シーズン移行の結論は12月or先送り?/六川亨の日本サッカー見聞録
2023.11.30 15:00 Thu
JFA(日本サッカー協会)は、来年3月に改選を迎える会長選で、宮本恒靖JFA専務理事を唯一の会長候補として29日に発表した。宮本専務理事が立候補に必要な評議員16人以上の推薦を集めたからで、出馬が噂されていたJリーグチェアマン室特命担当オフィサーの鈴木徳昭氏は16人以上の推薦を集めることができなかった。
野々村芳和チェアマンは所用があり冒頭の挨拶だけで退席したが、「大きなテーマとして、どこにどれだけ投資すれば成長、伸びていけるか話し合われた。これもコロナが終息したおかげ」と無事に今シーズンの終わりを迎えられて安堵した様子だった。そして「Jの3チームはすべて初優勝。ルヴァンカップも福岡と初物づくし。いろんなクラブが頑張っている」と優勝チームの健闘を称えた。
そしてシーズン移行については「チェアマンになると決まった時からこの話は避けて通れないのではと考えていた。話し合いを始めていくなかで、クラブの人たち、ステークホルダーの考えを聞けて理解が深まった。日本のサッカーやJリーグの抱えている課題を発見できた、実りのあるいい時間だった。日本の良さを再認識できたし、Jリーグの社会的責任を共有できたことも良かった」と、シーズン移行について検討してきた今シーズンを振り返った。
それだけ、まだクリアしなければならない問題が多いということだろう。
今回の理事会では、シーズンを移行した際に、8月1週に開幕し、新たに12月2週までリーグ戦を実施してウインターブレイクに入り、2月の3週から再開する『案B'』が提案された。それでも降雪地域のクラブは試合が開催できずにアウェーゲームの連続になる可能性が高い。
Jリーグが各クラブに自己申告でどれだけ冬期はアウェーゲームが連続するのかヒアリングしたところ、札幌、新潟、仙台、秋田、山形、金沢、岩手、松本の8チームが12月2週はアウェーにならざるを得ないと回答した。さらに2月3週から最長3月3週まで、前記の8チームに加えて八戸、福島、長野、富山、鳥取の5チームが最低で2試合、最長で5試合がアウェーになると申告した。
今シーズンと比較すると、札幌はドームが使えるので2月でもアウェーの連戦はなかったが、新潟は2月開幕後の2試合が、松本は3月開幕後の3試合がアウェーの連戦だった。これがシーズン折り返しでのアウェー最長6連戦となるとどれだけハンデになるのか。試合結果にも影響を及ぼすことが大いに予想されるものの、事前に調べる術がないのが悩ましい。
シーズンをまたぐため、スタジアムの確保も課題の一つだ。
これまでは、シーズン終盤の11月中旬に翌年のリーグ戦38節(20チームのリーグと想定して)の試合日程を確定。12月上旬にシーズン終了後(昇降格が決定)、ホームとアウェーの調整を開始し、ここで各クラブにはイベント等を考慮して「ホームNG5試合」を申請してもらい、38-5=33節分のホーム会場を確保してもらう。そして年明けに“日程くん"を稼働させてホームとアウェーの組合せを確定し、各チームは19節分のホームを確保してきた。
自前のスタジアムがあるクラブは別として、公共のスタジアムでホームゲームを開催するクラブは行政から借りなければならない。その年度開始時期は4月となっていて、翌年の3月締めが日本のカレンダーになっている。シーズンを移行しなければ問題はないが、移行した時は事前に33節分を確保しておかなければならず、実際に必要な19節に加えて14節を余分に抑えなければならなくなる。そうなると、同じスタジアムを使う他団体にも影響を及ぼすし、コスト的にも無駄が生じかねない。
これらを解決するための方法として、Jの各カテゴリーは各20チーム、38節に統一されたため、前倒しして3月以前に翌シーズンのスタジアムを確保しようという案である。ただし、こちらは「確保できるクラブはできる限り多くのホームを確保する」ことと「確保できないクラブは最低19節分を確保する」ことを目標にしつつ、“日程くん"の進化、各スタジアムとの調整、運用の工夫をさらなるアップデート課題としてあげていた。
スタジアム確保については、来シーズンは広島と長崎、金沢にサッカー専用スタジアムが誕生するのは明るい話題と言えるだろう。
こうした環境面での課題に加え、シーズン移行期の大会はどうするかについても各クラブと意見交換をしているという。1.5シーズンとするのか0.5シーズンとするのか。リーグ戦か特別大会にするのか。そして昇降格はあるのかどうか、などだ。
シーズンを移行した場合はシーズンオフ(夏)だけでなく、ウインターブレイク(冬)でのキャンプ費用もかかる。こちらについてはJリーグも1クラブ平均1500万円として、100億円規模でサポートする予定だ。各クラブも恒常的な支援は求めていないという。しかし、スポーツができるエアドームや降雪エリアのスタジアム対応、降雪エリア以外の暑熱対策などを「本気でやるなら200億円は必要」(樋口順也フットボール本部長)というのが実情のようだ。
樋口本部長によると、シーズン移行を決定するのかどうか、「12月(19日)の理事会での決定方法は決まっていない」とのことだ。その前に12月6日の臨時実行委員会と12月14日の実行委員会で案を示しながら決めたいとしている。14日には地方クラブの意思確認も行う予定だ。
その上で、「12月の理事会が最終決定に変わりはない」としつつも、「まだ結論を出すべきではない、という結論になるかもしれない」とのコメントを残した。それだけシーズン移行は難事業だということだろう。
正直、1年間での議論・検証での決定は「移行ありき」が前提と思われても仕方がないだろう。ここはじっくりと、時間をかけてJリーグの未来を話し合う貴重な「移行期」にすべきではないだろうか。
