【2022年カタールへ期待の選手vol.63】桜の最終ラインの大黒柱は東京五輪・A代表、そして海外移籍を目論む/瀬古歩夢(セレッソ大阪/DF)

2021.02.16 11:50 Tue
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かつて香川真司(PAOK)や乾貴士(エイバル)を大きく伸ばしたレヴィー・クルピ監督を8年ぶりに呼び戻し、攻撃サッカーを鮮明にしたスタイルへの転換を図っているセレッソ大阪。2月前半の宮崎キャンプでは、J1昇格組の徳島ヴォルティスに2-1、J2のファジアーノ岡山に8-4で勝利。まずまずの調整を続けている様子だ。

昨季途中にブレイクした豊川雄太や新加入の加藤睦次樹大久保嘉人らアタッカー陣の選手層が厚くなる傍らで、マテイ・ヨニッチ(上海申花)、木本恭生(名古屋)、片山瑛一(清水)が抜けた守備陣の方はやや不安視されている。コンサドーレ札幌から獲得した日本代表歴のある進藤亮佑の復帰が遅れており、鳥海晃司も負傷。新戦力・チアゴが入国できずにいて、センターバック(CB)の人材不足は深刻と言っていい。

苦境を跳ね除けるべく、2020年JリーグYBCルヴァンカップ・ニューヒーロー賞とベストヤングプレーヤー賞をダブル受賞した瀬古歩夢には、「守備の大黒柱」として大いに奮起してもらうしかない。

「大変光栄な賞をいただいて、今後もっともっと頑張らなければいけないと思いました」と昨年12月21日の会見時にも責任感を強めている様子だった。彼の一挙手一投足がクルピ新体制のチームの成否を左右するだけに、プロ4年目となる今季はより安定感ある仕事を見せる必要があるのだ。

小学校時代からセレッソ生え抜きのCBは、U-15所属だった中学生の頃からJFAエリートプログラムU-14に選ばれる逸材だった。森山佳郎監督率いるU-15日本代表も発足時から名を連ね、2016年AFC・U-16選手権(インド)に参戦。2017年U-17ワールドカップ(W杯=インド)はケガで棒に振ったものの、2019年U-20W杯(ポーランド)は最終ラインの主力に君臨し、ベスト16進出に貢献した。

同年にはミゲル・アンヘル・ロティーナ監督からレギュラーに抜擢され、コンスタントにJリーグに出場するようになる。「オールラウンドの能力を備えたCBとして順調に育ち、いずれは日の丸を背負ってほしい」というクラブの期待に応えるような順調な軌跡を歩んできたのだ。

しかしながら、親友でライバルの菅原由勢(AZ)や鈴木冬一(ローザンヌ)が自分より早く海外へ移籍。瀬古の中には焦りと悔しさが色濃く残ったという。

「仲のいいユキナリが欧州CL予選とかCLに出て、さらにはA代表入りしたことは正直、悔しい。冬一にも負けたくない」と彼は複雑な胸中を吐露したことがあった。

サイドバックを主戦場とする2人は海外移籍の門戸を開きやすいが、2m級の高さと屈強な肉体を誇る選手がズラリと並ぶCBの海外挑戦のハードルは高い。それでも吉田麻也(サンプドリア)や冨安健洋(ボローニャ)のような成功例があるのも確か。2人にあって瀬古にないものを考えてみると、語学力を含めた海外適応力とインテリジェンスではないか。

もともとヤンチャ気質の関西人で、ピッチ外では破天荒な行動も少なくなかったという彼のことを「松田直樹2世」と称するセレッソ関係者もいた。だが、それは10代までの話。20歳になり、人間的にも落ち着いてきた今の彼なら十分に吉田と冨安の背中を追えるだけのポテンシャルがある。

「2020年に2つの賞をいただいて、僕個人として恥じないプレーをしなければいけないと思う。セレッソのリーグ優勝、個人としてはベストイレブン、MVPを目指してやっていきたい」と高みを目指す気持ちがより一層、強まったのは朗報だ。

