「総合力」を高めるための実験は及第点…森保監督の調合がカギに/日本代表コラム

2019.01.18 18:15 Fri
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「この試合に関してもこの大会を総力戦で戦っていくということをチーム内で共有していましたが、ウズベキスタン相手に総合力を示し、難しい試合を制して勝利してくれたと思います」ウズベキスタン代表に逆転勝利を収め、グループステージ3連勝を果たした試合後、森保一監督が語った言葉だ。

◆「総合力」を求めた一戦

オマーン代表戦でグループステージの突破を決めていた日本代表。ラウンド16の対戦相手が決定するこのウズベキスタン戦には、FW北川航也(清水エスパルス)以外のスタメンを10名変更した。

10名の中には、MF塩谷司(アル・アイン)、MF乾貴士(ベティス)といった森保体制で初招集を受けた選手を含め、GKシュミット・ダニエル(ベガルタ仙台)、DF室屋成(FC東京)、DF三浦弦太(ガンバ大阪)、DF佐々木翔(サンフレッチェ広島)、MF青山敏弘(サンフレッチェ広島)とアジアカップ初出場の選手も多くピッチに立った。

チームの完成度という点では、当然ながら初めての組み合わせでもあり、高かったとは言えない。しかし、選手個々が自身の持ち味を出してプレーするという点においては、これまでの2試合に比べて発揮できていたように思う。

◆目を見張る塩谷司のプレー
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この試合で大きなインパクトを残したのは、塩谷だろう。サンフレッチェ広島時代は、3バックの右を担当していたが、アル・アインでは左サイドバックやセンターバックでのプレーが主となっている。

ボランチでのプレーも試合によってあるものの、殆どが最終ラインでプレーしている。しかし、この日は広島時代の同僚である青山と初めてボランチでコンビを形成。しかし、持ち前の対人守備の強さと、身体能力、読みの鋭さを生かした守備で躍動。さらには、持ち前の攻撃センスも発揮し、ゴール前に上がるシーンも見られた。

そして決勝点となった豪快なミドルシュート。Jリーグ時代から塩谷を観ている方なら、何度も目にした強烈なシュートが、日本代表を逆転勝利へと導いた。

初戦は冨安健洋(シント=トロイデン)と柴崎岳(ヘタフェ)、2戦目は柴崎と遠藤航(シント=トロイデン)がボランチを務めていた。この3名の中で、最も持ち味を出していたのは遠藤だ。攻守にわたってピッチ上を走り回り、潤滑油となっていた。

そして、このウズベキスタン戦でのプレーで、塩谷がそこに割って入る可能性が出てきた。ボランチという選択肢をこれまでは持てなかったが、攻守にわたるプレーはボランチで活かせることも見て取れた。現段階ではオプションでしかないかもしれないが、この先の日本代表の序列が変わる可能性を見出した。

◆明暗分かれた両サイド
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一方で、両サイドハーフに入ったFW伊東純也(柏レイソル)と乾は明暗が分かれたと言っても良いだろう。

ロシア・ワールドカップ以来の日本代表招集となった乾は、森保体制で初出場。初の組み合わせとなるメンバー構成ではあったものの、攻撃面での違いをつけることが求められていたはずだ。

左サイドでボールを受けてタメを作り、攻撃を促す場面は見られた。しかし、アクセントを付けるまでのパフォーマンスは見せられず、また、守備面ではカウンターを抑えなくてはいけない場面でも突破を許すなど、ルーズな部分が目立ってしまった。立ち上がりから運動量高くプレーしていたことも影響はしたとは思うが、期待されていたものを発揮できなかったことは、大きな課題と言えるだろう。

一方で、伊東は出色の出来と言えるだろう。前半こそ、同サイドの室屋とポジションが被ってしまう場面も見られたが、後半は前方のスペースを上手く使い、ストロングポイントであるスピードもカウンターの場面でウズベキスタンの脅威となった。

2トップとの連携面など課題は残しているが、ウズベキスタンの守備陣を混乱させていたことは間違いない。守備面でも最終ラインまで戻ってブロックするなど、逆サイドの乾と比較しても攻守にわたって好パフォーマンスを見せていた。

◆答えの見つからない前線のカード
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オマーン戦でも大きな課題として残った1トップだが、この試合は武藤と北川が2トップに近い関係でピッチに立った。

