【2022年カタールへ期待の選手vol.61】ルヴァン決勝のオルンガ封じで強烈インパクト。東京五輪メンバーに滑り込む!/渡辺剛(FC東京/DF)

2021.01.06 12:30 Wed
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©︎J.LEAGUE
「オルンガ選手はスキを与えたら得点を取ってくる選手。どの選手よりも能力が高いことは誰もが分かっている。相手の嫌がるプレーをしようと考えてました。オルンガ選手は自分のスペースを確保したくて、ボールをはたいて中に入っていく。そこで一発目で強く当たっていけば、うまくプレーできない。あとは気持ちでぶつかりました」

2021年1月4日に新国立競技場で行われたYBCルヴァンカップ決勝。「絶対にタイトルを1つ取りたい」と闘争心を燃やしていた長谷川健太監督の言葉通り、FC東京は柏レイソルを2-1で撃破。2009年以来、3度目のリーグカップ王者に輝いた。

その立役者の1人となったのが、相手エース・オルンガを徹底マークした渡辺剛だ。今季J1・28ゴールという驚異の数字を残したケニア人ストライカーを止めなければ、FC東京の優勝はあり得なかった。そのタスクを果たしたのが、東京五輪世代の23歳のDFだったのだ。

試合開始早々の11分、渡辺はオルンガと接触し、右肩を負傷。いきなりプレー続行が危ぶまれた。本人も「最初はちょっとヤバい」と危機感を抱いたというが、大役を任されている以上、離脱はできない。「ここまで来たら、腕がもげてもやる」という強い気持ちで立ち上がり、勇敢に体を張り続けた。センターバック(CB)コンビを組んだジョアン・オマリと2人がかりで怪物FWをつぶし、時には森重真人も前からフタをした。その結果、完璧なエース封じを見せることができ、彼はアカデミー時代に見たタイトル獲得の瞬間を自ら体感することができたのだ。

FC東京U-15深川、山梨学院大学、中央大学を経てプロ入りした2019年は当初、U-23でプレーしていた。が、対人の強さと粘り強さを買われてトップに抜擢され、シーズン途中からCBの主力に成長した。森保一監督の目にも留まり、年末のEAFF E-1選手権(釜山)では日本代表デビュー。2020年1月のAFC・U-23選手権(タイ)にも招集され、東京五輪の有力候補と目されるまでになった。

それだけに2020年シーズンは期待が高く、チームでは副キャプテンの大役も託された。7月のリーグ再開後、主将・東慶悟が長期離脱するとキャプテンマークを巻く機会も増え、「リーダーの自覚を持って戦わないといけない」と口癖のように話すようになった。

しかしながら、強すぎる責任感が空回りし、自身のパフォーマンスが不安定になることが多々あった。最たる例が9月27日のサガン鳥栖戦だ。大黒柱・森重が出場停止となり、名実ともに彼が統率役を担ったのだが、新型コロナウイルスのクラスターから回復したばかりの相手に翻弄され、大量4失点。彼自身も守備のミスが目立った。「剛はもっと自分の能力を上げることに集中すべき」と長谷川監督からも苦言を呈するケースもあったほどだ。

「あの頃は『チームを引っ張らないといけない』と力が入っていたが、徐々に『自分らしくやろう』と考えられるようになった。『個人の能力を上げろ』という監督の言葉も受け止めましたし、どんどんやろうと考えました。特に心掛けたのはデュエルの部分。1年前は勢いで行けちゃう部分があったけど、相手も分析している中で、やっぱり駆け引きが大事だなと。予測や駆け引きはこれからやっていくうえで必須だと思います」

こうした意識は11~12月のアジアチャンピオンズリーグ(ACL)参戦でより強まった。ラフプレーも辞さない中国勢などと対峙する場合、単にフィジカルだけでぶつかっても相手を止められない。駆け引きで出足を止めたり、動き出しを封じたり、スペースを埋めたりすることで、相手FWは仕事ができなくなる。そのツボを体得したことが、冒頭のオルンガ封じにつながったのだろう。

心身ともに充実し、タイトルもつかんだ渡辺の次なるターゲットは半年後に迫った東京五輪メンバー入り。コロナ拡大で大会自体がまだどうなるか分からないが、2022年カタールワールドカップアジア予選も控えているため、「代表定着」というのはつねに見据えなければならないテーマになってくる。