意識改革の1つのきっかけになったのは、昨季までの2年間、マテイ・ヨニッチとコンビを組んだこと。2020年J1で3人だけだったフィールドプレーヤーのフルタイム出場者であるクロアチア人CBの落ち着きと迫力、安定感は瀬古の大きな指標となった。

「ヨニッチは経験豊富ですし、横にいるだけで勉強になる。ああいうドシっとした面構えのDFになりたい」と羨望の眼差しで見つめていた。名手の立ち振る舞いを間近で体感し、自分の糧にしてきたことで、2020年の瀬古は大いに輝いた。9月13日の横浜F・マリノス戦ではエリキの決定的シュート場面を確実に阻止するなど、要所要所で活躍。10月24日の浦和レッズ戦では2失点に絡むミスを犯しながらも、後々まで引きずることなくすぐに立ち直って本来のパフォーマンスを取り戻した。心身両面で一段階二段階ステップアップした今だからこそ、セレッソ守備陣の大黒柱になれるに違いない。

「2019年はディエゴ・オリヴェイラ(FC東京)のような外国人選手に1対1でやられる場面が多かったですけど、自分なりに考えて対処できるようになったし、負ける回数も減ったと思います。でもまだプレーの質は足りない。ビルドアップのタテパスだったりは磨かないといけない部分。チームへの声掛けやコーチングなどやるべきことをしっかりやって、東京五輪をつかみたいと思います」

昨年末にこう語気を強めた瀬古。五輪開催可否は依然として流動的ではあるが、その先にはA代表も2022年カタールW杯もある。日の丸をつけ、勇敢に海外の強豪国と渡り合う瀬古を見る日も近いはず。吉田、冨安に追いつけ追い越せ精神で、名前の通り、力強く歩み、大いなる夢をつかんでほしいものである。

【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。

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【2022年カタールへ期待の選手vol.115】本番2カ月前にカタールW杯正GKに名乗り!エクアドル戦のMVP/シュミット・ダニエル(シント=トロイデン/GK)

