すげえ』って」 W杯初出場19人というフレッシュな森保ジャパンにはまだ本田や中田英寿のような頭抜けたスターはいない。が、カタールでブレイクした人間がその系譜を継ぐことになる。鎌田、久保あたりが有力候補と見られるが、伊東にも大きなチャンスが広がっている。 「正直、学生の頃はここまで来られるイメージは湧いていなかったですね。もちろんプロになって代表になってW杯に出てやろうという気持ちはありましたけど、学生の頃は本当にプロになるぞって気持ちだけでした」 神奈川大学時代までそれほど日の当たるキャリアを歩んでこなかった遅咲きの男は、謙虚さの中にも野心をみなぎらせている。そういった部分も本田に通じるところがある。 いずれにせよ、伊東がやらなければいけないのは、ドイツを震撼させるようなゴールに直結するプレー。矢のような推進力で敵をキリキリ舞いすれば、いつか必ず得点チャンスが巡ってくる。それを仕留めて、日本を勝利へと導くこと。29歳の遅咲きのアタッカーには普段通りの自然体を貫き、大仕事を遂行してほしい。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.11.23 10:00 Wed
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【2022年カタールへ期待の選手vol.118】「強い日本を見せることが人気向上の一番の近道」。21歳・最年少レフティが示した本気と覚悟/久保建英(レアル・ソシエダ/FW)

2022年カタールワールドカップ(W杯)前最後のテストマッチとなる17日のカナダ戦(ドバイ)が迫ってきた。日本代表は11日から練習拠点「アル・サッド」で事前調整を続けてきたが、最初から帯同しているのは国内組7人だけで、欧州組は15日に合流した選手たちも多い。主力級ながらも試合間隔が短い鎌田大地(フランクフルト)や伊東純也(スタッド・ランス)らはスタメンから外れる可能性が高そうだ。 こうした中、12日深夜にドーハに到着し、13日から練習に参加している久保建英(レアル・ソシエダ)は、比較的良い状態でこの一戦を迎えられそうだ。 「状態は良いと思います。(クラブで)試合もさせてもらったんで、もう準備はバッチリだと思います」と同日の練習後、報道陣に囲まれた彼は清々しい表情を見せた。 10月27日のUEFAヨーロッパリーグ(EL)のオモニア・ニコシア戦で負った左肩脱臼も全く問題ない様子。 「肩だったんで、痛くてもやればいいかなと思ったんで、比較的、楽観視はしてましたけど。この(直前合宿の)期間に良い状態に持っていければ良いと思います」と11月23日の初戦・ドイツ戦までには万全の状態に仕上がる見通しのようだ。 その久保だが、6月4日の21歳の誕生日には「自分の(低い)立ち位置は客観的に分かっている。でも人は3カ月もあれば変われる」とW杯メンバーの当落選上にいることを認めたうえで、半年間に全てを賭けていた。 その言葉通り、今夏、レアル・ソシエダを新天地に選び、開幕ゴールからシーズンをスタート。その後もスペイン1部で10試合先発とハイペースで実績を積み重ねていった。ELの負傷は計算外だったかもしれないが、公式戦3戦を休んだだけで復帰。カタールW杯26人にも文句なしに名を連ね、本番では左サイドのレギュラーをつかめそうなところまで一気に上り詰めてきた。 「環境を変えたことによって、今回はいい方向に転んだのが大きい。レアル・ソシエダっていうクラブが僕をいい選手にしてくれたと思うので、いい監督、いいチームメートに恵まれたことに感謝したいなと思ってます。(W杯メンバー発表も)ラ・リーガで3位のチームでレギュラーで出ている選手が代表に選ばれないことはまずないだろうと楽観視できていた。強いチームで試合に出ることの重要性に改めて気づかされました」 彼は神妙な面持ちでこう強調。過去3シーズンのようにレアル・マドリーからのレンタルではなく、完全移籍で異なる環境に赴いたことで、強い覚悟と決意を持ってサッカーに向き合えたことが大きかったのだろう。 加えて言うと、ソシエダで格上相手に互角以上の戦いを見せる術を体得したことも大きい。今大会で日本が対峙するのは、ご存じの通り、ドイツ・スペインという強豪国。彼らから勝ち点を取らないと上にはいけない。その最適解を久保自身が導き出せる状態にいるのは、森保ジャパンにとっても朗報に他ならないだろう。 