「ケガは怖かったけど…」限定出場だったと明かした久保建英、堂安律との共存に手応え「僕がウイングだったら欲しい」
2024.06.12 07:30 Wed
シャドーの位置で良さを出した久保建英
日本代表MF久保建英(レアル・ソシエダ)が、シリア代表戦を振り返った。11日、エディオンピースウイング広島で2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選の最終節が行われ、日本はシリアと対戦した。
日本は6連勝をかけての戦いに。対するシリアは、負ければ2次予選敗退が濃厚となる難しい一戦となったが、日本は5-0で圧勝。アウェイに続いて2試合連続続けて5ゴールを記録。2次予選は6連勝、24得点無失点という圧倒的な強さを見せつけた。
2シャドーの一角で先発出場した久保。右ウイングバックのMF堂安律、シャドーで並んだMF南野拓実、トップのFW上田綺世と良い関係性を築いて攻撃の形を作っていた。
特に右ウイングバックの堂安とのコンビネーションは冴え渡り、[4-2-3-1]ではトップ下と左サイドの関係になったり、[4-1-4-1]ではポジションが重なることで共存しにくいなど問題もあった。
久保は堂安との関係性について「彼が基本的に中にカットインしてくるので、僕としてはあまり彼に近づきすぎず、浮いたポジションで受けてターンしようと考えていました」とコメント。良い距離感を取ることが大事だったとし、「彼が高い位置を取っている時はあまり考えずに、僕がウイングだったらボールが欲しいので、簡単に前を向いてパスを出すことを意識しました」と、共感できる2人だからこその判断をするようにしたと語った。
堂安との関係だけでなく、下がってボランチのMF遠藤航、MF田中碧のサポートに入ることや、ボールを持てば仕掛けに加えて、スルーパスでチャンスを作るなど、良いプレーを見せていた。
「質の高い選手が4枚いたら、相手はいかに中に絞っていると言っても捕まえるのは難しいです。チームでやっているときも僕らが4枚も中にいたら、スペインリーグのレベルで守備は固いけど、捕まえるのは難しくなってくるので、あれは引いてくる相手に有効なのかなと思います」
ダブルボランチとの関係、ウイングバックとの関係、シャドー同士の関係、そしてトップとの関係と、今まで以上に多くの選手と関わりながらも、逆にお互いが生きる形となった今回のシステム。久保は62分で交代となったが、これはケガのリスクを考えての予定通りだったとした。
「1試合目は練習でちょっとモモ裏がイキかけちゃって間に合わなかったので、2試合目なんとか間に合えばいいなという話の中で、最初から60分という時間限定つきでした」
「ケガは怖かったですけど、終わってみたらスプリントもできて、うまくやれたかなと思います」
代表活動前に行われた東京ヴェルディとの試合でも太ももの違和感もあり後半早々で交代していた久保。しっかりとコンディションを整えながらも、無理はしなかった。
長いシーズンも一旦終了。新シーズンと9月からの最終予選に向けて、しっかりとまずは体を休めることが必要そうだ。
日本は6連勝をかけての戦いに。対するシリアは、負ければ2次予選敗退が濃厚となる難しい一戦となったが、日本は5-0で圧勝。アウェイに続いて2試合連続続けて5ゴールを記録。2次予選は6連勝、24得点無失点という圧倒的な強さを見せつけた。
特に右ウイングバックの堂安とのコンビネーションは冴え渡り、[4-2-3-1]ではトップ下と左サイドの関係になったり、[4-1-4-1]ではポジションが重なることで共存しにくいなど問題もあった。
この日は今までとは違う関係でのコンビとなったが、右サイドを2人で崩すシーンが何度も生まれ、1-0で迎えた19分にはカウンターから久保が持ち出すと堂安へパス。カットインからミドルシュートをねじ込みゴールが生まれた。
