ベンゼマ圧巻ハットのマドリーが2点ビハインドから奇跡の逆転劇でベスト8進出! PSGはドンナルンマの痛恨ミス響く…《CL》

チャンピオンズリーグ(CL)ラウンド16の2ndレグ、レアル・マドリーvsパリ・サンジェルマン(PSG)が9日にサンティアゴ・ベルナベウで行われ、ホームのマドリーが3-1で勝利した。この結果、2戦合計3-2としたマドリーの準々決勝進出が決定した。先月15日にパルク・デ・プランスで行われた1stレグでは、90分を通して圧倒したホームのPSGがムバッペの試合終了間際の劇的ゴールによって1-0の先勝を収めた。

枠内シュート0という屈辱的な内容で先勝を許したマドリーだが、以降のリーグ戦3試合では3戦全勝ときっちりバウンスバックに成功。直近のレアル・ソシエダ戦では難敵相手に先制を許したが、最終的に4-1のスコアで見事な逆転勝利を手にした。ホームで逆転突破を目指すアンチェロッティ監督は、前回対戦から先発2人を変更。累積警告で出場停止のメンディとカゼミロの代役にナチョ、バルベルデを据えた。また、筋肉系のケガから回復したクロースも無事スタメンに名を連ねた。
一方、ほぼ完ぺきな内容で先勝に成功したPSGだが、首位を独走するリーグ戦ではマドリー戦後の3試合で1勝2敗と負け越し。直近のニース戦ではターンオーバーの影響もあってか、低調な内容に終始した結果、後半終盤の失点によって0-1で敗戦した。敵地で逃げ切りを図る大一番では1stレグから先発1人を変更。ディ・マリアに代わってネイマールが復帰し、メッシ、左足甲のケガが懸念されたムバッペと共にトリデンテを組んだ。

マドリディスタによる熱狂的な後押しを受け、ホームチームがキックオフ直後から猛然とプレスをかけていくアグレッシブなスタイルでアウェイチームを飲み込んでいく。5分過ぎまでは相手陣内でハーフコートゲームを展開していくが、うまく中央を締められてフィニッシュまで持ち込めない。一方、何とか相手のハイプレスにアジャストし始めたPSGは、“MNM”の圧倒的な個の力を生かしたカウンターの刃をマドリーののど元に突き付ける。まずは8分、自陣ボックス付近でのメッシのボール奪取からネイマールを経由し、左サイドでスペースを狙うムバッペにスルーパスが通る。やや味方へのクロスも意識した左足のシュートはGKクルトワにキャッチされる。さらに、13分にもネイマールとのパス交換で再びボックス左に持ち込んだムバッペに決定機も、GKの股間を狙った左足のシュートはクルトワの好守に阻まれた。

早い時間帯の先制点とはならなかったものの、この2つの鋭いカウンターによってリズムを掴んだアウェイチームは、相手のプレスを要所で外しながら再三ポジションチェンジを繰り返すネイマールとムバッペのコンビがフィニッシュに絡んでいく。

20分を過ぎると、マドリーのプレスに完全にアジャストしたPSGはパレデス、ヴェッラッティに加え、中盤に落ちるネイマールとメッシが流麗なパス交換で局面を打開。ムバッペだけでなく両サイドバックが高い位置を取って攻撃に厚みを与える。そして、34分にはキンペンベのフィードに抜け出したヌーノ・メンデスがボックス内に侵入し、ムバッペへ折り返しを供給。これをムバッペが右足のシュートでニア下を射抜く。だが、ヌーノ・メンデスの抜け出しのタイミングでオフサイドを取られて先制点とはならず。

オフサイドに救われたマドリーはエースのベンゼマが続けて惜しいヘディングシュートを放つなど、徐々に息を吹き返して攻勢を強める。だが、そのホームチームの勢いを逆手に取ったアウェイチームが先にスコアを動かした。

39分、自陣左サイドでカルバハルの仕掛けをヌーノ・メンデスが止めて中央のネイマールへ繋ぐと、半身の体勢から左足ダイレクトで絶妙なスルーパスを背後のスペースへ供給。これに快足を飛ばして追いついたムバッペはボックス内でDFアラバにファーのコースは消されたが、鋭い腰の捻りからGKクルトワの手を弾く強烈な右足のシュートをニアポストへ叩き込んだ。