そのためにも、冨安健洋(ボローニャ)や中山雄太(ズヴォレ)、板倉滉(フローニンゲン)ら欧州組に匹敵する存在感を示さなければいけない。12月末に行われたU-23日本代表候補合宿を見ると、渡辺の序列は同じ国内組の橋岡大樹(浦和)や瀬古歩夢(C大阪)より下に位置付けられていた模様だった。が、今回のルヴァン決勝での仕事ぶりを森保監督も目に焼き付けたはず。このレベルを2021年も維持し続ければ、必ず道は開けてくるはずだ。

「海外にいる選手たちは自分よりもいい経験をしていると思いますけど、Jリーグでやれることも沢山ある。いいFWも沢山いますし、そういうFWをしっかり押さえることが第一歩。海外組に比べて自分が劣っているというのは簡単ですけど、『追い越すんだ』というくらいの強い意識を持たないといけない。弱気にならず強気で行こうと僕は思っています」

五輪合宿時に語気を強めた通り、新年早々の大一番で下克上の布石を打った渡辺。ここから一気に階段を駆け上がり、「日本の壁」へと飛躍できるのか。間もなく24歳になる186㎝の大型CBの一挙手一投足が楽しみだ。

【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。


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【2022年カタールへ期待の選手vol.76】ユース代表時代の恩師・鈴木監督も太鼓判。最終予選へインパクト残した攻撃型ボランチ/川辺駿(サンフレッチェ広島/MF)

