カタールW杯開幕で気になったカタール・サポ/六川亨の日本サッカーの歩み
2022.11.21 22:45 Mon
「やはり」と言うべきなのだろうか。ある程度は予想されたことだった。
そう、昨日開幕したカタールW杯のオープニングゲーム、ホスト国カタールが南米4位のエクアドルに0-2で敗れた。
W杯の開催国が開幕戦(初戦)で敗れたのは過去21大会(日韓大会は2か国共催のため試合数は22)で初めてのことである。今大会に参加している32か国で初出場はカタールの1か国のみ。過去に出場経験が一度もなく、開催国枠として出場できただけに、選手としてもチームとしても“経験不足"は明らかだった。
それを象徴しているのが2点目のシーンで、左サイドからのクロスに対してゴール前には5人のDFが揃っていたものの、GKも含めて全員が全員「ボールウォッチャー」になっていた。ゴール前にいるエクアドルの選手には“目もくれて"いなかった。
フリーで走り込まれては、33歳のベテランFWエネル・バレンシアが外すはずもなかった。
過去2年間、地元でヨーロッパや南米の中堅・強豪国とのマッチメイクはゼロ。アメリカでのゴールドカップ(ベスト4)や自国開催のアラブカップ(3位)で格下相手と対戦するしかなかった。
加えて育成年代の指導を評価されて代表監督に就任したフェリックス・サンチェス監督の経験不足も感じた。ポゼッションスタイルのサッカーを目指しているものの、所詮はアジアレベル。付け焼き刃がW杯で通じるわけがない。
となると“伝統"のカウンターということになるが、ブラジル以外の南米勢はどこもカウンターを武器にしている。“王国"に対抗するにはそれしか手段がないからだ。ご多分に漏れずエクアドルもシンプルなタテパスや、サイドに展開したら手数を掛けずにアーリークロスで勝負を仕掛けてきた。
この試合開始早々からのアーリークロスにカタールはリズムをつかめず失点した。マイボールになり攻撃に転じようとしても、エクアドルは前線からのチェックと素早いリトリートでFWアリモエズ・アリらにスペースを与えない。せっかく192センチの長身FWムハンマド・ムンタリがいるのだから、もっと早く投入してパワープレーに切り替えるべきだったのではないだろうか。
初戦のエクアドル戦を落としたことで、残す相手はオランダとセネガル。10年南ア大会に続き、開催国のグループリーグ敗退という不名誉な記録もチラついてきた。
中東初のW杯ということで、何かと話題の多いカタールだが、開幕戦のゴール裏には違和感を覚えたものだ。
これまで中東での取材は、イランのアザディ・スタジアムを除けばまず満員になることはなかった。試合開始直前になって、イスラム教の民族衣装である純白の「トーブ」(オバQのような衣装。大会マスコットのライーブをイメージしてほしい。こちらは一反木綿にも似ている)を着た大人や子供(いずれも男性)がサンダル履きでのんびりとスタジアムにやってきた。
試合中は中東独特の音楽が流れ、観客はヒマワリの種を食べながらノンビリと観戦する。そして試合に勝てないとみるや、後半途中から帰途につくためバックスタンドやゴール裏の人の流れは一目でわかった。
ところがW杯では、カタール・ホームのゴール裏はお揃いのエンジ色のTシャツを着たマッチョな男性であふれていた。カタールでは同性愛は禁じられていて、最高刑は死刑だからゲイのはずはない。しかし中には両腕にびっしりとタトゥーをしている男性もいる。イスラム教ではタトゥーも禁止されているはずだ。
彼らは、「トーブ」を身にまとうような裕福なカタール人ではないようだ。かといって中東では重要な労働力であるインド亜大陸のパキスタンやバングラデシュからの出稼ぎ労働者にしては屈強な体つきをしている。だいいち出稼ぎ労働者は仕事優先のため、ゴール裏で応援している余裕などないはずだ。
そんな疑問について、ブラジル人ジャーナリストのリカルド・セティヨン記者が日刊ゲンダイ紙に書いた記事がある。
「チケット代も航空券も2週間の滞在費もタダ。さらに毎日8000円のお小遣いまでもらえる。それはW杯の公式ファンリーダーになること。参加国からそれぞれ30~50人が選ばれ『開会式で自国のチャント(応援歌)を歌う』『SNSで公式の投稿をリツイートする』『いいね!を押す』『カタールW杯の素晴らしさを発信する』のが条件」というものだ。
