6番+8番+10番。鎌田大地がボリビア戦で示した“シン・ボランチ像”

2025.11.19 00:45 Wed
Getty Images
ゴール前で輝く決定力と、中盤を支える戦術眼。その両方を併せ持つ“新しいボランチ像”を、日本代表のMF鎌田大地がボリビア代表戦で体現した。開始4分、MF久保建英のクロスを胸で収め、左足で冷静に流し込んだ先制点。ボランチでありながらペナルティエリアへ侵入し、フィニッシュまで持ち込む――。クリスタルパレスと日本代表では求められる役割は異なる。それでも鎌田は、6番・8番・10番をひとつに束ねた“自分だけのポジション”を研ぎ澄ませている。

■“6番”の位置から、ペナルティエリアへ

ボリビア戦の開始4分。試合は、MF鎌田大地が切り拓いた。
MF久保建英が右サイドで深くえぐる。相手がゴール前へ引き寄せられる一瞬の隙を、鎌田は逃さなかった。ペナルティーエリアにスッと入っていき、浮き球のクロスを胸でコントロールすると、左足で逆サイドネットへ流し込んだ。

「チームとして、あそこが空くっていうのは分析でもやっていた。ボランチですけど、ああいうところに何回か入っていくことが大事だと思っていたので。ボールが来てシュートチャンスができたのは良かったかなと」
クリスタルパレスではリスク管理が徹底され、センターラインより前に踏み込む回数は限られる。しかし日本代表では、森保一監督の戦術が鎌田に自由度を与えている。

「自分がある程度自由に前に行けるような、6番だけじゃなくて8番や10番くらいの役割までできる方が、やっていて躍動感はある。そっちの方が自分には合っていると思いますし」

相手の守備ラインが一歩下がった瞬間、鎌田は3列目の位置からスッと前へ出ていき、いつの間にか最前線に顔を出す。ボランチでありながらフィニッシュまで関与できる稀有な才能が、日本の攻撃に奥行きをもたらす。先制点は、その象徴だった。

■自由と責任の狭間で描く“シン・ボランチ像”

鎌田のプレーは、単なる攻撃的ボランチではない。試合の状況に応じて6番(ボランチ)にも8番(インサイドハーフ)にも10番(トップ下)にもなる。

「パレスはボランチがリスク管理で、余ってる選手を捕まえたり、後ろ5枚で守る形。こっち(日本代表)はもっと攻撃に関われる。やり方の違いが大きいと思います」

その言葉通り、ボリビア戦では攻撃でも守備でも表情を変えた。後半、相手のカウンターを鎌田がつぶした場面は象徴的だった。厳しいプレスを受け続けた前半の疲労が残る中でも、最後のところで身体を投げ出し、相手の芽を摘んだ。

ガーナ戦をコンディション不良で欠場したものの、ボリビア戦で本来の実力を示した。

「しっかりプレーできるレベルには戻ってきているので、そこは問題なかったと思います」

守備強度とゲームメイク、そして得点力。これらを同時に要求されるのは酷にも思えるが、鎌田はその領域に自ら踏み込んでいる。

この日のミックスゾーンでは、鎌田らしい“脱力感”ある一幕も。

「ゴールの後に森保さんのところに行こうとチームで話していたそうですが?」という質問を受けた時のこと。

それまで淡々と話していた鎌田の表情がゆるむ。

「僕は聞いてなかったんで。集中していたので、全然頭になくて。(森保監督に)申し訳ないというか……(笑)」

周囲に笑いが起きる。プレッシャーの中にあっても自然体でいられること。それもまた、鎌田の強みだろう。

チーム内のポジション争いは激しい。MF佐野海舟をはじめ、鎌田の主戦場にもライバルが台頭し、代表チームは新しいフェーズへと進んでいる。ただ、鎌田には慢心も不安もない。

「日本人選手は頭が良くて、どのポジションでもある程度できる選手が育っている。監督にとっても理想的じゃないですかね」

6番+8番+10番。ボランチの概念を超えた鎌田が、森保ジャパンをさらなる高みへ導いていく。

取材・文=北健一郎

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新シーズンに臨む鎌田が“神頼み” 滝をバックにした1枚には先輩・原口が「一回滝に打たれた方がいいよ」と一言

