奇跡は起きなかった…/原ゆみこのマドリッド

2026.03.07 13:18 Sat
「奇遇なこともあるものね」そんな風に私が呟いていたのは木曜日、コパ・デル・レイの決勝カードが、この土曜午後6時30分(日本時間翌午前5時)にはもう、メトロポリターノで見られることに気がついた時のことでした。いやあ、3週間前に準決勝1stレグがあった後、ようやく今週の火水に2ndレグが行われ、4月18日にセビージャのカルトゥーハのピッチに立つファイナリスト2チームが決定したんですけどね。一足先にアトレティコが決勝進出を決めた後、水曜のアノエタでも1stレグ同様、レアル・ソシエダがアスレティックに1-0で勝って、コロナ禍の影響がまだあった2021年に無観客状態で掲げたトロフィーの懸かった大舞台に5年ぶりに戻って来ることに。

それが早くもこの週末に予行演習があるとはビックリですが、実はアトレティコは今年最初のリーガ戦でアノエタを訪れていて、いえ、アウェイ弱者が基調なのは、その時に始まった訳ではないんですけどね。セルロートのゴールで先制しながら、すぐにゲデスに同点にされ、試合は1-1の引き分けで終了。それがマタラッツオ新監督の初陣だったんですが、そこから彼らは2月中旬、ベルナベウでのレアル・マドリー戦が唯一の黒星という面替わり振りを見せることに。

え?でも今季はベティスがホームとしているカルトゥーハはピッチの芝の状態がいいせいで、コパ準々決勝でアトレティコが0-5のゴール祭りを披露した場所じゃないかって?うーん、確かにそうなんですが、どうも準決勝バルサ戦2ndレグの惨状を見た後ではあまり強気にはなれなくてねえ。実際、最後にアトレティコがコパ決勝に進出した2013年は会場がベルナベウだったこともあり、それまで何年も勝てていなかったマドリーダービーに勝利。
コケがアトレティコの旗をセンターサークルに広げる姿を私も我が目で見ることができたんですが、その前の2010年のコパ決勝はわざわざ、バルセロナまで遠征したにも関わらず、セビージャに負けてしまってねえ。それでもカンプ・ノウでファンに感謝の場内一周を延々としている選手たちの姿に呆気に取られたなんてことも。

よって、すでにホテルが1泊700ユーロ(約13万円)以上と高騰している中、現地観戦に赴く気はないんですが、まあ決勝までにはまだ、リーガやCLの試合が幾つもありますからね。その中でアトレティコが最近のジキルとハイド病を克服、自信を持って、コパ決勝に挑めるようになっているといいんですが、はあ。とりあえず、バルサとの2ndレグがどんなだったか、お伝えしていくことにしましょうか。
もちろん、メトロポリターノで4-0という大敗をしていた相手はラフィーニャとペドリも戻ったとあって、remontada(レモンターダ/逆転突破)を目指して、序盤から鬼のような攻勢をかけてきたんですが、いやあ、あんなに自陣に引き籠りっぱなしのアトレティコを見るのはいつ以来でしたかねえ。そのボールポゼッションが30%にも満たない状態は、前半12分に負傷でクンデがバルデに交代するアクシデントがあった後も変わらず、恐ろしいことにコケなど、自陣エリア近くでボールをフェルミンに贈り、GKムッソがparadon(パラドン/スーパーセーブ)を披露する破目に。他のシュートも相手の精度が悪くて助かっていたケースが多かったんですが、あれだけ撃たれていれば絶対、いつかはゴールになりますって。

とうとう30分、ショートのCKからジャマルがエリア内左奥に切り込み、そのラストパスをベルナルが押し込んで、まず1点目が入ったんですが、それでもたまに訪れたチャンスにグリーズマンのシュートが枠に嫌われなかったり、ルックマンのゴール前からのヘッドが決まっていれば、展開は少々、変わっていたかもしれないんですけどね。おまけに前半ロスタイムには、それまで一番いい守備を見せていたプビルがエリア内に侵入したペドリを倒してPKを献上。ハーフタイム入り直前にラフィーニャに2点目を奪われ、これは「前半に2点、後半に2点取ったらいい」というフリック監督の計画通りに事が進行しているようで、私も頭を抱えたものだったんですが…。