「クラブでも決めきれずに悔しい思いをした試合が何試合かあった。代表も必ずチャンスを作れると思います。そのチャンスを決め切って、試合を終わらせるところを大事にしないといけない」と数少ない得点機をモノにすることに久保は集中していくという。 初戦・ドイツ戦をイメージすると、彼が左サイドで出た場合、相手の右サイドにはヨナス・ホフマン(ボルシアMG)やセルジュ・ニャブリ(バイエルン)らが陣取り、右サイドバック(SB)にはルーカス・クロスターマン(ライプツィヒ)やティロ・ケーラー(ウエストハム)といった強力な面々が並ぶだろう。こうしたタレントたちと対峙すれば、日本はどうしても守勢に回る時間帯が長くなる。が、背後を突けたり、ペナルティエリア付近でフリーになれる場面が皆無とは言い切れない。今の久保にはそこを一刺しできる鋭さがある。それは日本にとって非常に力強い要素だろう。 「ドイツのサイドアタッカーは速いのが2〜3枚いて、すごく攻撃に自信を持っている。その分、ある種、エゴもある。規律のちょっとした抜け目のところだったりを僕らが突いていければいいのかな」と若武者も虎視眈々と狙い目を絞り込んでいる模様だ。 21歳とは思えない戦術眼とインテリジェンス、巧みな駆け引きを持ち合わせている逸材が活躍し、日本が強豪揃いのグループを勝ち上がって躍進すれば、日本国内の関心は一気に高まるはずだ。昨今はサッカー人気低迷が懸念されているが、「それを変えるには、自分たちが結果を出すしかない」と久保は良い意味で割り切っている。 「日本は他の国と比べてサッカーに対する熱がないなっていうのを、僕はW杯が近づくにつれて感じています。日本は豊かなので、サッカーでしか成り上がれない国じゃない。今、自分が何かを言ったところでサッカー熱を持ってくれる子供は多くないと思いますね。だからこそ、今大会で強い日本を見せていくのが人気向上の一番の近道。ブラジルやスペイン、ドイツの子供たちはサッカー以外にやりたいことの選択肢が少ない。列強って言われる国に日本がなっていくしか、人気を取り戻すのは難しいんじゃないかと思います」 彼の言葉は実に的を得ている。日本が世界トップ10に入るような国なら、人々は自然とサッカーを見る。そういう環境に変えていくためにも、21歳・最年少のレフティが中心となって歴史を変えていくしかない。 まずは直近のカナダ戦で異彩を放つこと。背番号11にはそこから始めてもらいたい。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.11.16 20:00 Wed
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世界舞台で忍者ポーズを届けられるのか?追加招集・町野修斗に託されるもの

長期リハビリ中の浅野拓磨(ボーフム)、板倉滉(ボルシアMG)の復帰がズレ込み、冨安健洋(アーセナル)や遠藤航(シュツットガルト)という主力級の面々までアクシデントに見舞われている日本代表。11月23日の2022年カタールワールドカップ(W杯)初戦・ドイツ戦(ドーハ)まで約2週間という押し迫った時期に、チームが野戦病院状態に陥っているのだ。 そんな中、最終予選を通して左サイドバック(SB)として存在感を高めていた中山雄太(ハダースフィールド)のアキレス腱負傷は特に衝撃的なニュースに他ならなかった。森保一監督は最初から大ベテランの長友佑都(FC東京)と昨季1シーズンで大きく成長した伊藤洋輝(シュツットガルト)を招集していたものの、東京五輪世代のレフティ離脱というのは想像以上に大きなダメージだった。 そこ本来ならば、同ポジションの佐々木翔(広島)、あるいはDFの瀬古歩夢(グラスホッパー)らを呼ぶのがセオリー。だが、指揮官は「全ポジションの選手が対象」と語り、最終的にFWの町野修斗(湘南)を抜擢した。 これには本人も驚きを隠せなかったという。 「7日の夕方、(湘南強化部長の)坂本紘司さんから電話がありましたけど、ホントに呆然とした感じでした」と本人も9日の代表選出記者会見でコメントしたという。 4カ月前のEAFF E-1選手権で代表デビューを飾ったばかりの23歳の若き点取屋にしてみれば、自分がカタールに行けるとは想像していなかったはず。チャンスを与えられた9月のアメリカ戦(デュッセルドルフ)で、不慣れな粘土質のピッチと屈強なDF陣との対応に苦慮したことも、本人の自信を失わせたように映った。