【2022年カタールへ期待の選手vol.57】同期・三笘薫に刺激。球際・ボール奪取力の強みを出しつつ、アジア王者に果敢に挑戦!/安部柊斗(FC東京/MF)

2020.11.24 16:45 Tue
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新型コロナウイルスの影響で相次ぐ延期の末、カタールで集中開催されることになった2020年アジアチャンピオンズリーグ(ACL)。このタイトルを是が非でも獲得したいと熱望しているのがFC東京だ。2012年と2016年に同大会に参戦しながら16強敗退を余儀なくされた経験があるだけに、アジア王者への意気込みは非常に強い。

11月7日に開催される予定だったYBCルヴァンカップ決勝が柏レイソルのクラスター発生で1月4日に延期されたこともあり、「先にACLを取って年明けのルヴァンに弾みをつけたい」というのはチーム全体の共通認識だろう。

今年、明治大学から加入した大卒ルーキー・安部柊斗にとっても、プロ初の国際大会となる。今季はシーズン初戦となった1月28日のACLプレーオフ・セレスネグロス戦からスタメンを奪取。J1では26試合出場2ゴールと大黒柱の1人と言っていい活躍度を見せている。7月に橋本拳人がロストフへ移籍し、東慶悟が右第5中足骨骨折という重傷を負う中、手薄になった中盤を支え続けてきた。

「拳人君の移籍は痛いですけど、自分が拳人君を補う以上のプレーをすれば全く問題ない。自分が東京を勝たせられるように、安心してサポに見ていただけるようなプレーをしていきたい」と本人は今夏、力を込めていたが、持ち前の守備面でのアグレッシブさに加え、時には精度の高いシュートも放っている。彼の成長に長谷川健太監督も助けられた格好だ。

「試合によって中盤のポジションも変わりますけど、ハードワークや球際で勝つこと、前線に飛び出してゴールを決めるのが自分の理想のプレー。それを積極的にやっていきたいです。僕は海外サッカーはあんまり見ないのでプレーモデル的な選手はいません。ただ、Jリーグに目を向けると、川崎フロンターレの大島(僚太)選手なんかはすごくいい飛び出しやスプリントをしている。山口(蛍=神戸)選手なんかもかなり前にスプリントしてますよね。インサイドハーフがゴール前に出ていけばチャンスになりますし、DFにとってもつかみにくいので、自分もどんどん真似してやっていきたいと思ってます」

こう語るように、安部は日本代表クラスのMFのよさを吸収しようと意欲的に取り組んでいる。もちろん橋本、東、高萩洋次郎といったFC東京の日の丸経験者たちの一挙手一投足も脳裏に焼き付けているはずだ。そういった学習意欲と実践能力の高さはいかにも明治大学出身らしいところ。長友佑都(マルセイユ)や室屋成(ハノーファー)ら偉大な先輩に通じる部分がある。「自分ももっともっとレベルアップしたい」と高い領域を渇望し続け、高いモチベーションで試合に向かっていることが、今季の好パフォーマンスにつながっているのだろう。

もう1つ、安部の刺激になっているのが、同期入団の大卒ルーキーたちの活躍だ。中村帆高、瀬古樹(横浜FC)、森下龍矢(鳥栖)ら明大同期の存在はもちろんのこと、川崎フロンターレの三笘薫のように今季すでに12ゴールを挙げている傑出したタレントまでいる。

「薫が点取ったり、アシストしたり、いいスイッチになったりしてるのはホントにすごい。大学生の時から知ってますけど、ホントにいい選手。自分も負けたくないですし、いい刺激になってると思います」と神妙な面持ちで語っていたことがあった。

その三笘がいる川崎は一歩先にリーグタイトルをつかもうとしているが、FC東京も負けてはいられない。ACLでまずは1次ラウンドを突破することが肝要だ。

彼らはここまで2試合を消化し、勝ち点4で暫定首位に立っているが、同組の上海申花、蔚山現代は侮れない相手。11月24・27・30日と続く2チームとの3連戦は絶対に落とせない。厳しい戦いを勝ち上がれば、ラウンド16以降の戦いが待っている。

海外でのセントラル方式というのは、ルーキーで年代別代表経験のない安部にとっては未知なるチャレンジ。コロナ禍のカタールの環境も未知数だけに、思わぬアクシデントに直面するかもしれない。そういう苦難を乗り越え、チームの快進撃の原動力になれれば、東京五輪代表メンバー入りの道も開けてくるだろう。

