【2022年カタールへ期待の選手vol.93】29歳で見えてきたカタールW杯への道。遅咲きボランチは大激戦区に食い込めるのか?/稲垣祥(名古屋グランパス/MF)

2021.12.15 09:50 Wed
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「ホントにそうそうたるメンバーの中、ベストイレブンの1人として受賞することでき、大変光栄に感じています。これも名古屋グランパスの成績が評価されてこそ。チームメートに感謝したいと思います」

12月6日に行われたJリーグ・アウォーズ。29歳にしてベストイレブンに初選出された稲垣祥(名古屋)は心からの喜びを口にした。

その栄誉に見合うだけのパフォーマンスを今季の彼は確実に見せていた。今季の名古屋は序盤10試合無敗と好スタートを切り、王者・川崎フロンターレとデッドヒートを繰り広げていたが、稲垣はこの10戦で3ゴールとFW陣を上回る決定力を発揮していた。大型連休中の川崎Fとの天王山2連戦を落とし、優勝争いから後退したものの、そのアウェー戦でも一矢報いるゴールをゲット。存在感を大いに高めた。

その後、名古屋はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)、天皇杯との掛け持ちを強いられ、両方とも準々決勝敗退という憂き目に遭ったが、唯一残ったYBCルヴァンカップは10月30日のファイナルでセレッソ大阪を2-0で撃破。クラブ初のリーグカップを手にした。その大一番でも稲垣は押し込まれた終盤に値千金のダメ押し弾を挙げ、白星を力強く引き寄せた。

ルヴァン杯では大会得点王にも輝いており、「点の取れる中盤のダイナモ」はシーズン通してまばゆいばかりの輝きを放った。この傑出したパフォーマンスを見た関係者から「11月の2022年カタールワールドカップ(W杯)アジア最終予選アウェー2連戦に稲垣が招集されないのはおかしい」という声が出たほど。年明け1月21日のウズベキスタンとのテストマッチに挑む日本代表メンバーに名を連ねたのも、「当然」という印象が強かった。

実際、代表ボランチ陣には不安要素も少なからずある。大黒柱の遠藤航(シュツットガルト)は東京五輪を含めてフル稼働を続けており、2020年夏からまともに休みを取っていない。いくら頑強な彼でも、このままカタールW杯まで酷使し続けるのはリスクがつきまとう。

最近、彼が担っている4-3-3のアンカー役は田中碧(デュッセルドルフ)、守田英正(サンタクララ)のいずれかが担えるものの、田中は所属クラブで出たりでなかったりと海外の壁に直面。守田の方はコロナウイルス陽性反応が出て、しばらく隔離生活を余儀なくされるため、1月27日の中国戦(埼玉)の時までにベストコンディションを取り戻せるか分からない。

もう1人のキーマン・柴崎岳(レガネス)は11月頭の監督交代後もコンスタントにピッチに立ち続けているが、最終予選序盤の低調なパフォーマンスが響いて、森保一監督の中での序列が低下している。

こういった状況だけに、彼らを補完できるボランチの出現が待たれるのは確か。稲垣なら攻守両面で明確な仕事ができるし、すでに代表経験もある。森保監督とはサンフレッチェ広島時代に短期間だが仕事をしている関係性もアドバンテージだ。年齢的に間もなく30歳で、今から国際経験を積み重ねていくとなれば難しい部分もあるだろうが、タフさと貪欲さを兼ね備えた彼ならハードルを越えられるはず。期待は少なくないのだ。

最終予選、そしてカタールW杯本大会に生き残るためには、2022年初頭から一気にスパートをかける必要がある。日本代表合宿は1月17日に千葉・幕張でスタートするが、その時点ではトップフィットした状態で合流することが求められる。そのうえで、ウズベキスタン戦で違いを見せつけることが、直後の中国・サウジアラビア2連戦残留への絶対条件となる。