久保は堂安との関係性について「彼が基本的に中にカットインしてくるので、僕としてはあまり彼に近づきすぎず、浮いたポジションで受けてターンしようと考えていました」とコメント。良い距離感を取ることが大事だったとし、「彼が高い位置を取っている時はあまり考えずに、僕がウイングだったらボールが欲しいので、簡単に前を向いてパスを出すことを意識しました」と、共感できる2人だからこその判断をするようにしたと語った。
堂安との関係だけでなく、下がってボランチのMF遠藤航、MF田中碧のサポートに入ることや、ボールを持てば仕掛けに加えて、スルーパスでチャンスを作るなど、良いプレーを見せていた。
「質の高い選手が4枚いたら、相手はいかに中に絞っていると言っても捕まえるのは難しいです。チームでやっているときも僕らが4枚も中にいたら、スペインリーグのレベルで守備は固いけど、捕まえるのは難しくなってくるので、あれは引いてくる相手に有効なのかなと思います」
ダブルボランチとの関係、ウイングバックとの関係、シャドー同士の関係、そしてトップとの関係と、今まで以上に多くの選手と関わりながらも、逆にお互いが生きる形となった今回のシステム。久保は62分で交代となったが、これはケガのリスクを考えての予定通りだったとした。
「1試合目は練習でちょっとモモ裏がイキかけちゃって間に合わなかったので、2試合目なんとか間に合えばいいなという話の中で、最初から60分という時間限定つきでした」
「ケガは怖かったですけど、終わってみたらスプリントもできて、うまくやれたかなと思います」
代表活動前に行われた東京ヴェルディとの試合でも太ももの違和感もあり後半早々で交代していた久保。しっかりとコンディションを整えながらも、無理はしなかった。
長いシーズンも一旦終了。新シーズンと9月からの最終予選に向けて、しっかりとまずは体を休めることが必要そうだ。
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完封勝利の裏に「もっとやれた」。早川友基、“第3GK”からW杯へのロードマップ
ガーナ戦のピッチに立った鹿島アントラーズの守護神・早川友基。正GK鈴木彩艶の負傷、第2GK大迫敬介の不在の中で巡ってきたチャンスを、無失点という最高の形で終えた。だが、試合後のミックスゾーンに現れた早川の表情に、満足の色はなかった。代表2戦目にして、“守るだけ”のGKでは終わらない次のステージを見据えていた。 ■ピッチで感じた想像以上の「圧」 先発出場を告げられたのは試合の2日前だったという。 「今まで培ってきたものをピッチで出すだけだと思っていました」 鹿島で見せる特徴は、セービングだけではない。足元の技術と配球判断、そして試合を読む力だ。しかし、この日感じたのは、想像以上の「圧」だった。 「トラップしてからの駆け引きとか、出しどころを消される感覚。持ち運ぼうとした瞬間にプレッシャーがかかる。そのスピード感と背後を狙う走力はすごかった」 それでも、背後の対応では冷静だった。 「足の速い選手が背後を狙ってくると聞いていたので、試合を通じてカバーを意識できました」 早川は身体能力で上回る相手にも、読みとポジショニングで対抗した。後半も集中を切らさず、チームを完封へ導いた。 ■“第3GK”が描く、W杯への道筋 試合後のコメントには、自己評価の厳しさがにじむ。 「欲を言えば、もっとやれた。パスの質、長短の判断、その精度はまだ上げられる」 無失点でも課題を口にするのは、すでに次を見ているからだ。 「みんなとも話したんですけど、代表の試合にでてこそ得られる経験値があるなと。僕自身も今までにない緊張感はありました」 そう語る早川の目には、明確なターゲットがある。 「目指しているのはワールドカップ。そこがぶれることはないです」 ミックスゾーンでは何度も“成長”という言葉を繰り返した。 「こういう経験ができたのは素晴らしいと思いますし、しっかり振り返って、また次の試合につなげていきたい」 無失点という結果の裏にあるのは、静かな決意だ。“第3GK”から、“守護神”へ。そのロードマップは、もう動き始めている。 取材・文=北健一郎 2025.11.18 15:30 Tue3
