【2022年カタールへ期待の選手vol.55】柴崎&航コンビに中山も台頭したボランチ陣。ハリルの申し子は巻き返しを図れるか?/井手口陽介(ガンバ大阪/MF)

2020.10.18 12:30 Sun
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森保ジャパンの約1年ぶりの代表活動となった10月オランダ2連戦(ユトレヒト)は1勝1分という悪くない結果で終了した。9日の初戦・カメルーン戦は長期間のブランクと選手たちの過度な気負いで前半は守備が空回りしたが、後半から3バックにシフトしたことで修正が図られ、全体に落ち着き、スコアレスドローに持ち込んだ。13日のコートジボワールとの2戦目はその流れを踏襲し、守りの安定度が向上。けれども、攻撃の方は迫力不足を露呈した。最終的には植田直通(セルクル・ブルージュ)の劇的ヘディング弾が飛び出し、1-0の勝利をモノにしたが、アタッカー陣は不完全燃焼感を色濃く感じたことだろう。

こうした中、前進を示したポジションの1つがボランチだ。今回は柴崎岳(レガネス)、遠藤航(シュツットガルト)、中山雄太(ズウォレ)、板倉滉(フローニンゲン)という4枚が招集され、1戦目は柴崎・中山、2戦目は柴崎・遠藤のコンビで戦った。前者は中山が大きな成長が示し、後者は同級生コンビが好連携が光った。とりわけ、ブンデスリーガ1部初挑戦の遠藤航が今季クラブで示している通りの力強さと球際の激しさ、攻守両面での献身性を前面に押し出したことは特筆すべき点。森保一監督にとっても朗報と言えるだろう。
この3人がポジション争いで一歩リードしたのは間違いないが、今夏ロシアに赴いた橋本拳人(ロストフ)も控えているし、国内組にも優れた人材はいる。その筆頭が今季ガンバ大阪で軸を担っている井手口陽介だ。遠藤保仁のジュビロ磐田移籍もあり、24歳になった「ハリルホジッチ監督の申し子」の存在価値は古巣復帰1年が経過し、鋭いパフォーマンスを取り戻している。もともとボール奪取能力には定評があったが、その強みが研ぎ澄まされたうえ、積極的に攻撃にも絡み、意欲的にミドルシュートも打っている。遠藤がチームを離れた今、生え抜きボランチは「自分がやらなアカン」という気持ちが強めているはず。そういう意味で、彼の復活が非常に興味深い。

そもそも井手口は2018年ロシアワールドカップに参戦するはずの人間だった。ご存じの通り、ハリル監督時代はレギュラーに抜擢され、日本が6大会連続世界切符を獲得した2017年8月のオーストラリア戦(埼玉)で強烈なダメ押し弾をゲット。眩いばかりの輝きを放った。同年12月のEAFF E-1選手権(東京)でも中盤の軸として奮闘。そこで韓国に4失点粉砕された経験も踏まえ、2018年1月に欧州挑戦を決断。イングランド1部・リーズ・ユナイテッドの一員となった。

しかし、そこからレンタルされたスペイン2部のクルトゥラス・レオネッサでは言葉や文化、習慣の問題から異国になじめず、出番を得られず苦しんだ。それに加えて、4月のハリル解任というショッキングな出来事が重なり、ほぼ手にしたと思われていたロシア行きを逃してしまう。事前合宿までは帯同していただけに、本人も悔しさひとしおだったに違いない。そんな屈辱を晴らすべく、同年夏にはドイツ2部のグロイター・フルトに2度目のレンタルに出たが、今度は右ひざ後十字じん帯断裂と半月板損傷という2度の重症を負い、「海外で成長したい」という思いは叶わなかった。

数多くの挫折を経て、彼は2019年夏に古巣・ガンバに戻ったわけだが、当初はコンディションが上がらず苦しんだ。「井手口は公式戦から長い間遠ざかっていた。自分でトレーニングはしていたが、実戦感覚がまだ戻っていない。もう少しかかる」と宮本恒靖監督も長期化を覚悟していた。そうやって辛抱して使い続けてくれた指揮官に応えるべく、井手口自身も奮起。試合を重ねるごとに復調していった。

「ツネさんが使ってくれているから、期待に応えたい気持ちは絶対にある。誰よりも最後まで走り抜きたいです。厳しい状況なった時、プレーで若手を鼓舞できる存在になれればいい。僕はこのチームの若手の中ではいろんな経験がある方なんで、それを還元できればいいと思ってます」と本人も海外挑戦前とは異なる心境を吐露した。自分がガンバをリードすることで、復帰させてくれた恩に報いたいと強く願っていたからこそ、こういった発言をしたのだろう。

あれから1年が経過し、コンディション自体は以前に近いところまで戻ってきた。あとは攻守両面でより大きな仕事をするだけだ。今季の彼はここまでリーグ全22試合に出場。2得点を挙げているが、もっともっと得点に絡んでいけるはず。国内でのプレーを選択した以上、柴崎や遠藤航、中山らに勝ちたいなら、武器のボール奪取力や豊富な運動量のみならず、「点の取れるボランチ」に飛躍することが肝要なのだ。

同じガンバのアカデミー出身の先輩・稲本潤一(相模原)は2002年日韓ワールドカップでの2ゴールに象徴される通り、「守れて点の取れるボランチ」として一世を風靡した。彼ほどのサイズのない井手口にあそこまでのダイナミックさが出せるかは未知数だが、2017年の絶好調時を振り返ってみれば、そのレベルに到達できる可能性はありそうだ。かつて日本代表で一緒に戦った山口蛍(神戸)も「陽介はホントいい選手」と絶賛していた。その非凡な能力を再び代表の大舞台で発揮できる時は来るのか。全てはガンバでの一挙手一投足と活躍度にかかっている。

【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。

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日本が8強の壁を超えるために必要な個の成長。三笘、堂安に続くタレントの出現を熱望

