【2022年カタールへ期待の選手vol.108】輝きを放った2007年U-17W杯から15年。父・貴史さんと同じA代表に上り詰めた右サイドのクロスマスター/水沼宏太(横浜F・マリノス/MF)
2022.07.17 13:30 Sun
「サッカー選手である以上、A代表というのはずっと目指してきたところ。この年になってもできることを示せたんで、年長者らしくやっていきたいですね。ただ、特に自分を変えることはないし、プレーを評価してもらって、代表に選んでもらったので、思い切り武器を表現したい。『諦めずにひたむきに』というのが僕のモットーなので、そういうのをしっかり表現できればいいと思ってます」7月19日の香港戦(鹿島)から幕を開ける2022年E-1選手権。32歳にして初めて日本代表に抜擢された水沼宏太(横浜)を目を輝かせながら、新たな意欲を口にした。
日本代表の若返りを志向する森保監督はなぜ、わざわざ30代の彼を初招集したのか…。13日の会見で思惑の一端を明かしている。
「水沼は再度で起点になってクロスを入れられるし、ゴール前に入っていける。さらにハードワークもできる。チームを勝たせられる存在感を発揮しているので選びました」
この発言を見ると、本当にフラットに今季J1での活躍を認めて選出したということだろう。「実力があれば年齢は関係ない」と彼が心底、思っているのであれば、年齢層の高い面々にとって刺激は大きいはず。森保監督と日本リーグ時代やJリーグ初期に同じピッチに立ったことがある代表OBの父・貴史さん(解説者)も素直に喜んだことだろう。
彼が初めて世界舞台に立ったのが、2007年U-17ワールドカップ(W杯)だった。日本はハイチ、ナイジェリア、フランスと同組で31勝2敗の3位。ただ、3戦終了時点では他組の動向次第ではラウンド16に進める可能性があった。結果を待つ時間にメディア対応が行われ、5〜6人の記者で21人の選手を取材するという珍しい状況になってしまった。
筆者もその中の1人で、水沼ともじっくり話したのだが、「宏太君が幼い頃、お父さんが『息子にはサッカーをやってほしい。サッカーには喜びや苦しみなど全てが詰まっているから』と話していたよ」と声をかけると「その気持ちはよく分かっています」と神妙な面持ちで語っていたのをよく覚えている。
「父に追いつけ追い越せ」という目標は、2007年にマリノスでトップ昇格してからずっと彼の脳裏に刻まれてきたことだろう。
しかしながら、日本屈指の名門クラブで早い段階からスターダムにのし上がるのはやはり困難だ。そこで、2010年にJ2・栃木SCへのレンタル移籍を決断。ある程度の実績を残すと同時に、2010年アジア大会(広州)の優勝メンバーに名を連ねることに成功する。2012年ロンドン五輪の候補にも浮上したが、J1で活躍する清武弘嗣(C大阪)や東慶悟(FC東京)、海外組の大津祐樹(磐田)らがひしめくアタッカー陣に割って入るのは、想像以上にハードルが高かった。本人も2012年に赴いたJ1・サガン鳥栖で猛烈な追い上げを見せたが、惜しくも落選。予備登録にとどまり、ここから10年間、代表という場所から遠ざかることになってしまったのである。
「いつから日の丸を背負ってないんだろうと考えた時、10年くらい経ってるんですよね。それまで日本代表をずっと目指してきたけど、なかなか辿り着くことはできなかった。その後、鳥栖、FC東京、セレッソ大阪、マリノスといろんなチームに行って、いろんな方と出会った。それは自分にとって大きなことで、それがなければ今の自分はいない。自分の人生に関わってくれたみなさんに感謝だなと思います」と水沼は20〜30代の紆余曲折に思いを馳せた。
試合から遠ざかった時期もあれば、サブが指定席だった時代もある。苦労人はその全ての糧にして、飛躍につなげた。そしてここから、より高い領域に上り詰めようとしている。今回のE-1はまさに新たなキャリアのスタートと言っていい。
「今回のメンバーを見た時、自分が一番上なのかと(笑)。だからこそ、年長者らしくやっていきたい。マリノスでやっていることを代表でも思い切り見せられれば、ポジティブな存在になれると信じてます」
「右サイドにはいろんなタイプの選手がいるけど、自分は今回の代表になかなかいないタイプ。今まで代表に選ばれている選手とは違ったプレーをしていきたいですね」
本人がこう語ったように、[4-3-3]の右サイドを主戦場とするのは、今回のメンバーの中では彼1人と見ていい。もちろんチームメートの宮市亮や東京五輪代表の相馬勇紀(名古屋)は両サイドをこなせるし、山根視来(川崎)のようにサイドバックながらウイング的な仕事を得意とする選手はいるが、水沼のようなクロスマスターではない。自らゲームを作り、右から得点をお膳立てし、さらに16日の鳥栖戦で見せたような鋭いゴールも奪えるというベテラン選手が今回、圧倒的存在感を示してくれれば、日本は2度目のE-1優勝に大きく近づくはずだ。
