アジアカップ総括と日本/六川亨の日本サッカーの歩み

2024.02.13 19:00 Tue
アジアカップ連覇を達成したカタール代表
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アジアカップ連覇を達成したカタール代表
カタールで約1カ月にわたり開催されたアジアカップ2023は開催国カタールの連覇で幕を閉じた。これで過去9度の開催となった中東での大会は、イランやサウジアラビアなど中東勢が7回の優勝を飾っている(例外は2000年レバノン大会と2011年カタール大会で日本が優勝)。

乾燥した気候など地理的なアドバンテージに加え、母国の熱狂的な応援を受け、中東勢の選手は目の色が変わったのではないかと思うほど勝負への執念が半端ではなかった。過去のW杯予選でもヨルダンでは痛い目に遭っただけに、改めて中東で勝つことの難しさを痛感した。
前回UAE大会に続いての連覇となったカタールは、決勝トーナメントに入ってから尻上がりに攻撃陣が活性化した。前回大会の得点王でMVPだったアリモエズ・アリは、4年前ほどのスピードがなく、今大会は2ゴールにとどまった。いつスタメンから外すのかと思っていたが、マルケス監督は最後まで辛抱強く起用。ヨルダンとの決勝戦ではゴールこそなかったが、PK獲得につながるヘッドなどで勝利に貢献した。

そして4年前も優勝に貢献したアクラム・アフィフが、アリモエズ・アリの不調を補ってあまりある活躍を見せた。決勝戦ではPKによるハットトリックを達成して、得点王とアジア王者のダブルタイトルを獲得した。

そのカタールに決勝では1-3と完敗したものの、ヨルダンの躍進が大会を大いに盛り上げた。ラウンド16で日本を破ったイラクに3-2で競り勝つと、準決勝では優勝候補の一角だった韓国に2-0と完勝。韓国は2試合続けての延長戦を制してのベスト4進出だけに疲れもあったのだろう。しかしムサ・アルターマリの高速ドリブルと左足の精度の高いシュートは今大会で「最大の発見」と言える。
もしも日本がグループDを1位抜けしたら、ラウンド16でこのヨルダンと激突していた。果たして日本のDF陣でアルターマリのドリブルをストップできるのかどうか。これはこれで、見てみたい対戦ではあるが……。

さて日本である。多くのメディアが日本の敗戦を受けて敗因の分析をした。森保一監督の采配に疑問を投げかける記事も多い。潜在能力がいくら高くても、GK鈴木彩艶は経験不足だし、悪い流れを断ち切る意味でもGKを前川黛也に代えるべきではなかったか。イラン戦での久保建英の交代は早すぎたのではないか。そして彼の代わりに南野拓実を投入しても、屈強なDF陣を相手にして翻弄するテクニックもスピードもないだけに、どんな攻撃を仕掛けるのかイメージがまったくわかなかった。

この大会で明らかになったことは、攻撃は久保が仕切るということ。そして久保の良さを引き出すためには伊東純也と三笘薫、鎌田大地らが必要だということだ。イラン戦での前半の久保は左右両サイドの広大なスペースを縦横に動いて突破の糸口を探っていた。ところが彼の意図に連動して動ける選手が少なかった。

試合後のミックスゾーンでは守田英正が攻撃のアイデアのなさ、チームとしての約束事が少ないことで監督批判をした。不満があるのなら、試合中から選手同士で話し合う(あるいは怒鳴り合う)ことで改善できなかったのか。それらを率先してやるのがキャプテンである遠藤航の仕事ではないのかと疑問に感じた。果たして彼がキャプテンにふさわしいのかどうか。「熱量」があまり感じられないだけに、キャプテンは闘志を前面に出す冨安健洋か久保がいいのではないかと思ったものだ。

4年後のアジアカップはまたしても中東のサウジアラビアでの開催となる。昨年末にクラブW杯を取材した記者によると、アライバルビザで入国できるなど、規制緩和が進んでいるそうだ。カタールでは9つのスタジアムが試合会場となったが、おそらく4年後を目標にスタジアムの建設が始まるのだろうし、もしかしたら地下鉄まで作ってしまうかもしれない。オイル・マネー旋風はまだしばらく続きそうだ。


【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた

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