U-22アルゼンチンに大勝も寂しかったアイスタ/六川亨の日本サッカーの歩み

2023.11.20 22:15 Mon
©超ワールドサッカー
北中米W杯のアジア2次予選で日本がミャンマーに5-0で圧勝したのは当然として、翌17日にはU-17日本代表がW杯のグループリーグ第3戦でアフリカ王者のセネガル代表に2-0と快勝してベスト16進出を決めた。さらに18日はU-22日本代表が、親善試合とはいえU-22アルゼンチン代表に5-2の勝利を収めた。

日本もアルゼンチンも、まだパリ五輪の出場権を獲得していない。しかしアルゼンチンは2004年のアテネ五輪でFWカルロス・テベスやMFハビエル・マスチェラーノを擁して金メダルを獲得すると、4年後の北京五輪でもFWリオネル・メッシらが五輪連覇を達成。今回、監督として来日したマスチェラーノは北京五輪もOA枠で出場し、連覇に貢献した。
そんなアルゼンチンや、セネガルに完勝した日本のアンダー世代の強みは前線からの労を惜しまない守備にある。

セネガルに対し、個々の身体能力では劣勢を強いられた日本だが、前線から中盤にかけて、しつこいくらいにボール保持者に食らいついた。アタック&カバーを繰り返し、セネガルのドリブル突破を阻止した。その象徴が、後半27分のFW高岡怜颯の2点目である。GKへのバックパスが弱いと見るや猛ダッシュ。GKは足の裏でボールを引いてかわそうとしたものの、高岡は簡単に奪って無人のゴールへ値千金の追加点を流し込んだ。

アルゼンチンに対しても、日本は2~3人がかりのマークでボール保持者から自由を奪った。前半17分にはMF鈴木唯人がMFカルロス・アルカラスのボールを奪おうとしてかわされたが、2度3度とアタックを繰り返した。結果的に鈴木の反則となったが、“10番”を任された鈴木でも守備のタスクを実践し続けた。こうした姿勢は他の選手も同様で、日本のあまりに激しく執拗な守備に、親善試合と割り切ったせいかアルゼンチンの選手は戸惑っていた前半だった。
ところが後半になると日本の守備に慣れたのか、アルゼンチンは1人1人のボールを持つ時間が短くなり、日本のアタックをかわしては日本陣内へ攻め込んだ。その中心選手が10番を背負ったディエゴ・アルマンド(マラドーナ)ならぬ、ティアゴ・アルマダである。昨年のカタールW杯のグループリーグ第3戦、ポーランド戦の後半39分から交代出場し、世界王者の一員となった逸材だ。そんな彼の名前は覚えておいた方がいいだろう。

試合はそのアルマダが後半5分に右足でFKを直接決めて逆転に成功する。その後もアルゼンチンの攻勢が続いたが、こうした嫌な流れを断ち切ったのが後半21分の鈴木のミドルシュートだった。さらに大岩剛監督は「疲労を踏まえた上で、フレッシュな選手を入れることで、どこでボールを奪うか明確にしたかった」と24分に2人の選手を交代。これで流れを取り戻した日本は3連続ゴールでアルゼンチンを突き放した。

後半40分には「皆さんが期待していることも考慮して、もちろん唯人(鈴木)も(地元)ファンにセレブレーションを受けることも必要と思った」という大岩監督の配慮から、鈴木に代えてFW福田師王をピッチに送り出す。すると福田は2分後にゴールで応えてパリ行きをアピールした。

そんな試合で唯一残念だったのは、バックスタンドに空席が目立ったことだ。この日の観衆は1万1千225人。22年3月の立ち上げから大岩ジャパンは海外遠征を重ねてきて、日本国内の試合はこのアルゼンチン戦が初めてだった。お披露目試合でもあったが、そのぶん選手の知名度は、今夏まで清水でプレーした鈴木をのぞけば低かったかもしれない。

ゴール裏の横断幕も最多4名を送り出したFC東京が目立ったくらいで寂しさを感じざるを得なかった。スタメン中4名が海外組で、普段のプレーを見る機会が少なかったのもその一因かもしれない。活動期間が限られ、選手の招集も何かと制約があるだけに、注目度という点においては難しい五輪世代と言えるだろう。それでも、こうして結果を残して五輪出場を決めれば注目度も高まるだけに、今後のさらなる成長を期待したい。


【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた

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またも終盤に失点…東京Vに必要なメンタル/六川亨の日本サッカーの歩み

J1リーグの第8節、東京V対FC東京の、16年ぶりの“東京ダービー”は2-2のドローに終わった。前半で2点をリードし、さらに前半43分にはFC東京に退場者が出て11人対10人になりながら、東京Vはアドバンテージを生かすことができずに追いつかれてしまった。 サッカーでは1人少ないチームが予想外の健闘を見せるのはよくあること。JSL時代のセルジオ越後氏は、「1人少ないとお互いがお互いにカバーしようという意識から、攻守に連動性が出てくることはよくあるよ」と話していた。 FC東京が後半16分に寺山翼と遠藤渓太を投入後はまさにこのような状況で、右SB白井康介がインターセプトからドリブルでカウンターを仕掛け、遠藤の移籍後初ゴールをアシストして反撃のノロシを上げた。 試合は後半アディショナルタイム4分に遠藤のこの日2点目で引き分けに終わったわけだが、東京Vにしてみれば敗戦に近い勝点1だっただけにショックも大きかっただろう。試合後の城福浩監督も、感想を求められると「サポーターには悔しい思いをさせました。申し訳ない。以上です」と言って天を仰いだ。 東京Vは開幕戦で横浜FMに1-0とリードしながら試合終了間際のPKで同点に追いつかれ、アディショナルタイムの失点で1-2と敗れた。第2節の浦和戦も89分に与えたPKで同点に追いつかれるなど、“試合終盤“が鬼門となっていた。初勝利は第6節の湘南戦(2-1)。しかし第7節の柏戦は先制しながら後半に追いつかれ、そしてFC東京戦も2点のリードを守れなかった。 城福監督はFC東京戦後、「このチームはやはり選手層を厚くしていかないといけないと痛感しています。選手が代わったら、落ち着きがなくなるという状況を変えていかないと、ゲームの終盤でやはり我々が痛い思いをすることを繰り返しています」とも語っていた。 選手層を厚くすることは急務だろう。そして、できるならDF陣かボランチにJ1でプレー経験のある選手が必要だとも感じた。今シーズンの東京Vで、FC東京戦で11年アジアカップ決勝の李忠成のような鮮やかなボレーを決めた染野唯月と、ここまで3ゴールを決めている山田楓喜はいずれもJ1経験者。そしてレンタル移籍ながらしっかり結果を残している。やはりJ1とJ2では1対1やチームでの駆け引き、試合運びなどの個人能力で差があるのではないだろうか。 東京V対FC東京戦の翌日はJ3リーグの大宮対沼津戦を取材したが(1-1)、大宮の先制点は杉本健勇がミドルシュートを叩き込んだ。ボールをトラップした瞬間からシュートまで、落ち着き払った動作はシュートを打つ前から決まると思えるほど自信に満ちていた。やはり“レベルの差“はあるのだと痛感したものだ。 そして、これは私のまったくの私見だが、城福監督は昔から喜怒哀楽の激しい指揮官だった。得点には派手なガッツポーズで喜びを表し、失点には悔しがる。相手の納得のいかないプレーには本気で怒りを表すなど感情表現が豊かだ。しかし選手は、得点の際は喜びを爆発させても、失点のたびに落ち込んでいるようなのが気になった。もっと冷静に現実を受け入れつつ、状況に応じGKも含めて時間稼ぎをするとか、リトリートして相手を誘い出し、カウンターを狙うなど柔軟な発想も必要だろう。 すべての試合を勝とうとしてもそれは無理な話。引き分けでよしとしなければならない試合(内容)もあれば、負けることもある。負けるたびに落ち込んでいてはメンタル面もネガティブになり、負の連鎖につながりかねない。どこかで割り切る必要もあるだろう。それにはコーチ陣のフォローも重要だ。 FC東京戦のアディショナルタイムの失点後、天を仰いだりうなだれたりしている選手が多かった。残り時間が少ないとはいえ、まだ数分間プレータイムは残っていたので、すぐさまボールを拾ってキックオフしようという選手がいなかった。「これまでの繰り返し」とショックを受けていたのかもしれないが、だからこそチームを鼓舞するようなベテラン選手が欲しいと思った次第である。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> <span class="paragraph-title">【動画】“東京ダービー”で衝撃の結末…終了まで残り1分の同点劇</span> <span data-other-div="movie"></span> <script>var video_id ="HZj1w5Oa1Mc";var video_start = 517;</script><div style="text-align:center;"><div id="player"></div></div><script src="https://web.ultra-soccer.jp/js/youtube_autoplay.js"></script> 2024.04.15 16:30 Mon