5月24日から3週間超に及んだ日本代表活動。「プチ・ワールドカップ(W杯)」とも言われる中、各ポジションとも熾烈なアピール合戦が繰り広げられた。 そんな中、注目されたのがボランチ陣だ。今季ドイツ・ブンデスリーガ・デュエル王の遠藤航(シュツットガルト)がU-24日本代表の方に参戦したため、A代表の方は守田英正(サンタ・クララ)、橋本拳人(FCロストフ)、川辺駿(サンフレッチェ広島)の3人が順番にコンビを組む形に。6月3日のU-24代表戦(札幌)からの4試合でそれぞれのストロングと課題が出る格好となった。 守田であれば、欧州組らしいアグレッシブさと攻守両面でマルチタスクを果たせる能力、橋本であれば、強度とボール奪取能力の高さなどが目立ったが、彼ら以上に鮮烈な印象を残したのが川辺。「国内組の彼もそこそこできるじゃないか」と感じた関係者は少なくなかったことだろう。 彼が最も大きなインパクトを与えたのが、11日のセルビア戦(神戸)だった。先発した橋本がタテパスのミスを連発し、攻撃がこう着状態に陥る中、後半からピッチに立った川辺は長短のパスを駆使しつつ、攻撃リズムを改善。修正能力の高さを見せつけたのだ。 この働きが評価され、スタメンに抜擢された15日の2022年カタールW杯・キルギス戦も、守田とのコンビで巧みなゲームコントロールを披露。視野の広さと状況判断力の高さも際立っていた。さらに言うと、オナイウ阿道(横浜)の2点目につながるDF3人を抜き去ったドリブル突破も大いに光った。 「横パスを自分の前につけて、そのままチャンスがあったので上がっていきましたし、DFも来ましたけど、うまく抜け出してGKとDFの間いいいボールをつけられた。アドが入ってくるのは分かっていたので、出す瞬間にうまく裏を取ってくれたと思います」と川辺本人もアシストという目に見える結果を残せたことに、手ごたえをつかんだ様子だった。 3月の日韓戦(日産)で初キャップを飾ってから3カ月。25歳のボランチは着実に存在感を高めているように映る。彼をユース代表時代に指導し、2014年AFC・U-19選手権(ミャンマー)にもチームを率いた鈴木政一監督(ジュビロ磐田)も真価を実感した様子だった。 「(オナイウの得点につながった)タテにドリブルで出ていくプレー自体は18~19歳から持っているんですよね。それに加えて、守備力や強さ、タイミングや切れ味が1つ上がったなと感じます。あとテレビ画面を通じてよく分かるのが、ボールのない時に周りを沢山見ていること。あれが判断材料を多く持てる1つの要素なんですよね。彼はその必要性を広島でも代表でも感じて意識的にやっている。それがいい効果を生んでいるんじゃないかと思います」 ボールのない時の視野確保と状況判断の巧みさは、磐田のタクトを振るう遠藤保仁に重なる部分。13日のヴァンフォーレ甲府戦でJリーグ通算700試合出場を達成した41歳の大ベテランはその長所を最大限生かしているから一瞬で状況を変えられるし、敵と接触するような大ケガもしない。そういった賢さを中村俊輔(横浜FC)や青山敏弘(広島)らも持ち合わせているから、年齢を重ねてもいいプレーができるのだ。磐田時代には中村、広島では青山とともに戦い、クレバーさに磨きをかけてきた川辺は、その実力が今になって開花しようとしている。 「それに加えて、得点に絡める特徴を持っているので、それをどんどんアピールしてほしい」と鈴木監督からも大きな期待を寄せられている状況だ。 ここで一気にJリーグ基準を超え、代表でコンスタントに戦えるレベルに到達してほしいところだが、海外組に比べると環境的にやや厳しい部分は否めない。遠藤航、守田、橋本、今年になって招集外になっている柴崎岳(レガネス)といったボランチ陣は揃いも揃って欧州でプレー。世界の激しさや強度の中に身を投じ、自己研鑽に励んでいるのだ。 U-24世代の田中碧(川崎)も今夏の海外移籍が確実と言われるだけに、現状のままの川辺が最終予選のメンバーに食い込むのは難しい。国内にいても、世界を意識したプレーをつねにピッチ上で示し続けるしか、森保監督の目を向けさせる方法はない。 「自分の課題は球際と守備の部分。もうちょっと自分で奪い切る力、奪った後に打開していくことが必要だと感じます。そのためにも『球際で勝つんだ』という気持ちの強さを持たないといけないし、フィジカルももっと上げていかないといけない。代表に入っている他の選手に見劣りしないくらいの強度を身に着けたいと思います」 本人も自身のやるべきテーマを明確にしているのは非常にいいことだ。同世代のオナイウや南野拓実(サウサンプトン)が短期間で急成長を遂げたのだから、川辺にもできないわけではない。 先輩・青山が2014年ブラジルW杯で世界の壁に阻まれ、号泣したのを間近に見ていた彼は「自分はそのハードルを超えたい」と強く感じているはず。自分にさまざまな刺激を与えてくれた指導者や先輩、周囲の仲間たちに報いるためにも、満足せずに前へ前へと突き進むことが肝要だ。代表定着の布石を打った今を逃してはならない。 そのためにも、まずは直近のJリーグだ。広島は15日の天皇杯2回戦でJFL・おこしやす京都ACに5失点大敗という不名誉な戦いを見せてしまっただけに、次なる19日の柏レイソル戦が重要になる。川辺にはチーム立て直しの牽引役として「違い」を示してほしいものである。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2021.06.17 20:05 Thu
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【2022年カタールへ期待の選手vol.75】欧州5大リーグ参戦で吉田・冨安鉄板コンビを崩す。セルビア戦でその布石を!/植田直通(ニーム/DF)

