「総合力」を高めるための実験は及第点…森保監督の調合がカギに/日本代表コラム

2019.01.18 18:15 Fri
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「この試合に関してもこの大会を総力戦で戦っていくということをチーム内で共有していましたが、ウズベキスタン相手に総合力を示し、難しい試合を制して勝利してくれたと思います」

ウズベキスタン代表に逆転勝利を収め、グループステージ3連勝を果たした試合後、森保一監督が語った言葉だ。

◆「総合力」を求めた一戦

オマーン代表戦でグループステージの突破を決めていた日本代表。ラウンド16の対戦相手が決定するこのウズベキスタン戦には、FW北川航也(清水エスパルス)以外のスタメンを10名変更した。

10名の中には、MF塩谷司(アル・アイン)、MF乾貴士(ベティス)といった森保体制で初招集を受けた選手を含め、GKシュミット・ダニエル(ベガルタ仙台)、DF室屋成(FC東京)、DF三浦弦太(ガンバ大阪)、DF佐々木翔(サンフレッチェ広島)、MF青山敏弘(サンフレッチェ広島)とアジアカップ初出場の選手も多くピッチに立った。

チームの完成度という点では、当然ながら初めての組み合わせでもあり、高かったとは言えない。しかし、選手個々が自身の持ち味を出してプレーするという点においては、これまでの2試合に比べて発揮できていたように思う。

◆目を見張る塩谷司のプレー
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この試合で大きなインパクトを残したのは、塩谷だろう。サンフレッチェ広島時代は、3バックの右を担当していたが、アル・アインでは左サイドバックやセンターバックでのプレーが主となっている。

ボランチでのプレーも試合によってあるものの、殆どが最終ラインでプレーしている。しかし、この日は広島時代の同僚である青山と初めてボランチでコンビを形成。しかし、持ち前の対人守備の強さと、身体能力、読みの鋭さを生かした守備で躍動。さらには、持ち前の攻撃センスも発揮し、ゴール前に上がるシーンも見られた。

そして決勝点となった豪快なミドルシュート。Jリーグ時代から塩谷を観ている方なら、何度も目にした強烈なシュートが、日本代表を逆転勝利へと導いた。

初戦は冨安健洋(シント=トロイデン)と柴崎岳(ヘタフェ)、2戦目は柴崎と遠藤航(シント=トロイデン)がボランチを務めていた。この3名の中で、最も持ち味を出していたのは遠藤だ。攻守にわたってピッチ上を走り回り、潤滑油となっていた。

そして、このウズベキスタン戦でのプレーで、塩谷がそこに割って入る可能性が出てきた。ボランチという選択肢をこれまでは持てなかったが、攻守にわたるプレーはボランチで活かせることも見て取れた。現段階ではオプションでしかないかもしれないが、この先の日本代表の序列が変わる可能性を見出した。

◆明暗分かれた両サイド
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一方で、両サイドハーフに入ったFW伊東純也(柏レイソル)と乾は明暗が分かれたと言っても良いだろう。

ロシア・ワールドカップ以来の日本代表招集となった乾は、森保体制で初出場。初の組み合わせとなるメンバー構成ではあったものの、攻撃面での違いをつけることが求められていたはずだ。

左サイドでボールを受けてタメを作り、攻撃を促す場面は見られた。しかし、アクセントを付けるまでのパフォーマンスは見せられず、また、守備面ではカウンターを抑えなくてはいけない場面でも突破を許すなど、ルーズな部分が目立ってしまった。立ち上がりから運動量高くプレーしていたことも影響はしたとは思うが、期待されていたものを発揮できなかったことは、大きな課題と言えるだろう。

一方で、伊東は出色の出来と言えるだろう。前半こそ、同サイドの室屋とポジションが被ってしまう場面も見られたが、後半は前方のスペースを上手く使い、ストロングポイントであるスピードもカウンターの場面でウズベキスタンの脅威となった。

2トップとの連携面など課題は残しているが、ウズベキスタンの守備陣を混乱させていたことは間違いない。守備面でも最終ラインまで戻ってブロックするなど、逆サイドの乾と比較しても攻守にわたって好パフォーマンスを見せていた。

◆答えの見つからない前線のカード
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オマーン戦でも大きな課題として残った1トップだが、この試合は武藤と北川が2トップに近い関係でピッチに立った。

1トップでそれぞれプレーしたオマーン戦と比べ、両選手の動きにも改善が見られ、コンビネーションを含めても役割が整理されていたように見える。しかし、効果的だったかと言われると、まだまだ物足りないと言わざるを得ない。

軽率な守備から先制をされた直後、室屋のクロスに武藤が飛び込んで合わせたシーンは、流れを含めて見事だった。室屋の突破もさることながら、北川がニアで潰れ、武藤は中央でフリーになりヘディング。2トップとしての距離感、立ち位置もしっかりと発揮できた。

しかしながら、後半のプレーには気になるところも。自陣からのカウンターを仕掛け、左サイドで伊東がボールを持つと、中央の無糖へパス。これを武藤がワンタッチで流すと、後方から猛然と走り込んだ北川がフリーでシュートを放った。

前半も、反転シュートをGKにセーブされるなど、この試合は決定機を逃していた北川だったが、このシーンでもシュートは大きく枠を外れる。長い距離を走ってきたという側面はあるが、逆に捉えればカウンターというのはそういったもの。そこでシュートを枠に飛ばせないのは、ストライカーとして大きな課題だ。

この先は1点が明暗を分ける一発勝負がスタートするだけに、あの様なシーンは相手を助けてしまう可能性もある。ピンチの後にはチャンスありという言葉がある様に、失点を逃れた相手が息を吹き返す場面はこれまでに何度も観た事がある。先発、途中出場含めて3試合全てに出場した北川。Jリーグで結果を残しての招集だが、ポジションが確保されているわけではない。目立たないファインプレーはこれまでも見せていたが、そろそろゴールという目に見える結果が欲しいところだ。

◆「総合力」を高めるための調合は
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森保監督が口にした「総合力」。突出した選手の力に頼るだけでなく、チームとして成長していく必要がある日本代表にとっては、このウズベキスタン戦の勝利は、3連勝したということ以上の価値があるだろう。

ベンチから試合を見ていた主力組は、それぞれのポジションの選手のプレーを見て思うことがあったはずだ。公式大会でタイトルを獲るには、大きな変化、突出した何かが必要となる。いわゆる、“シンデレラボーイ”という存在だ。

その観点では、森保監督とJ1のタイトルを獲得し、急遽追加招集され、UAEの地を知る塩谷の活躍は、何かを予感させるものではあった。それと同時に、選手間での競争意識がより強くなることが想定でき、チームが向上していくことに繋がれば、この実験は成功だったと言える。

一方で、森保監督には次の実験が待っている。「総合力」を高めつつも、コンディションを整えることとチームの形を作っていかなくてはいけない日本代表は、ここから移動を含めた厳しい日程が待っている。タイトルまで4試合、一発勝負が続く中で、「総合力」を最大化するための調合を考える必要がある。

ウズベキスタン戦で見られた選手たちの気概が、チームの成長とともに、優勝という結果に近づくのか。調整、準備を含めた、森保監督の腕の見せ所がやってきた。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
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