ザック采配を検証 〜思惑と誤算〜《コートジボワールvs日本》

2014.06.16 23:26 Mon
▽15日に行われたワールドカップのグループC第1節で、日本代表はコートジボワール代表に敗れた。前半16分に本田のゴールで先手を奪ったが、後半に入ってから立て続けに失点。最後まで流れを変えることができずに逆転負けを喫した。そして試合後、今回の一戦における日本代表の戦い方や指揮官の采配に対して疑念の声があがっている。そこで、ここではコートジボワール戦におけるザッケローニ監督の思惑や狙い、采配を検証していきたい。

◆スタメンの意図
▽最近の試合では、森重が台頭したセンターバックの組み合わせと、長谷部のコンディションに不安を残すボランチの組み合わせ、そして1トップの人選が流動的だった。

・センターバックの組み合わせ
▽指揮官が選択したのは、吉田と森重だった。吉田はコンディションに問題がなければ間違いなく出場する存在であり、注目は相方が誰なのかという部分。両者を比較すると、「経験とコンビネーション」の今野、「ビルドアップとコンディション」の森重、といったところか。おそらくザックは、ビルドアップ面に加え、最近の状態も考えて森重を選択したのだろう。

・ボランチの組み合わせ
▽長谷部のコンディションや遠藤のフィジカルといった問題から、最近の試合では、運動量があって攻守のバランスがとれる山口が軸。焦点は長谷部と遠藤のどちらを先発させるのかで、こちらは「ハードワーク」の長谷部、「ゲームメイク」の遠藤、といったところ。ザックの下した決断は前者で、前半は戦える長谷部で手堅く、後半は器用な遠藤でリズムをコントロールというのが、ザックの狙いだったと思われる。

・1トップの人選
▽本大会前、3トップの人選について問われた指揮官は、柿谷、大迫、大久保が候補であり、対戦相手や状況に応じて起用していくと語っていた。各選手とも総合力の高いストライカーではあるが、あえて比較するなら「技術と動き出し」の柿谷、「ポストプレー」の大迫、「仕掛け」の大久保か。選択したのは大迫で、起点となる役割を期待したのだろう。

◆ザックの思惑
▽当然、主導権を握る展開を期待していたはずだ。だからこそ、ポゼッションスタイルに適した森重と大迫を起用したのだろう。その流れで言えば、ボランチは遠藤でもおかしくなかったが、前半は堅くいき、後半勝負という狙いがあったと考える。だからこそ、最近の親善試合で、後半から出場して素晴らしい活躍を見せていた遠藤と大久保をベンチに置いたと言える。遠藤も大久保も、リードした場合、同点の場合、リードされた場合のどの状況でも、違いをもたらせると考えていたに違いない。

◆試合の流れ
▽序盤は硬さが見えたが、それでもスローインの流れから前半15分に本田のゴールで先制に成功。しかし、先制後の良い流れは5分間しか続かず、その後は守勢に回った。最終的にはリードを保ったまま後半を迎える理想的な展開に持ち込むことができた。迎えた後半の流れは以下の通りだ。

・後半9分:MF長谷部⇒MF遠藤
└メンバーの入れ替え

・後半17分:MFディエ⇒FWドログバ
└システムを[4-3-3]から[4-2-4]のような形に変更

・後半19分:ボニーの同点ゴール

・後半21分:ジェルビーニョの逆転ゴール

・後半22分:FW大迫⇒FW大久保
└そのまま1トップを入れ替える

・後半28分:ポジションチェンジ
└1トップに本田、トップ下に香川、左サイドに大久保を配置

・後半30分:DFボカ⇒DFジャクパ
└負傷交代

・後半33分:FWボニー⇒MFコナン
└システムを[4-3-3]に戻してバランスをとる

・後半41分:香川⇒柿谷
└本田をトップ下に戻して柿谷を最前線へ

▽遠藤を送り込んだ日本だったがボールを保持できず、ドログバを入れてゴール前に厚みを作ったコートジボワールが、右サイドからのアーリークロスという同じ形で2点を連取。その後、大久保の投入や前線のポジションチェンジを施すなどの策を講じたが、流れは変わらずに試合終了を迎えた。

◆ザックの誤算〜数字は物語る〜
▽試合後のポゼッションは、コートジボワールが57%(31分32秒)で日本が43%(23分25秒)だ。また、パスの数が456本と326本で、パス成功率は80%と71%、ザックとしても、ここまでの差はおそらく想定していなかったと思う。面白いことに、成功したパスの本数ではコートジボワールが130本も多いのに、ショートパスだけに絞ってみると、82本と114本で、日本の方が32本も多いのだ。

◆走らされた日本
▽また、ロングパスはコートジボワールの方が14本多いが、全体の本数を考慮すれば当然の結果。顕著な差が出たのがミドルレンジで、コートジボワールの326本に対して日本は178本と、倍近い差がある。この数字が何を示しているのかというと、日本はショートパスが多いため、コートジボワールの選手が守備の際に移動する距離が少なく、一方の日本は守備の際により長い距離を移動しなければならなかったということだ。

▽試合後の移動距離を見てみても、日本は長友と本田が11 kmを超え、岡崎、香川、山口が10km以上、内田と吉田も10kmに近い距離を走っていた。一方、コートジボワールで10kmを超えたのは、カルーとティオテの2人だけ。それも10kmそこそこだ。また、相手ボール時の移動距離では、日本の選手たちが軒並み4kmを超えているのに対し、コートジボワールは3km前後となっている。(※総移動距離にはアウト・オブ・プレーの数字も含まれる)

◆想像以上の疲労感
▽これに、試合当日の湿度80%を考慮すると、日本の選手たちは想像以上に疲弊していたと言えるだろう。要するに、遠藤や大久保を投入した際には周囲の運動量が激減しており、どうすることもできなかったのだ。いくらゲームメイク力に長けた遠藤や動ける大久保を入れたとしても、その他の選手たちの足が止まっていてはどうしようもない。

▽これまでの親善試合を振り返ると、後半に3名以上の選手を送り込んでおり、よりフレッシュな状態を維持した選手が多かったとも言える。そういった観点から考えると、ある程度のリスクを抱えながらもゲームメイク力に長けた遠藤を先発させ、序盤からポゼッションでの勝負に出た方が良かったのかもしれない。

▽選手交代に関しても、コートジボワールがドログバを投入するタイミングには大久保の用意ができていた。彼の特長を考えるなら、リードを許して守備ブロックを下げられる前に投入しておくべきだっただろう。あの一瞬の迷いも、後手を踏む要因のひとつとなってしまったと言えるだろう。

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