久保のレアルデビューで思い出した選手/六川亨の日本サッカーの歩み
2019.07.23 11:30 Tue
レアルに移籍した久保建英、バルセロナへ移籍した安部裕葵に続き、Jリーガーの海外流出が止まらない。日本代表のシュミット・ダニエル(仙台)と鈴木優磨(鹿島)がシントトロイデン、安西幸輝(鹿島)がポルティモネンセ、天野純(横浜FM)がベルギー2部の名門ロケレン、中村敬斗(G大阪)がオランダのトゥエンテ、菅原由勢(名古屋)がオランダのAZ、そして前田大然(松本)がポルトガルのマリティモへと移籍した。他にも北川航也(清水)がオーストリアの名門ラピド・ウィーンへ移籍との噂がある。
シュミット・ダニエルと天野、鈴木、安在、北川以外は東京五輪の候補選手だけに、若手選手の“青田買い”が目立つ。そうした移籍組のトップを切って、久保が21日に行われたインターナショナルチャンピオンズ杯のレアル対バイエルン戦の後半から出場した。
ピッチに入ると右手でパスを要求するいつものプレーを見せたが、久保自身「最低限のことはできた」と振り返ったように、致命的なミスこそなかったものの、見せ場は後半17分にビニシウスに出したスルーパスくらい。得意とするドリブル突破からのシュートがなかったのは、前後半でチーム全員を入れ替えたことで、組織的に機能していなかったことも影響しているのだろう。
とりわけ守備陣はプレスに行っているようで「人をつかまえていない」ため、バイエルンのカウンターを簡単に許して1-3で完敗した。それでもヨーロッパの超名門“白い巨人”に足跡を残した意義は深い。
今後はトップチーム昇格にチャレンジすることになるが、起用された中盤のポジションではイスコ(スペイン代表)やモドリッチ(クロアチア代表)、アザール(ベルギー代表)ら錚々たるメンバーが控えているだけに、その前途は簡単なものではないだろう。それでも、まだ18歳という若さは大きな武器だ。来たるべき新シーズンが楽しみでならない。
そこで奥寺氏は加入した1977-1978シーズンでいきなりリーグ優勝とカップ優勝の2冠に貢献。リーグ優勝を決めた試合では2ゴールをマークし、翌年のUEFAチャンピオンズカップ(現チャンピオンズリーグ)でもベスト4に進出する活躍を見せた。
UEFA主催の大会には6度出場し、これは小野伸二に抜かれるまでアジア人最多。さらにチャンピオンズカップでもアジア人として大会初ゴールを決めている。1986年までブンデスリーガ在籍9年間で通算26ゴールは2014年にマインツの岡崎慎司に抜かれるまで日本人最多だったし、通算234試合出場は2017年に長谷部誠が更新するまで日本人最多出場だった。実に30年近くも破られていなかった“金字塔”とも言える記録だろう。
そんな奥寺氏が1982年のキリン杯で来日した際に宿泊先の東京プリンスホテルでインタビューしたことがある。まだ24歳の若造は、無謀にも奥寺氏に「プロとアマの違い」を質問した。すると奥寺氏は「1人1人の差は少なくても、それが11人になると大きな差になる」と教えてくれた。
ただ、正直そのときは奥寺氏の言葉の意味を理解できなかった。なんだか“禅問答”のような、わかったようでわからなかった気がした。しかし、日本にもプロリーグができたことで、ようやく奥寺氏の言葉の意味を理解できた。
技術的なレベルアップはもちろんのこと、「いまチームとして何をすべきか」を全員が共有してプレーすること。「いまは耐える時間帯だ」とか、「相手のウィークポイントを突く」など、チーム全員が刻々と変化する試合状況を冷静に判断しつつ、共通理解を持つことの重要性を奥寺氏は指摘したかったのだと思う。
なぜなら当時の日本サッカーは、釜本邦茂氏やラモス瑠偉氏、木村和司ら一部の選手をのぞきドリブル突破するかキック&ラッシュの“個人の自己判断”のサッカーだったからだ。
それから40年近くが過ぎ、多くの選手が海外へ渡り、さまざまな経験を積むことで日本サッカーの発展に貢献してきた。そして現在はレアルやバルセロナといった「世界最高峰」のクラブでチャレンジする選手がいれば、中堅どころのクラブでレベルアップを図る選手も数多い。
そんな中でも久保が異色の存在であるのは、プレーだけでなく語学にも堪能なことだ。過去にも海外に挑戦しながら、志なかばでJリーグへの復帰を余儀なくされた選手は多い。その一因としてコミュニケーション不足が指摘できる。レアルのベイルがチームに馴染めず放出されるのも、英語以外の言語を習得できなかったことが報道されている。