吉田麻也(サンプドリア)と冨安健洋(ボローニャ)という森保ジャパンの鉄板センターバック(CB)コンビが揃ってU-24日本代表に回り、通常とは異なる編成を強いられている6月シリーズの日本代表守備陣。 6月3日のU-24日本代表戦では谷口彰悟(川崎フロンターレ)と植田直通(ニーム)、7日の2022年カタールワールドカップ(W杯)2次予選・タジキスタン戦(吹田)では昌子源(ガンバ大阪)と中谷進之介(名古屋グランパス)のコンビで戦ったが、4人の序列は混とんとした状態。U-24の方にも5月28日のミャンマー戦(千葉)で吉田とコンビを組んだ板倉滉(フローニンヘン)がいて、誰が最終予選に生き残るか分からない。 それだけに、今シリーズ最強の敵と目される11日のセルビア戦(神戸)は重要な試金石と言っていい。イングランド・プレミアリーグ活躍中のアレクサンダル・ミトロビッチ(フルアム)ら攻撃陣の主力は来日しなかったものの、ネマニャ・グデリ(セビージャ)らを擁する手強い相手なのは間違いない。彼らを完封できれば、確実に評価は上がる。 この一戦に闘志を燃やしているのが、2021年1月にフランス・リーグ・アン参戦を果たした植田直通だ。 「個の部分で勝つのは当たり前。局面では自分の個の強さだったり、1人1人の強さが重要になるので、そこでは絶対に負けたくない。それに加えて、日本のよさである組織で守るよさも必要になってくると思います」と対人守備に絶対的自信を持つ26歳の大型DFは目をぎらつかせていた。 ご存じの通り、植田は2018年ロシアW杯メンバーの1人だ。が、フィールドプレーヤーでは遠藤航(シュツットガルト)、大島僚太(川崎フロンターレ)とともに出番なし。ラウンド16・ベルギー戦で相手がパワープレーを仕掛けてきた際、「植田を出すべきだった」と主張する関係者も少なくなかったが、あの時点では西野朗監督(現タイ代表)の絶対的信頼を勝ち得ることができなかったのだろう。 この悔しさを糧にベルギー1部のセルクル・ブルージュへ移籍。熊本・大津高校から2013年に常勝軍団・鹿島アントラーズ入りして5年半は「強いチームでの守り方」を実践してきたが、新天地は下位争い常連チーム。植田自身も大きな環境の違いに苦しんだ。 「このチームをどう立て直すのかが、今の僕に求められること。『神様が与えた試練』だと思ってます。それに日本では身体的に必ず勝てた。普通に飛ぶだけで勝てた相手が沢山いました。だけどこっちでは2m超のFWも結構いるし、速くて強い選手もかなりいる。そういう相手にどう向き合っていくかというテーマに挑み続けています」と植田は2シーズン目を迎えた2019年秋、難しさを語っていた。 そこで大事になるのが、相手を自由に競らせないポジショニング。それで勝負が決まると植田は考え、細かい位置取りにこだわるようになった。相手の出足を遅らせ、バランスを崩せればゴールの確率も下がる。その駆け引きを覚えたことは大きな収穫だったという。 「もう1つ欧州で感じたのは、こっちのDFのスライディング第一という価値観。『マークを外されても最後にスライディングで当てればそれでいいや』くらいの気持ちがあるし、技術もある。僕はもともとスライディングをする選手じゃなかったけど、吸収できるものは全てした方がいいと思って貪欲に取り組んでいます」と植田は新たな自分になろうと躍起になっていた。 高みを追い求める貪欲さは、今年1月にフランスへ赴いてからより一層、強まった。欧州5大リーグの1つである同国で活躍するアタッカー陣はとにかく屈強でパワフルだ。ムバッペやネイマール(PSG)のような世界トップ選手もいて、彼らを止めるには自分自身をもう一段階二段階引き上げないといけないと気付いたからだ。 「フランスでは少しでも距離感を空けてしまえば、完全に失点してしまう。相手のゴールを決め切る力は相当レベルが上がったと思うので、少しでもポジショニングを間違えれば即失点につながる。そこへのこだわりはより強くなりましたね」 今回のセルビアは、欧州3年間の積み重ねを発揮する絶好の相手。目下、植田は昌子、板倉らと代表CB3番手争いをしている立場だが、ここで一気に差をつけ、吉田・冨安の牙城を崩すためにも、今ここで圧倒的存在感を見せつけることが必要だ。 「今回、麻也君たちがいないってことで、リーダーシップやゲームを読む力がより求められてくると思います。攻撃陣が前へ前へ行きたい気持ちも分かりますけど、後ろから見ていて気付いた部分を発信することも大切。『ここは1回落ち着かせよう』とか自分たちの声掛けでゲーム展開も違ってくる。チームの勝利のためにそういったアクションも起こしていきたいと思ってます」 そうやってチーム全体をコントロールできる「大きな器」と「安定感」を示せれば、森保一監督も植田を鉄板CBと同格に位置付ける可能性が高い。となれば、最終予選も主力の1人として戦えるだろうし、前回ピッチに立てなかったW杯の大舞台にも手が届く。 同じ2016年リオ・デ・ジャネイロ五輪組の遠藤航がドイツで飛躍的成長を遂げたのも、やはりロシアで味わった屈辱をエネルギーにしているから。今や日本代表の心臓となった同世代の盟友に植田も続くことができるはずだ。 いずれにせよ、まずはセルビア戦をしっかり戦うことが肝心。今回は日本代表における彼の立ち位置を左右する大きな分岐点になりそうだ。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2021.06.11 17:55 Fri
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【2022年カタールへ期待の選手vol.74】オーバーエージ抜きFW陣のけん引役。ガーナ戦の1得点1アシストで「チームを勝たせる仕事」を遂行/上田綺世(鹿島アントラーズ/FW)