ドイツ、コスタリカ、スペインという強豪国と中3日でグループリーグを戦わなければならない2022年カタールワールドカップ(W杯)の日本代表。森保一監督も「初戦のプレッシャーや相手の力を踏まえた時、普段より想像以上に大きなエネルギーを使うので、心身ともに中3日で回復できない状況も起こり得る」と見ており、そのためには選手の入れ替えが必要不可欠と考えている様子だ。 そこで、27日のエクアドル戦(デュッセルドルフ)は23日のアメリカ戦(同)から先発11人全員を入れ替え、完全なるターンオーバーを実施。谷口彰悟(川崎)と伊藤洋輝(シュツットガルト)の両センターバック(CB)、柴崎岳(レガネス)と田中碧(デュッセルドルフ)の両ボランチなど実戦経験が少ない面々の連係不足が見て取れたが、強度と球際の迫力に優れた相手を何とかしのぎ切り、スコアレスドローに持ち込んだ。 もちろんW杯本番を視野に入れると、ドイツに勝ち点3を奪うのは非常にハードルが高いため、2戦目のコスタリカ戦での白星が必須。となれば、今回のエクアドルとの2戦目は引き分けでは足りない。 ただ、後半38分のエネル・バレンシア(フェネルバフチェ)のPKを決められていたら、負けていた可能性が大だった。そう考えると、一撃を阻止したシュミット・ダニエルの貢献度の高さは特筆に値する。彼がマン・オブ・ザ・マッチに選ばれるのも当然のなりゆきと言えるだろう。 197cmの高さを誇るシュミットは、以前から「規格外の日本人守護神」として期待されてきた。日本代表デビューは森保ジャパン発足直後の2018年11月のベネズエラ戦(大分)。もともとボランチだったこともあり、足元の技術やつなぎのうまさで見る者を驚かせた。そこから代表にコンスタントに呼ばれるようになり、2019年アジアカップのウズベキスタン戦(アルアイン)にも出場。2019年夏にベルギーに赴いてからも地道な努力を続け、少しずつ成長してきた。 とはいえ、日本代表には川島永嗣(ストラスブール)、権田修一(清水エスパルス)という経験豊富なライバルがいる。特に森保ジャパン発足後は権田の評価が高く、アジアカップ以降の公式戦でほぼフル稼働。2021年9月から始まった最終予選でも10試合中9試合に先発した。シュミットは出場権獲得後の今年3月のベトナム戦(埼玉)では出番を与えられるかと思いきや、その一戦に出たのは川島。自身の序列の低さを痛感させられたのではないか。 しかしながら、W杯に向けて本格始動した6月シリーズ以降、森保監督の起用法に微妙な変化が生まれる。シュミットは4連戦のうち最初のパラグアイ戦(札幌)とチュニジア戦(吹田)に出場。後者は0-3で完敗を喫したものの、「敵に脅威を与えられる世界基準のサイズとビルドアップ能力を誇る守護神を使いたい」という指揮官の思惑が透けて見えるようになった。 それが9月シリーズになって顕著となり、今回のシュミットは権田の背中打撲の影響もあって、アメリカ戦の後半とエクアドル戦に出場。スーパーセーブを連発する。本人が長年の課題と言い続けたシュートストップの部分も目覚ましい進化を感じさせたのだ。 エクアドル戦前に行われたデュッセルドルフでのメディア対応で、シュミットは24日にスペインの猛攻を止め続けたスイスの守護神、ヤン・ゾマー(ボルシアMG)を引き合いに出し、「スペインやドイツの強豪に勝つには最後の部分でGKのビッグセーブが絶対に必要。ゾマーはそれをほぼ日常的にやっている。アメリカ戦のようなゲームではないと思うし、エクアドル相手にピンチの場面があれば、自分にできるところをアピールしていければと思います」と意気込んでいた。 その言葉通り、ゾマーを超えるほどの強烈インパクトを残したシュミット。森保監督も「ピンチも多かった中、ダンが最後の砦としてビッグセーブをしてくれたことで、試合がより引き締まったと思いますし、フィールドの選手たちが勇気を持って落ち着いて戦えることにつながったのかなと思っています」と絶賛していた。 常に謙虚な本人は「今日の自分のパフォーマンスは80点くらいかな。20点分はハイボールの部分。CKとかでもっと力強さというか『空中戦、大丈夫だ』という安心感を与えられるプレーがもうちょっとできたらいい」と自分に厳しかったが、これでW杯本大会の正守護神に大きく近づいたのは間違いないだろう。 「ここで序列が変わった? そうは思わないですね。やっぱり2次予選、最終予選で何試合も苦しい試合があった中、ゴンちゃんがチームを救ってくれた。これは親善試合ですし、差はあると思います」とシュミットはあくまで慎重な姿勢を貫いたが、これだけチームに勢いをつけられる守護神を使わない手はない。 2カ月後のドイツ戦(ドーハ)で日本屈指の大型GKがスタメンでピッチに立てるか否か。それはシントトロイデンでの一挙手一投足次第。ここから11月までのシュミットのさらなる前進を願ってやまない。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.09.30 20:45 Fri
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【2022年カタールへ期待の選手vol.114】欧州CLの存在感を9月代表でも示し、怒涛の勢いでカタールW杯をつかみ取る!/旗手怜央(セルティック/MF)