後半始まってすぐのフリアン・アルバレスのシュートもGKジョアン・ガルシアに容易くキャッチされてしまったアトレティコの主役はそれからもムッソのままで、いえ、何とか止めの1点を取ろうと、シメオネ監督も12分にはコケとルックマンをモリーナとセルロートに代え、ジョレンテを中盤に上げるお馴染みの手を打ったんですけどね。顔面骨折のレバンドフスキはいないとはいえ、バルサはフェラン・トーレスとフェルミンが下がっても、入るのがダニ・オルモとラッシュフォードとなれば、もう追加点を奪われる気しかしなかったのは私だけではない?

ただ、27分に3点目を挙げたのは意外にもMFのベルナルで、バルデもケガをして引っ込んだ後、カンセロが入れたクロスをゴール右前からvolea(ボレア/ボレーシュート)。doblete(ドブレテ/1試合2得点のこと)を達成していたんですが、もうこうなると後はパニックしかなかったかと。ただそこで幸いしたのは、前半から攻撃に全振りしていた相手の体力が尽き欠けていたことで、ええ、負傷から復帰して間のないペドリなどもう、走れなかった程でねえ。

おかげで長い6分のロスタイムも必死に守ったアトレティコは、19本(うち枠内9本)もシュートを浴びながら、3-0のスコアで踏み留まることに成功。総合スコア3-4で、バルサに昨季のリベンジをして、決勝進出できたのは私も嬉しいんですが、あんなにやられまくっていながら、試合後、「Es la derrota que más alegría me ha dado・エス・ラ・デロータ・ケ・マス・アレグリア・メ・ア・ダードー(ボクに最高の喜びをくれた敗戦)」(コケ)なんて言えてしまうのもどうかと。

ちなみにシメオネ監督に言わせると、「Nos sacaron el tiempo que necesitábamos para jugar/ノス・サカロン・エル・ティエンポー・ケ・ネセシタバモス・パラ・フガール(プレーに必要な時間を奪われた)。ホームではその時間があって、もっと強度の高いプレーもしたから、4点を取れた」そうで、ええ、週2試合ペースが延々と続いているアトレティコが常に100%の力を出すのが不可能なのはわかりますけどね。

でもだからって、専守防衛で楽をして、「Somos el Atlético y estamos destinados a sufrir/ソモス・エル・アトレティコ・イ・エスアモス・デスティナードス・ア・スフリル(ウチはアトレティコだ。苦しむことが運命づけられている)」(シメオネ監督)で片づけているのは、素直には頷けないところ。こんなんでよくも、「フリック監督にはCL準々決勝で会えるようにと言った」もんですが、まずは週末のソシエダ戦、そして来週火曜のCL16強対決トッテナム戦1stレグでゴールを奪いに行くアトレティコが戻ってくれるといいのですが。

え、今週ミッドウィークにプレーしたマドリッド勢は彼らだけではなかったんじゃないかって?その通りで、水曜には2月7日にエスタディオ・バジェカスのピッチがプレー不可能とされ、延期されていたラージョのリーガ23節オビエド戦があったんですが、うーん、あの頃のスペインは暴風雨季真っ只中でしたからね。むしろ外出しないで済んだのが私も有難かったぐらいだったんですが、だってえ、今はもうヒートテックもフリースも着ないでいいんですよ。時間も午後7時と早かったため、まだ明るい中、一見、完璧なピッチでキックオフとなったところ…。

いやあ、先週末は兄貴分のアトレティコが最後のプレーでゴールを決め、ようやく0-1で勝ったオビエド相手たからか、ラージョが先制点を挙げるのにもちょっと時間がかかったんですが、前半はしょっちゅう選手たちが滑って転んでをリピート。やっぱりまだ芝に何かあるのかと疑ったものでしたが、大丈夫。44分、ラティウのエリア外からのシュートはGKエスカンデルに弾かれてしまったものの、こぼれ球をデ・フルートスが押し込んで先制点をゲットすることに。

最下位生活が長く、もう崖っぷちにいるオビエドは普段より早く、後半頭からカソルラを投入してきたんですが、再開早々、アイハドがエリア内でアルバロ・ガルシアを倒していてはねえ。デ・フルートスがPKで効率よく2点目を挙げてくれたとなれば、もうこっちのものですって。17分にもアルバロ・ガルシアが2度撃ちで3点目を奪い、イニゴ・ペレス監督も先週、ラージョを今季限りで退団することを発表したチームのレジェンド、トレホを早い時間にピッチに入れて、ファンを喜ばすことができましたしね。でももしかして、アトレティコが0-1でしか勝てなかった相手に3-0で勝って、ブタルケに河岸を変えた先日の試合ではそのアトレティコも3-0で破っているラージョって、もしや兄貴分より強い?

まあ、後でイニゴ・ペレス監督も「Ha sido uno de los partidos más contundentes que hemos hecho/ア・シードー・ウノ・デ・ロス・パルティードス・マス・コントゥンデンテス・ケ・エモス・エッチョー(ウチがやった中で最もガツンと行けた試合の1つ)」と言っていたように、そう、いつもいつもラージョにゴールが入る訳ではないのも知っていますけどね。ただ、これで消化試合数が他のチームと並んだ彼らは降格圏から勝ち点6離れた12位に。日曜のセビージャ戦を済ませれば、心置きなく、来週木曜のコンフェレンスリーグ16強対決サムスンスポル戦1stレグのトルコ遠征に挑めるのは良かったかと。

そしてもう1つの弟分、ヘタフェはベルナベウでのマドリー戦20年ぶり勝利の余韻を持って、日曜にベティスをコリセウムに迎えるんですが、ええ、おかげでこちらも降格圏と勝ち点8差の11位ですからね。前節のセビージャダービーで、2点リードしながら、後半、セビージャに追いつかれ、失意のドローとなったペジェグリーニ監督のチームを恐れることもないんですが、もしかしたら、現在5位のベティスも来週木曜にEL16強対決パナシナイコス戦1stレグがあるため、ローテーションしてくれるかも。

一方、ヘタフェに負けて、オサスナ戦からリーガ2連敗となっているマドリーは、ええ、彼らは来週火曜にCL16強対決マンチェスター・シティ戦1sレグという大一番が控えていますからね。バライドスで待ち受けるセルタも木曜にEL16強対決オリンピック・リヨン戦1stレグがあるせいか、最初は土曜開催だったのを、金曜午後9時に繰り上げて、プレーすることになったんですが、いやあ、もうアルベロア監督のチームは今、恐ろしいことになっていてねえ。

というのもそのヘタフェ戦でケガから復帰したばかりのロドリゴがヒザの靭帯断裂という重傷を負ってしまい、今季&W杯絶望となってしまったからで、元々、現在リハビリ中の選手がミリトン、セバージョス、ベリンガム、エムバペと4人もいましたからね。ヘタフェ戦で久々の先発をしたアラバもふくらはぎを痛めてしまい、CL16強対決進出プレーオフ・ベンフィカ戦2ndレグでカマビンガと空中衝突し、首がまだ痛いアセンシオが出場を志願しているなんて話も。

更にはヘタフェ戦で累積警告となったハイセン、カレラス、そして退場したマスタントゥオノも出られないとなれば、木曜のバルデベバス(バラハス空港の近く)での練習にアルベロア監督が8人ものカンテラーノ(下部組織の選手)のヘルプを必要としたのも仕方ない?こんな頭数不足では、何せ相手はシーズン前半戦、ベルナベウで0-2と負けているセルタですからね。また勝てずに首位バルサとの勝ち点4の差が広がることになれば、いよいよリーガ逆転優勝の目も絶望的になってしまいますが…。ちなみにそのセルタに負けた12月も次戦がCLグループフェーズのマンC戦で、ベルナベウで2連敗というクライシスに陥った彼らなんですが、いやあ、本当に奇遇なことは結構あったりするんですね。

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