1トップでそれぞれプレーしたオマーン戦と比べ、両選手の動きにも改善が見られ、コンビネーションを含めても役割が整理されていたように見える。しかし、効果的だったかと言われると、まだまだ物足りないと言わざるを得ない。

軽率な守備から先制をされた直後、室屋のクロスに武藤が飛び込んで合わせたシーンは、流れを含めて見事だった。室屋の突破もさることながら、北川がニアで潰れ、武藤は中央でフリーになりヘディング。2トップとしての距離感、立ち位置もしっかりと発揮できた。

しかしながら、後半のプレーには気になるところも。自陣からのカウンターを仕掛け、左サイドで伊東がボールを持つと、中央の無糖へパス。これを武藤がワンタッチで流すと、後方から猛然と走り込んだ北川がフリーでシュートを放った。

前半も、反転シュートをGKにセーブされるなど、この試合は決定機を逃していた北川だったが、このシーンでもシュートは大きく枠を外れる。長い距離を走ってきたという側面はあるが、逆に捉えればカウンターというのはそういったもの。そこでシュートを枠に飛ばせないのは、ストライカーとして大きな課題だ。

この先は1点が明暗を分ける一発勝負がスタートするだけに、あの様なシーンは相手を助けてしまう可能性もある。ピンチの後にはチャンスありという言葉がある様に、失点を逃れた相手が息を吹き返す場面はこれまでに何度も観た事がある。先発、途中出場含めて3試合全てに出場した北川。Jリーグで結果を残しての招集だが、ポジションが確保されているわけではない。目立たないファインプレーはこれまでも見せていたが、そろそろゴールという目に見える結果が欲しいところだ。

◆「総合力」を高めるための調合は
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森保監督が口にした「総合力」。突出した選手の力に頼るだけでなく、チームとして成長していく必要がある日本代表にとっては、このウズベキスタン戦の勝利は、3連勝したということ以上の価値があるだろう。

ベンチから試合を見ていた主力組は、それぞれのポジションの選手のプレーを見て思うことがあったはずだ。公式大会でタイトルを獲るには、大きな変化、突出した何かが必要となる。いわゆる、“シンデレラボーイ”という存在だ。

その観点では、森保監督とJ1のタイトルを獲得し、急遽追加招集され、UAEの地を知る塩谷の活躍は、何かを予感させるものではあった。それと同時に、選手間での競争意識がより強くなることが想定でき、チームが向上していくことに繋がれば、この実験は成功だったと言える。

一方で、森保監督には次の実験が待っている。「総合力」を高めつつも、コンディションを整えることとチームの形を作っていかなくてはいけない日本代表は、ここから移動を含めた厳しい日程が待っている。タイトルまで4試合、一発勝負が続く中で、「総合力」を最大化するための調合を考える必要がある。

ウズベキスタン戦で見られた選手たちの気概が、チームの成長とともに、優勝という結果に近づくのか。調整、準備を含めた、森保監督の腕の見せ所がやってきた。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
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1年ぶりの試合で感じたアフリカ特有の“距離”、カギはアグレッシブさと連動性/日本代表コラム