ただ、それでも人は集まらなかったらしく、開幕戦限定でさらに応募をかけて、お揃いのTシャツを着せて体裁を整えたそうだ。いったい彼らはどこから来たのか。そして25日のセネガル戦でもゴール裏を埋めて、タテノリ応援をするのだろうか。こちらはこちらで気になるところだ。
そう、昨日開幕したカタールW杯のオープニングゲーム、ホスト国カタールが南米4位のエクアドルに0-2で敗れた。
W杯の開催国が開幕戦(初戦)で敗れたのは過去21大会(日韓大会は2か国共催のため試合数は22)で初めてのことである。今大会に参加している32か国で初出場はカタールの1か国のみ。過去に出場経験が一度もなく、開催国枠として出場できただけに、選手としてもチームとしても“経験不足"は明らかだった。
フリーで走り込まれては、33歳のベテランFWエネル・バレンシアが外すはずもなかった。
カタールの国土は秋田県ほどだ。このためブラジルW杯やロシアW杯のように事前キャンプ地を入念に調べる必要はない。キャンプ地はドーハ市に集中しているからだ。さらにスタジアム建設の遅れとコロナ禍でプレ大会を開催できず、『強化試合』の足かせになったのだろう。
過去2年間、地元でヨーロッパや南米の中堅・強豪国とのマッチメイクはゼロ。アメリカでのゴールドカップ(ベスト4)や自国開催のアラブカップ(3位)で格下相手と対戦するしかなかった。
加えて育成年代の指導を評価されて代表監督に就任したフェリックス・サンチェス監督の経験不足も感じた。ポゼッションスタイルのサッカーを目指しているものの、所詮はアジアレベル。付け焼き刃がW杯で通じるわけがない。
となると“伝統"のカウンターということになるが、ブラジル以外の南米勢はどこもカウンターを武器にしている。“王国"に対抗するにはそれしか手段がないからだ。ご多分に漏れずエクアドルもシンプルなタテパスや、サイドに展開したら手数を掛けずにアーリークロスで勝負を仕掛けてきた。
この試合開始早々からのアーリークロスにカタールはリズムをつかめず失点した。マイボールになり攻撃に転じようとしても、エクアドルは前線からのチェックと素早いリトリートでFWアリモエズ・アリらにスペースを与えない。せっかく192センチの長身FWムハンマド・ムンタリがいるのだから、もっと早く投入してパワープレーに切り替えるべきだったのではないだろうか。
初戦のエクアドル戦を落としたことで、残す相手はオランダとセネガル。10年南ア大会に続き、開催国のグループリーグ敗退という不名誉な記録もチラついてきた。
中東初のW杯ということで、何かと話題の多いカタールだが、開幕戦のゴール裏には違和感を覚えたものだ。
これまで中東での取材は、イランのアザディ・スタジアムを除けばまず満員になることはなかった。試合開始直前になって、イスラム教の民族衣装である純白の「トーブ」(オバQのような衣装。大会マスコットのライーブをイメージしてほしい。こちらは一反木綿にも似ている)を着た大人や子供(いずれも男性)がサンダル履きでのんびりとスタジアムにやってきた。
試合中は中東独特の音楽が流れ、観客はヒマワリの種を食べながらノンビリと観戦する。そして試合に勝てないとみるや、後半途中から帰途につくためバックスタンドやゴール裏の人の流れは一目でわかった。
ところがW杯では、カタール・ホームのゴール裏はお揃いのエンジ色のTシャツを着たマッチョな男性であふれていた。カタールでは同性愛は禁じられていて、最高刑は死刑だからゲイのはずはない。しかし中には両腕にびっしりとタトゥーをしている男性もいる。イスラム教ではタトゥーも禁止されているはずだ。
彼らは、「トーブ」を身にまとうような裕福なカタール人ではないようだ。かといって中東では重要な労働力であるインド亜大陸のパキスタンやバングラデシュからの出稼ぎ労働者にしては屈強な体つきをしている。だいいち出稼ぎ労働者は仕事優先のため、ゴール裏で応援している余裕などないはずだ。
そんな疑問について、ブラジル人ジャーナリストのリカルド・セティヨン記者が日刊ゲンダイ紙に書いた記事がある。
「チケット代も航空券も2週間の滞在費もタダ。さらに毎日8000円のお小遣いまでもらえる。それはW杯の公式ファンリーダーになること。参加国からそれぞれ30~50人が選ばれ『開会式で自国のチャント(応援歌)を歌う』『SNSで公式の投稿をリツイートする』『いいね!を押す』『カタールW杯の素晴らしさを発信する』のが条件」というものだ。
ただ、それでも人は集まらなかったらしく、開幕戦限定でさらに応募をかけて、お揃いのTシャツを着せて体裁を整えたそうだ。いったい彼らはどこから来たのか。そして25日のセネガル戦でもゴール裏を埋めて、タテノリ応援をするのだろうか。こちらはこちらで気になるところだ。
カタールの関連記事
ワールドカップの関連記事
|
|
カタールの人気記事ランキング
1
日本の脅威になるカタール代表FWアルモエズ・アリ、最多得点更新よりも“優勝”を狙う
史上初の決勝進出を果たしたカタール代表。エースであるFWアルモエズ・アリが、決勝に向けて意気込みを語った。AFC公式サイトが伝えた。 カタール代表としてAFCアジアカップに出場しているアルモエズ・アリ。22歳のストライカーは、初のアジアカップで大記録を樹立した。 アジアカップの歴代最多得点は、イランの英雄とも言われていたアリ・ダエイ氏。1996年のUAE大会で記録したもので、8ゴールだった。 グループEに入ったカタールは、サウジアラビア、レバノン、北朝鮮とグループステージで同居。10ゴール無失点で首位通過すると、ラウンド16ではイラクに1-0、準々決勝では韓国に1-0、準決勝ではUAEに4-0と勝利し、ここまで16ゴール無失点で決勝に駒を進めた。 アルモエズ・アリは、カタール・スターズリーグで今シーズン12試合に出場し3ゴールを記録していたが、アジアカップでは躍動。グループステージの北朝鮮戦では4ゴールを記録するなど、ここまで8ゴールを記録。ダエイ氏の大会記録に並んでる。 決勝の日本戦でゴールを記録すれば、大会最多得点を記録するとともに、初優勝に近づくことができるが、アルモエズ・アリは個人の記録よりも優勝を目指していると意気込みを語った。 「アリ・ダエイの記録に並べるとは考えてもいなかった。運命に任せただけだよ。ありがたいことにゴールを決め、両親、カタールの人々、そしてチームメイトに喜びをもたらせた」 「僕はファンのために得点することを考えていたし、それを実行したまでだよ。今、僕たちは次の試合に集中し、日本についてよく学ばなければいけない」 「もちろん、ゴールには本当に満足していたよ。それは美しいゴールだった。でも、何も意味をしないんだ。なぜなら、僕たちの目標は美しいゴールを決めることよりも大きいからね」 「目標を達成できるように、身を潜めて、仕事をしなければいけない」 UAEとの国交の問題で、カタール人サポーターは今大会をスタジアムで観戦できていない状況だ。そんな中での初の決勝進出を決めた。 アルモエズ・アリは、カタール国民に感謝を示しながらも、決勝での必勝を誓い、2022年の自国開催のワールドカップに向けて弾みをつける初優勝を掴みたいと語った。 「戻ったら、トーナメントが始まって以来、僕たちを支えてくれたカタールの人々に祝福の言葉をかけたい。僕のチームメイトたちは、全員がピッチで活躍し、自分たちの価値を証明したんだ」 「僕たちは全てのカタール人の夢を達成した。そして、上手くいけば、より将来を良くすることができるだろう」 「データは見ていない。今日は1-0で勝利できても、明日は3-0で負ける可能性がある。ここまで僕たちがやってきたことはただ1つ。でも、この後に来ることがさらに重要だよ」 「決勝は我慢が必要だ。辛抱強く、上手くプレーし、これまでやってきたことを全て忘れなくてはいけない。そうすれば、決勝で勝つことができるだろう」 2019.01.30 17:00 Wed2
「名波さん思い出した」「今大会ベストゴール」カタールの10番がCKをダイレクトボレー!珍セレブレーションにも注目「試合中に胴上げするなんて」
カタール代表のFWハサン・アル・ハイドスが目の覚めるようなスーパーボレーを決めた。 22日にアジアカップ2023のグループA最終節で中国代表と対戦した開催国のカタール。すでにグループ首位通過を決めていることもあり主力を温存した中、10番を背負うアル・ハイドスは、0-0で迎えた64分にピッチに入る。 すると直後の66分、カタールの左CKの場面でアル・ハイドスがほぼファーストタッチでゴールを奪う。キッカーのアクラム・アフィフがサインプレーの形からボックス外へクロスを供給すると、ペナルティアーク右手前のアル・ハイドスが強烈なボレーシュートを直接ゴール左に突き刺した。 アル・ハイドスのスーパーゴールには、ファンも「名波さんのゴールを思い出した」、「今大会ベストゴール」、「えぐい」と注目。日本代表のコーチを務める名波浩氏が2000年のアジアカップで決めたFKからのダイレクトボレーを思い返す人も多いようだ。 