【2022年カタールへ期待の選手㉘】直近J1・3戦4発で代表候補に急浮上。神戸移籍1年で大化けしたスピードスター/古橋亨梧(ヴィッセル神戸/FW)

2019.08.30 13:15 Fri
twitterfacebookhatenalinegplus
photo
©︎J.LEAGUE
フェルナンド・トーレスの現役ラストマッチとなった23日のサガン鳥栖vsヴィッセル神戸戦。主役のお株を奪ったのは、神戸の小柄なスピードスター・古橋亨梧だった。

アンドレス・イニエスタのロングパスに反応して前線に抜け出した前半8分のチャンスが惜しくもオフサイドと判定されたのを皮切りに、鋭い動き出しと爆発的スピードで次々と相手ゴールに迫る。3分後に山口蛍が先制点を奪い、前半19分には自らの突破からPKをゲット。イニエスタの2点目をお膳立てする。さらにこの2分後には田中順也の3点目をアシスト。前半だけで2つのゴールに絡む働きを見せる。

迎えた後半9分。一段と輝きを増した古橋は酒井高徳の突破からのクロスにピンポイントで合わせて4点目を叩き出し、28分には山口蛍のマイナスクロスに飛び込んで左足で5点目も挙げることにも成功する。自身の2得点を含めて5ゴールを絡む華々しい活躍を見せた24歳のアタッカーは異次元の存在感を示したと言っていいだろう。

「(トルステン・)フィンク監督からは持ち味のスピードをどんどん生かして攻撃で違いを作ってほしいと言われています。自分が1つのアクセントになってチームに何かをもたらせばいい」と古橋は謙虚にコメントしていたが、その口ぶりとはかけ離れたほどの絶大なインパクトを残している。J2の・FC岐阜から神戸に完全移籍して1年。彼の成長スピードの凄まじさには周囲のビッグネームも驚きを覚えていることだろう。

地元・奈良県生駒市の桜ケ丘FCからアスペガス生駒FC、興国高校を経て中央大学に進んだ頃はそこまで知名度のある選手ではなかった。大学1年で全日本学生選抜入りして多少なりとも注目度は上がったが、大学卒業後に進んだのはJ2のFC岐阜。2部リーグからのプロ挑戦を余儀なくされた。それでも大木武監督に高く評価され、2017年J2開幕・レノファ山口FC戦からコンスタントに出場を果たす。プロ2年目となった2018年は前半戦26試合で11ゴールという目覚ましいパフォーマンスを披露。その活躍ぶりが神戸のスカウトの目に留まり、イニエスタ加入とほぼ同時期に新天地へ赴くことになった。

ルーカス・ポドルスキやウェリントンら外国人助っ人や田中順也、渡邉千真(現ガンバ大阪)といった日本代表経験者がひしめく神戸アタッカー陣で生き抜くのは難しいと思われた。が、移籍間もない8月11日のジュビロ磐田戦でいきなりJ1初ゴールを挙げるとレギュラーに定着。昨季後半は13試合出場5ゴールとまずまずの数字を残す。そして今季もダビド・ビジャの加入や小川慶治朗の復帰、藤本憲明らの移籍がある中でポジションをガッチリキープ。ファン・マヌエル・リージョ、吉田孝行、フィンクと指揮官が入れ替わる中でも絶対的な信頼を寄せられている。それだけ攻守両面で貢献度の高い選手だと認められているのだ。

「シーズン中に監督が変わることは今まであんまり経験してこなかったですけど、プロの世界では当たり前のこと。監督交代があったからってつまづいているようじゃ生きていけない。どんな状況でも自分の持ち味をしっかり出して、言われていることを理解しながらやることが大事だと思ってます。自分は献身的に走らないと、今後使ってもらえないと思うし、FWなんで結果をもっともっと意識していかないといけない。今季もシュートを外してる数の方が多いと思うんで、それを確実に決めていたらもっともっとゴールを取れている。自分が点を取れればチームを助けられるんで、そういう存在になりたいですね」

コツコツと努力を重ね、下のカテゴリーから這い上がってきた男は決して満足しない。そういう雑草魂があるから、今季通算ゴール数を8まで伸ばすことができたのだろう。「とりあえず2ケタが目標」と言う彼がそのラインに到達するのはほぼ確実。この調子なら、目下12点でJ1得点ランキングトップに立つディエゴ・オリヴェイラ(FC東京)やマルコス・ジュニオール(横浜F・マリノス)らとタイトル争いを繰り広げるところまで行けるかもしれない。そのくらいの潜在能力が古橋にはあるのだ。