遠藤航、田中碧、守田、柴崎の4枚よりもコンディションがよく、計算できる仕事を見せてくれるという評価を勝ち取れれば、稲垣が一気にチームの中核に入っていく可能性もゼロではない。「代表経験の浅い選手が割って入ることは十分ある」と森保監督自身も語気を強めているだけに、ここでサッカー人生を賭けた勝負に打って出るべきだ。

「自分のキャリアを振り返ると、苦しい時期がいくらでもあった。学生時代を含めても、プロになってからもそう。僕を長年、見てくださった方が『ホント、どうしようもないプレーをしていた』と思うような時期も全然あった。それを自分なりに消化しながら乗り越えてこれたから、今のような充実したシーズンを送れている。今までの財産を出せているなと思っています」

ルヴァンMVPを獲得した後、稲垣はしみじみとこう語ったが、30代になってからブレイクする遅咲きの人間が代表にいてもいい。東京五輪世代の台頭や若返りばかりが注目される昨今だが、回り道をしてきた選手が報われてもいいはず。FC東京U-15むさしからU-18に上がれず、帝京高校、日本体育大学と回り道をして、さらにプロになってからもヴァンフォーレ甲府、広島で地味なキャリアを積み重ねてきた彼のような男がW杯の大舞台に立つようなことがあれば、本当に多くの人々の勇気や希望になる。

カタールW杯イヤーの2022年。稲垣祥には世間を驚かすサプライズを期待したい。

【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。

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【2022年カタールへ期待の選手vol.106】悲願の代表初ゴールも序列爆上げはなし。カタールW杯本番へ巻き返しはなるのか?/久保建英(マジョルカ/MF)