大怪我から復活した“最終ラインの司令塔”。33歳・谷口彰悟が示したDFリーダーの価値
ガーナ代表戦、ボリビア代表戦と続いた11月シリーズを、日本代表は2試合連続の無失点で締めくくった。その中心にいたのが、フィールドプレーヤーで唯一2試合フル出場を果たした33歳――谷口彰悟だ。2024年11月にアキレス腱を断裂。大怪我から戻ってきた男は、再び日本代表の最終ラインで存在感を放っている。2026年北中米ワールドカップ、その真ん中を任されるのは彼なのかもしれない。 ■1年ぶりの復帰で見せた安定感 ボリビア戦後、ミックスゾーンに姿を見せたDF谷口彰悟は、どこか晴れやかな表情だった。 チームは11月シリーズを2試合連続の完封で終え、自身はフィールドプレーヤーで唯一の2試合フル出場。数字だけを見れば、十分すぎる結果だ。 「まずはゼロで終われたこと。苦しい時間もありましたけど、こういう難しいゲームを勝ち切るのは本大会でもあり得る。勝って終われたのは非常に良かったと思います」 言葉の端々からは「代表に帰ってこられた」という安堵よりも、すでに次を見据えている姿勢のほうが強く伝わってくる。 10月のブラジル戦で約1年ぶりに復帰し、歴史的勝利に貢献した。そこからクラブでコンスタントに試合に出続け、11月の代表活動を迎えると、再び最終ラインの中心に収まった。 「3枚の真ん中はめちゃくちゃ大事なポジション。簡単には譲りたくないですし、リーダーシップを取っていかないといけない」 両脇の選手が変わっても、谷口を中心としたDFラインの安定感は変わらない。そこには、ベテランらしい“気遣い”がある。 「気遣い、してなさそうに見えて結構してるんですよ(笑)。特徴は理解してますし、いい形で受けてもらうためのパスのタイミングとか、右か左かの判断は真ん中だからこそ見える。できるだけ“ハメパス”にならないようにというのはこだわってます」 周りの選手が思い切って前に出られるように、背後のカバーは責任を持って引き受ける。 「広範囲は僕がカバーして、目の前の選手にはバトルしてもらう。後ろに保障があると前に行きやすいので」 谷口がいると、両サイドのDFが伸び伸びとプレーできる――。それこそがクリーンシートでの2連勝につながったのは間違いない。 ■33歳はアップデートし続ける ただし、全てがよかったわけではない。むしろ、完封だからこそ課題が際立つと語る。 「相手のプレッシャーもあって、打開しきれないところや、ショートカウンターを食らったり、イージーなミスもあった。次のレベルでは致命的になるので減らしていかないといけない」 象徴的だったのが、MF鎌田大地との縦パスのリターンが相手に狙われて、シュートを放たれた場面だ。 「日本の選手が(最終ラインに)落ちてきた時に、そのまま食いついてくる相手だったので、そこをもっと利用しながらスペースを見つけられれば。できた時は前に運べていたので、意図的にやれたら良かった」 ボランチの組み合わせが変わる中で、ラインのスライドや立ち位置の整理にも改善点はある。 「ワタル(遠藤航)が落ちるのか、自分たちで4枚っぽく回すのかはやりながらのところが多かった。前半の中で修正できればもっとスムーズにやれた。こういうゲームはワールドカップでもあり得るので、焦れずにゼロで進めることは大事」 自身の年齢について問われると、照れ笑いを浮かべながらも自信は揺らがない。 「年取ったのに(笑)。でも、フィジカルが衰えてても感じさせないメンタリティでやれている。まだまだ伸びている自信はあります。おじさん、まだまだ頑張ります」 アキレス腱断裂という選手生命を揺るがす大怪我から1年。本来ならキャリアの下降線に入っていても不思議ではない33歳が今、代表で一段階上の存在感を放っている。 「自分が出るからにはゼロで終わらせてチームを勝たせる。それは毎試合こだわってます」 2026年――日本代表の最終ラインを束ねるのは誰か。「谷口彰悟」という答えは、確かに現実味を帯び始めている。 取材・文=北健一郎 2025.11.19 01:35 Wed4
「チームに求められていることしか考えていない」。後藤啓介、20歳が見せた献身と野心
11月14日、ガーナ戦で日本代表デビューを果たしたFW後藤啓介。ジュビロ磐田でクラブ史上最年少得点者となり、2024年にベルギーへ渡った20歳は、限られた時間の中でチームのために走り続けた。ストライカーとして結果を追いながらも、まずは求められた役割を遂行する。そこには、後藤が抱く「献身」と「野心」が確かにあった。 ■「まず守備から」。後藤が体現したチームファースト 森保監督から告げられたのは、シンプルなひと言だった。 「まず守備から。ゼロで抑えるためにハードワークしてほしい」 26番を背負った191cmのストライカーがピッチに入ったのは後半31分。ファーストプレーで相手DFを背負った状態でボールを収めると、その後は相手のパス回しを全力で追いかけた。 後半40分、ゴール前でMF佐野海舟からの縦パスを受けると、走り込んできたMF佐藤龍之介へワンタッチで落とす。 「龍が勢いを持って入ってきたのが見えてたので。自分はゴールに背を向けていたし、前向きの選手をシンプルに使いました」 その1分後には右サイドからのクロスに飛び込んだ。惜しくも相手のクリアに阻まれたが、動き出しの質には手応えがあった。 「昨日の練習で(菅原)由勢くんがいいクロスを上げてたので、来るなと思ってました。ああいう形は続けていきたい」 ストライカーである以上、“結果”は常に求められる。だが後藤は、チームの秩序の中で自分を活かす選択をした。 「結果を出すこと、チームに求められること、どんなバランスでプレーしていましたか?」と聞くと、後藤は迷うことなく答えた。 「チームに求められていることしか考えていないです。それをやった結果、ゴールはついてくると思っています」 限られた時間の中で、ストライカーとしての嗅覚とチームプレーのバランスを見せた。 ■黒髪に戻して、もう一度スタートラインへ 日本代表に合流した時は金髪だった後藤だが、豊田スタジアムのピッチには黒髪で現れた。シント=トロイデンVVのチームメート・谷口彰悟と一緒に美容室に行って黒に染め直したと明かした。 「初代表ですし、もう一回スタートだなと思って。プロになった時の気持ちを思い出したかった」 デビューの夜に合わせて、自分自身をリセットする。そこには、本気でW杯に出場するという決意が滲んでいた。 森保ジャパンでは、センターフォワード争いが熾烈だ。FW上田綺世、FW小川航基、FW町野修斗らがしのぎを削る中で、後藤はサプライズ選出を狙う。 「次は国立。今日よりお客さんも入ると思うので、その中で結果を残したい。森保(一)さんに“使いたい”と思わせるプレーをしたい」 チームファーストでありながら、ストライカーとしての本能を隠さない。 そして、同世代の仲間たち——佐藤、MF北野颯太と共にピッチに立った時間も、新しい刺激を与えた。 「急にすごく若くなったので、アンダー世代(の代表)なのかと思ったぐらいですけど、自分たちが引っ張っていかないといけない」 20歳のFWは言葉を選びながら、確かな責任感を見せた。ガーナ戦での数分間は、単なる“デビュー”ではない。チームの中でエゴを磨き、大舞台へ感覚を研ぎ澄ませる、若きストライカーの“始まり”だった。 取材・文=北健一郎 2025.11.15 12:30 Sat5

