【2022年カタールへ期待の選手vol.92】試合ごとに出場時間増。東京五輪世代のリーダーは長友佑都との競争に勝てるか?/中山雄太(ズヴォレ/DF)

2021.11.16 11:40 Tue
twitterfacebookhatenalinegplus
photo
Getty Images
「次の戦いはアウェーで厳しい試合になる。我々はワールドカップ(W杯)出場権をつかみ取るために、チーム一丸となってタフに粘り強く最後まで戦い抜いて、勝ち点3をつかみ取り、次につなげたいと思っています」

日本代表の森保一監督が改めて勝利への意気込みを新たにした通り、16日の2022年カタール・ワールドカップ(W杯)最終予選後半戦の一発目・オマーン戦(マスカット)は勝ち点3が必須の大一番だ。

仮にポイントを落とすようなことがあれば、サウジアラビア、オーストラリアの上位2強に離され、大陸間プレーオフの3位死守がやっとという状況になってしまう。日本サッカー協会の反町康治技術委員長も「Jリーグも代表にW杯へ行ってほしいと願っている。やはりストレートインが望ましい。そのためにもオマーン戦は落とせない」と危機感を口にしていた。

「勝っている時はチームを変えない」という定石通り、森保一監督は過去2戦で採用してきた4-3-3を継続し、大迫勇也(神戸)や長友佑都(FC東京)らベテラン勢を軸としたスタメンで挑むだろう。とはいえ、長友は9月の中国戦(ドーハ)から4戦連続で途中交代。指揮官の中でも90分フル稼働させ続ける考えはないようだ。

「試合に勝つためなので、僕は全然問題ない」と35歳の大ベテランは平常心を口にしていたが、東京五輪世代のリーダー格・中山雄太(ズヴォレ)の台頭に多少なりとも危機感を覚えているのは確かだろう。

「選手としては全然違うタイプ。僕は幅を取って仕掛けていくけど、雄太の場合はポジショニングを取りながらポゼッションをしていくし、技術力も高いし、僕自身も学ぶべき部分が多い。もともとボランチとかセンターバック(CB)をやっていたのに、サイドバック(SB)になってもあれだけ早く役割を認識してプレーできるのは、彼の賢さを物語っている」と長友は9歳年下のライバルを賞賛した。

この高評価を受け、中山自身は嬉しい気持ちも少なからず抱いただろう。が、それ以上に強いのが負けじ魂だ。「正直、途中出場では満足していない。スタメンで出られるようなパフォーマンスを見せなきゃいけない」と報道陣にも語っている通り、ライバルが長友であろうが、先発定着に突き進む覚悟だ。それが今回のオマーン戦で結実するかは定かではないが。中山の存在価値が日に日に高まっているのは紛れもない事実。そこは前向きに捉えていいだろう。

実際、オマーンという敵を考えた時、中山の高さは有効である。相手には左足の名手・モフシンがいて、直近の11日の中国戦(シャルジャ)でも彼の右CKから同点弾を叩き出している。日本はリスタートでなかなかゴールを奪えていないが、オマーンには一発がある。それを決めさせないためにも、中山の守備能力を最大限生かすべきなのだ。

相手のサイド攻撃対策を視野に入れても彼は有効なピースとなり得る。攻撃的な長友はタテ関係の南野拓実(リバプール)とのコンビを最大限生かし、高い位置まで攻め上がることが多いが、オマーンのような鋭いカウンター攻撃を持つ相手には、それが「両刃の剣」になりかねない。

加えて言うと、中山は長友のように前がかりにはならないし、タテ関係になるアタッカーの推進力のサポートを第一に考えるタイプ。南野と組む機会はここまで少ないが、浅野拓磨(ボーフム)や古橋亨梧(セルティック)のようなスピード系にしてみれば、後ろにしっかりと守備のできる人間が控えているのは心強い。そういった強みを発揮すべき時が今回のオマーン戦でも必ず来るはずだ。

「最終予選は初めての経験ですけど、今のところはまだ難しさをよく分かっていない状況です。それを知らないまま突っ走って行きたいなというのがある。うまく前だけを向いて、危なくなったらベテランの選手たちが手綱を引いてくれる。知らないことをポジティブに考えていけばいいと思います」と彼自身もいい意味で割り切って、この修羅場をくぐり抜けていく構えだ。

