【日本サッカー見聞録】柏の吉田監督に期待する理由
2015.04.30 18:15 Thu
▽J1リーグは第8節を終了して浦和が6勝2分けの無敗で首位をキープしている。この浦和を勝点1差で猛追しているのが宇佐美の6試合連続ゴールで公式戦8連勝を飾ったG大阪だ。5月2日の第9節では両者が激突するだけに、前半戦のヤマ場と言えるだろう。浦和が昨シーズン終盤の雪辱を果たすのか、それともG大阪が首位の座を奪還するのか。宇佐美の記録更新も含めて注目の大一番である。
▽そんな今シーズンのJリーグにあって、個人的に注目しているのが柏だ。吉田新監督は茨田陽生を中盤のアンカーにコンバートし、大谷秀和や栗澤僚一らベテランMFを攻撃的なポジションで起用。彼らは巧みにスペースを見つけてショートパスをつなぎながら、3トップのレアンドロ、工藤壮人、武富孝介らに絶妙なタイミングでタテパスを入れていく。
▽第8節では柏と同じようにスペースを利用するのが上手い川崎Fと対戦。攻撃的な両チームの対戦を楽しみに取材したが、試合は4-1と柏の一方的な勝利に終わった。試合後の風間監督は「珍しくテンポが上がらず、リズムが出なかったことに尽きる。なぜかというと自分たちでボールを動かせなかった。こんなにボールを欲しがらない試合は珍しい」と呆れるほど、完敗を認めていた。
▽そして吉田監督は勝因について、「中村(憲剛)と大島(僚太)は(敵陣)深くまで追いかけられないので一瞬はフリーになる」ことは仕方ないにしても、茨田、大谷、小林祐介のMF陣が受け渡しをしながら「(2人を)しっかり管理できていた」ことと、「1-1に追いついたことで川崎は前掛かりになったため、我々は前に出ていかず、相手が向かってきたのでうまくいった」と話していた。
▽試合は43分に中村のFKから谷口彰悟のヘッドで先制したものの、46分に茨田のタテパスを受けた武富が強引な突破からシュートを決めて前半を1-1で折り返した。そして後半は48分にカウンターからの波状攻撃でレアンドロのクロスを工藤がヘッドで決めて勝ち越すと、59分と81分にもカウンターから工藤とクリスティアーノが追加点。工藤はこの日の2ゴールで通算50得点と、北嶋秀朗(52点)やエジウソン(51点)ら柏のレジェンドの記録更新も視野に入って来た。
▽そして、個人的に注目している理由はもう一つある。川崎F戦のスタメン11人中、輪湖直樹、小林、茨田、大谷、武富、工藤と6人が柏のアカデミー育ちだった(輪湖と武富はレンタルバック)。リザーブにも中谷進之助、秋野央樹、太田徹郎とアカデミー育ちが控えている。彼らのほとんどは、ユースやジュニアユース時代に吉田監督の指導を受けた“教え子"で、武富は「12歳の頃から注目していた」と話していた。
▽これまでのJクラブは、育成とトップチームの強化は一貫性がありながらも指導者は別ものと切り離されてきた。アカデミーでいくら優秀な選手を育成しても、トップチームの監督はJクラブでの経験者や外国人の監督で占められていた。育成で結果を残した監督がトップチームの監督を務める。海外では珍しくないパターンだが、日本ではなかなかその“壁"は厚かった。やっと昨シーズン、東京Vの冨樫剛一が監督に就任し、J1でも育成で結果を残した指導者がトップチームの監督に就任した。
▽Jリーグの監督選びに新たな門戸を開く意味でも、吉田監督にはトップチームで結果を残して欲しいと、個人的に期待している。ちなみに、なぜ柏はアカデミー出身選手の多くがプロになれるのか聞いたところ、「ここで育った選手が還元されることは、若い選手の励みになる。ユース上がりの選手は軽く見られる風潮がないのがこのクラブの財産だし、クラブにとってもいい方向性だと思う」と語っていた。
【六川亨】 1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
▽そんな今シーズンのJリーグにあって、個人的に注目しているのが柏だ。吉田新監督は茨田陽生を中盤のアンカーにコンバートし、大谷秀和や栗澤僚一らベテランMFを攻撃的なポジションで起用。彼らは巧みにスペースを見つけてショートパスをつなぎながら、3トップのレアンドロ、工藤壮人、武富孝介らに絶妙なタイミングでタテパスを入れていく。
▽第8節では柏と同じようにスペースを利用するのが上手い川崎Fと対戦。攻撃的な両チームの対戦を楽しみに取材したが、試合は4-1と柏の一方的な勝利に終わった。試合後の風間監督は「珍しくテンポが上がらず、リズムが出なかったことに尽きる。なぜかというと自分たちでボールを動かせなかった。こんなにボールを欲しがらない試合は珍しい」と呆れるほど、完敗を認めていた。
▽試合は43分に中村のFKから谷口彰悟のヘッドで先制したものの、46分に茨田のタテパスを受けた武富が強引な突破からシュートを決めて前半を1-1で折り返した。そして後半は48分にカウンターからの波状攻撃でレアンドロのクロスを工藤がヘッドで決めて勝ち越すと、59分と81分にもカウンターから工藤とクリスティアーノが追加点。工藤はこの日の2ゴールで通算50得点と、北嶋秀朗(52点)やエジウソン(51点)ら柏のレジェンドの記録更新も視野に入って来た。
▽リーグ戦では勝点11の7位と出遅れているものの、いま現在、攻撃的なパスサッカーで一番面白いサッカーをしているのは柏で間違いないだろう。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)でもグループステージ突破を決めているだけに、このゴールデンウィーク(GW)からの反撃に期待したい。
▽そして、個人的に注目している理由はもう一つある。川崎F戦のスタメン11人中、輪湖直樹、小林、茨田、大谷、武富、工藤と6人が柏のアカデミー育ちだった(輪湖と武富はレンタルバック)。リザーブにも中谷進之助、秋野央樹、太田徹郎とアカデミー育ちが控えている。彼らのほとんどは、ユースやジュニアユース時代に吉田監督の指導を受けた“教え子"で、武富は「12歳の頃から注目していた」と話していた。
▽これまでのJクラブは、育成とトップチームの強化は一貫性がありながらも指導者は別ものと切り離されてきた。アカデミーでいくら優秀な選手を育成しても、トップチームの監督はJクラブでの経験者や外国人の監督で占められていた。育成で結果を残した監督がトップチームの監督を務める。海外では珍しくないパターンだが、日本ではなかなかその“壁"は厚かった。やっと昨シーズン、東京Vの冨樫剛一が監督に就任し、J1でも育成で結果を残した指導者がトップチームの監督に就任した。
▽Jリーグの監督選びに新たな門戸を開く意味でも、吉田監督にはトップチームで結果を残して欲しいと、個人的に期待している。ちなみに、なぜ柏はアカデミー出身選手の多くがプロになれるのか聞いたところ、「ここで育った選手が還元されることは、若い選手の励みになる。ユース上がりの選手は軽く見られる風潮がないのがこのクラブの財産だし、クラブにとってもいい方向性だと思う」と語っていた。
【六川亨】 1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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