わずか4分でも大きな一歩。A代表デビューで「絶対生き残る」と決意した中村敬斗の今【新しい景色へ導く期待の選手/vol.7】

2023.03.26 21:35 Sun
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24日の第2次森保ジャパン初陣・ウルグアイ戦(東京・国立)の後半44分。三笘薫(ブライトン&ホーヴ・アルビオン)と交代し、記念すべきA代表デビューを飾ったのが、背番号7をつける中村敬斗(LASKリンツ)だった。

「同じポジションに三笘選手がいて、どう交代してもらえるのか分からない中で、少しでも使ってもらえたことはすごく大きい」

こう語る彼は「千載一遇のチャンスだ」と捉え、堂々とピッチに立ち、猛然と敵を追い回した。ロスタイムには先制点を挙げたMFバルベルデ(レアル・マドリード)にハイプレスに行き、DFゴンサレス(マジョルカ)とMFカルバジョ(グレミオ)に寄せられながらも粘って橋岡大樹(シント=トロイデン)にパス。FKを得るきっかけを作った。
「球際に1つ勝っただけで、次のコロンビア戦(28日=大阪・ヨドコウ)に挑む気持ちは変わりますよね。もちろん十分な時間ではなかったけど、代表というものを感じるというか、次の試合に向けてのメンタル面も含め、僕にとっては十分な時間だった。絶対に代表に生き残っていきたいなという気持ちが一層強くなりました」と年代別代表の頃からの悲願だったA代表の一歩を踏み出した22歳のアタッカーは毅然と前を向いた。

ここまでの道のりは順風満帆とは言えなかった。2017年U-17W杯(インド)と2019年U-20W杯(ポーランド)に出場し、17歳でガンバ大阪入り。19歳になったばかりの2019年夏にはオランダ1部・トゥベンテへレンタル移籍し、PSVとアヤックス相手にゴールを奪うという鮮烈な欧州デビューを飾った中村だが、徐々に出番を減らすことになった。

2020年夏にはシント=トロイデンに新天地を見出すも、ほとんど出番を得られず、2021年2月にはオーストリア2部のFCジュニアーズへ。「早く世界トップに駆け上がりたい」と焦燥感にかられていた男が格下リーグへ行くというのは、やはり大きな決断だったに違いない。

「試合に出ることを優先した選んだ道でした」と本人は言う。そこで地道に1つ1つキャリアを積み上げる重要性を再認識したはずだ。「あまり先のことを考えず、目先のことを一歩ずつこなしていこうと考えて、ここまで来ました」と中村も神妙な面持ちでコメントしていた。

かつて南野拓実(モナコ)も自己研鑽に務めオーストリアという国で自分と徹底的に向き合ったことで、ゴールにつながるチャンスメーク、クロスに飛び込んで得点を奪う飛び出しなど、ペナルティエリア付近での仕事に磨きをかけることができた。その成長を認められ、同年夏には提携クラブのLASKリンツに引っ張られ、ガンバから完全移籍。ようやくオーストリア1部で落ち着いてプレーできる環境を手に入れた。

それから2年近くが経過した今、中村は今季公式戦14ゴールという数字を残すと同時に、オフ・ザ・ボール時の切り替えや運動量、守備の強度などをブラッシュアップさせ、幅広いプレーのできる選手へと変貌。その一端を今回の代表合宿中のトレーニングでも示している。

「現代サッカーはどのチームも切り替えとか守備の強度が基盤にある。そのうえにテクニックや戦術があるので、まずは戦うところじゃないですか」といった言葉が口を突いて出てくるあたりは、紛れもなく大人のフットボーラーになった証拠。10代の頃は武器であるシュート力や推進力に依存しがちなアタッカーだっただけに、欧州での苦労や挫折が彼を大きく変えたのだろう。

心身ともに充実した状態で参戦している今回の森保ジャパン。2022年カタールW杯を経験した先輩たちも多く、彼らから吸収できることも多いという。

「シント=トロイデンで一緒にやっていたシュミット・ダニエルさんにはすごくよくしてもらっていますし、同じポジションの三笘選手には試合が終わった後もアドバイスをもらったりしました。個人戦術の話なんですけど、学ぶことがいっぱいで、この代表活動はすごく有意義なものになっていますね」

