【2022年カタールへ期待の選手㊱】11月に批判の矢面に立たされたU-22代表のリーダーがジャマイカ戦爆勝の火付け役に/中山雄太(ズヴォレ/MF)
2019.12.30 20:30 Mon
「開始5分の直接FKの先制点?)自信があったんで、裕葵(安部/バルセロナ)との会話で『蹴らせてほしい』っていうのは伝えていた。裕葵もすんなり譲ってくれたんで、あまり多くは考えず、ホントに自信を持って蹴った。気持ちで入ったゴールかなと思います」
2019年の日本代表活動を締めくくる一戦となった12月28日のU-22ジャマイカ戦(長崎)。森保一監督の故郷凱旋とあってトランスコスモスタジアム長崎に1万6495人もの大観衆が詰めかける中、2020年東京五輪を目指すU-22世代の若きジャパンが躍動し、9-0という圧勝を飾った。
その火付け役となったのが、キャプテンマークを巻くボランチ・中山雄太(ズヴォレ)だ。前半5分に安部がペナルティエリア右外側の位置で倒されて得たFKを彼は迷うことなく左足で蹴り、豪快なシュートをゴール左隅に突き刺したのだ。この一撃がチーム全体を勢いづけ、日本は一気に攻勢に出る。1トップ・前田大然(マリティモ)と旗手怜央(順天堂大学)、安部の2シャドーが起点となって仕掛けた猛烈なハイプレスも機能し、面白いようにゴールを重ねていく。前半だけで5ゴールを挙げ、メンバーを大幅に入れ替えた後半もU-22初招集の東俊希(広島)や一美和成(京都サンガF.C.)らが得点。相手との実力差が大きかった現実を差し引いても、選手個々の積極的なアピールと気迫が見て取れたポジティブなゲームとなった。
今年は6月のコパ・アメリカ(ブラジル)にも参戦し、森保体制のU-22でコアメンバーの1人となっている中山にとっても、この試合は絶対に失敗できなかった。というのも、0-2で完敗した11月のU-22コロンビア戦(広島)で「A級戦犯的な扱い」を受けたからだ。久保建英(マジョルカ)や堂安律(PSV)らA代表組が合流した国内最初のゲームということで、絶対的リーダーの中山には攻守両面の舵取り役が託された。ところが、中盤でアッサリと球際で負け、相手にはがされるなどの失態が続き、満足いくゲームコントロールが全くと言っていいほどできなかった。ボランチを組んだ田中駿汰(大阪体育大学)との連携も今一つで、彼の評価は急降下。「このままだと東京五輪メンバー18人に入れないかもしれない」という声も聞こえてきたほどだった。
悔しさと不完全燃焼感を所属のズウォレでぶつけたいと本人も思ったはずだが、11月の国際Aマッチウイーク以降のリーグ5試合は一度もピッチに立つことなくウインターブレイクを迎えることになった。11月1日のアヤックス戦や10日のトゥベンテ戦では[4-3-3]のアンカー役を務めていたものの、ヨン・ステーヘマン監督の信頼をつかみきれず、現在は控えに甘んじている。アカデミーからトップまで順調な歩みを見せてきた柏レイソル時代には考えられないような苦境に彼は今、直面しているのだ。
「今回は久しぶりに招集された選手、初めての選手とさまざまな選手がいて、試合前に共通理解を深めて準備していくことが大事だった。そのうえで結果が出たことがチームの力になっていくと思いますし、これからどんな選手が選考されても同じようなアプローチの習慣がついていけば、五輪世代としての積み上げが大きくなっていくんじゃないかと思います」とまずはチームを統率することに専心した中山。その気配りとバランス感覚は90分間通してよく出ていた。
そのうえで彼自身のボランチとしてのパフォーマンスも目覚ましい進歩を遂げたのだから収穫は大きかった。コンビを組んだ松本泰志(サンフレッチェ広島)とはコパ・アメリカにもともに帯同。長い期間練習した経験があり、前回の田中駿汰よりはやりやすかったのだろう。追い風も受けながら、中山は中盤を広範囲で動き、スペースを埋めたりカバーリングに入ったりしながら仲間をサポートし、自らも攻撃に参加した。その最たるものが前述の先制点につながった直接FK。自らの左足でゴールを奪えるところを実証したことで、森保監督がこの先、彼の起用法を微妙に変えていくことも考えられる。
「チームとしてやることがハッキリしていたんで、僕自身もプレーしやすかったですし、そのうえで自分の特徴を出せた。なおかつ結果がついていきたのは大きいと思います。ただ、嬉しい部分はありますけど、1試合が終わっただけで満足はできない。次の活動でどう積み上げていくかが大事なので、そこに向けて切り替えていきたいと思います」
こう語る中山が見据えるのは、3月以降の活動だろう。1月のAFC U-23選手権(タイ)はクラブ側の理解が得られず参戦が叶わなかったものの、クラブでしっかりと出場機会を得てコンディションを上げ、ボランチとしての自分を研ぎ澄ませることで