東京世代のボランチは海外組の中山雄太(ズヴォレ)と田中碧(川崎)がファーストチョイスと見られるが、手薄なポジションであることは確か。安部のようにデュエルに強く、タフに戦えるタイプの選手は森保一監督も喉から手が出るほどほしいのではないか。2年後のワールドカップ開催国・カタールで大舞台と同時期にプレーできることは、先々のA代表入りを視野に入れてもアドバンテージが少なくない。

今回のACLは安部柊斗という成長著しいMFにとって千載一遇のアピールの機会。アジアの強豪相手にも真っ向から勝負できるタフさと粘り強さを前面に押し出し、強烈なインパクトを残してほしいものだ。

【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。



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【2022年カタールへ期待の選手vol.95】パリ五輪世代期待の星はA代表で爪痕を残せるのか?/鈴木唯人(清水エスパルス/MF)

2022年カタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の重要な中国・サウジアラビアとのホーム2連戦(1月27日・2月1日=埼玉)に向け、日本代表が17日から再始動した。21日に開催予定だったウズベキスタン戦(埼玉)は新型コロナのオミクロン株拡大によってキャンセルされたものの、国内組のみの合宿は21日まで行われる。初招集の面々にとっては数少ないアピールの場ということで、気合が入るだろう。 2021年Jリーグベストヤングプレーヤー賞の荒木遼太郎(鹿島)らと並んで2024年パリ五輪世代の主力として期待がかかる鈴木唯人(清水)にとっても、今回は千載一遇のチャンスに他ならない。当初招集されていた前田大然と旗手怜央(ともにセルティック)の移籍によって追加招集された形だが、過去にもその立場から一気に存在感を高めていった人間がいないわけではない。半年前の東京五輪でも、林大地(シントトロイデン)が上田綺世(鹿島)と前田の両FWをごぼう抜きし、本番でレギュラーに躍り出た。若い選手というのはいつ大化けするか分からないところがあるだけに、その動向から目が離せないのだ。 鈴木唯人は久保建英(マジョルカ)と同じ2001年生まれ。神奈川県三浦郡葉山町出身。小学校時代は横浜F・マリノスプライマリーに所属していたが、ジュニアユースに上がれず、中体連の葉山中学校で自己研鑽に励んだ。頭角を現したのは市立船橋高校時代。杉岡大暉(湘南)や原輝綺(清水)らを鍛え上げた朝岡隆蔵監督(現千葉U-18監督)らの指導を受け、大きく成長。清水でプロキャリアをスタートさせた。 清水でもルーキーイヤーの2020年から出場機会をつかみ。J1・30試合に出場。2年目だった2021年も33試合出場2ゴールと数字を引き上げた。同年には本来、U-20W杯があり、チームメートの松岡大起とともに世界舞台を経験するはずだったが、コロナ禍で中止となり、貴重な国際経験の場を逃した。 