約1カ月間にわたって熱戦が続いた2022年カタールワールドカップ(W杯)も18日のファイナルで幕を閉じた。頂点に立ったのは、36年ぶり3度目のタイトルを手にしたアルゼンチン。MVPを受賞したリオネル・メッシ(PSG)の凄さは誰もが認めるところだが、ヤングプレーヤー賞に輝いたエンソ・フェルナンデス(ベンフィカ)、中盤を支えたマク・アリスター(ブライトン&ホーヴ・アルビオン)、メッシの相棒として活躍したフリアン・アルバレス(マンチェスター・シティ)など若いタレントたちの活躍も大いに目を引いた。 彼ら上位進出国には必ずと言っていいほど「違いを作れる選手」がいた。フランスのキリアン・ムバッペ(PSG)、クロアチアのルカ・モドリッチ(レアル・マドリー)、モロッコのハキム・ツィエク(チェルシー)らがその筆頭だ。クロアチアのイバン・ペリシッチ(トッテナム)などは突破力もヘディング力も高く、点も取れて、左FWだけでなく左SBもこなせる。マルチな能力には3位決定戦を解説した中村俊輔(横浜FC)でさえも目を丸くしていたほどだ。 翻って日本代表を見た時、過去のW杯よりは個の能力が上がっているのは確かだ。1大会2ゴールを挙げた堂安律(フライブルク)、高度なドリブル技術で敵を凌駕できる三笘薫(ブライトン&ホーヴ・アルビオン)らは4年後も期待できるタレントだ。だが、彼らが封じられた時の次の手がないのも事実。ボール保持を捨て、カウンターに徹してドイツ・スペイン戦は戦術がハマったものの、主導権を握ったコスタリカ戦で攻めあぐね、クロアチア戦でも決め手を欠いたことを考えると、まだまだ強国に肩を並べるレベルには至っていないと言うしかない。 4年後に向けては遠藤航(シュツットガルト)ら多くの選手が口を揃えている通り、個のレベルアップは急務の課題だ。「選手のほとんどがUEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント進出チームか欧州5大リーグの上位クラブにいるようになれば、日本は強くなる」と鎌田大地(フランクフルト)も口癖のように話していたが、それに近い状況を4年間でどれだけ作れるかがポイントになる。 目下、日本で欧州ビッグクラブである程度の結果を残しているのは鎌田と冨安健洋(アーセナル)の2人だけ。鎌田はバルセロナやドルトムントから熱視線を送られていて、来夏にももう一段階ステップアップが実現しそう。そこで中心的存在として活躍できれば4年後のエースという野望も現実になる。 本人は「次(2026年)がホントに勝負。代表への考え方も変わったし、自分が代表を引っ張っていけるような存在になりたい」と目の色を変えていた。今回は守備的戦術の犠牲になった部分も否めないが、本当に決め手を持った選手なら、コスタリカ戦の決定機などでもゴールを奪えていたはず。その勝負強さを身に着けることが重要だ。 冨安にしても、この1年間はケガ続きで、まともに代表でプレーできなかった。カタールW杯も直前に右ハムストリング負傷を再発させ、リハビリの日々を強いられた。そしてドイツ戦に強行出場したと思いきや、頭からで出られたのはクロアチア戦だけ。その大一番で前半からペリシッチの決定機につながるミスパスを犯したりと、本来のレベルとはかけ離れたパフォーマンスにとどまったのだから、彼自身も納得できるはずがない。 「僕個人のパフォーマンスが本当によくなかったし、チームに迷惑かけた。自分に苛立ちしかないし、感情の整理をつけるのが難しい」と日頃温厚な男が怒りを露にしていた。この悪循環から抜け出すためにはまず体を万全に戻すところから取り組むしかない。状態がよければ彼はもっと高みを目指せる選手。今大会で評価を急上昇させたクロアチアのヨシュコ・グヴァルディオル(RBライプツィヒ)に負けじと奮起してほしい。 三笘と堂安ももう一段階、飛躍できる可能性がある。そのためにも各クラブで目に見える結果を残す必要がある。三笘は今季赴いたブライトンで10月からようやくリーグ戦でスタメン出場のチャンスをつかみ、現在に至っている。その地位を盤石にし、不可欠な存在にのし上がることで、CL常連クラブ行きが見えてきそうだ。 堂安にしても、フライブルクが目下、ドイツ・ブンデスリーガ1部で2位という好位置につけている今を逃す手はない。チーム最大の得点源は最前線に陣取るミヒャエル・グレゴリッtチュでここまで10ゴールを奪っているが、堂安にも数字を伸ばしてほしいところ。同じリーグの鎌田が注目されるのも今季前半戦公式戦12ゴールという結果が大きい。彼自身、PSVで挫折した経験を踏まえ、現在の環境で自己研鑽を図っているが、次なる挑戦は必ずモノにしてほしい。それができるだけの自信をカタールで得たはず。そこは期待していいだろう。 久保建英(レアル・ソシエダ)らパリ五輪世代の台頭も必須。重要なクロアチア戦を発熱で棒に振った彼自身はもちろんのこと、2001年生まれの斉藤光毅(スパルタ・ロッテルダム)、藤田譲瑠チマ(横浜F・マリノス)らにはブレイクしてほしいところ。ドリブルで敵を打開できる逸材という意味では、2003年生まれの古川陽介(ジュビロ磐田)や横山歩夢(サガン鳥栖)も面白い。 4年前、三笘がこうなるとは誰も予想できなかった。それだけに誰が出てくるか分からない。未知なる面々が次々と頭角を現し、しのぎを削るようなアタッカー大国になってくれれば、日本の未来も開けてくるはず。そして次こそ8強入りを達成してほしいものである。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> <span class="paragraph-title">【動画】三笘の1㎜、スペイン戦の奇跡のアシストを改めてチェック!</span> <span data-other-div="movie"></span> <blockquote class="twitter-tweet"><p lang="ja" dir="ltr"><a href="https://twitter.com/hashtag/JPN?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#JPN</a> 2-1 <a href="https://twitter.com/hashtag/ESP?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#ESP</a><br>改めて <a href="https://twitter.com/hashtag/%E4%B8%89%E7%AC%98%E8%96%AB?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#三笘薫</a> の折り返しから <a href="https://twitter.com/hashtag/%E7%94%B0%E4%B8%AD%E7%A2%A7?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#田中碧</a> の逆転ゴール <a href="https://twitter.com/ABEMA?ref_src=twsrc%5Etfw">@ABEMA</a> で視聴中 <a href="https://t.co/Ufw1d831A4">https://t.co/Ufw1d831A4</a> <a href="https://twitter.com/hashtag/ABEMA%E3%81%A7FIFA%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89%E3%82%AB%E3%83%83%E3%83%97?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#ABEMAでFIFAワールドカップ</a> <a href="https://twitter.com/hashtag/%E6%9C%AC%E7%94%B0%E3%81%AE%E8%A7%A3%E8%AA%AC?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#本田の解説</a> <a href="https://t.co/uTRD8oSSRy">pic.twitter.com/uTRD8oSSRy</a></p>&mdash; 超ワールドサッカー (@ultrasoccer) <a href="https://twitter.com/ultrasoccer/status/1598430430151462915?ref_src=twsrc%5Etfw">December 1, 2022</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> 2022.12.20 19:00 Tue
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クロアチア戦で流した涙を忘れるな。悔しさを糧に4年後は日本のエースに君臨へ/三笘薫(MF/ブライトン&ホーヴ・アルビオン)

2022年カタール・ワールドカップ(W杯)もいよいよ佳境。13日の準決勝第一試合では,アルゼンチンがクロアチアを3-0で撃破。盤石の強さでファイナル進出を決めた。5度目のW杯で初優勝を狙う35歳のエース、リオネル・メッシ(PSG)のゴール前の冷静さと傑出した決定力は年齢を重ねても衰えるどころか、逆に磨きがかかっている印象だ。 彼を筆頭に、W杯上位国には例外なく看板選手ががいる。今大会で言えば、フランスのキリアン・ムバッペ(PSG)、クロアチアのルカ・モドリッチ(レアル・マドリード)、伏兵・モロッコのユセフ・エン=ネシリ(セビージャ)といった具合だ。モロッコの場合は攻撃より堅守が目立つが、日本は彼らほどの堅牢な守備と鋭いカウンターは持ち合わせていない。となれば、攻撃タレントを増やすことでしか、強豪国に肩を並べる術がないのが実情ではないか。 「今大会の日本の足りない部分と言えるのは、攻撃の個の力。違いを作れる選手が多くない。世界の強国と比べるとアタッカーの力量不足は事実。そういう選手をどんどん発掘できるシステム、個を育てる指導者が必要」と日本サッカー協会の反町康治技術委員長も改めて強調していた。 こうした中、ドイツやスペインを凌駕する打開力を示した三笘薫(ブライトン)は日本の希望と言っていい。森保一監督も「戦術・三笘」と公言していたが、後半から彼をジョーカーとして送り出すと、試合の流れが明らかに変わり、攻めに新たな活力と推進力がもたらされていた。 ドイツ戦の堂安律(フライブルク)の先制弾は三笘の巧みな突破とスルーパスが起点となったし、スペイン戦の堂安の1点目も前田大然(セルティック)と三笘のハイプレスがなかったら生まれていなかった。さらにスペイン戦の田中碧(デュッセルドルフ)の2点目は背番号9の諦めない気持ちがゴールライン上にボールを残し、それがアシストにつながった。まさに奇跡と言うしかないが、それを呼び起すだけのチャレンジ精神と献身的姿勢を三笘は前面に押し出した。彼を見るだけでワクワクしたという人は少なくなかったはずだ。 しかしながら、その三笘でも、ラウンド16で苦杯を喫した相手・クロアチアには徹底マークされ、消されてしまった。 「自分のミスも多かったですし、相手が2人来ていても行き切らないといけなかった。1対1のところはありましたけど、そこでも行けていなかった。やっぱり悔いが残りますし、そういう実力だと感じています」 延長戦でドリブル突破からの強引なシュートをGKドミニク・リヴァコビッチ(ディナモ・ザグレブ)に止められ、さらにPK戦を失敗したことも相まって、本人は報道陣の前で号泣し続けた。涙の意味を問われ「僕より強い気持ちを持っている人に対しての申し訳なさです」と神妙な面持ちでコメント。長年、代表で戦い続けてきた川島永嗣(ストラスブール)、長友佑都(FC東京)、吉田麻也(シャルケ)らベテラン勢に新しい景色を見せてあげられなかったことを心底、悔やんでいる様子だった。 だからこそ、辛い経験をムダにしてはいけない。4年後は三笘自身がチームをリードし、日本を勝たせられる看板アタッカーになること。三笘はそれを現実にするしかないのだ。 「W杯で活躍できる選手がいい選手だし、ベスト8に導ける選手。それを4年間、もう1回、目指そうと思っています」と彼も自らに言い聞かせるように語気を強めた。 これまでの三笘は堂安、冨安健洋(アーセナル)、板倉滉(ボルシアMG)ら他の東京五輪世代に比べてA代表デビューが遅かった分、どこか遠慮がちな部分が感じられた。が、そんな遠慮をしている場合ではないと今回、本人も改めて悟ったはず。貪欲に上を目指さなければ頂点に近づけないと痛感したからこそ、「自分が日本を勝たせる選手になる」と宣言したのだろう。 「世界のトッププレーヤーは1人で局面を打開して決め切る力を持っている。クラブチームと代表ではやるサッカーも違いますし、チャンスが少ない中、1回で決める、局面で剥がすという力がより必要になる。そこは自分でも意識してやってきたつもりでしたけど、最後のクオリティやそこに持って行く力は全然足りないと分かりました」 「日本が8強以上に行くには、個人のレベルアップしかない。個々が集まって、戦術は最後なので。1人1人がもっと驚異的になれば、そこから敵も崩れていく。1対1を強くして、フィジカル的に上げていくことが今の自分には必要だと思います」 筑波大学時代も成績優秀だったという彼の冷静な分析は的を得ている。幼馴染で川崎フロンターレの元チームメートである田中碧が「このレベルになると化け物しかいない」と語っていた通り、本当に三笘が化け物になってきてくれれば、日本代表は長年追い求め続けている境地に到達できるに違いない。 稀代のドリブラーには自らのストロングを磨き続けることに邁進してほしい。そして、4年後には2026年北中米W杯で歓喜の涙を流す姿を見せてもらいたいものである。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> <span class="paragraph-title">【動画】三笘の1㎜、スペイン戦の奇跡のアシストを改めてチェック!