「町野は4年後のエース候補。カタールW杯には間に合わない」といった声も高まり、11月1日に発表された26人から漏れたのはある意味、やむを得ないという見方をされていた。 しかしながら、森保監督はバックアップメンバーを打診した大迫勇也(神戸)の辞退、浅野のケガが不透明な部分を加味して、FWをもう1枚増やす決断を下したのだろう。 「日本人得点王で今季J1で13点を取っていて、献身性もすでに確認している」と指揮官は選出理由を語った模様。確かにリーグ終盤の町野は得点感覚が研ぎ澄まされ、凄まじい勢いが前面に出ていた。湘南のJ1残留請負人にもなった。それをカタールに持ち込んでほしいという期待と願いを込めての選出なのだろう。 彼が加わったことで、今回のFW陣は浅野、前田大然(セルティック)、上田綺世(セルクル・ブルージュ)の4枚。ドイツ戦は「鬼プレス」を武器とする前田のスタメンが有力視される。浅野がケガから復帰できれば12月1日のスペイン戦(ドーハ)には出ると見られるため、町野にチャンスがあるとすればこの2戦の途中から、あるいは11月27日のコスタリカ戦(同)になってくる。 特にコスタリカは堅守をモットーとするチーム。6月のニュージーランドとのプレーオフでは[4-4-2]からスタートし、早い時間帯に先制点を奪うと、後半からは[5-4-1]にシフト。37歳の英雄、ブライアン・ルイスを入れてチームに活力を与え、最後の最後まで虎の子の1点を守り切った。 「勝ち点3のためならどんな手でも使う」という泥臭い中米の難敵と対峙する場合、日本はドイツ・スペイン戦よりボール支配率が上がるはず。だからこそ、前線で起点になれる選手がほしい。そこで上田と町野が候補になるが、上田はタメを作るプレー以上に「ザ・ストライカー」として多彩な得点の形を示す方が輝ける。スタートは町野で行って体を張って攻守両面で頑張り、相手が落ちてきた時に上田、あるいは別のカードを切る方が日本は勝利に近づくはず。町野にとっては大きなチャンスなのだ。 実際、東京五輪でも、当初予備登録だった林大地(シント=トロイデン)がコンディション不良の上田や左右のサイドでも併用されていた前田を追いやり、レギュラーを確保した前例もあるだけに、期待は高まる一方だ。 「自分には失うものはないと思ってますし、思い切って勢いを持ってプレーするだけ。自分はFWなのでゴールという結果を残したい。前線で起点になるプレーと背後への抜け出し、右足・左足・頭とどこでも点を取れるところをぜひ見てほしい。自分次第で世界を切り開いていけると思っています」と本人も力を込めた様子。本当にW杯は何が起きるか分からないだけに、町野というサプライズ人材が日本の救世主になるかもしれないのだ。 2010年南アフリカW杯2ゴールの本田圭佑、2018年ロシアW杯2ゴールの乾貴士(清水)を思い返しても、彼らは大会前はそこまで注目されていなかった。乾などはケガで直前まで試合に出られるかどうか分からなかったくらいだ。そういう人間でも1つチャンスをつかみ、ゴールという結果を残せるのがW杯という舞台。町野も「何かやってくれる」という期待感を漂わせている。 W杯でゴールを奪えれば、彼の看板とも言える「忍者ポーズ」を世界に届けることも可能になる。三重県伊賀市出身の誇りを胸に秘め、大舞台で躍動する大型FWの一挙手一投足が非常に楽しみである。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.11.15 12:30 Tue
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【2022年カタールへ期待の選手vol.117】10月に入ってアーセナルでもフル稼働。満を持してカタールW杯に挑む若き守備の大黒柱/冨安健洋(アーセナル/DF)

