【2022年カタールへ期待の選手㊿】「求められるのはゴールという結果」。今季未勝利の清水の救世主になれるか?/鈴木唯人(清水エスパルス/MF)
2020.07.26 18:05 Sun
「今はボールを持ったらひたすらゴールに向かおうと考えてますけど、もっと確実な判断をして点を取ることが大事。よりチームが点を取れる各自な判断、チョイスができるように考えていきたいと思っています」
「中断期間に劇的な変化があったわけではないですけど、『堂々とやろう』という意識が高まりました。高校卒業1年目ですけど、周りと変わらないと思わせる振舞いから入ろうと考えるようになって、プレーが少しずつ変わっていったのかな。先輩からも『遠慮なく自分を出せ』と言われて、どんどんアグレッシブにできるようになった。『自分で積極的にゴリゴリ行って決めるんだぞ』という姿を見せることが今は一番大事だと思ってます」と本人も4~5か月間での大きな心境の変化を口にする。
市船でエースナンバー10を背負っていた頃からファンタジスタで知られた鈴木だが、走力や強さの部分はそこまで頭抜けているわけではなかった。メンタル的にも浮き沈みが激しく、波多秀吾監督からもダメ出しされることがしばしばあった。3年最後の今年1月の高校サッカー選手権も2回戦で日章学園にPK負けと実力を出し切れずに号泣。プロ入り直後に試合に出られるとは本人も周囲も考えていなかった。
「入団直後は若手チームで練習していましたけど、試合に出ている人が朝早く来てフィジカル強化をしているのを見て、『出てない人間が何もしていないんじゃ何も変わらない』と思って、自分から参加をお願いしたんです。2月くらいから始めて、体幹とか上半身も結構やったんで、清水に入った時よりは当たり負けやブレは少なくなってきたのかなと感じます。ただ、技術面は完璧にできていない。その分、試合の中では誰よりも走って、走り回って貢献しようという考えでやってます」と本人も高い意欲を持って取り組んでいることを明かす。目の色を変えてサッカーに向き合っているからこそ、クラモフスキー監督も大抜擢に踏み切ったのだろう。
ただ、ここまでノーゴールという結果が示す通り、本人も「仕事ができている」という感覚は持ち合わせていない。同世代を見れば、スペイン1部でコンスタントに試合に出続けた久保建英(マジョルカ)を筆頭に、横浜FCで2トップの一角を担っている斉藤光毅、サガン鳥栖のリーダー格に成長した松岡大起など目覚ましい活躍をしている選手が少なくない。今の鈴木唯人はようやく彼らと同じ土俵に立ったところなのだ。
「上のカテゴリーで活躍している同世代がいるのは意識するところですけど、今はエスパルスで1つ1つ自分の課題を修正して次につなげていくことが一番大事。1日1日を大切にして頑張ろうという気持ちが強いです」とまず足元からしっかりと固めていこうと考えている。
地道な思考をするのは、横浜F・マリノスプライマリー追浜から中体連の葉山中学校に進み、市船でブレイクした経験があるからだろう。小学生時代は同い年の西川潤(C大阪)と一緒にプレーしたことがあるが、ジュニアユース昇格後の西川はU-15世代から年代別代表の常連になっていった。エリート街道をひた走ってきた同期とは異なる道を歩んだ鈴木は、18歳になった今、彼と同じJ1のクラブに入り、一足先に公式戦出場機会を得るまでになった。もちろん清水とセレッソのチーム事情は異なるが、地道な努力を続けていれば、バルセロナから注目される同世代の仲間を超えて飛躍できる可能性があることを示したのだ。
「東京五輪が1年延期になったんで、そこを狙っていきたいという思いもあります。そのためには、やっぱりゴールという結果が必要。プレーの面で言えば、もっと怖い選手にならないといけない。シュート、パス、ドリブルの1つ1つの精度を高めていくことが重要なのかなと思います」
鈴木が見据える領域は高い。そのためにも、本人が言うように、目に見える結果が求められる。自らのゴールで苦しむチームの救世主になれれば、確実に自分の価値も上がる。U-19日本代表定着、そして東京五輪参戦の道も開けてくるだろう。それを現実にするためにも、試合に起用されているこのタイミングを大事にしなければならない。清水はこの先、大分トリニータ、浦和レッズ、北海道コンサドーレ札幌という難敵との戦いが続く。そこで目覚ましい成果を残す鈴木唯人の一挙手一投足をぜひ見てみたい。
【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