「セルティックでの日頃のパフォーマンス、そして、直近であればUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)でレアル・マドリードと戦った時にもすごくいいパフォーマンスをしていました。シャフタール(・ドネツク)と戦った試合でも彼自身のパフォーマンスは得点も含めていいものを確認できている。旗手(怜央)自身がよさを発揮して、結果を出して、この招集をつかみ取ったと思っています」 9月19日からドイツ・デュッセルドルフでスタートする9月の日本代表合宿。大迫勇也(ヴィッセル神戸)、浅野拓磨(ボーフム)、板倉滉(ボルシアMG)らキーマンたちが相次いで負傷離脱する中、森保一監督が大きな期待を寄せるのが旗手だ。 指揮官が冒頭のコメントを残した通り、旗手は9月6日から始まったUCLグループステージで目覚ましい働きを見せている。 レアル戦では世界的名手であるティボ・クルトワ目がけて強烈シュートをお見舞い。いきなり存在感を示すことに成功する。 そして14日のシャフタール戦では開始早々の10分、自陣で相手ボールを奪ったヨシプ・ユラノビッチが展開したロングパスをセアド・ハクジャバノビッチが受けた瞬間、猛然と50m近い距離をダッシュ。タッチライン際まで走り込んで左足ゴールを決めた。これは相手に当たってオウンゴールと判定され、旗手のUCL初ゴールはならなかったものの、長い距離を猛然とスプリントできるダイナミックさを世界に印象付けたのである。 「UCLで戦えるような選手になれ」という静岡学園時代の恩師・川口修監督の言葉通りの活躍ぶりを見せている旗手。これだけのインパクトを残していれば、森保監督が「呼びたい」と考えるのも当然。案の定、6月4連戦で選外にした24歳のMFの再招集に踏み切った。 「W杯で一番重要なのはコンディション」と吉田麻也(シャルケ)や松井大輔(Y.S.C.C.横浜)ら過去のW杯経験者が口を揃えているように、乗りに乗っている旗手のような人材を今、使わない手はない。2カ月後に迫った2022年W杯前最後の国際Aマッチウイークとなるアメリカ・エクアドル2連戦(23・27日)ではその起用法が注目される。 目下、彼がセルティックで主戦場にしているのは左インサイドハーフ。代表の同ポジションには川崎フロンターレ時代の盟友・守田英正(スポルティングCP)、田中碧(デュッセルドルフ)がいる。 特に守田は旗手同様、ここ最近のUCLでコンスタントに先発し、世界最高峰レベルでも十分戦えるという自信を高めている真っ最中。絶好調な人材という意味では外せない。中盤の大黒柱・遠藤航(シュツットガルト)もチーム不可欠ということを踏まえると、田中碧を上回るパフォーマンスを見せることに集中しかない。3月のベトナム戦(埼玉)しか最終予選を戦っていない彼にしてみれば、なかなか厳しい状況だが、まずはアタックするしかない。 インサイドハーフ候補者は、それ以外にも2018年ロシアW杯16強戦士の原口元気(ウニオン・ベルリン)と柴崎岳(レガネス)、昨季UEFAヨーロッパリーグ(UEL)王者の鎌田大地(フランクフルト)らがひしめいているだけに、本当に競争は厳しい。そこで旗手が一歩リードしようと思うなら、他にないマルチな能力をアピールすることも肝心だ。 前述のシャフタール戦でボランチ的な位置取りを見せていたように、中盤ならどこでもできるのは彼の大きな強み。誰とでも合わせられる柔軟性もある。さらにサイドアタッカー、左サイドバックでもプレーできる。それは1年前の東京五輪や昨季まで在籍した川崎でも実証済み。センターバックとボランチ以外ならこなせてしまう適応力の高さは、W杯のような短期決戦では非常に心強い。そこは森保監督も高く評価している点だろう。 だからこそ、アメリカ・エクアドル戦で幅広い仕事ぶりを見せ、「絶対に必要な人材」だと強く認識させたいところ。特に守備の強度を押し出すことは、ドイツ、スペインという強敵と対峙する本番では欠かせない。相手との力関係を考えれば、ボール支配率で上回られるのは確実。そこで粘り強くプレスに行き、ワンチャンスでゴールを奪いにいくような切り替えの早さ、走力、決定力を旗手が示してくれれば、代表生き残りはもちろん、重要戦力の仲間入りを果たすこともないとは言えない。それだけの可能性を今の彼は漂わせているのだ。 加えて言うと、名門・静学の期待も背負っている。カズ(三浦知良=鈴鹿)を筆頭に過去70人以上のJリーガーを輩出してきた強豪校からW杯に行ったのは、4年前の大島僚太(川崎)ただ1人。その大島はご存じの通り、大会直前にケガをして、まさかの出番なし。主役の座を柴崎に譲る形になった。そんな先輩の悔しさも晴らさなければいけないのだ。 雑草魂でここまで這い上がってきたマルチプレーヤー・旗手。日本が世界でサプライズを起こすためには、彼のような泥臭い選手がいた方がいい。今回の2連戦では恐れることなく、持てる力の全てをぶつけ、日本の新たな希望になってほしいものである。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.09.18 17:00 Sun
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【2022年カタールへ期待の選手vol.113】当落線上からキーマンへ。新天地・フライブルクでゴールラッシュを見せる日本の切り札/堂安律(フライブルク/MF)