</span> <span data-other-div="movie"></span> <blockquote class="twitter-tweet"><p lang="ja" dir="ltr"><a href="https://twitter.com/hashtag/JPN?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#JPN</a> 2-1 <a href="https://twitter.com/hashtag/ESP?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#ESP</a><br>改めて <a href="https://twitter.com/hashtag/%E4%B8%89%E7%AC%98%E8%96%AB?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#三笘薫</a> の折り返しから <a href="https://twitter.com/hashtag/%E7%94%B0%E4%B8%AD%E7%A2%A7?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#田中碧</a> の逆転ゴール <a href="https://twitter.com/ABEMA?ref_src=twsrc%5Etfw">@ABEMA</a> で視聴中 <a href="https://t.co/Ufw1d831A4">https://t.co/Ufw1d831A4</a> <a href="https://twitter.com/hashtag/ABEMA%E3%81%A7FIFA%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89%E3%82%AB%E3%83%83%E3%83%97?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#ABEMAでFIFAワールドカップ</a> <a href="https://twitter.com/hashtag/%E6%9C%AC%E7%94%B0%E3%81%AE%E8%A7%A3%E8%AA%AC?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#本田の解説</a> <a href="https://t.co/uTRD8oSSRy">pic.twitter.com/uTRD8oSSRy</a></p>&mdash; 超ワールドサッカー (@ultrasoccer) <a href="https://twitter.com/ultrasoccer/status/1598430430151462915?ref_src=twsrc%5Etfw">December 1, 2022</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> <span class="paragraph-title">【写真】ギリギリラインに残っているように見える!三笘のアシストをほぼ真上から捉えた1枚</span> <span data-other-div="movie2"></span> <blockquote class="twitter-tweet"><p lang="es" dir="ltr"> El VAR dijo que no salió entera y...<br><br>Estamos contra las cuerdas.<a href="https://twitter.com/hashtag/Qatar2022?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#Qatar2022</a> <a href="https://twitter.com/hashtag/FIFAWorldCup?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#FIFAWorldCup</a> <a href="https://t.co/wnBpujjplv">pic.twitter.com/wnBpujjplv</a></p>&mdash; MARCA (@marca) <a href="https://twitter.com/marca/status/1598416391698259970?ref_src=twsrc%5Etfw">December 1, 2022</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> 2022.12.14 21:00 Wed
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【新しい景色へ導く期待の選手】「どうあがいても長谷部誠になれない」から4年5月。偉大な主将を超える!/吉田麻也(シャルケ/DF)

日本代表は悲願のワールドカップ(W杯)ベスト8入りを果たせるのか…。その命運を左右する大一番・クロアチア戦が今日5日にアルワクラのアルジャノブ・スタジアムで行われる。 「クロアチアは強い相手。簡単な試合には絶対にならないと思いますし、引き締めながらやっていくつもりです」とキャプテン・吉田麻也(シャルケ)は決戦前夜、強い決意を胸にこう語っていた。 ご存じの通り、日本は2002年日韓、2010年南アフリカ、2018年ロシアと過去3度決勝トーナメントに進みながら、その先の道を断たれている。2002年はトルコのウミト・ダバラのヘディング一発に沈み、2010年はパラグアイ戦での駒野友一(FC今治)のPK失敗に泣き、2018年はベルギーの14秒の高速カウンターを前に敗れ去った。 森保一監督も吉田もその歴史を忘れたことはない。とりわけ、4年5カ月前の「ロストフの悲劇」をピッチ上で味わった34歳のキャプテンは「自分たちが歴史を変える」という意気込みでこの4年間、戦い抜いてきたのだ。 「自分はどうあがいても長谷部誠(フランクフルト)にはなれない」と号泣したカザンでの1シーンは今も鮮明だ。W杯3大会で主将を務め、日本代表をけん引してきた偉大な先輩から大役を引き継ぐプレッシャーは、やはり凄まじいものがあったはずだ。 「当初はすごく長谷部さんを意識していたんですけど、どこか明確には覚えていないんですけど、気にしなくなりましたね。自分には自分のよさがあると思っていますし、いろんなキャプテンを見て、いいところを吸収してきたつもりなので。よく言うと『ハイブリット型』で自分で積み上げてきたつもりです」 「それを評価するのはみなさんだし、チームメイトだし、見ている方々。僕はいつも通り僕らしくやればいいかなと。その先に結果が出れば、自分がやってきたことが正しかったと証明される。それはもう、その時に判断してください」 クロアチア戦前日の4日、吉田は神妙な面持ちでこう語ったが、この4年間のチームマネージメントは本当に難しかった。川島永嗣(ストラスブール)、長友佑都(FC東京)以外のベテランが去り、どんどん若返りが進む中、彼らをまとめ、同じ方向へと導く作業は容易ではなかった。 しかも、2020年からはコロナ禍に突入。感染対策のため、国内組と海外組の移動バスや宿泊先のフロアを分けたり、リラックスルームがなくなったり、円卓で食事を摂れないなど、コミュニケーションの場が激減。活動期間が限られる代表チームにとってそれは大きなマイナス面だったが、吉田は吉田なりに努力して意思統一を図ってきた。森保監督とも話をする時間を多く取るなど、歴代キャプテンの中で彼ほど周囲に気を配りながら一体感醸成に努めてきた人物はいなかったと言っていいだろう。 彼自身も1プレーヤーとして難しい立場を余儀なくされることがあった。2012年から在籍したサウサンプトンで徐々に出番が減り、2020年1月にはサンプドリアへ移籍。イタリアで順調なキャリアを歩んでいると思われたが、2022年頭のケガをきっかけに一気に出場機会を失うことになった。 今年6月の代表活動期間には「今後の身の振り方? 何かいいアイディアがあったら教えてください」と冗談交じりに語ったが、本人の中では半年後に迫ったW杯にプラスになる環境を模索し続けたはずだ。 その結果、シャルケに移籍したが、年俸は大幅にダウンしたという。それでも「試合に出続け、初戦の相手・ドイツという国のサッカーを身を持って知ることが大切」と腹を括った。その新天地では失点を重ね、チームも下位に低迷、吉田には厳しい評価が突きつけられた。板倉滉(ボルシアMG)、冨安健洋(アーセナル)の成長もあって、代表の地位も盤石ではなくなったが、彼は彼にできることを全てやり切って、今大会に照準を合わせてきたのである。 「クロアチアは1失点しかしていなくて、しかもモロッコ、ベルギーにクリーンシート。伝統的に粘り強く守ることに長けているので、確実にタフで堅くて難しい試合になると思うんですよね」 「ただ、時間が過ぎれば過ぎるほど、僕らに分があるんじゃないかなと。0-0の時間を長くする、もしくは先制点を先に取るのが非常に大事なこと。ここまでグループリーグは3試合先制されて、2試合は逆転しましたけど、その展開はかなり難しくなる。だからこそ、次は先に点を取りたいですね」 その考えは森保監督も同じだろう。となれば、今回は多少早い段階から勝負をかけることも考えられる。ここまで2ゴールの堂安律(フライブルク)の先発起用なども想定されるところだ。そこでうまく点を取れたら、吉田らDF陣がガッチリとクロアチアを守り倒すことが肝要。「ロストフの悲劇」の生き証人は同じ轍を踏むことはないはずだ。 悲願の8強を達成し、吉田が長谷部超えを果たし、嬉し涙を流す姿を我々は心から待ち望んでいる。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.12.05 22:15 Mon
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