今夏、海外に渡った若手選手には、コミュニケーションの重要性を認識し、語学習得にも励んでチームに溶け込む努力をして欲しい。
シュミット・ダニエルと天野、鈴木、安在、北川以外は東京五輪の候補選手だけに、若手選手の“青田買い”が目立つ。そうした移籍組のトップを切って、久保が21日に行われたインターナショナルチャンピオンズ杯のレアル対バイエルン戦の後半から出場した。
ピッチに入ると右手でパスを要求するいつものプレーを見せたが、久保自身「最低限のことはできた」と振り返ったように、致命的なミスこそなかったものの、見せ場は後半17分にビニシウスに出したスルーパスくらい。得意とするドリブル突破からのシュートがなかったのは、前後半でチーム全員を入れ替えたことで、組織的に機能していなかったことも影響しているのだろう。
今後はトップチーム昇格にチャレンジすることになるが、起用された中盤のポジションではイスコ(スペイン代表)やモドリッチ(クロアチア代表)、アザール(ベルギー代表)ら錚々たるメンバーが控えているだけに、その前途は簡単なものではないだろう。それでも、まだ18歳という若さは大きな武器だ。来たるべき新シーズンが楽しみでならない。
そして久保のデビュー戦を見ていて思い出したのが、日本人プロ第1号の奥寺康彦氏の活躍だ。当時はいまと違いテレビ中継などなかったが、70年代のブンデスリーガはヨーロッパでも「世界最高峰」と言われる実力を誇っていた。その中でも1FCケルンはバイエルン、ボルシアMGと並ぶトップ3のチームだった。
そこで奥寺氏は加入した1977-1978シーズンでいきなりリーグ優勝とカップ優勝の2冠に貢献。リーグ優勝を決めた試合では2ゴールをマークし、翌年のUEFAチャンピオンズカップ(現チャンピオンズリーグ)でもベスト4に進出する活躍を見せた。
UEFA主催の大会には6度出場し、これは小野伸二に抜かれるまでアジア人最多。さらにチャンピオンズカップでもアジア人として大会初ゴールを決めている。1986年までブンデスリーガ在籍9年間で通算26ゴールは2014年にマインツの岡崎慎司に抜かれるまで日本人最多だったし、通算234試合出場は2017年に長谷部誠が更新するまで日本人最多出場だった。実に30年近くも破られていなかった“金字塔”とも言える記録だろう。
そんな奥寺氏が1982年のキリン杯で来日した際に宿泊先の東京プリンスホテルでインタビューしたことがある。まだ24歳の若造は、無謀にも奥寺氏に「プロとアマの違い」を質問した。すると奥寺氏は「1人1人の差は少なくても、それが11人になると大きな差になる」と教えてくれた。
ただ、正直そのときは奥寺氏の言葉の意味を理解できなかった。なんだか“禅問答”のような、わかったようでわからなかった気がした。しかし、日本にもプロリーグができたことで、ようやく奥寺氏の言葉の意味を理解できた。
技術的なレベルアップはもちろんのこと、「いまチームとして何をすべきか」を全員が共有してプレーすること。「いまは耐える時間帯だ」とか、「相手のウィークポイントを突く」など、チーム全員が刻々と変化する試合状況を冷静に判断しつつ、共通理解を持つことの重要性を奥寺氏は指摘したかったのだと思う。
なぜなら当時の日本サッカーは、釜本邦茂氏やラモス瑠偉氏、木村和司ら一部の選手をのぞきドリブル突破するかキック&ラッシュの“個人の自己判断”のサッカーだったからだ。
それから40年近くが過ぎ、多くの選手が海外へ渡り、さまざまな経験を積むことで日本サッカーの発展に貢献してきた。そして現在はレアルやバルセロナといった「世界最高峰」のクラブでチャレンジする選手がいれば、中堅どころのクラブでレベルアップを図る選手も数多い。
そんな中でも久保が異色の存在であるのは、プレーだけでなく語学にも堪能なことだ。過去にも海外に挑戦しながら、志なかばでJリーグへの復帰を余儀なくされた選手は多い。その一因としてコミュニケーション不足が指摘できる。レアルのベイルがチームに馴染めず放出されるのも、英語以外の言語を習得できなかったことが報道されている。
今夏、海外に渡った若手選手には、コミュニケーションの重要性を認識し、語学習得にも励んでチームに溶け込む努力をして欲しい。
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