「周りの選手が簡単なゴールを決めていくたびに『俺がそこにいたらよかったな』とか、僕のシュートがブロックされるたびに『何で僕のはブロックされるんだろう』と思ったり。こと代表ではいつもならで入らないことが多かった。『このまま一生入らないんじゃないか』と思った時もありましたね」 6月日本代表シリーズ3戦目となった10日のガーナ戦(神戸)。新世代のスター候補である久保建英(マジョルカ)が、ようやく代表初ゴールを決めた。三笘薫(サン=ジロワーズ)の左サイドのドリブル破の折り返しに飛び込んだ形で、東京五輪世代の盟友のお膳立てによるところが大だったが、どんな形でも1点は1点。2019年6月9日のエルサルバドル戦(宮城)で初キャップを飾ってから3年がかりの記念すべき一撃に、本人は心から安堵したに違いない。 18歳5日でA代表デビューした頃は、まさかここまで時間がかかるとは、想像だにしなかっただろう。金田喜稔(解説者)の持つ19歳119日というA代表最年少ゴール記録更新も時間の問題と思われた。本人も自信があったのか、同年10月の2022年カタールW杯1次予選・モンゴル戦(埼玉)前には「いつまでも言われ続けるのもあれなんで、早いうちに決められればそれで終わりなのかな」と淡々と語っていたほど。18歳のうちに決めていたら、ここまでの大きなプレッシャーを背負うこともなかった。 だが、2020年以降のコロナ禍で代表戦が休止状態に陥ったことも災いし、時間ばかりがむなしく過ぎていった。その間、彼自身もレアル・マドリーからマジョルカ、ビジャレアル、ヘタフェ、そしてマジョルカと3クラブにレンタル移籍したが、大ブレイクとはいかなかった。 そうやって足踏み状態を強いられている間に、代表では伊東純也(ヘンク)が右サイドの絶対的存在に飛躍。鎌田大地(フランクフルト)も重要な役割を担うようになっていく。熾烈なチーム内競争が続く中、久保も昨年9月8日のW杯最終予選・中国戦(ドーハ)で先発。1-0の勝利に貢献し、「ついに[4-2-3-1]のトップ下でレギュラー獲得か」と期待が膨らんだ。 ところが、マジョルカに戻った直後に負傷。長期離脱を強いられる。彼が代表を離れている間、日本は最終予選序盤3戦2敗という絶体絶命のピンチに直面。森保一監督が昨年10月のオーストラリア戦(埼玉)から[4-3-3]への変更に踏み切ったことで、久保の本職であるトップ下がなくなってしまった。 「手ごたえを感じた矢先のケガだったので、本当にもったいないことをしたなと。クラブで欲張って中3日くらいで試合に出て、その結果、ケガをしてしまった。森保監督からチャンスは1回もらったのに、誰も悪くない形でフイにして、それでまた現状、こういう(低い序列からの)スタートになってしまいました」 「代表ってそれくらい競争があって当たり前ですし、ケガをして帰ってきた選手の次が約束されているというのもおかしな話だから。