【コロナ禍のJリーグ②】田嶋ショックでチームは困惑。取材規制の中、発信に工夫も

2020.03.22 18:30 Sun
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4月3日の公式戦再開を目指すJリーグにとってショッキングな出来事が起きた。日本サッカー協会の田嶋幸三会長が17日、新型コロナウイルスに感染したことが明らかにされたのだ。

これを受け、Jリーグ事務局は村井満チェアマンの記者会見をオンラインにシフト。各クラブも報道規制の強化に乗り出し、2月25日の最初の公式戦延期決定から通常通りの取材対応を行ってきた川崎フロンターレが無期限の非公開練習に踏み切ったのだ。スカイプなどビデオ通話アプリを使った取材形式を導入するクラブも増え、3月1日からいち早く実施していた浦和レッズに加えてベガルタ仙台、鹿島アントラーズもその方式を取り入れた。

◆クラブはサッカーの無い日常を作らない努力
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浦和レッズの武藤雄樹は「中断期間に入って取材が少なくなり、サッカーの情報があまり入ってこないと知り合いに言われた。サポーターのみなさんがレッズの様子を知れなかったりするのは残念な思いがあります」と苦渋の表情を浮かべたが、人と気軽に接することができなくなるのは彼らにとってもストレスだ。「早くサッカーの試合ができる日常を取り戻したい」と佐藤寿人(ジェフユナイテッド千葉)も選手全員の思いを代弁していた。

こうした中、各クラブは少しでもチームや選手の現状を発信しようと工夫している。川崎Fは14日から公式インスタグラムで練習のライブ配信を開始。清水エスパルスなどは17日の藤枝MYFCとの練習試合を同じくインスタグラムの公式アカウントで配信した。

「サッカーの情報を少しでもファンに届けて、何とか再開時までしのいでもらいたい」というクラブ側の思いは切実だ。実際、サッカーのない日常にサポーターが慣れてしまうと、再開後の集客減に直結しかねない。2〜3月にかけて公式戦がなくなったことによる大幅収入減は必至で、4月3日以降も再延期となれば、経営面へのダメージはより深刻になる。北海道コンサドーレ札幌がコロナ関連で約5億円の減収と試算しているという報道も出ており、少しでもマイナスを食い止めようと躍起になるのも当然だ。全てが通常に戻るのを関係者全員が強く願っている。

◆トレーニングのスケジューリングにもクラブの色
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もちろん現場も困難なアプローチを強いられている。最初の再開予定日だった3月18日にフォーカスして調整を続けてきたのに、それが4月3日に後倒しになったばかりでなく、4月中旬、あるいは5月頭までずれ込む可能性も出てきたのだから、どのようにコンディションを上げ、チーム完成度を高めたらいいのか、各クラブの監督やコーチも頭を痛めている。

ガンバ大阪の宮本恒靖監督を例に挙げると、再開延期を受けて、12〜15日まで4連休とし、選手たちの頭と体をリセットさせた。数日間のオフを取るチームは他にもあり、「もう1回きっちりやるために休む」という判断を下したのだろう。

川崎Fの鬼木達監督の場合は、12〜13日と15〜16日をオフにし、14日だけ練習というイレギュラーなスケジュールを組んだ。「ウチの選手は真面目で4〜5日連休を取ると、自主的にグランドにやってきて練習してしまう。それではオフの意味がないので、中日に練習日を設けた」とチームスタッフは説明していたが、これは川崎Fならではの事情を反映したもの。浦和も12〜13日の2連休にとどめていて、チームによって考え方は違うのだ。

◆千葉・佐藤寿人「長いプレシーズンを過ごしていると思えば」

もちろん柏レイソルやサンフレッチェ広島やセレッソ大阪のように通常通りの流れでトレーニングしているチームもあり、どのアプローチが功を奏するか分からない。再開後の試合日程もハッキリしていないため、どこからギアを上げていくかも難しいところだ。
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ただ、佐藤寿人が「まだシーズンが始まっていないと思えばそんなに心理的負担はない。長いプレシーズンを過ごしていると思えば、自然とモチベーションが上がってくる」とベテランらしい発言をしていた通り、選手たちは空いた時間を最大限活用して、最高の準備をすることが肝要だ。

今季は「降格なし」という特例ができたとはいえ、超過密日程で1年間を戦わなければならなくなるのは事実。固定メンバーだけで乗り切ろうとしても絶対にムリなのは間違いない。この中断期間に選手層を引き上げ、戦い方のバリエーションを広げておくことが全チームの至上命題になるだろう。それができたチームだけが上位争いを繰り広げられるし、タイトルにも手が届くのだ。

先が見えない不安もあるが、今はできることをしっかりやるしかない。

「最初は高齢者がかかりやすいのかなと思っていたんですけど、体を鍛えている欧州のトップ選手でもかかってしまう。それだけみんなが予防をしっかりやらなければいけないと感じさせられますし、自分たちもクラブハウスに来てから全員熱を計ったりとか、気を使っているので、健康には本当に気を付けていかないといけないと思います」と武藤もしみじみ語っていたが、まずはJリーグの選手・関係者からコロナ感染者を出さないことに全力を傾けなければならない。それが早期のJ再開につながる。我々メディア関係者も含め、サッカーに関わる全員がそのことを肝に命じることからまずは始めたい。

【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
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