【2021-22プレミアリーグ総括】高次元の優勝争い…シティが連覇達成でここ5年で4度目の栄冠
2022.06.04 12:00 Sat
◆今季もシチズンズがハイレベルなタイトルレースを制す
勝ち点90超えが稀有ではなくなった近年のプレミアリーグで、今シーズンもハイレベルな優勝争いが繰り広げられることになった。優勝したマンチェスター・シティと、文字通り最後まで食らいついたリバプールの差はわずか1ポイント。最後までどちらに転ぶか予想がつかなかった中、最終節はまさに劇的なものとなった。
首位のシティはホームでアストン・ビラと対戦。相手はジェラード監督の就任から勢いがついていたとはいえ、純粋な戦力差ではシティが圧倒的。シティの勝利を疑うものは少なかったが、意外にもビラが先制する展開に。一方のリバプールはホームにウォルバーハンプトンを迎えて逆転優勝の最低条件である勝ち点3を目指したが、開始3分に失点するという、こちらも予想していなかった立ち上がりとなった。
そんなリバプールは前半のうちに追いついたが、シティは後半にも追加失点。グアルディオラ監督も頭を抱える事態に直面した。エティハドのサポーターも不安の表情を浮かべる中、76分に途中出場のギュンドアンのゴールでついに得点。これで息を吹き返したチームは、その2分後にロドリの針の穴を通すような鮮やかなミドルシュートが決まり同点に。それまでほとんど死に体だった会場のファンのボルテージはここで最高潮を迎えた。
そして迎えた81分、デ・ブライネの一連のワールドクラスのアシストから再びギュンドアンが決めてついに逆転。わずか5分で2点差をひっくり返す神懸かった内容で、王者にふさわしい貫禄の連覇を達成した。リバプールも後半の2得点で逆転勝利を収めたものの、一歩及ばず2位フィニッシュ。それでも積み上げた勝ち点は92と、胸を張れる成績だった。
ここ5年で4度目のリーグ制覇を成し遂げたシティ。今季は順風満帆なシーズンだったと言っていいだろう。開幕戦こそトッテナム相手に不覚をとってしまったものの、その後は順調に勝ち点を重ね、チェルシーやマンチェスター・ユナイテッド、アーセナルなど、リバプールを除く上位陣を軒並み蹴散らしながら、堂々の首位でシーズンを折り返した。前半戦で攻守に大車輪の活躍だったベルナルド・シウバや、後半戦だけで11ゴール8アシストを記録したデ・ブライネ、ポリバレント力を身に付けたフォーデン、そして最終節で優勝に導く2ゴールを挙げたギュンドアンなど、どの選手も主役級の活躍を披露した今季のシティ。バンジャマン・メンディの強姦容疑というイレギュラーはさておき、まさに総合力での完全優勝を果たした1年だった。そして、来季はここに怪物ハーランドが上陸する。
3位には昨季のヨーロッパ王者チェルシーが入った。昨年1月に就任したトゥヘル監督の下でシーズンインしたチェルシー。序盤戦では10人でリバプール相手に引き分けに持ち込むなど、代名詞となった堅守を全面に発揮した戦いを見せ、第14節までに喫した失点はわずかに「6」。一時は首位に立っていた。しかし、チルウェルら負傷者が相次いだことで後半戦は失速。また、ロシアのウクライナ侵攻によるオーナー問題など、ピッチ外でも問題が相次ぎ、3位はキープし続けたものの、2強との差はどんどん広まる一方だった。そして、今夏で守備の要だったリュディガーとクリステンセンの退団が決まっており、移籍市場では即戦力となりうるDFの確保が急務となりそうだ。
4位はアーセナルとのデッドヒートを制したスパーズが滑り込んだ。新たにヌーノ監督を招へいして迎えた今シーズン、開幕節でシティ相手に金星を挙げて絶好のスタートを切ったものの、その後のロンドン・ダービー3連戦を全て落とすと、第10節終了時点で5勝5敗と低迷。11月1日にヌーノ監督を解任し、かつてチェルシーをプレミア制覇に導いたコンテ監督に託すことに。イタリア人監督も就任から9試合は無敗を維持したものの、古巣のチェルシーに初黒星を喫すると、そこから調子はガタ落ち。5試合で4敗と危機的状況に陥った。ところが、冬の移籍市場でユベントスからベンタンクールとクルゼフスキをレンタル補強するとこれが奏功。とりわけクルゼフスキは攻撃のアクセントとなり、半シーズンで5ゴール8アシスト記録した。現在スパーズは買い取りに動いていると専らの噂だ。
