【日本サッカー見聞録】ACL2試合から見えてきた危機感

2015.03.05 18:00 Thu
▽AFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)は第2節を終了し、3冠王者のG大阪、大型“補充”の浦和、そして鹿島の3チームが連敗スタートとなった。唯一プレーオフを勝ち上がった柏だけが1勝1分けで、全北現代(韓国)と同勝点ながら得失点差でグループEの首位に立った。

▽連敗スタートの日本勢3チームは各グループの最下位に沈んでいるだけに、グループステージ突破にはもう1敗も許されない状況だ。ちなみに東アジア勢で戦うグループFは意外にもブリーラム(タイ)が城南(韓国)と広州富力(中国)に連勝して首位に立っている。そしてグループGは北京国安(中国)が水原三星(韓国)とブリスベン・ロアー(豪州)に連勝し、グループHは予想通り広州恒大(中国)がFCソウル(韓国)とウエスタン・シドニー(豪州)に連勝して首位をキープしている。

▽このACL第2節は、3月3日に柏対ビン・ズオン(ベトナム)、翌日の4日は浦和対ブリスベン・ロアーを取材した。ビン・ズオンはベトナム選手の技術的なレベルが低いため柏が5-1と圧勝したが、チームはナイジェリア人とセネガル人のフィジカルコンタクトに優れた2トップがいて、ボランチにウガンダ人MF、最終ラインにはオーストラリア人のセンターバック(CB)がいたことには驚かされた。
▽そして翌日のブリスベン・ロアーはセルビア人とブラジル人のFWにドイツ人のMFを擁し、しっかりと守備ブロックを作って浦和のポゼッションを封じ、鋭いカウンターと厳しいプレスで1-0の勝利を収めた。豊富な資金力で欧州や南米の代表クラスを補強している中国勢だけでなく、ベトナムやオーストラリアも外国人枠をフルに活用してチームを強化している。そのことが取材した2試合で分かったことは収穫だったし、日本勢が苦戦していることにも納得できた。

▽ちなみに浦和対ブリスベン・ロアー戦で決勝点を決めたブランドン・ボレロは昨シーズン、Aリーグ(オーストラリア・リーグ)にデビューした19歳の新鋭だ。右サイドで縦パスを受けると、角度がないためクロスを送るかと思っていたら右足を強振してGK西川のニアサイド上を強烈に抜いた。
▽守っているGK西川にしたら、ボレロにはシュートの角度がほとんどないため、もう一度、縦に持ち出してクロスを送ると予測したかもしれない。しかし19歳の新鋭は「先週、北京に負けて息消沈していた」と正直に語りながら、「最初からアグレッシブに行こうと決めていた。ゴールできてラッキーだった」とACL初ゴールを喜んでいた。


(c) CWS Brains、 LTD.
▽ゴールだけでなく、攻守にサイドを上下動して貢献したストライカーは今後、日本の脅威になるかもしれない。ケーヒルの後継者として、その名前を憶えておいた方がいいだろう。

▽そして日本である。今シーズンからJリーグと日本サッカー協会(JFA)は、ACLでの日本チームのバックアップのため人的にも資金的にもサポートするようになった。とはいえそれは、対処療法的な一時しのぎに過ぎない。大物外国人選手の獲得資金を提供するようなものではなく、強化は各クラブの経営努力に任されている。それはそれで “健全経営”のために必要かもしれないが、結果として大物外国人の獲得は中国を筆頭に後塵を拝しているのが現実だ。

▽ACLを勝ち抜くにはJリーグ勢は資金的にかなり難しいのではないか。それが2日間、取材した正直な感想でもある。G大阪や浦和に象徴されるように、ポゼッションを優先して攻守の切り替えの遅いサッカーでは、欧州はもちろんアジアからも取り残される可能性が高い。そんな不安を覚えたACLのグループステージだった。

▽アジアのサッカーは日々、確実に進化している。日本がガラパゴス化しないためにも、劇的な変革が急務と言えよう。クラブチームの実力差が、代表の実力差となって表れることも、そう遠い日ではないかもしれない。

【六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。

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