長友と中山、さらに旗手怜央(川崎)がいい競争を繰り広げつつ、状況や相手によって人材を使い分けられるようになれば、日本代表にとっても朗報だ。国際Aマッチ130試合に到達した長友の経験値はまだまだ今のチームに不可欠ではあるが、フィジカル面やキレの部分でやや下降線を辿っている。そのマイナス面を東京五輪世代の中山と旗手がしっかりと穴埋めできれば、日本の左SBは盤石になる。前々から懸念されてきた「ポスト長友問題」も解決に向かうはずだ。

今回のオマーン戦で勝利という結果を出すと同時に、左SBのバリエーションを広げられればまさに理想的。最終予選残り全試合で勝ち点3を稼ぎ続け、最終的にはサウジ、オーストラリアをかわして2位以内に入っているという結末になれば、日本サッカー界全体にとっても本当に最高のシナリオになる。若い世代のキーマン・中山にはその一翼をしっかりと担ってほしい。つねに冷静沈着な24歳のクレバーな男の底力を発揮すべき時は今しかない。

【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。



関連ニュース
thumb

【2022年カタールへ期待の選手vol.104】「EL王者」の称号引っ提げ、カタールW杯メンバー滑り込みへ/鎌田大地(フランクフルト/MF)

「鎌田(大地=フランクフルト)と堂安(律=PSV)は所属チームで自分の存在をつねに見せ続け、いいプレーをしていた。タイトルを獲ったという自信は間違いなく彼らの力に上乗せされていく。貪欲に向上心を見せてくれるように期待しています」 6月の日本代表4連戦に向け、5月20日に行われたメンバー発表会見。森保一監督は2022年カタール・ワールドカップ(W杯)最終予選途中に外した2人を呼び戻すに至った理由を改めてこう語った。 とりわけ、昨年1月〜3月の重要な終盤4試合で選外にした鎌田大地を復帰させたのは、大きな出来事と言っていい。[4-3-3]への布陣変更でトップ下のポジションがなくなったことは彼にとって不運ではあったが、2021年の6試合では本来のよさを出しきれていなかったのも事実。今季からオリヴァー・グラスナー監督体制に移行したフランクフルトで、序盤は鎌田自身、出たり出なかったりの状況が続いたことも、代表での不振につながったのかもしれない。 しかしながら、代表から離れてクラブに集中したことが奏功したのも確かだろう。2022年になってからフランクフルトはドイツ・ブンデスリーガとUEFAヨーロッパリーグ(EL)の重要マッチが続いたが、そこで日本との二往復を強いられていたら、EL制覇という偉業達成の原動力にはなれなかったかもしれない。3月9日のレアル・ベティスとのEL決勝トーナメント2回戦で値千金の決勝弾を叩き出し、4月のバルセロナとの準々決勝2連戦にフル稼働できたのも、心身ともにフランクフルトの方に集中したことが大きい。 過去にも、大迫勇也(ヴィッセル神戸)が2015年6月〜2016年11月まで代表を外れている間に、当時所属のケルンでの戦いにフォーカスし、屈強で大柄なDF陣と渡り合う術を身に着けたことがあった。代表復帰した時の彼は自信満々でプレーし、前線のターゲットマンとして圧倒的存在感を示した。