ブレイク中の男には欧州クラブも熱視線を送っている。今夏にはオランダ・フローニンヘンからのオファーも届いた。本人も「いつかは海外に行きたい」と考えているため、去就についてずいぶん悩んだようだが、「今は神戸のために全力を注ぎたい」と移籍話を封印して今季に賭けている。今季終盤戦でよりゴールを重ねていけば、近い将来の欧州挑戦は現実になるはずだ。

絶好調男の一挙手一投足を目の当たりにしている森保一監督も黙ってはいられないだろう。日本代表アタッカー陣は欧州組を含めて大激戦になっているが、古橋のスピードと決定力は堂安律(フローニンヘン)や伊東純也(ヘンク)にも引けと取らないレベルにある。むしろ欧州シーズン開幕直後の彼らよりJで試合を重ねている古橋の方がいい仕事をするかもしれない。という意味では、2022年カタール・ワールドカップアジア2次予選初戦となる9月10日のミャンマー戦(ヤンゴン)は彼を抜擢するのもありだ。そういう国内組のサプライズ選出があれば、Jでプレーする選手たちの刺激にもなる。今はぜひとも166㎝の小柄な点取屋を候補に挙げてほしいものである。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
コメント
関連ニュース
thumb

【2022年カタールへ期待の選手㊿】「求められるのはゴールという結果」。今季未勝利の清水の救世主になれるか?/鈴木唯人(清水エスパルス/MF)