A代表としては昨年12月のEAFF E-1サッカー選手権以来となる活動となった9日のカメルーン代表戦。オールヨーロッパ組で編成されたチームにとっては、国内組で臨んだE-1選手権でプレーしていない選手が多く、およそ1年ぶりの試合となった。 それぞれが各クラブで1年間積み上げたものを出すべく臨んだ試合。キックオフ直後のプレーでMF南野拓実(リバプール)がファウルこそ取られたが、そこからもチームとしての入りを間違えないよう、高い意識を感じさせた。 <span class="paragraph-title">◆アグレッシブな姿勢を見せたが…</span> それは前半から守備面では多く見られた。先発起用となったMF中山雄太(ズヴォレ)も積極的にボールを奪いに行き、前線で起用された選手たちもそれぞれ前からプレスをかけて行った。 その圧力に負けたのか、カメルーン代表も立ち上がりは浮き足立ち、GKへのバックパスがあわやオウンゴールになりそうな場面もあったが、10分過ぎからカメルーンが徐々にペースをつかんで行った。 この辺りから日本のアグレッシブに行く姿勢が徐々に空回りし始める。1つは前線の4枚とボランチの距離が開いてしまったことが理由だろう。プレスというのはチーム全体が連動して行ってこそ効果があり、単独でのプレスは高いレベルでは殆どボール奪取には繋がらない。 カメルーンも徐々に日本のプレスを回避し、サイドバックからセンターバックへつなぎ逆サイドへと展開。そこから中に戻したり、前を使ったりと攻撃に転じていた。プレス回避をさせてしまったという点では、久々の実戦ということで、全体の連動性が少し落ちていたことも理由の1つだろう。この点は時間が経過するにつれて解消されて行っただけに、大きな問題ではなかった。 また、奪ってから早く攻めようという意識がありすぎたのか、ボール奪取からのパスが通らないシーンも多く見られた。アグレッシブなだけでは通用せず、いかに冷静さとバランスを取るかが重要になってくるだろう。 <span class="paragraph-title">◆アフリカ特有の“距離”</span> もう1つの問題は、アフリカ人選手特有の“間合い”だ。よく言われる“懐の深さ”というものがあるが、日本代表の選手が奪いに行っても、ボールが少し届かない位置に置かれてしまう場面が多かった。取れた気になっても取りきれず、入れかわられてパスを繋がれるという場面が多かった。 また、攻撃時でもパスやドリブルを仕掛けた際、絶妙に足が伸びてカットされる場面が散見された。パスを出した側も、ドリブルを仕掛けた側も、普段の感覚なら抜けているであろうシーンだったが、さらに足が伸びるアフリカ人選手の特徴に苦しめられたと言える。 ヨーロッパでプレーし、アフリカ人選手との対戦や、チームメイトとして知ることは多くとも、すべての局面でその感覚が求められることはそうそうない。加えてトニ・コンセイソン監督が規律をチームもにもたらしたことで、カメルーン代表はチームとしても機能。選手間の距離が非常に保たれており、ビルドアップがうまくハマっていたのも、その距離がカギだったように見えた。 個々能力の高さだけでなく、チームとして連動されたことは、日本にとっては大きな壁となったはず。コートジボワール代表戦では、カメルーン戦で感じた微妙な距離の違いを加味して、選手たちにはプレーしてもらいたい。 <span class="paragraph-title">◆システム変更への対応力</span> 一方で評価すべき点がないわけでもない。もちろんゴールを奪えなかったが、無失点で終わり、決定的なシーンすらあまり作らせていなかった。加えて、前半と後半でシステムを変更し、選手たちがそこにアジャストしたことは大きい。 「ハーフタイムでどう話そうかと思った」と柴崎岳(レガネス)が語っていたように、選手の中でもハマっていないことは感じていたとのこと。そこで森保一監督がシステム変更に打って出た。 後半は3バックにし、MF伊東純也(ヘンク)を入れてピッチの幅を使うことを選んだ。結果として、右サイドの伊東が相手の裏を取る動きを何度も見せ、日本の攻撃の形が作られていった。 ラストプレーのシーンでも伊東が特徴であるドリブルで縦に抜けた結果、ボックス手前でFKを獲得。惜しくもMF久保建英(ビジャレアル)のシュートはGKにセーブされてしまったが、こういったシーンをもう少し早く作れていればゴールも奪えていただろう。 また、守備に奔走していた中山も前にしっかりと出て奪い、攻撃にも参加。選手が入れ替わる中、カメルーンのパフォーマンスが落ちてきたこともあったが、終盤はしっかりと主導権を握っていた。 2つのシステムをしっかりとこなしたこと、勝ち切れないまでも、ピッチ上の状況に合わせて対応できたことは、1年ぶりの合宿となったことを考えても、プラス材料だと言えるだろう。コートジボワール戦では、勝利、ゴールといった結果を求めたい。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2020.10.11 21:45 Sun
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形なくして勝利なし…森保一監督率いる東京五輪代表に覚える不安/日本代表コラム

チームの主力を務めてきた海外組が不在だったというエクスキューズはあるが、屈辱以外の何物でもない結果となった。 森保一監督率いるU-23日本代表は、AFC U-23選手権の第2戦のシリア代表戦で1-2と敗戦。初戦のサウジアラビア代表戦に続く連敗で、大会を後にすることが決定した。 <div id="cws_ad"><script src="//player.daznservices.com/player.js#44a12140e3dda008f998a5a1a9.1tybkqliqmgvi1ndbmyxnzxqc3$videoid=sy77dnqytg7e18a4vgo3kgr9x" async></script></div> お粗末と言えばそれまで。サウジアラビア戦同様に、先手を奪われるゲーム展開となり、追いつくものの、試合終盤に失点し連敗を喫した。 「勝つためのメンバーで戦いたい」と試合前に語っていた森保監督は、サウジアラビア戦から6名のメンバーを変更。勝ち上がりに望みをつなぐべく、シリアに挑んだ。 ◆11月から変わらない守備の問題 しかし7分、スルーパスを通されるとGKと一対一のピンチに。ここはGK大迫敬介のセーブで凌ぐも、その流れから与えたCKではニアでフリックされると、ボックス中央で町田浩樹がファウル。VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)によるチェックが入り、PKを与えることとなった。 直接的な原因は町田が相手選手の頭部を蹴り上げる形となったことだが、そもそもはCKを与えることとなったシーンの守り方にある。ハーフウェイライン付近で齊藤未月が相手選手に寄せるも、体勢を崩しながらスルーパスで通されてしまう。渡辺剛が寄せ、コースを限定したことで大迫がセーブできたが、このスルーパスを出すところまでのリスク管理がなっていなかった。 前半のうちに相馬勇紀のミドルシュートで追いついた日本。後半は若干修正されてペースを掴んだ時間帯もあり、決定機も作ったが決められず。88分にロングカウンターを受けると、失点を喫し、1-2で敗れた。 2失点目のシーンも相手選手がドリブルで抜け出した際、町田がボールホルダーにチャレンジすることが可能だった。しかし、並走するバラカト(9番)のケアを選択したためにボックス内に侵入。そのままノープレッシャーでシュートを決められてしまった。 サウジアラビア戦の2失点、そしてシリア戦の2失点。ひいては失点につながらないシーンであっても、守備の対応のまずさは同じだ。それは昨年11月に広島で行われたU-23コロンビア代表戦から何も成長していないと言える。後手を踏む守備、寄せの甘さ、ボールを奪い切るという意識。12月のU-23ジャマイカ代表戦は相手のレベル、コンディションの問題もあり計算できるものではなく、それを除けば3試合連続で同じやられ方をしていると言っていい。 ◆オーガナイズされていないチーム 今大会、選手の招集に関しては強制力がないため、海外組の選手は食野亮太郎(ハーツ)のみの参加となった。その食野もグループステージのみの参加となることが濃厚と言われていた状況だ。今となっては、グループステージしか戦えないため、ハーツとしては予定通り食野を戻すことができて安心だろう。 この数年で東京オリンピック世代の多くの選手が日本を飛び立った。キャプテンを務めるDF中山雄太(ズヴォレ)を筆頭に、DF冨安健洋(ボローニャ)、DF菅原由勢(AZ)、DF板倉滉(フローニンヘン)、MF三好康児(アントワープ)、MF久保建英(マジョルカ)、FW安部裕葵(バルセロナ)、FW前田大然(マリティモ)がヨーロッパへ。MF堂安律(PSV)もオランダでプレーしており、主力の大半が居ない大会という事実もある。 しかし、日本のサッカーがレベルアップしていくのであれば、この流れはこの先も止まることはないことであり、4年後のパリ・オリンピックの出場権が獲得できなくなる可能性は、現実問題として考えなくてはいけない状況に陥ったと言えるだろう。 前述のコロンビア戦は、久保、堂安をA代表から外してまで臨んだものの0-2で惨敗。チームとしての形はなく、攻撃は単発、守備は軽率という体たらくぶりを見せることとなってしまった。 もちろん集まる時間が少ないということは十分理解できるが、今回は国内組がメインとなって臨んでおり、タイに入ってからも時間はあった。これまでの海外遠征でも一緒にプレーしていたことはあり、チーム力が欠落している言い訳はできない。 ◆再現性のない攻守のプレー しかし、守備面での約束事はこの2試合でも見られていない。カバーに入るのか、ボールホルダーに寄せるのか。どの位置でボールを奪いに行くのか、それとも遅らせるのか。どの局面で、何を選択するという最低限の約束事があるとは考えにくい失点の仕方を4つしている。(1つはバックパスのミスだが、これも含めてだ) 一方で、攻撃面も課題は一緒だ。サウジアラビア戦は小川航基を1トップに、食野と旗手怜央をシャドーに配置し、右WBに橋岡大樹、左WBに杉岡大暉を配置。シリア戦は上田綺世をトップに、食野と森島司をシャドーに、右WBは橋岡、左WBに相馬勇紀を配置した。 サウジアラビア戦は前線のコンビネーションがハマらず、良い形でボールが入るシーンが少なかった。食野の強引なシュートによって1点は奪ったが、クロスも合わず、コンビネーションも合わないというシーンが目立った。 そして迎えたシリア戦。組み合わせを変更したものの、サウジアラビア戦の課題は継続。上田が動き出しているのを見る選手は少なく、頼みの綱は相馬の突破と橋岡のクロスのみ。食野はスペースが少なかった影響もあり、強引なプレーが目立った。森島はバランスを取りながらボールを繋いでいたが、決定的な仕事はできなかった。 攻撃の形というものが確立されていないチームにおいては、選手の組み合わせ、意思の疎通が重視される。しかし、チーム作りが進んでいない中で、それを求めるのは酷というもの。ゴールこそ2つ奪っても、強引なシュートからであり、再現性は皆無だ。この完成度では、攻守ともに東京オリンピック本大会が不安でならない。 ◆個に頼る戦いには不安 シリア戦では、左WBの相馬、そしてボランチに入った齊藤未月の活躍が目立った。相馬は、日本代表の一員として臨んだ昨年12月のEAFFE-1サッカー選手権で見せた通り、この突破と攻守にわたる戦う姿勢を見せていた。右の橋岡とともに、チャンスメイクをし、結果自身のミドルシュートで得点も記録している。 また、齊藤は攻守にわたってハードワークを続け、中盤では相手選手への寄せの早さで何度となくボールを奪い、攻撃につなげていた。後半は前線まで顔を出すプレーも増え、ゴールへの意欲も見せていた。湘南ベルマーレでプレーしていることをしっかりと出せた印象だが、勝利には繋がらなかった。 チームの形がない状況で求められるのは個の能力だ。兼任するA代表でもその事象はすでに起こっており、試合の展開を読む力、選手間でのコミュニケーションによる連携プレーが重要となっている。結果を見ればまずまずな2019年だったが、11月のベネズエラ代表戦は最悪の出来。日本代表としての試合出場が少ない選手が揃った結果、何も生み出せない試合となり1-4の大敗を喫した。 前述の通り、今大会に出場していない海外組の選手やオーバーエイジ枠を採用するのならば、ある程度のパフォーマンスが期待される選手が揃い、ピッチ内の修正も可能なのかもしれない。しかし、この2試合ではそこが見られなかったとすると、本気でメダルを目指して臨んでくる対戦国を前に、しっかりと戦えるかはいささか疑問が残る。 本大会まで予定されている試合はあと3試合。国内合宿などを組めたとしても、海外組を招集することは不可能だ。メンバーを絞りきれていないところも気になるが、残り半年でどこまで精度を上げられるのか、正直なところ不安しかない。 まずは残りのカタール戦。ちょうど1年前には、A代表として臨んだアジアカップ決勝で苦杯をなめた相手だ。育成に力を入れており、今大会も優勝候補に挙げられているカタールを相手に、しっかりと最後まで戦い、ピッチで体現してもらいたい。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2020.01.13 08:30 Mon
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後手を踏み対応しきれなかった日本、光明となった相馬勇紀の可能性/日本代表コラム

3大会ぶり2度目の優勝を目指して臨んだEAFF E-1サッカー選手権の韓国代表戦。しかし、結果は1-0で敗れ、逆転で韓国の3連覇、初の自国開催での優勝を見届けることとなってしまった。 「勝利にこだわる」と森保一監督は常々語り、タイトル獲得を目指していた日本代表。しかし、結果は望んでいたものではなかった。そこにある問題は何なのか。 <div id="cws_ad"><script src="//player.daznservices.com/player.js#44a12140e3dda008f998a5a1a9.1tybkqliqmgvi1ndbmyxnzxqc3$videoid=1aiq7v4310zmp13lxw3y7i37m2" async></script></div> <span style="font-weight:700;font-size:1.1em;">◆後手を踏んだと言わざるを得ない前半</span> <div style="text-align:center;"><img src="https://image.ultra-soccer.jp/800/image/get20191219_00_tw2.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;" id="cws_ad">Getty Images<hr></div> 試合後の記者会見で森保監督は「戦術的に後手を踏んだとは思っていません」と言い切った。この言葉を額面通り受け取るならば、後手は踏んでしまっていたと言わざるを得ない。 日本は今大会採用している[3-4-2-1]のシステムでこの韓国戦に臨んだ。一方で韓国は[4-3-3]のシステムで臨んでいる。 初戦の中国代表戦のメンバーを10名起用し、離脱した橋本拳人(FC東京)の代わりに田中碧(川崎フロンターレ)を起用した日本に対し、韓国は香港代表戦と中国代表戦のメンバーをミックスさせて臨んだ。 「戦術的に後手を踏んだとは思っていません」という言葉は、「3バックの両サイドにロングボールを入れられることも予想できたと思うが?」という質問に対する森保監督の答え。「韓国の分析に関しては昨日、映像を使ってミーティングで攻守の特長の部分を伝えて、トレーニングの中で確認して今日の試合に臨みました」と返し、その後に出た言葉だった。 韓国は、[4-3-3]の基本システムだったが、攻撃時は[3-3-4]の形に近くなり、日本のシステムでは立ち位置にギャップが生まれてしまう。 1トップのイ・ジョンヒョプに対し、右のキム・インソンがワイドにポジショニング。左のナ・サンホがハーフスペースへと入り、左サイドバックのキム・ジンスが高い位置を取ることで、4枚を前線に持ってくる仕組みだ。 <div style="text-align:center;"><img src="https://image.ultra-soccer.jp/800/image/get20191219_00_tw3.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;" id="cws_ad">Getty Images<hr></div> この形になると、日本は3枚では守ることができず、両ウイングバックも下げた5枚、または右WBの橋岡大樹やボランチの田中が下がって4バックに近い形で守る時間が長くなっていった。 この形になると、日本はボランチも引いて最大7枚で守ることになるが、ワイドに起点を作る韓国は、そこから中央へと戻し、ギャップを作った状態で攻撃を仕掛けることが可能となった。 日本が前半ほとんど良い形を作れなかった要因は、枚数を後ろに割かざるを得ない状況となり、韓国がそのブロック前でセカンドボールを拾い続けたことが1つ。その他、前線からのプレスやその強度、フィジカルコンタクトなどもあるが、その辺りは映像でも対策を練れていたはずだ。 それ以上に、選手のポジショニングが攻守にわたって上手くハマっていなかった印象があり、修正しきれないまま押し込まれた状態で失点。前半を終えることとなった。 <span style="font-weight:700;font-size:1.1em;">◆可能性を感じさせた相馬勇紀</span> <div style="text-align:center;"><img src="https://image.ultra-soccer.jp/800/image/get20191219_00_tw4.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;" id="cws_ad">Getty Images<hr></div> 押し込まれ続け1点を先制された後半、スタートから遠藤渓太に代えて、香港戦で出色の出来を見せた相馬勇紀が投入され、流れを変えにいった。 遠藤と橋岡のウイングバックコンビの場合、なかなか縦に仕掛けるシーンが見られなかった。これは初戦の中国戦も同じであり、攻撃が停滞し、相手を押し込むポジション取りが難しい状況となっていた。 しかし、投入された相馬は香港戦とは逆の左ウイングバックに入っても、その突破力を見せた。縦に仕掛け続ける相馬に対し、韓国のサイドが機能しなくなっていく。 さらに、大島僚太を途中投入したことで、よりサイドを効果的に使う攻撃が加速。相馬だけでなく、田中やシャドーの森島司も動きを取り戻し、日本の時間帯を作っていった。 最後までゴールを割ることができなかったものの、相馬の投入で流れが変わり、大島の投入で加速したことは間違いない。ゴールを奪い切ることができなかったが、相馬が戦える選手であるとわかったことは、東京オリンピック代表にとっては良いニュースと言えるだろう。 そして、相馬のプレー判断も目を見張るものがある。縦への仕掛けをファーストチョイスとしていたが、同サイドのシャドーに入った森島の動きを常に観察。また、中の動きも考え、上田、鈴木がどのポジションにいるかでクロスも変化。さらに、縦に仕掛けるか、カットインにするか、持ち替えて展開するかを使い分けていた。突破力に目が行きがちだが、相馬の考える力と選択する力は大きな収穫だろう。 <span style="font-weight:700;font-size:1.1em;">◆五輪への強化か、A代表の底上げか</span> <div style="text-align:center;"><img src="https://image.ultra-soccer.jp/800/image/get20191219_00_tw5.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;" id="cws_ad">Getty Images<hr></div> 今回の大会は、Jリーグ終了直後に行われたというエクスキューズもあり、海外組がいない中でのベストメンバーが組めたかというと、決してそうではない。 そのため、半数以上が東京オリンピック世代の選手となり、代表キャップのない選手が多く集まることとなった。 しかし、それは他国も同じ。香港こそベストに近いメンバーを組んだが、韓国も1.5軍、中国は2軍という状況。戦力や日程での差はないと言っても良いだろう。 一方で、この大会の位置付けは「経験と底上げ」というワードをメンバー発表時に出していた森保監督。大会の位置付けは難しく、どういった位置付けにしたか本当のところは分からないが、「試合の中で戦える選手、プレッシャーのかかった中で自分の良さを、チームのコンセプトを勇気を持ってチャレンジできる選手が分かったことは収穫」と語ったように、メンバー選考へのヒントは手にしたようだ。 東京オリンピック世代は、来年1月にAFC U-23選手権が控えている。東京オリンピックの予選を兼ねている大会だけに、日本以外の国の本気度は計り知れない。一方で、予選ではない日本としても、アジアの中で本気の相手にどこまで戦えるかを測るチャンスではある。本大会になれば世界の強豪が集い、トップクラスのクラブでプレーする選手も多く出場するだけに、レベルの高さはアジアの比ではないだろう。 11月のU-22コロンビア代表戦では、久保建英や堂安律を擁しながらも、コロンビアの前に完敗。残り半年余りでどのようなチームに仕上げていくのか。今回のE-1選手権で、森保監督の中にどれだけ手応えがあったかはわからないが、反省材料も多く、この先の残された少ない時間で、修正する力、そして選手は自身の能力を上げる必要がある。 何れにしても、まずは来年1月のAFC U-23選手権の戦いが重要。メンバー選考を含め、アジアで頂点に立つ戦いをしっかりと見せてもらいたい。そして、3月に控えるA代表の試合に向けても、どのような準備をするのか。東京オリンピック世代も含まれるかどうかは定かではないが、チームとしての精度を上げていくステップをそろそろ踏み出したいところだ。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2019.12.20 06:45 Fri
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攻撃のタクトを振った大島僚太、ゲームメイク力が必要な森保ジャパン/日本代表コラム

初戦の中国代表戦からスタメン11名を入れ替えて臨んだ香港代表戦。東京オリンピック世代の6名がA代表デビューとなり、デビュー済みの3名を含め9名がスタートからピッチに立った。 相手との実力差もある中、若い選手たちが立ち上がりからアグレッシブにプレー。結果として5得点を奪い、無失点で試合を終えたことは評価すべきところだろう。 中国戦に比べ、スムーズに仕掛けることができた攻撃面では、中盤の構成と攻撃の組み立て方に変化があったから。タイトルを懸けた韓国代表戦に向けても良いテストができたと言える。 <span style="font-weight:700;font-size:1.1em;">◆効果的なサイドの活用</span> <div style="text-align:center;"><img src="https://image.ultra-soccer.jp/800/image/get20191215_00_tw2.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;">Getty Images<hr></div> 初戦の中国戦に比べて大きな違いとなったのは、ボランチの組み合わせだ。初戦は橋本拳人(FC東京)、井手口陽介(ガンバ大阪)がコンビを組んだが、この試合は大島僚太と田中碧の川崎フロンターレコンビが務めた。 特に違いを見せたのは大島だ。予てから高い評価を下されながらも、肝心の場面で負傷離脱する悪循環が続いていた大島。思い起こせば、2年前に日本で行われたE-1選手権でも第2戦の中国戦で前半に負傷交代していた。 この試合ではキャプテンマークを巻いた大島だったが、特徴でもある長短のパスを使い分け、ゲームをコントロールしていた。 初戦ではほぼ見られなかったサイドへの長いパス。右ボランチを務めた大島から、左ウイングバックの菅大輝(北海道コンサドーレ札幌)へのパスが多く見られた。もちろん、そのパスを引き出した菅の動きも重要だったが、全体をよく見ている大島の能力が生かしたと言えるだろう。 また、2シャドーやトップへの縦に入れるパスも多く見られた。初戦の中国代表戦は、攻撃が中央へ寄る傾向があり、中国も中を固めていただけに効果的な攻撃が見られなかったが、両サイドへの展開を多用したことで中央へも活路を見いだすことができていた。 最も、森保一監督は中央から崩す志向が強く、特に[3-4-2-1]のシステムでは2シャドーの使い方、サイドも縦への突破よりカットインという選択肢が増える。そのため、アジアで格下と戦う時は苦しめられる傾向にある。その点を踏まえてしっかり準備できたことはプラスと言えるだろう。 <span style="font-weight:700;font-size:1.1em;">◆出色の出来を見せた両ウイングバック</span> <div style="text-align:center;"><img src="https://image.ultra-soccer.jp/800/image/get20191215_00_tw3.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;">Getty Images<hr></div> その大島と同様に、チームを活性化させたのが両ウイングバックだ。初戦では左に遠藤渓太(横浜F・マリノス)、右に橋岡大樹(浦和レッズ)が起用されたが、香港戦は左に菅、右に相馬勇紀(鹿島アントラーズ)を起用した。 中国戦は左の遠藤がボールを持ち、仕掛けるシーンはあったが、縦への突破よりは中央へのカットインが目立ち、崩し切るというシーンが少なかった。 しかし、この試合は右サイドに起用された相馬が躍動。最初の仕掛けから相手に警戒させると、再三縦へ仕掛け、チャンスを演出していた。この点は近くでプレーした仲川輝人(横浜F・マリノス)の動きも大きかった。 仲川はクラブではワイドに開いてプレーするものの、この試合はシャドーということもあり外から中へ動く場面が多かった。その分、スペースが生まれ、相馬が仕掛けやすい状態に。また、3バックの右を務めた渡辺剛(FC東京)のサポートもあったため、積極的にドリブルを仕掛けられたと言える。 一対一を制する場面も多かった相馬。グラウンダーやハイボール、ニア、ファーとクロスも使い分けており、中央でもう少し仕留められればアシストという数字も残っただろう。ただ、数字が残らなくとも、相馬の出来は次も見たいと思わせるには十分だった。 また、逆サイドの菅の働きも目立った。先制ゴールはYBCルヴァンカップ決勝を彷彿とさせる豪快ボレー。仲川がチャレンジした結果浮き球となったボールを、ボックス内で見事に叩いた。そのゴールだけでなく、菅は終始上下動を繰り返し、右サイドからの仕掛けが多くなることもあり、逆サイドのケアを行なっていた。 この試合はファーサイドにボールが流れることも多く、菅のカバーリングがあることで、2次攻撃が生まれた。小川の2点目はまさにその働きの賜物と言えるだろう。後半にはサイドを崩しに行くシーンも増え、この試合は両サイドが機能。縦を意識したことが結果として5ゴールに繋がった。 <span style="font-weight:700;font-size:1.1em;">◆タイトルが懸かる日韓対決へ</span> <div style="text-align:center;"><img src="https://image.ultra-soccer.jp/800/image/get20191215_00_tw4.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;">Getty Images<hr></div> 2試合でGK小島亨介(大分トリニータ)以外の22人を起用した森保一監督。[3-4-2-1]と東京オリンピック世代で採用するシステムで2試合を戦い、一定の結果を残せた。 12名をA代表デビューさせ、アプローチの違う2試合を戦ったわけだが、この中から最も実力のある韓国代表戦のメンバーを選ぶことになる。 香港戦は中国戦を受けた反省から、準備してきたことが結果に繋がった。あとは、ピッチ内での連携と、各選手の対応力が求められる状況。東京オリンピックだけでなく、この先のA代表の活動に生き残れる選手たちを見極める場にもなるだろう。 今回は招集されていない海外組のA代表の主力メンバーとの競争もその先にはまっているが、この[3-4-2-1]システムでも、[4-2-3-1]システムでも求められるものは変わらない。チームのバランスを保ちつつ、局面で個の力を発揮できるか。そして何よりもカギになるのが、ゲームを作る能力だ。 アピールに成功した者、そうでない者。また、力を出し切れなかった者。どの選手であっても、最後の日韓戦で持てるものを全て出し切ってもらいたいもの。チームとして試合を支配し、試合を決める仕事に期待したい。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2019.12.15 11:45 Sun
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