今の自分は何とかできることをやって、割り込んでいきたい。信じて出番を待ちたいなと思っています」 ターニングポイントとなった中国戦から9カ月。再びチームに合流し、21歳になった久保は、自らの苦境を認めたうえで、毅然と前を向いた。バルセロナのアカデミーで育ち、日本に戻ってきてからもFC東京と年代別代表で飛び級を続け、18歳でA代表デビューを飾るという輝かしいキャリアを構築してきた若武者が報道陣にこんな弱みを見せたのは初めてだろう。 ただ、人間というのは挫折を経験することで確実に成長する。彼も改めてじっくりと自分自身と向き合い、「素の久保建英」に戻ったことで、より自然体でプレーできるようになったのではないか。 とはいえ、残念ながら、6月4連戦最後のチュニジア戦(吹田)では明確な成果を残せなかった。後半26分からピッチに立った背番号11は、本職のトップ下で攻撃を活性化しようともがいたが、0-3という最悪の形でタイムアップの笛を聞くことになった。結局、今シリーズはブラジル戦(東京)を除く3試合に出場。右FW、右インサイドハーフ、トップ下に挑んだが、全てのポジションで序列の爆上げは叶わなかった。 しかしながら、本当の勝負はここから。W杯までの5カ月間でどんなインパクトを残せるのか。底力を示せるのか。それが何よりも重要なのだ。 「人は3カ月あれば変われる。僕は残りのここから頑張るしかない。チーム探しも幅広い視野を持って決めたいと思っています」 本人もこう語気を強めたように、真っ先にやらなければならないのは、コンスタントに試合に出られる新天地に赴くことだ。レアルからスペイン4クラブ目のレンタル移籍をするのか、完全移籍で全く異国のチームに行くのかはまだ未知数だが、W杯直前の9〜10月に活躍していなければ、久保の目論む夢舞台での成功はつかめない。自分の合ったクラブを探すのは至難の業ではあるが、今夏の身の振り方で全てが決まる。それだけ重要な選択になるのは間違いない。 22-23シーズン序盤からスパートをかけ、「久保建英は絶対に必要だ」と森保監督に思わせることができれば、代表残留はもちろんのこと、カタールW杯で異彩を放つことも可能なはず。この3年間の停滞感を打ち破るべく、彼にはここで一気にブレイクしてほしいものである。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.06.18 15:00 Sat
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【2022年カタールへ期待の選手vol.105】残り2試合で挽回できるか?韋駄天FWがW杯の大舞台に立つために必須な代表初ゴール/前田大然(セルティック/FW)

