【2022年カタールへ期待の選手vol.94】2019年アジアカップ以来の代表復帰。30歳を迎えるFWはカタールW杯に手が届くのか?/武藤嘉紀(ヴィッセル神戸/FW)

2021.12.31 22:00 Fri
©︎J.LEAGUE
「Jリーグで毎試合しっかり出場して得点感覚を戻す、そして『ゴールマシーン』になることを目標にして、大きな決断をしました」

今年8月のヴィッセル神戸移籍会見でこう宣言した武藤嘉紀。今季前半戦だけで15ゴールをマークした古橋亨梧(セルティック)が背負った11番を引き継いだ男は貪欲にゴールに突き進み、14試合出場5ゴールという数字を残した。神戸もJ1・3位でフィニッシュ。目標だったアジアチャンピオンズリーグ(ACL)出場権獲得に少なからず貢献してみせた。
「ゴールマシーンになる」という大目標を公言した本人にしてみれば、「自分はこんなもんじゃない」という気持ちが強いのだろうが、今季後半が復活への序章となったのは間違いない。

実際、武藤の前線からのハイプレスと献身的なアップダウン、ゴール前での駆け引きの鋭さ、敵を背負いながらのペナルティエリア内への侵入などは、Jリーグ基準をはるかに超えていた。森保一監督が2022年1月のウズベキスタン戦(埼玉)に挑む日本代表候補に抜擢したのも、確かに頷ける話だ。

武藤が代表に戻ってくるのは、2019年アジアカップ(UAE)以来、3年ぶりとなる。あの時は浅野拓磨(ボーフム)の負傷辞退によって追加招集された形だった。当時はニューカッスル移籍1年目で試合に出たりでなかったりの状況だったが、プレミアリーグ参戦で身に着けたタフさや逞しさを前面に押し出してくれるのではないかと大いに期待された。
絶対的1トップ・大迫勇也(神戸)が初戦・トルクメニスタン戦で負傷したこともあり、武藤には第3戦・ウズベキスタン戦(アルアイン)で先発のチャンスが訪れ、値千金の先制弾も奪った。が、指揮官の評価が急上昇することはなかった。

その後、ニューカッスルで出番を失った影響から代表復帰は叶わず、2020年夏にエイバルへ赴いてからもお呼びがかからずじまい。そのまま3年もの月日が経過してしまった。不完全燃焼のまま終わった2018年ロシアW杯のリベンジを果たしたいと渇望しながら、長期間、足踏み状態を強いられていたのだ。

この間、森保ジャパンの最前線は大迫がずっと主軸を担い続けてきた。ただ、彼もケガやコンディション不良で離脱することが少なくなく、鈴木武蔵(ベールスホット)やオナイウ阿道(トゥールーズ)など複数候補が試されてきたが、なかなか指揮官のお眼鏡に叶わなかった。今年9月からスタートした最終予選でも大迫依存症は顕著で、セルティックでゴールを量産している古橋でさえも、1トップでは使ってもらえない時期が続いている。

神戸移籍後の大迫が復調傾向なのは、誰もが認めるところだが、彼がいなければまともに戦えないというのは、日本代表にとっては歓迎すべき状態ではない。最前線でしっかりとタメを作り、攻撃のスイッチを入れられる人材が最低もう1人は必要だ。高さと強さ、ゴール前での嗅覚を兼ね備えた武藤はその役割をこなせるだけのポテンシャルを備えた選手。ここは一気に序列を上げるチャンスなのである。

武藤のアドバンテージは現在、大迫とともにプレーしている点。10月2日の浦和レッズ戦から三浦淳寛監督が2トップを採用したことで、お互いに生かし生かされる関係がスムーズに構築できている。

大迫も「自分がゴールを奪えるようになったのも、フォーメーションによるところが大。僕と武藤でしっかり前に行けるし、そこにアンドレス(・イニエスタ)だったり、(山口)蛍だったりが絡める。相手にとってすごく怖い攻撃ができている」と太鼓判を押していた。

日本代表は2トップを採用するケースは限られているものの、停滞した時間帯に2人が揃ってピッチに立つことで、ゴール前の厚みが増すのは間違いない。そういう使い方ができることを考えても、武藤を代表に置いておく価値はあるのだ。

かつてチェルシーからオファーを受けたスピードと推進力は30歳を目前にした今も健在。両ウイングでもプレーできる。最終予選突入後の代表は右サイドの快足アタッカー・伊東純也(ヘンク)への依存度が高まっているが、彼に何らかのアクシデントがあった時を考えても武藤というカードがあるのは心強い。彼ならば、ドリブラータイプの堂安律(PSV)や久保建英(マジョルカ)とは違った色合いをチームにもたらせるはずだ。

武藤が本気で2022年カタールW杯を引き寄せようと思うなら、こういった数々の強みを強く押し出すことが肝要である。負けん気の強い男は1月17日からの代表合宿の重要性を誰よりもよく分かっているはず。そこに向けてトップコンディションを作ってくるに違いない。

果たして彼は手薄感の強いFWに殴り込みをかけられるのか…。年明けのパフォーマンスが大いに楽しみだ。

【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
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「金髪で有言実行」。辛口のセルジオ越後氏から太鼓判を押された右SB関根大輝の可能性【新しい景色へ導く期待の選手/vol.40】