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今季いまだリーグ未勝利でJ1最下位に沈んでいる清水エスパルス。コロナ禍の今季はJ2降格なしという特例があるものの、苦しい序盤を強いられているのは間違いない。そんな中、数少ない光明の1つとなっているのが、18歳のルーキー・鈴木唯人の成長だ。名門・市立船橋高校から加入した新人アタッカーは2月の開幕時点では若手チームの練習に参加している状況だった。ところが、7月4日の再開初戦・名古屋グランパス戦でいきなりスタメンに浮上。河井陽介、中村慶太のケガでチャンスを与えられたのもあるが、そこから3試合連続で先発起用された。直近2戦はジョーカー的な扱いをされているが、昨季まで横浜F・マリノスでポステコグルー監督の片腕として働いていたクラモフスキー監督から「彼は非常によくやってくれている。毎回うまくなろうと考え、自分でプレーを伸ばしている」と高く評価されているのは確かだ。市船でエースナンバー10を背負っていた頃からファンタジスタで知られた鈴木だが、走力や強さの部分はそこまで頭抜けているわけではなかった。メンタル的にも浮き沈みが激しく、波多秀吾監督からもダメ出しされることがしばしばあった。3年最後の今年1月の高校サッカー選手権も2回戦で日章学園にPK負けと実力を出し切れずに号泣。プロ入り直後に試合に出られるとは本人も周囲も考えていなかった。
けれども、わずか半年間で状況は激変。リーグ再開後の鈴木は前線から激しくボールを追い、鋭い攻守の切り替えからゴールに突き進んでいくガツガツした姿を前面に押し出すようになった。その背景には、先輩・立田悠悟らとのフィジカル強化があったという。
「入団直後は若手チームで練習していましたけど、試合に出ている人が朝早く来てフィジカル強化をしているのを見て、『出てない人間が何もしていないんじゃ何も変わらない』と思って、自分から参加をお願いしたんです。2月くらいから始めて、体幹とか上半身も結構やったんで、清水に入った時よりは当たり負けやブレは少なくなってきたのかなと感じます。ただ、技術面は完璧にできていない。その分、試合の中では誰よりも走って、走り回って貢献しようという考えでやってます」と本人も高い意欲を持って取り組んでいることを明かす。目の色を変えてサッカーに向き合っているからこそ、クラモフスキー監督も大抜擢に踏み切ったのだろう。
ただ、ここまでノーゴールという結果が示す通り、本人も「仕事ができている」という感覚は持ち合わせていない。同世代を見れば、スペイン1部でコンスタントに試合に出続けた久保建英(マジョルカ)を筆頭に、横浜FCで2トップの一角を担っている斉藤光毅、サガン鳥栖のリーダー格に成長した松岡大起など目覚ましい活躍をしている選手が少なくない。今の鈴木唯人はようやく彼らと同じ土俵に立ったところなのだ。
「上のカテゴリーで活躍している同世代がいるのは意識するところですけど、今はエスパルスで1つ1つ自分の課題を修正して次につなげていくことが一番大事。1日1日を大切にして頑張ろうという気持ちが強いです」とまず足元からしっかりと固めていこうと考えている。
地道な思考をするのは、横浜F・マリノスプライマリー追浜から中体連の葉山中学校に進み、市船でブレイクした経験があるからだろう。小学生時代は同い年の西川潤(C大阪)と一緒にプレーしたことがあるが、ジュニアユース昇格後の西川はU-15世代から年代別代表の常連になっていった。エリート街道をひた走ってきた同期とは異なる道を歩んだ鈴木は、18歳になった今、彼と同じJ1のクラブに入り、一足先に公式戦出場機会を得るまでになった。もちろん清水とセレッソのチーム事情は異なるが、地道な努力を続けていれば、バルセロナから注目される同世代の仲間を超えて飛躍できる可能性があることを示したのだ。
「東京五輪が1年延期になったんで、そこを狙っていきたいという思いもあります。そのためには、やっぱりゴールという結果が必要。プレーの面で言えば、もっと怖い選手にならないといけない。シュート、パス、ドリブルの1つ1つの精度を高めていくことが重要なのかなと思います」
鈴木が見据える領域は高い。そのためにも、本人が言うように、目に見える結果が求められる。自らのゴールで苦しむチームの救世主になれれば、確実に自分の価値も上がる。U-19日本代表定着、そして東京五輪参戦の道も開けてくるだろう。それを現実にするためにも、試合に起用されているこのタイミングを大事にしなければならない。清水はこの先、大分トリニータ、浦和レッズ、北海道コンサドーレ札幌という難敵との戦いが続く。そこで目覚ましい成果を残す鈴木唯人の一挙手一投足をぜひ見てみたい。
【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
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