そこから彼が絶対的1トップに君臨し、現在まで至っているのだから、鎌田も同じような足跡を辿らないとも限らない。そんな期待が高まる一方なのだ。 森保監督も鎌田の目覚ましい成長を実感した様子だった。 「もともと持っていた攻撃能力を今はインテンシティの高い中でも発揮できている。上下動しながら技術を出すことをフランクフルトのグラスナー監督も要求していますが、本人はそれに適応し、レベルも格段に上がった。その結果、今季開幕当初よりも出場時間が増えて、絶対に外せないパフォーマンスを見せている。狭い局面だったり、相手とコンタクトした状況でもボールを失わず、彼の持ってる能力をハイレベルの中で出せるというのは大きい。ELのようにプレッシャーのかかる中でのプレーを日本代表でも出してほしいと思っています」 実際に現地視察した後、こう語ったように、指揮官の中での鎌田の位置づけがグーンとアップしたのは間違いない。となれば、どこでどのように起用するかが気になるところ。仮に最終予選からの[4-3-3]を継続するのであれば、インサイドハーフが主戦場となる。そこにはボランチタイプの田中碧(デュッセルドルフ)と守田英正(サンタ・クララ)がいて、強固な関係性の中に割って入るのは容易ではなさそうだ。 「状況や練習を見て最終的には決めたいと思っていますが、彼はインサイドハーフでもプレーできる選手だと思っています」と森保監督は彼の持つ非凡な攻撃センスを中盤に加えたいという意向を持っているようだ。 ただ、「形は1つではなく、チームのコンセプトの中でシステムを変えながらよさを発揮してもらうことにもトライしたい」とも話していたから、[4-2-3-1]に戻したり、フランクフルトのような3バック導入もあるのかもしれない。 [4-2-3-1]ならトップ下での再チャレンジが有力視されるし、3バックならフランクフルトと同じシャドウのポジションで勝負できる。その方が鎌田にとってはやりやすいはず。いずれにしても、EL王者の彼をうまく組み込むことが、代表のパワーアップの重要ポイントになるのは間違いなさそうだ。 半年を切ったカタール本大会の初戦の相手がドイツというのを視野に入れても、フランクフルトで傑出した実績を残した彼を使わない手はない。これまで守備や強度の部分に難があると言われてきた鎌田はその弱点を克服し、世界最高峰プレーヤーの仲間入りを果たした。EL決勝で冷静にPKを決めるほどの度胸も身に着けたのだから、不安なく世界との戦いに送り出せるはず。むしろ、彼がキーマンとなって日本を力強くけん引していってくれる可能性は大いにある。それだけの自覚を持って、鎌田には久しぶりの代表に合流してもらいたい。 W杯で成功を収めようと思うなら、2002年日韓大会の稲本潤一(南葛SC)、2010年南アフリカ大会の本田圭佑のように、ここ一番で大仕事をしてくれるW杯男の出現が必要不可欠だ。鎌田がその系譜を継ぐ存在になるか否か。まずは6月シリーズをしっかりと見てみたい。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.05.26 12:50 Thu
twitterfacebook
thumb