3日に急きょ組まれた日本代表との"兄弟対決"を東京五輪・当落選上メンバー主体の編成で戦ったU-24日本代表。攻撃陣も田川亨介(FC東京)を最前線に据え、その後ろに三好康児(アントワープ)、久保建英(ヘタフェ)、遠藤渓太(ウニオン・ベルリン)の欧州組トリオを並べる布陣で挑んだ。 しかし、個人個人の生き残りへの意識が空回りしたのか、森保一監督が重視する連携・連動を欠き、チームとしての崩しが見られなかった。結果的にも0-3。前後半の立ち上がりに失点を重ねるという試合運びの悪さを露呈。オーバーエージ枠で加わった新キャプテン・吉田麻也(サンプドリア)も「ハッキリ言って1点目のような失点を大会でやってしまうと、大会自体が終わってしまう可能性がある」と苦言を呈していた。 5日のU-24ガーナ戦(福岡)では同じ轍を踏むわけにはいかない。札幌から福岡への移動日だった4日に予期せぬ悪天候に見舞われ、いったん新千歳空港へ到着しながら、再び札幌ドームに移動してブルペンで練習し、夜に飛行機に乗るというドタバタを強いられた分、コンディション面では難しさがあっただろうが、それを言い訳にはできなかった。今回は吉田、酒井宏樹(マルセイユ)、遠藤航(シュツットガルト)のオーバーエージ3人を含めたベスト布陣を組んだだけに、東京五輪本番の初戦・南アフリカ戦を想定したいい入りを見せる必要があった。 こうした中、大きな重責を背負ったのが、最前線に陣取った上田綺世(鹿島アントラーズ)。森保一監督がオーバーエージ枠で大迫勇也(ブレーメン)を招集しなかった分、彼に課せられる役割がより大きくなると見られたからだ。 「もともと代表に呼ばれるということは国を背負うということ。その覚悟を持って僕は戦っていますし、それは鹿島でも変わらない。何をもってエースというのか分からないですけど、僕はFWである以上、試合に勝たせるための点を取るのが仕事だと思っている。U-24代表通算で僕が一番多く点を取っているかもしれないですけど、目の前の試合で点を取ることが重要。FWとしての責任を持ってプレーしていきます」と上田は改めて強い決意を胸に秘め、福岡・ベスト電器スタジアムのピッチに立った。 長距離移動に厳格なコロナ対策の疲労、年齢的に日本より年下と三重苦を強いられたガーナが相手ということもあり、日本は序盤から敵を圧倒した。上田は献身的な守備でチームに貢献。開始16分の堂安律(ビーレフェルト)の先制弾のシーンではゴール前に飛び込んでマークを引き付ける黒子の働きをしてみせた。 ここまでは自分のリズムでボールを受ける機会が少なかったものの、前半32分には大きな見せ場が訪れる。久保建英(ヘタフェ)のスルーパスに抜け出し、ゴールライン際のところから中央にラストパス。そこに久保が飛び込み、左足で豪快にネットを揺らす。上田の巧みな動きが2点目を演出したのである。 前半を3-0で折り返した日本は後半も攻撃の手を緩めなかった。立ち上がり早々に相馬勇紀(名古屋)が4点目を叩き出し、迎えた11分、上田は左サイドバック・中山雄太(ズウォレ)の高精度クロスを頭で合わせ、5点目をゲット。