そのスパーズの後塵を拝し、惜しくもチャンピオンズリーグ出場権を逃したアーセナル。ベン・ホワイトやラムズデール、そして冨安健洋と、主に守備面の強化を図って迎えた今季は、昨季と比べて無駄な失点が減り、引き分けに持ち込まれてしまうような試合はなかった。ただ、守備の要だったトーマスやティアニーが欠場すると途端に脆さを露呈。今季最高の補強の一つとメディアに言わしめた冨安がいなかった試合も守備は不安定に陥った。その証拠にトーマスが離脱したラスト9試合の失点数は「14」。以前の16試合と同等の数字だ。また、その間に4敗したことが、終盤にスパーズに抜かれた原因に他ならない。2年ぶりにヨーロッパリーグに出場する来季、守備の補強は必要不可欠と言えるだろう。
さて、最もサポーターをガッカリさせたのはマンチェスター・ユナイテッドか。昨季2位という実績と、ヴァランやサンチョの実力のあるスター選手の獲得、何よりも生きる伝説クリスティアーノ・ロナウドの帰還で、5年ぶりのタイトル獲得のピースは揃っていた。ところがその実、序盤から不安定な戦いが続き、2018年末から指揮していたスールシャール監督を11月24日に解任。後任にはモダンフットボールの最先端を行くラングニック氏が就任したが、その手腕を持ってしてもチームが好転する様子はなく、既存戦力にほとんど光明は見られなかった。リーグ戦最後の12試合でわずか3勝しか挙げられなかったチームは、来季からアヤックスを4年半率いたテン・ハグ監督に任せることに。ただ、攻守共に課題は山積みだ。
降格チームはおおむね予想通りの結果に。2度のチャンピオンシップ制覇に導いたファルケ監督を解任したノリッジや、ラニエリ監督から残留請負人と呼ばれるホジソン監督に舵を切ったワトフォードは早々に降格が決定。また、バーンリー、リーズ、そしてエバートンが降格線上にいた。いずれも監督交代に関して大きな決断を下しており、バーンリーは9年半率いたショーン・ダイチ監督を解任。リーズも鬼才ビエルサと袂を分かち、ライプツィヒからジェシー・マーシュ監督を引き抜いた。エバートンはベニテス監督を半年で切り、昨年1月までチェルシーを指揮していたランパード監督を招聘する大胆な作戦に踏み切った。
結果的に降格したのはバーンリー。監督交代直後に3連勝をおさめるも、最後の4試合は1ポイントにとどまり、最終節でリーズに逆転される形で7シーズンぶりの降格が決定した。
【最優秀選手&監督】
★最優秀選手
◆ケビン・デ・ブライネ
世界最高の攻撃的MFと呼んでも差し支えないだろう。今季もリーグ戦30試合に出場し15ゴール8アシストという見事なスタッツを残したが、この男はもはや数字だけでは説明できない領域に及んでいる。
足首の問題に悩まされた序盤戦はスロースタートを切り、開幕17試合で15得点に到達したサラーや、攻守に獅子奮迅の活躍を見せたベルナルド・シウバなど、前半戦は他の方が印象的なパフォーマンスを披露していたが、シーズン後半はデ・ブライネの独擅場に。終盤のウルブズ戦では、プレミアリーグ歴代3番目の早さでハットトリックを達成。同試合では後半にもゴールを決めて圧巻の4得点を記録した。
最終節で逆転勝利を呼び込んだギュンドアンのゴールへのアシスト然り、30歳を迎えてもなお、世界最高峰リーグでファンタスッティクなプレーで楽しませてくれている。
★最優秀監督
◆エディ・ハウ