「今はボールを持ったらひたすらゴールに向かおうと考えてますけど、もっと確実な判断をして点を取ることが大事。よりチームが点を取れる各自な判断、チョイスができるように考えていきたいと思っています」 今季いまだリーグ未勝利でJ1最下位に沈んでいる清水エスパルス。コロナ禍の今季はJ2降格なしという特例があるものの、苦しい序盤を強いられているのは間違いない。そんな中、数少ない光明の1つとなっているのが、18歳のルーキー・鈴木唯人の成長だ。 名門・市立船橋高校から加入した新人アタッカーは2月の開幕時点では若手チームの練習に参加している状況だった。ところが、7月4日の再開初戦・名古屋グランパス戦でいきなりスタメンに浮上。河井陽介、中村慶太のケガでチャンスを与えられたのもあるが、そこから3試合連続で先発起用された。直近2戦はジョーカー的な扱いをされているが、昨季まで横浜F・マリノスでポステコグルー監督の片腕として働いていたクラモフスキー監督から「彼は非常によくやってくれている。毎回うまくなろうと考え、自分でプレーを伸ばしている」と高く評価されているのは確かだ。 「中断期間に劇的な変化があったわけではないですけど、『堂々とやろう』という意識が高まりました。高校卒業1年目ですけど、周りと変わらないと思わせる振舞いから入ろうと考えるようになって、プレーが少しずつ変わっていったのかな。先輩からも『遠慮なく自分を出せ』と言われて、どんどんアグレッシブにできるようになった。『自分で積極的にゴリゴリ行って決めるんだぞ』という姿を見せることが今は一番大事だと思ってます」と本人も4~5か月間での大きな心境の変化を口にする。 市船でエースナンバー10を背負っていた頃からファンタジスタで知られた鈴木だが、走力や強さの部分はそこまで頭抜けているわけではなかった。メンタル的にも浮き沈みが激しく、波多秀吾監督からもダメ出しされることがしばしばあった。3年最後の今年1月の高校サッカー選手権も2回戦で日章学園にPK負けと実力を出し切れずに号泣。プロ入り直後に試合に出られるとは本人も周囲も考えていなかった。 けれども、わずか半年間で状況は激変。リーグ再開後の鈴木は前線から激しくボールを追い、鋭い攻守の切り替えからゴールに突き進んでいくガツガツした姿を前面に押し出すようになった。その背景には、先輩・立田悠悟らとのフィジカル強化があったという。 「入団直後は若手チームで練習していましたけど、試合に出ている人が朝早く来てフィジカル強化をしているのを見て、『出てない人間が何もしていないんじゃ何も変わらない』と思って、自分から参加をお願いしたんです。2月くらいから始めて、体幹とか上半身も結構やったんで、清水に入った時よりは当たり負けやブレは少なくなってきたのかなと感じます。ただ、技術面は完璧にできていない。その分、試合の中では誰よりも走って、走り回って貢献しようという考えでやってます」と本人も高い意欲を持って取り組んでいることを明かす。目の色を変えてサッカーに向き合っているからこそ、クラモフスキー監督も大抜擢に踏み切ったのだろう。 ただ、ここまでノーゴールという結果が示す通り、本人も「仕事ができている」という感覚は持ち合わせていない。同世代を見れば、スペイン1部でコンスタントに試合に出続けた久保建英(マジョルカ)を筆頭に、横浜FCで2トップの一角を担っている斉藤光毅、サガン鳥栖のリーダー格に成長した松岡大起など目覚ましい活躍をしている選手が少なくない。今の鈴木唯人はようやく彼らと同じ土俵に立ったところなのだ。 「上のカテゴリーで活躍している同世代がいるのは意識するところですけど、今はエスパルスで1つ1つ自分の課題を修正して次につなげていくことが一番大事。1日1日を大切にして頑張ろうという気持ちが強いです」とまず足元からしっかりと固めていこうと考えている。 地道な思考をするのは、横浜F・マリノスプライマリー追浜から中体連の葉山中学校に進み、市船でブレイクした経験があるからだろう。小学生時代は同い年の西川潤(C大阪)と一緒にプレーしたことがあるが、ジュニアユース昇格後の西川はU-15世代から年代別代表の常連になっていった。エリート街道をひた走ってきた同期とは異なる道を歩んだ鈴木は、18歳になった今、彼と同じJ1のクラブに入り、一足先に公式戦出場機会を得るまでになった。もちろん清水とセレッソのチーム事情は異なるが、地道な努力を続けていれば、バルセロナから注目される同世代の仲間を超えて飛躍できる可能性があることを示したのだ。 「東京五輪が1年延期になったんで、そこを狙っていきたいという思いもあります。そのためには、やっぱりゴールという結果が必要。プレーの面で言えば、もっと怖い選手にならないといけない。シュート、パス、ドリブルの1つ1つの精度を高めていくことが重要なのかなと思います」 鈴木が見据える領域は高い。そのためにも、本人が言うように、目に見える結果が求められる。自らのゴールで苦しむチームの救世主になれれば、確実に自分の価値も上がる。U-19日本代表定着、そして東京五輪参戦の道も開けてくるだろう。それを現実にするためにも、試合に起用されているこのタイミングを大事にしなければならない。清水はこの先、大分トリニータ、浦和レッズ、北海道コンサドーレ札幌という難敵との戦いが続く。そこで目覚ましい成果を残す鈴木唯人の一挙手一投足をぜひ見てみたい。 2020.07.26 18:05 Sun
twitterfacebook
thumb

【2022年カタールへ期待の選手㊾】「ガンバ基準を落としちゃいけない」。再開序盤戦で苦しむ山口の救世主となり、東京五輪へ/高宇洋(レノファ山口FC/MF)