1ゴール1アシストという結果を残し、6-0の大勝の原動力となった。 「どちらかというとホッとしたというか、やっと取れたという実感があります。ニアに入っていく意識はあったけど、深い位置からのクロスだったので、マイナスも行けるようにしていた。(マイナスに流れたけど)身体能力を活かしてニアに打てたのでよかったです」 本人は冷静にゴールシーンを分析したが、そうやって自身の一挙手一投足を俯瞰できるのが、彼の強みだ。持ち前の賢さを生かして長所短所を客観視し、突き詰めていくことで、大迫勇也(ブレーメン)らの領域に上り詰めようと躍起になっているに違いない。南アフリカ、メキシコ、フランスという強豪国と渡り合える東京五輪は自らを一段階、二段階飛躍させる絶好の機会。これをガッチリとつかみに行くべきだ。 「東京五輪はキャリアの分岐点。活躍すれば海外も見えてくるかもしれないですし、選ばれなければ、次のキャリアに向けて頑張るだけ。1つの区切りになると思います」 彼はこう語っていたが、確かに憧れの大迫はドイツに赴いてから急激な成長曲線を辿った。上田が同じ道を歩みたければ、やはり海外移籍のチャンスを引き寄せるしかない。 2019年夏に法政大学に在学しながらサッカー部を退部し、鹿島アントラーズ入りしてから早いもので2年。彼は2020年はJ1・26試合出場10得点という好成績を残し、今季もケガの離脱を繰り返しながら13試合出場6得点という悪くない数字を出している。直近の5月30日の川崎フロンターレ戦を見ても、荒木遼太郎のスルーパスに鋭く反応。GKチョン・ソンリョンの動きをしっかり見ながら右足ループで押し込んだ一撃は進化を象徴するものだった。「普段の僕にはないアイディアを生かせたし、新しい引き出しのゴールを取れた」と本人も手ごたえを口にしていた。 そうやって一瞬の判断で多彩な得点パターンを出せるのは、優れたストライカーの絶対的条件。今回のU-24代表を見渡すと、左右両足とヘッドで柔軟にゴールを奪えるのは上田くらいだ。しかも、前線でボールを引き出し、タメを作り、2列目やサイドバックが上がる時間を稼ぐプレーにも長けている。この万能型FWがオーバーエージ不在の攻撃陣をけん引しなければ、日本悲願のメダル獲得はあり得ない。 「ポスト・大迫勇也一番手」と目される男にはここで一気に浮上してほしいもの。ガーナ相手に見せたゴール前の迫力を、次なるジャマイカにも示すことが肝要だ。それが五輪本番、そして近未来の海外進出につながる。伸び盛りの今を逃してはならない。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2021.06.07 11:45 Mon
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【2022年カタールへ期待の選手vol.73】長友との対決は幻に。その悔しさ糧にガーナ戦に!五輪活躍で理想的な新天地もゲット!/堂安律(ビーレフェルト/MF)