最高峰リーグのトップを走り続けるグアルディオラ監督やクロップ監督は見事の一言に尽きるが、今シーズンに限っては44歳のイングランド人指揮官を推したい。ボーンマスがチャンピオンシップに降格した一昨シーズンを最後に、しばらく第一線を離れていたハウ監督。昨年11月、1年3カ月ぶりに現場復帰した先は、最下位に沈むニューカッスルだった。
当時のマグパイズはサウジアラビアの公的投資基金をはじめとするコンソーシアムに買収された直後で話題に。同時にスティーブ・ブルース監督が解任となり、後任には相当のプレッシャーが予想された。しかし、ハウ監督はシステム変更やジョエリントンの中盤コンバートなど確かな手腕を発揮し、チームを立て直すと、最下位だった就任当初から一転、余裕の残留に導いた。
【期待以上】
★チーム
◆ニューカッスル
そんなハウ監督に率いられたニューカッスルが期待以上の成績を残したと言っていいだろう。もとより下馬評が高かったわけではなかった中、ブルース体制3年目は開幕から11試合未勝利で終焉。残念ながら降格本命に位置付けられていた。
しかし、ハウ監督を招聘するとこれが奏功。1月半ばから2度の3連勝を含む8試合無敗で一気に順位を上げると、4月には中堅以下を確実に叩きながら4連勝を達成。チームの土台も固まり、来季に向けてさらなる期待が持てる結果となった。
また、冬の移籍市場ではダン・バーンやクリス・ウッド、ギマランイスなど、莫大な資金を得ながらも現実的な補強にとどめたが、夏に向けては多くのビッグネームが補強候補に挙げられており、彼らの本領発揮が見られるかもしれない。
★選手
◆クリスティアン・エリクセン
今季は多くの若手の躍進や中堅クラブでも光る選手が多かった今シーズン。だが、この男の復活劇を差し置くことはできない。昨夏のユーロ2020で心臓発作を起こし、一時生死の境を彷徨ったエリクセン。引退も囁かれたが、心臓に除細動装置を付けて現役続行。当時所属のインテルとは契約解除となったが、同胞の多いブレントフォードに移籍し、2年ぶりにプレミアリーグ復帰した。
悲劇から290日ぶりの公式戦となったが、ブランクを感じさせる様子もなく、慣れ親しんだリーグでスムーズに順応。3試合目で初アシストを記録すると、チェルシー戦では快勝に導く逆転ゴールをマークするなど、エリクセン加入後のチームは調子を上げ、同選手が出場した10試合で7勝を挙げた。
【期待外れ】
★チーム
◆マンチェスター・ユナイテッド
降格をギリギリ免れたエバートンも今季のワーストチームの一つに数えられるが、5年無冠の名門マンチェスター・ユナイテッドは、シーズン前の期待から最も落差の大きい結果となってしまった。スールシャール体制となって4シーズン目を迎えた今季は、プレシーズンにクリスティアーノ・ロナウドをはじめ、サンチョやヴァランら大物を獲得。大型補強にオールド・トラッフォードは大いに沸いたが、ピッチ上は湿った空気が流れた。
そして、8位にまで落ち込んだ11月半ば、スールシャール監督は解任され、キャリック暫定指揮官を挟んで巨匠ラングニックを招聘。しかしながら、多くの指揮官に影響を与えたその腕を持ってしても、赤い悪魔は最後まで力を取り戻すことができなかった。また、CL出場権を取れなかったことで、移籍市場でも後手に回ることが予想されており、即戦力補強はあまり期待できないかもしれない。
★選手
◆ロメル・ルカク
ストライカー補強がことごとく失敗する近年のチェルシーにおいて、ルカクも例外ではなかった。インテルでの2年間で公式戦95試合64ゴールを挙げた実績を引っさげ、クラブ史上最高額となる9750万ポンドの移籍金で復帰したベルギー代表FW。しかし、そのピークは復帰初戦のアーセナル戦だったのかもしれない。アーセナル戦では初ゴールを含め、チェルシーに不足していたポストプレーの動きも光り、見事なパフォーマンスを披露した。
ところが、相手がビッグクラブになるほどポストプレーの勝率は下がり、逆に格下相手ではスペースを消され、得意な形でボールを受けることは困難だった。パスを呼び込む際の動き出しも味方と被るシーンも多く、次第にルカクのポジションはハヴァーツで定着していった。