4カ月後のカタールW杯滑り込みの布石を打つ意味でも、水沼には圧倒的なパフォーマンスを披露してほしいものである。
日本代表の若返りを志向する森保監督はなぜ、わざわざ30代の彼を初招集したのか…。13日の会見で思惑の一端を明かしている。
この発言を見ると、本当にフラットに今季J1での活躍を認めて選出したということだろう。「実力があれば年齢は関係ない」と彼が心底、思っているのであれば、年齢層の高い面々にとって刺激は大きいはず。森保監督と日本リーグ時代やJリーグ初期に同じピッチに立ったことがある代表OBの父・貴史さん(解説者)も素直に喜んだことだろう。
その水沼だが、もともとマリノスのアカデミーで育ち、U-15年代から日の丸を背負ってきた逸材だった。U-17日本代表時代は柿谷曜一朗(名古屋)と並ぶ攻撃の看板選手として日本攻撃陣をけん引。走力と献身性、クロスの精度、シュート力という部分では同年代で群を抜いていた。
彼が初めて世界舞台に立ったのが、2007年U-17ワールドカップ(W杯)だった。日本はハイチ、ナイジェリア、フランスと同組で31勝2敗の3位。ただ、3戦終了時点では他組の動向次第ではラウンド16に進める可能性があった。結果を待つ時間にメディア対応が行われ、5〜6人の記者で21人の選手を取材するという珍しい状況になってしまった。
筆者もその中の1人で、水沼ともじっくり話したのだが、「宏太君が幼い頃、お父さんが『息子にはサッカーをやってほしい。サッカーには喜びや苦しみなど全てが詰まっているから』と話していたよ」と声をかけると「その気持ちはよく分かっています」と神妙な面持ちで語っていたのをよく覚えている。
「父に追いつけ追い越せ」という目標は、2007年にマリノスでトップ昇格してからずっと彼の脳裏に刻まれてきたことだろう。
しかしながら、日本屈指の名門クラブで早い段階からスターダムにのし上がるのはやはり困難だ。そこで、2010年にJ2・栃木SCへのレンタル移籍を決断。ある程度の実績を残すと同時に、2010年アジア大会(広州)の優勝メンバーに名を連ねることに成功する。2012年ロンドン五輪の候補にも浮上したが、J1で活躍する清武弘嗣(C大阪)や東慶悟(FC東京)、海外組の大津祐樹(磐田)らがひしめくアタッカー陣に割って入るのは、想像以上にハードルが高かった。本人も2012年に赴いたJ1・サガン鳥栖で猛烈な追い上げを見せたが、惜しくも落選。予備登録にとどまり、ここから10年間、代表という場所から遠ざかることになってしまったのである。
「いつから日の丸を背負ってないんだろうと考えた時、10年くらい経ってるんですよね。それまで日本代表をずっと目指してきたけど、なかなか辿り着くことはできなかった。その後、鳥栖、FC東京、セレッソ大阪、マリノスといろんなチームに行って、いろんな方と出会った。それは自分にとって大きなことで、それがなければ今の自分はいない。自分の人生に関わってくれたみなさんに感謝だなと思います」と水沼は20〜30代の紆余曲折に思いを馳せた。
試合から遠ざかった時期もあれば、サブが指定席だった時代もある。苦労人はその全ての糧にして、飛躍につなげた。そしてここから、より高い領域に上り詰めようとしている。今回のE-1はまさに新たなキャリアのスタートと言っていい。
「今回のメンバーを見た時、自分が一番上なのかと(笑)。だからこそ、年長者らしくやっていきたい。マリノスでやっていることを代表でも思い切り見せられれば、ポジティブな存在になれると信じてます」
「右サイドにはいろんなタイプの選手がいるけど、自分は今回の代表になかなかいないタイプ。今まで代表に選ばれている選手とは違ったプレーをしていきたいですね」
本人がこう語ったように、[4-3-3]の右サイドを主戦場とするのは、今回のメンバーの中では彼1人と見ていい。もちろんチームメートの宮市亮や東京五輪代表の相馬勇紀(名古屋)は両サイドをこなせるし、山根視来(川崎)のようにサイドバックながらウイング的な仕事を得意とする選手はいるが、水沼のようなクロスマスターではない。自らゲームを作り、右から得点をお膳立てし、さらに16日の鳥栖戦で見せたような鋭いゴールも奪えるというベテラン選手が今回、圧倒的存在感を示してくれれば、日本は2度目のE-1優勝に大きく近づくはずだ。
4カ月後のカタールW杯滑り込みの布石を打つ意味でも、水沼には圧倒的なパフォーマンスを披露してほしいものである。
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