4連勝も勝って兜の緒を締める東京Vの城福監督、G大阪との6ポインターへ「危機感、野心を持って自分たちのサッカーを示す」
2024.09.27 20:43 Fri
G大阪戦で5連勝狙う城福監督
東京ヴェルディの城福浩監督が、28日にパナソニックスタジアム吹田で行われる明治安田J1リーグ第32節のガンバ大阪戦に向けた会見を実施した。
東京Vは前節、サガン鳥栖とホームで対戦。MF山田楓喜の今シーズン3本目となる直接FKによるゴールで先制に成功すると、以降は一進一退の攻防の中で要所を締める守備で1点差を維持。その後、セットプレー流れからMF翁長聖が決めた追加点で相手を突き放し、今季初となる2試合連続完封勝利を収めた。
2003年以来、21年ぶりのJ1での4連勝を達成したチームは“暫定”が外れて6位をキープ。そして、勝ち点をほぼ残留確定の「47」に積み上げた昇格組は、2ポイント差で5位に位置するG大阪とのシックスポインターで5位浮上を目指す。
前節の鳥栖戦では全体のパフォーマンス自体はいまひとつではあったものの、最後の局面でのハードワーク、勝負の際を見極めた戦いぶりを含めて、いわゆる試合巧者の勝ち方を見せた試合だった。
試合後の会見では「我々がやってきたこと、やるべきことをしっかりと選手がやり通し、選手の進歩を感じることができた試合」と、これまでとは少し違う形での勝利を評価した城福監督だったが、今週のトレーニングでは「勝って兜の緒を締めよ」とばかりに、より鳥栖戦で出た課題にフォーカスし、若きチームの引き締めを図ったという。
「緩かった」と指摘した部分に関しては、チームとして“目の前の一試合一試合”に全力を注ぐことを強調しているものの、やはりここ最近の連勝によって最大の目標だった残留が濃厚になったというところで、メンタル的な部分において少なからず緩みが出た可能性を指摘。
その上で「やられてもおかしくない決定的なシーンを作られすぎた」とチーム全体で反省した鳥栖戦を教訓に、残り試合に向けて改めて危機感、野心を持って戦うことを求めている。
「結果としてゼロで抑えているので、最後は頑張っている。最後に体を張っている、寄せているからこそ、マテウスがセーブするアングルが狭くなっているので、プレーしやすいとか、そんな状況はあったと思います。ただ、そこに至るまでのところの危機感に関して、今までの自分が求めてきた中では高いレベルではなかった」
「これは想像ですけれども、札幌戦に勝って、残留争いという表現がいいかどうかはわかりませんけど、ちょっと自分たちがそちら側ではなくなったのかなというような緩みがひょっとしたらあるのかもしれないなと思います」
「我々にどういう志があって何を示したくて、いまこのステージで戦っているのかというのを考えたら、いま自分たちが勝ち点いくつで、下のグループから見たらどれぐらい広がってとか、ちょっとでも頭の片隅にそれがあったら、我々はどのチームにも苦戦をする。たまたま点が入らなかっただけで、この前の鳥栖戦でもやられてもおかしくない決定的なシーンをちょっと作られすぎているので、ちょっとした気の緩みというのは、それこそ靴1足分の違いに表れる」
「『これぐらいでいいかな』というのがどこかの片隅にあれば、そういうプレーになってしまうので、それはミスをする、しないとは別の次元の問題。危機感を持って、あるいは野心を持って自分たちのサッカーを示すというところは、もっと研ぎ澄ました状態で試合に臨ませたいです」
緩みを許さない勝負師の下、勝った上でポジティブに反省する好循環にあるチームは、次節のG大阪戦でその学びを改めて活かす試合が期待されるところ。
その対戦相手は直近5分け2敗の7戦未勝利に、直近は4試合連続失点中と勝ち切れない状況が続く。だが、城福監督は前回対戦でクローズな0-0のドローゲームを演じたG大阪を「選手層が厚くクオリティが高い」と警戒。元々のクラブカラーの攻撃力の高さに加え、ダニエル・ポヤトス体制2年目で見違えるように改善されたハードワーク、守備のソリッドさを評価し、タフな試合を覚悟している。
「やはり試合を見ていても、ちょっとプレッシャーが甘くなると、攻撃で言えば、宇佐美選手を中心として、本当に個人個人がクオリティが高いのと、ひと振りができる。みんなペナルティエリアの外からひと振りでゴールを決める力があるので、攻撃力という意味では本当に高いものを持っている」
「もうひとつは特に今年のガンバは守備のハードワークのギアが上がったなというふうに思います。それは外国人選手であっても、ポジションがフォワードであっても、それこそ宇佐美選手であっても、チームとしてのハードワークというのは、ぶれないものを持っていますし、非常に高いレベルを示しているので、ガンバを崩すということは、組織として非常に堅いガンバを崩すのはなかなか難しいなと」
「センターバックもフィードがいいというところを注目されますが、非常に守備が堅い。体も張りますし、我々のよく言うところの“集結”の判断もいいですし、カバーリングも全員がやる。自分たちがしっかり相手を広げる中でゴール前に人数をかけて飛び込んでいかない限り、ガンバを崩すことというのはなかなか簡単ではないかなと思っています」
Jリーグ屈指の名門であり、16年ぶりのJ1昇格で注目を集めるヴェルディ。読売クラブ時代を含めJリーグ黎明期は多くのスーパースターが活躍し、華やかな印象が強かった一方、現在のチームは情熱的な指揮官の下でアカデミー育ちの選手を中心に、J1では無名に近い選手たちが毎試合すべてを出し切って戦い抜く愚直さや清々しさといった部分が好意的に受け止められている印象だ。
その理由について問われた指揮官は、激しくもフェアを心掛けるチーム内競争の中で“チームファースト”を心がける選手の姿勢が大きいと考えている。
「そういうふうに思っていただいているのであれば、それはすごくありがたいことです。我々が目指していることでもありますが、それは出た選手がもちろん全員90分ピッチに立っていたいと思っていると思いますが、出た選手がやはり自分がやれるところまでやり切るというところと、後から入った選手も当たり前ですけど、自分の特長を出したい」
「そのエネルギーをまずはチームのために、チームの守備のために使うというところを、ある意味共有しているという言い方は綺麗かもしれないですね。ひょっとしたら、個人のレベルで言えば葛藤しながらかもしれないです。まずはそこだけは絶対に外さないでピッチに立つというところを、いろんな思いをしながらもそこに優先順位を一番に置きながらやっているというところが、見ている人にいろんなものを感じてもらえるといいなと思います」
ただ、「もうひとつは、クオリティとの関係もある」と、チーム全体の精度や連携の部分での拙さが、ある意味でひたむきさに繋がっていると、ハードワークと共に全体の改善もしっかりと訴えている。
「しっかり我慢強く守備をして絞りながらボールにアプローチに行く。あるいは逆サイドが来ないかもしれないけども絞る。自分のマークは出てこないかもしれないけど、しっかり最後までついていくというような、一見したら誰も気づかないようなところをしっかりやる。それはただそこのポジションにいるよりも3倍ぐらいのエネルギーを使う」
「そこから良い状況でボールを持てたときに、スプリントがスタートして相手のゴール前に人数をかけていく。これはジャストな判断と技術で、例えば3人目、4人目、5人目とボールがスプリントをかけた選手に繋がっていって綺麗なゴールを取れれば、『すごく綺麗なカウンターだったね』で終わりますが、このチームはそこがひとつの課題でもある」
「そこで50メーターをスプリントする人間が5人いても、そこにボールが行かない。行かないにも関わらず、スプリントをかける。それでまた守備に帰る。ひょっとしたらそういう姿勢を見てそういうふうに思ってくれる方もいるのかなと…」
「究極の目標はスプリントをかけて、効果的にそこを使えて得点に至れば、これが一番いいですけど、そうではなくても出ていって奪われた瞬間に戻る。これは我々が一番大事にしているところ。我々のこの姿勢がブレなければ、おそらくクオリティが最終的についてくるだろうし、見ている方も感じてもらうものがあると思います」
その上で「我々の中ではスペースがあって、そこに走ること、あるいは走ることでスペースを埋められることがチームのためになるのであれば、それをいとわない集団でいたいですし、そこに巧さが加われば、そこは我々が目指していることで、ただスペース、相手に対して走り勝つというところに関しては、絶対に譲れないチームにしたい」と、ハードワークと巧さを兼ね備えた理想的なスタイルで、結果と共に心を動かす戦いを見せたいと高い志を示した。
東京Vは前節、サガン鳥栖とホームで対戦。MF山田楓喜の今シーズン3本目となる直接FKによるゴールで先制に成功すると、以降は一進一退の攻防の中で要所を締める守備で1点差を維持。その後、セットプレー流れからMF翁長聖が決めた追加点で相手を突き放し、今季初となる2試合連続完封勝利を収めた。
2003年以来、21年ぶりのJ1での4連勝を達成したチームは“暫定”が外れて6位をキープ。そして、勝ち点をほぼ残留確定の「47」に積み上げた昇格組は、2ポイント差で5位に位置するG大阪とのシックスポインターで5位浮上を目指す。
試合後の会見では「我々がやってきたこと、やるべきことをしっかりと選手がやり通し、選手の進歩を感じることができた試合」と、これまでとは少し違う形での勝利を評価した城福監督だったが、今週のトレーニングでは「勝って兜の緒を締めよ」とばかりに、より鳥栖戦で出た課題にフォーカスし、若きチームの引き締めを図ったという。
「(今週の練習で意識した部分は)攻撃も守備ももちろんありますけど、特に守備。ここ数試合の中では我々の守備としては一番アベレージが低かったというか、緩かったと言うべきか、全体的にそういう状況だったので、決定機に近いところまで崩された、シュートを打たれたというシーンはいくつかピックアップして、我々の基準にもう一度戻そうというところは確認しました。意識のところで守備のところは、おそらくこの前ぐらい緩いとガンバさん相手だと複数失点してもおかしくないと思う。そこはしっかり締め直さないといけないなということで共有しました」
「緩かった」と指摘した部分に関しては、チームとして“目の前の一試合一試合”に全力を注ぐことを強調しているものの、やはりここ最近の連勝によって最大の目標だった残留が濃厚になったというところで、メンタル的な部分において少なからず緩みが出た可能性を指摘。
その上で「やられてもおかしくない決定的なシーンを作られすぎた」とチーム全体で反省した鳥栖戦を教訓に、残り試合に向けて改めて危機感、野心を持って戦うことを求めている。
「結果としてゼロで抑えているので、最後は頑張っている。最後に体を張っている、寄せているからこそ、マテウスがセーブするアングルが狭くなっているので、プレーしやすいとか、そんな状況はあったと思います。ただ、そこに至るまでのところの危機感に関して、今までの自分が求めてきた中では高いレベルではなかった」
「これは想像ですけれども、札幌戦に勝って、残留争いという表現がいいかどうかはわかりませんけど、ちょっと自分たちがそちら側ではなくなったのかなというような緩みがひょっとしたらあるのかもしれないなと思います」
「我々にどういう志があって何を示したくて、いまこのステージで戦っているのかというのを考えたら、いま自分たちが勝ち点いくつで、下のグループから見たらどれぐらい広がってとか、ちょっとでも頭の片隅にそれがあったら、我々はどのチームにも苦戦をする。たまたま点が入らなかっただけで、この前の鳥栖戦でもやられてもおかしくない決定的なシーンをちょっと作られすぎているので、ちょっとした気の緩みというのは、それこそ靴1足分の違いに表れる」
「『これぐらいでいいかな』というのがどこかの片隅にあれば、そういうプレーになってしまうので、それはミスをする、しないとは別の次元の問題。危機感を持って、あるいは野心を持って自分たちのサッカーを示すというところは、もっと研ぎ澄ました状態で試合に臨ませたいです」
緩みを許さない勝負師の下、勝った上でポジティブに反省する好循環にあるチームは、次節のG大阪戦でその学びを改めて活かす試合が期待されるところ。
その対戦相手は直近5分け2敗の7戦未勝利に、直近は4試合連続失点中と勝ち切れない状況が続く。だが、城福監督は前回対戦でクローズな0-0のドローゲームを演じたG大阪を「選手層が厚くクオリティが高い」と警戒。元々のクラブカラーの攻撃力の高さに加え、ダニエル・ポヤトス体制2年目で見違えるように改善されたハードワーク、守備のソリッドさを評価し、タフな試合を覚悟している。
「やはり試合を見ていても、ちょっとプレッシャーが甘くなると、攻撃で言えば、宇佐美選手を中心として、本当に個人個人がクオリティが高いのと、ひと振りができる。みんなペナルティエリアの外からひと振りでゴールを決める力があるので、攻撃力という意味では本当に高いものを持っている」
「もうひとつは特に今年のガンバは守備のハードワークのギアが上がったなというふうに思います。それは外国人選手であっても、ポジションがフォワードであっても、それこそ宇佐美選手であっても、チームとしてのハードワークというのは、ぶれないものを持っていますし、非常に高いレベルを示しているので、ガンバを崩すということは、組織として非常に堅いガンバを崩すのはなかなか難しいなと」
「センターバックもフィードがいいというところを注目されますが、非常に守備が堅い。体も張りますし、我々のよく言うところの“集結”の判断もいいですし、カバーリングも全員がやる。自分たちがしっかり相手を広げる中でゴール前に人数をかけて飛び込んでいかない限り、ガンバを崩すことというのはなかなか簡単ではないかなと思っています」
Jリーグ屈指の名門であり、16年ぶりのJ1昇格で注目を集めるヴェルディ。読売クラブ時代を含めJリーグ黎明期は多くのスーパースターが活躍し、華やかな印象が強かった一方、現在のチームは情熱的な指揮官の下でアカデミー育ちの選手を中心に、J1では無名に近い選手たちが毎試合すべてを出し切って戦い抜く愚直さや清々しさといった部分が好意的に受け止められている印象だ。
その理由について問われた指揮官は、激しくもフェアを心掛けるチーム内競争の中で“チームファースト”を心がける選手の姿勢が大きいと考えている。
「そういうふうに思っていただいているのであれば、それはすごくありがたいことです。我々が目指していることでもありますが、それは出た選手がもちろん全員90分ピッチに立っていたいと思っていると思いますが、出た選手がやはり自分がやれるところまでやり切るというところと、後から入った選手も当たり前ですけど、自分の特長を出したい」
「そのエネルギーをまずはチームのために、チームの守備のために使うというところを、ある意味共有しているという言い方は綺麗かもしれないですね。ひょっとしたら、個人のレベルで言えば葛藤しながらかもしれないです。まずはそこだけは絶対に外さないでピッチに立つというところを、いろんな思いをしながらもそこに優先順位を一番に置きながらやっているというところが、見ている人にいろんなものを感じてもらえるといいなと思います」
ただ、「もうひとつは、クオリティとの関係もある」と、チーム全体の精度や連携の部分での拙さが、ある意味でひたむきさに繋がっていると、ハードワークと共に全体の改善もしっかりと訴えている。
「しっかり我慢強く守備をして絞りながらボールにアプローチに行く。あるいは逆サイドが来ないかもしれないけども絞る。自分のマークは出てこないかもしれないけど、しっかり最後までついていくというような、一見したら誰も気づかないようなところをしっかりやる。それはただそこのポジションにいるよりも3倍ぐらいのエネルギーを使う」
「そこから良い状況でボールを持てたときに、スプリントがスタートして相手のゴール前に人数をかけていく。これはジャストな判断と技術で、例えば3人目、4人目、5人目とボールがスプリントをかけた選手に繋がっていって綺麗なゴールを取れれば、『すごく綺麗なカウンターだったね』で終わりますが、このチームはそこがひとつの課題でもある」
「そこで50メーターをスプリントする人間が5人いても、そこにボールが行かない。行かないにも関わらず、スプリントをかける。それでまた守備に帰る。ひょっとしたらそういう姿勢を見てそういうふうに思ってくれる方もいるのかなと…」
「究極の目標はスプリントをかけて、効果的にそこを使えて得点に至れば、これが一番いいですけど、そうではなくても出ていって奪われた瞬間に戻る。これは我々が一番大事にしているところ。我々のこの姿勢がブレなければ、おそらくクオリティが最終的についてくるだろうし、見ている方も感じてもらうものがあると思います」
その上で「我々の中ではスペースがあって、そこに走ること、あるいは走ることでスペースを埋められることがチームのためになるのであれば、それをいとわない集団でいたいですし、そこに巧さが加われば、そこは我々が目指していることで、ただスペース、相手に対して走り勝つというところに関しては、絶対に譲れないチームにしたい」と、ハードワークと巧さを兼ね備えた理想的なスタイルで、結果と共に心を動かす戦いを見せたいと高い志を示した。
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Jリーグアウォーズで意外だった監督の評価/六川亨の日本サッカー見聞録
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東京V、バスケス・バイロンの異例の移籍経緯を説明…
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2024シーズンの明治安田Jリーグは23日に開幕。19日には、開幕イベントが行われ、J1の19クラブの選手が集まった。 野々村芳和チェアマンからは、今後10年、30年と成長していくための改革案とビジョンが語られ、登壇した選手たちからは、新シーズンへの意気込みが語られた。 そんな中、Jリーグは公式YouTubeチャンネルにて19日に開幕戦に向けた「煽り映像」を投稿。2024シーズンの開幕カードから数試合をピックアップして紹介した。 多くの注目カードがある中、やはり今シーズンの開幕カードで一番注目を集めるのは、東京ヴェルディvs横浜F・マリノスの国立競技場での一戦。1993年、Jリーグのオープニングマッチのカードが、31周年を迎える開幕戦のカードで実現した。 横浜FMは、オリジナル10のなかで、鹿島アントラーズと共に降格を経験したことがないクラブ。一方で、東京Vは長らくJ2で過ごした中、16年ぶりにJ1の舞台へと復活する。 かつては読売クラブ、日産自動車と日本サッカー界でも名門と呼ばれた両者であり、ライバル関係でもあったが、この16年でその差は大きく開くことに。それでも、ユースレベルを含め、この2クラブのライバル関係は変わっていなかった。 「煽り映像」では、この一戦を「歴史が渇望した一戦」としてピックアップ。ユース出身の東京V・谷口栄斗、横浜FM・喜田拓也や城福浩監督、ハリー・キューウェル監督のインタビューも交えて盛り上げている。 ファンは「ここから始まる次の30年の開幕戦がまたヴェルディ対マリノスにすることが出来たのは熱すぎる」、「入場は是非ともJリーグアンセムを!」、「鳥肌が立った」、「対照的ですらあるナショナルダービー」、「これはヤバい。涙出る」、「カッコよすぎる」、「感動で涙出る」とコメント。両クラブ以外のファンにとっても、胸が熱くなるものとなった。 その他、昇格組・ジュビロ磐田vs王者・ヴィッセル神戸、初J1のFC町田ゼルビアvsガンバ大阪、開幕カードであるサンフレッチェ広島vs浦和レッズがピックアップされている。 <span class="paragraph-title">【動画】感動の声続出! 31年前の開幕戦再来の煽り映像が話題に</span> <span data-other-div="movie"></span> <script>var video_id ="h-ZS5B2dGTo";var video_start = 237;</script><div style="text-align:center;"><div id="player"></div></div><script src="https://web.ultra-soccer.jp/js/youtube_autoplay.js"></script> 2024.02.20 12:57 Tue4
「魂を見せてくれた」柏に泥臭く勝ち切った東京Vは勝ち点40超え…城福監督「残留はこのクラブで絶対的に与えられた使命」
東京ヴェルディの城福浩監督が、泥臭く勝ち切った柏レイソルとの激闘を振り返った。 東京Vは8月31日、三協フロンテア柏スタジアムで行われた明治安田J1リーグ第29節の柏戦を3-2で勝利した。 前節、3位の鹿島アントラーズを2-1で下し、4戦ぶりの得点と共に4戦ぶりの白星を挙げた東京Vは、16位の柏とのアウェイゲームで約3カ月ぶりとなる今季3度目の連勝を狙った。 今節も[3-4-2-1]の布陣で臨んだ東京Vは、鹿島と共通点も少なくない柏の[4-4-2]に対して、ミスマッチの優位性を意識した戦い方で臨むプランだったが、この試合で柏は可変式の布陣を採用。守備時には右サイドハーフのMF鵜木郁哉を1列下げて5バックを形成し、攻撃時もより流動的な形で揺さぶりをかけた。 その想定外の出方に加え、FW細谷真大、MFマテウス・サヴィオの両エースを起点にクオリティとインテンシティの高さを見せた相手に面食らう形でバタバタした入りを強いられると、8分に細谷に先制点を奪われる。 それでも、失点直後のピッチ上で円陣を組んで改めて意思統一を図り、連続失点を回避すると、15分にFW木村勇大、30分にFW山見大登の連続ゴールによって逆転。ただ、前半終了間際に相手のデザインしたセットプレーからMF戸嶋祥郎に強烈な一撃を浴びて2-2のイーブンで試合を折り返した。 迎えた後半、3枚替えで通常の[4-4-2]の戦い方に変化した相手に押し込まれる入りとなったものの、一瞬の隙を突いて55分のMF翁長聖の技ありシュートで勝ち越しに成功。その後は完全に押し込まれてハーフコートゲームを展開されたが、ディフェンスラインを中心としたハードワークに守護神マテウスの土壇場のビッグセーブによって相手の猛攻を耐え抜き、白熱のシーソーゲームをモノにした。 同試合後、公式会見に出席した城福監督は勝ち点3を得た充実感と共に心身ともに激しい消耗を強いられたであろう一戦を総括。チーム全体の献身を称えながらも、自身のアプローチを含め課題の部分をより強調した。 「ゲームの中で反省すべきは前半の入り方と終わらせ方。ここはいくらロッカールームで徹底しようと言っても、自分が徹底させきれなかったと思います。選手がやれなかったら自分の問題なので、どういうアプローチがよかったのか、どういう表現がよかったのか。そこは自分でもしっかり振り返りたいと思います」 「ただ、点を取られてからも我々のペースを崩さなかったこと。そこで2点取ったことはポジティブ。前半は相手の左サイド。ジエゴとマテウス・サヴィオ、あるいは小屋松の2列目のところで、浮いたところをどう掴むかという部分で苦労し、ちょっと押し込まれました。あそこの整理をもっと早くしてあげればよかったと思っています」 「後半は相手も2トップ気味にやってきたので、掴みづらさはなくなったけれどもゴール前の迫力が増えたので、選手はよく体を張って、球際のところでシュートブロックしてくれたなと思います」 押し込まれ続けてセカンドボールを拾えず、奪ったボールも前線への長いボールを選択せざるを得ない厳しい状況となった後半の戦いに関して、MF齋藤功佑や山見は傑出したパフォーマンスを見せたサヴィオら相手のクオリティの高さを認めると共に、攻め切れた前半にもう少し相手陣内でボールを動かす時間帯を作るべきだったとの反省の言葉も口にしていた。 それに加えて、指揮官は交代策の部分で少なからず誤算があったことを示唆。 本来であれば、優れたキープ力と献身的な守備で流れを好転させられたであろうFW染野唯月はコンディションに問題があったか、全体的に無理が利かない場面が散見された。 その点については「我々もちょっとそれを心配していましたけど、本人に確認したら問題ないと。ただ、彼もリードをしている状況で、失点したくないという状況だったので、かなり守備の方に気を使っていたと思います」と、本来での出来ではなかったものの、その中でもチームのためにプレーし続けたエースを慮った。 その染野以外では負傷明けでのプレーとなったDF林尚輝の比較的早いタイミングでの交代、交代枠を使い切った後で足が攣った翁長を最前線に配置せざるを得ないアクシデントも指揮官のゲームプランをより難しいものとした。 「もちろん相手はリスクを冒して、両サイドバックが非常に高い位置を取ってきましたし、そこを裏返すようなボールであったり、動き出しであったり、キープであったりというところは、ちょっと守備に追われて疲弊して押し返すようなキープ、ボールの持ち方ができなかった」 「最後は特に翁長聖が足を攣った中で、我々のカードの切り方も最初に1枚を切った後に、2枚ずつ切った後でのアクシデントだったので、1枚少ないような状況だったので、余計を押し返すことができなかった」 それでも、「ただみんなはそれを承知の上で彼も足を引きずりながらでしたが、よく耐えたなと思います。何よりもゴール前のところやバイタルエリアのシュートブロックというのは魂を見せてくれた」と、試合終了のホイッスルが鳴ったと同時にピッチに倒れ込んだ選手たちの献身に満足感を示した。 昇格プレーオフを制しての昇格という部分で“20番目のチーム”という位置づけで16年ぶりのJ1の戦いに挑み、開幕前はダントツで降格候補に挙げられながらも、今回の勝利によって残留争いの目安のひとつである勝ち点40の大台を超え、勝ち点41で暫定ながら7位に浮上した。 久々のJ1の舞台でサプライズを起こしたいという力強い宣言と共に、常々J1残留への危機感を強調してきた百戦錬磨の指揮官だが、やはり9試合を残しての現在の立ち位置によって最低限であり、最大の目標到達に近づきつつあると感じている。 「我々のクラブの目標が残留であることは間違いない。それはもう経験値とクラブの規模を考えたら、それは絶対唯一無二の目標であることは間違いない。ただ、それを最終節まで持ち込むのか、あとは何試合かを残して、我々らしく我々のサッカーを示すという状況で、終盤を迎えるのかというところでは、選手の経験値としても大きな差がある」 「とにかく一試合一試合を勝ち点3にこだわって、どのステージで最後J1の中で競い合うというところは高い意識を持っていますけど、それにしても後ろを気にしているわけではないですけども、残留というのはこのクラブで絶対的に与えられた使命だと思いますし、まずはそこに到達したいなという思いです」 2024.09.01 07:35 Sun5
大学サッカー界屈指の名将・栗田大輔氏が東京Vの副社長就任! 「一番はヴェルディの魅力」明大指揮官退任し新たな挑戦選んだ経緯語る
先日に明治大学サッカー部の指揮官を退任した栗田大輔氏(54)が、東京ヴェルディの代表取締役副社長に就任することが明かされた。 昨年末に栗田氏は「新たなチャレンジの話を頂き、私自身も挑戦しようと思い、今回の決断に至りました」と、10年間指揮を執った明治大サッカー部の指揮官退任を発表。 その「新たなチャレンジ」として同氏は、J1クラブの副社長就任を決断した。 7日、味の素スタジアムで行われた東京Vの新体制発表会見にて、中村考昭代表取締役社長は「更なる我々の成長を加速させるため、ヴェルディとしてのマネジメント体制を強化促進していきたい」との観点から、栗田氏が2025年2月1日付で代表取締役副社長に就任することを発表した。 そして、来月からの就任に際して会見に登壇した大学サッカー界屈指の名将は新たな挑戦への意気込みを語った。 「ビジネス経験も30年、大学サッカーでの11年の監督経験と、自分自身もクラブチームを34歳のときに立ち上げました。そういった経験全てを活かして、東京ヴェルディの発展のために尽力したいなと思っております。まずは首都・東京というところで、東京から発信できるクラブというのは、本当に数少ないわけで、今までの“明治発、世界へ”という言葉もいつも言っていましたが、“東京発、世界へ”ではないですけど、日本を代表するようなクラブとしての魅力を感じて決断しました」 「副社長をやるにあたって細かいことはこれからですけれども、ビジネス側サイドと、あとは現場サイドというものが、やっぱりイコールにしっかりと結びつきながら、同じ軸でしっかりと同じ目線を持って進んでいくというのが非常に大事だと思っていまして、私はそういったビジネスの経験とサッカーの経験を生かして尽力したいなと思っております」 今回の招へいの経緯に関しては同大OBでもある江尻篤彦強化部長との関係や、近年数人の選手が加入してきたなかでの交流を通じて、「長い間ラブコールを送っていました」と中村社長が語ったように東京V側から熱心な働きかけがあった。 そんななか、栗田氏は東京V行きを選択した理由として、首都のクラブが秘める大きな可能性。城福浩監督の下で築き上げられている、チームのスタイルに大きな魅力を感じたことだったという。 「(決断の理由)一番はヴェルディの魅力です。やっぱり東京のクラブであるということ、可能性を秘めているというところ。それと自分もサッカー人なので、サッカーのスタイル、もしくは自分はこういうサッカーで世界に出ていきたいなというのが常日頃からありまして、それを思ったときに、城福監督、江尻強化部長を中心にやっていたサッカーが本当にピタッとはまったということ。その辺が一番大きな理由だということです」 栗田氏は2013年に明治大学のサッカー部コーチに就任。2014年に助監督となると、神川明彦前監督の後を継ぐ形で2015年に監督に就任した。 就任後、10年間指揮を執り、関東大学サッカーリーグ1部で5度の優勝に導き、2024年は史上初の無敗優勝を達成。 また、総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントでは3度の優勝、2度の準優勝を経験。全日本大学サッカートーナメント(インカレ)でも2度の優勝、3度の3位の成績を収めていた。さらに、アミノバイタルカップで3度の優勝、2度の準優勝を経験。天皇杯も監督に就任してからは2度出場を果たしていた。 一方で、明治大卒業後は清水建設に入社し、長年に渡ってサラリーマンも経験。さらに、2005年には横浜市で小学生・中学生を対象としたサッカークラブ・FCパルピターレを設立。指導者としての傑出した実績、サッカー界での人脈に加え、社会人経験やクラブ運営にも携わってきたビジネスマンとしての感覚はサッカークラブの運営において重要な要素。 直近2シーズンは城福監督の下、ピッチ内での躍進が目立った東京Vだが、クラブとしての両輪のバランスが懸念される部分もあったなか、ピッチ外におけるマネジメント体制強化によってその両輪のバランスはより良いものになっていくはずだ。 2025.01.07 23:07 Tue東京ヴェルディの人気記事ランキング
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Jリーグアウォーズで意外だった監督の評価/六川亨の日本サッカー見聞録
2024年のJ1リーグは神戸の連覇で幕を閉じた。2位の広島も粘ったものの、最後は神戸が湘南を3-0で退け自力優勝を達成。広島はG大阪に、3位の町田も鹿島に1-3で敗れて神戸に肉薄することはできなかった。 MVPには13ゴール7アシストで神戸を牽引した武藤嘉紀が選出された。今シーズンは、攻撃はもちろんのこと、守備でも泥臭く奮闘する“汗かき役”としてチームを牽引。当然の受賞と言える。 優秀監督賞には連覇を果たした神戸の吉田孝行監督(61票)ではなく、広島のミヒャエル・スキッベ監督が121票を獲得して2年ぶり2度目の受賞を果たした。3位は、開幕前は降格候補の1番手と思われていた東京Vの城福浩監督が44票を集めた。 12月9日に行われた東京Vのシーズン振り返り会見で、江尻篤彦強化部長はJ1昇格が決まったのは12月に入ってからだったため「(昇格が)決まってからだと市場に(選手も)残っていないかな」と遅いスタートを認めつつ、J1では何が大切かを城福監督と話したという。 そこでの結論は「質の高い選手がいないと勝てないよね」というもの。そこで「出場時間に恵まれていない選手をピックアップ」してG大阪から山見大登、京都から木村勇大らをレンタルで獲得。「出場機会に恵まれていない若い選手が結果を残してくれた」と総括した。 城福監督も「(6位は)我々のチームの規模、経験、選手層を考えたときに難しい戦いになることは覚悟していた。それは去年も同じで、昇格争いをすると思われていなかった。選手はまったく経験がない。そういう見られ方をしている中での6位は自負していい。昨日(の試合後)は、お前ら6位だ。たいしたもんだと選手を初めて褒めました」と開幕前の心境を明かした。 東京Vの歴史で、93年と94年こそリーグ連覇を達成したが、95年は横浜Mに敗れて2位。そこからは長い低迷時代に突入し、6位は96年の7位を上回る好成績だ。城福監督のシーズンを通してのチームマネジメント、激しく選手に闘争心を求め続けた姿勢は高く評価していいだろう。 意外だったのは、3位とJ1初昇格後に最高成績を収めた町田の黒田剛監督が16票で5位と低かったことだ。ルヴァン杯こそ決勝に進出したものの、リーグでは最終節まで残留争いに巻き込まれた新潟の松橋力蔵監督の29票にも及ばなかった。 推測するに、一発勝負の繰り返しである高校サッカーではリスクを排して守備を固め、ロングボールやセットプレーから得点を狙うスタイルは容認されても、プロの“興業”としての側面もあるJリーグでは、広島や新潟のようにポゼッションスタイルを監督も選手も「理想」としているのではないだろうか。 J2は昨シーズンのプレーオフ決勝で東京Vに同点弾を浴びて涙を飲んだ清水が堂々のJ1復帰を果たし、横浜FCも1年での返り咲きを果たした。J3では大宮がダントツの成績で1年でのJ2復帰を果たした。MF小島幹敏やFW杉本健勇らは“質”からいったらJ1レベルだけに、当然の帰還と言える。 意外だったのはJ2で勝点差1により3位に甘んじた長崎が、昇格プレーオフ準決勝で1-4と大敗したことだ。新スタジアムでは無敗を誇っていただけに、ショッキングな結果だった。そして岡山が初のJ1昇格を果たした。 J2昇格プレーオフ決勝は、富山まで取材に足を延ばした。リーグ戦終盤は5連勝で4位に食い込んだ松本は、準決勝でも福島に1点をリードされながら後半20分の野々村鷹人のゴールで同点に追いつき、規定によりリーグ戦上位の松本が決勝戦に進出。しかし3位富山との試合では、前半に2点をリードしながら後半に1点を返されると、アディショナルタイムの90+3分に左クロスから失点して無念のドロー。準決勝とは逆の立場でJ2復帰の夢は幻と消えた。 タイムアップの瞬間、11年ぶりのJ2復帰を決めた富山の選手による歓喜の輪がピッチに広がる一方、あと一歩のところで昇格を逃した松本は、司令塔の山本康裕ら3人以外は仰向けに倒れるか座り込んだまま動けない。残酷なまでの勝者と敗者のコントラストだった。 文・六川亨 2024.12.12 12:00 Thu2
連鎖したJリーグのジャイキリ/六川亨の日本サッカーの歩み
J1リーグも残り4節となったが、毎年シーズン終盤は下位チームも残留を目指して必死の戦いを挑んでくる。このため“ジャイアントキリング”が起こりやすい。とはいえ第34節は各地で波乱が続出し、優勝争いと残留争いは予断を許さなくなった。 まず“金J”ではシュート4本のFC東京が2位の神戸に2-0と快勝した。荒木遼太郎の2アシストは見事だったし、GK野澤大志ブランドンと交代出場した波多野豪も決定機を阻止する活躍を見せた。 FC東京も4試合負けなしと好調を維持していたが、いずれもホーム味スタや国立競技場、埼スタ、日産と首都圏での試合というアドバンテージがあった。しかし神戸戦はアウェーのノエスタ。にもかかわらず神戸の猛攻を凌ぎきったのだから見事というしかない。 そして、こうした“ジャイキリ”は伝播するのか、翌日は柏が細谷真大のゴールで後半アディショナルタイムまで町田を1-0とリードした。試合内容でも町田を圧倒し、勝点3はほぼ確実かと思われたが、痛恨のPK献上で1-1のドローに終わった。 しかし、この勝点1と湘南の逆転勝利により、鳥栖のJ2降格が決定したのだから、柏にとっては残留へ向けて価値ある勝点1と言っていいだろう。 湘南は、ここ2連勝で過去の残留争いの経験値からしぶといところを見せていた。とはいえ広島に先制を許した段階で、首位相手の逆転劇は難しいと思ったものだ。ところが後半開始早々に福田翔生のゴールで同点に追いつくと、後半アディショナルタイムの2分には田中聡が強シュートを突き刺して逆転に成功。このまま逃げ切って広島に12試合ぶりの屈辱を味わわせた。 19位の札幌も名古屋に、18位の磐田もC大阪に、それぞれ2-0、2-1で勝って勝点3を積み上げ、残留争いから抜け出そうと必死だ。 そして浦和である。渡邊凌磨のゴールで先制したまではよかったが、後半は東京Vの反撃に防戦一方。クリアボールを綱島悠斗に押し込まれてJ1初ゴールで同点に追いつかれると、さらにCKから綱島にヘディングで叩き込まれて逆転負けを喫した。 綱島の活躍で勝点3をゲットした東京Vは、FC東京と同じ勝点51で7位に浮上すると同時にJ1残留も確定。一方、4連敗となった浦和は勝点39のまま16へ後退し、2試合消化試合が少ないとはいえ、気付けば降格ゾーンに足を踏み入れつつある。 優勝争いは依然として広島と神戸が勝点1差で争っているが、残留争いに目を向ければ23日には順延された第25節の浦和対柏戦が開催される。勝点39同士の6ポイントマッチだけに激戦は必至だろう。同日には勝点40の新潟も第35節の東京V戦を控えている。順位がどう入れ替わるのか、それぞれのサポーターにとっては、それこそ「天国と地獄」の水曜ナイターと言える。 さらにJ2では、昇格目前の横浜FCが仙台に0-3、同じく昇格にリーチをかけていた清水もホームで山形に1-2と敗れて昇格はお預けになった。こちらも両チームはリセットしての第36節ということになる。 果たして今後も“ジャイキリ”が続出するのか。上位、下位とも目の離せないJリーグである。 文・六川亨 2024.10.21 21:30 Mon3
Jリーグが理念強化配分金とファン指標配分金の支給額を発表! 「DAZN」ベースのファン指標分配金の1位は浦和、最下位はYSCCに…連覇神戸は5.5億円
Jリーグは25日、2025年度理念強化配分金の支給対象候補クラブ、2024年度ファン指標配分金支給対象クラブを発表した。 理念強化配分金は、2023年の明治安田生命J1リーグで1位から10位に対して送られるもの。20チーム制に変更となったために1チーム増えることとなった。また、2024シーズン年間ファン指標順位(DAZN視聴者数等1~10位)に基づいても支給される。 競技面では連覇を達成したヴィッセル神戸から10位のセレッソ大阪までに支給され、神戸は2025年、2024年にそれぞれ2億5000万円ずつを手にする。なお、2023年も優勝したため、その分の2億5000万も今回支給される。また、2位のサンフレッチェ広島には2年間で1億8000万円ずつ、3位のFC町田ゼルビアは、1億5000万円(2025年)と7000万円(2026年)を手にする。なお、2023年2位の横浜F・マリノスには1億8000万円、3位の広島には7000万円がしキュされる。 また、ファン指標順位は1位は2024年も浦和レッズとなり1億7000万円。2位が鹿島アントラーズで1億2000万円、3位が横浜FMで7000万円と続き、10位は名古屋グランパスで1000万円となった。なお、競技順位で10位以内に入っていないクラブでは、1位の浦和、10位の名古屋に加え、8位に北海道コンサドーレ札幌が入り2000万円となった。 さらに、「ファン指標配分金」として、13億6000万円をJリーグの全60クラブに分配。これは、2024シーズンのDAZN視聴者数やDAZNシーズンパス販売実績等で配分され、1位が浦和で8921万5930円。2位が横浜FMで7945万2984円、3位が川崎フロンターレで6648万1993円となっている。なお、最下位はY.S.C.C.横浜となり182万4625円が分配される。 <h3>◆理念強化配分金(競技)/総額11億2000万円</h3> 1位:ヴィッセル神戸 1年目ー2億5000万円、2年目ー2億5000万円 2位:サンフレッチェ広島 1年目ー1億8000万円、2年目ー1億8000万円 3位:FC町田ゼルビア 1年目ー1億5000万円、2年目ー7000万円 4位:ガンバ大阪 1年目ー1億5000万円、2年目ーなし 5位:鹿島アントラーズ 1年目ー1億2000万円、2年目ーなし 6位:東京ヴェルディ 1年目ー9000万円、2年目ーなし 7位:FC東京 1年目ー6000万円、2年目ーなし 8位:川崎フロンターレ 1年目ー5000万円、2年目ーなし 9位:横浜F・マリノス 1年目ー4000万円、2年目ーなし 10位:セレッソ大阪 1年目ー3000万円、2年目ーなし <h3>◆理念強化配分金(人気)</h3> 1位:浦和レッズ/1億7000万円 2位:鹿島アントラーズ/1億2000万円 3位:横浜F・マリノス/7000万円 4位:ヴィッセル神戸/5000万円 5位:川崎フロンターレ/4000万円 6位:サンフレッチェ広島/3000万円 7位:ガンバ大阪/2000万円 8位:北海道コンサドーレ札幌/2000万円 9位:FC町田ゼルビア/1000万円 10位:名古屋グランパス/1000万円 <h3>◆ファン指標配分金</h3>(昨年との金額比較) 1位:浦和レッズ/8921万5930円(↑) 2位:横浜F・マリノス/7945万2984円(↑) 3位:川崎フロンターレ/6648万1993円(↓) 4位:鹿島アントラーズ/6598万4095円(↓) 5位:ヴィッセル神戸/6491万8131円(↑) 6位:ガンバ大阪/5864万8883円(↑) 7位:名古屋グランパス/5851万4812円(↓) 8位:北海道コンサドーレ札幌/5315万3249円(↑) 9位:FC東京/4924万9886円(↑) 10位:サンフレッチェ広島/4572万5356円(↑) 11位:FC町田ゼルビア/4558万3908円(↑) 12位:アルビレックス新潟/4466万3143円(↓) 13位:ジュビロ磐田/4426万2918円(↑) 14位:セレッソ大阪/3988万8434円(↓) 15位:サガン鳥栖/3834万3648円(↑) 16位:柏レイソル/3695万3904円(↓) 17位:湘南ベルマーレ/3554万5920円(↓) 18位:東京ヴェルディ/3459万9966円(↑) 19位:京都サンガF.C./3438万1632円(↑) 20位:清水エスパルス/3362万962円(↓) 21位:アビスパ福岡/3259万3587円(↓) 22位:ベガルタ仙台/2298万6246円(↑) 23位:V・ファーレン長崎/1758万2571円(↑) 24位:大分トリニータ/1716万3388円(↑) 25位:ファジアーノ岡山/1704万1315円(↑) 26位:横浜FC/1664万9981円(↓) 27位:ジェフユナイテッド千葉/1608万1426円(↓) 28位:モンテディオ山形/1442万3396円(↓) 29位:ヴァンフォーレ甲府/1362万8966円(↓) 30位:松本山雅FC/1324万9873円(↑) 31位:ロアッソ熊本/1008万4227円(↓) 32位:栃木SC/983万8888円(↓) 33位:徳島ヴォルティス/934万7583円(↓) 34位:RB大宮アルディージャ/925万5971円(↓) 35位:ザスパ群馬/888万8344円(↓) 36位:レノファ山口FC/886万2864円(↓) 37位:いわきFC/878万641円(↓) 38位:鹿児島ユナイテッドFC/825万2572円(↑) 39位:愛媛FC/768万2897円(↑) 40位:水戸ホーリーホック/718万9579円(↓) 41位:藤枝MYFC/708万1435円(↓) 42位:ツエーゲン金沢/622万6288円(↓) 43位:ブラウブリッツ秋田/619万6520円(↓) 44位:カターレ富山/481万4398円(↑) 45位:ギラヴァンツ北九州/459万264円(↓) 46位:FC岐阜/396万9504円(↓) 47位:SC相模原/341万1253円(↓) 48位:FC今治/327万7554円(↓) 49位:AC長野パルセイロ/317万8338円(↓) 50位:カマタマーレ讃岐/313万7389円(↓) 51位:FC琉球/309万4569円(↓) 52位:福島ユナイテッドFC/288万7440円(↑) 53位:ガイナーレ鳥取/282万3403円(↓) 54位:ヴァンラーレ八戸/265万6822円(↓) 55位:いわてグルージャ盛岡/261万6733円(↓) 56位:アスルクラロ沼津/251万5766円(↓) 57位:テゲバジャーロ宮崎/237万4594円(↑) 58位:FC大阪/226万1536円(↑) 59位:奈良クラブ/223万1534円(↓) 60位:Y.S.C.C.横浜/182万4625円(↓) 2025.02.25 17:40 Tue4
東京V、バスケス・バイロンの異例の移籍経緯を説明…
J2リーグの上位2チームの間で実現したシーズン途中の異例の移籍を受け、東京ヴェルディが経緯を明かした。 FC町田ゼルビアは6日、東京ヴェルディからチリ人MFバスケス・バイロン(23)を完全移籍で獲得したことを発表。 現在、両クラブは勝ち点10差が付いているものの、町田が首位、東京Vが2位と自動昇格、優勝争いを繰り広げている。さらに、同じ東京を本拠地とするローカルライバルの間柄ということもあり、シーズン途中のライバルチームへの移籍は衝撃をもって伝えられた。 6日の移籍決定後に新天地での加入会見に臨んだバスケス・バイロンは、移籍リリース時のコメント同様に「批判されるのもわかった上での決断」と、大きな覚悟をもっての移籍だったとコメント。それでも、恩師である黒田剛監督の元でのプレーを熱望し、町田行きを決断した。 一方、ライバルに主力を引き抜かれる形となった東京Vは移籍発表翌日となった7日、江尻篤彦強化部長がクラブハウスで報道陣の囲み取材に応じ、交渉の詳細に関する言及は避けながらも移籍の経緯を説明。 クラブとしては契約延長交渉を含め、全力で慰留に努めながらも、最終的には選手自身の強い意向によって移籍を認めざるを得なかったとしている。 「我々にとって欠かせない選手でした。1カ月プラスアルファ前から彼との契約の更新というのは当然進めていました。そういった中で最終的に今回のような形となりました」 「今まで巻き直し(延長交渉)は年度末にやっていたと思いますが、この時期に巻き直しをちゃんとやって、残さなければいけないというのは、今までのヴェルディではなかったことだと思います。去年お金を作ったぶん、早い段階でそういったことをやっていくことは自分の仕事だと思っていました」 「そういった中、(自分たちが)早く動けば、(他クラブから)早く動きがくるというのはしょうがないことです」 「当然、ある程度のお金を彼が置いていってくれました。そのへんは抜かりなく自分も仕事をしているつもりです」 「(延長オファーを拒否され、他クラブからのオファーが来て違約金を払われての移籍という形か)そういう流れでした」 「彼も彼で悩み抜いた結果だと思いますし、僕らも個人的に彼と話を重ねて、最終的に彼が決めた決断でした。ただ、クラブは指をくわえて見ているような状況ではなく、クラブとしてやれることを全力でやった結果、こうなってしまったことは致し方ないというところです」 また、9日に新国立競技場で行われる『東京クラシック』を間近に控える中での移籍発表に関しては、様々な要素が絡み合った上での偶然だったという。 「1カ月前のそういったところから始めていて、町田さんのいろんな狙いがあるとは思いますが、それを含めてのJ1昇格への戦いだと捉えています。J1昇格にはクラブ力が問われる。現場だけでなくクラブの力が当然問われます。そういう戦いのステージに、万年中位のチームが上がったということは、それだけの戦いをしている。現状の上位のチームと戦うということはピッチだけではない。そこをチーム全体で認識してやっていける機会なのかなと思います。そういう舞台で戦っていることを私も監督含めた現場、クラブ側もわかってJ1昇格に向けて戦っていかないと良い形にはなりません」 「こういったタイミングになったことに関しては、彼と真剣に我々が向き合って話し合った結果がこのときになってしまったというだけで、意図してやっているわけではないです」 主力の穴埋めに関しては名古屋グランパスから育成型期限付き移籍で獲得したMF甲田英將らを含めた現有戦力の台頭を促しつつも、クラブとして新戦力補強に動くことを認めている。 「それは当然です。今年は(J1昇格の)チャンスがあると思っています。そこに向けて全力投球していきたいと思っています。(伸びしろ十分の若手選手が)補強しなくても自分たちがいるというような形が一番です。ただ、それを指をくわえて待つわけではなく、強化部としてそこに適する選手を取っていくという考えではいます」 「ただ、間違ってもバカげた補強というか、端的に言えば多くのお金が必要となる補強をするつもりは明確にありません。あくまでクラブに合った形でないと、それ以後のことに関して上がっても上がれなくても大変になりますし、そこは10年、20年とヴェルディがやっていく上で重要なことだと考えています」 また、現場を預かる城福浩監督も同日に行われた記者会見、その後の囲み取材で今回の移籍に言及。「サッカーの世界ではよくあること」、「弱肉強食の世界」と前置きしながらも、百戦錬磨の指揮官にとっても今回の移籍は前例がないものだと感じている。 「“強奪”という言い方が適切かはわかりませんが、我々の目からそのように映ることはサッカーの世界ではよくあることです」 「ただし、サッカー先進国やサッカー先進国に近づこうとしている国のリーグでシーズン途中に、このような順位でこういった移籍が実現した例がはたしてほかにあるのであれば、聞かせてほしいというふうに思っています。シーズン中にこういう2位から1位に主力が行くというのが、こういうことが成立するのか。自分が知り得る限りでは聞いたことがないです」 さらに、クラブ同様に1カ月以上の期間を通じて何度となく対話を重ねて慰留を図ったという。その中で「これ以上は話せない」と慎重に言葉を選びつつも、起用の可否を含めて難しいチーム状況の中で指揮官として繊細な対応を行っていたことを明かした。 「彼とは話しすぎるぐらい話しました。もちろん条件というのはサッカー選手にとって重要なものです。20年も30年もサッカー選手を続けていくのは難しい。あとは個人でバックボーンが異なります。その部分は無視できないです」 「ひとつは彼がそういう選択肢を得た事実があったこと。そこで条件がはね上がったとするのであれば、それは彼が勝ち取ったものです。そこを否定することはありません」 「あとは手段を選ばずにJ1昇格を考えたとき、今回のような向こうの手段が意表というものではありません。僕らはそういった部分も含めて昇格を争っています。ただ。ピッチの上で90分、戦術や選手交代がどうのという部分だけで戦っているわけではない」 「何がなんでも昇格しようとしているチームが何チームもあります。これほどインパクトがある補強がこれからあるかはわかりませんが、そのチームの戦力をもぎ取れば二乗倍の補強になるという思考があってしかるべきというほど、みんなが是が非でも昇格したい。そういう世界だと思います」 「この1カ月はこの騒動にチームが巻き込まれないようにすることにかなり努力しました。おそらく選手は僕らが言わなくても、どんな混沌とした状況かというのは、この1カ月感じながらやっていました」 「僕らは起用するしないの判断も含めて考えていました。それはなぜかと言えば、行くか残るのかわからなかったからです。行くか残るかわからない状況でどういう準備をしてという部分は、少なくともチームに影響がないという部分で自分が努力する。今はその努力をしなくていいという部分でスッキリしていますし、個人的には間違いなくプラスです」 「(残留の可能性に賭けていた部分は?)僕らが賭けていたというか、(選手本人が)ファイナルアンサーしたら僕らはどうしようもないです。それにものすごい差があろうがなかろうかというところです」 「誰よりも1人いなくなったことで、チームが沈んだと言われたくないのは我々当事者です。それをプラスにできると確信しています」 2023.07.07 17:10 Fri5