「僕だけじゃなくて、見ている人みなさんが気づいていると思いますけど、ヤンの成長っていうのはホントに目に見えるようなスピードで進んでいる。彼の性格、向上心、成長への欲求はもちろんですけど、ちゃんと頭の中で考えてサッカーをやるようになってきた。自分のストロングや課題をしっかり理解したうえで、両面にわたって積極的なトライをしてくれている。勝利のカギを握る選手の1人に成長してくれたなと実感しています」 2016年末まで日本サッカー協会技術委員長を務め、現在はレノファ山口の指揮を執る霜田正浩監督が太鼓判を押した通り、同チームの背番号6をつける男・高宇洋が再開後のJ2で大きな存在感を示している。 6月27日のファジアーノ岡山戦以降、夏場の連戦の中、フィールドプレーヤー唯一の4試合フル出場。「今、バテてたらこの先ヤバいんで」と冗談交じりに笑う余裕をのぞかせる彼だが、際立っているのは自慢の走力やタフさだけではない。守備面では中盤で球際の厳しさと寄せの激しさを押し出し、数々の局面でピンチを未然に防いでいる。攻撃面でも、11日のジュビロ磐田戦でイウリの得点につながったタテパスに象徴されるように「タテへの意識」が格段に上がっているのだ。 「昨年の夏にガンバ(大阪)から山口に来て、今は『中心でやっていく』という自覚を持ってやってます。最近の個人的なパフォーマンスにも手ごたえを感じていて、ビルドアップでもギリギリまで相手が見えているし、タテパスの本数も増えて、プレーエリアが広くなっていることを実感しています。 ガンバの時にはヤットさん(遠藤保仁)、コンさん(今野泰幸=磐田)もいて、学ぶところが非常に多かった。今はJ2ということで少し落ちますけど、自分の中ではガンバ時代のプレーのイメージはつねに残ってますし、絶対にレベルを下げちゃいけないって思ってる。レノファでしっかり試合に出ている分、自分やチームのクオリティを上げることを考えながら取り組んでます」と彼はつねに高い領域を貪欲に追い求めている。 しかしながら、チームの方は足踏み状態が続いている。「今季は上位2位以内に入ってJ1昇格」を掲げる山口だが、再開後は1分2敗。7月5日の愛媛FC、11日の磐田戦ではともにリスタートから前半終了間際に失点し、ビハインドを跳ね返せないまま黒星を喫する形になっている。ボールを支配してサイドの幅を使いながら攻めるというコンセプト通りの試合運びはできているのだが、勝利と言う結果がついてこないのは高としても納得できないところ。「自分がチームを勝たせられる選手にならないといけない」と本人も語気を強める。 「シュートを決め切る部分だったり、アシストってところで、今季はその数字にもこだわっている。そこで結果を出して、チームを勝たせられるかどうかが重要だと思います」と高自身が語る一方、霜田監督も「彼は守備的なMFではなく、攻撃も守備もできるセンターハーフ。ボックスからボックスに走れるようなセンターハーフに育てたいし、彼ならばそれができると思っている」と高い要求を突きつけている。尊敬する遠藤や今野のように中盤からのミドルシュートや意表を突く飛び出しでゴールを奪えるようになれば、山口ももっと楽な戦いができるはず。イウリら前線のアタッカー陣を生かすことも大切だが、高はもっとエゴイストになっていいだろう。 そのうえで、目指すべきところは、J1復帰であり、1年後に延期された東京五輪出場だ。昨年のトゥーロン国際トーナメントに参戦した後、「いつか必ずJ1で活躍できる選手になる」と強い覚悟と決意を持ってガンバから山口に赴いた彼にとって、J1昇格は至上命題と言っていい。目下、大宮アルディージャとVファーレン長崎がトップを走っているが、夏場のハードスケジュールに5人交代など過去にないレギュレーションの今季だけに、この先、何が起きるか全く分からない。いかにしてこの停滞感を払拭し、勝ち点を重ねていくのか……。それを高は率先して考え、ピッチ上で表現していくことが肝要だ。地道に実績を積み重ねることでしか、輝かしい未来は開けてこない。 「五輪のことはあまり考えてないけど、今やれることをやるしかない。J2という舞台で好パフォーマンスを見せて、結果を出すしかない。それはガンバの時からずっと同じです。来年の五輪代表の強化体制が決まって、大会直前以外は横内(昭展)さんが指揮を執ることになりましたけど、僕が去年参加したトゥーロンの時も横さんが監督だった。結果も出たし、やってるサッカーもすごい楽しかったんで、僕らにとってはチャンスがあると思います」 どんな状況下でもポジティブシンキングを忘れないのが、高のいいところ。彼の主戦場であるボランチは欧州組の中山雄太(ズウォレ)やA代表予備軍と言われる田中碧(川崎)、田中駿汰(札幌)らがひしめく激戦区だが、参入の余地がないわけではない。霜田監督の力強い後押しを受け、ハードな2020シーズンにさらなる飛躍を遂げることができれば、大舞台に立てる可能性も十分あるはずだ。タフでアグレッシブな男がレノファをどのように立て直し、上位躍進へと導いていくのか。今後の彼の一挙手一投足から目が離せない。 <hr>【文・元川悦子】<br /><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2020.07.15 16:00 Wed
twitterfacebook
thumb

【2022年カタールへ期待の選手㊽】柴崎二世の天才肌のボランチ、再開J2で完全復活へ。ポルトガル行きの行方は?/藤本寛也(東京ヴェルディ/MF)

新型コロナウイルス感染拡大でストップしていたJ2の再開がいよいよ27日に迫ってきた。2月23日の第1節終了時点での状況をおさらいしてみると、上位はアルビレックス新潟、徳島ヴォルティスら10チームが勝ち点3で並んでいる。非常に混とんとした状態からのリスタートとなるのだ。 J1最多得点記録の185ゴールを挙げている大久保嘉人が今季、鳴り物入りで加入した東京ヴェルディは、初戦で徳島に0-3で大敗。目下、ザスパクサツ群馬と並んで最下位に沈んでいる。しかしながら、再開後は長期離脱を余儀なくされていた若きキャプテン・藤本寛也がピッチに戻ってくると見られるだけに、巻き返しのチャンスは大いにある。「柴崎岳(デポルティボ・ラ・コルーニャ)二世」とも称される卓越したパスセンスと戦術眼を備えた技巧派ボランチの復帰は、J屈指の名門クラブに光明をもたらすに違いない。 「『柴崎岳選手に似てる』というのはよく言われます。僕もA代表の試合をよく見ますけど、なんか自分を見ているような感じがする。柴崎選手みたいな存在感の大きな選手になりたいですね」と本人も目を輝かせる。 99年生まれの藤本は山梨県出身。地元のアミーゴスFC、FCヴァリエ都留を経て、東京Vジュニア入りし、順調にカテゴリーを上げて2018年にはトップ昇格を果たした。非凡な才能は15歳の時点で高く評価されており、2014年には1つ年上の堂安律(PSV)、冨安健洋(ボローニャ)、田中碧(川崎フロンターレ)らとともにAFC・U-16選手権(タイ)に参戦。当時の指揮官は今季から東京Vコーチに就任した吉武博文監督だった。 「吉武さんに会ってなかったら、15歳から先のサッカー人生は充実したものにはならなかった。今のプレースタイルの原点は全て吉武さんに学んだもの。本当に感謝してます」と本人もしみじみ言う。当時のU-16日本代表はアジアを突破できず、批判も浴びたが、藤本自身は成長の歩みを止めることはなかった。堂安や冨安の後を追うようにユース代表へとステップアップ。2019年U-20ワールドカップ(ポーランド)で初めて年代別世界大会の舞台に立った。同大会では齊藤未月(湘南ベルマーレ)と鉄板ボランチを形成。第2戦・メキシコ戦(グディーニャ)では2アシストを記録するなど、絶大な存在感を示した。 「未月とは相性がよかった。ハードワーカーの彼は動いてボールを取ってさばいて前に出る感じの選手。僕はどっちかというと真逆なタイプで、組み立てや予測が得意。攻守両面の特徴が全然違うので、やってて息が合うなと感じてました。カゲさん(影山雅永現U-19日本代表監督)からも『サボるな』『チームのために走れ』とかいろいろ言われていたけど、僕もそういうことは嫌いじゃなかった。世界で勝つために必要なサッカーが何なのかを理解できた気がします」と彼は神妙な面持ちで語っている。 貴重な経験を東京Vに還元すべく意欲を高めていたが、直後の昨年8月の鹿児島ユナイテッド戦で右ひざ前十字じん帯と半月板の損傷を負ってしまう。診断結果は全治8カ月。昨季後半を棒に振り、辛いリハビリ生活を強いられることになった。影山ジャパンの盟友だった安部裕葵(バルセロナ)や久保建英(マジョルカ)が世界に羽ばたく傍らで、藤本は大きな出遅れを強いられたのだ。 けれども、2020年に入ってから、環境は確実に変わりつつある。前述の通り、まず恩師・吉武監督が東京Vの一員に加わったのだ。「また吉武さんと一緒に戦えるのはすごく嬉しい」と本人も息を弾ませていたが、自身を高く買ってくれた指導者が近くにいてくれることは本当に心強いはず。実際、メンタル的な力強い支えになったことだろう。 J2開幕の2月はまだリハビリ中だったが、コロナ騒動で空白期間ができ、ケガを癒す時間が生まれた。「早くても3〜4月くらいに戻れればいい」と藤本は1月時点で復帰見通しを話していたが、リーグ中断期間を有効活用することができたのだ。 その5月にはポルトガル1部のジル・ヴィセンテへの移籍報道も浮上した。仮に海外移籍を選ぶにしても、欧州組の今夏はプレシーズンがほとんどない。ポルトガルも7月26日の最終節の後、新シーズンに向けて間髪入れず始動することになるため、選手の肉体的負担は大きい。今からJ2で何試合か戦い、徐々に状態を引き上げることができれば、過酷な環境に身を投じても耐えられるようになる。当の藤本が何を選択するか未知数ではあるが、ここから本格的に始まるシーズンが自身のキャリアを大きく左右するのは間違いないだろう。 かつて柴崎も2010年U-20ワールドカップ出場を逃し、2012年ロンドン五輪落選を強いられ、A代表に呼ばれるたびにケガや病気で離脱するという苦境を強いられてきた。回り道を重ねて2018年ロシアワールドカップで大輪の花を咲かせ、今の地位を確実なものにしたのだ。ここまでは紆余曲折の連続だった藤本も挽回できるチャンスはまだまだいくらでもある。「柴崎以上の才能」と言われるボランチにはこの先、爆発的な成長を遂げ、五輪代表、日本代表へとステップアップしてもらわなければならないのだ。 「この1年は自分にとってすごく大きい。この1年が充実したものになるかならないかは自分次第。まずは公式戦に復帰して、そこで持ってる力のすべてを出せるようにしたいと思ってます」 そう語気を強める藤本の復帰戦は27日の町田ゼルビア戦になることが濃厚だ。将来の日本を背負うことになるかもしれない稀代のボランチの一挙手一投足を今、我々はしっかりと目に焼き付けておきたいものだ。 <hr>【文・元川悦子】<br /><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2020.06.27 14:00 Sat
twitterfacebook
thumb

超過密日程、5人交代で出場機会増へ。一気にブレイク狙う西川潤ら期待の若手たち

「自粛期間は自宅でサッカーの動画を見て、戦術の勉強をしたり、トレーニングも毎日の日課にしてました。Jリーグ再開後は日程が過密になるし、総力戦になることは自分もよく分かっています。交代枠も5人になるので、よりチャンスの幅が広がりますし、いい準備をしてのぞんでいきたいと思います」 2020年期待のルーキー・西川潤(セレッソ大阪)が6月初旬のオンライン取材で語気を強めたように、コロナ禍を経て再開される今季Jリーグは若い世代にとって絶好のアピールの場となるだろう。 7月4日からリスタートするJ1をとってみても、7月だけでリーグ6試合、8月はリーグとYBCルヴァンカップを合わせて8試合が組まれている。ロティーナ監督(C大阪)も「選手層の厚いチームが有利」と断言したが、真夏の連戦を年齢層の高い主力だけでは戦い抜くことは困難だ。当然のごとく、西川のような粗削りの若手がピッチに送り出されるケースも多くなる。そこでインパクトを残せば、一気にブレイクすることも可能なはず。目の前に転がっているチャンスをつかむべく、フレッシュな面々は今、モチベーションを高めているに違いない。 とりわけ、97年生まれ以降の東京五輪世代にとっては、今季のパフォーマンスが大舞台に直結するだけに、1つ1つのゲームの重要度がより高くなる。日本サッカー協会の反町康治新技術委員長も「五輪代表活動は年末に再開できたらいい」という見通しを述べていて、チーム作りはゼロからの再出発を余儀なくされるため、生存競争もフラットな状態に戻ることになる。森保一監督が2019年コパ・アメリカ(ブラジル)など過去の代表活動でコンスタントに招集していた杉岡大暉(鹿島アントラーズ)らが新天地で出番を得られず苦しんでいるように、これまでの序列が維持されるとは限らない。北海道コンサドーレ札幌から湘南ベルマーレにレンタル移籍中の岩崎悠人が「1年という時間ができたことは正直、ラッキー」と前向きにコメントした通り、確固たる地位をつかんでいない選手は虎視眈々と1年後を見据えていくはずだ。 こうした中、有利になるのが、直近のリーグ戦でコンスタントに出場機会を得る選手。森保体制で招集歴のある森島司や大迫敬介(サンフレッチェ広島)、田中碧、旗手怜央、三苫薫(ともに川崎フロンターレ)、渡辺剛(FC東京)、橋岡大樹(浦和レッズ)、相馬勇紀(名古屋グランパス)、岩田智輝(大分トリニータ)などは各クラブで重要な役割を担っているため、この調子で着実に結果を積み上げていけば、東京五輪に大きく近づくのは間違いない。 ただ、これまでほとんど実績のなかったグループにも存在感が急上昇しそうな者はいる。その筆頭が安部柊斗、紺野和也、中村帆高のFC東京大卒ルーキー三人衆。彼らは長谷川健太監督から重要戦力と位置付けられていて、悲願の初優勝を狙うチームのキーマンになるかもしれない。そういう意味でも再開後のプレーを注視すべきだろう。急激な若返りを図っているサガン鳥栖の松岡大起、本田風智らも非常に興味深い。伸び盛りの意外なタレントが熾烈な五輪代表争いを展開し、Jリーグ全体を活性化してくれれば面白い。 一方で、J2にいる東京五輪世代の一挙手一投足も見逃してはいけない。ジュビロ磐田にはエースFW最右翼と目される小川航基がいるし、レノファ山口FCにも高宇洋、小松蓮といったダークホースがいる。FC町田ゼルビアへレンタル移籍している安藤瑞季、高江麗央、小林友希らも成長著しい若手たちだ。安藤と高江に関しては、6月13日の浦和レッズとの練習試合でもゴールを奪い、ひと際大きなインパクトを残した。もちろん相手とのコンディションや実戦感覚の差はあったものの、切れ味鋭い飛び出しやゴールへの貪欲さは大いに目を引いた。東京ヴェルディにも「柴崎岳(ラコルーニャ)2世」の呼び声高い藤本寛也、組み立てに秀でた井上潮音がいる。若手はちょっとしたきっかけで飛躍的成長を遂げることが往々にしてある。試合数の多いJ2にはそんなチャンスがゴロゴロ転がっている。だからこそ、より一層、しっかりと動向をチェックしていく必要がありそうだ。 過去2年半の森保監督の東京五輪チーム作りは、堂安律(PSV)や冨安健洋(ボローニャ)、板倉滉(フローニンヘン)といったA代表経験のある欧州組に偏りがちだった。しかしながら、彼らの多くが新型コロナウイルス感染拡大の影響で、リーグによっては長期間実戦から離れる形になっていて、パフォーマンスやコンディションが未知数な部分もある。久保建英(マジョルカ)のように4カ月の休止期間を有効活用して以前よりキレのあるプレーを取り戻した選手もいるが、全員が同じような軌跡を辿るとは限らない。コロナの第2波・第3波次第ではこの先、彼らを代表活動に招集することさえ困難になるかもしれない。 そういった複雑な事情を踏まえると、やはり国内組をベースにチーム再構築を進めていくのが現実的。そこで欧州組を超えるような勢いと爆発力を持ったタレントが次々と出てきてくれれば、指揮官も安心できるのではないだろうか。大きな期待を寄せる森保監督に向けて、「自分が堂安や久保を蹴散らして大舞台に立つんだ」というギラギラ感を前面に押し出すJの若手選手が何人出てくるのか。一気にブレイクする人間は果たして誰なのか。予想もしなかった逸材の出現を今から楽しみに待ちたいものだ。 <hr>【文・元川悦子】<br /><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2020.06.26 12:50 Fri
twitterfacebook
thumb

【2022年カタールへ期待の選手㊼】古巣・バルサ戦からのリスタート。気になる来季以降の所属先、東京五輪・A代表の行方/久保建英(マジョルカ/MF)

新型コロナウイルス感染症による3カ月超もの長い中断期間を経て、ようやく再開されたスペイン・ラ・リーガ。久保建英が所属するマジョルカは6月13日(日本時間14日未明)、本拠地・エスタディ・デ・ソン・モイシュで古巣・FCバルセロナを迎え、新たなスタートを切った。 [4-4-2]の右MFに陣取った久保は、開始早々のビダルの先制点直前にボールを奪いに行くもかわされ、悔しい入りを余儀なくされた。それでも勇敢さは持ち続け、右サイドから積極果敢な突破を試み、メッシ擁するスター軍団に真っ向からぶつかっていった。22分にはダニ・ロドリゲスとのワンツーから右のインサイドに切れ込んで左足で強烈シュートを放ち、32分にはペナルティエリア外側中央からの直接FKを名手・テアシュテーゲンの正面に蹴る決定機を作った。 <div id="cws_ad"><script src="//player.daznservices.com/player.js#44a12140e3dda008f998a5a1a9.1tybkqliqmgvi1ndbmyxnzxqc3$videoid=143ihub1krxnc1t4afmsced00w" async></script></div> 結局、ゴールという結果にはつながらなかったが、バルサ相手に前半だけで枠内シュート3本を放ち、物怖じせずドリブルとシュートという武器を押し出そうとするあたりは、普通の19歳の日本人選手とはかけ離れている。だからこそ、森保一監督も18歳になったばかりの彼を昨年6月9日に行われたエルバサルバドル戦(宮城)で国際Aマッチデビューさせ、2019年コパアメリカ(ブラジル)にも連れて行ったのだ。今回のコロナ禍で3月7日のエイバル戦以降、公式戦から遠ざかり、コンディションやパフォーマンスが懸念されていたが、こうした心配が無用であることを実証。関係者を安堵させた。 ここからリーガは超過密日程。6月だけで5試合、7月は19日までに6試合を消化するという超人的スケジュールだ。19歳になったばかりの久保と言えども、ケガが不安視されるところだが、つねに向上心を持ってサッカーに取り組む彼のこと。休止期間にも体幹強化や体のメンテナンスに気を配っていたに違いない。その努力の成果を発揮して、今季3ゴールという数字を大きく伸ばすことができれば、今後の身の振り方もポジティブな方向に持っていけるはずだ。 マジョルカのレンタル契約は1年。今季終了後には保有権を持つレアル・マドリーに戻るか、別のクラブに行くか、マジョルカに残留するかという3つの選択肢のいずれかの道に進むことになる。レアルで試合に出られればそれが一番いいのは当たり前だが、ベイルやアザールなど世界屈指のタレントを数多く揃える強豪で出番を劇的に増やすのはそう簡単ではない。一部報道ではイタリアからオファーが届いているとも報じられたが、スペイン語というアドバンテージを有効活用できるスペインに残った方がベターだろう。 とはいえ、今回のコロナショックで各クラブは想像以上に大きな経営的なダメージを受けている。マジョルカを含むリーガのクラブが新戦力を補強するハードルは想像以上に高い。久保がこの逆風を跳ね除けて、理想的なプレー環境を手にするには、今季の残り11試合で圧倒的な存在感を示すしかない。その重要性を賢い若武者はよく理解しているはずだ。そんな久保が今、考えるべきなのは、今季のマジョルカのようにほぼコンスタントに公式戦出場できるクラブに行くこと。それが成長への一番の早道だ。 1年延期された東京五輪やA代表での活躍はその延長線上にある。東京五輪が予定通り、開催されたとしても、次のシーズンで久保がピッチから遠ざかるような状況になれば、森保監督も攻撃陣を託すことはできなくなる。クラブで活躍しすぎると、逆に五輪代表招集が難しくなる可能性もあるが、先々を考えたらクラブ側が派遣拒否するくらいの強烈なインパクトを残してくれた方がいい。今の東京五輪世代にしてみれば、1年延期されたからこそ、五輪の重要性がより高まった部分はあるだろうし、久保本人も「出るからには優勝しかない」と断言しているが、やはり彼らが見据えるべきなのはその先。2022年カタール・ワールドカップ出場権を確実に得て、本大会で悲願のベスト8入りを果たすこと。その牽引者になることが久保建英に課された最重要命題と言っていい。 「ワールドカップは4年に1回しかないですし、まだまだ先のことと言えば先のことですけど、今回の予選はその切符を勝ち取るためのもの。誰が出るかとか誰が選ばれるかとか毎回変わってくると思いますけど、その時に選ばれて試合に出ている選手が全力を尽くしていくことが大事。前の大会もそうやって切符を勝ち取っていると思いますし、次の試合につなげるっていうのが一番だと思います」 2019年9月の2次予選初陣・ミャンマー戦(ヤンゴン)に挑むに当たって、久保は一戦一戦の重要性を強調していたが、その言葉通り、A代表で実績を1つ1つ積み重ねていくことがスターへの階段を駆け上がることにつながる。過去の代表エースである中田英寿、中村俊輔(横浜FC)、本田圭佑(ボタフォゴ)らをはるかに超える若年層からの国際経験値を持つ彼には、成し得ることも多いはず。そういう期待に応えるべく、リスタートされたリーガでアタッカーとしての確固たる基盤を構築すること。それを第一に考え、日々の成長につなげてほしい。 <div id="cws_ad"><hr>【文・元川悦子】<br />長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。</div> 2020.06.14 16:00 Sun
twitterfacebook