「代表に入りたいという気持ちでサッカー選手を始めたので、(3月のオーストラリア戦のメンバーに)入れなかったのは悔しい。でも感謝している。落選したことによって今の自分がいると思う。1日1日、頑張って、ワールドカップ(W杯)に辿り着けたらいいなと思っています」 2022年カタールW杯最終予選最大の山場でまさかの日本代表落ちを強いられた堂安律(フライブルク)。彼は6月4連戦で復帰した際、実に清々しい表情を見せていた。 「自分がうまくいかない時に文句を言う選手は多い。でも律は絶対にそういうことを言わない選手。器の大きいところは(本田)圭佑に似ていると思います」とガンバ大阪ジュニアユース時代の恩師・鴨川幸司監督(ティアモ枚方アカデミーダイレクター兼ジュニアユース監督)も教え子のポジティブシンキングには太鼓判を押していた。 こうしたメンタリティが新天地・フライブルクでのブレイクにつながっているのだろう。今季の堂安は公式戦初戦となった7月31日のDFBポカール1回戦・カイザースラウテルン戦でいきなり決勝弾を叩き出し、鮮烈なデビューを飾った。続く8月6日のブンデスリーガ1部開幕戦・アウクスブルク戦でもダメ押しとなる4点目をゲット。「点の取れるアタッカー」として強烈なアピールをしてみせる。 その後もスタメンに名を連ね、9月突入後も3日のブンデス・レバークーゼン戦と8日のUEFAヨーロッパリーグ(EL)グループステージ・カラバフ戦で連続得点。早くも公式戦4ゴールとハイペースで数字を積み重ねているのである。 カラバフ戦の堂安は[4-4-2]の右サイドアタッカーで出場。前半15分に挙げた決勝弾は右からの鋭いドリブル突破で相手マーク2枚の真ん中を割り、さらにゴール前で1人をかわして左足を振り切ったもの。ある意味、最も得意とする得点パターンだ。その鋭さが戻ってきたのは、日本代表にとっても朗報。現在、欧州視察中の森保一監督の評価もうなぎ上りではないだろうか。 そもそも指揮官は2018年9月のチーム発足当初から堂安の才能を高く買い、重用してきた。ご存じの通り、彼と南野拓実(モナコ)、中島翔哉(アンタルヤスポル)は「三銃士」とも呼ばれ、凄まじい推進力と爆発力で日本の新たな攻撃を構築していた。 2019年まではその流れが続いたが、コロナ禍で代表活動が中断した2020年あたりから流れが変わり始める。中島が代表から外れ、南野も世界最高峰クラブ・リバプールで出番を得られず、堂安も2019-20シーズンに在籍したPSVで活躍しきれなかったからだ。 堂安自身は2020年夏にビーレフェルトへレンタル移籍し、復調していったが、それ以上に伊東純也(スタッド・ランス)や鎌田大地(フランクフルト)らの急成長ぶりが目立った。それとともに代表攻撃陣の陣容も大きく変化する。そして迎えた2021年9月の最終予選初戦・オマーン戦(吹田)。そこで自分がスタメン入りできないとは、堂安も全く想像していなかっただろう。 ご存じの通り、日本はこの初戦に敗れ、序盤3戦2敗と崖っぷちに立たされることになった。それでも堂安が先発に浮上することはなく、終盤まで行ってしまった。同じポジションを争う伊東が最終予選全12点中7点に絡む大活躍をしたのを見れば、本人も焦燥感を覚えたに違いない。 苦境が続く中、24歳になった堂安は自分に矢印を向け、頭の中を整理し、自己研鑽に励んだ。それが6月4連戦やフライブルクでの好パフォーマンスにつながった。以前の彼は「自分が自分が」とエゴを押し出し過ぎる傾向が強かったが、ここ最近は明らかに「周りを生かして自分も生きる」というスタンスに変化。献身的な守備も大いに光っている。今の彼ならば、森保監督も「ぜひ使いたい」という気持ちにさせられるはずだ。 加えて言うと、伊東が今夏赴いたスタッド・ランスでFW起用されているのも追い風。大迫勇也(神戸)や浅野拓磨(ボーフム)らFW陣がケガや得点力不足で苦しむ中、森保監督がカタール本番で伊東の最前線起用という奇策を採らないとも限らない。となれば、堂安の右サイド先発復帰、伊東との併用という道も見えてくるかもしれない。 短期決戦のW杯は「コンディションの良い選手を使う」というのが鉄則。それは2010年南アフリカの本田や松井大輔(Y.S.C.C.横浜)、2018年ロシアの乾貴士(清水エスパルス)や原口元気(ウニオン・ベルリン)らを見ても明らか。今、絶好調の堂安を使わない手はないということになる。過去の実績と序列を重視しがちな森保監督が思い切った決断を下せるかどうかは未知数だが、予想外の采配をしなければ、ドイツやスペインという世界的強豪から勝ち点を奪えないのもまた事実だ。 今や堂安は日本の成否を左右するキーマンになり得る存在といっても過言ではない。いずれにしても、彼にはこのままゴールラッシュを続け、「ここ一番で点の取れる選手」として信頼を高めていくことが肝要だ。そんな理想像を目指して、11日のブンデス、ボルシア・メンヘングラードバッハ戦、15日のEL・オリンピアコス戦、そして23・27日の代表のアメリカ・エクアドル2連戦とさらなる上昇気流に乗ってほしいものである。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.09.11 18:00 Sun
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【2022年カタールへ期待の選手vol.112】大迫勇也に再び暗雲が立ち込める中、森保監督は大ベテランに日本代表を託すのか?/岡崎慎司(シントトロイデン/FW)

2022年カタール・ワールドカップ(W杯)の日本代表の初戦・ドイツ戦(11月23日)まで3カ月を切った。森保ジャパンに残された強化の場は9月23・27日のアメリカ・エクアドル2連戦(デュッセルドルフ)だけ。そのメンバーは9月14日発表予定だが、指揮官も本番を見据えた26人で挑む思惑のようだ。 そこで満を持して復帰すると見られていたのが絶対的FWの大迫勇也(神戸)。しかし、8月18日のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)ラウンド16の横浜F・マリノス戦で先発した後、再びケガが悪化。8月28日の神戸の全体練習に参加しておらず、9月3日の京都サンガF.C.との下位直接対決を回避せざるを得ない状況のようだ。当面の公式戦に出られないとなると、9月の代表2連戦帯同も絶望的。本番での大迫不在がいよいよ現実味を帯びてきたと言っていいだろう。 6月シリーズでは、浅野拓磨(ボーフム)、古橋亨梧、前田大然(ともにセルティック)、上田綺世(セルクル・ブルージュ)の4人がテストされたが、ブラジル、チュニジアといったW杯出場国相手にゴールへの道筋を見出せなかった。森保一監督の評価が一番高い浅野は近年フィジカルが強くなり、前線で起点を作れるようになってはきたが、今季ドイツではノーゴールにとどまっている。古橋と上田はそれぞれのクラブで得点したが、W杯でドイツやスペインと対峙することを考えると、彼らに1トップを任せるのはリスクが高い。 そこで浮上するのが、岡崎慎司(シント=トロイデン)ではないか。 36歳のベテランFWはご存じの通り、8月19日に同クラブと正式に契約し、20日のオーステンデ戦でいきなり先発フル出場を果たした。この試合では香川真司と2トップを組んだが、しばらく公式戦から遠ざかっていたとは思えないほど動きにキレがあり、得意の裏への飛び出しも何度か見せていた。前線からの守備やタメを作る動きも日本代表常連だった頃と変わりない印象だった。ゴールこそ奪えなかったものの、「岡崎ここにあり」を色濃くアピールしたと言っていい。 続く27日のメへレン戦も連続スタメンでピッチに立ち、今回はケガから復帰した林大地と2トップを組んだ。香川を含めた3人の距離感がよく、岡崎も何度かゴール前に飛び出していた。ジャンニ・ブルーノが奪った2点目の場面も最初のシュートに岡崎も反応していて、背番号30のゴールになっていてもおかしくなかった。さすがかつてドイツ・ブンデスリーガで2シーズン年連続2ケタゴールを奪った選手。前線での嗅覚は衰えていない。2戦続けてフル出場したところを見ても、体力的には全く問題なさそうだ。 「もともと自分が海外に行ったのは、代表で活躍するため。世界で戦うためには海外にいないとアカンと考えて、2011年に出ていった。だから、俺の中では日本に帰るのは、代表を降りることと同じだと思ってます」 昨年11月のインタビュー時にこう語っていた岡崎。今回のシント=トロイデン入りも「カタールW杯行きの可能性が少しでもあるなら、それに賭けたい」と考えたからだろう。ちょうど、森保監督も24日から渡欧しており、欧州組を視察している。代表のコアメンバーの1人と目されるシュミット・ダニエルがいる同クラブには近日中に訪れるだろうし、岡崎本人とも話をするのではないか。その会談と今後のパフォーマンス次第では、逆転メンバー入りもないとは言い切れないのだ。 「森保さんの中ではたぶん、FWってポジションじゃなくて、大迫という人間をその位置に据えてきたんだと思うんですよ。『サコを外して古橋を先発にしたらどうか』という意見もあるけど、そういう考えがあるならもっと前にやっていたんじゃないかな。仮にサコがダメだったら、ゴール前で体を張れるタイプの人間が呼ばれる。そういう意味では、自分にもまだチャンスがあるのかなとは思いますけどね」 彼はこんな話もしていたが、まさに今の日本代表に足りないのは最前線でターゲットになれる人材だ。しかも、ドイツ、イングランド、スペインで戦い抜いてきた百戦錬磨の岡崎ならその大役を託すに値する。 未知数な若手を選ぶのか。それとも計算できるベテランに代表を任せるのか…。 森保監督は今、大きな岐路に直面していると言っても過言ではないのだ。 岡崎が最後に代表に来たのは2019年のコパ・アメリカ(ブラジル)。あれから3年以上の時が経過し、当時はサブだった伊東純也(スタッド・ランス)や大学生だった三笘薫(ブライトン)がエース級になった。田中碧(デュッセルドルフ)や東京五輪世代とのプレー経験も少ないが、コパ・アメリカに参戦していた板倉滉(ボルシアMG)や久保建英(レアル・ソシエダ)らと面識があり、すぐに合わせられる関係性があるのは強みだ。 しかも、明るくオープンなキャラクターはチームを前向きにしてくれる。そういう人材だからこそ、指揮官も最後の最後まで悩むのではないか。 いずれにしても、岡崎がやるべきなのは、早く新天地初ゴールを挙げること。数字で人生を切り開いてきた男にはその重要性が誰よりもよく分かっているはずだ。 さしあたって9月3日の次戦の相手はベルギー1部首位を走るヘンクが相手。そこで目に見える結果を残せば、風向きも大きく変わるかもしれない。そういう期待を込めて、大ベテランの一挙手一投足を見守りたい。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.08.29 22:00 Mon
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【2022年カタールへ期待の選手vol.111】ルヴァン8強敗退で残るはJ1タイトルのみ。パリ世代の主軸ボランチの最終アピールの行方はいかに?/藤田譲瑠チマ(横浜F・マリノス/MF)

