【2022年カタールへ期待の選手vol.85】ロシアW杯の貴重な経験値を武器に大激戦のボランチ陣をリードできるのか?/柴崎岳(レガネス/MF)

2021.08.31 20:10 Tue
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「今年の3・6月にも彼のことは招集しようと考えていました。所属チームで結果を出してもらって1部昇格をすることが本人のため、我々のためにもなりますし、クラブのためにもなると考えていました。6月は直前にケガしてしまって呼べませんでしたが、今は新しいシーズンを戦っており、(柴崎)岳もレギュラーとしてチームの中心として戦っているのを確認しています。コンディション的にも非常にいいということで招集しました」

2022年カタールワールドカップ(W杯)アジア最終予選の重要な最初シリーズとなる9月2日のオマーン戦(大阪・吹田)と7日の中国戦(ドーハ)に向け、森保一監督は満を持して柴崎岳の招集に踏み切った。

長谷部誠(フランクフルト)とボランチを組んでベスト16進出の原動力になった2018年ロシアワールドカップ(W杯)から3年。その経験値を遺憾なく発揮する時が来たのだ。

ご存じの通り、彼は2018年9月の森保ジャパン発足時から「チームの大黒柱の1人」と位置づけられてきた。2019年アジアカップ(UAE)は3戦目のウズベキスタン戦を除いて5試合に先発。同年6月のコパ・アメリカ(ブラジル)もA代表の主力としてU-22世代の中山雄太(ズウォレ)や板倉滉(フローニンヘン)らをけん引した。同大会期間中には森保監督が彼に話しかけ、20~30分にわたってマンツーマンで意思疎通を図る姿が連日見られ、2人の確固たる信頼関係が色濃く伺えた。

直後にスタートしたカタールW杯2次予選もボランチ陣をリードする存在に君臨していたが、同年夏にスペイン1部のヘタフェから2部のデポルティボ・ラ・コルーニャへ移籍したあたりから柴崎の歯車が狂い始める。チームは2部下位に低迷し、2020年春にはコロナが感染拡大。代表も活動停止に追い込まれた。

そんな苦境にめげることなく、彼は昨夏に同じ2部のレガネスへ移籍。再起を図った。新天地でコンスタントな働きを見せるようになったのは朗報だったが、森保監督は柴崎のスペイン1部昇格を強く願い、「クラブ専念」という特別な配慮をした。

しかしながら、結果的にレガネスの1部昇格が叶わなかったうえ、彼は2021年の代表活動から長期間離れるという形になった。10カ月の空白期間には、遠藤航(シュツットガルト)がドイツ・ブンデスリーガ1部でデュエル王に輝き、ポルトガル1部挑戦に踏み切った守田英正(サンタ・クララ)も急成長。橋本拳人(ロストフ)や川辺駿(グラスホッパー)も存在感を増した。さらに今夏の東京五輪で22歳の田中碧(デュッセルドルフ)が遠藤航とのコンビで好連携を披露。一気にA代表候補に浮上してきた。代表実績トップクラスの柴崎といえども、地位安泰という状況ではなくなったのだ。

それでも、指揮官がこのタイミングで柴崎を必要だと考えたのは、最終予選一発目の難しさを痛感しているからだろう。前回のロシアW杯最終予選を振り返っても、2016年9月の初戦・UAE戦(埼玉)を1-2で落とし、まさかの黒星発進を強いられているのだ。

そこからの紆余曲折は記憶に新しいが、6大会連続出場を決めた2017年8月のオーストラリア戦(埼玉)では長谷部がケガを押して強行出場し、チーム全体をまとめあげ、切符を手にしている。柴崎はそのピッチには立っていないものの、ベンチから前キャプテンの鬼気迫るプレーを目の当たりにしたはず。そういった経験値を重圧のかかる今回のシリーズで還元してほしいからこそ、森保監督は彼を呼びものしたに違いない。

新シーズンは8月14日に開幕し、ここまでの3試合はコンスタントにボランチでスタメンを飾っている。スペインに赴いてからは2列目やサイドアタッカーとして使われることもあった柴崎だが、ボランチでいい感触をつかんだ状態で代表に合流できるのはポジティブな点。直近のイビサ戦が28日にホームで行われたため、8月30日の練習初日からフル稼働できるのもコンディション面を考えるとアドバンテージがある。五輪6試合に出ずっぱりでドイツに戻ってすぐにキャプテンとしてチームをけん引している遠藤航の疲労度を考えると、柴崎が少しでも負担を軽減し、中盤を統率していくべき。それだけの自負が本人にはあるはずだ。

彼にとって直近ラストの代表戦だった2020年11月のメキシコ戦の後、「自分たちの実力はこんなものというのはしっかり捉えていい。まだまだ力不足だと思いますし、チームとしての成熟度は高められる。選手個々人の能力もさらに上げていかなければいけない」と課題を口にしていたが、その危機感を吉田麻也(サンプドリア)、川島永嗣(ストラスブール)らロシア経験者とともに若手に伝えていくことも柴崎に課せられた命題だ。そうやってつねに高い意識を持ち、ピッチで違いを示していくことができれば、日本が最終予選で苦しむことはなくなるはず。

今回はコンディション的に非常に難しい2連戦。しかも対戦相手は長期間の事前合宿に取り組んでいる。不利な条件が少なくないだけに、柴崎ら代表経験豊富な面々の存在が重要になってくる。10カ月ぶりの日の丸を背負った日本のレジスタがどのようなパフォーマンスを見せてくれるのか。大いに期待したい。

【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。



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10月12日のオーストラリア戦(埼玉)を2-1で辛勝し、安堵したのもつかの間、11月には絶対に落とせないアウェー2連戦がやってくる。 2022年カタールワールドカップ(W杯)アジア最終予選B組で目下、4位に沈む日本にとって、最下位・ベトナム、3位・オマーンは確実に6ポイントを手にしなければならない相手。ここで躓くようなことがあれば、本大会ストレートインの2位以内はおろか、プレーオフ圏内の3位すら危うくなりかねないからだ。 9月は欧州視察に出向いていた森保一監督は目下、日本に残ってJリーグや福島で開催されたAFC・U-23選手権に足を運んでいる。その一方で、横内昭展・斉藤俊秀両コーチは欧州で目ぼしい人材のチェックに奔走中だ。 その筆頭が三笘薫(ユニオン・サン=ジロワーズ)。東京五輪の後、イングランド・プレミアリーグのブライトン&ホーヴ・アルビオンに完全移籍し、英国労働ビザの関係もあってベルギー1部のユニオン・サン=ジロワーズにレンタルされたが、9月12日のデビュー以降、試合をこなすごとに存在感を高めているのだ。 とりわけ、インパクトが大きかったのが、10月16日のRFCセラン戦だ。後半2分に出場してハットトリックの離れ業を達成。「サン=ジロワーズに三笘薫あり」をサポーターに力強く示したのである。続く23日のKASオイペン戦では加入後初先発のチャンスをつかみ、先制PKにつながるドリブル突破で見る者を魅了。さらには3点目の起点になるパス出しも披露した。 ルーキーイヤーだった2020年の川崎フロンターレで見せていた緩急自在の「ヌルヌルドリブル」は異国でも健在。屈強で大柄な相手DFを次々とかわしてゴール前に侵入していく姿はまさに痛快というしかない。本人も「やれる」という手ごたえを深めているはずだ。 こういう絶好調の人間を呼んで使うことが、停滞中の日本代表の活性化につながるのは明らかだ。過去の実績や経験値に固執しがちな森保監督だが、崖っぷちに追い込まれたオーストラリア戦でついに[4-3-3]の新布陣を採用し、田中碧(デュッセルドルフ)と守田英正(サンタクララ)を中盤に抜擢した。11月シリーズで4-3-3をそのまま使うか、[4-2-3-1]に戻すのかは対戦相手との噛み合わせを見てからだろうが、三笘は田中碧や守田との共存は問題なくできる。川崎やサン=ジロワーズでの起用法を見ていても分かる通り、先発でもサブでも柔軟に対応できるところも魅力だ。 長年、絶対的1トップと位置づけられてきた大迫勇也(神戸)が負傷離脱中で11月シリーズに間に合う保証がないだけに、南野拓実(リバプール)が最前線に上がる可能性も大いにある。古橋亨梧(セルティック)もゴールにより近いポジションで使った方が怖さを発揮できる。となれば、左サイド要員は手薄になる。原口元気(ウニオン・ベルリン)や浅野拓磨(ボーフム)もいないわけではないが、敵を欺く意味でもA代表実績ゼロの三笘は大きなサプライズになる。ここは思い切って呼んで使うべきだ。 本人も不完全燃焼に終わった東京五輪の悔しさを晴らすチャンスが巡ってくるのを待ち望んでいるに違いない。 「五輪を迎える年が24歳というのは、決して若くない。五輪がW杯に続く大きな大会だと認識してますし、人生の大きな転換点になるとも思ってます。でも五輪に選ばれることがゴールではない。大学からプロに入った遠回りした選手でも活躍できることを示さないといけない」と東京五輪前にも語気を強めていたが、ベルギーに渡ったことで「今、結果を出さなければ埋もれてしまう」という危機感はより強まったことだろう。 確かに世界のサッカー界で見れば、24歳という年齢は中堅。2010年南アフリカW杯で日本をベスト16へと導いた本田圭佑(スドゥーヴァ kjl)が24歳だったのだから、今からA代表のキャリアを始めるというのは、少しスタートが遅いのも事実だ。しかしながら、川崎の偉大なレジェンド・中村憲剛(JFAロールモデルコーチ)のように25歳で初キャップを記録し、30代まで日の丸を背負い続けた選手もいる。大卒の三笘は同じような軌跡を辿れるだけのポテンシャルがある。遅咲きでも大成できることを自らの実力で証明してほしいのだ。 「自分の特徴は1人はがすところだったり、アイディアのあるプレー。評価されやすくて評価されやすいですけど、批判もされやすいところ。そこは難しい部分ではありますけど、『日本に貢献したいって気持ち』がプレーに出ると思う。つねにそういう意識を持ったプレーを見せたいです」 三笘はこうも話している。単にドリブル突破でチャンスメークをするだけでなく、チームの勝利のために献身的な守備はハードワークを厭わないという強い覚悟を持って戦っているのだ。そういうメンタリティがあれば、必ずA代表でも役に立てる。 貪欲に泥臭くボールを追い、相手をつぶし、そのうえでドリブルからゴールを奪う…。タフさを増した三笘薫が救世主となる11月シリーズをぜひ見てみたい。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> <span class="paragraph-title">【動画】11月に初招集なるか!? 三笘薫の圧巻ハットトリックを全てチェック!</span> <span data-other-div="movie"></span> <blockquote class="instagram-media" data-instgrm-captioned data-instgrm-permalink="https://www.instagram.com/p/CVGwQ4tqbcB/?utm_source=ig_embed&amp;utm_campaign=loading" data-instgrm-version="14" style=" background:#FFF; 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【2022年カタールへ期待の選手vol.89】今こそ代表エースに定着した原点回帰を!エースの存在価値が問われる大一番/大迫勇也(ヴィッセル神戸/FW)

「(サウジアラビア戦も)チャンスはあったので。僕自身決めないといけないシーンはあると思います。そこを分かりつつ、後はチームとして得点のチャンスを増やすためにどうするかを話し合っています。勝てる確率を高くしていくのが僕らが今、やるべきことだと思うし、本当に最高の準備をしないといけない。いい切り替えをして試合にのぞまないといけないと思います」 2022年カタール・ワールドカップ(W杯)出場権獲得に向け、最終予選序盤戦で早くも2敗と崖っぷちに立たされている日本代表。12日のオーストラリア戦(埼玉)はその行方を大きく左右するだけなく、森保一監督体制続行の是非も問われる大一番となる。 「正直、(これだけのプレッシャーは)初めての経験。やっぱり簡単な試合はない」とW杯予選初参戦の古橋亨梧(セルティック)も異様なムードに驚きを隠せない様子だが、若い世代の大半がこの苦境をどう乗り切るか戸惑っているはず。だからこそ、過去の最終予選を知る面々が力強くチームをけん引しなければいけない。 大迫勇也も2014年ブラジルW杯最終予選こそ経験していないが、2018年ロシアW杯大会の時は苦境続きだった前半戦の山場である2016年11月のサウジアラビア戦(埼玉)から参戦。そこまでの1年半、代表から遠ざかってドイツで屈強かつ大柄なDF陣と対峙してきた経験値をいかんなく発揮し、2-0の勝利に貢献。そこから絶対的1トップの座を射止めた。 「やっぱドイツはゴール前の強さがすごくありますからね。自陣にしろ、相手陣内にしろ。そこでプレーする回数が増えて、点を重ねることができれば、それだけ自分も強くなるし、成長できるってこと。アジア予選はいつも通りやってれば大丈夫だと思ってたんで」と自信満々に話したように、急激な成長曲線を辿っていた当時の大迫は本当に頼もしかった。あれから5年が経過し、アジア最高峰FWになった今、その自信とチャレンジャー精神が少し欠けているのではないだろうか。 実際、大迫へのマークの厳しさは凄まじいものがある。9月の初戦・オマーン戦(吹田)では彼と鎌田大地(フランクフルト)のタテのホットラインを相手が徹底的に消してきて、仕事らしい仕事をさせてもらえなかった。続く中国戦(ドーハ)は伊東純也(ヘンク)の右サイドの鋭い突破からの折り返しを右足で決めきったが、前回のサウジアラビア戦(ジェッダ)でも大迫は封じられてしまった。鎌田からのタテパスに抜け出した決定機もゴールにつなげられず、どこか波に乗り切れない部分を本人も感じているはずだが、そういう時こそ原点回帰を図るべき。絶対的1トップに定着した頃のギラギラ感や野獣のような目線を取り戻せば、必ず壁を破れるに違いない。 オーストラリアという強敵は、むしろ弾みをつける意味で絶好の相手と言っていい。前回最終予選にも参戦していた守護神・ライアン(レアル・ソシエダ)は健在だし、セインズベリー(コルトレイク)とソウター(ストーク・シティ)の2センターバックも高さと強さを兼ね備えている分、巧みな駆け引きが必要になってくる。簡単にクロスを上げても跳ね返されるだけ。大迫自身が囮になって別のアタッカーがペナルティエリア内に侵入したり、自ら2次攻撃・3次攻撃を仕掛けるなど、これまで以上の連携と意思疎通、そして泥臭さが求められるのだ。 「個人でもいろいろとイメージはしているし、プラス、チームとしてどう相手にプレッシャーをかけるか、どう相手に対して崩しに行けるかは距離感等を含め、いろいろコミュニケーションを取りながらやっている感じです。真ん中を閉めるチームが多くなったという印象ですけど、その分、サイドが空いている。うまく対応していかないといけない」と彼自身の中ではゴールへの道筋は明確に描けている様子だ。 あとはそれを実行に移すだけ。ここまで追い込まれた以上、前を向いてアグレッシブにぶつかるしかない。そういう割り切りを大迫は持てるタイプ。本田圭佑(スドゥーヴァ)や岡崎慎司(カルタヘナ)、香川真司(PAOK)といった日本攻撃陣をけん引してきた先輩たちが去り、背負うものが大きくなったのは確かだが、ここはいったん全ての重荷を横に置いて、彼らしさを前面に出すことに集中してほしい。そうすれば、ロシア切符を手中にした2017年8月のオーストラリア戦(埼玉)の再現は叶うはずだ。 ボール支配に徹してくる相手をタイトなマークで封じ、井手口陽介(G大阪)と浅野拓磨(ボーフム)の2発で勝ち切ったあの名勝負とは「必ずしも同じイメージというわけではない」と大迫は言う。ただ「先手を取りたい」と熱望していた。 そのためにも、彼自身が前からプレスをかけてパスコースを消し、高い位置でボール奪取できるように仕向けるべき。それができれば、似たような展開と結果になる可能性は十分ある。日本中が歓喜したオーストラリア撃破の瞬間を大迫本人も決して忘れてはいないはず。その再現を12日の埼玉で見せてくれることを強く祈りたい。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2021.10.12 12:30 Tue
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【2022年カタールへ期待の選手vol.88】代表キャップ127試合。サウジアラビアを熟知する男は敵地で日本を勝利へと導く!/長友佑都(FC東京/DF)

「(10月シリーズは)2連勝することを目指しています。引き分け狙いということは正直、考えていない。長い最終予選ですけど、初戦に負けているので、そんな余裕はない。だから2連勝を目指して僕も頑張ります」 国際Aマッチ127試合という歴代2位の記録を誇る長友佑都(FC東京)が気合を入れる通り、10月シリーズは2022年カタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の命運を左右する天王山。その一発目である7日(日本時間8日未明)のサウジアラビア戦(ジェッダ)がいよいよ目前に迫ってきた。 この大一番を落とすようなことがあれば、日本は上位2位争いから大きく後退することになる。仮に3位になってプレーオフに進めたとしても、アジアA組に加えて南米、北中米カリブ海、オセアニアのいずれかとの決戦を制するのは至難の業。やはり何としても本大会ストレートインの権利を手中にすることが肝要だ。 2010年南アフリカ、2014年ブラジル、2018年ロシアと過去3度のW杯予選を戦い抜いてきた長友と言えども、ここまでの苦境に直面するのは初めてかもしれない。ただ、サウジに勝ち切る自信は揺らいでいない。 「僕も10年以上、代表にいさせてもらっていますけど、1対1とか球際で絶対負けないとか、失った後の切り替えとかはこのチームの一番のストロングであり、レベルが高いなと感じているんですよね。それをサウジ以上に出すのはもちろんのこと、世界基準でできないといけない。そのうえで、前からいく部分とハメる時間帯と、あとはしっかりブロックを作って相手に持たせる時間帯というのを、みんなで共通意識を持っていれば、僕自身はやれるな、戦えるだろうと思っています」と彼は「日本らしさ」を最大限発揮すれば、過酷なアウェイでも勝ち点3を得られると確信している様子だ。 その発言には説得力がある。というのも、2016年11月と2017年9月のロシアW杯最終予選、2019年アジアカップ(UAE)とサウジと3度対峙した経験があるからだ。2017年は消化試合ということもあって0-1で敗れたものの、それ以外の2戦は1点差勝利を収めている。「勝率で上回っている」という事実は、大ベテラン、そして代表にとって心強い要素だ。 エルヴェ・ルナール監督率いる現在のサウジは個々の技術が高く、連係を生かして攻撃的に戦ってくるが、チームの特徴や傾向は以前と大きくは変わっていない。2017年のゲームで日本から決勝弾を奪ったファハド・アルムワラド(アル・イテハド)ら主力も残っているだけに、長友にとってはイメージしやすい部分もある。同レベルの経験値を持つ吉田麻也(サンプドリア)や酒井宏樹(浦和レッズ)らと意思疎通を図りながら、チーム全体で相手の弱点を突いていけば、黒星という最悪の結果は回避できるはず。百戦錬磨の左サイドバックには力強く日本代表をけん引してもらう必要があるのだ。 「『W杯への思い』をよく聞かれますけど、もう語彙力がなさ過ぎて思いを伝える言葉が見つからない。そのくらいW杯は特別。人生をかけてそこに向けてやっていきたい。諦めずに戦います」 35歳の誕生日当日に行われたFC東京復帰会見で、彼はカタールへの真っ直ぐな気持ちを改めて口にした。過去3度の世界舞台を経験し、ベスト16には2度勝ち上がっているが、ベスト8の壁を越えない限り、代表キャリアに区切りをつけられないというくらいの強い責任感と闘争心を抱いているはずだ。アジアで負けてしまったら、大目標に到達するどころか、土俵にも上がれなくなる。それだけは絶対に許されないことだと本人も脳裏に刻み付け、銘じてサウジの地に赴いたに違いない。吉田も「自分たちの代でW杯への道を途切れさせることはできない」と神妙な面持ちで語っていた。ここは意地とプライドに賭けても結果を出すしかない。 長友が考えるサウジの突きどころは、手薄になるサイドバックの裏。そこは確かに9月のオマーン戦でも穴ができ、何度かカウンターを食らっていた。さすがにルナール監督も日本相手だともう少し引いてブロックを作ることも考えるだろうが、凄まじい勢いで攻撃に打って出てくる彼らのメンタリティはそうそう変わらない。 長友も戦術眼はそういう時こそ光る。彼と左のタテ関係を形成するのが南野拓実(リバプール)なのか、古橋亨梧(セルティック)なのか、それとも原口元気(ウニオン・ベルリン)なのか、森保監督のチョイスは不透明な部分もあるが、誰が前にいても「出てるところ・引くところ」のメリハリがしっかりつけられるのが年長者の強みだ。左サイドが攻撃に躍動感をもたらせば、そう時間がかからないうちに先制点は手に入る。長友にはお膳立て役として獅子奮迅の働きを求めたい。 「先手必勝態勢」を作れれば、あとはガッチリと守り切ればいい。吉田・冨安・酒井宏樹とともに形成する最終ラインはアジア随一。それは長友も大いに自信を持っている点だ。9月のオマーン戦(吹田)はコンディション不良と冨安の欠場が重なって、最後の最後で失点したが、サウジ戦と次のオーストラリア戦では同じ轍を踏むはずがない。「クリーンシート請負人」として、35歳のベテランには並外れた走力と対人の強さを遺憾なく発揮してほしい。 「FC東京の選手として、Jリーガーとして、今回初めて日本代表に入ってきたので、そこは自分がしっかりと基準を示せるようにというふうに意気込んでいます」 こう語気を強める長友は実に頼りがいのある存在だ。「(佑都は)すごく明るくポジティブに、高い目標を見据えて進んでいく。そしてなコミュニケーションを含めてチーム全体に自分が持っているものを伝えてくれている。彼の経験であったり、彼のポジティブに力強く前に進んでいこうとする力をチームに還元してくれている」と指揮官も改めてリスペクトの言葉を口にしている。 苦境の時こそ、長友佑都の一挙手一投足の重要性が増す。サウジ戦は日本を崖っぷちから救い出す圧倒的なパフォーマンスが必要だ。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2021.10.07 17:30 Thu
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