【2022年カタールへ期待の選手vol.103】マリノスの新得点源は代表滑り込みを果たせるか?/西村拓真(横浜F・マリノス/FW)

「西村(拓真)は今季、非常にいいスタート切った。トップ下にはマルコス・ジュニオール、吉尾海夏、西村の3人がいて、1人1人のキャラクター、能力が全く違う。試合ごとに選択肢が出てくるのはチームの強みになっている。その中でも西村は要求以上のことをやってくれていると思っています」 AFCチャンピオンズリーグ(ACL)から戻った直後の5月初旬、横浜F・マリノスのケヴィン・マスカット監督がこう評した通り、今季新加入の西村拓真がいい味を出している。 開幕当初は出番が少なかったものの、3月2日のヴィッセル神戸戦にトップ下で初先発し、2ゴールを奪ってから指揮官の評価が一気にアップする。4月10日の鹿島アントラーズとの上位対決でも勝利を決定づける2点目を叩き出し、ACL1次ラウンドの重要局面だった4月25日のシドニーFC戦でも2点目をゲット。「ここ一番で点を取れる男」という印象を強めたのである。 それだけではない。西村には凄まじい走りで攻守両面に絡めるダイナミックさとい長所がある。前述の鹿島戦でもチーム最多走行距離の12.511キロを記録。スプリント回数も22という数字を残した。もちろん昨季の得点源だった前田大然(セルティック)のデータには及ばないが、彼の抜けた穴を着実に埋めているのは確か。「西村はチームのためにベストを尽くす。本当に手を抜かずに走ってくれる」とマスカット監督が称賛するのも頷ける話だ。 となれば、日本代表入りの期待も高まってくるところ。しかしながら、彼の経歴を見ると、富山第一高校時代の2012年に富山県選抜として国体に出場し、2013年にU-17北信越選抜入りした経験があるだけ。日の丸とは縁遠いキャリアを送ってきた分、どうしてもハードルは上がると言わざるを得ない。 しかも、1996年生まれは2016年リオ・デ・ジャネイロ五輪世代の一番下の学年。鎌田大地(フランクフルト)も代表入りが2019年3月のコロンビア戦(日産)までズレ込んだし、鈴木優磨(鹿島)もお呼びがかからないまま現在に至っている。そういったマイナス要素がある分、圧倒的な実績を残さない限り、森保一監督が重い腰を上げる気にはならないだろう。その厳しさを本人もよく分かっているはずだ。 まさに前田大然も2021年のJ1で23ゴールという驚異的な数字を叩き出したことで、日本代表に呼ばれ、念願だった1トップで起用されるまでになった。それまでの彼は代表に行くたび左サイドに据えられ、「前で勝負したい」と言い続けられながらも、そういう扱いをしてもらえなかった。それを自らの活躍で覆し、セルティック移籍、新天地でのコンスタントな活躍につなげている。 ベガルタ仙台時代の2018年にJ1・11ゴールを挙げ、ロシア1部・CSKAモスクワから引っ張られた西村は「数字こそ成功の源」だと身をもって理解しているに違いない。結局、コロナ禍もあって1度目の海外挑戦はロシアからポルトガル1部・ポルティモネンセへ赴く形で幕を閉じたが、2度目がないとも言い切れない。今や代表でエース級の存在感を示している伊東純也(ヘンク)も27歳になろうという時にベルギー行きを決断している。アタッカーにはそれだけの可能性があるのは事実だろう。 だからこそ、西村にはここからギアを一段階二段階引き上げ、ゴールラッシュを見せる必要がある。現時点ではJ1・4点で得点ランキング5位タイにつけているが、鈴木優磨や上田綺世(鹿島)らを抜いて日本人トップになることが最初のターゲットと言っていい。ここからのマリノスは18日の湘南ベルマーレ戦を皮切りに、18日の浦和レッズ戦、21日のアビスパ福岡戦、25日の京都サンガF.C.戦、そして29日のジュビロ磐田戦と5連戦が待ち構えている。そこで1試合1点ペースで加算していけば、早くも2ケタが見えてくる。そんな理想的なシナリオを描くことが肝要だ。 6月の日本代表4連戦のメンバー発表は20日に予定されているから、そこに西村が滑り込む可能性は極めて低い。ただ、彼ら国内組には7月のEAFF E-1選手権がある。コロナの影響で中国開催から日本開催に変更され、開催地は愛知県豊田市中心になる見込みだ。名古屋市出身の西村にしてみれば、その舞台に立って目覚ましい活躍を見せたいと願わないはずがない。E-1から11月のカタール・ワールドカップ(W杯)滑り込みの確率も極めて低いだろうが、可能性のある限り、突き進んでいくしかない。 「マリノスは本当にアタックの回数が多いチームなので、いろんなチャンスが来る。そこで決めきる技術を高めていけば、(2021年チーム総得点の82得点は)成し遂げられる数字だとは思います。結果にこだわり、守備のプレッシングをどんどんやりつつ、個性を出していきたいです」と西村はシーズン当初、語気を強めていた。現時点のチーム総得点19をその領域に引き上げるためには、誰かが起爆剤にならなければいけない。ギラギラしたこの男には大化けする予感が少なからずある。トリコロールの背番号30のここからの一挙手一投足を期待を込めて見守りたい。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.05.14 14:30 Sat
twitterfacebook
thumb

【2022年カタールへ期待の選手vol.102】「行かなきゃ始まらない」からスタートしたドイツ挑戦。今季26試合出場の実績で代表の扉を叩く/伊藤洋輝(シュツットガルト/DF)