「パラグアイ戦(2日=札幌)で決定機を外してしまったので、今は悔いしか残っていないという状況です。逆にああいうのを決めていれば『すごくよかった』となっていた。残り2試合、チャンスがあるか分かりませんが、挽回したいと思ってます」 6月シリーズ突入後、パラグアイ戦と6日のブラジル戦(東京)に続けて途中出場した前田大然(セルティック)はここまで無得点の悔しさを改めて吐露した。 2021年Jリーグ得点王獲得、今年1月に赴いたセルティックでゴール量産によって、森保一監督の評価が急上昇し、2022年突入後はほぼコンスタントに日本代表に招集されている前田。1月のカタール・ワールドカップ(W杯)最終予選・中国戦からの出場4試合は念願の1トップで起用されているが、なかなか明確な数字がついてこない。 「W杯に近づいたという感触は全くない。僕は目の前の1試合を戦っているので、『近づいた、遠のいた』は関係なく必死にやっているだけ」と本人は何とか代表初ゴールの壁を超えようともがき続けている。 実際、惜しい場面は何度かあった。最たるものが、彼自身も言及したパラグアイ戦だ。鎌田大地(フランクフルト)がペナルティエリア左からドリブルで運んで放ったシュートのこぼれ球に反応するも、左足に当てたボールが大きく枠を超えるという後半37分の決定機が顕著な例。後半ロスタイムにも山根視来(川崎)のクロスに鋭く反応しながら、シュートが再び外れるシーンがあった。本人の中ではこうした数々のミスが頭から離れない離れないのだろう。 確かに代表戦のゴールチャンスは限られている。こういった決定機を決めきらなければ、5カ月後に迫った本大会への生き残りは叶わない。 「焦りというか、どうなんですかね…」と本人も首をかしげたが、スコットランドで余裕を持って決められているフィニッシュが代表でミスにつながってしまうのは、目に見えない重圧があるからかもしれない。 とはいえ、ライバルの1人である浅野拓磨(ボーフム)がパラグアイ戦で先制弾を挙げているという事実もある。絶対的1トップに君臨してきた大迫勇也(神戸)もケガが癒えれば戻ってくるだろう。 となれば、前田が本大会に滑り込める可能性はほんのわずかというしかない。それを手にできるか否か…。彼は今、まさに重要な岐路に立たされている。 そこで、やるべきなのが、自身の強みであるスピードと前線からの献身的守備、ボール奪取力を強く押し出すこと。ブラジル戦でも自慢の快足を生かして世界的守護神・アリソン(リバプール)に猛然とプレスに行くという後半44分のシーンを作った。あわよくば同点弾というところまで追い込んだプレーは森保監督にも響いただろう。 「足に当ててゴールに入るのを想像していたので、それができなかったのはあっちのうまさ。すごく上のレベルなのかなとあの1つのプレーだけでも感じました」と前田は世界トップとの差を実感したが、その反面で「GKが来ると分かっていない状況で僕は奪いに行っている。一瞬でGKにプレスをかけられる」と自信も手にした様子だ。 あれだけ迫力あるプレスを受ければ、どんなGKやDFでも一瞬、戸惑い、ボールロストすることは考えられる。実際、Jリーグ時代はそういう形から何度かゴールにつなげていた。「自分は守備から入るタイプ」とも語っていたが、前線からよりダイナミックなプレスをしかけ、敵に脅威を与えれば、シンプルにゴールへ突き進む回数も増える。 直近10日に対峙する相手・ガーナ戦はW杯出場国。14日に迎え撃つ可能性のあるチュニジアも同様だ。そういった難敵に韋駄天FWの真価を示せれば、待ちに待ったゴールシーンが現実のものとなるはずだ。 FWというのは、1つのきっかけをつかむことで劇的な飛躍を遂げるケースが少なからずある。彼自身もポルトガル1部・マリティモからJリーグ復帰に踏み切り、横浜F・マリノスで2021年に23ゴールを奪ったことで自信をつけ、インターナショナルレベルの点取屋になったのだ。 「僕が松本山雅に入った2016年に大然が高卒新人として入ってきましたけど、その時とはだいぶ印象が違う。すごい成長してるし、その成長曲線がうらやましいと感じます」とシュミット・ダニエル(シント=トロイデン)も太鼓判を押していた。 その成長曲線をさらに引き上げ、「カタールW杯の切り札」と認められるようなパフォーマンスを見せてくれれば、指揮官も必ず前田を本大会メンバーに選出するはずだ。 松本山雅時代の恩師・反町康治監督(JFA技術委員長)も期待を込めて、近くで見守り続けている。そういう人々のためにも、彼には代表初得点をいち早く奪ってほしいものである。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.06.09 22:20 Thu
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【2022年カタールへ期待の選手vol.104】「EL王者」の称号引っ提げ、カタールW杯メンバー滑り込みへ/鎌田大地(フランクフルト/MF)