明るい未来が開けてくる。日々の積み重ねが東京五輪参戦やA代表定着につながることを、彼は誰よりもよく分かっているはずだ。2020年がサッカー人生を賭けた勝負の年になるのは間違いない。果たしてU-22世代のけん引役となる男は重要な五輪イヤーに大いなる輝きを放ち、ブレイクを果たせるのか。その一挙手一投足に注目したい。
【元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
2019年の日本代表活動を締めくくる一戦となった12月28日のU-22ジャマイカ戦(長崎)。森保一監督の故郷凱旋とあってトランスコスモスタジアム長崎に1万6495人もの大観衆が詰めかける中、2020年東京五輪を目指すU-22世代の若きジャパンが躍動し、9-0という圧勝を飾った。
今年は6月のコパ・アメリカ(ブラジル)にも参戦し、森保体制のU-22でコアメンバーの1人となっている中山にとっても、この試合は絶対に失敗できなかった。というのも、0-2で完敗した11月のU-22コロンビア戦(広島)で「A級戦犯的な扱い」を受けたからだ。久保建英(マジョルカ)や堂安律(PSV)らA代表組が合流した国内最初のゲームということで、絶対的リーダーの中山には攻守両面の舵取り役が託された。ところが、中盤でアッサリと球際で負け、相手にはがされるなどの失態が続き、満足いくゲームコントロールが全くと言っていいほどできなかった。ボランチを組んだ田中駿汰(大阪体育大学)との連携も今一つで、彼の評価は急降下。「このままだと東京五輪メンバー18人に入れないかもしれない」という声も聞こえてきたほどだった。
悔しさと不完全燃焼感を所属のズウォレでぶつけたいと本人も思ったはずだが、11月の国際Aマッチウイーク以降のリーグ5試合は一度もピッチに立つことなくウインターブレイクを迎えることになった。11月1日のアヤックス戦や10日のトゥベンテ戦では[4-3-3]のアンカー役を務めていたものの、ヨン・ステーヘマン監督の信頼をつかみきれず、現在は控えに甘んじている。アカデミーからトップまで順調な歩みを見せてきた柏レイソル時代には考えられないような苦境に彼は今、直面しているのだ。
こうしたモヤモヤを払拭するためにも、今回のU-22ジャマイカ戦ではチームと自分自身の結果にこだわる必要があった。コロンビア戦では入りが悪く、プレスも思うようにかからず、攻撃バリエーションも出せなかった反省を踏まえ、中山は自らミーティングで積極的に発言し、一体感と結束力を作り上げることに努めた。
「今回は久しぶりに招集された選手、初めての選手とさまざまな選手がいて、試合前に共通理解を深めて準備していくことが大事だった。そのうえで結果が出たことがチームの力になっていくと思いますし、これからどんな選手が選考されても同じようなアプローチの習慣がついていけば、五輪世代としての積み上げが大きくなっていくんじゃないかと思います」とまずはチームを統率することに専心した中山。その気配りとバランス感覚は90分間通してよく出ていた。
そのうえで彼自身のボランチとしてのパフォーマンスも目覚ましい進歩を遂げたのだから収穫は大きかった。コンビを組んだ松本泰志(サンフレッチェ広島)とはコパ・アメリカにもともに帯同。長い期間練習した経験があり、前回の田中駿汰よりはやりやすかったのだろう。追い風も受けながら、中山は中盤を広範囲で動き、スペースを埋めたりカバーリングに入ったりしながら仲間をサポートし、自らも攻撃に参加した。その最たるものが前述の先制点につながった直接FK。自らの左足でゴールを奪えるところを実証したことで、森保監督がこの先、彼の起用法を微妙に変えていくことも考えられる。
「チームとしてやることがハッキリしていたんで、僕自身もプレーしやすかったですし、そのうえで自分の特徴を出せた。なおかつ結果がついていきたのは大きいと思います。ただ、嬉しい部分はありますけど、1試合が終わっただけで満足はできない。次の活動でどう積み上げていくかが大事なので、そこに向けて切り替えていきたいと思います」
こう語る中山が見据えるのは、3月以降の活動だろう。1月のAFC U-23選手権(タイ)はクラブ側の理解が得られず参戦が叶わなかったものの、クラブでしっかりと出場機会を得てコンディションを上げ、ボランチとしての自分を研ぎ澄ませることで
明るい未来が開けてくる。日々の積み重ねが東京五輪参戦やA代表定着につながることを、彼は誰よりもよく分かっているはずだ。2020年がサッカー人生を賭けた勝負の年になるのは間違いない。果たしてU-22世代のけん引役となる男は重要な五輪イヤーに大いなる輝きを放ち、ブレイクを果たせるのか。その一挙手一投足に注目したい。
【元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
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