【2022年カタールへ期待の選手vol.109】カタール逆転滑り込みを賭けてE-1制覇に闘志。そして新天地・ウエスカへ/橋本拳人(ウエスカ/MF)

2022.07.24 15:00 Sun
©超ワールドサッカー
「Jリーグに戻ってからも、この時期に(EAFF)E-1選手権があることは分かっていたので、『入りたい』っていう思いを持ってプレーしていました。時期的に移籍の微妙なタイミングだとは思っていましたけど、選んでもらえたので期待に応えたい。アピールしたい気持ちはすごく強いです」

こう語気を強めたのは、代表デビューから3年が経過した橋本拳人(ウエスカ)。11月に迫った2022年カタール・ワールドカップ(W杯)滑り込みを狙う28歳のMFにとって、今回のE-1は最後のアピールの場と言っても過言ではない。
思い起こすこと、2019年3月。ボリビア戦(神戸)で初キャップを飾った彼は、6月のエルサルバドル戦(宮城)も出場。9月のW杯2次予選初戦・ミャンマー戦(ヤンゴン)では柴崎岳(レガネス)とボランチコンビを組むほどの急成長ぶりを見せていた。

この時点では、遠藤航がシュツットガルトに赴いたばかりで不安定な立場に立たされており、川崎フロンターレにいた守田英正(スポルティングCP)も好不調の波が大きかった。若手の板倉滉(ボルシアMG)や田中碧(デュッセルドルフ)はまだ発展途上で、橋本の序列はかなり高かった。本人も3年後のカタール本大会を視野に入れ、定位置を取りに行くつもりだったはず。その可能性は十分にあったと言っていい。

2020年夏にロシア1部・ロストフへ移籍を決断したのも、こうした成功ロードを確実にしたかったからだろう。異国の地ではFC東京時代より一列前の[4-3-3]のインサイドハーフを託された。指揮を執るヴァレリー・カルピン監督から「ゴール前へ入っていけ」と要求されたこともあり、グイグイと前へ出くプレーが増えた。その結果、1シーズン目は6ゴールをゲット。自身も大いなる成長を実感したという。
2021年夏からスタートした2年目はさらなる飛躍を期していたが、今年2月にロシアのウクライナ侵攻という予期せぬ出来事が起きる。ウクライナ国境に程近いロストフに居続けるのは、やはり危険というしかない。FIFAの特例もあり、彼はロストフとの契約を保留にして帰国。ヴィッセル神戸入りを決断した。

その3月末時点で、神戸はJ1最下位に沈んでいた。それでも、アンドレス・イニエスタ、大迫勇也らハイレベルな面々が揃う豪華集団は魅力的に映ったようだ。

「ホントに経験ある選手が多いですし、僕がミスをしたら怒鳴りつけてくれる選手が沢山いる。自分の成長を考えた時に一番いいクラブ。W杯を考えても休んでる場合じゃない。とにかく試合をしたい、代表をつかみたいという気持ちもあって、日本に戻ることを決めました」と本人も切なる思いを吐露していた。

けれども、神戸でのキャリアは順調とは言えなかった。4月のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)はケガで出られず、本格的にピッチに立てるようになったのは5月下旬。6月18日の柏レイソル戦では彼らしい飛び出しから今季は初ゴールも挙げたが、苦境打開のキーマンにはなり切れない部分があった。

橋本としては、6月代表4連戦での復帰を思い描いていただろうが、それも叶わなかった。W杯の可能性が日に日に少なくなる中、劣勢を覆すには、今回のE-1に出て活躍し、さらに欧州で実績を残すしかなかった。そう考えた彼はスペイン2部・ウエスカ移籍を決意する。自分なりに「カタールへの最短距離」を模索した結果に違いない。

「もちろんW杯のためにっていうのもありますけど、その先のキャリアも考えた。2部ですけど、活躍すれば1部に上がれる可能性もありますし、ステップアップできるかなって思いもある。でも僕は日々、代表に入りたいって思いでプレーしていたので、それをピッチで表現したい。今大会で優勝しないといけないし、勝利に貢献したいと思っています」と彼は偽らざる胸の内を打ち明けた。

24日の中国戦はおそらくスタメンで出るだろう。森保監督が[4-3-3]を採るのか、19日の香港戦(鹿島)と同じ[4-2-3-1]を選ぶのかは未知数だが、野津田岳人(広島)ら過去にプレー経験のない面々といい関係性を築きながら、自分のよさを発揮していくことが肝要だ。そのうえで、27日の韓国との決戦への挑戦権をつかみ、勝利し、スペイン移籍に向けて弾みをつけなければいけない。

今の代表MF陣を見ると、ご存じの通り、遠藤航、守田英正、田中碧がすでに一定の地位を築いている。それは橋本も理解している点だ。

「最終予選の3人はすごくいいバランスでやっていたし、連携もコントロールしながら試合を通して戦っていたので、学ばせてもらいました」と本人は神妙な面持ちで言う。

そこに加えて、ベテランの柴崎や原口元気(ウニオン・ベルリン)、鎌田大地(フランクフルト)もインサイドハーフ争いに名乗りを上げている。激戦区に橋本が割って入るのは厳しいが、彼には彼の強みがある。球際や寄せの激しさ、タテへの推進力、ゴール前の迫力といったストロングポイントを印象づけることで、必ず未来は開けてくるはずだ。

E-1の代表メンバー26人の中ではカタールW杯に近い位置にいる橋本。そこから序列を一気に引き上げられるか否か…。背番号15をつけるダイナモは代表人生を賭けた大勝負に挑む。

【文・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
関連ニュース

3月以降の2026年北中米W杯アジア予選には、空中戦で競り勝てるこの男の起用を!/小川航基(NECナイメンヘン)【新しい景色へ導く期待の選手/vol.32】

ホスト国・カタールの連覇で幕を閉じたアジアカップ2023(カタール)。MVP&得点王に輝いたアクラム・アフィフ(アルサッド)らの華々しい活躍とは対照的に、8強止まりに終わった日本代表はベストイレブンに1人も入らず、停滞感ばかりが色濃く残る形となった。 5試合戦って3勝2敗という結果は森保一監督筆頭に誰もが納得できるはずがない。8失点という信じがたい数字は早急に改善すべき点。イラン戦に象徴される通り、ロングボールを蹴り込まれた時の対応は根本的に見直さないといけないだろう。 大会中に斉藤俊秀コーチが長いボールを蹴り、冨安健洋(アーセナル)や町田浩樹(サン=ジロワーズ)、渡辺剛(ヘンク)、毎熊晟矢(セレッソ大阪)らがヘッドで跳ね返すトレーニングを全体練習後に実施している光景を頻繁に目の当たりにしたが、そういった練習は代表に来て付け焼刃のようにやるべきことではない。日本サッカー界として空中戦対策は今一度、重視して取り組むべきだ。 それと同時に、クロスから確実にゴールを奪える点取屋の存在も重要性が高まったと言っていい。今大会は上田綺世(フェイエノールト)が4ゴールをマークし、エース街道を驀進したが、その彼でさえもイラン戦では屈強なDF陣に苦しんだ。後半開始直後に久保建英(レアル・ソシエダ)の左クロスにフリーで飛び込んだ決定機があり、あの一撃を決めていたら状況も変わっていたが、そういうプレーができるFWが上田1人というのはやはり心もとない。森保監督は人選含めて再考するべきではないか。 他国を見ても、イランのサルダール・アズムン(ローマ)、イラクのアイメン・フセイン(アル・クウワ・アル・ジャウウィーヤ)、韓国のチョ・ギュソン(ミッティラン)のように前線で競り勝てる迫力ある大型FWにハイボールを合わせる形が数多く見られた。韓国がサウジアラビアやオーストラリアに勝った試合では、終盤はまさにサイドからのクロスの応酬で、その迫力に相手も押されていた。つなぎやビルドアップを主体とする日本代表はそういった攻撃パターンは少ないが、イザという時のオプションは持っていたい。3月以降の2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア予選に向けて、高さで勝てるFWに目を向けることが肝要だ。 候補者として、国内でまず名前が挙がるのは大迫勇也(ヴィッセル神戸)。確かに彼ほどの傑出した1トップはそうそう見当たらない。ただ、今年5月に34歳になるうえ、2022年カタールW杯イヤーにケガを繰り返したのを見ると、やはりクラブと代表の掛け持ちは負担が大きい。W杯最終予選の重要局面でピンポイントで呼ぶのはありだが、今は別の人材をトライした方がよさそうだ。 そこでクローズアップされるのが、今季オランダ1部・2ケタゴールを達成した小川航基(NECナイメンヘン)。ご存じの通り、昨夏にようやく欧州移籍を果たし、すぐさまレギュラーを奪取。開幕からゴールを重ね、存在感を高めている大型FWだ。 「アンダー世代から森保さんの選考を見てきて、どういう基準で選ぶのかは分かっている。1試合よかったから呼ぶというのはたぶんない。結果を出し続ければ、いずれチャンスをもらえるのかなと思っています。他のFWには貯金があるし、それを崩すのは簡単なことじゃない。『自分を使いたい』『呼びたい』と思わせる活躍をするべきかなと考えています」 本人はシーズン序盤の9月頭にこうコメントしていたが、そこから継続的に結果を出しているのは間違いない。だからこそ、今の彼には代表入りの権利があるのだ。しかもアジアカップで空中戦に勝てるFWの不在が日本の弱点として浮き彫りになったのだから、このタイミングこそ小川の出番。同じリーグにいる上田よりはるかに数字を残しているのだから、森保監督も納得だろう。3月シリーズは満を持してこの男にお呼びがかかる可能性が高いと見ていい。 ご存じの通り、3月は北朝鮮とのホーム&アウェー2連戦。現時点では3月26日は平壌の金日成スタジアムが会場と決まっていて、相当に難易度の高い試合になるはずだ。2011年11月に同競技場で日本代表が戦った時には度重なる悪環境に苦労し、まさかの敗戦を強いられている。だからこそ、よりタフさと逞しさが求められてくる。 「今は代表に生き残るためなら何でもやる」というくらいの意気込みを持った人間がいなければ、その難局を乗り切れない。そういう意味でも2019年12月のE-1選手権(釜山)から日の丸を背負っていない小川はうってつけ。ガツガツと向かっていくに違いない。 そうやって荒々しい思いを出せる大型FWを森保監督もぜひ使ってほしい。アジアカップで勝てなかった日本代表が再起を図る意味でも、最前線に新たな活力をもたらせる人材は必要不可欠。ここは彼に賭けてみてほしいものである。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 <span class="paragraph-title">【動画】小川航基が海外DFに引けを取らない強烈ヘディング弾でオランダでの二桁達成</span> <span data-other-div="movie"></span> <blockquote class="twitter-tweet"><p lang="nl" dir="ltr">N.E.C. komt razendsnel op voorsprong! </p>&mdash; ESPN NL (@ESPNnl) <a href="https://twitter.com/ESPNnl/status/1754945530222817420?ref_src=twsrc%5Etfw">February 6, 2024</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> 2024.02.14 17:30 Wed

チームにカツを入れられる強靭なマインドのエースナンバー10。ここから本当の勝負へ/堂安律(フライブルク)【新しい景色へ導く期待の選手/vol.31】

アジアカップ2023(カタール)も決勝トーナメントに突入。オーストラリアとタジキスタンがいち早く8強入りを決めた。D組2位通過となった日本はラウンド16最終日の31日にバーレーンと激突。確実に相手を倒し、次のステージに進まなければいけない。 中2日で準々決勝があり、その相手が最強の敵・イランになると見られるだけに、森保一監督もメンバー起用が難しくなる。所属先でUEFAチャンピオンズリーグ(CL)やヨーロッパリーグ(EL)の連戦を経験している面々は「中2日でも問題ない」と口を揃えるが、今大会は延長・PK戦がある。タジキスタン対UAE戦を見ていても、明らかに延長戦以降は体力低下が否めなかった。そういう状況も視野に入れると、バーレーン戦と準々決勝である程度のメンバーを模索していくことになるだろう。 そこで一案として考えられるのが、バーレーン戦をインドネシア戦メンバーをベースに戦う形。特にFW上田綺世(フェイエノールト)と堂安律(フライブルク)、久保建英(レアル・ソシエダ)、中村敬斗(スタッド・ランス)の2列目が前の試合でうまく機能していたことから、そのまま彼らで挑み、首尾よく勝利を収められば理想的ではないか。 そうすれば、イエローカードを1枚もらっている伊東純也(スタッド・ランス)と南野拓実(モナコ)を休ませられるし、26日から全メニューをこなせるようになった三笘薫(ブライトン)も思い切って起用できる。グループ突破が決まっていないのに、先発8人代えを断行した指揮官はそれだけの勇気と大胆さを持ち合わせているはず。「誰が出ても機能する。誰が出ても同じ戦いをして勝てる」と日頃の口癖をこの大一番で堂々とやってのけてほしいものである。 となれば、今回もエースナンバー10をつける男・堂安が攻撃陣を力強くけん引することになる。インドネシア戦では開始早々の上田のPK奪取につながる鋭いタテパスを供給。先制点をお膳立てしてみせた。さらに後半頭の上田の2点目も左に回り込んだ堂安のクロスから生まれている。 その後、彼自身は3度の決定機を迎えながら決めきれず、「これが決勝だったらかなり後悔していたと思うし、このタイミングでよかったと自分に言い聞かせたい」と苦笑した。それでもピッチに立った後半41分間までのパフォーマンスは異彩を放っていた。攻撃面の推進力や強度のみならず、守備のハードワークや守から攻の切り替えの速さなど、「これが世界と戦う基準なんだ」と堂安は身を持って示していたようにも映った。そうやって模範になれるところは、10番を背負う男に相応しいと言えるだろう。 「アジア相手だから80%で勝てる相手なんていない。自分たちが100%出して、その結果が1-0なのか、3-0なのか、5-0なのか、1-1なのかというのを見るべきなのに、『最初から勝てるでしょ』という感じでやって本当に勝てるチームなんていない。表現としてはやっぱり『アジアをナメていた』ということになると思うしね。 でも今回は、みんなが終わってから『きつかったね』と言ってましたし。周りは『抑えていてもやれただろう』と言うかもしれないけど、そうすると負けてしまう。やっぱり気持ちのベースが欠けていたのかなと思います」と堂安はあえてチームにカツを入れる物言いをして、ピリッとした空気を持ち込んだ。 長友佑都(FC東京)や吉田麻也(LAギャラクシー)ら長年代表をけん引してきた30代のベテランが去った今、2019年の前回UAE大会や2022年カタールW杯を経験してきた堂安は「自分がチームを引っ張らなければいけない立場になった」という強い自覚がある。しかも背負っているのは中村俊輔(横浜FCコーチ)や香川真司(C大阪)ら偉大な面々がつけてきた10番だ。となれば、絶対に気を抜いたプレーなど見せられない。その意地と責任感がインドネシア戦ではこれでもかというくらい表れていた。 次戦・バーレーン戦もスタメンでピッチに立つのであれば、堂安にはそれ以上の鼻息の荒さを示してもらわなければならない。相手はカタールの隣国。サポーターが大挙してやってくる。日本はイラク戦のような完全アウェームードを余儀なくされるだろうから、タフで強靭なメンタリティな何よりも大事になる。そのうえで普段通りの実力を示せれば、バーレーンに負けるはずがない。堂安にはインドネシア戦で奪えなかったゴールという明確な結果を残して、日本の救世主になってもらうしかない。 「アジアカップは毎回、日本が優勝候補と言われてると思うし、その中で2大会優勝できていないのは情けないかな結果だと正直、思います。頭ん中では日本がそろそろ圧倒的なアジア・ナンバーワンにならなきゃいけないと思ってます。もちろん理想と現実は違うのはわかってますけど、もちろん僕たちは理想を求めて大会にのぞんでいきます」 大会開幕前に語気を強めていたアジア制覇まであと4つ。ここからが本当の勝負だ。前回経験者の堂安には何としても王者の座をもぎ取ってほしいところ。そのけん引役となるべく、明確な結果を強く求めたい。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 <span class="paragraph-title">【動画】堂安律の完璧なパスからPK奪取</span> <span data-other-div="movie"></span> <script>var video_id ="IeLgFc9Usvk";var video_start = 92;</script><div style="text-align:center;"><div id="player"></div></div><script src="https://web.ultra-soccer.jp/js/youtube_autoplay.js"></script> 2024.01.29 13:40 Mon

菅原から右SBの定位置を奪うのか?勢いに乗る毎熊晟矢が日本代表にもたらすものとは?/毎熊晟矢(セレッソ大阪)【新しい景色へ導く期待の選手/vol.30】

「初めてのスタメンでしたし、ここで1つ、勝利に貢献できたっていうのは自分にとって自信にもなりましたけど、目に見える結果は残せていない。そこに関しては今後、残していきたいなというふうに思ってます」 アジアカップ2023(カタール)ラウンド16進出を決めたインドネシア戦から3日が経過した27日。右サイドバック(SB)の毎熊晟矢(C大阪)は3-1で勝利したこの試合を改めて冷静に振り返った。 伊東純也(スタッド・ランス)・菅原由勢(AZ)コンビで挑んだベトナム・イラク戦で右サイドが狙われ、ストロングも消される中、違いを示したのが彼と堂安律(フライブルク)のタテ関係だった。 開始早々の3分に上田綺世(フェイエノールト)がPKを奪ったシーンも、毎熊のタテパスが堂安に入ったのが起点。トップ下の久保建英(レアル・ソシエダ)が右に流れる中、堂安は中にドリブルで持ち込み、上田に鋭いタテパスを差し込み、相手守備陣のミスを誘ったのだ。 ここから彼ら3人の連携は迫力を増していく。毎熊は堂安の立ち位置を見ながら幅を取る時と中に絞る時を巧みに使い分け、効果的な攻撃を演出。その最たるものが、中村敬斗(スタッド・ランス)の幻のゴールにつながった35分の決定機だ。 久保に当て、自らペナルティエリア深いところまで侵入し、難しい角度のマイナスクロスを入れるというのは、そうそうできる芸当ではない。これは惜しくもゴールにならず、毎熊のアシストもつかなかったが、セレッソ大阪の小菊昭雄監督に「和製ハキミ」と言われるだけのタテへの推進力と破壊力をいかんなく発揮。強烈なインパクトを残したのである。 「堂安選手と久保選手とより近い位置で2人の良さを出すために、考えながらポジショニングを取りました。スムーズにできていたと思いますけど、映像を見返すと、もっと場面場面での立ち位置を変えた方がいいなと思う部分もあった。そこはまだもっともっと良くなるなっていう印象を受けてます」と本人はさらなる改善を誓っていた。 ここから先の日本は、31日のバーレーン戦を皮切りに、中2日で2月3日の準々決勝、中3日で7日の準決勝、10日の決勝と11日間で4試合を戦うことになる。森保一監督もそれだけのハードスケジュールを固定メンバーで乗り切れるとは思っていないだろう。右SBに関して言えば、毎熊と菅原をうまく使い分けながら、確実に頂点に立ちたいと考えているはずだ。 ただ、チームである以上、どうしても主力とサブという序列は生まれる。昨年9月の欧州遠征から代表入りしている毎熊はここまで菅原の控えという位置づけだったが、インドネシア戦のハイパフォーマンスによってファーストチョイスに浮上する可能性がある。 となれば、バーレーン戦も連続先発することも十分にあり得そうだ。バーレーンという相手は[4-2-3-1]か[4-3-3]がベースで、基本的に引いて強固なブロックを作って守り、タテに素早い攻めを仕掛けてくる。 最前線には194センチの高さと速さを兼ね備えたFWアブドゥラ・ユセフ(9番)が君臨。両ウイングの右のアリ・マダン(7番)と左のモハメド・マルフーン(8番)の速さと打開力も脅威だ。毎熊は背後を突く相手の動きを警戒しつつ、蹴り込まれた際のボール処理も徹底しなければいけなくなる。 そういった想定があるのか、27日の練習後には、前田遼一コーチがターゲットマン役に入り、ハイボールを毎熊や谷口彰悟(アル・ラーヤン)らがクリアする練習を繰り返していた。ここまで3試合で5失点している日本にしてみれば、これ以上の失点は厳禁。攻撃がストロングの毎熊も守備を第一に考えながら入ることが肝要なのだ。 「まずはミスを少なくすることが大切だと思いますし、グループステージを戦ってアウェー感っていうのはすごく感じてて、1つの小さなミスでも大したピンチではないのに会場が盛り上がって雰囲気にのまれてしまうっていうこともあると思う。ミスを少なくして、より攻撃、守備、どちらでも圧をかけていけるようにというのは意識してやりたいですね」と彼自身も注意点を明確にしていた。 ここで指揮官からさらなる信頼を勝ち取れば、遅咲きの男にとっては非常に大きなステップになるに違いない。 「本当にサッカーを小さい頃からやってきて、一歩ずつやってきた選手だと思ってるので、今後も地に足つけて一歩ずつやっていきたい。でも年齢も年齢ですし、もっと上に行くためにはもっと成長しないといけないと思うので、そのためにはこういう大会もすごく大切。一歩ずつは一歩ずつですけど、その一歩をより大きい一歩にするために、まずはこの大会から取り組んでいきたいですね」 少しずつ野心も芽生え始めている26歳の右SBがここからタフさを増す決勝トーナメントで日本代表に何をもたらしてくれるのか。いずれにしても、国内組の意地と誇りをピッチ上で思い切り示してほしいものである。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 <span class="paragraph-title">【動画】毎熊晟矢の真骨頂!ゴールならずも抜群の攻撃センスを見せつける</span> <span data-other-div="movie"></span> <script>var video_id ="IeLgFc9Usvk";var video_start = 225;</script><div style="text-align:center;"><div id="player"></div></div><script src="https://web.ultra-soccer.jp/js/youtube_autoplay.js"></script> 2024.01.28 12:00 Sun

初戦・ベトナム戦の2失点を糧に絶対的守護神へ。21歳の成長途上のGK鈴木彩艶に求められること/鈴木彩艶(シント=トロイデン)【新しい景色へ導く期待の選手/vol.29】

ベトナム相手にリスタートから2失点という予期せぬスタートとなったアジアカップ2023(カタール)。14日の初戦は南野拓実(モナコ)の2得点1アシストの大活躍もあって、4-2で相手をねじ伏せることができたが、一時リードされたという事実をしっかりと受け止め、19日のグループリーグ第2戦・イラク戦に挑まなければならないだろう。 そこで奮起を求めたいのが、21歳の若き守護神・鈴木彩艶(シント=トロイデン)だ。2022年夏のEAFF E-1選手権・香港戦(鹿島)で初キャップを飾ったパリ五輪世代の期待の星は、2023年夏のベルギー移籍後に所属先で定位置をつかんだことで、評価が急上昇。同じシント=トロイデンに在籍していたシュミット・ダニエル(ヘント)のメス移籍破談もあって、10月シリーズから日本代表に定着。11月の2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選・シリア戦(ジェッダ)で先発に抜擢され、目下の正守護神と位置づけられた。 ガーナ人の父と日本人の母を持つ若きGKは192センチ・93キロという頭抜けたサイズと身体能力を備えており、2017年U-17W杯(インド)に参戦した頃から「将来の日本代表のゴールマウスを守る逸材」と目された。ゆえに、森保一監督も大きな期待を寄せ、アジア王者の懸かる今大会の重要な初戦に送り出したわけだが、リスタートから2失点という結果はさすがに本人も不本意だったに違いない。試合後には「2失点というのは予想できなかった」と正直な思いを打ち明けた。 それでも、彼自身の改善点は明確だった。 「1点目は特に準備を早くすることとか組織としての課題がありました。2点目の方は自分自身の『アタックを狙いに行ってもできない』という判断は間違っていなかったと思う。だけど、ボールがそこまで強くなくて、バウンドして難しいボールだったので、うまく外に弾けなかった。少し手の出し方のところにミスがあったかなと感じます」 鈴木は試合後、努めて冷静に自身のプレーを分析。GKグループやチームメートと改善点を共有したという。 同い年の野澤大志ブランドン(FC東京)は「見た感じ、最後のところで判断を変えたようだった。彩艶も最後にちょっと迷いがあったから、ああなったのかなと。弾くのか、キャッチするのか…、どっちにしても自信を持ってプレーすることが大事なのかなと。実際は細かいところでもっと課題はあるんですけど、それがあればカバーできたんじゃないかと思います」と発言。鈴木を力強く後押ししていた。 実際、どういうGKがピッチに立ったとしても判断の迷いや遅れは起こり得る。今の日本代表は川島永嗣(磐田)や権田修一(清水)といった経験豊富な30代以上の選手がチームを離れ、若い世代の守護神を育てていこうとしている段階。彼らは「エラー&ラーン」を繰り返し、少しずつ前進していく。その過程が険しいことを、鈴木も野澤も前川黛也(神戸)が痛感したはず。ベトナム戦の失点は必ずしもマイナスばかりではなかったのだ。 鈴木のパフォーマンスに対し、「キャッチできた」「もっと遠くに弾けた」といったさまざまな意見がSNSを中心に飛び交ったが、GKというのは時に厳しい立場に追い込まれるポジション。それは川口能活(磐田GKコーチ)、楢崎正剛(名古屋アシスタントGKコーチ)、川島といった名選手たちも数々の修羅場を経験している。タフなメンタリティでそれを乗り越え、W杯の大舞台に立ち、日本を勝利へと導いてきたのだ。 鈴木自身もワンプレーの怖さを再認識したかもしれないが、彼の代表キャリアはまだまだ始まったばかり。今回の問題点をしっかりと受け止め、自分の力にして、大きく飛躍していけばいいのだ。 「ベトナム戦の失点場面はGKだけじゃなく、チーム全体としてオーガナイズしないといけないところだし、映像を見て『どうしたらよかったか』という話もしているので、起きた現象に対して話をしていくことが大事。彩艶のメンタル面? 別に気にしていないと思いますけどね」とキャプテン・遠藤航(リバプール)も太鼓判を押した通り、とにかく肝心なのはここからなのである。 イラクはスピードあるFWモハメド・アリ、左ウイングのアリ・ジャシム、テクニカルなトップ下のジダン・イクバルに加え、高さのあるターゲットマン、マイマン・フセインと多彩なアタッカーを備えている。日本戦で誰がスタメンで出てくるか分からないが、どんな状況になっても冷静に対応し、相手を零封することができれば、鈴木は自信を取り戻せる。周りの見方も変化していくだろう。 今、我々は鈴木を温かい目で見守ることが先決だ。若い才能を伸ばすような後押しを心がけていきたいものである。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 <span class="paragraph-title">【動画】鈴木彩艶も悔しさを覗かせたベトナム戦の2失点目</span> <span data-other-div="movie"></span> <script>var video_id ="vMOotwzByNw";var video_start = 196;</script><div style="text-align:center;"><div id="player"></div></div><script src="https://web.ultra-soccer.jp/js/youtube_autoplay.js"></script> 2024.01.17 12:30 Wed

チャンスを棒に振った10月シリーズの悔しさをタイ戦・アジアカップにぶつけられるか?ポスト三笘を狙う奥抜侃志の現在地/奥抜侃志(ニュルンベルク)【新しい景色へ導く期待の選手/vol.28】