「鎌田(大地=フランクフルト)と堂安(律=PSV)は所属チームで自分の存在をつねに見せ続け、いいプレーをしていた。タイトルを獲ったという自信は間違いなく彼らの力に上乗せされていく。貪欲に向上心を見せてくれるように期待しています」 6月の日本代表4連戦に向け、5月20日に行われたメンバー発表会見。森保一監督は2022年カタール・ワールドカップ(W杯)最終予選途中に外した2人を呼び戻すに至った理由を改めてこう語った。 とりわけ、昨年1月〜3月の重要な終盤4試合で選外にした鎌田大地を復帰させたのは、大きな出来事と言っていい。[4-3-3]への布陣変更でトップ下のポジションがなくなったことは彼にとって不運ではあったが、2021年の6試合では本来のよさを出しきれていなかったのも事実。今季からオリヴァー・グラスナー監督体制に移行したフランクフルトで、序盤は鎌田自身、出たり出なかったりの状況が続いたことも、代表での不振につながったのかもしれない。 しかしながら、代表から離れてクラブに集中したことが奏功したのも確かだろう。2022年になってからフランクフルトはドイツ・ブンデスリーガとUEFAヨーロッパリーグ(EL)の重要マッチが続いたが、そこで日本との二往復を強いられていたら、EL制覇という偉業達成の原動力にはなれなかったかもしれない。3月9日のレアル・ベティスとのEL決勝トーナメント2回戦で値千金の決勝弾を叩き出し、4月のバルセロナとの準々決勝2連戦にフル稼働できたのも、心身ともにフランクフルトの方に集中したことが大きい。 過去にも、大迫勇也(ヴィッセル神戸)が2015年6月〜2016年11月まで代表を外れている間に、当時所属のケルンでの戦いにフォーカスし、屈強で大柄なDF陣と渡り合う術を身に着けたことがあった。代表復帰した時の彼は自信満々でプレーし、前線のターゲットマンとして圧倒的存在感を示した。そこから彼が絶対的1トップに君臨し、現在まで至っているのだから、鎌田も同じような足跡を辿らないとも限らない。そんな期待が高まる一方なのだ。 森保監督も鎌田の目覚ましい成長を実感した様子だった。 「もともと持っていた攻撃能力を今はインテンシティの高い中でも発揮できている。上下動しながら技術を出すことをフランクフルトのグラスナー監督も要求していますが、本人はそれに適応し、レベルも格段に上がった。その結果、今季開幕当初よりも出場時間が増えて、絶対に外せないパフォーマンスを見せている。狭い局面だったり、相手とコンタクトした状況でもボールを失わず、彼の持ってる能力をハイレベルの中で出せるというのは大きい。ELのようにプレッシャーのかかる中でのプレーを日本代表でも出してほしいと思っています」 実際に現地視察した後、こう語ったように、指揮官の中での鎌田の位置づけがグーンとアップしたのは間違いない。となれば、どこでどのように起用するかが気になるところ。仮に最終予選からの[4-3-3]を継続するのであれば、インサイドハーフが主戦場となる。そこにはボランチタイプの田中碧(デュッセルドルフ)と守田英正(サンタ・クララ)がいて、強固な関係性の中に割って入るのは容易ではなさそうだ。 「状況や練習を見て最終的には決めたいと思っていますが、彼はインサイドハーフでもプレーできる選手だと思っています」と森保監督は彼の持つ非凡な攻撃センスを中盤に加えたいという意向を持っているようだ。 ただ、「形は1つではなく、チームのコンセプトの中でシステムを変えながらよさを発揮してもらうことにもトライしたい」とも話していたから、[4-2-3-1]に戻したり、フランクフルトのような3バック導入もあるのかもしれない。 [4-2-3-1]ならトップ下での再チャレンジが有力視されるし、3バックならフランクフルトと同じシャドウのポジションで勝負できる。その方が鎌田にとってはやりやすいはず。いずれにしても、EL王者の彼をうまく組み込むことが、代表のパワーアップの重要ポイントになるのは間違いなさそうだ。 半年を切ったカタール本大会の初戦の相手がドイツというのを視野に入れても、フランクフルトで傑出した実績を残した彼を使わない手はない。これまで守備や強度の部分に難があると言われてきた鎌田はその弱点を克服し、世界最高峰プレーヤーの仲間入りを果たした。EL決勝で冷静にPKを決めるほどの度胸も身に着けたのだから、不安なく世界との戦いに送り出せるはず。むしろ、彼がキーマンとなって日本を力強くけん引していってくれる可能性は大いにある。それだけの自覚を持って、鎌田には久しぶりの代表に合流してもらいたい。 W杯で成功を収めようと思うなら、2002年日韓大会の稲本潤一(南葛SC)、2010年南アフリカ大会の本田圭佑のように、ここ一番で大仕事をしてくれるW杯男の出現が必要不可欠だ。鎌田がその系譜を継ぐ存在になるか否か。まずは6月シリーズをしっかりと見てみたい。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.05.26 12:50 Thu
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【2022年カタールへ期待の選手vol.103】マリノスの新得点源は代表滑り込みを果たせるか?/西村拓真(横浜F・マリノス/FW)