「なかなか(代表でもクラブでも)コンスタントに試合に出ていない中で、あれだけ通常通りのパフォーマンスを出せるというのは、やっぱり実力のある選手だなと思います。あとはケガをしないでほしいですね」 9月23日のアメリカ戦(デュッセルドルフ)。キャプテン・吉田麻也(シャルケ)が神妙な面持ちでこう語った通り、2021年11月のオマーン戦(マスカット)以来、10か月ぶりに日本代表センターバック(CB)に入った冨安健洋(アーセナル)が、堂々たるプレーを見せてくれた。 彼の現状を見極めた森保一監督は、試合終盤から右サイドバック(SB)でもトライ。「ご存じの通り、所属チームでそのポジションをやっていますし、今回試すことの1つかなと。トミが6月にケガでプレーできない状態でなければテストしていました。チームの幅を広げるためのオプションとして考えられると思います」と前向きにコメントしていたほどだ。 実際、彼は今季アーセナルで左右のSBにCB、3バックのDFと守備のあらゆるポジションをこなしている状態。高いレベルでどこでも穴を埋められる存在がいるというのは、チームにとっても非常に心強いポイントだ。 目下、負傷離脱中の板倉滉(ボルシアMG)が回復傾向にあるとはいえ、いきなり強度の高いW杯本番で復帰するとリバウンドが来る可能性も否定できない。だからこそ、冨安にはフル稼働してもらわなければ困るのだ。 「1月、2月、3月くらいはずっとケガしていて、その時が一番きつかった。6月の代表の時もケガでしたけど、その時よりも1〜2月の方がキツかった。そこと比べると、今はシンプルにサッカーができているというか、練習できていること、試合に出られるフィットネスの状態である。それがまず1つ、ポジティブだと捉えています。代表とクラブでポジションが変わることで頭の切り替えも必要ですね。特に感覚の部分。ピッチの上で自分の価値を証明するしかないんで、ピッチ上でやるべきことをしっかりやるだけだと思っています」と冨安本人は自信を取り戻した状態で、来るべき大舞台を見据えている様子だ。 さらに朗報なのは、10月に入ってアーセナルでの出番がより増えていること。10月1日のトッテナム戦こそラスト1分間の出場にとどまったものの、6日のUEFAヨーロッパリーグ(EL)・FKボデ・グリムト戦第1レグ、9日のリバプール、16日のリーズ戦と試合間隔の短い3つのゲームで90分フル出場を果たしているのだ。 その間に入っていた13日のFKボデ・グリムとのEL第2レグは後半25分からの出場だったが、ミケル・アルテタ監督はこれだけの超過密日程でも彼を連続してピッチに送り出している。冨安のフィジカルコンディションが上がっているという確証があるからこそ、大胆な起用に踏み切れるのだ。 もともと守備能力の高さには太鼓判を押していた指揮官も、体力面の不安があったからこそ、シーズン序盤は慎重な姿勢を示さざるを得なかった。その障害がなくなった以上、ここからは「どんどん冨安を使いたい」と思っているに違いない。 世界的名将から信頼を寄せられる24歳のDFがフル稼働できるとなれば、森保監督も本当に心強い。ご存じの通り、カタールW杯は中3日ペースとこれまでのW杯より日程がタイト。しかもグループステージの相手はドイツ、コスタリカ、スペインという強豪国ばかりだ。 「特に初戦のプレッシャーや相手の力を踏まえた時、普段よりも想像以上に大きなエネルギーを使うことになる。心身ともに中3日で回復できない試合をしなければ、勝ち点3を取ることは難しいと思います」と指揮官が言うように、ドイツ戦から凄まじいパワーを使うのは確実だ。 当然、ターンオーバーも視野には入れているだろうが、吉田、酒井宏樹(浦和)ら守備陣の主軸はそう簡単には代えられない。大黒柱の1人と言っていい冨安ももちろんその1人。ケガで不完全燃焼に終わった東京五輪の二の舞だけは許されないのだ。 本人も「この1年間、チームに迷惑をかけた分、恩返しをしたい」という思いが非常に強いはず。ここまで貯えてきた経験値と戦術眼、ゲームを読む力を発揮すべきなのは、まさに今なのだ。 冨安が世界基準のパフォーマンスを示してくれれば、相手がドイツやスペインでもそうそうやられるはずがない。無失点に抑えれてさえいれば、必ず日本にも勝機が訪れるに違いない。 史上初のベスト8入りを実現するためにも、冨安がリーダーシップを示し、チーム全体を統率することが肝要だ。少し前までは「吉田に頼っている若手」という印象だったが、そこから脱皮することも彼に求められたタスク。「真の闘争心溢れるDF」へ変貌を遂げる姿をカタールで強烈にアピールしてほしいものである。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.10.23 19:10 Sun
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