「欧州組招集が叶わない」「タレント的に小粒」「コロナ禍の影響で国際経験が少ない」といった数々の懸念材料があり、2024年パリ五輪出場が危ぶまれていた大岩剛監督率いるU-23日本代表。しかしながら、ふたを開けてみれば、8大会連続切符獲得に加え、AFC U-23アジアカップ(カタール)制覇という大きな成果を挙げたのだ。 キャプテン・藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)がMVPを受賞し、エース・細谷真大(柏レイソル)も重要な準々決勝・カタール戦と準決勝・イラク戦でゴールを挙げる中、大会通して評価をグングン上げたのが、右サイドバックの関根大輝(柏レイソル)だ。 187センチの大型サイドバック(SB)は2023年アジア大会(杭州)から頭角を現し、最終予選メンバーに滑り込んだ選手。それが韓国戦を除く5試合に先発し、定位置を奪取して不可欠な存在へと飛躍を遂げたのだから、本人も周囲も驚きを禁じ得なかっただろう。 「大会前に金髪にして、『この髪と同じメダルを取る』とメディアのみなさんの前で言ったんで、しっかり有言実行できてよかったです」と4日の帰国直後に彼は満面の笑みをのぞかせた。 とはいえ、5月3日のファイナル・ウズベキスタン戦ではヒヤリとするシーンもあった。山田楓喜(東京V)の一撃で1点をリードした後半ロスタイム。背番号4はゴール前でクロスに競った場面でボールが手に当たり、VAR判定の末にPKを献上してしまったのだ。 「映像を見られた時は『ヤバいかな』と思って。でも当たった瞬間は分からなくて、自分も大丈夫だと思ってプレーを続けていたんですけどね…。PKになった時はもう『止めてくれ』と。玲央君(小久保玲央ブライアン)に助けてもらって本当によかったなと。試合中もサッカー以外のところでもすごくコミュニケーションを取ってくれたし、最後に救ってもらって感謝です」と本人は九死に一生を得た心境だったという。 今大会の活躍で、パリ五輪参戦が確実視される立場になった関根。1年前にA代表招集された半田陸(ガンバ大阪)や欧州組の内野貴史(デュッセルドルフ)をごぼう抜きしていく様子を目の当たりにした関係者からは「A代表に入れていい」という声も高まっている。 その筆頭が辛口批評で知られるセルジオ越後氏だ。いつも苦言を呈するベテラン解説者が素直にポテンシャルを認めるのはかなり珍しい。これを受け、本人は「そう言ってもらえているのは知らなかった。本当に有難いですけど、自分としてまだまだだと思います」と謙虚な姿勢を崩さなかった。 関根がそう感じるのも、大会前のJリーグで対峙した毎熊晟矢(C大阪)の一挙手一投足を間近で体感したからだ。 「毎熊選手と対戦して、やっぱすごくうまいし、全然レベルがまだ違うなと感じた。そういう意味でも自分はまだまだ。もっと課題を克服して、ゴールアシストっていう結果を出さないとA代表には辿り着けないですよね」 「特に課題を挙げると、クロス対応の守備。攻撃で良い手応えをつかめたからこそ、守備の部分、1対1のアジリティを含めてもっと突き詰めていく必要があるんです」 「Jリーグの舞台ではこれまで何となくごまかせた部分はあったけど、緊迫した戦いになると1個のプレーで勝負が決まってしまうことを痛感したんです」 「逆に、そういうところを突き詰めれば、上に行けるという感覚は持てた。そこをレイソルで真剣に取り組んでいきたいと思います」と彼は神妙な面持ちでコメントした。 幸いにして、柏の指揮官はかつて「アジアの壁」と言われた井原正巳監督。大谷秀和・染谷悠太両コーチらも勝負の明暗を分ける守備には厳しいはずだ。関根はまだ拓殖大学在学中だが、3年でサッカー部を退部して、今年からプロの道を踏み出したことで、より大きく成長できる環境を手に入れたのは確か。そのアドバンテージを最大限生かして、高みを追い求めていくことが肝要なのだ。 そうすれば、本当に多くの関係者が求めているA代表昇格も現実になるだろう。関根のような187センチの長身の右SBというのはなかなか出てこない。酒井宏樹(浦和レッズ)が第一線から退いている状態の今、こういう人材が出てきてくれれば、パワープレー対策を考えても日本の大きな強みになる。しかも、関根はリスタートから点も取れる。数々のストロングを生かさなければもったいないのだ。 近い将来、A代表で毎熊や菅原由勢(AZ)、橋岡大樹(ルートン・タウン)ら年長者たちと堂々とポジション争いを繰り広げるためにも、まずは柏で確実な進化を遂げ、パリ五輪で存在感を示すことが重要だ。 「パリ五輪まで金髪は継続します」と彼は茶目っ気たっぷりに笑ったが、本大会でも髪色と同じメダルを取れれば最高のシナリオだ。関根にはその火付け役になってほしいものである。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 2024.05.05 20:30 Sun