加えてルカクは、クラブに無断でメディアの取材に応えた挙句、その際に現状に対する不満を公言するなど、ピッチ外でも問題を起こすことに。将来的にインテルに戻りたいといった趣旨の発言もあり、復帰1年目は散々なものとなった。すでに移籍の噂も浮上している。
勝ち点90超えが稀有ではなくなった近年のプレミアリーグで、今シーズンもハイレベルな優勝争いが繰り広げられることになった。優勝したマンチェスター・シティと、文字通り最後まで食らいついたリバプールの差はわずか1ポイント。最後までどちらに転ぶか予想がつかなかった中、最終節はまさに劇的なものとなった。
首位のシティはホームでアストン・ビラと対戦。相手はジェラード監督の就任から勢いがついていたとはいえ、純粋な戦力差ではシティが圧倒的。シティの勝利を疑うものは少なかったが、意外にもビラが先制する展開に。一方のリバプールはホームにウォルバーハンプトンを迎えて逆転優勝の最低条件である勝ち点3を目指したが、開始3分に失点するという、こちらも予想していなかった立ち上がりとなった。
そんなリバプールは前半のうちに追いついたが、シティは後半にも追加失点。グアルディオラ監督も頭を抱える事態に直面した。エティハドのサポーターも不安の表情を浮かべる中、76分に途中出場のギュンドアンのゴールでついに得点。これで息を吹き返したチームは、その2分後にロドリの針の穴を通すような鮮やかなミドルシュートが決まり同点に。それまでほとんど死に体だった会場のファンのボルテージはここで最高潮を迎えた。
ここ5年で4度目のリーグ制覇を成し遂げたシティ。今季は順風満帆なシーズンだったと言っていいだろう。開幕戦こそトッテナム相手に不覚をとってしまったものの、その後は順調に勝ち点を重ね、チェルシーやマンチェスター・ユナイテッド、アーセナルなど、リバプールを除く上位陣を軒並み蹴散らしながら、堂々の首位でシーズンを折り返した。前半戦で攻守に大車輪の活躍だったベルナルド・シウバや、後半戦だけで11ゴール8アシストを記録したデ・ブライネ、ポリバレント力を身に付けたフォーデン、そして最終節で優勝に導く2ゴールを挙げたギュンドアンなど、どの選手も主役級の活躍を披露した今季のシティ。バンジャマン・メンディの強姦容疑というイレギュラーはさておき、まさに総合力での完全優勝を果たした1年だった。そして、来季はここに怪物ハーランドが上陸する。
もちろんリバプールも称賛されて然るべき成績を残した。多くのケガ人に見舞われ3位に終わった昨シーズンの悔しさをバネに、今シーズンは開幕10戦無敗と、序盤はシティを上回るペースで勝ち点を重ねた。シーズンを通して敗れたのはシティより一つ少ない2試合。後半戦のみの戦績では勝ち点が2ポイント多かったため、昨シーズンとは違った意味で悔しい結果となってしまった。なかなか優勝を逃した原因を分析することは困難だろう。それでも、冬加入のルイス・ディアスがすんなりとチームに順応したことや、シーズン中に決まったクロップ監督の契約延長など、来季以降に向けて明るい材料は少なくない。
3位には昨季のヨーロッパ王者チェルシーが入った。昨年1月に就任したトゥヘル監督の下でシーズンインしたチェルシー。序盤戦では10人でリバプール相手に引き分けに持ち込むなど、代名詞となった堅守を全面に発揮した戦いを見せ、第14節までに喫した失点はわずかに「6」。一時は首位に立っていた。しかし、チルウェルら負傷者が相次いだことで後半戦は失速。また、ロシアのウクライナ侵攻によるオーナー問題など、ピッチ外でも問題が相次ぎ、3位はキープし続けたものの、2強との差はどんどん広まる一方だった。そして、今夏で守備の要だったリュディガーとクリステンセンの退団が決まっており、移籍市場では即戦力となりうるDFの確保が急務となりそうだ。