4月23日にバイエルンの前人未到のリーグ10連覇が決まったドイツ・ブンデスリーガ1部。だが、残留争いは依然として混とんとしている。目下、2部降格圏に沈むのは、18位のグロイター・フルトと17位のアルミニア・ビーレフェルト。遠藤航がキャプテンを務めるシュツットガルトは17位と勝ち点2差で16位。現状だと2部3位とのプレーオフに回るという苦境に直面している。 24日には勝ち点1差の15位・ヘルタ・ベルリンとの直接対決があり、シュツットガルトとしては何としても勝利したかったが、開始4分と後半ロスタイムに手痛い失点を食らい、0-2で敗戦。勝ち点差が4に広がり、自動残留への道が遠のいた。 この一戦で最終ラインの左センターバック(CB)に陣取ったのは、22歳の伊藤洋輝。ご存じの通り、昨夏にジュビロ磐田から新天地へ赴いた188㎝の大型プレーヤーだ。 移籍当初はセカンドチームからのスタートを余儀なくされると見られたが、「行かなきゃ始まらない」と本人は意欲満々で新たな環境に飛び込んだ。遠藤航という頼もしい先輩の存在も助けになり、新シーズン頭のDFBポカール1回戦・BFCディナモ戦から先発の座をつかむ。そして8月28日のフライブルク戦でブンデスデビューを飾ると、コンスタントに出場機会を与えられ、ここまで26試合出場(うち23試合先発)1ゴールという目覚ましい数字を残してきたのである。 ただ、ヘルタ戦では壁にぶつかったのも事実。最初の1点目は彼と左サイドバック(SB)ボルナ・ソサの背後を飛び込まれ、決められた形だった。その後、何度か体を張り、ピッチを阻止したが、最終局面で1対1で振り切られ、致命的な2失点目を献上してしまった。本人は悔しさいっぱいだろうが、ドイツサッカーの厳しい現実を改めて体感したのも事実。この経験は7か月後の2022年カタールワールドカップ(W杯)でドイツと同組になった日本代表にも還元できそうだ。 今の代表DB陣は、キャプテンの吉田麻也(サンプドリア)、東京五輪代表の冨安健洋(アーセナル)、板倉滉(シャルケ)、国内組の谷口彰悟(川崎)がの4枚がベース。吉田は最近、所属クラブで出番が減っており、今季限りで契約満了になるという噂も出ている。が、高度な経験値と統率力を備えた彼は必要不可欠。冨安もケガが癒えてここから復調するだろうし、シャルケで圧倒的な存在感を示す板倉も評価は高い。 ただ、伊藤にしてみれば「2部で活躍する板倉よりも自分の方が1部で試合に絡んでいる」という思いがあるかもしれない。それを森保一監督に正当に評価してもらうためにも、やはり残留は絶対に達成しなければいけないノルマ。ヘルタ戦で止められなかった決定機を封じられるだけの球際と寄せ、対応力を短期間で身に着けることが当面の課題なのだ。 「僕は2017年にジュビロでトップ昇格しましたけど、自分の成長曲線は正直、遅れていると思います。ようやくチャンスが来たので、シュツットガルトで結果を残せるかが全て。J2ではフィジカル面に自信がありますけど、ドイツでは普通以下。だからこそ、サッカー観や戦術眼が必要。そこはヤットさん(遠藤保仁)から学んだ部分でもある。日本人のよさを出しながら、デュエルとか目に見える数字を残していかないといけないですね」 昨夏の移籍会見で伊藤はこう語っていた。大柄で屈強な面々が揃うドイツでは、サッカーを見る目を磨き、自らアクションを起こして周囲と緊密な連携を築いていくことが非常に重要だ。自身の目の前で戦っている遠藤航はそれを高いレベルで実践しているからキャプテンマークを託され、日本代表でも生命線を担っている。磐田時代の遠藤保仁、シュツットガルトで出会った遠藤航という「ダブル遠藤」の一挙手一投足は、確実に彼自身の血となり肉となっているはずだ。 そのうえで、左利きという最大のストロングポイントを遺憾なく発揮すべき。そこには強いこだわりを持っている様子だ。 「自分のストロングは左足。それはドイツ人の選手にはないところ。それを生かして、自分の立ち位置を確立したい」と本人も目をギラつかせていた。その長所があるから、シュツットガルトでも左CB、左SBで臨機応変に使われている。ボランチとしても経験豊富で、マルチ型という意味では、同じレフティの中山雄太(ズヴォレ)と肩を並べるくらいのポテンシャルはあると言っていい。 森保監督も4月の欧州視察でシュツットガルトを訪問し、遠藤航や伊藤と話をする場を持ったことを明かしていた。その成長ぶりをどう受け止めているかは未知数だが、6月2日のパラグアイ戦(札幌)から始まる次のインターナショナル・マッチデー(IMD)で試してみたい選手の筆頭ではないだろうか。 「W杯本番までの時間が短い分、そんなに新たな戦力をテストできるのかどうか…」と新戦力抜擢に消極的姿勢を示していた指揮官ではあるが、全く新たな人材を呼ばないわけではないはず。であれば、ドイツで急成長を遂げるこの男をぜひ手元に呼んでチェックしてほしい。 そういう流れになるように、伊藤は今季ラストまで全力を出し切り、残留という大きな成果を残すこと。そこに集中してもらいたいものである。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.05.01 20:00 Sun
twitterfacebook
thumb