2024年の幕開けを飾る1月1日のタイ戦(東京・国立)。直後にアジアカップ(カタール)を控える日本代表にとっては重要な前哨戦になるだろう。 主軸メンバーの伊東純也(スタッド・ランス)や浅野拓磨(ボーフム)らにとってはテストマッチという位置づけだが、アジアカップ生き残りを目指す面々にとっては、この試合でインパクトを残せるか否かが全てと言っていい。そのサバイバルの行方は非常に興味深いものがある。 10月シリーズで追加招集されながら体調不良に陥り、試合はもちろんトレーニングもほとんど参加できなかった奥抜侃志(ニュルンベルク)にとっては、今回が「敗者復活の場」。12月28日から1月1日までの5日間の代表活動に賭ける部分は大きいはずだ。 「(自分が参加したのがチュニジア戦前日で)そこまで強度の高い練習というより調整だったんですけど、止める蹴るの部分は今までやってきた中ではトップレベルですごいなと感じました」と1日練習しただけで驚きを隠せなかっただけに、意気込みは強いだろう。 代表生き残りのためには高い基準を保ち続ける必要がある。それを強く認識したうえで、タイ戦の活動に参加できるのは大きい。年代別代表経験の少ない彼にとっては、ここが真の代表キャリアのスタートと見てよさそうだ。 そもそも奥抜の経歴を紐解くと、中学時代から大宮アルディージャのアカデミーで育ち、2018年にトップに昇格。大宮は同年からJ2に在籍していたため、2022年夏に欧州挑戦するまで国内最高峰リーグでの経験を積むことができなかった。それでも高度なドリブルテクニックと推進力の高さは印象的で、「J1でも十分にやれる」と評されていた。 実際にJ1からのオファーもあったというが、本人はポーランド1部のグールニク・ザブジェへ赴くことを決断する。 「やっぱり大宮から海外へ行くことを目標にしていたので。J1の可能性もある中で、大宮から世界へ出ていきたかった・アカデミー出身者としてそういう背中を見せたかった」と彼は言う。 22-23シーズンのグールニク・ザブジェではリーグ26試合出場4ゴールという結果を残す。その実績も大きかったが、奥抜自身にとっては、かつてヴィッセル神戸でプレーしたルーカス・ポドルスキとの出会いが大きかったという。 「ポーランドでの時間は1年でしたけど、凄く学びが多かった。特にポドルスキ選手のメンタリティには鍛えられたと思います。僕は当初、波のある選手だったんですけど、『自分を強く持て』『もっと仕掛けろ』と背中を押してもらえた。初めての異国で馴染めたのも彼のおかげだと思っています」と本人もしみじみと語っていた。 まさに師匠とも言うべきポドルスキに「十分やれる」と太鼓判を押されたことで、奥抜はポーランドで自信をつかむことができた。そして1年後にはドイツへ。2部ではあるが、ニュルンベルクはかつて清武弘嗣(C大阪)や長谷部誠(フランクフルト)も在籍したクラブだ。スタジアムは2006年ドイツW杯の会場でもあり、日本代表がクロアチアと試合を行っている。 それだけ重要度の高いクラブに今夏、林大地とともに加入した奥抜はリーグ前半戦17試合にすべて先発。左サイドのファーストチョイスの座を一気に奪った。3ゴール・1アシストという結果もまずまずと言ったところ。その活躍度を森保一監督も評価し、彼を抜擢したのだろう。 ただ、奥抜の主戦場である左サイドは三笘薫(ブライトン&ホーヴ・アルビオン)というエースが君臨するポジション。彼の地位は盤石だ。この牙城を崩すべく、第2次森保ジャパン発足後に4試合4ゴールを奪っている中村敬斗(スタッド・ランス)が急成長。10月のカナダ戦(新潟)で痛めたケガも癒え、今回、代表メンバーに復帰している。奥抜は中村敬斗と激しいバトルを繰り広げることになりそうだ。 そういう中、自身の最大のストロングであるドリブル突破と打開力で見る者の度肝を抜くことができれば、アジアカップへの滑り込みもないとは言い切れない。限られたチャンスを貪欲にモノにすべく、彼は師匠のポドルスキに言われた通り、ガンガン仕掛けていくべきである。 「日本にいた時はどっちかというとカットインのが得意だったんですけど、今はタテで自分のスピードを生かす方がいい。海外に行ってそう感じたので、そちらの方が得意なプレーになっています」と本人も推進力には自信を持っている。 タイ戦でチャンスを与えられたら、自身の看板であるタテへタテへ突き進むプレーを存分に披露すること。それに集中することで、奥抜は明るい未来を切り開けるのではないか。2024年元日に相応しい大胆な突破を見せつけ、次なる舞台をつかみ取ってほしいものである。 <hr>【文・元川悦子】<br/><div id="cws_ad">長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 2023.12.24 20:30 Sun
NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly