長谷部誠を思わせる遠藤航が見せつけた分析力と対応力、日本代表の欠かせない軸に/日本代表コラム
2020.11.14 15:00 Sat
2カ月連続でのヨーロッパ組のみでの欧州遠征。11月シリーズの初戦となったパナマ代表戦は、1-0で勝利を収めた。約1年ぶりの活動となった10月ではアフリカ勢のカメルーン代表、コートジボワール代表を相手に2試合とも無失点。結果は1勝1分けで終えていたが、パナマ戦に勝利し2連勝となった。
2年前に対戦した時とは監督もメンバーも変わっているパナマ代表。日本はキックオフから良い入りを見せたが、徐々にパナマが日本のプレスに慣れると、日本は押し込まれていないながらも窮屈な戦いを強いられた。その中で目立ったのが、後半から入ったMF遠藤航(シュツットガルト)だった。
◆スタンドから分析していた前半
この試合はMF柴崎岳(レガネス)とMF橋本拳人(FCロストフ)の2人がボランチで先発出場。橋本は夏にFC東京からロシアへと移籍すると、1つ前のポジションで起用され得点力が開花。ここまで5ゴールを記録するなど、好調を維持していた。
10月の活動は渡航制限の影響から招集外となったが、この試合では先発。持ち味であるボール奪取は時折見せたものの、バイタルエリアで相手を自由にさせてしまうシーンが散見された。
その理由について、スタンドから見ていた遠藤が試合後に「拳人も間で受けていましたけど、1ボランチ気味だったので捕まりやすかったかなと思う」とコメント。ボランチ2人の関係性が難しさを生んでいたと分析した。
この試合では通常の[4-2-3-1]ではなく、3バックを採用した[3-4-2-1]で臨んだ日本。守備ではウイングバックが下がって5バック気味となり、ボランチの2人がその前に並ぶ形となった。
しかし、攻撃時は、3バックの前に橋本、柴崎もう1列前にポジションを取り、[3-3-1-2-1]のような形に。しかし、シャドーに入ったMF久保建英(ビジャレアル)とMF三好康児(アントワープ)が高い位置を取れなかったため、柴崎の位置が苦しい形に。そして、橋本の脇をパナマに使われるシーンが増えていった。
遠藤は「前半上から見ていて前につければチャンスになるなと。拓実やシャドーは空いてるなと思った」としたが、柴崎は距離が近すぎて使いずらい状況に。そのため「2ボランチは横並びの方がボールを動かしやすいなというイメージだった」と縦関係ではなく、横に並ぶべきだと感じていたことを明かした。
◆ピッチ内でスカウティング能力を発揮
そう語った遠藤は、ハーフタイムで橋本に代わって登場。すると、すぐさま日本のプレーが激変する。
まず第一に、ブンデスリーガでトップのデュエル勝利数を誇る遠藤の持ち味が発揮。パナマの選手からのボール奪取を行うだけでなく、苦しくなりそうな場面には常に遠藤が顔を出してピンチを未然に防いでいた。
さらにテンポの良さも1つ大きく変化した要因だ。後方からのビルドアップを行う日本だが、最終ラインがボールを持つとペースダウン。ボランチに一度つけても、じっくりと前線やサイドの状況を見て展開していくことが多い。
もちろんその戦い方が悪いわけではなく、遅攻という点では柴崎の展開力や試合を読む力も大いに発揮されるのだが、遠藤が試みたのはテンポをアップさせることだった。
遠藤はパスを供給する時の判断材料として「味方のポジションも見ているんですが、相手がどうプレスをかけるかを特に注意しています」と、相手の守り方に合わせた判断をすると語った。「例えば、3バックのナオ(植田直通)がボールを持った時に、ボールサイドのボランチは掴まれているけど、逆の僕はフリーだたり。相手のポジションを見てプレーすることを意識している」とコメントした。
聞こえがいいということではなく、常にピッチ上で臨機応変に対応することを考えている遠藤。ポイントは、「相手の位置、味方の位置、自分の位置を把握することが大事だと思います」と、全ての立ち位置が決め手となると明かした。
このプレーはブンデスリーガで揉まれていることも大きく関係する。フィジカル的に優れた相手と常日頃対峙する上では、デュエルの強さ=フィジカルの強さだけでなく、判断力に優れていなければ、デュエルで勝つことはできない。遠藤は日々積み上げたものを、最大限ピッチで表現したということだ。