年長者だけでなく、年代別代表時代から共闘してきた同世代からも刺激を受けている。同じ2000年生まれの菅原由勢(AZ)と瀬古歩夢(グラスホッパー)はウルグアイ戦でスタメンを勝ち取っているし、谷晃生(G大阪)も東京五輪全6試合に出場した実績がある。そして1つ下の久保建英(レアル・ソシエダ)も今季スペイン1部で5ゴール3アシストという目覚ましい数字を残している。

「タケと一緒にやるのは、2018年12月のU-19代表のブラジル遠征以来じゃないかな。メチャクチャうまいと思いますよ。特別な選手じゃないですかね」とリスペクトを口にする。次戦ではその久保と共演する可能性がある。10代の頃コンビを組んだ盟友に負けじと、中村はパンチ力あるシュートで見る者を魅了すべきだ。

ここからは2000年生まれ世代が台頭し、日本代表を押し上げていかなければ、輝かしい未来は開けてこない。攻撃陣唯一の初招集となった背番号7にはそれだけのポテンシャルがある。我々の度肝を抜くようなプレーで代表定着を手にしてほしいものである。


【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。


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「代表選出で気負い過ぎている…」から一転、京都戦で50m独走弾。速さと強さで違い示す/川村拓夢(サンフレッチェ広島/MF)【新しい景色へ導く期待の選手/vol.13】

