【六さんのアムールフットボール】ユーロ2016~VOL9~
2016.07.10 06:30 Sun
[ロナウド垂直跳び先制点]
▽ポルトガルとフランスがファイナルに進んだ。どちらも、ここまでの戦い方を見れば、予想外のカードと言っていいのではないか。不安定だった天候も終盤にきてやっと回復の兆しを見せ始めた。決勝が終わったら、フランスは一気に本格的なバカンスのシーズンを迎える。1カ月を越えたユーロ2016の旅もあとわずか、日本で待ち受けている湿度の高い夏を思うと、さわやかで、日没時間が長いパリから、まだ、離れたくなくない。▽ロナウドとベイルの戦いは、ロナウドが1得点1アシストと、本来の決定力の高さをベイルの前でみせた。前線の左サイドを起点に、ロナウドは「自分のスタイル」で2得点を挙げた。一方ガレス・ベイルは、代表ではフリーマンに近い役割を与えられていた。守って、作って、走って、さらにゴールを求められる。二人を比較するには、試合での役割があまりにも違いすぎた。ロナウドの決定力もさすがながら、ピッチのあらゆるポジションにいながらも、ゴールへの気持ちを失わないベイルの臭覚は、不発に終わったとはいえ、その怖さは本物だった。ロナウドの驚異的な垂直飛びも、ベイルのノーステップのロングシュートも、銀河系の銀河系たる所以である。
[タイムアップ ロナウドは何を思ったか]
[サポーターのサンダークラップにこたえるベイル]
[タイムアップ、どんな会話が交わされたのか]
▽けが人や出場停止で、主要メンバーを欠きながら、ドイツの強さはそれでも本物だった。2014年世界王者の実力を、フランス相手に見せつけた前半の45分だった。ところが、前半終了間際に、セットプレーからフランスにPKが与えられた。この日先発出場をしたシュバインシュタイガーが、ハンドの反則を取られたのだ。混戦だったため、なぜプレーが止まったのかわからなかったが、まさかPKがフランスに与えられるとは思わなかった。前半ロスタイム、審判も勇気ある判断をしたものである。ある意味、神様からのプレゼントがないと、フランスがドイツに勝てないのはわかっていたが。[2点目挙げて抱き合うボグバとグリースマン]
[フランスの救世主となったグリースマン]
▽後半は、誰もが思い描いた展開通り、攻め急ぐドイツに対し、グリースマンとボグバのコンビで追加点を挙げ、ドイツを突き放した。ドイツは珍しく、プレーそのものが冷静さを欠いて、多分に感情的になっていた。ドイツといえども、1点を先行されると、それをひっくり返すのは容易ではないことを、この試合は教えてくれた。逆に、フランスは90分、よくサイドを崩されず、守りぬいたといえる。2点目をアシストしたボグバのステップが、ドイツにはなかった。[喜びのグリースマン]
▽パリの夏は、さらに熱くなってきた。今度はレアルとアトレチコのダービーだ。【六川則夫】(ろくかわのりお)
1951年、東京生まれ。
40年近くピッチレベルでサッカーを撮り続けてきている重鎮フォトグラファー。「蹴る、観る、撮る」の順序でサッカーを愛し、現在も取材の合間にボールを蹴るという根っからのサッカーボーイでもある。
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