若手の勢いに、自分の10年を重ねながら。南野拓実30歳が歩む“架け橋”の役割

2025.11.18 16:45 Tue
Getty Images
ガーナ戦で先制点を挙げた南野拓実。練習からギラつく20歳前後の若手たちに囲まれながら、30歳になった自分の立ち位置を静かに受け止めている。日本代表に呼ばれて10年。かつて自分も“勢いだけの若者”だった時代がある。その記憶を抱えながら、今はキャプテンマークを巻き、彼らの背中を押す側へ――。森保ジャパンが世代交代を迎える渦中で、南野は何を思い、どう若手たちと向き合っているのか。

■キャプテンマークは「特別じゃない」

「20歳ぐらいの選手たちは、練習からギラギラしてましたね。ああいう勢いはすごくいい刺激になります」
南野の表情には、どこか懐かしさがあった。自分が代表に初めて呼ばれた2015年――。あの頃も、先輩たちの背中を追いかけ、少しでも近づこうともがいていた。南野が見つめる若手たちの姿は、10年前の自分と重なるのだろう。

ガーナ戦では歴史的勝利を収めたブラジル戦に続き、キャプテンの重責を担った。左腕の腕章は森保監督からの信頼を証といっていい。
「森保さんは僕がキャップ数も多いし、日本代表で長くプレーしているので任せてくれたんだと思います。キャプテンマークを巻けるのは誇らしいし光栄です。でも、特別な意識はありません。ただのゲームキャプテンなので、必要以上に気負ってはいないです」

森保一監督が掲げる「底上げ」の波は、北中米W杯を控える中、一気に押し寄せている。ブラジル戦、そしてガーナ戦。南野の周りには、知らないうちに“新しい日本代表の景色”が広がっている。経験値のある選手として、その光景はどう映っているのか。

「彼らの勢いをしっかり受け取って、僕らもそのまま合わせていければいいと思います」

かつては“追う側”だった人間が、いつの間にか“支える側”になっている。その移り変わりを、南野は抵抗なく受け止めているようだ。

■10年前の“自分”と出会うように

若手の台頭を不安ではなく、むしろ歓迎できるのは、勝った経験だけでなく、苦しんだ経験も積み重ねてきたからだ。

カタールW杯では日本の10番を背負った。初のベスト8をかけた決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦では1人目のキッカーに名乗りを挙げたが止められ、失意を味わった。

第2次・森保ジャパンの発足後は、メンバーから漏れることが続く。およそ1年間、南野拓実の名前は日本代表から消えた。

「南野は終わった」という声も聞こえる中、モナコへの移籍をきっかけに復調を遂げた。前線からの献身的な守備と、ゴール前での決定力で、2シャドーの一角を勝ち取っている。そして南野は、ゴール数よりもはるかに大切なことを静かに語った。

「ゴール数よりも、重要な試合のゴールが大事。ワールドカップの一発かもしれない。そのために、良いコンディションを維持することが重要です」

ミックスゾーンを去っていく背中を見ながら思った。彼は今、森保ジャパンの“架け橋”のような存在なのだと。若手が未来へ突き進むスピードを受け止め、経験でチームの重心を整え、それでいて決定的な場面では自ら勝負を決めていく。

10年前の自分と、目の前の若手たち。その両方を知るのは、南野拓実だけだ。日本代表が次のフェーズへ進む今、30歳のアタッカーは、静かに、しかし確実にチームの中心へ歩を進めている。

取材・文=北健一郎

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