決勝ゴールとなった南野のPKに繋がるプレーでは、遠藤の起点から久保のスルーパスに繋がっていた。久保はこのシーンについて「相手もしっかりプレスに来ていましたが、判断の緩みがあって、遠藤選手から自分が受けたい位置に良いパスが来た」と語っており、遠藤のパスがきっかけだったとコメント。一方の遠藤は、「僕がタケにつけたところは特に難しいことはしていないです」と、普通のプレーだと強調。これも、ブンデスリーガで掴んだ自身が影響していると言えるだろう。
久保は遠藤のプレーについて「球際の強さと、起点のシーンでは早いパスを出してくれたので、一緒にやっていて余裕があると感じた」とコメント。「クラブで結果を出して自信を持ってきていると思うので、自分もそういう自信を吸収したいと思います」と、チームメイトでも自信を感じ取ったようだ。
◆ボランチの外せない軸に成長
森保一監督はこの試合の後半から遠藤を使うことは決めていたと試合後にコメント。その効果については「ディフェンスラインから、サイドからボールを受けて起点となり、流れが変わった」と評価。さらに「バランスの部分でもセカンドボールを拾えたり、球際の部分でも全体の良さが出せるようになったと思う」とし、個人の良さだけじゃなく、チーム全体へプラスの効果をもたらせたことを評価した。
日本代表のボランチといえば、長年キャプテンとしてプレーしたMF長谷部誠(フランクフルト)、そして代表最多キャップを誇るMF遠藤保仁(ジュビロ磐田)が挙げられるだろう。
バランスの取れた2人もメンバーから外れた中、ゲームメーカーとして柴崎がチームを支えてきた。ゲームを読む力で攻守にわたって高い能力を発揮している柴崎だが、ここに来て遠藤がそれを凌駕するパフォーマンスを見せている。
遠藤は「ブンデスでやっていたことが出せたということ」と、日頃のプレーをしただけだとコメントしたが、そこのレベルをしっかりと表現できることは、大きく成長していることの証だろう。
それは、同じブンデスリーガで外国人選手として最多出場、さらに今季のブンデスリーガでは最も長くプレーする選手としてドイツで成長を続けてきた長谷部を思い起こさせる。チームのバランスを取り、攻撃と守備を司る遠藤の力は、日本代表の飛躍には欠かせなくなりそうだ。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
◆南野のPKで勝利!日本代表vsパナマ代表 ハイライト
2年前に対戦した時とは監督もメンバーも変わっているパナマ代表。日本はキックオフから良い入りを見せたが、徐々にパナマが日本のプレスに慣れると、日本は押し込まれていないながらも窮屈な戦いを強いられた。その中で目立ったのが、後半から入ったMF遠藤航(シュツットガルト)だった。
◆スタンドから分析していた前半
この試合はMF柴崎岳(レガネス)とMF橋本拳人(FCロストフ)の2人がボランチで先発出場。橋本は夏にFC東京からロシアへと移籍すると、1つ前のポジションで起用され得点力が開花。ここまで5ゴールを記録するなど、好調を維持していた。
10月の活動は渡航制限の影響から招集外となったが、この試合では先発。持ち味であるボール奪取は時折見せたものの、バイタルエリアで相手を自由にさせてしまうシーンが散見された。
その理由について、スタンドから見ていた遠藤が試合後に「拳人も間で受けていましたけど、1ボランチ気味だったので捕まりやすかったかなと思う」とコメント。ボランチ2人の関係性が難しさを生んでいたと分析した。
この試合では通常の[4-2-3-1]ではなく、3バックを採用した[3-4-2-1]で臨んだ日本。守備ではウイングバックが下がって5バック気味となり、ボランチの2人がその前に並ぶ形となった。
しかし、攻撃時は、3バックの前に橋本、柴崎もう1列前にポジションを取り、[3-3-1-2-1]のような形に。しかし、シャドーに入ったMF久保建英(ビジャレアル)とMF三好康児(アントワープ)が高い位置を取れなかったため、柴崎の位置が苦しい形に。そして、橋本の脇をパナマに使われるシーンが増えていった。
遠藤は「前半上から見ていて前につければチャンスになるなと。拓実やシャドーは空いてるなと思った」としたが、柴崎は距離が近すぎて使いずらい状況に。そのため「2ボランチは横並びの方がボールを動かしやすいなというイメージだった」と縦関係ではなく、横に並ぶべきだと感じていたことを明かした。