4位はアーセナルとのデッドヒートを制したスパーズが滑り込んだ。新たにヌーノ監督を招へいして迎えた今シーズン、開幕節でシティ相手に金星を挙げて絶好のスタートを切ったものの、その後のロンドン・ダービー3連戦を全て落とすと、第10節終了時点で5勝5敗と低迷。11月1日にヌーノ監督を解任し、かつてチェルシーをプレミア制覇に導いたコンテ監督に託すことに。イタリア人監督も就任から9試合は無敗を維持したものの、古巣のチェルシーに初黒星を喫すると、そこから調子はガタ落ち。5試合で4敗と危機的状況に陥った。ところが、冬の移籍市場でユベントスからベンタンクールとクルゼフスキをレンタル補強するとこれが奏功。とりわけクルゼフスキは攻撃のアクセントとなり、半シーズンで5ゴール8アシスト記録した。現在スパーズは買い取りに動いていると専らの噂だ。
そのスパーズの後塵を拝し、惜しくもチャンピオンズリーグ出場権を逃したアーセナル。ベン・ホワイトやラムズデール、そして冨安健洋と、主に守備面の強化を図って迎えた今季は、昨季と比べて無駄な失点が減り、引き分けに持ち込まれてしまうような試合はなかった。ただ、守備の要だったトーマスやティアニーが欠場すると途端に脆さを露呈。今季最高の補強の一つとメディアに言わしめた冨安がいなかった試合も守備は不安定に陥った。その証拠にトーマスが離脱したラスト9試合の失点数は「14」。以前の16試合と同等の数字だ。また、その間に4敗したことが、終盤にスパーズに抜かれた原因に他ならない。2年ぶりにヨーロッパリーグに出場する来季、守備の補強は必要不可欠と言えるだろう。
さて、最もサポーターをガッカリさせたのはマンチェスター・ユナイテッドか。昨季2位という実績と、ヴァランやサンチョの実力のあるスター選手の獲得、何よりも生きる伝説クリスティアーノ・ロナウドの帰還で、5年ぶりのタイトル獲得のピースは揃っていた。ところがその実、序盤から不安定な戦いが続き、2018年末から指揮していたスールシャール監督を11月24日に解任。後任にはモダンフットボールの最先端を行くラングニック氏が就任したが、その手腕を持ってしてもチームが好転する様子はなく、既存戦力にほとんど光明は見られなかった。リーグ戦最後の12試合でわずか3勝しか挙げられなかったチームは、来季からアヤックスを4年半率いたテン・ハグ監督に任せることに。ただ、攻守共に課題は山積みだ。
降格チームはおおむね予想通りの結果に。2度のチャンピオンシップ制覇に導いたファルケ監督を解任したノリッジや、ラニエリ監督から残留請負人と呼ばれるホジソン監督に舵を切ったワトフォードは早々に降格が決定。また、バーンリー、リーズ、そしてエバートンが降格線上にいた。いずれも監督交代に関して大きな決断を下しており、バーンリーは9年半率いたショーン・ダイチ監督を解任。リーズも鬼才ビエルサと袂を分かち、ライプツィヒからジェシー・マーシュ監督を引き抜いた。エバートンはベニテス監督を半年で切り、昨年1月までチェルシーを指揮していたランパード監督を招聘する大胆な作戦に踏み切った。
結果的に降格したのはバーンリー。監督交代直後に3連勝をおさめるも、最後の4試合は1ポイントにとどまり、最終節でリーズに逆転される形で7シーズンぶりの降格が決定した。
【最優秀選手&監督】
★最優秀選手
◆ケビン・デ・ブライネ

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世界最高の攻撃的MFと呼んでも差し支えないだろう。今季もリーグ戦30試合に出場し15ゴール8アシストという見事なスタッツを残したが、この男はもはや数字だけでは説明できない領域に及んでいる。
足首の問題に悩まされた序盤戦はスロースタートを切り、開幕17試合で15得点に到達したサラーや、攻守に獅子奮迅の活躍を見せたベルナルド・シウバなど、前半戦は他の方が印象的なパフォーマンスを披露していたが、シーズン後半はデ・ブライネの独擅場に。終盤のウルブズ戦では、プレミアリーグ歴代3番目の早さでハットトリックを達成。同試合では後半にもゴールを決めて圧巻の4得点を記録した。
