【東本貢司のFCUK!】ピュエルとサッリ、去り際の“顔”
2019.03.01 11:00 Fri
決定、発表はことのほか迅速、かつ淀みがなかった。クロード・ピュエルの引き際が実に見事に見えたのも、そのキング・パワー・スタジアムの要請にブレンダン・ロジャーズが首を縦に振ったのも、さらに、その後を暫定身分で(!)引き受けることに一切とやかく言わなかったニール・レノンまでもーーー。レスターとセルティックをめぐるトップ振り替わり人事は、まるで“二言返事"を合言葉にしたかのように完結た。水面下の交渉らしきがなかったはずはない? いや、今回の場合は「三者」および「四者」の利害がぴったり一致したという見方もできそうである。ひとり貧乏くじを引いた格好のピュエルも実は引く手数多と見られている。というのも、レスター通周辺ではピュエルを必ずしも「失敗」だと受け止めていない。何よりもレスターのプレーヤーたちが“惜しんで"いるのだから。
現在のレスターは、おそらく近年例を見ない強固な結束を誇る“絆のチーム"だ。ある意味で筆者はいまだに、なぜカンテが、ドリンクウォーターやマーレズがこの地を後にしたのか理解できない(したくない)でいるが、実際にヴァーディーやシュマイケルらから恨み言のかけらも聞いたためしがない。いや、むしろ「心からのグッドラック・コール」を惜しまず、今も変わらず親交を温めていると聞く。賭けてもいいが、機会さえ許すなら彼らの“出戻り"だって決して無理な相談ではないと思う。すっかり燻ぶったままのドリンクウォーターも、類まれなるスキルが生かされにいチームに飛び込んでしまったマーレズも、そして、どうやらベストポジションから遠ざけられつつあるカンテだって・・・・。ひょっとして彼らは今、ふと思い詰めてしまうことなどはないだろうか。“あそこの仲間と一緒ならば"きっと考え込まくて済んでいるのかもしれないな、とか。どうかな、岡崎君。
思うに、ピュエルはそんな“レスター・シップ"を極力損なうことのないよう、チーム操縦に腐心してきたと思われる。例えば、何が何でも“私/オレ流"的・とんがったチーム改造を強要することなどもなく、地道な底上げの可能性を実戦を通して模索する。その結果、メンバー、スタッフの誰ひとり、ピュエルの起用法や戦術志向を「無理のない、好感のもてる」と評価してきたようだ。その分、改めて優勝を争えるチームに昇華するインパクトには欠けたのかもしれないが、不安定で目的がぼやけがちな“過渡期"を乗り切るには、最適な指導者だったのだろう。少なくとも、レスターで内部ではそう考えられている。個人的に、あの、無表情に近いしかめっ面と、折に触れて憤りの感情を地味に、でも体いっぱいで表現する芝居がかった仕草のミクスチャーに、うならされていたものである。だからピュエル退場は少なからず寂しい。どこかプレミアで再登板を考えてくれないかな。
それを思うにつけ、我らがマウリツィオ・サッリときては、それこそが彼の可愛げでヒューマンなキャラの魅力でもあると喝采すら送りたくも思うのだが、今度に限ってはちとまずった。何がと言って、まず何はともあれ“反乱分子"のケパを有無を言わさず、コーチの誰かでもやって強引に引きずりおろさねばならなかった。慧眼な方なら気づいたはずだが、言うことをきかないケパのそばで、ダヴィド・ルイスはどうしていたか。その表情が次第に「うんざり」に変わっていったことを。なにゆえ、ゲームキャプテンのアスピリクエタはそこで何かをしなければと思わなかったのか。まさにその刹那、チェルシーのコアなファンはため息をついて天を仰ぎたい気持ちだったろう。この愛すべきイタリア人監督についていって耳を貸そうとするブルーズのプレーヤーはもう・・・・いないのかもしれない。
メディアはいつも罪作りなことをする。ボーンマス大敗、マン・シティー惨敗として「バイバイ・FAカップ」まで重なっては、リーグカップ決勝直前もものかわ、「ローマが来て欲しがっているらしい」と言いふらして、まるで「あとは勝とうが負けようが、どうぞご随意に」と言わんばかり。それでも“健気に"、律義に、「次戦にケパを使うかどうかはまだ決めていない」と、大真面目なリップサービスをひねり出すサッリが、筆者はピュエルに負けず劣らず好きになっている。できれば引き続き、プレミアで大暴れを画してもらいたいところではあるが、ま、チェルシー以外じゃそれももう無理な相談なんだろうな。
【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。
現在のレスターは、おそらく近年例を見ない強固な結束を誇る“絆のチーム"だ。ある意味で筆者はいまだに、なぜカンテが、ドリンクウォーターやマーレズがこの地を後にしたのか理解できない(したくない)でいるが、実際にヴァーディーやシュマイケルらから恨み言のかけらも聞いたためしがない。いや、むしろ「心からのグッドラック・コール」を惜しまず、今も変わらず親交を温めていると聞く。賭けてもいいが、機会さえ許すなら彼らの“出戻り"だって決して無理な相談ではないと思う。すっかり燻ぶったままのドリンクウォーターも、類まれなるスキルが生かされにいチームに飛び込んでしまったマーレズも、そして、どうやらベストポジションから遠ざけられつつあるカンテだって・・・・。ひょっとして彼らは今、ふと思い詰めてしまうことなどはないだろうか。“あそこの仲間と一緒ならば"きっと考え込まくて済んでいるのかもしれないな、とか。どうかな、岡崎君。
それを思うにつけ、我らがマウリツィオ・サッリときては、それこそが彼の可愛げでヒューマンなキャラの魅力でもあると喝采すら送りたくも思うのだが、今度に限ってはちとまずった。何がと言って、まず何はともあれ“反乱分子"のケパを有無を言わさず、コーチの誰かでもやって強引に引きずりおろさねばならなかった。慧眼な方なら気づいたはずだが、言うことをきかないケパのそばで、ダヴィド・ルイスはどうしていたか。その表情が次第に「うんざり」に変わっていったことを。なにゆえ、ゲームキャプテンのアスピリクエタはそこで何かをしなければと思わなかったのか。まさにその刹那、チェルシーのコアなファンはため息をついて天を仰ぎたい気持ちだったろう。この愛すべきイタリア人監督についていって耳を貸そうとするブルーズのプレーヤーはもう・・・・いないのかもしれない。
メディアはいつも罪作りなことをする。ボーンマス大敗、マン・シティー惨敗として「バイバイ・FAカップ」まで重なっては、リーグカップ決勝直前もものかわ、「ローマが来て欲しがっているらしい」と言いふらして、まるで「あとは勝とうが負けようが、どうぞご随意に」と言わんばかり。それでも“健気に"、律義に、「次戦にケパを使うかどうかはまだ決めていない」と、大真面目なリップサービスをひねり出すサッリが、筆者はピュエルに負けず劣らず好きになっている。できれば引き続き、プレミアで大暴れを画してもらいたいところではあるが、ま、チェルシー以外じゃそれももう無理な相談なんだろうな。
【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。
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