松木玖生の最適なポジションは?/六川亨の日本サッカーの歩み

今月16日、AFC U-23アジアカップ カタールの初戦、中国戦からパリ五輪出場権獲得のチャレンジが始まる。前回のコラムでも、DF陣の経験不足は否めないものの攻撃陣のタレントはバリエーションに富んでいて期待できるという原稿を書いた。そして先週と今週のJリーグを取材して、FC東京の松木玖生の新しい一面を見ることができて、その期待はさらに高まった。 松木といえば、青森山田高時代から、強靱なフィジカルと体幹の強さを生かした球際での勝負強さ、豊富な運動量と労を惜しまない献身的なプレーでチームに貢献してきたし、それはFC東京でも変わらない。そしてボランチのポジションから、時には意外性のある攻撃参加でゴールを決めたり、左足のロング、ミドルシュートで相手ゴールを脅かしたりしてきた。 そんな松木が、4月3日のJ1リーグ第6節の浦和戦では、荒木遼太郎と2トップに近い形で前線に起用された。すると、トップに張るのではなく変幻自在に左右に流れたり、落ちてきたりする荒木との絶妙のコンビネーションで攻撃陣をコントロール。とりわけ左サイドのFW俵積田晃太とSBバングーナガンデ佳史扶との相性は抜群で、意外性のあるパスで彼らの攻撃参加を引き出していた。 アウトサイドにかけたスペースへの絶妙なパスには「こんな技巧的なパスが出せるんだ」と感嘆してしまった。 試合は0-1とリードされた後半、左サイドで俵積田、佳史扶とつないだパスから荒木が同点弾。さらに松木のサイドチェンジを受けた俵積田のクロスをゴール前に走り込んだ松木がボレーで決めて逆転勝利を収めた。 そして4月7日の鹿島戦では、荒木がレンタル移籍のため起用できないものの、1トップに入った仲川輝人とトップ下の松木は好連係から難敵・鹿島に2-0の完勝を収めた。絶えずボールに触るわけではないが、効果的なサイドチェンジやスルーパスで味方を使う。これまでは、どちらかというと『使われる選手』と思っていたが、そのイメージは一新した。 先制点は左サイドからのふわりと浮かしたニアへのパスで仲川の今シーズン初ゴールを演出。そして後半アディショナルタイムにはMF原川力のヘッドによるインターセプトからのタテパスを簡単にさばいて2点目をお膳立てした。いずれも「肩の力の抜けた」ようなアシストに、松木の“変化"を感じずにはいられなかった。 彼をボランチからトップ下にコンバートし、前線には荒木を起用して松木の飛び出しを演出したピーター・クラモフスキー監督の采配は賞賛に値する。やっと1トップのドリブル突破任せのパターン化された攻撃スタイルから脱却できそうだ。 そんな松木を大岩剛監督はどのポジションで使うのか。攻守に効果的な選手だけに、使い出もあるだろうが、できれば攻撃的なポジションで使って欲しいところである。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2024.04.08 22:25 Mon

復活した川崎フロンターレ/六川亨の日本サッカーの歩み

J1リーグは第5節を終了して、初昇格の町田が鳥栖を3-1で下して開幕からの不敗記録を過去最長タイの5試合に伸ばした。札幌、鳥栖に連勝しての首位固めだが、チーム状況からすれば当然の連勝と言えるだろう。過去には02年に仙台が5試合連続不敗の記録を作ったが、町田が不敗記録を更新できるのか。第6節、4月3日の相手は無敗で5位につける難敵・広島だけに、町田の真価が問われる一戦になりそうだ。 さて第5節は等々力競技場での川崎F対FC東京戦を取材した。中断前の第4節でFC東京は福岡に3-1と快勝して今シーズン初勝利をあげた。FW荒木遼太郎を“0トップ"に起用する布陣が奏功し、トップ下のMF松木玖生とのコンビで攻撃陣をリード。長友佑都とバングーナガンデ佳史扶の両SBの攻撃参加から大量3点を奪った。 一方の川崎Fは、開幕戦こそ湘南に2-1と競り勝ったものの、その後は3連敗で15位に沈んでいた。DF陣に負傷者が続出したのと、残留か移籍かで悩んでいた右SB山根視来が年明けにロサンゼルス・ギャラクシーへ移籍したため補強が後手に回ったことも低迷の一因だった。 1月21日にファンウェルメスケルケン際を獲得できたのは好材料で、富士フィルム杯では決勝点をあげたものの、開幕戦で右SBに入ったのは本来左SBの佐々木旭で、第3節の京都戦からはMF橘田健人をコンバートしてのやりくりだった。チーム状況からすればFC東京が有利かと思われたが、川崎FもGKチョン・ソンリョンが3試合ぶりに復帰するなど好材料もあった。 そして鬼木達監督は懸案の右SBに、これまた左サイドが本職の瀬川祐輔を起用。橘田を本来の中盤の戻すと同時に、それまでの逆三角形から橘田と瀬古樹のダブルボランチに代え、脇坂泰斗をトップ下に置く三角形に変更した。 橘田を中盤に戻すことで川崎Fはミドルサードでの強度が増した。素早いトランジションでFC東京の松木玖生、高宇洋、小泉慶にプレッシャーをかけて中盤での自由を奪う。ジェジエウと高井幸大のCBコンビも荒木に仕事らしい仕事をさせず、ハーフライン付近からのシュート1本に押さえ込んだ。 脇坂の先制点こそ、左SB三浦颯太のクロスをCB木本恭生がブロックしたものの、これが左ポストに当たってこぼれるという幸運も重なった。しかしその後の2点は左サイドから崩した川崎Fらしいゴール。GK波多野豪がFWエリソンを倒して一発レッドで数的優位な状況ではあったが、82分に同時交代で出場したMF山内日向汰(Jデビュー初ゴール)とFW山田新が1分後に結果を出すなど、鬼木采配が的中しての快勝だった。 敗れたFC東京は荒木の“0トップ"がジェジエウに完璧に封じ込まれたのは誤算だったかもしれない。荒木は4試合で4ゴールとチームのトップスコアラーだ。いずれのゴールも彼の得点嗅覚とセンスが結実した素晴らしいゴールである。しかしながら、チームとしての形があってのゴールではないところが判断の難しいところ。次の試合もゴールが期待できるかどうかは、その場になってみないとわからない。 これが例えば昨シーズンまで在籍したアダイウトンなら、ハーフラインを越えて彼の足元にパスを出せば、強引なドリブル突破からペナルティーエリアに侵入し、豪快なシュートを決めた。彼の個人技によるゴールとはいえ、いい形でパスを出せば一人で決定機を作れた。 しかし荒木には、どういう形でパスを出せばゴールの確率が高まるのか見えてこないのだ。このため、このまま“0トップ"を採用するのは、相手に研究されている以上、得策とは言えない。さらにディエゴ・オリヴェイラの衰えも気になるところ。それでも1トップとしてのファーストチョイスは彼しかいないのではないだろうか。浦和、鹿島と続く“国立シリーズ"は早くも正念場と言える。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> <span class="paragraph-title">【動画】川﨑Fが復活!FC東京との多摩川クラシコを制する</span> <span data-other-div="movie"></span> <script>var video_id ="VPmkElpcTXo";var video_start = 0;</script><div style="text-align:center;"><div id="player"></div></div><script src="https://web.ultra-soccer.jp/js/youtube_autoplay.js"></script> 2024.04.01 18:20 Mon