最終節で逆転勝利を呼び込んだギュンドアンのゴールへのアシスト然り、30歳を迎えてもなお、世界最高峰リーグでファンタスッティクなプレーで楽しませてくれている。
★最優秀監督
◆エディ・ハウ

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最高峰リーグのトップを走り続けるグアルディオラ監督やクロップ監督は見事の一言に尽きるが、今シーズンに限っては44歳のイングランド人指揮官を推したい。ボーンマスがチャンピオンシップに降格した一昨シーズンを最後に、しばらく第一線を離れていたハウ監督。昨年11月、1年3カ月ぶりに現場復帰した先は、最下位に沈むニューカッスルだった。
当時のマグパイズはサウジアラビアの公的投資基金をはじめとするコンソーシアムに買収された直後で話題に。同時にスティーブ・ブルース監督が解任となり、後任には相当のプレッシャーが予想された。しかし、ハウ監督はシステム変更やジョエリントンの中盤コンバートなど確かな手腕を発揮し、チームを立て直すと、最下位だった就任当初から一転、余裕の残留に導いた。
【期待以上】
★チーム
◆ニューカッスル

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そんなハウ監督に率いられたニューカッスルが期待以上の成績を残したと言っていいだろう。もとより下馬評が高かったわけではなかった中、ブルース体制3年目は開幕から11試合未勝利で終焉。残念ながら降格本命に位置付けられていた。
しかし、ハウ監督を招聘するとこれが奏功。1月半ばから2度の3連勝を含む8試合無敗で一気に順位を上げると、4月には中堅以下を確実に叩きながら4連勝を達成。チームの土台も固まり、来季に向けてさらなる期待が持てる結果となった。
また、冬の移籍市場ではダン・バーンやクリス・ウッド、ギマランイスなど、莫大な資金を得ながらも現実的な補強にとどめたが、夏に向けては多くのビッグネームが補強候補に挙げられており、彼らの本領発揮が見られるかもしれない。
★選手
◆クリスティアン・エリクセン

Getty Images
今季は多くの若手の躍進や中堅クラブでも光る選手が多かった今シーズン。だが、この男の復活劇を差し置くことはできない。昨夏のユーロ2020で心臓発作を起こし、一時生死の境を彷徨ったエリクセン。引退も囁かれたが、心臓に除細動装置を付けて現役続行。当時所属のインテルとは契約解除となったが、同胞の多いブレントフォードに移籍し、2年ぶりにプレミアリーグ復帰した。
悲劇から290日ぶりの公式戦となったが、ブランクを感じさせる様子もなく、慣れ親しんだリーグでスムーズに順応。3試合目で初アシストを記録すると、チェルシー戦では快勝に導く逆転ゴールをマークするなど、エリクセン加入後のチームは調子を上げ、同選手が出場した10試合で7勝を挙げた。
【期待外れ】
★チーム
◆マンチェスター・ユナイテッド

Getty Images
降格をギリギリ免れたエバートンも今季のワーストチームの一つに数えられるが、5年無冠の名門マンチェスター・ユナイテッドは、シーズン前の期待から最も落差の大きい結果となってしまった。スールシャール体制となって4シーズン目を迎えた今季は、プレシーズンにクリスティアーノ・ロナウドをはじめ、サンチョやヴァランら大物を獲得。大型補強にオールド・トラッフォードは大いに沸いたが、ピッチ上は湿った空気が流れた。
そして、8位にまで落ち込んだ11月半ば、スールシャール監督は解任され、キャリック暫定指揮官を挟んで巨匠ラングニックを招聘。しかしながら、多くの指揮官に影響を与えたその腕を持ってしても、赤い悪魔は最後まで力を取り戻すことができなかった。また、CL出場権を取れなかったことで、移籍市場でも後手に回ることが予想されており、即戦力補強はあまり期待できないかもしれない。
★選手
◆ロメル・ルカク

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ストライカー補強がことごとく失敗する近年のチェルシーにおいて、ルカクも例外ではなかった。インテルでの2年間で公式戦95試合64ゴールを挙げた実績を引っさげ、クラブ史上最高額となる9750万ポンドの移籍金で復帰したベルギー代表FW。しかし、そのピークは復帰初戦のアーセナル戦だったのかもしれない。アーセナル戦では初ゴールを含め、チェルシーに不足していたポストプレーの動きも光り、見事なパフォーマンスを披露した。
ところが、相手がビッグクラブになるほどポストプレーの勝率は下がり、逆に格下相手ではスペースを消され、得意な形でボールを受けることは困難だった。パスを呼び込む際の動き出しも味方と被るシーンも多く、次第にルカクのポジションはハヴァーツで定着していった。
加えてルカクは、クラブに無断でメディアの取材に応えた挙句、その際に現状に対する不満を公言するなど、ピッチ外でも問題を起こすことに。将来的にインテルに戻りたいといった趣旨の発言もあり、復帰1年目は散々なものとなった。すでに移籍の噂も浮上している。
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▽現役時代にマンチェスター・ユナイテッドで活躍した元オランダ代表FWルート・ファン・ニステルローイ氏が、宿敵との騒動を振り返った。イギリス『インデペンデント』が伝えた。 ▽事件は約13年前のオールド・トラフォード、マンチェスター・ユナイテッドvsアーセナルで起こった。当時のプレミアリーグは、ユナイテッドとアーセナルの2強時代。MFロイ・キーン、MFパトリック・ヴィエラという闘将に率いられていた両者の直接対決は、常に意地と意地がぶつかり合う激闘だった。 ▽そして試合では、0-0で迎えたアディショナルタイムにFWディエゴ・フォルランがボックス内でDFマーティン・キーオンに倒されてPKを獲得。しかし、このPKキッカーを務めた名手ファン・ニステルローイは、シュートをバーに当ててしまった。 ▽そして、試合は0-0のまま終了。宿敵の絶対的エースがPKを失敗したことにより勝ち点を獲得してテンションが上がったアーセナルの選手たちは、試合終了の笛とともにファン・ニステルローイを囲んで挑発。試合中も激しくやりあっていたキーオンは、ファン・ニステルローイに“ジャンピングチョップ”を敢行した。 ▽オックスフォード大学での講義にゲストとして参加したファン・ニステルローイ氏は、「キーオンに街でたまたま会ったら、どのように振舞うのか?」と尋ねられると、冗談交じりに「彼は再び私の上に飛んでくるだろう(笑)。時代を生きていくには、クレバーじゃないといけないと思ったよ」と語り、会場の笑いを誘った。 ▽一方、この事件があった2003-04シーズンにプレミアリーグ無敗優勝を経験したキーオン氏は先月、当時について以下のように振り返っていた。 「おそらく、私は過剰な反応を見せてしまった。ルート・ファン・ニステルローイは、ブラックリスト入りする信用できない敵だった。彼はトッププレーヤーであり、ファイターだったが、どんな手を使ってでも相手を打ちのめそうとするような選手だった」 2016.02.08 20:42 Mon4
今季は5名が新加入、イングランドでプレーする日本人女子選手の増加傾向に英紙が注目「今後も続く可能性が高い」
