2011年から15年──。ベテランストライカー武藤雄樹が古巣・仙台戦に込める、特別な思い「まだ頑張っているぞという姿を見せたい」
2026.03.13 18:28 Fri
明治安田J2・J3百年構想リーグが開幕して約1カ月。
10チーム中7クラブがJ2クラブのEAST-Aグループで、J3のSC相模原が快進撃を見せている。
その好調の裏側で、元日本代表FW・武藤雄樹が、シーズン初ゴールへ向けて静かに闘志を燃やしている。
■狙い続けた、ダメ押しゴール
3月8日に行われた、明治安田J2・J3百年構想EAST-Aグループ第5節。相模原ギオンスタジアムに4度のゴールアナウンスと、歓喜の声が響き渡った。
「勝って兜の緒を締めて」(シュタルフ悠紀リヒャルト監督)臨んだ栃木SC戦、相模原は4-0で完勝を収め、驚異の2試合連続ゴールラッシュとクリーンシートでリーグ戦3連勝を飾った。
試合終了のホイッスルが鳴り、思い思いの形で、緑黒の戦士たちは勝利の喜びを噛み締める。
ただその中で笑顔こそ見せながらも、一人どこか悔しそうな表情を浮かべていたのが、今年38歳を迎えるベテランFW・武藤雄樹だった。
この日、81分にピッチに立った武藤は、最優先のタスクである前線の守備をこなしながらも、虎視眈々と5点目を狙い続けていた。しかし、抜け出せれば決定機というシーンでスルーパスを要求するもタイミングがずれ、思うようにつながらず。追加点を生み出すことはできなかった。
「4点リードしている状況で僕は点を取りたいけど、中は落ち着きたいというのもあるだろうし、あの状況での判断はやっぱり難しいところがあるかな、と。ただ試合後も、どんな時間帯も“前への意識”は緩めずにと監督からも話がありました。まだ長い時間試合に出れていない中で、欲しい時に要求をもっとして試合を重ねていけば、タイミングは合ってくると思うので、続けていければいいかなと思います」
■チームの戦い方から、逃げたくない
就任3年目を迎えるシュタルフ監督は今シーズン、「前への矢印」を強調し、攻守共にアグレッシブな縦に速いサッカーをチームに落とし込み、開幕への準備を整えてきた。
全員ができるだけ前向きにボールを奪い、電光石火の如くゴールに攻め込む。
その勢いは試合を重ねるごとに増し、第4節・モンテディオ山形戦(2○1)でのシーズン初勝利から3連勝を挙げ、チームの総得点数はEAST-Aで1位の12得点に伸びている。
一方、90分を通してインテンシティ高く、スピードと運動量が求められるスタイルにアジャストすることは、ベテランにとっては至難の業。ポジショニングにこだわってパスを引き出したり、駆け引きをしながら相手の裏をとることが得意な武藤にとっては、自身のストロングが生かしづらい戦術でもある。
「今前線で先発してる佐々木(快)のように、90分間強度高くプレスをかけつづけることはできないし、杉本(蓮)のようにスピードがあるわけでもないですから。なかなか難しいというか……。大変だなっていうのが、正直なところです(笑)」
長いシーズンを戦う上で、局面によっては時間を使いながら、賢く戦うべきではないかという本音もあるだろう。ただ、武藤は「言い訳はしたくない」と言葉を強める。
「チームが取り組んでいて、結果も出ているこの戦い方から、逃げるようなことはしたくないかなって。若手の時の気持ちを思い出して、どんどん前に突っ込んで、チャレンジしていく姿勢も見せていきたいなと思ってます」
■古巣・仙台で見せたい勇姿
若手の頃を思い出して──。
そう意気込む武藤は今節、プロ1年目から4年間を過ごしたベガルタ仙台と対戦する。ユアテックスタジアムへの凱旋は、2021シーズン以来、5年ぶりのことだ。
「どの試合にも出たいというのは変わらないですけど、グループと日程が決まった瞬間から、『ユアスタに行けるかもしれない』と思って、すごくうれしかったですね。メンバーを選ぶのは自分じゃないし、どうなるかはわからないけど、ピッチに立ちたい」
奇しくも開催日は、東日本大震災が起こった3月11日に一番近い、3月14日。2011年に仙台に加入した武藤は、この時期に仙台と戦えることにもまた、思いを馳せる。
「あの震災は、本当に大きな出来事で……。2011年は僕にとって、プロとしての本質というか、サッカーってこんなに多くの人の気持ちを動かせるんだな、ということを感じたシーズンでした。自分のためじゃなく、誰かのために戦う。それを僕は仙台で教わったし、その思いを持ち続けながら、ここまでサッカー選手としてやってきた。本当に大事なことを教えてもらいました」
応援してくれる人たちの気持ちを背負って戦い、希望や勇気を。その思いは、退団して10年が経った今も変わらない。
「あんまりもう、覚えてる人もいないかもしれないけど(笑)。もしかしたら今も、僕のことを応援してくれている人もいるかもしれないので。相模原のサポーターももちろんですけど、仙台のサポーターにも『まだ頑張ってるぞ』っていう姿を見せて、恩返しができたらなと思います」
デビューから丸15年。キャリアの礎を築いた地で再び躍動するイメージをふくらませ、特別な古巣との一戦に挑む。
■取材・文=青木ひかる
10チーム中7クラブがJ2クラブのEAST-Aグループで、J3のSC相模原が快進撃を見せている。
その好調の裏側で、元日本代表FW・武藤雄樹が、シーズン初ゴールへ向けて静かに闘志を燃やしている。
3月8日に行われた、明治安田J2・J3百年構想EAST-Aグループ第5節。相模原ギオンスタジアムに4度のゴールアナウンスと、歓喜の声が響き渡った。
ザスパ群馬戦での5-0の大勝から、中3日。
「勝って兜の緒を締めて」(シュタルフ悠紀リヒャルト監督)臨んだ栃木SC戦、相模原は4-0で完勝を収め、驚異の2試合連続ゴールラッシュとクリーンシートでリーグ戦3連勝を飾った。
試合終了のホイッスルが鳴り、思い思いの形で、緑黒の戦士たちは勝利の喜びを噛み締める。
ただその中で笑顔こそ見せながらも、一人どこか悔しそうな表情を浮かべていたのが、今年38歳を迎えるベテランFW・武藤雄樹だった。
この日、81分にピッチに立った武藤は、最優先のタスクである前線の守備をこなしながらも、虎視眈々と5点目を狙い続けていた。しかし、抜け出せれば決定機というシーンでスルーパスを要求するもタイミングがずれ、思うようにつながらず。追加点を生み出すことはできなかった。
「4点リードしている状況で僕は点を取りたいけど、中は落ち着きたいというのもあるだろうし、あの状況での判断はやっぱり難しいところがあるかな、と。ただ試合後も、どんな時間帯も“前への意識”は緩めずにと監督からも話がありました。まだ長い時間試合に出れていない中で、欲しい時に要求をもっとして試合を重ねていけば、タイミングは合ってくると思うので、続けていければいいかなと思います」
■チームの戦い方から、逃げたくない
就任3年目を迎えるシュタルフ監督は今シーズン、「前への矢印」を強調し、攻守共にアグレッシブな縦に速いサッカーをチームに落とし込み、開幕への準備を整えてきた。
全員ができるだけ前向きにボールを奪い、電光石火の如くゴールに攻め込む。
その勢いは試合を重ねるごとに増し、第4節・モンテディオ山形戦(2○1)でのシーズン初勝利から3連勝を挙げ、チームの総得点数はEAST-Aで1位の12得点に伸びている。
一方、90分を通してインテンシティ高く、スピードと運動量が求められるスタイルにアジャストすることは、ベテランにとっては至難の業。ポジショニングにこだわってパスを引き出したり、駆け引きをしながら相手の裏をとることが得意な武藤にとっては、自身のストロングが生かしづらい戦術でもある。
「今前線で先発してる佐々木(快)のように、90分間強度高くプレスをかけつづけることはできないし、杉本(蓮)のようにスピードがあるわけでもないですから。なかなか難しいというか……。大変だなっていうのが、正直なところです(笑)」
長いシーズンを戦う上で、局面によっては時間を使いながら、賢く戦うべきではないかという本音もあるだろう。ただ、武藤は「言い訳はしたくない」と言葉を強める。
「チームが取り組んでいて、結果も出ているこの戦い方から、逃げるようなことはしたくないかなって。若手の時の気持ちを思い出して、どんどん前に突っ込んで、チャレンジしていく姿勢も見せていきたいなと思ってます」
■古巣・仙台で見せたい勇姿
若手の頃を思い出して──。
そう意気込む武藤は今節、プロ1年目から4年間を過ごしたベガルタ仙台と対戦する。ユアテックスタジアムへの凱旋は、2021シーズン以来、5年ぶりのことだ。
「どの試合にも出たいというのは変わらないですけど、グループと日程が決まった瞬間から、『ユアスタに行けるかもしれない』と思って、すごくうれしかったですね。メンバーを選ぶのは自分じゃないし、どうなるかはわからないけど、ピッチに立ちたい」
奇しくも開催日は、東日本大震災が起こった3月11日に一番近い、3月14日。2011年に仙台に加入した武藤は、この時期に仙台と戦えることにもまた、思いを馳せる。
「あの震災は、本当に大きな出来事で……。2011年は僕にとって、プロとしての本質というか、サッカーってこんなに多くの人の気持ちを動かせるんだな、ということを感じたシーズンでした。自分のためじゃなく、誰かのために戦う。それを僕は仙台で教わったし、その思いを持ち続けながら、ここまでサッカー選手としてやってきた。本当に大事なことを教えてもらいました」
応援してくれる人たちの気持ちを背負って戦い、希望や勇気を。その思いは、退団して10年が経った今も変わらない。
「あんまりもう、覚えてる人もいないかもしれないけど(笑)。もしかしたら今も、僕のことを応援してくれている人もいるかもしれないので。相模原のサポーターももちろんですけど、仙台のサポーターにも『まだ頑張ってるぞ』っていう姿を見せて、恩返しができたらなと思います」
デビューから丸15年。キャリアの礎を築いた地で再び躍動するイメージをふくらませ、特別な古巣との一戦に挑む。
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