「西村(拓真)は今季、非常にいいスタート切った。トップ下にはマルコス・ジュニオール、吉尾海夏、西村の3人がいて、1人1人のキャラクター、能力が全く違う。試合ごとに選択肢が出てくるのはチームの強みになっている。その中でも西村は要求以上のことをやってくれていると思っています」 AFCチャンピオンズリーグ(ACL)から戻った直後の5月初旬、横浜F・マリノスのケヴィン・マスカット監督がこう評した通り、今季新加入の西村拓真がいい味を出している。 開幕当初は出番が少なかったものの、3月2日のヴィッセル神戸戦にトップ下で初先発し、2ゴールを奪ってから指揮官の評価が一気にアップする。4月10日の鹿島アントラーズとの上位対決でも勝利を決定づける2点目を叩き出し、ACL1次ラウンドの重要局面だった4月25日のシドニーFC戦でも2点目をゲット。「ここ一番で点を取れる男」という印象を強めたのである。 それだけではない。西村には凄まじい走りで攻守両面に絡めるダイナミックさとい長所がある。前述の鹿島戦でもチーム最多走行距離の12.511キロを記録。スプリント回数も22という数字を残した。もちろん昨季の得点源だった前田大然(セルティック)のデータには及ばないが、彼の抜けた穴を着実に埋めているのは確か。「西村はチームのためにベストを尽くす。本当に手を抜かずに走ってくれる」とマスカット監督が称賛するのも頷ける話だ。 となれば、日本代表入りの期待も高まってくるところ。しかしながら、彼の経歴を見ると、富山第一高校時代の2012年に富山県選抜として国体に出場し、2013年にU-17北信越選抜入りした経験があるだけ。日の丸とは縁遠いキャリアを送ってきた分、どうしてもハードルは上がると言わざるを得ない。 しかも、1996年生まれは2016年リオ・デ・ジャネイロ五輪世代の一番下の学年。鎌田大地(フランクフルト)も代表入りが2019年3月のコロンビア戦(日産)までズレ込んだし、鈴木優磨(鹿島)もお呼びがかからないまま現在に至っている。そういったマイナス要素がある分、圧倒的な実績を残さない限り、森保一監督が重い腰を上げる気にはならないだろう。その厳しさを本人もよく分かっているはずだ。 まさに前田大然も2021年のJ1で23ゴールという驚異的な数字を叩き出したことで、日本代表に呼ばれ、念願だった1トップで起用されるまでになった。それまでの彼は代表に行くたび左サイドに据えられ、「前で勝負したい」と言い続けられながらも、そういう扱いをしてもらえなかった。それを自らの活躍で覆し、セルティック移籍、新天地でのコンスタントな活躍につなげている。 ベガルタ仙台時代の2018年にJ1・11ゴールを挙げ、ロシア1部・CSKAモスクワから引っ張られた西村は「数字こそ成功の源」だと身をもって理解しているに違いない。結局、コロナ禍もあって1度目の海外挑戦はロシアからポルトガル1部・ポルティモネンセへ赴く形で幕を閉じたが、2度目がないとも言い切れない。今や代表でエース級の存在感を示している伊東純也(ヘンク)も27歳になろうという時にベルギー行きを決断している。アタッカーにはそれだけの可能性があるのは事実だろう。 だからこそ、西村にはここからギアを一段階二段階引き上げ、ゴールラッシュを見せる必要がある。現時点ではJ1・4点で得点ランキング5位タイにつけているが、鈴木優磨や上田綺世(鹿島)らを抜いて日本人トップになることが最初のターゲットと言っていい。ここからのマリノスは18日の湘南ベルマーレ戦を皮切りに、18日の浦和レッズ戦、21日のアビスパ福岡戦、25日の京都サンガF.C.戦、そして29日のジュビロ磐田戦と5連戦が待ち構えている。そこで1試合1点ペースで加算していけば、早くも2ケタが見えてくる。そんな理想的なシナリオを描くことが肝要だ。 6月の日本代表4連戦のメンバー発表は20日に予定されているから、そこに西村が滑り込む可能性は極めて低い。ただ、彼ら国内組には7月のEAFF E-1選手権がある。コロナの影響で中国開催から日本開催に変更され、開催地は愛知県豊田市中心になる見込みだ。名古屋市出身の西村にしてみれば、その舞台に立って目覚ましい活躍を見せたいと願わないはずがない。E-1から11月のカタール・ワールドカップ(W杯)滑り込みの確率も極めて低いだろうが、可能性のある限り、突き進んでいくしかない。 「マリノスは本当にアタックの回数が多いチームなので、いろんなチャンスが来る。そこで決めきる技術を高めていけば、(2021年チーム総得点の82得点は)成し遂げられる数字だとは思います。結果にこだわり、守備のプレッシングをどんどんやりつつ、個性を出していきたいです」と西村はシーズン当初、語気を強めていた。現時点のチーム総得点19をその領域に引き上げるためには、誰かが起爆剤にならなければいけない。ギラギラしたこの男には大化けする予感が少なからずある。トリコロールの背番号30のここからの一挙手一投足を期待を込めて見守りたい。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.05.14 14:30 Sat
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【2022年カタールへ期待の選手vol.102】「行かなきゃ始まらない」からスタートしたドイツ挑戦。今季26試合出場の実績で代表の扉を叩く/伊藤洋輝(シュツットガルト/DF)

4月23日にバイエルンの前人未到のリーグ10連覇が決まったドイツ・ブンデスリーガ1部。だが、残留争いは依然として混とんとしている。目下、2部降格圏に沈むのは、18位のグロイター・フルトと17位のアルミニア・ビーレフェルト。遠藤航がキャプテンを務めるシュツットガルトは17位と勝ち点2差で16位。現状だと2部3位とのプレーオフに回るという苦境に直面している。 24日には勝ち点1差の15位・ヘルタ・ベルリンとの直接対決があり、シュツットガルトとしては何としても勝利したかったが、開始4分と後半ロスタイムに手痛い失点を食らい、0-2で敗戦。勝ち点差が4に広がり、自動残留への道が遠のいた。 この一戦で最終ラインの左センターバック(CB)に陣取ったのは、22歳の伊藤洋輝。ご存じの通り、昨夏にジュビロ磐田から新天地へ赴いた188㎝の大型プレーヤーだ。 移籍当初はセカンドチームからのスタートを余儀なくされると見られたが、「行かなきゃ始まらない」と本人は意欲満々で新たな環境に飛び込んだ。遠藤航という頼もしい先輩の存在も助けになり、新シーズン頭のDFBポカール1回戦・BFCディナモ戦から先発の座をつかむ。そして8月28日のフライブルク戦でブンデスデビューを飾ると、コンスタントに出場機会を与えられ、ここまで26試合出場(うち23試合先発)1ゴールという目覚ましい数字を残してきたのである。 ただ、ヘルタ戦では壁にぶつかったのも事実。最初の1点目は彼と左サイドバック(SB)ボルナ・ソサの背後を飛び込まれ、決められた形だった。その後、何度か体を張り、ピッチを阻止したが、最終局面で1対1で振り切られ、致命的な2失点目を献上してしまった。本人は悔しさいっぱいだろうが、ドイツサッカーの厳しい現実を改めて体感したのも事実。この経験は7か月後の2022年カタールワールドカップ(W杯)でドイツと同組になった日本代表にも還元できそうだ。 今の代表DB陣は、キャプテンの吉田麻也(サンプドリア)、東京五輪代表の冨安健洋(アーセナル)、板倉滉(シャルケ)、国内組の谷口彰悟(川崎)がの4枚がベース。吉田は最近、所属クラブで出番が減っており、今季限りで契約満了になるという噂も出ている。が、高度な経験値と統率力を備えた彼は必要不可欠。冨安もケガが癒えてここから復調するだろうし、シャルケで圧倒的な存在感を示す板倉も評価は高い。 ただ、伊藤にしてみれば「2部で活躍する板倉よりも自分の方が1部で試合に絡んでいる」という思いがあるかもしれない。それを森保一監督に正当に評価してもらうためにも、やはり残留は絶対に達成しなければいけないノルマ。ヘルタ戦で止められなかった決定機を封じられるだけの球際と寄せ、対応力を短期間で身に着けることが当面の課題なのだ。 「僕は2017年にジュビロでトップ昇格しましたけど、自分の成長曲線は正直、遅れていると思います。ようやくチャンスが来たので、シュツットガルトで結果を残せるかが全て。J2ではフィジカル面に自信がありますけど、ドイツでは普通以下。だからこそ、サッカー観や戦術眼が必要。そこはヤットさん(遠藤保仁)から学んだ部分でもある。日本人のよさを出しながら、デュエルとか目に見える数字を残していかないといけないですね」 昨夏の移籍会見で伊藤はこう語っていた。大柄で屈強な面々が揃うドイツでは、サッカーを見る目を磨き、自らアクションを起こして周囲と緊密な連携を築いていくことが非常に重要だ。自身の目の前で戦っている遠藤航はそれを高いレベルで実践しているからキャプテンマークを託され、日本代表でも生命線を担っている。磐田時代の遠藤保仁、シュツットガルトで出会った遠藤航という「ダブル遠藤」の一挙手一投足は、確実に彼自身の血となり肉となっているはずだ。 そのうえで、左利きという最大のストロングポイントを遺憾なく発揮すべき。そこには強いこだわりを持っている様子だ。 「自分のストロングは左足。それはドイツ人の選手にはないところ。それを生かして、自分の立ち位置を確立したい」と本人も目をギラつかせていた。その長所があるから、シュツットガルトでも左CB、左SBで臨機応変に使われている。ボランチとしても経験豊富で、マルチ型という意味では、同じレフティの中山雄太(ズヴォレ)と肩を並べるくらいのポテンシャルはあると言っていい。 森保監督も4月の欧州視察でシュツットガルトを訪問し、遠藤航や伊藤と話をする場を持ったことを明かしていた。その成長ぶりをどう受け止めているかは未知数だが、6月2日のパラグアイ戦(札幌)から始まる次のインターナショナル・マッチデー(IMD)で試してみたい選手の筆頭ではないだろうか。 「W杯本番までの時間が短い分、そんなに新たな戦力をテストできるのかどうか…」と新戦力抜擢に消極的姿勢を示していた指揮官ではあるが、全く新たな人材を呼ばないわけではないはず。であれば、ドイツで急成長を遂げるこの男をぜひ手元に呼んでチェックしてほしい。 そういう流れになるように、伊藤は今季ラストまで全力を出し切り、残留という大きな成果を残すこと。そこに集中してもらいたいものである。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.05.01 20:00 Sun
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