1stレグに続くムバッペの2試合連続ゴールによって先手を奪ったPSGは、ハーフタイムにかけても畳みかける攻めを見せたが、メッシとムバッペのシュートチャンスは相手に撥ね返された。

PSGの2戦合計2-0のスコアで折り返した試合は、後半も互いに同じメンバーでスタート。逆転突破には前に出るしかないホームチームが勢いを持って入ったが、PSGの堅守を前に決定機まであと一歩という状況が続く。

一方、相手の攻勢を冷静に受け止めながらムバッペ、ネイマールを起点としたカウンター、ゲームを落ち着かせるボールポゼッションと冷静に試合をコントロール。54分にはハキミのカウンタープレスからネイマールのスルーパスに抜け出したムバッペが見事なシザーズでGKクルトワをかわしてゴールネットを揺らすが、これは惜しくもオフサイド。続く56分にはメッシの浮き球スルーパスに反応したムバッペがDF2枚の間を割ってゴール前に抜け出すが、ここはDFアラバの身体を張った寄せに阻まれた。

後半も難しい時間帯が続くマドリーは57分、精彩を欠いたアセンシオに代えてロドリゴ、負傷明けで無理が利かないクロースを諦めてカマヴィンガを同時投入。すると、この交代直後に相手の軽率なミスから流れを変えるゴールが生まれる。

61分、ヌーノ・メンデスからのGKへのバックパスにプレッシャーをかけたベンゼマがもたついたドンナルンマのボールロストを誘う。ボックス左へ流れたルーズボールを回収したヴィニシウスがすかさずゴール前でポジションを取り直したベンゼマへ繋ぐと、エルブランコのエースが右足のシュートをゴール左下隅へ流し込んだ。

このゴールによって一気にベルナベウの空気が変わると、ここから試合は完全にホームチームの流れとなる。明らかに動揺が見えるPSGに対して圧力をかけ続けると、ベンゼマ、ヴィニシウスが続けてボックス内で際どいシーンを作り出す。

すると、その押せ押せのムードの中で決定的な仕事を果たしたのはやはり百戦錬磨の2人のベテランだった。76分、自陣ボックス手前でのボール奪取からモドリッチが複数のDFを圧巻のドリブルで振り切って相手陣内へ運び、左サイドのヴィニシウスへスルーパスを繋ぐ。ここは一度相手にスピードダウンさせられるが、ボックス手前右でボールを受け直したモドリッチが密集を抜く見事なスルーパスをボックス右のベンゼマに通す。すかさずベンゼマが放ったシュートがスライディングブロックを試みたDFマルキーニョスの足にディフレクトしてコースが変わってゴールネットを揺らす。

2戦合計スコアで追いついたマドリーだが、相手のキックオフから一気に試合を引っくり返す。78分、相手のキックオフにプレッシャーをかけてロドリゴがパスを引っかけると、モドリッチ、ロドリゴ、ヴィニシウスとスムーズにパスが繋がる。ボックス内に侵入したヴィニシウスの仕掛けはDFマルキーニョスに阻まれるが、無理な体勢で内側へクリアしたボールに見事なスプリントで詰めたベンゼマが右足アウトを使ったダイレクトシュートをゴール右隅へ流し込み、試合を引っくり返すハットトリックを達成した。

2点のアドバンテージを生かせずにまさかの逆転まで持っていかれたPSGは、失点後にディ・マリア、ドラクスラーと攻撃的なカードを切って同点を目指す。だが、攻守両面で躍動するマドリーのプレー強度に圧倒される。さらに、うまくいかないフラストレーションから不用意なファウルが増えてチームは完全に崩壊した。

それでも、1点を奪えば突破の望みが繋がるアウェイチームはムバッペを起点に終盤に攻勢を仕掛けたが、メッシの直接FKが枠を外れるなど、完全に逃げ切り態勢に入ったマドリーを相手に最後までゴールを奪うことはできなかった。

この結果、ベンゼマの圧巻のハットトリックでクラブ史に残る新たな伝説の夜を作った不屈のマドリーが、2戦合計3-2でPSGを退けて劇的な形でのベスト8進出を決めた。