大岩ジャパン国内最後のテストマッチが終了/六川亨の日本サッカーの歩み

大岩ジャパンの集大成となる国内最後のテストマッチが終わった。あとは来月カタールへ乗り込んで、まずはグループリーグを突破。そして上位3カ国に入ればパリへのキップを手にすることができる。とはいえそれが、簡単な道のりではないことを再認識させられたテストマッチ2試合だった。 U-23ウクライナ戦こそ2-0の勝利を収めた。しかし対戦相手は全員が“国内組”。ルスラン・ロタン監督自身「本来は海外組を招集したかったが、それは難しかった」と、五輪チームへの選手の招集には強制力がないことを指摘した。これは世界共通の悩みのタネだけに仕方がないだろう。ましてヨーロッパ勢は五輪にさほど価値を見いだしていない。 このため今回来日したウクライナも、スペシャルなストライカーやパサー、ドリブラーのいない平凡なチーム。国内は戦争状態に陥っているだけに、強化が思うように進まないのも仕方のないところ。それでも真面目に、フェアに闘う姿勢は清々しさすら感じた。 そんなウクライナに対し、日本は久々に代表へ復帰したFW荒木遼太郎が“違い”を見せた。前線に張るのではなく、バイタルエリアにちょっと下がってプレーを開始することでプレッシャーを避け、得意の右足シュートでウクライナ・ゴールを脅かした。もう一人の代表復帰組であるFW染野唯月は前線で張ることが多かったため、東京Vで見せているようなゴールへの嗅覚を発揮することはできなかったのは残念だった。 攻撃陣はそれなりにJリーグでポジションをつかんだ選手が増えて層の厚みが増した印象を受けた。MF小見洋太は後半33分からの出場にとどまったが、もう少し長く見たい選手。その一方で、五輪のエースストライカーと期待される細谷真大はアジアカップ以降、ちょっと精彩を欠いているというか、自信を失っているように感じられてならない。持ち味である強引な突破が陰を潜めている印象だ。 それでも充実しつつある攻撃陣に比べ、ダブル・ボランチ(藤田譲瑠チマと松木玖生)と両SBはともかく、CB陣の人材不足、というか経験不足は明らかだ。これは大岩ジャパンだけでなく森保ジャパンにも共通した悩みのタネでもある。 思い起こせば96年アトランタ五輪と2008年北京五輪はOA枠を使わなかったが、12年ロンドン五輪(吉田麻也、徳永悠平とGK林彰洋)以降、16年リオ五輪(塩谷司、藤春廣輝とFW興梠慎三)、そして21年東京五輪(吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航)と五輪代表はOA枠で守備的な選手をいつも起用してきた。 これも日本サッカーの新たな問題点として検証しつつ、JFAとJリーグは解決策を探す努力をすべきではないだろうか。そしてパリ五輪予選で手遅れにならないといいのだが……。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2024.03.26 10:00 Tue

伊東純也の代わりに呼んで欲しい選手/六川亨の日本サッカーの歩み

「ヤングなでしこ」ことU-20日本女子代表は、AFC U-20女子アジアカップ決勝でU-20北朝鮮女子に1-2で敗れて大会4連覇はならなかった。内容的にも後半は押されていて、グループステージ(ミスからの失点で0-1)に続いての完敗だった。 北朝鮮の実力は侮れない――ということで、21日から始まる北中米W杯アジア2次予選の北朝鮮戦もかなりの苦戦が予想されるのではないだろうか。というのも、日本の主力選手のほとんどが“海外組”なのに対し、北朝鮮の“海外組”はJ3の岐阜でプレーする左SB文仁柱(ムン・インジュ)ただ一人。それも日本でプレーしているのだから、時差に苦しむことはない。 過去の北朝鮮代表には2010年南アW杯に出場したFW鄭大世(チョン・テセ)、MF安英学(アン・ヨンハ)の他にもMF梁勇基(リャン・ヨンギ)、MF李漢宰(リ・ハンジェ)らがいた。「北朝鮮には3人の在日コリアン枠」があるとも噂されている由縁だ。 日本での試合には多くの在日コリアンが応援に駆けつけるが、在日の選手が試合に出れば応援にも力が入るのは間違いない。ただ、以前に比べるとJリーガーになる選手が減っていることも確か。「裕福な家庭の子供が多いから、ハングリー精神が希薄になった」と指摘するのは在日のサッカー関係者だが、日本との対戦で刺激を受けてプロを目指す選手が増えるかもしれない。 試合に話を戻すと、2試合とも時差の影響を受けない北朝鮮にはかなりのアドバンテージがあると見ていいだろう。そこで日本代表のスタメンを、時差等のコンディション面から予想してみた(システムは4-2-3-1)。GKはこれまでの実績と国内組ということで大迫敬介。CBは板倉滉と町田浩樹が有力だが、町田の帰国は19日と試合の2日前。このため1日早く帰国する谷口彰悟の方が試合にフィットするかもしれない。 SBは、右はC大阪の毎熊晟矢で決まりだろう。左は18日に帰国する伊藤洋輝か橋岡大樹か悩むところ。コンディション次第では2年ぶりに代表へ復帰した長友佑都という選択もあるかもしれない。 ボランチは“国内組”なら川村拓夢(広島)と佐野海舟(鹿島)※ということになるが、いくらなんでも経験不足の2人を同時にスタメン起用することはないだろう。これまでなら遠藤航とケガからの回復次第だが守田英正ということになるが、2人とも帰国は19日だ。そこで一人は17日に帰国している田中碧で、遠藤にはコンディション次第だが強行出場してもらうしかない。(※編集部注:佐野はケガで不参加が決定) 攻撃陣は南野拓実、相馬勇紀、小川航基、堂安律、上田綺世、中村敬斗の6人が19日に帰国と厳しいスケジュールになっている。そこでトップ下には17日に帰国した久保建英、左FWはアジアカップのイラン戦でプレスバックから久保と好連携を見せた前田大然、1トップに浅野拓磨(2人とも18日に帰国)と、スピードを武器にする2選手を前線に配置。問題となるのは右FWで、ここは堂安に無理をしてもらうしかなさそうだ。 こうしてコンディション面から人選を考えていて、是非とも今回招集して欲しかったのが浦和に移籍して好プレーを連発している前田直輝だ。スピードとキレのあるドリブル突破を武器に、カットインからの左足シュートに加え、タテにも仕掛けられるウインガーで、第4節の湘南戦では今シーズン初ゴールも決めた。 伊東純也の招集が難しい現状のなか、森保一監督には6月シリーズで前田直の招集を期待したいところである。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2024.03.19 13:00 Tue
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