3日の日本代表対U-24日本代表の"兄弟対決"で注目されていたのが、長友佑都(マルセイユ)と堂安律(ビーレフェルト)のマッチアップだった。 試合前日には長友が「堂安さん、久保(建英=ヘタフェ)さん怖いです」と挑発すれば、堂安の方も「佑都君とは試合って形では対峙したことがないんで、すごく楽しみ。あの人がガンガンガツガツ来る。しっかり準備したい」と若さで突き進むつもりでいた。 ところが、ふたを開けてみると、長友はスタメンに名を連ねたが、堂安はベンチスタート。後半28分からようやくピッチに送り出されたが、その時点ではすでに長友は退いていて、注目対決は実現しなかった。22歳のアタッカーにしてみれば、インテル、ガラタサライ、マルセイユという欧州で名の知れたビッグクラブで活躍してきた長友を抜ければ、より格上のクラブへの門戸が開ける可能性もあっただけに、悔しさひとしおだろう。その不完全燃焼感を5日のU-24ガーナ戦(福岡)にぶつけるしかない。 森保一監督が2017年12月に東京五輪に向けたチームを立ち上げた時点から、エース候補の1人と目されてきた堂安。だが、当時すでにオランダ・フローニンヘンに移籍していたため、チーム招集機会は皆無に近かった。さらに言うと、2018年9月に森保監督がA代表指揮官を兼務し始めた時点で、こちらの主要メンバーに位置付けられたことで、東京五輪世代での活動参加が一段と遠のいた。 直近の参戦は2019年11月のU-22コロンビア戦(広島)だから、かなり前のこと。しかも、久保や板倉滉(フローニンヘン)、中山雄太(ズウォレ)ら欧州組が一堂に会したその試合は0-2の完敗。堂安も持ち前の突破力や機動力を発揮できずに終わっている。 「もう1カ月で五輪が始まるので、コミュニケーションは意識してますし、あとはプレーで示すこと。自分がしっかり引っ張っていこうと思ってます」と本人もA代表常連組らしい自覚を口にする。PSVで出番を得られずくすぶっていた2019年末時点と、ビーレフェルトで今季リーグ戦フル稼働した現在とは動きのキレもプレーの幅もメンタル面も全て違う。自身の成長の跡を示すためにも、今回のガーナ戦では「目に見える違い」を見せて、ゴールに直結する仕事を果たさなければならない。 「欧州5大リーグと言われるブンデスリーガは明らかにオランダより個人の能力は高いですし、バイエルン、ドルトムントといった強豪クラブと戦える。そういう中で、日本人のよさである俊敏性というか、大柄なDFに対して小回りの利くプレースタイル、バイタルエリアで受けて間に潜り込んでいくドリブルとかは通用したと思ってます」と堂安はドイツで戦い抜いた自信を口にした。 ガーナという屈強なフィジカルを誇る相手には、磨き上げた長所を大いに発揮できるチャンスがありそうだ。A代表でともに戦う機会が多い久保や遠藤航、酒井宏樹らも近くにいてサポートしてくれるだけに、彼の強みをより一層、発揮しやすいはず。大いに期待してよさそうだ。 「ドイツで戦って自分らしさを取り戻せた部分もありますけど、改めて個人で打開できる能力を伸ばす必要があるとも感じました。PSVにいた時は自分の周りにスーパーな選手がいたので、自分が1対1で仕掛けるのをやめて、そっちにパスするのを選択することが多かったので、少しずつプレースタイルが自分らしくないというか、ネガティブなものになっていった。でも、ビーレフェルトでその点をさらに伸ばせたし、自分の良さを蘇らせることができたと思ってます」 本人がこう語るように、持ち前のチャレンジ精神を取り戻せたという。それをピッチ上で存分に表現できれば、必ずいい方向に進むはず。ゴールという結果が欲しいのなら、恐れずに前に突き進むしかないのだ。 2018年秋にA代表の右サイドのレギュラーに躍り出た頃の20歳の堂安はアグレッシブさがウリの選手だった。それが2019年アジアカップ(UAE)で壁にぶつかった頃から迷いが見え始め、その後、伊東純也(ヘンク)の台頭によってポジションを奪われる格好になってしまった。そちらの定位置を奪回する意味でも、五輪代表で結果を残すことは必要不可欠だ。五輪直後には2022年カタール・ワールドカップ アジア最終予選も迫っている。この厳しい戦いを視野に入れても、彼にはここで一気にギアを上げてもらう必要がある。 ビーレフェルトに完全移籍する話が資金難で難しくなったと報じられる中、堂安は来季活躍できる新天地を探さなければいけない立場。PSVに戻るより、彼を重要戦力として考えてくれる別クラブに赴いた方がA代表での序列アップにもつながる。理想的な好循環を生み出すためにも、やはり東京五輪の活躍は必須。それに向けての大きな一歩となるガーナ戦で「堂安ここにあり」を示すこと。それを強く求めたい。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2021.06.05 17:40 Sat
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【2022年カタールへ期待の選手vol.72】鈴木彩艶も参戦し激戦の五輪GK争い。第一人者は地位を守り、A代表昇格を果たせるか?/大迫敬介(サンフレッチェ広島/GK)

2022年カタールワールドカップアジア2次予選・ミャンマー戦(千葉)からスタートした5〜6月の日本代表活動。28日の初戦は欧州組だけの構成だったが、順当に10-0で圧勝。最終予選進出を決めた。 次の段階からはA代表とU-24代表の活動に分かれるが、後者にとっては2か月後に迫る東京五輪最終登録メンバー18人を絞り込むための最終テストの場。非常に重要な意味を持つのだ。 すでにオーバーエージ枠の吉田麻也(サンプドリア)、酒井宏樹(マルセイユ)、遠藤航(シュツットガルト)が決まっているため、U-24世代に残されているのは15枠。このうちGKは2枠という狭き門だ。そこに大迫敬介(サンフレッチェ広島)、谷晃正(湘南ベルマーレ)、沖悠哉(鹿島アントラーズ)、鈴木彩艶(浦和レッズ)の4人が挑む。他のポジション以上に大激戦なのは間違いないだろう。 候補者のうち、最も正守護神に近いと目されるのが大迫である。A代表との融合チームだった2019年コパ・アメリカ(ブラジル)やEAFF E-1選手権(釜山)にも参戦。「次世代の日本代表守護神最有力」と目されてきたからだ。当時、19歳ながら世界的強豪のチリに勇敢に挑んでいく姿勢を間近で見ていた川島永嗣(ストラスブール)も「ポテンシャルの大きな選手」と高く評価。そのままの勢いでA代表に定着するかと思われた。 だが、コロナ禍の2020年は国内組の代表活動がほぼできず、彼自身もJリーグで出番を失うことが多かった。広島の城福浩監督はベテラン守護神・林卓人を重用。大迫は2019年の29試合から15試合へとJ出場実績を大きく減らすことになった。 「試合に出られない時期が多かったですけど、自分自身の感覚としては、いつ出番が来てもやれる自信はありました。出られなかった要因としては、メンタルが一番大きかったと思います。代えられた時はメンタルの持っていき方が難しかった。シーズン通して苦しかったけど、どんな時も前向きに取り組むことの大事さは改めて感じました」と本人も昨年末の五輪代表合宿の際、しみじみコメントしていた。 その発言通り、GKはつねに心身両面で安定感を維持し続けなければいけない。何が起きても平常心を保つ必要があるし、パフォーマンスの浮き沈みも許されない。それを21歳という若さで学べたのは、大迫にとって非常にポジティブなこと。五輪の1年延期には意味があったのだ。 迎えた今季。クラブでポジションを奪回した彼はここまでリーグ18試合フル出場(5月29日時点)。今月に入って複数失点している試合が多いのは気がかりだが、彼自身のパフォーマンスがブレているわけではない。 とりわけ王者・川崎フロンターレ相手にドローに持ち込んだ4月16日のゲームなどは「失点しても我慢強く戦うことで勝ち点を拾えると確信を得られた。チームとして前半から前からプレスをかけた分、息が上がっていたので、悪い流れの時は時間を使って落ち着けるなど冷静に判断しながらやれました」と本人も発言。タフさと粘り強さを押し出しつつ、巧みな判断力でリズムの変化をつけていた。 こうした多様性と柔軟性は昨年までの大迫にはなかったもの。五輪本番になれば、南アフリカ、メキシコ、フランスという強豪が相手。必ず押し込まれる時間帯が出てくる。そこで川崎戦のような頭脳的なプレーを見せられれば、チーム全体に安心感を与えられるだろう。吉田や酒井といった百戦錬磨の面々が最終ラインに陣取っているのも心強いが、やはり守護神がチームを最後尾から確実に支えていなければ、メダルという大きな目標には届かない。 今回の4人のGK候補者のうち、こうした風格を出せるのは大迫だけではないか。俊敏性と反応の秀でた谷、キックや組み立てに長けた沖、18歳ながら規格外のフィジカルを持つ鈴木も魅力的ではあるが、総合力と経験値を考えるとやはり大迫抜きには語れない。彼には森保監督の期待に応えるような傑出した仕事ぶりを見せてもらうしかない。 さしあたって6月5日のU-24ガーナ戦(福岡)と13日のU-24ジャマイカ戦(豊田)だ。このいずれかで大迫はスタメンに抜擢されるはず。そこで相手を封じ込め、日本の勝利の原動力になれれば、五輪本番のピッチをグッと引き寄せることができるだろう。 そして五輪で好結果を残せば、秋からのカタールW杯最終予選、1年半後のW杯本大会にもつながる。目下、A代表のGK争いも38歳の大ベテラン・川島や国内で再出発した権田修一(清水エスパルス)らを軸に混とんとしている。若い世代が一気にのし上がる可能性もゼロではないだけに、この機を逃してほしくない。 「もちろん五輪では金メダルを取りたいですけど、昨年1月のタイの大会(AFC U-23選手権)の結果を見れば、簡単に言えることはない。目の前の試合結果を出し続けることが大事」とまずは直近の試合でベストを尽くすことが大迫にとっての至上命題だ。 2010年南アフリカW杯で楢崎正剛(名古屋CFR)から定位置を奪った川島のような勢いを、21歳の守護神には強く求めたいところ。森保監督に早くから評価されてきた彼の一挙手一投足が気になる。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2021.05.31 20:05 Mon
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