「カタール・ワールドカップ(W杯)に行けたらいいですけど、そんなに簡単な壁ではない。この大会がよかったから呼ばれるというのはないと思うので。今回をきっかけに自信がついたので、Jリーグでもしっかり活躍していって、そういった日常が評価されていくことが大事だと思います」 先月27日のEAFA E-1選手権のラストマッチ韓国戦(豊田)。宿敵を撃破し、タイトルをつかむと同時に評価を大きく上げたパリ五輪世代の主軸ボランチ・藤田譲瑠チマ(横浜FM)は、いち早く先を見据えていた。 E-1では香港(鹿島)・韓国の2試合に出場。A代表初招集とは思えない堂々たるパフォーマンスを披露した。視野の広さやワイドな展開力、緩急をつけたパス回し、鋭い戦術眼はかつての小野伸二(札幌)を彷彿させるものがあった。フランス代表のエンゴロ・カンテ(チェルシー)や元フランス代表のクロード・マケレレになぞらえるメディアもあったほど、弱冠20歳の若武者はポジティブな印象を残した。だからこそ、その先が重要だったのだ。 本人も言うように、現段階でのA代表定着は藤田にとって険しい道だ。ご存じの通り、森保ジャパンのボランチ陣には、遠藤航(シュツットガルト)、守田英正(スポルティングCP)、田中碧(デュッセルドルフ)ら欧州組がひしめいており、鎌田大地(フランクフルト)や原口元気(ウニオン・ベルリン)もインサイドハーフの一角を占めつつある。そこに割って入ろうと思うなら、相当なインパクトが必要。Jリーグレベルを超越した一挙手一投足を示さない限り、3カ月後のカタール行きは叶わない。 そういう意味で、E-1後の横浜F・マリノスでの一挙手一投足が注目されていたが、残念ながら、チーム自体が芳しくない。7月30日の鹿島アントラーズとの上位対決に2-0で勝利し、J1制覇へ大きなアドバンテージを得たと思われたが、8月に入ってから停滞。YBCルヴァンカップのサンフレッチェ広島戦(ホーム&アウェー)とJ1・川崎フロンターレ戦で公式戦3連敗という予期せぬ苦境に直面しているのだ。 藤田自身も鹿島戦は後半途中から出場。白星に貢献することができたが、その後の3試合はスタメンに名を連ねながら、悪循環を断ち切ることができていない。もちろん直近の8月10日の広島戦は角田涼太朗の退場、畠中槙之輔のミスなどが重なり、広島にいいようにやられてしまったが、そういう時に流れをガラリと変えられるような存在にならなければいけないのも確かだ。 E-1の時にも「自分自身の改善点はボールを奪いきるところ。奪うべきところで奪いきれなかったり、攻撃で前を向ける時にバックパスしてしまうところは直さないといけない。森保(一)監督から何か言われたわけではないですけど、遠藤航さんとかと比較した時に自分はそういうところが足りないと思っています」と課題を口にしていた藤田。そこに積極的に取り組もうという姿勢は色濃く感じられる。が、現状では物足りなさも拭えない。もっともっと高い領域に到達すべく、努力を続けていくしかないのだ。 ただ、若い選手というのは、小さなきっかけで劇的に変化する可能性がある。ここ数試合は苦しんでいるかもしれないが、13日には湘南ベルマーレ戦(※台風の影響で当日中止)があるし、その直後にはAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の大舞台が控えている。 今回のACLの決勝トーナメントは日本開催。横浜は18日にヴィッセル神戸との一発勝負に挑み、勝ち上がれば、22日の準々決勝、25日の準決勝と進んでいくことになる。1週間で重要なゲームが3つ続くという点はE-1とほぼ同じ流れ。7月につかんだ飛躍のきっかけを再度、得られるのは朗報と言っていい。 「年上の人にも気負いなくやるっていうのが自分のいいところ。今までやってきたことを今まで通りにやれればいい」とも彼は語っていたが、どんな大舞台でも平常心で戦える強心臓は魅力。試合の重みが大きければ大きいほど力を発揮できる強みを今こそ、存分に示すべき時なのだ。 それをACLで実証できれば、9月の欧州遠征帯同への道も開けてくる。11〜12月の本大会前に直前合宿がないカタールW杯は、9月のインターナショナル・マッチデー(IMD)が最終調整の場と位置づけられている。そこでメンバー絞り込みも行われるだけに、本気でカタールに行きたいと願うなら、何としても遠征に滑り込まなければならない。 パリ世代のメインターゲットは2026年アメリカ・カナダ・メキシコ共催W杯になるが、早いうちに大舞台を経験できれば、それに越したことはない。藤田には目の前に転がっているチャンスを貪欲につかみにいってもらいたいのだ。 8月の公式戦は自身のキャリアの分岐点になるかもしれない。そのくらいの覚悟と決意を持ってピッチに立ってほしい。藤田の持てる全ての力を見せつけることで、新たな未来が開けるはずだ。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.08.13 18:15 Sat
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