それでも昨年10月にはU-22日本代表の一員としてAFC・U-23アジアカップに参戦。香港戦では左サイドハーフとインサイドハーフの2つのポジションを柔軟にこなし、数々のチャンスを演出。得意のドリブル突破やゴール前での推進力を前面に押し出した。 高度な技術を駆使して創造性ある崩しができるところを森保一監督も評価したのだろう。「U-20W杯に出られなかったパリ世代にA経験を積ませたい」という日本サッカー協会の意向もあって、今回の国内組合宿招集に至ったのだろうが、彼は久保と同い年。身近な選手がすでにA代表に定着しているのだから、負けてはいられない。 「上のカテゴリーで活躍している同世代がいるのは意識するところですけど、今はエスパルスで1つ1つ課題を修正して次につなげていくことが大事」とプロ1年目には謙虚な発言を繰り返していたが、欲が出てきて当然だ。世界を見れば、イングランド代表のブカヨ・サカ(アーセナル)やメイソン・グリーンウッド(マンチェスター・ユナイテッド)らもビッグクラブの主力級に成長している選手もいるだけに、貪欲に高みを目指していくしかない。 長友佑都(FC東京)や大迫勇也(神戸)ら年長者がいる環境に行っても、物おじせず食らいつくという強い意気込みを示すべき。そうでなければ、同じ左サイドを担うであろう原口元気(ウニオン・ベルリン)、相馬勇紀(名古屋)や三笘薫(サン=ジロワーズ)らを超えられない。メンタリティ含めてタフになり、自分を殻を破らない限り、鈴木がカタールW杯に逆転滑り込みを果たすのは夢のまた夢。そのくらい厳しい世界なのは、本人もわかっているはずだ。 もう1つ、彼が意識すべきなのは、ゴールという結果。アタッカーという役割を担いながら、J1でまだ2ゴールというのはどうしても見劣りする。同じパリ世代の荒木が昨季10得点を叩き出しているのを見て、本人も燃えないはずがない。清水でもU-22代表も惜しいチャンスは数えきれないほどある。それをモノにしなければ、日の丸を背負う夢を現実にすることはできない。合宿中に行われるであろう練習試合で確実にゴールを奪い、森保監督のインパクトを与えることが肝要だ。 かつて同じ清水に所属していた岡崎慎司(カルタヘナ)はFWとしての低い評価を目に見える結果で跳ね返し、瞬く間にA代表の主力に躍り出た。やはりアタッカーは点を取ることが全てなのだ。パリ世代の期待の星・鈴木唯人は偉大な先人と同じように一足飛びでステップアップできるのか。A代表で爪痕を残すことができるのか。全ては今回の5日間にかかっていると言っても過言ではない。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2022.01.18 21:30 Tue
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【2022年カタールへ期待の選手vol.94】2019年アジアカップ以来の代表復帰。30歳を迎えるFWはカタールW杯に手が届くのか?/武藤嘉紀(ヴィッセル神戸/FW)

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【2022年カタールへ期待の選手vol.93】29歳で見えてきたカタールW杯への道。遅咲きボランチは大激戦区に食い込めるのか?/稲垣祥(名古屋グランパス/MF)

「ホントにそうそうたるメンバーの中、ベストイレブンの1人として受賞することでき、大変光栄に感じています。これも名古屋グランパスの成績が評価されてこそ。チームメートに感謝したいと思います」 12月6日に行われたJリーグ・アウォーズ。29歳にしてベストイレブンに初選出された稲垣祥(名古屋)は心からの喜びを口にした。 その栄誉に見合うだけのパフォーマンスを今季の彼は確実に見せていた。今季の名古屋は序盤10試合無敗と好スタートを切り、王者・川崎フロンターレとデッドヒートを繰り広げていたが、稲垣はこの10戦で3ゴールとFW陣を上回る決定力を発揮していた。大型連休中の川崎Fとの天王山2連戦を落とし、優勝争いから後退したものの、そのアウェー戦でも一矢報いるゴールをゲット。存在感を大いに高めた。 その後、名古屋はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)、天皇杯との掛け持ちを強いられ、両方とも準々決勝敗退という憂き目に遭ったが、唯一残ったYBCルヴァンカップは10月30日のファイナルでセレッソ大阪を2-0で撃破。クラブ初のリーグカップを手にした。その大一番でも稲垣は押し込まれた終盤に値千金のダメ押し弾を挙げ、白星を力強く引き寄せた。 ルヴァン杯では大会得点王にも輝いており、「点の取れる中盤のダイナモ」はシーズン通してまばゆいばかりの輝きを放った。この傑出したパフォーマンスを見た関係者から「11月の2022年カタールワールドカップ(W杯)アジア最終予選アウェー2連戦に稲垣が招集されないのはおかしい」という声が出たほど。年明け1月21日のウズベキスタンとのテストマッチに挑む日本代表メンバーに名を連ねたのも、「当然」という印象が強かった。 実際、代表ボランチ陣には不安要素も少なからずある。大黒柱の遠藤航(シュツットガルト)は東京五輪を含めてフル稼働を続けており、2020年夏からまともに休みを取っていない。いくら頑強な彼でも、このままカタールW杯まで酷使し続けるのはリスクがつきまとう。 最近、彼が担っている4-3-3のアンカー役は田中碧(デュッセルドルフ)、守田英正(サンタクララ)のいずれかが担えるものの、田中は所属クラブで出たりでなかったりと海外の壁に直面。守田の方はコロナウイルス陽性反応が出て、しばらく隔離生活を余儀なくされるため、1月27日の中国戦(埼玉)の時までにベストコンディションを取り戻せるか分からない。 もう1人のキーマン・柴崎岳(レガネス)は11月頭の監督交代後もコンスタントにピッチに立ち続けているが、最終予選序盤の低調なパフォーマンスが響いて、森保一監督の中での序列が低下している。 こういった状況だけに、彼らを補完できるボランチの出現が待たれるのは確か。稲垣なら攻守両面で明確な仕事ができるし、すでに代表経験もある。森保監督とはサンフレッチェ広島時代に短期間だが仕事をしている関係性もアドバンテージだ。年齢的に間もなく30歳で、今から国際経験を積み重ねていくとなれば難しい部分もあるだろうが、タフさと貪欲さを兼ね備えた彼ならハードルを越えられるはず。期待は少なくないのだ。 最終予選、そしてカタールW杯本大会に生き残るためには、2022年初頭から一気にスパートをかける必要がある。日本代表合宿は1月17日に千葉・幕張でスタートするが、その時点ではトップフィットした状態で合流することが求められる。そのうえで、ウズベキスタン戦で違いを見せつけることが、直後の中国・サウジアラビア2連戦残留への絶対条件となる。 遠藤航、田中碧、守田、柴崎の4枚よりもコンディションがよく、計算できる仕事を見せてくれるという評価を勝ち取れれば、稲垣が一気にチームの中核に入っていく可能性もゼロではない。「代表経験の浅い選手が割って入ることは十分ある」と森保監督自身も語気を強めているだけに、ここでサッカー人生を賭けた勝負に打って出るべきだ。 「自分のキャリアを振り返ると、苦しい時期がいくらでもあった。学生時代を含めても、プロになってからもそう。僕を長年、見てくださった方が『ホント、どうしようもないプレーをしていた』と思うような時期も全然あった。それを自分なりに消化しながら乗り越えてこれたから、今のような充実したシーズンを送れている。今までの財産を出せているなと思っています」 ルヴァンMVPを獲得した後、稲垣はしみじみとこう語ったが、30代になってからブレイクする遅咲きの人間が代表にいてもいい。東京五輪世代の台頭や若返りばかりが注目される昨今だが、回り道をしてきた選手が報われてもいいはず。FC東京U-15むさしからU-18に上がれず、帝京高校、日本体育大学と回り道をして、さらにプロになってからもヴァンフォーレ甲府、広島で地味なキャリアを積み重ねてきた彼のような男がW杯の大舞台に立つようなことがあれば、本当に多くの人々の勇気や希望になる。 カタールW杯イヤーの2022年。稲垣祥には世間を驚かすサプライズを期待したい。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2021.12.15 09:50 Wed
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【2022年カタールへ期待の選手vol.92】試合ごとに出場時間増。東京五輪世代のリーダーは長友佑都との競争に勝てるか?/中山雄太(ズヴォレ/DF)

「次の戦いはアウェーで厳しい試合になる。我々はワールドカップ(W杯)出場権をつかみ取るために、チーム一丸となってタフに粘り強く最後まで戦い抜いて、勝ち点3をつかみ取り、次につなげたいと思っています」 日本代表の森保一監督が改めて勝利への意気込みを新たにした通り、16日の2022年カタール・ワールドカップ(W杯)最終予選後半戦の一発目・オマーン戦(マスカット)は勝ち点3が必須の大一番だ。 仮にポイントを落とすようなことがあれば、サウジアラビア、オーストラリアの上位2強に離され、大陸間プレーオフの3位死守がやっとという状況になってしまう。日本サッカー協会の反町康治技術委員長も「Jリーグも代表にW杯へ行ってほしいと願っている。やはりストレートインが望ましい。そのためにもオマーン戦は落とせない」と危機感を口にしていた。 「勝っている時はチームを変えない」という定石通り、森保一監督は過去2戦で採用してきた4-3-3を継続し、大迫勇也(神戸)や長友佑都(FC東京)らベテラン勢を軸としたスタメンで挑むだろう。とはいえ、長友は9月の中国戦(ドーハ)から4戦連続で途中交代。指揮官の中でも90分フル稼働させ続ける考えはないようだ。 「試合に勝つためなので、僕は全然問題ない」と35歳の大ベテランは平常心を口にしていたが、東京五輪世代のリーダー格・中山雄太(ズヴォレ)の台頭に多少なりとも危機感を覚えているのは確かだろう。 「選手としては全然違うタイプ。僕は幅を取って仕掛けていくけど、雄太の場合はポジショニングを取りながらポゼッションをしていくし、技術力も高いし、僕自身も学ぶべき部分が多い。もともとボランチとかセンターバック(CB)をやっていたのに、サイドバック(SB)になってもあれだけ早く役割を認識してプレーできるのは、彼の賢さを物語っている」と長友は9歳年下のライバルを賞賛した。 この高評価を受け、中山自身は嬉しい気持ちも少なからず抱いただろう。が、それ以上に強いのが負けじ魂だ。「正直、途中出場では満足していない。スタメンで出られるようなパフォーマンスを見せなきゃいけない」と報道陣にも語っている通り、ライバルが長友であろうが、先発定着に突き進む覚悟だ。それが今回のオマーン戦で結実するかは定かではないが。中山の存在価値が日に日に高まっているのは紛れもない事実。そこは前向きに捉えていいだろう。 実際、オマーンという敵を考えた時、中山の高さは有効である。相手には左足の名手・モフシンがいて、直近の11日の中国戦(シャルジャ)でも彼の右CKから同点弾を叩き出している。日本はリスタートでなかなかゴールを奪えていないが、オマーンには一発がある。それを決めさせないためにも、中山の守備能力を最大限生かすべきなのだ。 相手のサイド攻撃対策を視野に入れても彼は有効なピースとなり得る。攻撃的な長友はタテ関係の南野拓実(リバプール)とのコンビを最大限生かし、高い位置まで攻め上がることが多いが、オマーンのような鋭いカウンター攻撃を持つ相手には、それが「両刃の剣」になりかねない。 加えて言うと、中山は長友のように前がかりにはならないし、タテ関係になるアタッカーの推進力のサポートを第一に考えるタイプ。南野と組む機会はここまで少ないが、浅野拓磨(ボーフム)や古橋亨梧(セルティック)のようなスピード系にしてみれば、後ろにしっかりと守備のできる人間が控えているのは心強い。そういった強みを発揮すべき時が今回のオマーン戦でも必ず来るはずだ。 「最終予選は初めての経験ですけど、今のところはまだ難しさをよく分かっていない状況です。それを知らないまま突っ走って行きたいなというのがある。うまく前だけを向いて、危なくなったらベテランの選手たちが手綱を引いてくれる。知らないことをポジティブに考えていけばいいと思います」と彼自身もいい意味で割り切って、この修羅場をくぐり抜けていく構えだ。 長友と中山、さらに旗手怜央(川崎)がいい競争を繰り広げつつ、状況や相手によって人材を使い分けられるようになれば、日本代表にとっても朗報だ。国際Aマッチ130試合に到達した長友の経験値はまだまだ今のチームに不可欠ではあるが、フィジカル面やキレの部分でやや下降線を辿っている。そのマイナス面を東京五輪世代の中山と旗手がしっかりと穴埋めできれば、日本の左SBは盤石になる。前々から懸念されてきた「ポスト長友問題」も解決に向かうはずだ。 今回のオマーン戦で勝利という結果を出すと同時に、左SBのバリエーションを広げられればまさに理想的。最終予選残り全試合で勝ち点3を稼ぎ続け、最終的にはサウジ、オーストラリアをかわして2位以内に入っているという結末になれば、日本サッカー界全体にとっても本当に最高のシナリオになる。若い世代のキーマン・中山にはその一翼をしっかりと担ってほしい。つねに冷静沈着な24歳のクレバーな男の底力を発揮すべき時は今しかない。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2021.11.16 11:40 Tue
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【2022年カタールへ期待の選手vol.91】ベトナム戦は左サイドバックでチャンス?酒井高徳も認める才能を遺憾なく発揮せよ!/旗手怜央(川崎フロンターレ/DF)

2022年カタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の行方を大きく左右する11月アウェー2連戦の初戦・ベトナム戦(ハノイ)が11日に迫ってきた。日本代表は長友佑都(FC東京)ら国内組第1陣の5人が8日に現地入りし、トレーニングを開始。9日には第2陣の12人が合流した。が、同日到着予定だった吉田麻也(サンプドリア)ら欧州組11人がオランダ発チャーター便の遅れによって十分なトレーニングができず、ほぼぶっつけ本番で大一番に挑むことになった。 9月のオマーン戦(吹田)、10月のサウジアラビア戦(ジェッダ)と前回・前々回の2連戦の初戦を落としている日本にしてみれば、今回こそは万全の準備をして一発目のゲームに挑みたかったはず。だが、またしても森保一監督のアテが外れた格好だ。 となれば、コンディションを重視したメンバーを組むか、あくまで主力級にこだわるかは指揮官の判断となる。ハノイが想定よりも気温が低く、爽やかな気象条件という追い風はあるものの、できるだけ前者を採った方がよさそうだ。 となれば、3日にJ1連覇を達成した川崎フロンターレ勢にもチャンスが巡ってきそうだ。とりわけ、マルチ型の旗手怜央などは非常に有効なピースになり得る。左サイドバック(SB)としても使えるし、左MFやインサイドハーフ、場合によってはFWとしても起用できるからだ。高いレベルで1人何役もこなしてくれる人材がいれば、さまざまな事態に対応できる。予期せぬアクシデントに見舞われている今回のような試合の場合、旗手は貴重な戦力になるだろう。 メンバー発表時にDF登録だったため、森保監督は左SBを第一に考えていると見られる。ここには代表キャップ数129試合の長友がいるが、直近のJ1の試合で横浜F・マリノスに0-8で大敗し、彼自身も失点に絡むなど、必ずしも絶好調というわけではない。長友のバックアップ役には中山雄太(ズウォレ)もいるが、ベトナム到着遅れの便に搭乗しているうえ、日本が主導権を握る展開を考えると、旗手の方がベターなチョイスと言っていい。酒井高徳(神戸)も「旗手君は非常にいい選手」と絶賛していた。それだけのポテンシャルを秘めているのは間違いないのだ。 「ベトナムはブロックを作って中を締めてくるけど、外は勝負できるなという印象がある。中もそこまで大きい選手がいないので、クロスも質のいいボールを上げられれば、必ず点にはつながると思う」と長友も攻略法を語っていたが、やはり今回はサイドアタックが1つの肝。そこでアグレッシブな攻守のできる人材は必須だ。 旗手ならそのイメージにピタリと合うし、状態も悪くない。東京五輪の時は1・5軍のような扱いだったが、その後、川崎で目に見える成長を遂げ、決定的な仕事をする回数も増えた。三笘薫(ユニオン・サン=ジロワーズ)と田中碧(デュッセルドルフ)という2人の主力が海外移籍した後、彼が主力の自覚をもってチームをけん引したからこそ、9月のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)直後のリーグ5連戦も乗り切れた。傍目から見ると、チーム得点王のレアンドロ・ダミアンやベテラン・家長昭博らの活躍が目立つかもしれないが、旗手の成長なくして、川崎の早期優勝決定はなかったといっても過言ではない。 その経験値を今こそA代表に還元すべき時だ。本人も長い間、この舞台に立つことを夢見ていた。静岡学園の卒業式の時には日本代表になりたいと目標を掲げていたという。 「僕がこういうふうになると思っている人は誰もいなかったと思います。ただ、僕だけは自分に期待しているというか、信じていたし、なれると思っていました」と東京五輪メンバー発表時にこう語ったが、U-24日本代表を経て、A代表に飛躍したのだから、自身のビジョン通りに階段を駆け上がっているということだ。 ただ、A代表というのは、選出されるだけで終わりではない。高校と川崎の先輩でもある大島僚太もたびたび日の丸を背負い、2018年ロシアW杯に参戦したが、大会直前のケガが響いて出番なしに終わっている。川崎の偉大なレジェンド・中村憲剛(JFAロールモデルコーチ)にしても、2010年南アフリカW杯ではパラグアイ戦の後半36分からしかピッチに立てなかった。A代表で出場機会を得て、結果を残し、主力へ上り詰めていくのがいかに難しいことかを旗手はひしひしと感じているはずだ。 それでも、静学時代の恩師・川口修監督から「UEFAチャンピオンズリーグ(UCL)決勝トーナメントに出られるような選手になれ」とハッパをかけられたことを本人は忘れてはいないはず。間もなく24歳になる旗手が成功街道を歩もうと思うなら、ここから一気にA代表での地位を固め、主力として日本をカタールへと導き、活躍するのが近道だ。 もしかするとその前にアンジェ・ポステコグルー監督率いるセルティックへの移籍話が決まる可能性もあるが、スコットランドへ行けたとしてもUCL上位のビッグクラブへのステップアップには強烈なインパクトが必要になる。カタールW杯は絶好の舞台。それを貪欲に取りに行くことが肝心なのだ。 さしあたって、フォーカスすべきは直近のベトナム戦だ。スタメンかサブかは分からないが、与えられた時間でキッチリ結果を残すことから全てが始まる。旗手怜央のA代表デビューが華々しいものになることを願ってやまない。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2021.11.11 11:45 Thu
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