【コラム】「らしさ」を貫いたなでしこジャパン

2015.07.10 14:15 Fri
▽5-2という衝撃的なスコアで幕を閉じた女子ワールドカップ(W杯)。敗戦から一夜明け、7日になでしこジャパンのメンバーが帰国した。優勝まであと一歩のところでの大敗は、多くの人に衝撃を与えたはずだ。しかし、帰国後の取材で選手たちは決勝での敗戦を冷静に受け止めていた。

「対策はしていましたが、それを上回ってくることを相手がしてきた」(大儀見優季)

「その時の選択できる判断、プレーは全てを懸けてやった」(宮間あや)
「持っている力を全て出し切った結果だと思う」(澤穂希)

「全力で戦ったので悔いもない」(大野忍)
▽その他の選手も含め、多くの選手が自分たちの力を出し切ったと話してくれた。そして、ロンドン五輪に続きなでしこの前に立ちはだかったアメリカとの実力差があることも、しっかりと冷静に受け止めていた。連覇に多くの期待が集まる中、準優勝という成績に終わったものの、この結果はなでしこにとって大きな意味があったように思う。

▽大会前から、チームを率いる佐々木則夫監督は常々“チャレンジ”という言葉を使ってきた。王者でありながら“チャレンジ”という言葉に疑問符がついた人もいたかもしれない。しかし、これは何も弱気になった発言ではなく、実際の本大会でもなでしこ「らしさ」を貫く“チャレンジ”をしながら、2大会連続の決勝進出を勝ち取った。

▽思い起こせば1年前、「自分たちらしい」という言葉が大きくクローズアップされた。

▽ブラジルW杯に臨んだ日本代表は、1分け2敗でグループステージ敗退に終わった。W杯敗退後、選手たちの口から出た「自分たちらしいサッカーができなかった」という言葉が大きく取り上げられていたが、一体「自分たちらしさ」とは何なのだろうか。佐々木監督、そして選手たちの話を聞いて一つの結論に辿り着いた。

▽ショートパスを繋ぐ、サイドから崩す、ロングボールで裏を狙う…このような個々のプレーを「自分たちらしさ」と捉えることもできるだろう。しかし、なでしこの選手たちが口にする「自分たちらしさ」はプレーの話ではなく、「諦めないで戦う」というメンタル面の話だった。
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▽それは大敗に終わった決勝戦を見ても分かる。試合開始わずか3分に先制を許したなでしこだったが、選手たちはキャプテンの宮間の下に集まり声を掛けあった。さらに、クリアミスをホリデーに叩きこまれ3失点目を喫した直後、なでしこはピッチ上で円陣を組んだ。しかし、その直後にロイドのロングシュートが決まり、気持ちが切れてしまう可能性は大いにあった。1年前のブラジルW杯準決勝ブラジルvsドイツの結果が頭をよぎった人も多かったのではないか。しかし、なでしこは下を向かずに走り続け、前半に大儀見のゴールで1点を返した。

▽後半も得点直後に失点し、さすがに気持ちが折れるかと思われたが、その後も前からボールを追いかけ、ゴールを目指して攻め続けた。結局、その後はスコアを動かすことができなかったが、なでしこは最後まで戦う姿勢を見せてくれた。

▽結果だけを見れば、決勝で5-2と大量失点を喫して敗れ、連覇にあと一歩及ばずというところだろう。しかし、「自分たちらしさ」を貫いて真っ向勝負を仕掛けた結果であれば、悔しさは残るものの自信を持っていられるはずだ。戦い方ではなく心の「らしさ」を貫いたなでしこたちは、この先も自信を持って世界に挑戦できることだろう。
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▽当然ながら、メンタルだけで勝てるほど甘い世界ではない。フィジカル、戦術、技術など、様々な国と比較すれば、なでしこがアメリカやドイツなど強豪国に劣っている部分はまだまだある。それでも、「諦めない」という姿勢を見せ続け、日本中を沸かせ、連覇にあと一歩まで迫ったなでしこジャパン。来年に控えるリオ五輪の出場権を獲得し、「らしさ」を見せ続けて頂点に立ってもらいたい。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》

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