フランクフルトの日本代表MF鎌田大地が新シーズンの活躍を誓った。 鎌田は2021-22シーズン、フランクフルトで公式戦46試合に出場し9ゴール4アシストをマーク。5ゴールを挙げたヨーロッパリーグ(EL)ではチームの優勝にも大きく貢献した。 クラブでのシーズンを終えた後には、日本代表の一員として6月の親善試合にも参加し、3試合に出場していた。 束の間のオフを過ごしていた鎌田だが、自身のインスタグラムを更新。「休みは終わり。がんばろう」と綴り、休暇を終えて再びチームへと戻るようだ。 そしてオフの最後にはお参り。「いつも通り願ってきました。今シーズンも頑張ります」とし、高知県の龍王院を訪れ、パーカーのフードを被ったラフな格好で滝本不動尊や白龍観世音菩薩で手を合わせる姿や水が流れ落ちる滝をバックにポーズを取った写真などを投稿している。 新シーズンの活躍を祈った鎌田だが、日本代表の先輩MF原口元気(ウニオン・ベルリン)からは「一回滝に打たれた方がいいよ」と一言。鎌田は「一緒にね」と上手くかわしている。 <span class="paragraph-title">【写真】ラフな格好でお参りする鎌田大地</span> <span data-other-div="movie"></span> <blockquote class="instagram-media" data-instgrm-captioned data-instgrm-permalink="https://www.instagram.com/p/Cfma0fADjbr/?utm_source=ig_embed&amp;utm_campaign=loading" data-instgrm-version="14" style=" background:#FFF; border:0; border-radius:3px; box-shadow:0 0 1px 0 rgba(0,0,0,0.5),0 1px 10px 0 rgba(0,0,0,0.15); margin: 1px; max-width:540px; min-width:326px; padding:0; width:99.375%; width:-webkit-calc(100% - 2px); width:calc(100% - 2px);"><div style="padding:16px;"> <a href="https://www.instagram.com/p/Cfma0fADjbr/?utm_source=ig_embed&amp;utm_campaign=loading" style=" background:#FFFFFF; line-height:0; padding:0 0; text-align:center; text-decoration:none; width:100%;" target="_blank"> <div style=" display: flex; flex-direction: row; align-items: center;"> <div style="background-color: #F4F4F4; border-radius: 50%; flex-grow: 0; height: 40px; margin-right: 14px; width: 40px;"></div> <div style="display: flex; flex-direction: column; flex-grow: 1; justify-content: center;"> <div style=" background-color: #F4F4F4; border-radius: 4px; flex-grow: 0; height: 14px; margin-bottom: 6px; width: 100px;"></div> <div style=" background-color: #F4F4F4; border-radius: 4px; flex-grow: 0; height: 14px; width: 60px;"></div></div></div><div style="padding: 19% 0;"></div> <div style="display:block; height:50px; margin:0 auto 12px; width:50px;"><svg width="50px" height="50px" viewBox="0 0 60 60" version="1.1" xmlns="https://www.w3.org/2000/svg" xmlns:xlink="https://www.w3.org/1999/xlink"><g stroke="none" stroke-width="1" fill="none" fill-rule="evenodd"><g transform="translate(-511.000000, -20.000000)" fill="#000000"><g><path d="M556.869,30.41 C554.814,30.41 553.148,32.076 553.148,34.131 C553.148,36.186 554.814,37.852 556.869,37.852 C558.924,37.852 560.59,36.186 560.59,34.131 C560.59,32.076 558.924,30.41 556.869,30.41 M541,60.657 C535.114,60.657 530.342,55.887 530.342,50 C530.342,44.114 535.114,39.342 541,39.342 C546.887,39.342 551.658,44.114 551.658,50 C551.658,55.887 546.887,60.657 541,60.657 M541,33.886 C532.1,33.886 524.886,41.1 524.886,50 C524.886,58.899 532.1,66.113 541,66.113 C549.9,66.113 557.115,58.899 557.115,50 C557.115,41.1 549.9,33.886 541,33.886 M565.378,62.101 C565.244,65.022 564.756,66.606 564.346,67.663 C563.803,69.06 563.154,70.057 562.106,71.106 C561.058,72.155 560.06,72.803 558.662,73.347 C557.607,73.757 556.021,74.244 553.102,74.378 C549.944,74.521 548.997,74.552 541,74.552 C533.003,74.552 532.056,74.521 528.898,74.378 C525.979,74.244 524.393,73.757 523.338,73.347 C521.94,72.803 520.942,72.155 519.894,71.106 C518.846,70.057 518.197,69.06 517.654,67.663 C517.244,66.606 516.755,65.022 516.623,62.101 C516.479,58.943 516.448,57.996 516.448,50 C516.448,42.003 516.479,41.056 516.623,37.899 C516.755,34.978 517.244,33.391 517.654,32.338 C518.197,30.938 518.846,29.942 519.894,28.894 C520.942,27.846 521.94,27.196 523.338,26.654 C524.393,26.244 525.979,25.756 528.898,25.623 C532.057,25.479 533.004,25.448 541,25.448 C548.997,25.448 549.943,25.479 553.102,25.623 C556.021,25.756 557.607,26.244 558.662,26.654 C560.06,27.196 561.058,27.846 562.106,28.894 C563.154,29.942 563.803,30.938 564.346,32.338 C564.756,33.391 565.244,34.978 565.378,37.899 C565.522,41.056 565.552,42.003 565.552,50 C565.552,57.996 565.522,58.943 565.378,62.101 M570.82,37.631 C570.674,34.438 570.167,32.258 569.425,30.349 C568.659,28.377 567.633,26.702 565.965,25.035 C564.297,23.368 562.623,22.342 560.652,21.575 C558.743,20.834 556.562,20.326 553.369,20.18 C550.169,20.033 549.148,20 541,20 C532.853,20 531.831,20.033 528.631,20.18 C525.438,20.326 523.257,20.834 521.349,21.575 C519.376,22.342 517.703,23.368 516.035,25.035 C514.368,26.702 513.342,28.377 512.574,30.349 C511.834,32.258 511.326,34.438 511.181,37.631 C511.035,40.831 511,41.851 511,50 C511,58.147 511.035,59.17 511.181,62.369 C511.326,65.562 511.834,67.743 512.574,69.651 C513.342,71.625 514.368,73.296 516.035,74.965 C517.703,76.634 519.376,77.658 521.349,78.425 C523.257,79.167 525.438,79.673 528.631,79.82 C531.831,79.965 532.853,80.001 541,80.001 C549.148,80.001 550.169,79.965 553.369,79.82 C556.562,79.673 558.743,79.167 560.652,78.425 C562.623,77.658 564.297,76.634 565.965,74.965 C567.633,73.296 568.659,71.625 569.425,69.651 C570.167,67.743 570.674,65.562 570.82,62.369 C570.966,59.17 571,58.147 571,50 C571,41.851 570.966,40.831 570.82,37.631"></path></g></g></g></svg></div><div style="padding-top: 8px;"> <div style=" color:#3897f0; 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overflow:hidden; padding:8px 0 7px; text-align:center; text-overflow:ellipsis; white-space:nowrap;"><a href="https://www.instagram.com/p/Cfma0fADjbr/?utm_source=ig_embed&amp;utm_campaign=loading" style=" color:#c9c8cd; font-family:Arial,sans-serif; font-size:14px; font-style:normal; font-weight:normal; line-height:17px; text-decoration:none;" target="_blank">Eintracht Frankfurt 15 鎌田 大地(@kamadadaichi)がシェアした投稿</a></p></div></blockquote> <script async src="//www.instagram.com/embed.js"></script> 2022.07.05 11:50 Tue
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選手採点&寸評:日本代表 5-0 シリア代表【2026W杯アジア2次予選】

11日、2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選の最終節、日本代表vsシリア代表がエディオンピースウイング広島で行われ、5-0で日本が勝利。6連勝、6連続クリーンシートで2次予選を終えた。 超WSの選手採点と寸評は以下の通り。 ▽日本代表採点[3-4-2-1] <div style="text-align:center;"><img src="https://image.ultra-soccer.jp/1200/img/2024/fom20240611jpn_syr_tw.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:right;font-size:0.9em;" id="cws_ad">©︎超ワールドサッカー<hr></div> ※採点は10点満点。及第点は「5.5」、「0.5」刻みで評価 ※出場時間が15分未満の選手は原則採点なし GK 12 大迫敬介 5.5 前半はほとんどプレー機会がなかった。 (→23 谷晃生 -) 出場時間が短く採点はなし。 DF 4 板倉滉 6.0 前半に入れ替わられたピンチも落ち着いて対応。集中力が高い。4バックになっても安定した対応。試合中に逆立ちで沸かせる。 16 町田浩樹 5.5 空中戦で強さを見せる。一度入れ替わられたが、それ以外は安定。CKからは惜しいヘディングも。 22 冨安健洋 6.5 間違えない対応。後半は右サイドバックに入り、高いポジションも取り攻撃に積極的に参加。遠藤交代後はキャプテンマーク。 MF 6 遠藤航 6.0 バランスを見た的確なポジショニング。ビルドアップも落ち着いていた。しっかりと中盤をオーガナイズした。 (→15 鎌田大地 6.5) 特徴でもある組み立て、サイドへの展開、狙い澄ました縦パスと攻撃で良さを出す。相馬のPKに繋がるパスも鎌田から。守備でも粘り強さを見せた。 8 南野拓実 6.0 中村、久保、上田とのバランスを見たポジション取り。プレスバックで守備でも相手を限定。様々にポジションを変えて汗をかいた。終盤にはミドルシュートで待望のゴール。 10 堂安律 6.5 カウンターを完結させる圧巻の左足ミドル。2戦連発。ウイングバックとして攻守に積極性を見せ、ボールに絡んでいく。 13 中村敬斗 6.5 左サイドでキレを見せる。見事なクロスから先制点をアシスト。その他にも再三チャンスメイク。前半のみで交代もインパクトは大きい。 (→21 伊藤洋輝 5.5) 左SBに入り積極的に高い位置を取る。一対一の守備でも安定したパフォーマンス。 17 田中碧 6.0 バランスを見たポジション取り。攻撃面での特徴を出しきれなかったが、後半は持ち出すなど攻撃面に顔を出す。 (→7 川村拓夢 5.5) 本拠地で日本代表としてプレー。ただ、遠慮がちなのか、本来の良さを出せず、足を振れる場面でパスを選ぶなど、積極性を欠いた。 20 久保建英 6.0 間でボールを受けてリズムを作る。仕掛けから堂安のゴールにつながるパス、そして3点目のOGは久保のパスから。後半も積極的に仕掛けたがゴールならず。 (→11 相馬勇紀 6.0) キレのある仕掛けで左サイドを制圧。PKを獲得すると自らしっかりと決める。キレの良さを見せた。 FW 9 上田綺世 6.0 クロスを頭で合わせて先制。キレある動きを見せ、ボールをうまく引き出し積極的にゴールに向かっていく。フル出場で最前線で体を張った。 監督 森保一 6.5 9名の選手を入れ替え[3-4-2-1]でスタートした中、安定した戦いを見せる。後半は[4-1-4-1]に変更し、選手の特長を考えて流動的なスタイルに。終始シリアを圧倒し、6連勝で2次予選を終えた。 ★超WS選定マン・オブ・ザ・マッチ! 堂安律(日本) 右ウイングバックで先発し、圧巻のミドルシュートで追加点。攻守にわたってハイパフォーマンス。後半は1列前に行き、よりゴールに近い場所でプレーして攻撃の形を作った。 日本代表 5-0 シリア代表 【日本】 上田綺世(前13) 堂安律(前19) オウンゴール(前22) 相馬勇紀(後28) 南野拓実(後40) 入場者数:2万6650人 <span class="paragraph-title">【動画】堂安律、圧巻の左足ミドルで狭いコースを撃ち抜く!!</span> <span data-other-div="movie"></span> <blockquote class="twitter-tweet" data-media-max-width="560"><p lang="ja" dir="ltr">前半19分<a href="https://twitter.com/hashtag/%E4%B9%85%E4%BF%9D%E5%BB%BA%E8%8B%B1?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw"> <a href="https://t.co/7yUzlsiQh8">https://t.co/7yUzlsiQh8</a> <a href="https://twitter.com/jfa_samuraiblue?ref_src=twsrc%5Etfw">@jfa_samuraiblue</a> <a href="https://twitter.com/hashtag/jfa?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#jfa</a> <a href="https://twitter.com/hashtag/daihyo?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#daihyo</a> <a href="https://twitter.com/hashtag/gobeyond?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#gobeyond</a> <a href="https://t.co/kBCxUzi5So">pic.twitter.com/kBCxUzi5So</a></p>&mdash; フジテレビサッカー (@cxfootball) <a href="https://twitter.com/cxfootball/status/1800480842885841271?ref_src=twsrc%5Etfw">June 11, 2024</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> 2024.06.11 21:12 Tue

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「チームに求められていることしか考えていない」。後藤啓介、20歳が見せた献身と野心

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改めて感じた地上波の影響力…1000回を超える連載の最終回/六川亨の日本サッカーの歩み

突然ですが、本日を最後に週2回のコラムは終了することになりました。毎週月曜のコラムがスタートしたのは2001年のこと。当時はガラケーでの有料サイトだった。年末年始も休載のないスタイルに最初は戸惑ったものの、それでも1年365日、休まずに続け、単純計算でも17年×48回(年間)で816本ほどのコラムを書いたことになる。 記憶は定かではないが、2018年からは月曜に加え木曜のコラムもスタートし週2回となった。これはかなりのプレッシャーで、近年は何回か休載したこともある。それでも01年からトータルすれば1000回は超えていたのではないだろうか。 そんなコラムの最後を前に、まずは日本代表のW杯出場を伝えられたことはうれしい限り。そして改めて思ったのは、テレビの地上波の影響力の強さだ。2試合ともテレビ朝日が放映したが、同局は番宣のため早朝の番組から日本戦を取り上げて、なんとか盛り上げようとした。普段からテレ朝を見る機会が多いせいかもしれないが、午前中のモーニングショーからワイドスクランブルまで、しつこいくらいに試合の情報を発信した。 これだけ日本の試合が開催されることを訴えれば、普段はサッカーにあまり関心のない視聴者も気になったかもしれない。そしてW杯出場を決めたバーレーン戦は20%以上の視聴率だったそうだ。試合後も、テレ朝だけでなく多くのテレビ局が日本の勝利とW杯出場をワイドショーで取り上げていた。その宣伝効果は計り知れないだろう。 さすがに毎日と言って良いくらい試合があるMLB、大谷翔平の活躍と露出度には到底かなわない。試合開始が日本時間早朝というのも、ワイドショーにはピッタリはまる時間帯なのだろう。しかしホームランを打てばNHKのニュースはもちろん、民放各局もワイドショーで終日取り上げる。その宣伝効果は絶大だ。 その点、週1試合が原則のサッカーは分が悪い。いくら三笘薫や久保建英が活躍しても連日テレビで取り上げられることはないからだ。それでも海外リーグで活躍する選手が、テレビのスポーツ番組ではなくワイドショーで取り上げられる時代が来たのだから、これはこれで凄いことだと思う。 そしてテレビの影響力の強さを改めて見せつけられるたびに残念に思うのは、日本代表の試合やW杯中継からの地上波の撤退である。放映権料の高騰が主な原因だが、NHKなどは世界に先駆けて“有料化”を導入したのだから、せめて代表戦はホーム、アウェーとも中継すべきである。DAZNのように簡単に、相次いで値上げできない事情もあるのだろうが、MLBをライブ中継しているように、サッカーの代表戦やW杯では頑張って欲しいものだ。それがファン層の拡大につながるのは間違いないし、日本サッカーの発展と強化に寄与することも疑う余地はないだろう。 活字メディアの衰退が進み、定期的に発行しているJリーグや日本代表を扱うサッカー専門誌は『ダイジェスト』1誌になった。『エルゴラ』はネット媒体に移行して奮闘しているものの、ネットのサッカー情報も飽和状態で厳しい戦いを続けている。スポーツ紙ではトーチューが休刊となったが、後に続くスポーツ紙がないとは限らない。メディアにとってサッカーは、ビジネスとして成立しにくい時代が来ているのかもしれない。それはそれで、寂しいものでもある。 長い間のご愛読、ありがとうございました。 文・六川亨 2025.03.31 22:00 Mon
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なぜ18歳・佐藤龍之介はファジアーノ岡山でブレイクできたのか? E-1選手権で“内田篤人超え”が期待される若き才能の適応力とブレないメンタリティ

突出した適応力だ。今シーズンにFC東京からファジアーノ岡山に育成型期限付き移籍で加入した佐藤龍之介は、新たな環境に素早く順応し、自身の力を遺憾なく発揮している。 久保建英と同じ16歳でFC東京とプロ契約を結んだMFは、高卒1年目となるシーズンに武者修行を決断。約18年を過ごした東京を飛び出し、約660km離れた岡山に移り住んだ。 未到の地で単身生活をしながら、プロサッカー選手として結果を出すことを目指す。私生活をはじめ不慣れなことも多く、決して簡単ではない。さらに、主に起用されるのは、サッカーキャリアで「初めて」のウイングバックである。まさに、初めて尽くしだ。しかし、ピッチ上では圧倒的なパフォーマンスを発揮している。 第23節終了時点では、17試合に出場してチーム最多の4ゴールを記録。第19節・湘南ベルマーレ戦では、先制点を奪うだけでなく、両チームトップの走行距離12.1kmとスプリント18回を叩き出した。右WBで攻守にハードワークしながら、74分からはシャドーに移り、タイムアップまでプレー。試合後に木山隆之監督は「1番ゴールを取る可能性がある人をピッチに残すのは、勝つのであれば当然かなと思います」とフル出場の意図を明かしており、その信頼は絶大だ。 地元の西東京市と岡山の雰囲気が「似ていた」ことも佐藤の背中を押したが、適応を可能にしている大きな要素は、素直さと向上心のように思う。 開幕前のキャンプ時にWBで起用された時は、「(WBは)オプションになればいいかな。メインはシャドーになると思う」と受け止めていた。だが、監督からのオーダーに応えながら、パスやドリブルで密集地を打開したりラストパスでチャンスを作ったりといった自分の良さを発揮することを両立させ、“WB・佐藤龍之介”は、完全に板についた。その結果、「18歳の今は自分のポジションを『ここだ』と決める段階でもないと思う。『トップ下やシャドーをやれていない』というネガティブな考えは、本当にゼロなんです。『WBで使ってみたい』と思わせるような特徴を自分は少なからず持っていると思うので、実際に使ってくれている今はその証明にもなっています」と、岡山で発見した自身の新たな可能性と向き合い、意識を変化させている。 第21節・横浜Fマリノス戦では初めて左WBで先発した。負傷によるイレギュラーな起用だったが、「練習で『左、やれるか?』と言われて、『うん、行けます』と言ってやりました」と、逆サイドでプレーすることによって発生する身体の向きやボールの置き所の変化も物ともせず。第22節・鹿島アントラーズ戦では鋭いカットインで左サイドを切り裂き、逆転ゴールを呼び込んだ。 “置かれた場所で咲きなさい”を体現している18歳の姿を、木山監督は「輝いている」と表現し、「『自分は絶対に上に行くんだ』って疑わないメンタリティを持っている。『とにかく上に行きたい』という意欲が、輝いている。ある意味、与えられた才能というか。誰かに教えられるものではないと思う。自分を疑っていないところが素晴らしい」と称賛する。 環境やチーム戦術、監督からのリクエストは、自分がコントロールできない部分だ。時には自分のイメージと違うこともある。それでも、全てのことを素直に受け止め、受け入れ、自分の成長を促す肥料に変えていく。 「将来的には世界のトップリーグでプレーしたり、日本代表としてワールドカップに出て活躍したりすることが目標です」。そう宣言する佐藤は、7月3日に発表される東アジアE-1選手権のメンバーに選出されれば、2008年大会での内田篤人の20歳という同大会の日本代表における最年少記録を更新することになる。 E-1選手権は、過去に柿谷曜一朗や森重真人、相馬勇紀や町野修斗らが1年後のW杯のメンバー入りを勝ち取っており、言わばサバイバルの場だ。チームとして戦いながらも、個人として強みを発揮するなどのアピールが是が非でも必要になる。もしかしたらチームメイトは仲間よりもライバルという側面の方が強いかもしれない。しかし、きっと佐藤なら特有のチーム状況下でも、自分の力を最大限に発揮できるのではないか。そう期待したくなる適応力を、岡山で十二分に見せている。 取材・文 難波拓未 2025.07.02 18:00 Wed
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日本戦控える中国代表のメンバーが発表 概ね順当も帰化組FWア・ランは招集外、代わりに不気味な187cmFWが名を連ねる

中国代表の11月招集メンバーが発表された。 19日に厦門で日本代表と対戦する中国代表。累積警告リーチが主力に多いゆえ、26〜27選手の招集が濃厚と国内で伝えられていたなか、その通り27名が今回のリストに名を連ねた。 チームの軸は、これまで通り。 ブランコ・イバンコビッチ体制で正守護神となったGKワン・ダーレイ(山東泰山)、リバプール生まれのDFジャン・グアンタイ(ティアス・ブラウニング/上海海港)、現体制での初招集から中軸となったMFシェ・ウェンネン(北京国安)、主砲のFWウー・レイ(上海海港)などなど。 また、2-1勝利のインドネシア代表戦でスコアラーとなったFWベイヘラム・アブドゥウェリ(深セン新鵬城)、FWチャン・ユーニン(北京国安)も順当に選出。ACLEの川崎F戦で鋭いドリブルを披露したブラジル出身FWフェイ・ナンドゥオ(上海申花)も招集されている。 一方で、こちらもブラジル出身FWア・ラン(青島海牛)は、中国メディアいわく「コンディション不良」で招集外に。これも念頭に置いてか、今回の中国代表はFW登録が8人おり、その中には、なんとも不気味な存在が。 北京国安のFWワン・ツーミン(28)。 過去に5キャップを持つ一方、北京国安でのスタメン起用がほぼ皆無で、終盤のジョーカー投入がほとんどという187cmストライカー。そんななかでも今季リーグ戦19試合6得点…「39分間に1得点」と高い決定力を披露した。 中国代表は14日にW杯アジア最終予選C組第5節でバーレーン代表戦(A)を戦い、19日の第6節で日本代表とのホームゲームを戦う。 <h3>◆中国代表メンバー27名</h3> GK ヤン・チュンリン(上海海港) ワン・ダーレイ(山東泰山) ハン・ジアチー(北京国安) リュー・ジャンズオ(武漢三鎮) DF ジャン・グアンタイ(上海海港) ウェイ・ジェン(上海海港) ガオ・チュンイー(山東泰山) フー・ヘタオ(成都蓉城) チュー・チェンジエ(上海申花) ヤン・ゼシャン(上海申花) ジャン・シェンロン(上海申花) MF リー・ユアンイ(山東泰山) チェン・ジン(浙江FC) シュ・ハオヤン(上海申花) ワン・ハイシャン(上海申花) リー・レイ(北京国安) カオ・ヨンジン(北京国安) ワン・シャンユエン(河南FC) FW ウー・レイ(上海海港) シェ・ウェンネン(山東泰山) ウェイ・シーハオ(成都蓉城) フェイ・ナンドゥオ(上海申花) チャン・ユーニン(北京国安) リン・リャンミン(北京国安) ワン・ツーミン(北京国安) タオ・チャンロン(武漢三鎮) ベイヘラム・アブドゥウェリ(深圳新鵬城) 2024.11.05 15:07 Tue

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