現在は9人、イングランドでプレーする日本人女子選手の増加傾向を英紙が注目「今後も続く可能性が高い」 イングランドのFA女子スーパーリーグ(FAWSL)には、現在9人の日本人選手が所属。アジア人プレーヤーが増加傾向にある理由を、イギリス『BBC』が探った。 マンチェスター・シティのMF長谷川唯を筆頭に、ウェストハムにはDF清水梨紗とMF林穂之香に加え、今季からはFW植木理子も在籍。リバプールではMF長野風花が主軸を担っている。 オーストラリア&ニュージーランド女子ワールドカップ(W杯)得点王の実績が評価され、マンチェスター・ユナイテッドにはMF宮澤ひなたが加入。チェルシーにはローンバックでFW浜野まいかが復帰し、今冬にはレスター・シティへ宝田沙織と籾木結花が籍を移した。 なでしこジャパンが2011年ドイツ女子W杯で優勝、2012年にロンドン・オリンピックで銀メダルを獲得した直後にも、2013年にチェルシーへ永里優季(現:ヒューストン・ダッシュ/アメリカ)が、2014年にアーセナルへ大野忍(スペランツァ大阪監督)や近賀ゆかり(サンフレッチェ広島レジーナ)が加入と、イングランドでのプレーを選択する日本人が続いたが、現在は当時とは異なる風向きで、勢いも加速している。 WSLで頭角を現した最初のアジア人選手と言えば、チェルシーで6度のリーグ優勝を達成した韓国女子代表MFチ・ソヨン(2014-2022年5月)をおいて他にないが、『BBC』では、続く存在として長谷川を挙げ、増加傾向にある日本人選手を特集。スカウティングへの投資、テレビによる世界的な女子サッカー中継の増加、移籍市場での競争の激化など、いくつかの要因を挙げた。 「映像が得られるという点で、スカウティングリソースは劇的に増加した。我々には2人の素晴らしいアナリストもいて、間違いのない選手を特定するのに役立っている」と、宝田と籾木を獲得したレスターのウィリー・カーク監督の言葉を引用。ウェストハムのレハネ・スキナー監督は、国際大会を通じて植木の才能を買っていたと話す。 また、イングランド内における女子サッカーの地位が高まったことによる、待遇の変化にも注目。給与の向上や移籍市場の変化により、WSLが選手にとってより魅力的なものになったと伝えている。 各チームの監督ともに、日本人選手の良さに「規律や戦術理解度、技術の高さ」などを挙げる。『BBC』は「これらの要因により、アジア系の才能ある人材がイギリスに流入することになり、最近到着した選手たちの成功を考えると、この傾向は今後も続く可能性が高い」と結んでいるが、まさしくその通りになるだろう。 最後に、各指揮官によるコメントを掲載。日本人選手、特に自チーム所属の選手を大いに評価している点がユニークだ。 「(WSLでプレーする)日本人選手はどんどん増えてくるだろうし、その理由も分かるだろう。非常に規律があり、聞く耳を持っている。強度も高く、ゲームの理解度もとても高い。もちろん、個々の能力は異なる。(長谷川)唯は非常に知的でゲームの読み方は誰にも負けないだろうし、信じられないほどの才能があると思う」(マンチェスター・シティ/ガレス・テイラー監督) 「風花は試合を読む力が高く、本当に素晴らしいサッカー選手だ。彼女たちは戦術面において非常にクレバーで、技術的にもとても優れている。後方から組み立てるチームの多いWSLの現状において、"日本ブランド"は我々にとって助けになる」(リバプール/マット・ビアード監督) 「日本人選手が増えた理由は明白です。戦術的に聡明で、技術的にも才能のある選手を望まない人はいないでしょう?彼女たちは私たちのチームに大きな価値をもたらしてくれました」(ウェストハム/レハネ・スキナー監督) 「必ずしもアジアの選手を探していたわけではなく、トップクラスのナンバー6を探していたら宝田を見つけたんだ。半年ほど注視して、夏に獲得しようとしたが、リンシェーピングとの合意に至らなかったから、(それなら満了後にと)事前契約を行った。チャンピオンズリーグのアーセナル戦は素晴らしかった」 「宝田選手をさらに見ていたら、籾木の良さにも気付いて、これは良い機会だと思ったんだ。2人とも素晴らしい才能のある選手だよ」(レスター・シティ/ウィリー・カーク監督) 2024.02.12 21:57 Mon5