【2022年カタールへ期待の選手vol.101】「新戦力を試す余裕がない」と言う森保監督の心を動かせるか? 野心溢れる鹿島の点取屋のカタール行きは?/鈴木優磨(鹿島アントラーズ/FW)

2022年カタールワールドカップ(W杯)本戦でドイツ、コスタリカとニュージーランドの勝者、スペインという強豪揃いのE組に入った日本代表。「我々の目標はベスト8以上。どこが相手でも目標は変わらない」と森保一監督は力強くコメントしているが、現実的に厳しい戦いにのは間違いない。初戦・ドイツ戦に敗れるようなことがあれば、その時点でカタールW杯は終わる…。そのくらいの覚悟を持って準備を進める必要があるだろう。 本番までの準備期間が6月の4試合と9月の2試合しかないため、新戦力の招集はかなり厳しい。指揮官も「当初はラージグループを広げて2チーム分くらいで活動し、その中から絞り込んでいくことを考えていたが、そんな余裕があるのかどうか。代表のベースを上げていくことをしっかり考えないといけない」と既存戦力を軸に完成度を高めていく意向のようだが、必ずしも最終予選の主軸だけでいいという訳ではない。 とりわけ、3月のオーストラリア(シドニー)・ベトナム(埼玉)2連戦を欠場した絶対的1トップ・大迫勇也(神戸)の状態は気がかりだ。今季の神戸は開幕から低迷し、Jリーグ10試合未勝利という苦境に陥っている。大迫自身も8試合出場ノーゴール。3月15日のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)プレーオフのメルボルン・ビクトリー戦で2得点は挙げているものの「このままだと代表に呼ばれない」と危機感を強めているのだ。 そこで浮上するのが、ベトナム戦に先発した上田綺世(鹿島)だが、彼は前線でタメを作ることに長けたタイプではなく、生粋の点取屋だ。今の森保ジャパンの攻撃を考えるとゴール前でターゲットになれる人材は必要不可欠。大迫が重用されてきたのもそのためだ。その仕事に重点を置くならば、上田と同じ東京五輪代表の林大地(シントトロイデン)、ベテランの岡崎慎司(カルタヘナ)らも有力候補と言えるが、今季から古巣・鹿島アントラーズに復帰した鈴木優磨も面白いのではないか。 彼は2018年ACL制覇の原動力となり、2019年夏にベルギーへ飛躍。コロナ禍の20-21シーズンは34試合出場17得点という目覚ましい数字を叩き出している。本人はそこからドイツやイタリアなど欧州5大リーグへの移籍を思い描いていたようだが、コロナ禍で欧州移籍市場が停滞。シント=トロイデン残留を強いられた。それから半年間は同じ環境でプレーしたが、「古巣・鹿島を救いたい」を一念発起。この冬に帰国を選んだ。 そして迎えた今季は副主将して奮闘。土居聖真が出ていない時はキャプテンマークを巻いて力強くチームを鼓舞している。本人も尊敬する小笠原満男(同アカデミー・アドバイザー)がつけていた40番を背負ったことで「恥ずかしいプレーはできない」と気持ちを引き締めており、ここまでリーグ8試合出場3得点というまずまずの数字を残している。 後輩・上田がゴールを量産しているのも、彼がマークを引きつけてくれている部分が少なからずある。今の鈴木は「チームのために身を粉にして働ける選手」になっているのだ。 0-3の苦杯を喫した4月10日の横浜F・マリノスとの上位対決にしても、本人は体が壊れてもいいからピッチに立ち続けたいと願っていたようだ。 「前半からプレスがハマらなくて、ボランチの岩田(智輝)選手が浮く状況になってしまったんです。そこはキツイけど、綺世を残して自分がつこうとした。ただ、あの時間帯に点が取れなかったのが重くて、後半に疲れがどっと出たのかな。自分でも足が動かないと感じていて、ホントにきつかった。最悪、0-0で俺が死んでも誰かが点を取ってくれるだろうと思って走っていました」(鈴木) 結局は後半32分に染野唯月との交代を強いられ、そこから鹿島は失速して3失点してしまった。鈴木としては悔やんでも悔やみ切れない思いになったはず。「あの時間帯に失点しないという精神的な意味では自分が出ていたかった」とも吐露していた。 そうやってチームの勝利を第一に考え、できることを何でもやろうという献身性は3年前の彼にはあまり見られなかったもの。取材対応も当時とは変化し、しっかりとメディアに向き合い、自分の言葉で話すようになった。25歳になった今、本人も「W杯を目指せるのは今しかない」と本気で考えているのだろう。だからこそ、行動や姿勢が微妙に変化しているのではないか。森保監督にはそんな鈴木を一度、テストしてみてほしいのだ。 現代表FW陣の序列というのは確かにあるが、ドイツとスペインと同居するカタールW杯でサプライズを起こそうと思うなら、驚くべき仕事をやってのける人材が必要だ。野心溢れる鈴木優磨にはそのポテンシャルがありそうだ。本人も4・5月のJリーグで底力を出し切り、周囲を唸らせるような存在感を示すことが肝要ではないか。 チームメートの上田と代表入りを争う環境にいることも興味深い。お互いに切磋琢磨して急激な成長曲線を描くことができれば、揃ってカタール行きというのも夢ではない。 今こそ、鈴木優磨の真髄を見せてほしい。これまでの流れを変えられるか否かはまさに本人次第と言っていい。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.04.15 20:15 Fri
twitterfacebook
thumb