「(サンフレッチェ)広島でJリーグのトップグループで戦っていて、チームのダイナモとして、攻守ともに幅広くプレーに関わりながら存在感を発揮している。 特に守備から攻撃に移った時のダイナミックな動きから、自らペナルティボックスに入っていけるし、ミドルシュートも打てる。周りも活かせる。アグレッシブなプレーで違いを見せている」 森保一監督から日本代表6月シリーズ初選出の理由をこう評された23歳の若武者・川村拓夢。2019〜2021年にかけて広島からJ2・愛媛FCにレンタルされていた男が、2022年の大ブレイクによってA代表に上り詰めたのは、ある意味、驚きに値する出来事だったと言えるだろう。 本人もそういう認識なのか、「代表に選ばれたことで、どうしても気負い過ぎているというか、最近、自分のプレーができなくなってしまっている」と5月31日の浦和レッズ戦後に顔を曇らせていた。 実際、この日は森保監督が直々に視察に訪れた重要ゲームだったが、川村は同タイプのボランチ・伊藤敦樹(浦和)とマッチアップし、良さを消され、彼に1ゴール1アシストという目覚ましい活躍を見せつけられてしまったのだ。「本当に僕がやりたいプレーを伊藤選手にやられてしまったなという感じです」と心底、悔しがっていた。 しかしながら、この屈辱を糧にすぐさま結果を出せるのが、今の川村だ。浦和戦から中3日で迎えた6月4日の京都サンガF.C.戦。同じくA代表初選出の川﨑颯太との直接対決ということで注目される中、背番号8をつけた男は2シャドウの一角で先発。代表指揮官が高評価したアグレッシブさを前面に押し出し、強烈なインパクトを残し続けたのだ。 圧巻だったのは、2-1で迎えた後半ロスタイムの3点目。ハーフウェーライン手前でボールを奪った川村は3人のDFを次々とかわしてドリブルで独走。50mを一気に持ち上がり、GK太田岳志の位置をしっかりと見て、左足を豪快に振り抜き、ゴール左隅に突き刺したのだ。 これはオフサイドの疑いがあり、VAR判定へと持ち越されたが、最終的には認定。彼の今季リーグ3点目とともに広島が2試合ぶりの白星を飾ったのである。 このプレーこそが、森保監督の言う「守備から攻撃に移った時のダイナミックな動きから、自らペナルティボックスに入っていけるし、ミドルシュートも打てる」というストロングなのだろう。 確かに、これだけの推進力と決定力を備えた選手は今の日本代表には少ない。しかもボランチと2列目を柔軟にこなせるレフティでもある。中盤の複数ポジションを担える点では鎌田大地(フランクフルト)と共通するが、技巧派の鎌田は川村ほどの強さと迫力はない。遠藤航(シュツットガルト)と比較しても、川村の方がより攻撃的にプレーできる。代表MF陣に新たなエッセンスをもたらせる新星と言ってもよさそうだ。 才能は間違いなく今の主力たちに負けじとも劣らないが、懸念材料があるとすれば、大舞台に慣れていない点ではないか。川村は広島アカデミー時代からそこまで注目された存在ではなく、プロ入り後も地味なキャリアを過ごしてきた。だからこそ、日の当たる場所にあまり行ったことがない。今回のA代表初選出で本来の自分を一時的に出せなくなってしまったのも、メンタル的な部分によるところが大だろう。 6月12日からスタートする日本代表合宿には、今をときめく三笘薫(ブライトン)を筆頭に堂安律(フライブルク)、久保建英(レアル・ソシエダ)のような自分の意見を遠慮なく口にできる面々がひしめいている。川辺駿(グラスホッパー)や大迫敬介(広島)とは共闘経験があるというものの、森保監督とも「ほとんど『初めまして』に近い状態」で、未知なる世界に身を投じることになる。 しかも、メディアやファンの数も広島にいる時とは比べ物にならない。そういった物々しい環境に戸惑うようだと日本を背負って戦い抜くことはできない。まずは堂々と自分を出し切るところからスタートしてもらいたい。 6月シリーズは15日のエルサルバドル戦(豊田)と20日のペルー戦(吹田)の2試合。1シーズンを戦い抜いた直後の欧州組は疲労があるため、プレー時間が制限されると見られる。その分、国内組にはチャンスが訪れるはずだ。 川村がボランチ、2列目のどちらで起用されるのか、誰と組むのかも全くの未知数だが、ピッチに立つ機会が訪れたら、持ち前のダイナミックさとアグレッシブさを遺憾なく発揮すべき。それが代表定着への第一歩となる。 大器の予感を漂わせる男には、見る者の度肝を抜くパフォーマンスを示し、強烈なインパクトを残してほしいものである。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> <span class="paragraph-title">【動画】川村拓夢、圧巻の50m独走ドリブルゴール!</span> <span data-other-div="movie"></span> <script>var video_id ="zC79w6MxPwo";var video_start = 431;</script><div style="text-align:center;"><div id="player"></div></div><script src="https://web.ultra-soccer.jp/js/youtube_autoplay.js"></script> 2023.06.05 19:30 Mon
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堂安、菅原のように欧州移籍のチャンスをつかめるのか?キャプテン・松木玖生に託される統率力と勝利という結果【新しい景色へ導く期待の選手/vol.12】

大会1カ月半前に突如として開催地がインドネシアからアルゼンチンに変更されたU-20ワールドカップ(W杯)。同じアジアから地球の裏側への変更ということで、日本は振り回される格好となったが、12日には選手21人全員が現地入り。15日にはU-20アルゼンチン代表とテストマッチを実施。21日(日本時間22日)のU-20セネガル戦(ラプラタ)を迎えることになる。 ビッグトーナメントは初戦が肝心。2022年カタールW杯でもファーストマッチでドイツを撃破し、勢いづいたのは記憶に新しいところだ。3月のAFC U-20アジアカップ(ウズベキスタン)でも初戦・中国戦で大苦戦したU-20日本代表だけに、今度は同じ轍を踏むわけにはいかない。最初から持てる力の全てを発揮していくことが肝要だ。 とはいえ、セネガルという相手は難敵だ。U-20W杯・5度目の出場となる彼らの最高成績は2015年ニュージーランド大会のベスト4。[4-5-1]を基本布陣とし、フィジカル能力は頭抜けている。キャプテンマークを巻く攻撃的MFのサンバ・ディアロ(ディナモ・キエフ)や中盤の統率役のミラン・カマラ(メス)らタレントも揃っていて、国際経験の少ない日本にとっては戦いづらい相手なのは間違いない。彼らを叩いて一気に波に乗れるか否か。そこに日本の命運がかかっていると言っても過言ではないだろう。 そのけん引役となるべき存在が松木玖生(FC東京)だろう。U-20アジアカップで主将として全5試合に出場し、サウジアラビア戦で2ゴールを挙げている男はこのチームの精神的支柱。高井幸大(川崎フロンターレ)、山根陸(横浜F・マリノス)らJ1で試合出場経験を積み重ねる選手が少ない中、松木はプロ1年目だった2022年からFC東京の主力として活躍。その実績は頭抜けている。冨樫剛一監督から絶対的信頼を寄せられるのも頷ける話なのだ。 ご存じの通り、青森山田高校3年時の3冠(高円宮杯、高校総体、高校選手権)達成など、プロ入り前からスケールの大きなMFとして注目されてきた男だが、最大の武器は強靭なメンタル。どんな苦境に直面しても、顔色1つ変えずに闘争心を押し出せるタフさを備えている。 今回の開催地変更に関しても「日本の逆(裏側)に行けるのはなかなかないこと。いい経験として捉えている」と涼しい顔。動じる様子を人前で見せることがほとんどない。そういうタフさと逞しさは世界で戦う上での大きなアドバンテージと言えるだろう。 野心をメラメラと燃やすところも、最近の若者とは一線を隠している部分。「今回は世界のスカウトの方が見に来ると思うんで、そういった人たちに注目されるようなプレーをしていきたい。チームが上に行けば行くほど注目度も上がっていくと思うので、まずは良い結果を残せるようにしたいです」と欧州移籍への道を切り開く覚悟でアルゼンチンに乗り込んでいる。 彼らの世代は高校3年間がコロナ禍真っ只中。2021年U-17W杯が中止になり、強豪クラブとテストマッチをする機会も持てず、海外経験を積むことが全くと言っていいほどできなかった。松木も青森山田高校時代に海外遠征を何度かしていたら、チェイス・アンリ(シュツットガルト)や福田師王(ボルシアMG)のようにダイレクトに欧州へ行く道を選んでいた可能性もあっただろう。 しかしながら、本人はまずJリーグでプロとしてのベースを築くことが重要だと考え、FC東京入りを選択した。それから1年半が経過し、長友佑都のような百戦錬磨のベテランから薫陶を受け、香川真司(セレッソ大阪)と移籍の話をするなど、次のステップを考える時期に来ているのは確かだ。 2017年韓国大会直後にフローニンヘンに赴いた堂安律(フライブルク)、2019年ポーランド大会直後にAZ入りした菅原由勢のように、欧州クラブからの好オファーを勝ち取るためにも、アルゼンチンでインパクトを残したいと熱望しているはず。だからこそ、わざわざメディアの前で「世界のスカウトが見に来る」といった発言をしたのだろう。 松木はボランチと2列目の両方をこなせて、得点力もある選手。FKやCKも蹴れる。そういったストロングを前面に押し出し、日本を勝利に導いてくれれば、日本の上位躍進も見えてくる。冨樫監督が掲げる「世界一」というのは壮大な目標ではあるが、小野伸二(北海道コンサドーレ札幌)らを擁した99年ナイジェリア大会で準優勝したように、U-20世代の大会は何が起きるか分からない。そういう意味でも楽しみは尽きないのだ。 2017年韓国大会の主力だった堂安、冨安健洋(アーセナル)、板倉滉(ボルシアMG)が5年後のW杯で日本の軸を担ったように、松木らの世代も将来のA代表をけん引しなければならない。それだけの底力があることを示してくれれば、日本サッカー界の未来も明るい。 1次リーグはセネガルを筆頭に、コロンビア、イスラエルという強豪揃いのグループに入っているが、とにかく初戦で良い入りを見せることだ。松木には卓越した統率力でチームを力強く引っ張ってほしいものである。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2023.05.17 11:30 Wed
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U-20日本代表で数少ない南米経験者。環境適応力を武器にゴールを取りまくる!/熊田直紀(FC東京)【新しい景色へ導く期待の選手/vol.11】

5月21日(日本時間22日)の初戦・セネガル戦を皮切りに、U-20ワールドカップ(W杯)のタフな戦いに挑むU-20日本代表。 今回は本番1か月前に開催国がインドネシアからアルゼンチンに変わるという予期せぬ事態に見舞われたが、冨樫剛一監督は「世界一の目標は下げません。今の若い選手たちは夢じゃなく目標として世界一を語っている。本気で目指します」と強調。小野伸二(札幌)や高原直泰(沖縄SV)ら傑出したタレントを揃えた99年ナイジェリア大会でも手の届かなかった頂点に上り詰めるべく、貪欲にトライしていく構えだ。 8、9日に2段階で発表されたメンバー21人は3月のAFC・U-20アジアカップ(ウズベキスタン)に参戦した面々がベース。欧州組のチェイス・アンリ(シュツットガルト)と福井太智(バイエルン)、福田師王(ボルシアMG)の3人が加わったものの、既存戦力中心の陣容と言っていい。 ただ、FW陣を見ると、主力の1人と位置づけられる坂本一彩(岡山)は長期離脱で4〜5月の公式戦に一度も出ていない。 エースナンバー10をつける北野颯太(C大阪)も公式戦でいまだ得点を奪えておらず、プロの壁にぶつかっている印象だ。 9日に追加招集された福田もこのチームではほとんどプレーした経験がなく、コンビネーションの部分で不安は拭えない。国際経験ではアドバンテージはあるものの、やはり未知数なのは確かだ。 彼らに比べると、3月のアジアカップで5ゴールを挙げて大会得点王に輝いた熊田直紀(FC東京)は計算できそうな存在だ。今季FC東京ではJ1・1試合、YBCルヴァンカップ3試合に出場しただけだが、3月26日の京都サンガF.C.戦でゴールを奪っている。長友佑都、森重真人らとともに日々、強度の高いトレーニングを積めているのもプラス要素だろう。 もう1つ、大きいのはU-20代表のキャプテン候補・松木玖生と共闘している点。フィジカル・メンタルに秀でる1つ年上のMFが近くにいることで、熊田は実力を発揮しやすい環境にいるのは確かだ。 「玖生君とはよく喋るし、ピッチに入ったら自分のことをしっかり見てくれるんで、すごく大きな存在だと思います」と熊田もしみじみ言う。2人の連係を冨樫監督も心強く感じているに違いない。 2004年生まれの熊田は福島県出身。エストレージャスFCに所属していた小学校6年の時に出場したフットサルの全国大会・バーモントカップでFC東京のスカウトの目に留まり、中学進学と同時にFC東京U-15むさし入り。中学3年の時にはクラブユース所属選手のオールスター戦に当たるメニコンカップ2019・日本クラブユースサッカー東西対抗戦にも参戦。イースト唯一のスコアラーにもなっている。 同年にはU-15日本選抜の一員としてブラジルにも遠征。今回ともにメンバーに名を連ねた松村晃助(法政大)とともに貴重な南米経験を積んでいる。ご存じの通り、翌2020年からのコロナ禍で彼らの世代は2年以上、海外遠征に行けなかった。北野や坂本ももちろん南米には行っていない。それだけに、熊田の経験値は大きな強みになるはずだ。 「開催地がアルゼンチンに変わって、飛行機がちょっとしんどいなと思いました(苦笑)。南米は芝とかグランドのコンディションが日本より全然悪いと思うので、そこにしっかりチームとして合わせていくことが大事ですね」 本人もこうコメントしていたが、丸1日がかりの長距離移動に時差、ガタガタのピッチに雑草のような長い芝生というのは、整った環境で育ってきた日本の若者たちにとって相当な負担だろう。その厳しさを身を持って経験してきた熊田のタフさと逞しさはイザという時に頼りになる。口数は多くない男だが、ピッチ上で大暴れしてくれれば理想的である。 「(U-20W杯で対戦するセネガル、コロンビア、イスラエルは)アジア予選で戦った相手よりも強く速い相手が揃っていると思う。自分としてはフィジカルが強みだと思っているので、そこで負けないようにしたい。今の日本は個々で剥がせる選手がサイドに多いんで、クロスの攻めも増えてくる。自分はヘディングも武器なんで生かしてゴールを奪えるようにしたいです」と本人も明確に自分の役割を描いている様子だ。 フィジカルに長けたセネガル、ボール扱いや球際のバトルに秀でるコロンビア、欧州2位のイスラエルは難敵揃いだが、彼らを倒さなければ先はない。本気で世界一をつかみにいくつもりなら、熊田がゴールという結果を残して、チーム全体を引っ張らなければいけない。アジアカップ得点王にはそれだけの重責が託されるのだ。 柳沢敦(鹿島ユース監督)や高原、堂安律(フライブルク)、久保建英(レアル・ソシエダ)といったU-20W杯を経てA代表、海外へと羽ばたいた先輩の系譜を継ぐべく、銀髪にイメチェンした187㎝の大型FWには大ブレイクを期待したいものである。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2023.05.09 21:00 Tue
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2026年北中米W杯を本気で狙う! U-22代表期待の大学生FWが見据える「三笘ロード」/佐藤恵允(明治大学)【新しい景色へ導く期待の選手/vol.10】

2024年パリ五輪まであと1年あまり。新型コロナウイルス感染拡大で1年延期となった東京五輪とは違い、日本代表の強化期間は3年しかない。 2021年12月の大岩剛監督就任後、2022年6月のAFC U-23アジアカップ(ウズベキスタン)や同年9・11月、2023年3月の3度の欧州遠征などに赴いて強化を続けているが、フルメンバーのA代表を経験したのはバングーナガンデ佳史扶(FC東京)と半田陸(G大阪)くらいだ。 攻撃陣の方は2022年カタールW杯の主力だった伊東純也(スタッド・ランス)、鎌田大地(フランクフルト)、三笘薫(ブライトン)、堂安律(フライブルク)ら欧州組がひしめいており、若手アタッカー陣にとっては非常に高い壁というしかない。 とはいえ、本当の勝負は3年後。現時点でA代表経験がなかったとしても、突き抜けてくる人材がいないとも限らない。我々の全く予期せぬ人材が頭角を現すかもしれない。98年フランス大会一世を風靡した中田英寿、2002年日韓大会で2ゴールをマークした稲本潤一(南葛SC)、2010年南アフリカ大会で世界の度肝を抜いた本田圭佑といった過去のスターたちも、W杯3年前の時点では数多くいる候補の1人でしかなかったのだ。 今やトップスターに上り詰めた三笘にしても、3年前の2019年は筑波大学の学生だった。川崎フロンターレでプロキャリアをスタートさせたのは2020年。最初は体力面や守備力の課題に直面し、先発で使ってもらえないことが多かった。A代表デビューは東京五輪後の2021年11月のオマーン戦(マスカット)。それからわずか1年あまりで日本のエースに躍り出たのだから、凄まじい成長曲線には驚かされるばかりだ。 その「三笘ロード」を歩もうとパリ世代の面々も虎視眈々と狙っているに違いない。 候補者筆頭と目される1人が、目下、明治大学4年の佐藤恵允(けいん)だろう。大学2年だった2021年11月にU-22日本代表の1人として1月のAFC U-23アジアカップ予選(福島)に参戦してから、彼はコンスタントに日の丸を背負ってきた。大岩監督就任後も昨年のウズベキスタン、9月の欧州遠征に参戦。今年3月のU-22ドイツ・ベルギー2連戦にはいずれも出場し、2戦連発という離れ業をやってのけたのだ。 そして4月23〜26日にかけて行われたU-22代表候補合宿にも参加。今回は新顔18人を加えた28人での活動となったが、実績面で頭抜けている佐藤の存在感は圧倒的で、最終日の11対11の紅白戦でもゴール。常連メンバーの意地とプライドを見せつけた。 「僕はこれまで代表にコンスタントに選ばせていただいている身。今まで積み重ねてきたシームレス(な攻守の連動)だったり、インテンシティってところを自分が示していかないといけない。それに攻撃の選手なんで、得点に絡む仕事をしないと生き残っていけない。そこはもっと磨いていきたいです」と本人は強調していたが、最後まで高い意識を見せつける形になった。 コロンビア人の父、日本人の母を持つ佐藤は2001年7月生まれ。東京都世田谷区出身で、実践学園高校から2020年に明治大学に進んだ。明治では入学当初は試合に出られず、苦い思いも味わったというが、栗田大輔監督から口を酸っぱくして言われた「人間性の部分」を大事にしながら、ここまで這い上がってきたという。 「自分の中で大学に入ってからテーマにしていたのは『素直な気持ち』と『謙虚さ』。あとは『気を使える選手』になりたいと思って、ここまで努力してきました」 「まずは人の意見を聞いて、それが自分にとって必要なのかどうかを考え、噛み砕いて落とし込んでいく。その作業が大切だとすごく感じたし、それを繰り返してきました」 「1つの例が守備。明治に入った頃は守備が全然ダメだと言われて悩んだんですけど、今では自分の特徴になっている。大岩監督も前線からチームを助ける泥臭い守備と対人の強さが評価されて、ここに呼んでもらっていると思います」と佐藤は大学生らしい冷静かつ客観的な分析力で自己評価をしてみせた。 こういった表現力の高さは三笘に通じる部分がある。サイドアタッカーでドリブル突破が武器という共通点もあるため、「ネクスト三笘」という呼び声も高い。 「三笘さんは同じ大学経由の選手というのもありますし、ポジションも同じ。1対1の仕掛けとか相手との駆け引きが非常にうまいんで、すごく参考になります。自分は1年後のパリ五輪に行って、2026年北中米W杯に出るのが目標ですけど、そのためには三笘さんを超えないといけない。そうなるような日々の積み重ねをしていかないといけないと思っています」と彼は語気を強めていた。 壮大な夢を現実にするためにも、明治大学からどういうルートを歩むかが肝心。彼のところには数多くのJクラブからオファーが殺到しているが、本人は「プロ1年目で活躍できる環境」というのを第一に選択していくつもりだ。 確かに今のA代表の軸を担う伊東、守田英正(スポルティング・リスボン)、三笘ら大卒選手たちはプロ1年目から圧倒的なインパクトを残していた。そういう人材でなければW杯に行けないということだ。 賢い佐藤は厳しい現実をよく分かっているはず。まずは最適な進路を選択し、U-22代表での地位を固めていくことが肝心である。ここからの飛躍が大いに楽しみだ。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2023.04.27 18:30 Thu
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セネガル、コロンビア、イスラエルと同組。U-20W杯で貴重なJ経験を発揮したい山根陸【新しい景色へ導く期待の選手/vol.9】