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宮本専務理事は12月24日の評議員会で過半数の承認が得られれば会長就任が決定する。評議員会は都道府県協会やJリーグ、各連盟の代表など79人の評議員で構成されているが、鈴木氏への推薦が16人以下というのは意外だった。会長選が実施されないことで、両者のマニフェストを比較できないのも残念と言わざるを得ない。さてJリーグは11月28日に第11回の理事会を開き、24シーズンのJ3クラブライセンスの判定結果(レイラック滋賀に交付)と、シーズン移行の検討状況についての記者会見を実施した。そしてシーズン移行については「チェアマンになると決まった時からこの話は避けて通れないのではと考えていた。話し合いを始めていくなかで、クラブの人たち、ステークホルダーの考えを聞けて理解が深まった。日本のサッカーやJリーグの抱えている課題を発見できた、実りのあるいい時間だった。日本の良さを再認識できたし、Jリーグの社会的責任を共有できたことも良かった」と、シーズン移行について検討してきた今シーズンを振り返った。
ただし、「決着は明言できない。僕らも含めてバラバラだったのが一つの方向性を目指せたのではないかな」と改めてシーズン移行に含みを持たせた。
それだけ、まだクリアしなければならない問題が多いということだろう。
今回の理事会では、シーズンを移行した際に、8月1週に開幕し、新たに12月2週までリーグ戦を実施してウインターブレイクに入り、2月の3週から再開する『案B'』が提案された。それでも降雪地域のクラブは試合が開催できずにアウェーゲームの連続になる可能性が高い。
Jリーグが各クラブに自己申告でどれだけ冬期はアウェーゲームが連続するのかヒアリングしたところ、札幌、新潟、仙台、秋田、山形、金沢、岩手、松本の8チームが12月2週はアウェーにならざるを得ないと回答した。さらに2月3週から最長3月3週まで、前記の8チームに加えて八戸、福島、長野、富山、鳥取の5チームが最低で2試合、最長で5試合がアウェーになると申告した。
今シーズンと比較すると、札幌はドームが使えるので2月でもアウェーの連戦はなかったが、新潟は2月開幕後の2試合が、松本は3月開幕後の3試合がアウェーの連戦だった。これがシーズン折り返しでのアウェー最長6連戦となるとどれだけハンデになるのか。試合結果にも影響を及ぼすことが大いに予想されるものの、事前に調べる術がないのが悩ましい。
シーズンをまたぐため、スタジアムの確保も課題の一つだ。
これまでは、シーズン終盤の11月中旬に翌年のリーグ戦38節(20チームのリーグと想定して)の試合日程を確定。12月上旬にシーズン終了後(昇降格が決定)、ホームとアウェーの調整を開始し、ここで各クラブにはイベント等を考慮して「ホームNG5試合」を申請してもらい、38-5=33節分のホーム会場を確保してもらう。そして年明けに“日程くん"を稼働させてホームとアウェーの組合せを確定し、各チームは19節分のホームを確保してきた。
自前のスタジアムがあるクラブは別として、公共のスタジアムでホームゲームを開催するクラブは行政から借りなければならない。その年度開始時期は4月となっていて、翌年の3月締めが日本のカレンダーになっている。シーズンを移行しなければ問題はないが、移行した時は事前に33節分を確保しておかなければならず、実際に必要な19節に加えて14節を余分に抑えなければならなくなる。そうなると、同じスタジアムを使う他団体にも影響を及ぼすし、コスト的にも無駄が生じかねない。
これらを解決するための方法として、Jの各カテゴリーは各20チーム、38節に統一されたため、前倒しして3月以前に翌シーズンのスタジアムを確保しようという案である。ただし、こちらは「確保できるクラブはできる限り多くのホームを確保する」ことと「確保できないクラブは最低19節分を確保する」ことを目標にしつつ、“日程くん"の進化、各スタジアムとの調整、運用の工夫をさらなるアップデート課題としてあげていた。
スタジアム確保については、来シーズンは広島と長崎、金沢にサッカー専用スタジアムが誕生するのは明るい話題と言えるだろう。
こうした環境面での課題に加え、シーズン移行期の大会はどうするかについても各クラブと意見交換をしているという。1.5シーズンとするのか0.5シーズンとするのか。リーグ戦か特別大会にするのか。そして昇降格はあるのかどうか、などだ。
シーズンを移行した場合はシーズンオフ(夏)だけでなく、ウインターブレイク(冬)でのキャンプ費用もかかる。こちらについてはJリーグも1クラブ平均1500万円として、100億円規模でサポートする予定だ。各クラブも恒常的な支援は求めていないという。しかし、スポーツができるエアドームや降雪エリアのスタジアム対応、降雪エリア以外の暑熱対策などを「本気でやるなら200億円は必要」(樋口順也フットボール本部長)というのが実情のようだ。
樋口本部長によると、シーズン移行を決定するのかどうか、「12月(19日)の理事会での決定方法は決まっていない」とのことだ。その前に12月6日の臨時実行委員会と12月14日の実行委員会で案を示しながら決めたいとしている。14日には地方クラブの意思確認も行う予定だ。
その上で、「12月の理事会が最終決定に変わりはない」としつつも、「まだ結論を出すべきではない、という結論になるかもしれない」とのコメントを残した。それだけシーズン移行は難事業だということだろう。
正直、1年間での議論・検証での決定は「移行ありき」が前提と思われても仕方がないだろう。ここはじっくりと、時間をかけてJリーグの未来を話し合う貴重な「移行期」にすべきではないだろうか。
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