8大会連続五輪出場危機の日本。難敵・カタール戦の勝敗を託されるメンタルモンスター・松木玖生(FC東京)【新しい景色へ導く期待の選手/vol.39】

4月22日のU-23韓国戦を0-1で落とし、AFC・U-23アジアカップ・グループBで2位となってしまったU-23日本代表。まさかの敗戦によって、25日の準々決勝はホスト国・カタールとの真っ向勝負を余儀なくされることになった。 もちろんグループA・2位のインドネシアも難敵は難敵だが、カタールの強さはA代表がアジア2連覇を達成した1〜2月のアジアカップでも実証済み。スタジアムの熱狂的サポーターも味方にして、彼らは凄まじい迫力で日本に向かって来るはずだ。 この関門を突破しなければ、8大会連続五輪出場権獲得の道は途絶えてしまう。日本サッカー界としてはそれだけは絶対に避けなければいけない。 大岩剛監督もキャプテン・藤田譲瑠チマ、山本理仁(ともにシント=トロイデン)ら主力級をズラリと並べて勝負を賭けるはずだが、こういう時こそ頼りになるのは、メンタルモンスターの松木玖生(FC東京)。青森山田高校時代から数々の修羅場をくぐり、2023年U-20ワールドカップ(W杯=アルゼンチン)にも参戦した男のタフさと精神力は折り紙付きだ。 年齢的には下から3番目だが、FC東京でキャプテンマークを巻き、年長の選手を激しく鼓舞する姿を見れば、チーム内の序列や20歳という若さは一切関係ない。崖っぷちに追い込まれた今、カタール相手に猛然と突き進めるのは、やはりこういう選手だろう。 改めて韓国戦を見ても、後半18分から藤田、佐藤恵允(ブレーメン)とともにピッチに立つや否やアグレッシブさと激しさを前面に押し出した。後半20分には相手選手2人に囲まれながらボールをキープし、そのまま抜け出して内野航太郎(筑波大学)の決定機を演出するスルーパスを供給。その直後にも左サイドを突破し、ゴール前の高井幸太(川崎フロンターレ)目がけて決定的なクロスを上げている。 これらのチャンスは惜しくも得点には至らなかったが、「松木なら得点に直結する仕事ができる」という印象を見る者に強烈に残した。その底力を大一番で遺憾なく発揮し、日本をベスト4へと導くこと。それが背番号17に託されたタスクなのだ。 「やっぱり一発勝負なんで、中2日の疲労とかもあるとは思うんですけど、そういうのは言い訳にできない。つねに1試合1試合を大切に戦っていけたらいいかなというふうに思います」と日本を出発する前にも目をぎらつかせていた松木。ある意味、次のカタール戦は彼のサッカーキャリアを左右するビッグマッチになるかもしれない。 ここで今大会最強とも言われる敵を倒し、準決勝でイラクとベトナムの勝者を撃破できれば、彼は堂々とパリ五輪へ行くことができる。そうすれば、前々からの念願である海外移籍も実現できるだろうし、A代表へのステップアップ、9月からスタートする2026年北中米W杯アジア最終予選参戦も見えてくるはずだ。 近未来の森保ジャパンでボランチの座を争うと目される遠藤航(リバプール)、田中碧(デュッセルドルフ)らも五輪を足がかりに飛躍し、A代表、海外でのプレーを勝ち取っている。遠藤などはご存じの通り、30歳を過ぎてリバプールという名門クラブ行きを勝ち取り、主力級の地位まで上り詰めた。そう考えると、20歳の松木にはまだまだ無限のチャンスが広がっているが、1つ1つステージを上がっていかなければ、彼らに勝負を挑めない。だからこそ、カタールには絶対に勝たなければいけないのである。 今大会の大岩ジャパンは細谷真大(柏)、藤尾翔太(町田)、内野航太郎、佐藤といったFW陣にゴールが生まれていない。特にエース・細谷の不振は際立っている。彼らは彼らなりにゴールへの意欲を燃やし、感覚を研ぎ澄ませていくだろうが、松木はすでに16日の初戦・U-23中国戦で1点をマークしている。 ゆえに、彼がより高い位置でプレーした方が日本は得点に近づくはず。本人もバランスを見ながらプレーするだろうが、ここ一番の状況でが思い切って前に突っ込んでいってもいい。敵の意表を突く攻めが上がりで日本に足りないゴールをもたらすこと。それもこの男には大いに期待したい。 とにかく、日本最大の危機的状況を打開できるのは、強靭なメンタルと勝負強さのある人間だけ。今のチームでは松木をおいて他にいないと言っても過言でないくらい、彼はそういった部分で突き抜けている。そのストロングを出すべき時はまさに今しかない。 25日の大一番は背番号17の一挙手一投足から目が離せない。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 2024.04.24 12:45 Wed

数的不利のU-23中国戦。圧倒的存在感を見せた23歳の若き守護神・小久保玲央ブライアン【新しい景色へ導く期待の選手/vol.38】

2024年パリ五輪出場権獲得を目指し、16日のU-23中国戦からアジア最終予選を兼ねたAFC・U-23アジアカップ(カタール)に挑んでいるU-23日本代表。「ワールドカップ(W杯)にしても、五輪にしても、アジア予選は一筋縄ではいかない」と言われるが、まさに初戦から予想外の展開となった。 開始早々の8分に右FW山田楓喜(東京V)のピンポイントクロスに松木玖生(FC東京)が鋭く反応。左足を合わせて先制点を叩き込んだところまでは最高のスタートだと思われた。ところが、前半16分に西尾隆矢(C大阪)が左腕で背後にいた相手選手を振り払い、それが顔面を直撃。倒れ込んだプレーがVAR判定の対象になり、一発レッドカードが突きつけられる。守備陣の大黒柱の1人が退場というまさかの事態に、大岩剛監督も選手たちも動揺したに違いない。 そこから木村誠二(鳥栖)が出てくるまでの5分間はセンターバック(CB)経験のある関根大輝(柏)が中に絞り、松木が左サイドバック(SB)に下がり、内野貴史(デュッセルドルフ)が本来の右SBへ移動。これでしのぐ形になった。そして木村がCBに入ってからは関根が右SB、内野が左SBに戻り、松木がボランチに上がるという形で落ち着きを取り戻す。関根、松木、内野という複数ポジションのこなせる人材がいたことは、苦境の日本にとって非常に大きな意味があったと言える。 とはいえ、この先は中国に攻め込まれ、日本は防戦一方の戦いを強いられる。そこで異彩を放ったのが、小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)。柏レイソルU-18からトップチームを経由することなく、2019年1月にベンフィカU-23に加入し、5年以上の月日をポルトガルで過ごしている国際経験豊富な守護神が堂々と相手に立ちはだかったのだ。 小久保は前半42分の決定的なヘディングシュートを巧みに防ぐと、前半終了間際のミドルシュートもストップ。後半開始早々にカウンターを浴び、1対1になった最大のピンチでも確実にシュートを阻止し、チーム全体に勇気を与えた。その後も何本かビッグチャンスを止め、完封勝利をお膳立て。もちろんチーム全体の一体感と結束力が大きかったのは間違いないが、小久保という安心感を与えてくれるGKがいたことで、日本は極めて厳しい一戦を1-0で制することができた。 「自分の中でも落ち着いてプレーできたし、チームを助けるプレーがチームとしてもできた。勝利に貢献できてよかった」と本人は試合後のフラッシュインタビューで安堵感をのぞかせたが、落ち着き払った一挙手一投足は目を見張るものがあった。 それこそが、5年超のポルトガル経験の賜物だろう。今のところまだトップチームでの公式戦出場機会には恵まれていないが、ベンフィカU-23、ベンフィカB、トップと着実にステップを踏んでGKとしてのスキルを磨き続けている。異国でゴールマウスを守るというのは、そう簡単なことではない。過去にも川口能活(磐田GKコーチ)、川島永嗣(磐田)、権田修一(清水)といったA代表経験者たちも欧州の門をたたいたが、言葉や文化の壁もあって、周囲からの信頼を勝ち取ることの難しさを痛感してきたという。 そういった作業を10代の頃から続けているというのは特筆すべき点だ。人知れず困難に直面した時もあっただろうし、トップデビューを果たせない焦燥感や悔しさを味わったことも少なくないだろう。それでも先を見据えてコツコツと努力してきたからこそ、こういった大舞台で最高のパフォーマンスを出せる。小久保は自分が積み重ねてきたことが間違っていなかったと確信できたのではないだろうか。 彼がU-23中国戦で異彩を放ったことで、今後の五輪代表守護神、そしてA代表守護神を巡る争いが熾烈になりそうだ。 ご存じの通り、1〜2月のアジアカップ(カタール)では小久保と同じパリ五輪世代の鈴木彩艶(シントトロイデン)が全試合に出場。現時点での正GKという位置づけだが、彼のプレーには一抹の不安も感じられる。今大会に参戦している野澤大志ブランドン(FC東京)もアジアカップメンバーの意地があるはずだし、3人の競争意識は一気に高まるだろう。 そこにアジアカップ参戦組の前川黛也(神戸)、ケガで同大会を欠場した大迫敬介(広島)、昨夏の移籍トラブルで代表から遠ざかっているシュミット・ダニエル(ヘント)らが加わってくる。ここから誰が抜け出すのかというのは非常に興味深いテーマ。まだ代表復帰を諦めていない権田らベテランも含め、今後の展開が気になる。 いずれにしても、小久保にはこの先もしっかりと最後尾から守備陣を引き締めてもらわなければいけない。西尾が最低3試合の出場停止処分を食らう可能性も高まっているだけに、より後ろからの声掛けや指示が重要になる。彼が君臨することで「日本のゴールマウスはそう簡単にこじ開けられない」という印象が強まれば、対戦相手もやりにくくなる。23歳の若き守護神のさらなる活躍を楽しみに待ちたい。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 <span class="paragraph-title">【動画】小久保玲央ブライアンがビッグセーブ連発で日本のピンチを救う!</span> <span data-other-div="movie"></span> <script>var video_id ="hszXHBrGzek";var video_start = 265;</script><div style="text-align:center;"><div id="player"></div></div><script src="https://web.ultra-soccer.jp/js/youtube_autoplay.js"></script> 2024.04.17 12:50 Wed

「アジアは何してくるか分からない」。先輩・岡崎、同僚・鈴木彩艶のアドバイスを大岩ジャパンの主将・山本理仁はどう生かす?【新しい景色へ導く期待の選手/vol.37】

4月の2024年パリ五輪アジア最終予選(AFC・U-23アジアカップ=カタール)で8大会連続五輪切符をつかみに行く大岩ジャパン。彼らにとって本番前最後のテストの場だったU-23マリ・ウクライナ2連戦は、ご存じの通り、1勝1敗という結果で終わった。 22日のマリとの初戦(京都)は、平河悠(町田)が早い時間帯に先制点を奪ったものの、アフリカ勢特有のフィジカルやスピード、高い個人能力に苦戦。最終的に1-3で逆転負け。世界の壁の高さを痛感させられた。 その反省を踏まえて戦った25日のウクライナとの第2戦(北九州)は2年ぶりの復帰となった荒木遼太郎(FC東京)が貪欲にゴールを狙いに行き、チームを活性化。前半こそスコアレスで折り返したが、後半開始早々にその荒木が得たCKから佐藤恵允(ブレーメン)が泥臭い先制点をゲット。さらに途中出場の田中聡(湘南)が追加点を挙げ、2-0で勝利。何とか自信を取り戻した状態でカタールに向かうことができそうだ。 「プレスの質っていうのは絶対上がってると思います。前からかけて後ろがしっかりついていけるし、それを全員が90分やり通せる。そういう力は確実に上がってますし、僕らのストロングだなとこの2試合で特に感じることはできた。それをしっかりアジアカップで出すだけかなと思います」とキャプテン・山本理仁(シント=トロイデン)は前向きにコメントしていた。 2試合を通してハッキリしたのは、山本と藤田譲瑠チマのシント=トロイデンコンビの国際経験値の高さ。山本はマリ戦、藤田はウクライナ戦でそれぞれ中盤を統率したが、彼らがいるいないでチームの落ち着きや攻守のバランス、周囲との関係性が全く違ったのだ。2人が揃ったマリ戦の終盤の安定感は特に目を引いた。 「譲瑠はウザいほど通る声がみんなの士気を上げるし、僕だったらボールをさばくことが得意。僕らは小学校から知ってる中で10年以上の付き合いで積み重ねてきたものがある。その強みを最終予選で体現したいですね」と山本は目を輝かせた。 彼らは鈴木彩艶を交えた3人で12月のオフを利用してパリへ小旅行に出かけたという。「五輪の下見」という意味合いもあったようで、「エッフェル塔とか観光地も行ったことがなかったんで楽しかった」と藤田は語っていた。本番半年前にわざわざ五輪開催地に足を踏み入れたのだから、そこでプレーしないわけにはいかない。 今回の大岩ジャパンは鈴木唯人(ブレンビー)ら欧州組が最終予選に招集できず、コロナ禍の影響もあって国際経験不足が懸念されている。それを払拭すべく、山本らはベルギー1年間の積み重ねを遺憾なく発揮することが肝要なのだ。 「一瞬でも後ろを向いている時に気を抜いてしまうと、クルっとターンされて剥がしにかかってくる。そういうのがアフリカ勢ですよね。それに足も伸びてくる。僕はベルギーに行って相手の出方を少しは理解したし、中東の選手も似たようなところがあると思います」と本人もベルギーで屈強で大柄な選手と日々、対峙することで得た駆け引き、技術の出し方などには自信を持っている様子。それをうまく出せれば、山本はチーム全体を落ち着かせられるし、冷静な展開に持っていける。ギリギリの局面で彼にはチームを浮上させる“違い”をもたらしてもらうしかない。 「A代表で1〜2月のアジアカップ(カタール)に参加した彩艶は『普通には感じないアウェー感というのを感じた』としみじみと話していましたね。代表経験豊富なオカさん(岡崎慎司)からも『練習試合とかでは分からない別の圧がある』と言われました。やっぱりアジアは簡単じゃない。4月のカタールの暑さ含めて全員がしっかり準備していく必要があると思います。あとは前でしっかり崩しきる力っていうのをチームとしても上げていきたいし、個人個人でも2週間で全てのクオリティを上げてのぞみたいです」 偉大な先人、一足先にA代表に定着している同世代の守護神からのアドバイスを受け、着々と臨戦態勢に入りつつある山本。彼にとっては、この大会の成否が今後の欧州でのキャリアを左右するだろう。今季シント=トロイデンでは28試合出場とピッチに立った回数自体は多いが、スタメンはわずかに5試合。まだまだ定位置を確保したとは言い切れないからだ。シント=トロイデンで絶対的レギュラーになれなければ、A代表への道も開けてこない。 そのためにも、パリ五輪切符を手にし、世界舞台に立って、来季以降への布石を打つことが重要だ。チームで主軸となり、大きな飛躍を遂げた鎌田大地(ラツィオ)のように結果を残し続けていれば、欧州5大リーグへのステップアップ、A代表入りも叶う可能性が高くなる。 そういった明るい未来を切り拓くべく、まずは足元を固めることが第一。クラブは3月31日からのプレーオフ2に参戦するが、そこで可能な限り、調子を上げ、最終予選につなげられれば理想的。今季まだ手にしていないゴールで弾みをつけられたら最高だ。いずれにしても、大岩ジャパンの攻守の要・山本の一挙手一投足から目が離せない。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 2024.03.29 11:30 Fri

「あれが今の僕の限界」と失望感を抱いたアジアカップから2カ月。攻撃陣の主軸・久保建英は北朝鮮2連戦で違いを示せるか?/久保建英(レアル・ソシエダ)【新しい景色へ導く期待の選手/vol.36】

未知なる国・北朝鮮と対峙する21・26日の2026年北中米ワールドカップアジア2次予選。社会的関心も非常に高い2連戦となるが、日本代表としては、1〜2月のアジアカップ2023年(カタール)惨敗から再起を図らなければならない。森保一監督も停滞感を打破すべく、37歳の大ベテラン・長友佑都(FC東京)を1年3か月ぶりに再招集。闘争心を掻き立てることからスタートしている。 18日の練習初日から偉大な先輩と時折、談笑しながらプレーしていたのが、15歳年下の久保建英(レアル・ソシエダ)だ。第2次森保ジャパン発足後はムードメーカー的な役割を担ってきた彼だが、早速“長友効果”を実感したという。 「(長友選手が来て)雰囲気はすごくいいと思いますし、今日(19日)のミニゲームでマッチアップしたんですけど、久しぶりにいい意味でのしつこさがあった。楽しかったです」と本人も嬉しそうにコメント。平壌に持っていくものを聞かれて「あんま考えてなかったけど、それこそ、長友選手なんかが“すべらない話”をしてくれればいいんじゃないですかね」と報道陣を笑わせた。余裕のトークを含めた立ち振る舞いは緊張感に包まれていたアジアカップの時とは全く異なるものがあったと言っていい。 そんな久保にしてみれば、この2連戦でアジアカップで味わった屈辱を晴らし、代表攻撃陣の絶対的中心の地位を固めることが肝要だ。カタールの地でイランに苦杯を喫した後、「もっとやれたかなと思いますし、厳しい時間帯で、もっともっと得点に絡みたかったなと思いますけど、大会を通して、あれが今の僕の限界かなと思います」 「数字も欲しかったですし、チームを勝たせるプレーもっとやりたかったですけど、自分がやれることはやったので、特に何が惜しかったとかはないです」とどこか淡々と語った彼だが、頂点に立てなかった悔しさを人一倍感じたはず。バーレーン戦の1点に終わったゴール含め、もっともっと違いを見せなければならないのは確かだろう。 ただ、北朝鮮はほとんど情報のない相手。レアル・ソシエダの同僚からも「どんな感じか教えてよ」と言われるほど、不気味な部分が少なくない。 「結構前からプレスかけてくるかなという感じはしてますけど、やっぱり球際のところは来るので、自分たちがそれによって崩れないようにやっていければと思います」 伊藤洋輝(シュツットガルト)もミーティングを踏まえながら警戒ポイントを口にしていたが、トップ下に入るであろう久保のところは徹底マークされるのは想像に難くない。ラフプレーも辞さない相手ということで、ケガなどのリスクもあるだけに、より慎重にプレーしなければならないはずだ。 「北朝鮮はよく言う球際だったり、戦う気持ち、メンタルな部分がすごく強いイメージがありますけど、ヘンに気を遣いすぎないようにはしたいと思ってます」 「そういう中で、そもそも審判がどの程度のラインを敷いてくるかっていうのが第一だと思います。流してくれるような審判なら、僕たちもある程度、強くいかなきゃいけないなと思いますけど、逆にしっかりファウル取ってくれる審判なら、アフター(タックル)とかはできなくなってくる。それでカードが出てくれたらラッキーですし、僕らからしたら、まずは審判がどういう人なのかっていうところも見極めていきたいなと思ってます」と国際経験豊富な久保らしい言い回しで、頭脳的な戦いを仕掛ける覚悟を口にした。 今回の日本は伊東純也(スタッド・ランス)と三笘薫(ブライトン&ほーヴ・アルビオン)の両サイドの槍が揃って不在。おそらく右に堂安律(フライブルク)、左には中村敬斗(スタッド・ランス)、あるいは相馬勇紀(カーザ・ピア)あたりのスタメンが想定されるが、彼らをうまく後押ししながら、自らも生きることを考えていくことが勝利への近道だ。 リスタートに関しても、久保にかかる部分が大だろう。A代表でプレーするようになってから5年の月日が経過するが、FKの名手に直接ゴールが生まれていないのはやはり物足りない。本人としてもそこは納得いかないはず。そろそろ一発を決めて、相手の士気を低下させてほしいものである。 「2連戦なので、こっちのホームとあっちのホームだったら全く別の戦いになるでしょうけど、まずはホームでしっかり勝ち点3を狙っていければいいかなと思ってます」 久保自身も言うように、東京・国立競技場での勝ち点3はマスト。平壌決戦を前に敵の希望を奪うような展開に持ち込めれば理想的だ。アウェーの厳しさを感じることなく戦えるようになるように、しっかりとカウンターパンチを浴びせることが重要だ。久保にはそのけん引役になることを強く求めたい。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 2024.03.21 11:00 Thu
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