5月20日の開幕1カ月前に、突如として開催地がインドネシアからアルゼンチンに変わるという前代未聞の事態が起きた2023年U-20ワールドカップ(W杯)。その組み合わせ抽選が21日に行われ、日本はセネガル、コロンビア、イスラエルと同組に入った。 21日の初戦、24日の第2戦・コロンビア戦はブエノスアイレスから近郊のラプラタが会場で、27日の第3戦・イスラエル戦はチリ国境に近いメンドーサに移動することになる。 とはいえ、年代別代表を含めた日本代表がアルゼンチンで国際大会を戦うのは、2001年U-20W杯(当時はワールドユースと呼ばれていた)以来。2011年コパ・アメリカも当初、参加予定だったが、東日本大震災のためにキャンセル。それだけ日本サッカー協会(JFA)の経験値が乏しいということだ。 22年前のU-20W杯の1次リーグの会場はロサリオで、JFAの小野剛技術委員会副委員長がコーチを務めていたが、当時とは環境や国情も大きく変化していると見られるため、やはり不安要素は少なくない。 「時差調整には通常、1時間当たり1日を要すると言われています。-2時間のインドネシアだったら問題はないのですが、アルゼンチンの場合は-12時間。できれば10日は現地で調整したいところです。が、5月12〜14日のリーグ戦前の選手招集は難しい。頭の痛いところです」と冨樫剛一監督は頭を抱えていた。 しかも、今回のメンバーである2003〜2004年生まれの面々はコロナの影響でユース年代での海外経験が極端に少ない。JFAエリートプログラムU-14やUー15日本代表などで欧州やUAEなどに遠征経験のある北野颯太(セレッソ大阪)も「南米は行ったことがない」と話していた。 「彼らの世代は何も知らない分、思い切って戦える」と冨樫監督も前向きにコメントしていたが、未知なる戦いになるのは間違いない。 3月のAFC U-20アジアカップ(ウズベキスタン)で副キャプテンとして主将の松木玖生(FC東京)をサポートしつつ、中盤を精力的に支えた山根陸(横浜F・マリノス)にとっても、今回が事実上の国際舞台デビューとなるのだ。 「対戦相手はレベル高い国ばかり。イスラエルは欧州で準優勝しているし、未知なる国。コロンビアも昨年のモーリス・レベロ(・トーナメント=フランス)でやられている。セネガルはA代表含めて身体能力が非常に高い。本当に楽しみですし、こういう強い相手とやるために頑張ってきたので、自分たちの積み重ねてきたものをぶつけて、全力で勝ちにいきたいなと思います」と彼は力を込めていた。 U-20代表でもボランチを主戦場とする彼だが、最近の横浜FMでは右サイドバック(SB)でプレーする機会が多い。持ち前の冷静さや戦術眼、攻撃センスを武器に、4月8日の横浜FCとのダービー、15日の湘南ベルマーレ戦などでは良い味を出していた。 しかしながら、22日の首位・ヴィッセル神戸との大一番では、ドリブル突破に秀でる汰木康也とのマッチアップに苦戦。前半19分には自身のヘッドでのバックパスが大きくなり、GK一森純がコントロールできず、汰木に飛び出されて決められるというミスを犯してしまった。 「汰木選手がどこを通るのか、自分の近くを通るのか、外を回られているのかとかが全然分からなかったですね。あのシーンは前にしっかりクリアしておくべきだったと思います」と本人は反省しきりだった。 しかも9分後の大迫勇也の2点目も、山根が汰木にクロスを上げさせた結果、決められている。2失点に絡むというのは本人にとってもショックが大きかったが、タテ関係を形成する水沼宏太らが声をかけてくれたことで奮起。気を取り直すことができた。 そこから山根は勇敢さとアグレッシブさを取り戻し、前への推進力を出せるようになる。横浜前半のうちに2点のビハインドを跳ね返して同点に追いついたこともメンタル的には大きかったのだろう。そして最終的にはアンデルソン・ロペスの決勝点が生まれ、3-2で逆転勝利。19歳の若武者も心から安堵した様子だった。 「『迷惑をかけたな』という気持ちが大きいですね。この経験が後になっていい学びだったと思えるようにつなげていくしかないです。U-20W杯に行ってもうまくいかない時間帯というのは必ずある。神戸戦で後半立て直せたように、早い段階で修正することが重要だと思います。この試合で周りが僕を助けてくれたように、自分がチームメートを助けられるようにならないといけないと思います」 山根は神妙な面持ちで語ったが、同年代ではリーダー格の彼は声出しや統率力で仲間を鼓舞しなければいけない立場。そう自覚できたことは大きいと言っていい。 ポジションに関してはボランチがメインだろうが、屋敷優成(大分)以外の右SB要員が手薄ということもあり、U-20W杯でもクラブと同じようにこの位置で起用される可能性もある。その場合、汰木のように突破力のある相手を確実に封じることが肝要。神戸戦の教訓が必ず生きてくるはずだ。 2017年韓国大会の後には堂安律(フライブルク)、2019年ポーランド大会の後にも菅原由勢(AZ)や中村敬斗(LASKリンツ)らが欧州クラブからオファーを受け、海外挑戦に踏み切り、数年後のA代表入りをつかんでいる。U-20W杯というのはそれだけ重要度の高い大会なのだ。山根も「目の前に転がるビッグチャンスをつかみ取るんだ」という貪欲さと泥臭さを強く押し出すべき。目の色を変えて突き進む彼の姿をぜひ見たい。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2023.04.24 13:30 Mon
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