また、ゴールセレブレーションでアル・ハイドスが胴上げされたことにも注目が寄せられ、「ゴールセレブレーションで胴上げは初めて見た笑」、「決めた選手を試合中に胴上げするなんて(笑)」というコメントも寄せられていた。 このゴールが決勝点となり、グループステージ3連勝を飾ったカタール。グループA最終節もう一試合のタジキスタン代表vsレバノン代表は2-1でタジキスタンが勝利し、カタールに次ぐ2位でグループステージ突破を決めている。 <span class="paragraph-title">【動画】今大会ベストゴール級!アル・ハイドスがCKをダイレクトボレー</span> <span data-other-div="movie"></span> <blockquote class="twitter-tweet" data-media-max-width="560"><p lang="ja" dir="ltr">/<br>今大会ベストゴール候補の<br>上手すぎるボレーシュート!<br>\<br><br>CKのボールをダイレクトで合わせた<br>ハッサン アルハイドスのスーパーゴラッソ!<br><br><a href="https://twitter.com/hashtag/AFC%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%82%AB%E3%83%83%E3%83%97?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#AFCアジアカップ</a><br>カタール×中国<br><a href="https://twitter.com/hashtag/DAZN?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#DAZN</a> 見逃し配信中<br><br>アジアカップ全試合見られるのは <a href="https://twitter.com/hashtag/DAZN?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#DAZN</a> だけ <a href="https://t.co/LJiyHmgyGZ">pic.twitter.com/LJiyHmgyGZ</a></p>— DAZN Japan (@DAZN_JPN) <a href="https://twitter.com/DAZN_JPN/status/1749586625384894942?ref_src=twsrc%5Etfw">January 23, 2024</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> 2024.01.23 11:50 Tue3
アジア杯連覇のカタール代表、あのアルモエズ・アリが27歳で通算100キャップ到達
カタール代表におけるFWアルモエズ・アリ(27)の存在は絶対的だ。カタール『ガルフ・タイムズ』が伝えている。 アジア杯連覇のカタール代表、その絶対的エースと言えばアルモエズ・アリ。北アフリカのスーダンで生まれ、幼少期に移住先の中東カタールへ帰化したという経歴のストライカーだ。 所属するアル・ドゥハイルでは、キャプテンを担う一方、Jリーグでも無双したケニア代表FWマイケル・オルンガがセンターフォワードに君臨するため、アリの定位置は左ウイング。クラブ通算210試合で61ゴールと“並”のゴール数だ。 ところが、カタール代表だとそうではない。 27日、2026北中米W杯アジア2次予選第4節でクウェート代表と対戦したカタール代表。2トップの一角でフル出場したアリは、27歳にして通算100キャップ目であり、チームの全得点2ゴールを挙げ、2-1の勝利に貢献…A代表通算100試合で45ゴールだ。 「2試合1ゴール」に近いペースでネットを揺らすカタール代表でのアリ。アジア杯2023では2ゴール止まりだったが、反面チャンスメイクで奮闘して3アシスト。MVP級の活躍を披露した。また、W杯アジア2次予選では、第4節までで全チーム中最多の7ゴールを叩き出す。 『ガルフ・タイムズ』は、そんなアルモエズ・アリの“次のステップ”として、「カタールW杯では無得点…次のW杯でネットを揺らせ」と期待を寄せている。 2024.04.01 19:15 Mon4
