まだ試合をしていないのは…/原ゆみこのマドリッド

2023.07.22 16:00 Sat
©︎RFEF
「ぬか喜びってこともあるから、用心しないとね」そんな風に私が自分を戒めていたのは金曜日、女子W杯グループリーグ初戦でスペインがコスタリカに3-0と余裕で快勝するのを見た時のことでした。いやあ、この大会、オーストラリア・ニュージランド共催とあって、こちらでは試合が朝一番の時間帯に当たるんですけどね。体調不良を乗り越え、先発もありうると言われていた、スペインの誇る2年連続バロンドール受賞女子、アレクシア・プテジャ(バルサ)こそ、ベンチスタートだったものの、ウェリントン・リージョナル・スタジアムでの一戦は前半の6分間にスペインが3点を取って早々に決着。

ええ、21分にエステル(レアル・マドリーと契約終了)のクロスがデル・カンポ(モンテレイ)に当たり、そのオウンゴールで先制したスペインは23分にもボンマティ(バルサ)がエリア内から撃ち込んで2点目をゲット。そして27分にはジェニファー・エルモーソ(パチューカ)のヘッドは枠に弾かれてしまったものの、エステルが蹴り込んで、あっという前に3点差にしてしまったんですから、驚いたの何のって。いえまあ、32分にオルガ(マドリー)がビジャロボス(サプリッサ)にエリアに入った途端に倒され、PKを獲得。エルモーソがGKソレラ(アラフエレンセ)に弾かれていなければ、というか、試合通算の総シュート数が驚異の46本(うち枠内12本)と、スペインは撃ちまくっていましたからね。

試合後、ビルダ監督も「ピッチで見せた両チームのパフォーマンスの違いからすると、結果はもっと大量得点差になるべきだった。Nos hubiera gustado meter más goles/ノス・ウビエラ・グスタードー・メテール・マス・ゴーレス(もっとゴールが入っていたら良かったのだが)」と言っていたように、アレクシアも出場した後半も加点できなかったのは残念でしたが、いやいや。というのも昨年のW杯カタール大会でスペイン代表男子も奇しくもコスタリカとグループリーグ1節で顔を合わせ、7-0という大勝でスタート。これはいよいよ、2008年ユーロから国際メジャー大会3連覇した黄金時代の再来なるかとファンをワクワクさせたものだったんですけどね。
それがグループ2戦目ではドイツと1-1と分け、最終戦では何とモラタ(アトレティコ)が先制点を挙げながら、堂安律選手(フライブルク)と田中碧選手(フォルトゥナ・デュッセルドルフ)のゴールで逆転され、日本に2-1と敗戦。同じ勝ち点のドイツをゴールアベレージで上回り、かろうじて2位でグループ突破したものの、決勝トーナメント初戦の16強対決でモロッコにPK戦で敗退するという尻つぼみな結果になっていましたからね。折しもこの女子W杯でもスペインは来週水曜のザンビア戦の後、31日(月)に日本と対決となるため、男子の轍を踏まないよう、コスタリカ戦勝利で浮かれず、気を引き締めてこの先の試合に臨んでもらいたいもの。できれば、カタール同様、日本と揃ってグループ突破、16強対決では揃ってPK戦で敗退というところだけを変えられればいいんですが、果たしてどうなるんでしょうか。

え、それよりマドリッドの男子クラブ勢は今週、何をしていたのかの方が気になるって?そうですね、まず火曜には弟分のラージョがアテナに遠征して、この夏、初めてのプレシーズンマッチでパナシナイコスと対戦したんですが、後半12分にはサルビのクロスをRdT(ラウール・デ・トマス)が2度続けて敵GKに弾かれながら、最後はアルバロ・ガルシアのシュートが決まって先制。そのまま0-1をキープして、フランシスコ新監督の初陣を飾ったのは、相手が来週にはドニプロと当たるCL予選2回戦を控え、早めにギアを上げているチームだということを考えれば、賞賛に値する?
そして翌日、ギリシャからベルギーに移動したラージョは土曜に対戦するシャルルロワの練習場を借りて、プレシーズンメニューを続行しているんですが、コメサニャ(ビジャレアルに移籍)、カテナ(同オサスナ)、フラン・ガルシア(同マドリー)、ルジューヌ(レンタル終了でアラベスに帰還)ら、昨季の主力選手を含め、計10人がいなくなりながら、未だに補強はアリダネ(オサスナから移籍)とエスピーノ(同カディス)の2人だけですからね。レンタル延長交渉が進んでいるらしいカメージョ(アトレティコ)はU21ユーロでも一緒だったリケルメ(昨季はジローナにレンタル移籍)と今週末までバケーションとあって、どちらにしろ、すぐには来られないんですが、8月11日のリーガ開幕戦となるアルメリア戦までには新チームの骨格がほぼ固まってくれているといいんですが…。

一方、水曜には弟分仲間のヘタフェがコリセウム・アルフォンソ・ペレスのすぐ近くにある練習場に2部の弟分、レガネスを招いて練習試合を実施。いやあ、私もプレスなら見学できると聞いて観戦してきたんですが、何せ目下、マドリッドは連日、猛暑が続いていてねえ。それこそ午後7時15分のキックオフなんて、この世のものとは思えない暑さだったんですが、すでに2週間近くプレシーズン練習をこなしている選手たちはお日様がカンカン照っていても大丈夫だったよう。どちらも元気に走っていましたが、やはりお隣さんということで、ライバル心も沸くんでしょうか。

両チーム共、まだ無得点だった前半42分には昨季、3年間いたヘタフェからレガネスに出戻りして、この6月には柴崎岳選手を始め、16人もの選手が退団したせいもあったか、今季はもうキャプテンに出世していたニヨムがジェネ、ガストンを次々と吹っ飛ばし、それを咎めたアレニャと衝突。最後はtangana(タンガナ/小競り合い)になっていたなんてことも。そのせいか、急に発奮したヘタフェは前半ロスタイム、U21ユーロ行きを最終選考で逃し、早々にヘタフェ2年目のレンタル生活を始めたラタサ(RMカスティージャ)が頭で落としたボールを、こちらはレアル・ソシエダからの完全移籍が決まったポルトゥがゴール前にクロス。それを昨季終盤、ボルダラス監督復帰後から、ようやくプレー時間を取り戻し、1部残留確定に大きな貢献をしたマタが押し込んで先制点を挙げることに。

1-0で始まった後半、ヘタフェは頭から8人を交代、レガネスは3人に留まったんですが、その後、8人代わっていたため、結局、どちらも最後は完全に違うメンバーがプレー。ただ、暑さは日が落ちるにつれ、だんだん和らいでいったもの、どちらも決定力不足がこうも露呈してしまってねえ。ええ、アルナイス(オサスナに移籍)、ファン・ムニョス(同ザグェンビェ・ルビン)、カリカブル(レンタル終了でレアル・ソシエダに帰還)ら、主力のFWたちがいなくなった後、まだ代わりが到着していないレガネスはもちろん、プレシーズンマッチ初戦だったブレンドフォード(イングランド5部)でキックオフ早々、ゴールを挙げたボルハ・マジョラル、5月にヒザの靭帯断裂をして今季前半は戻って来られないエネス・ウナルの代役として来たチョコ・ロサーノ(カディスと契約終了)が不発だったヘタフェもゴールを挙げることはできず、試合はそのまま1-0で終わってしまいましたっけ。

まあ、それでも一応、ヘタフェはプレシーズンマッチ2連勝で好発進となり、新加入のロサーノ、GKフサト(イビサからレンタル移籍)、アルティミラ(サデベルと契約終了)も無難にデビュー。翌日にはカルモナ(セビージャからレンタル、昨季はエルチェでプレー)の入団も発表され、ペニャロルへの移籍が噂されている、この2試合には出ていないダミアンの代わりとなる右SBも手に入れたボルダラス監督のチームは、今季は残留争いで苦しまないでいいよう、着々と前進しているように見えましたけどね。逆にちょっと心配なのはボルハ・ヒメネス新監督率いるレガネスで、先日、遥々イスラエルまで遠征したハポエル・テルアビブ戦でも後半ロスタイムに失点して、1-0で2連敗と、ゴールがまだ1本も決まっておらず。

一応、負けた2チームは1部の格上だったと諦めることにしてもこの土曜、ホセ・ソリージャでプレーする今季から、また2部の仲間となったバジャドリーとの試合ではそろそろ、調子を上げていかないと4年越しの1部再昇格の夢はとても叶わない?翻ってヘタフェは同じ土曜、今度はラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設グラウンドでエクアドルのインデペンディエンテ・デル・バジェと対戦。相手は2022年のコパ・スダメリカーナで優勝し、今年のレコパ・スダメリカーナではリベルタドーレス王者のフラメンゴを破った強豪で、水曜にはサンチェス・ピスファンでセビージャとも1-1と善戦し、PK戦で負けただけでしたからね。これはちょっとヘタフェも手こずりそうですが、何より今はケガ人が出ないことだけを祈っています。

そして未だにプレシーズンマッチが始まっていない兄貴分2チームはというと。先週の月曜から灼熱のバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でプレシーズンのセッションを開始してから1日の休みもなく、今週水曜までトレーニングしていたマドリーはいよいよ、その日の午後には前日に練習に戻ってきたモドリッチ、カマビンガも加わって、ロサンジェルス・キャンプに出発。それが驚いたことに、選手たちのフライト中や宿泊地のメイボーン・ビバリーヒルズ(今年はビバリーヒルズ・ホテルから変更された)到着のビデオを見て、ユニフォームみたいなシャツを着て選手たちは移動するんだなと思っていたところ、本当にあれ、今季の第2ユニだったんですよ。

上手いマーケティングもあったものだと感心させられたんですが、それはともかく、今回のアメリカーツアーに参加するのは、トップチームでは右太ももに全治1カ月半のケガをしたセバージョス以外の全員で、それでもう23人となるせいですかね。RMカスティージャから加わるのはニコ・パスと2人のGKだけで、昨季、アトレティコ戦で同点ゴールを挙げ、アンチェロッティ監督も今季からはトップチームに上がると言っていた大型FWアルバロ・ロドリゲスはおらず。うーん、RMカスティージャの2部昇格プレーオフ決勝エルデンセ戦1stレグをエスタディオ・ディ・ステファノに見に行った時もシーズン後半の彼は絶不調に陥り、ほとんどゴールを挙げていないという話は耳にしたんですけどね。

まだ18才ですし、今季は再び、ラウール監督の下で2部昇格を目指すことになるようですが、そうそう、このキャンプには現地から参加組もいて、それはビニシウス、ロドリゴ、ミリトン、チュアメニ、リュディガー、アラバ、クルトワの7人。ホテルでチームメートとの再会を祝っていましたが、翌木曜には早くもUCLAキャンパス内にあるウォーリス・アネンバーグ・スタジアムで初セッションもしています。周辺には大勢のファンが詰め掛け、彼の地で真夏の風物詩となっている、選手たちがサインやセルフィーに応えている映像も入ってきたんですが、まさかフル非公開のバルデベバスと違い、レアル・マドリーTVでセッション丸々、中継していたのにはビックリしたの何のって。おかげでpartidillo(パルティディージョ/ミニゲーム)の時間が多かった木曜の練習では、自分の目でギュレル(フェネルバフチェから移籍)やベリンガム(同ドルトムント)がチームの中で早くも頭角を現しているのを確かめられたのは嬉しかったかと。

ちなみに日曜にはもうミランとの初プレシーズンマッチを迎えるマドリーでは、ロサンジェルスでの最初の練習を前にアンチェロッティ監督が囲み取材に応じていて、ベンゼマ(アル・イティハドに移籍)やアセンシオ(同PSG)が抜けた今季は、「Quiero probar algo nuevo/キエロ・プロバル・アルゴ・ヌエボ(何か新しいことを試したい)」と再びシステムやサッカースタイルの変更を示唆。同時に新加入選手たちのおかげで、「Creo que la plantilla ha mejorado/クレオ・ケ・ラ・プランティージャ・ア・メホラードー(チームはより良くなったと思う)」と言っていたため、すぐに試合があるのは楽しみなんですが、スペインでは月曜午前4時のキックオフ。日本時間では月曜午前11時となるため、私より、日本にいるファンの方が見やすそうですね。

そして最後にロス・アンヘレス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)を1週間で引き揚げ、今週は月曜から金曜まで、マハダオンダ(マドリッド近郊)でみっちり練習していたアトレティコのこともお伝えしておくと、いやあ、あまり変わり映えしないんですけどね。火曜には「Barcelona ha sido siempre mi primera opción y me encantaría unirme al Barça/バルセロナ・ア・シードー・シエンプレ・ミ・プリメラ・オプシオン・イ・メ・エンカンタリア・ウニールメ・アル・バルサ(バルセロナはいつも自分のファーストチョイスだった。バルサの一員になれたら大感激だよ)」というコメントをイタリア人記者にして、クラブから顰蹙を買っていたジョアン・フェリックスも毎日、父親が見守る中、またビブスをレマルに投げつけるなどの騒ぎを起こしつつも普通に練習しているし、ユベントス、ローマに加え、今度はインテルも獲得に名乗りを挙げたと言われているモラタにも動きはなし。

ジョアンに対しては当てつけもあるのか、水曜には昨季まで彼の背番号だった7番をグリーズマンが着けることになった後、空いた8番を2年前のチェルシーへのレンタル移籍の際に失ったサウールが取り戻すことが発表され、いよいよ締め付けが厳しくなっている感はありますが、どんなにラブコールを送ってもバルサには彼を獲得する程の資金力はなし。実際、肝心のオファーは当人のCLをプレーするチームという条件を満たさないアストン・ビラからしか来てないそうですしね。どうもこの様子では土日と休養日を挟んだ後、月曜に最後のセッションをマハダオンダでやって、午後にはチームと共にソウル行きの飛行機にジョアンも乗ることになりそうですが、さて。彼の地でのアトレティコのプレシーズンマッチは初戦が来週木曜のKリーグ選抜チーム戦。こちらはキックオフ時間が午後1時とまともなんですが、まだ中継局が発表されていないのが気になりますね。

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