◆ピッチ内でスカウティング能力を発揮
そう語った遠藤は、ハーフタイムで橋本に代わって登場。すると、すぐさま日本のプレーが激変する。
まず第一に、ブンデスリーガでトップのデュエル勝利数を誇る遠藤の持ち味が発揮。パナマの選手からのボール奪取を行うだけでなく、苦しくなりそうな場面には常に遠藤が顔を出してピンチを未然に防いでいた。
さらにテンポの良さも1つ大きく変化した要因だ。後方からのビルドアップを行う日本だが、最終ラインがボールを持つとペースダウン。ボランチに一度つけても、じっくりと前線やサイドの状況を見て展開していくことが多い。
もちろんその戦い方が悪いわけではなく、遅攻という点では柴崎の展開力や試合を読む力も大いに発揮されるのだが、遠藤が試みたのはテンポをアップさせることだった。
遠藤はパスを供給する時の判断材料として「味方のポジションも見ているんですが、相手がどうプレスをかけるかを特に注意しています」と、相手の守り方に合わせた判断をすると語った。「例えば、3バックのナオ(植田直通)がボールを持った時に、ボールサイドのボランチは掴まれているけど、逆の僕はフリーだたり。相手のポジションを見てプレーすることを意識している」とコメントした。
聞こえがいいということではなく、常にピッチ上で臨機応変に対応することを考えている遠藤。ポイントは、「相手の位置、味方の位置、自分の位置を把握することが大事だと思います」と、全ての立ち位置が決め手となると明かした。
このプレーはブンデスリーガで揉まれていることも大きく関係する。フィジカル的に優れた相手と常日頃対峙する上では、デュエルの強さ=フィジカルの強さだけでなく、判断力に優れていなければ、デュエルで勝つことはできない。遠藤は日々積み上げたものを、最大限ピッチで表現したということだ。
決勝ゴールとなった南野のPKに繋がるプレーでは、遠藤の起点から久保のスルーパスに繋がっていた。久保はこのシーンについて「相手もしっかりプレスに来ていましたが、判断の緩みがあって、遠藤選手から自分が受けたい位置に良いパスが来た」と語っており、遠藤のパスがきっかけだったとコメント。一方の遠藤は、「僕がタケにつけたところは特に難しいことはしていないです」と、普通のプレーだと強調。これも、ブンデスリーガで掴んだ自身が影響していると言えるだろう。
久保は遠藤のプレーについて「球際の強さと、起点のシーンでは早いパスを出してくれたので、一緒にやっていて余裕があると感じた」とコメント。「クラブで結果を出して自信を持ってきていると思うので、自分もそういう自信を吸収したいと思います」と、チームメイトでも自信を感じ取ったようだ。
◆ボランチの外せない軸に成長
森保一監督はこの試合の後半から遠藤を使うことは決めていたと試合後にコメント。その効果については「ディフェンスラインから、サイドからボールを受けて起点となり、流れが変わった」と評価。さらに「バランスの部分でもセカンドボールを拾えたり、球際の部分でも全体の良さが出せるようになったと思う」とし、個人の良さだけじゃなく、チーム全体へプラスの効果をもたらせたことを評価した。
日本代表のボランチといえば、長年キャプテンとしてプレーしたMF長谷部誠(フランクフルト)、そして代表最多キャップを誇るMF遠藤保仁(ジュビロ磐田)が挙げられるだろう。
バランスの取れた2人もメンバーから外れた中、ゲームメーカーとして柴崎がチームを支えてきた。ゲームを読む力で攻守にわたって高い能力を発揮している柴崎だが、ここに来て遠藤がそれを凌駕するパフォーマンスを見せている。
遠藤は「ブンデスでやっていたことが出せたということ」と、日頃のプレーをしただけだとコメントしたが、そこのレベルをしっかりと表現できることは、大きく成長していることの証だろう。
それは、同じブンデスリーガで外国人選手として最多出場、さらに今季のブンデスリーガでは最も長くプレーする選手としてドイツで成長を続けてきた長谷部を思い起こさせる。チームのバランスを取り、攻撃と守備を司る遠藤の力は、日本代表の飛躍には欠かせなくなりそうだ。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
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