怒涛の6連勝突破も最終戦で改めて露呈した選手層の薄さ。W杯8強超えに必要なチームの底上げ【日本代表カタールW杯最終予選総括】

24日の敵地・オーストラリア(豪州)戦で2022年カタールW杯出場権を獲得し、安堵感に包まれた日本代表。昨年9月の初戦・オマーン戦(吹田)で不覚を取り、3戦目のサウジアラビア戦(ジェッダ)も落として2敗目を喫した時点では7大会連続出場が絶望的と見られただけに、日本はそこからの怒涛の6連勝で地力を示す形になった。 「初戦で負けた後、麻也(吉田=サンプドリア)と関係者に『辞める覚悟がある』と言いました。本当に自分でいいんだろうかという思いがあった。もしダメならば、早く代えてもらった方が日本サッカーのためになるし、判断の遅れで取り返しのつかないことにならないようにしたいと考えたんです」 25日の早朝、現地取材者だけを集めて行った囲み取材で、森保一監督は複雑な胸中を吐露したが、悲壮な覚悟が選手たちを突き動かしたのだろう。10月の豪州戦(埼玉)で[4-2-3-1]から[4-3-3]へ布陣変更したのも奏功し、遠藤航(シュツットガルト)、守田英正(サンタ・クララ)、田中碧(デュッセルドルフ)で構成する中盤が安定。右サイドの伊東純也(ヘンク)の推進力も一気に高まり、攻撃に迫力が出てきたのだ。 豪州戦では最終予選初出場の田中碧が代表初ゴールを挙げ、指揮官の秘蔵っ子・浅野拓磨(ボーフム)が決勝点をお膳立て。辛くも宿敵を下したことで勢いに乗った。続く11月のベトナム(ハノイ)、オマーン(マスカット)2連戦も、ともに1-0という薄氷の勝利だったが、絶好調の伊東が連発。後者では三笘薫(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ)のような秘密兵器も現れ、「イケる」という手ごたえを感じさせた。 W杯イヤー最初の中国、サウジアラビア(埼玉)2連戦は吉田に冨安健洋(アーセナル)、三笘、古橋亨梧(セルティック)といった面々をケガで欠く中、谷口彰悟(川崎フロンターレ)や板倉滉(シャルケ)らチャンスをもらった選手たちが確実に仕事をこなし、穴を作らない。攻撃陣も伊東がリードする中、大迫勇也(ヴィッセル神戸)や南野拓実(リバプール)といった森保体制発足時からの中核選手たちがゴールを決めたのも大きかった。最終予選突入後、途中交代が続き、厳しい批判にさらされた長友佑都(FC東京)もベテランパワーを見せつけ、チームを活性化。豪州が取りこぼしたのも幸いし、W杯切符獲得に王手をかけたのだ。 迎えた冒頭の豪州戦。日本は時に不用意なミスから鋭いカウンターを繰り出され、ヒヤリとさせられる時間帯もあったが、基本的には主導権を握り、優位にゲームを運んだ。が、負傷欠場した大迫不在の影響もあり、前線でタメが作れず、浅野の背後への抜け出しに依存。どうしても単調な印象が拭えなかった。 その停滞感を打破したのが、終盤に登場した三笘。ラスト1分というところで、山根視来(川崎フロンターレ)と守田という元川崎F同僚コンビの崩しからのマイナスクロスを確実に決めきり、さらには自身の絶対的武器であるドリブル突破からダメ押し点をゲット。「あの時間帯に薫が入って1対1を仕掛けたら、全部抜ける」と伊東が太鼓判を押すほどの迫力を示したのは大きな収穫となった。 そういった新戦力が続々と出現し、W杯本番でメンバーを柔軟に入れ替えながら戦えるようになれば、悲願の8強も夢ではなくなる…。そんな期待を持って29日の最終予選・ベトナム戦(埼玉)を迎えたが、控え組中心の前半はギクシャク感ばかりが目につき、チームとして思うように機能しなかった。森保監督は矢も楯もたまらず後半頭から伊東を入れて[4-2-3-1]へスイッチ。さらに信頼を寄せる守田、田中、南野の3枚も投入。ガムシャラに勝ちに行ったが、田中の決勝点がVAR判定で覆される不運も重なって、格下相手にまさかのドロー。最終的には7勝1分2敗の勝ち点22でB組2位でフィニッシュすることになってしまった。 「チーム全体として誰が出ても相手にスキを突かれないように、我々がやろうとすることをスムーズに発揮できるように、選手層の幅を広げていかなければいけないと思いました」と森保監督も神妙な面持ちで語っていたが、現在の日本代表は主力組と控え組の実力差が大きくある集団と言わざるを得ない。 とりわけ中盤はその傾向が強い。遠藤、守田、田中は誰がどのポジションに入ってもプレーできる柔軟性と臨機応変さがあるが、それ以外の人材が入った時はスムーズさに欠ける嫌いがある。3人が揃って入れ替わったベトナム戦は論外。特にアンカー・遠藤の代役をしっかり固めておく必要がある。守田か田中はその位置をこなせる能力を備えている。彼らを中盤の底に据え、その前に原口元気(ウニオン・ベルリン)と旗手怜央(セルティック)を配置するなどバリエーションを広げておかないと、アクシデントが起きた時に対応できない。森保監督が真っ先に取り組むべきテーマと言っていい。 大迫不在のFWも今回の豪州戦では浅野、ベトナム戦では上田綺世(鹿島アントラーズ)が先発したが、前線で収める仕事がない分、南野らが前に行きづらくなっているように見受けられた。大迫も間もなく32歳で、ケガが増えているだけに、いつまでも彼に依存しているわけにはいかない。準備期間は短いが違った戦い方を確立させる努力が必要だろう。 もう1つ注文をつけると、東京五輪世代の台頭が物足りない。久保は代表デビューから約3年が経過するのに依然として無得点のままだし、堂安律(PSV)も今シリーズでは落選を余儀なくされた。上田や林大地(シント=トロイデン)も大迫を凌駕するレベルには至っていない。東京五輪世代で確固たる地位を築いたのは、冨安、板倉、田中碧、三笘くらい。他はまだ当落線上にいる。若手比率を高めていくことが、日本代表の躍進のカギになる。彼らにはより一層の自覚を持って自チームでのプレーに取り組んでほしい。 4月1日には本大会抽選会があるが、第2ポットを逃した日本は厳しいグループに入ることが想定される。どんな逆境でも跳ね返すくらいの選手層とタフさをどう作り上げていくのか。全ては残り8カ月間に懸かっている。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.03.30 18:15 Wed
twitterfacebook
NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly