【プレミアリーグ シーズンプレビュー】史上初の4連覇目指すシティにライバルの包囲網
2023.08.11 12:45 Fri
2023-24シーズンのプレミアリーグが8月11日(金)に開幕を迎える。昨シーズンはアーセナルとの熾烈なタイトルレースを制したマンチェスター・シティが3連覇の偉業を達成。今シーズンは史上初の4連覇を目指すシティを、アーセナルやマンチェスター・ユナイテッド、昨季苦杯を舐めたリバプールらライバルが全力で阻止にいく構図のタイトル争いとなるはずだ。

昨季、悲願のビッグイヤー獲得を含め宿敵マンチェスター・ユナイテッド以来のシーズントレブルを達成した3連覇王者が優勝候補の筆頭だ。昨季はシーズンを通してアーセナルに首位の座を譲りながらも、優勝争いにおいて重要な終盤戦において傑出した勝負強さと安定感を見せつけ、クラブ史上初の3連覇を成し遂げたペップ・シティ。今シーズンはプレミアリーグ史上初の4連覇に向け、ライバルたちの包囲網突破を狙う。
今夏の移籍市場ではキャプテンのMFギュンドアンに加え、FWマフレズと近年の黄金期の立役者2選手が退団したものの、流出濃厚と思われたDFウォーカーとMFベルナルド・シウバの慰留に成功。一方、ギュンドアンの後釜にMFコバチッチ、ディフェンスラインに次代の世界最高DFの呼び声高いDFグヴァルディオルを補強。今後はマフレズの後釜となる右ウイング、MFパケタがトップターゲットとされる中盤の補強に動く可能性はあるものの、ディフェンスラインを中心にすでに世界屈指のスカッドを誇る。
CL決勝まで戦ったことによる休暇の短さやタフなアジアツアーの影響もあり、開幕直前のコミュニティ・シールドでアーセナルに敗れるなど、ここまでの仕上がりは今一つだが、例年スロースタートの傾向もあり、大きな問題はないはずだ。
◆最有力対抗馬も久々参戦CLの影響懸念~アーセナル~

その絶対王者に格の違いを見せつけられたものの、近年で最もポジティブなシーズンを過ごしたアーセナルは、今季は正真正銘のタイトルコンテンダーとして20シーズンぶりのリーグタイトルに再挑戦する。
青年指揮官アルテタと共に辛抱強く若手の育成、スカッド刷新を図った結果、昨季は最大の目標だったトップ4フィニッシュを大きく上回る2位フィニッシュという望外の結果を手にしたアーセナル。しかし、開幕からリーグタイトル獲得を至上命令としていた王者に比べ、シーズン中に目標を上方修正した感もあり、若手中心のスカッドは重要な終盤戦に脆さを露呈した。
今季はその反省を生かして開幕前からリーグタイトルを目標に掲げ、今夏の移籍市場ではシティとの争奪戦を制してMFライスを、チェルシーとアヤックスからMFハヴァーツ、DFティンバーという実力者をピンポイントで補強。さらに、守護神ラムズデールのライバルとしてGKラヤの獲得も決定的だ。MFジャカを除き主力に流出もなく、クラブとしてタイトル獲得への本気度を示している。
プレシーズン、前述のコミュニティ・シールドを含め、チームは昨季同様のロケットスタートを再現すべく早めの仕上がりを見せているが、9月中旬からのチャンピオンズリーグ(CL)開幕による過密日程を前にやや仕上げが早すぎる印象もあり、シーズンを通してのペース配分という部分はやや懸念材料。その反動か否かは不明だが、エースFWガブリエウ・ジェズスがすでに負傷離脱しており、アルテタ監督としてはDFサリバやDF冨安健洋が相次いで離脱した昨季終盤の二の舞は避けたいところだ。
◆テン・ハグ体制2年目で成熟進む。覇権奪還は若手アタッカー陣次第~マンチェスター・ユナイテッド~

シティとアーセナルの2強に水をあけられたものの、テン・ハグ体制1年目で3位フィニッシュに加え、久々のタイトルとなるEFLカップ制覇と上々のシーズンを過ごしたユナイテッド。テン・ハグ体制2年目で成熟進む中、今季はその差を埋めながら覇権奪還を目指す。
グレイザーファミリーの不誠実な対応によってクラブ売却は未だ実現せず、今夏の移籍市場ではライバルに後れを取る形となった。それでも、前守護神デ・ヘアの後釜に指揮官のアヤックス時代の教え子であるGKオナナを獲得し、中盤にチェルシーの生え抜きMFマウント、前線に“NEXTハーランド”の呼び声高いFWホイルンドを補強。あとは退団濃厚のMFフレッジ、DFマグワイアの後釜に、噂されるMFアムラバトやDFパヴァールかDFトディボを獲得できれば、補強はほぼ完了となる見込みだ。
昨季はカウンター主体も足元の技術に長けたオナナの加入でビルドアップの質は大きく向上し、指揮官が志向する本来のスタイルをようやく体現できるはずだ。これにより、対戦相手に応じてより柔軟な戦い方ができる点は大きなプラスだ。ただ、昨季58得点に終わった得点力の改善に関してはプレミア初挑戦のホイルンド次第という部分もあり、エースFWラッシュフォードのシーズンを通しての安定したパフォーマンスに、FWガルナチョやFWアントニー、FWサンチョら若手アタッカー陣の決定力向上が必須だ。
◆捲土重来期す名門~リバプール、トッテナム、チェルシー~

昨季はトップ4フィニッシュを逃し、ビッグ6の敗者となった名門3クラブは今夏の大幅なスカッド刷新を経て捲土重来を期す。
昨季、多くの負傷者に悩まされて5位フィニッシュとなったリバプールはクロップ体制を継続。ただ、今夏の移籍市場ではFWフィルミノ、MFミルナーが契約満了で、キャプテンのMFヘンダーソンとMFファビーニョがサウジアラビアからの巨額オファーを受け入れて電撃退団。近年の黄金期を支えた多くのベテランがチームを離れることになった。補強に関してはMFマク・アリスター、MFソボスライという人気株を早い段階で獲得したものの、以降の獲得交渉は難航。ただ、開幕直前にチェルシーと競合したMFカイセドに巨額オファーを掲示し、3人目の補強に迫っている模様。この移籍が決まれば、中盤の刷新は成功と考えていいはずだ。
前線ではエースFWサラーに加え、負傷明けのFWルイス・ディアスとFWジョタ、加入2年目で真価発揮が期待できるFWヌニェス、FWガクポと多士済々な面々が揃っており、現状ではハイリスク・ハイリターンのDFアレクサンダー=アーノルドの“偽SB”起用をうまくマネジメントできれば、十分に優勝争いに絡む力はある。
コンテ体制2年目をヨーロッパ圏外の8位で終えたトッテナムは、前セルティック指揮官のポステコグルー監督を新指揮官に招へい。新守護神ヴィカーリオ、MFマディソン、DFファン・デ・フェンら6人の新戦力を迎え、ローンバックのMFロ・チェルソ、DFウドジェらもプレシーズンに好パフォーマンスを披露し、カウンター一辺倒だった昨季から指揮官が志向するポゼッションスタイルへの移行は比較的スムーズに進む。しかし、開幕直前に絶対的エースFWケインのバイエルン移籍が決定的となり、状況は一変。今夏の早い段階で流出を覚悟していたものの、このタイミングでのエース流出が与える影響は計り知れない。
1億ユーロ超えと言われる売却益の使い道は現時点で不明だが、世界屈指の万能型ストライカーの穴を埋めるのは容易ではなく、昨季リーグ戦1ゴールに終わったFWリシャルリソンやもう一人のエースFWソン・フンミンの既存戦力の奮起に加え、FWデイビッドやFWオルバン、FWワイら若手がリストアップされる新ストライカー補強が今季の成功のカギを握る。
トッド・ベーリー氏率いる新オーナーの下で臨んだ昨季は無軌道な補強や指揮官交代の影響で12位フィニッシュという屈辱を味わったチェルシー。巻き返しを狙う今季はポチェッティーノ監督を新指揮官に据え、移籍市場においては良くも悪くも最も活発な動きを見せている。
膨れ上がったスカッド、FFPの問題を抱えるクラブはマウントやMFロフタス=チークといった生え抜きに加え、MFカンテやコバチッチ、ハヴァーツ、DFアスピリクエタら近年の主力や功労者を相次いで放出。代わって若手偏重の補強方針の下、MFエンクンクやFWジャクソン、MFウゴチュク、GKロベルト・サンチェス、DFディザジといった新戦力を補強。大胆なスカッド刷新に踏み切った。また、今後も新ストライカー、手薄な中盤の補強を継続する見込みだ。若手育成に長けたアルゼンチン人指揮官だが、様変わりしたスカッド掌握にはそれ相応の時間を要する可能性が高く、シーズン序盤で躓くようなことがあれば、経験不足のチームの軌道修正は困難を極めることになる。
◆欧州との二足の草鞋履き更なる躍進狙う~ニューカッスル、ブライトン、アストン・ビラ~

昨季はビッグ6に比肩するパフォーマンスを見せ、それぞれヨーロッパコンペティション行きを決めたニューカッスル、ブライトン、アストン・ビラの3クラブはその欧州の大会と並行しつつ、リーグ戦での成功を目指す。
サウジアラビア政府系ファンドの買収以降、エディ・ハウ監督の卓越した手腕と的確な補強によって躍進を見せるニューカッスルは悲願のCL出場権を獲得。さらなる躍進を目指す新シーズンに向けてはミランの主力MFトナーリ、国内の有望な若手であるMFバーンズ、DFリヴラメントを補強。手薄なポジションにしっかりとテコ入れを図った。
この補強によって各ポジションに主力クラスを2人ずつ揃えることになったが、CLとの二足の草鞋を履くタフなシーズンにおいて、昨季機能していたリーグ屈指のハイインテンシティのスタイルをシーズン通して維持できるかはやや疑問が残る。そのため、ハウ監督が本来志向するポゼッションスタイルでのゲームコントロールなどマイナーチェンジは不可欠か。
ビッグ6らに資金力では遠く及ばないものの、有能なフロントの下で適切な指揮官、選手の発掘によってクラブ史上初のヨーロッパリーグ(EL)出場権獲得にこぎ着けたブライトン。智将デ・ゼルビが率いる昨季の6位チームは、今夏もマク・アリスター、サンチェスに加え、カイセドという主力を引き抜かれる形となったが、ミルナーやDFイゴール、MFダフード、FWジョアン・ペドロら実力者を補強。さらに、移籍市場閉幕までにアヤックスのMFクドゥスの獲得にも動く模様だ。
前述の主力流出に加え、特異なポゼッションスタイルに対する対戦相手の分析も進んでおり、今季は真価が試されるシーズンとなる。そういった中、新戦力と共にチーム浮沈のカギを握るのが、MF三笘薫だ。ここ最近ではシティからの関心も報じられるが、現時点では残留が既定路線となっており、今やリーグ屈指のアタッカーとして認知されるシーガルズの左の翼は対戦相手の徹底マークが予想される中、攻撃を牽引する仕事が求められる。
2019-20シーズンのプレミアリーグ復帰以降、積極的に資金を投下して着実にチーム力を上げているアストン・ビラ。昨季はシーズン途中のウナイ・エメリ監督招へいが大きなターニングポイントとなり、後半戦で快進撃を見せると、最終的にカンファレンスリーグ(ECL)出場権を獲得。今夏、セビージャの辣腕スポーツディレクターのモンチ氏を招へいしたクラブは、DFパウ・トーレス、MFティーレマンス、FWムサ・ディアビと国内外のビッグクラブが獲得を狙ったタレントを獲得。さらに、MFブエンディアの長期離脱の影響もあり、ガラタサライのMFザニオーロの獲得にも動く。相手の長所を消すことに長けた指揮官の分析力と、カウンターを主体としたハイインテンシティのスタイルで今季もビッグ6を脅かすことが期待される。
◆予想困難な残留争い~その他クラブ~

上位争いは前述のクラブに限られる可能性が高いが、ヨーロッパで最も資金力と競争力を持つプレミアリーグにおいてはそれ以外のクラブも侮れない実力者が多く、中位争いや残留争いも予想が困難だ。
現状ではプレミアリーグ初昇格のルートン・タウンやシェフィールド・ユナイテッドの昇格組2クラブに、FFPの問題で多くの主力が流出した上、ロペテギ監督の電撃退任に伴い、前ボーンマスのオニール監督を急遽招へいしたウォルバ―ハンプトン辺りが難しい戦いを強いられそうだ。また、エースFWザハの退団に加え、MFオリーズにもビッグクラブ移籍の噂がある、老将ホジソン率いるクリスタル・パレス辺りも苦戦が見込まれる。
一方、コンパニ監督の下で昨季チャンピオンシップ(イングランド2部)を制したバーンリーや、マルコ・シウバ監督がサウジアラビア行きを拒否して残留したフルアム、前ラージョ指揮官のイラオラ監督を招へいし、逸材MFアレックス・スコットやDFアーロンズ、DFケルケズといった興味深いタレントを補強したボーンマスといったクラブの躍進が期待される。
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◆史上初の4連覇へ目立った死角なし~マンチェスター・シティ~
Getty Images
昨季、悲願のビッグイヤー獲得を含め宿敵マンチェスター・ユナイテッド以来のシーズントレブルを達成した3連覇王者が優勝候補の筆頭だ。昨季はシーズンを通してアーセナルに首位の座を譲りながらも、優勝争いにおいて重要な終盤戦において傑出した勝負強さと安定感を見せつけ、クラブ史上初の3連覇を成し遂げたペップ・シティ。今シーズンはプレミアリーグ史上初の4連覇に向け、ライバルたちの包囲網突破を狙う。
CL決勝まで戦ったことによる休暇の短さやタフなアジアツアーの影響もあり、開幕直前のコミュニティ・シールドでアーセナルに敗れるなど、ここまでの仕上がりは今一つだが、例年スロースタートの傾向もあり、大きな問題はないはずだ。
昨季は[3-2-4-1]の可変式の布陣やDFストーンズの“偽CB”と新たな引き出しを見せたグアルディオラ監督は、現状のスカッドに合わせて[4-3-1-2]気味のオプションを試すなど今季も新たなスタイルの追求に余念なく、加入2年目でさらなる爆発が期待される怪物FWハーランドの存在を含め、今季も熾烈タイトルレースの大本命だ。
◆最有力対抗馬も久々参戦CLの影響懸念~アーセナル~

Getty Images
その絶対王者に格の違いを見せつけられたものの、近年で最もポジティブなシーズンを過ごしたアーセナルは、今季は正真正銘のタイトルコンテンダーとして20シーズンぶりのリーグタイトルに再挑戦する。
青年指揮官アルテタと共に辛抱強く若手の育成、スカッド刷新を図った結果、昨季は最大の目標だったトップ4フィニッシュを大きく上回る2位フィニッシュという望外の結果を手にしたアーセナル。しかし、開幕からリーグタイトル獲得を至上命令としていた王者に比べ、シーズン中に目標を上方修正した感もあり、若手中心のスカッドは重要な終盤戦に脆さを露呈した。
今季はその反省を生かして開幕前からリーグタイトルを目標に掲げ、今夏の移籍市場ではシティとの争奪戦を制してMFライスを、チェルシーとアヤックスからMFハヴァーツ、DFティンバーという実力者をピンポイントで補強。さらに、守護神ラムズデールのライバルとしてGKラヤの獲得も決定的だ。MFジャカを除き主力に流出もなく、クラブとしてタイトル獲得への本気度を示している。
プレシーズン、前述のコミュニティ・シールドを含め、チームは昨季同様のロケットスタートを再現すべく早めの仕上がりを見せているが、9月中旬からのチャンピオンズリーグ(CL)開幕による過密日程を前にやや仕上げが早すぎる印象もあり、シーズンを通してのペース配分という部分はやや懸念材料。その反動か否かは不明だが、エースFWガブリエウ・ジェズスがすでに負傷離脱しており、アルテタ監督としてはDFサリバやDF冨安健洋が相次いで離脱した昨季終盤の二の舞は避けたいところだ。
◆テン・ハグ体制2年目で成熟進む。覇権奪還は若手アタッカー陣次第~マンチェスター・ユナイテッド~

Getty Images
シティとアーセナルの2強に水をあけられたものの、テン・ハグ体制1年目で3位フィニッシュに加え、久々のタイトルとなるEFLカップ制覇と上々のシーズンを過ごしたユナイテッド。テン・ハグ体制2年目で成熟進む中、今季はその差を埋めながら覇権奪還を目指す。
グレイザーファミリーの不誠実な対応によってクラブ売却は未だ実現せず、今夏の移籍市場ではライバルに後れを取る形となった。それでも、前守護神デ・ヘアの後釜に指揮官のアヤックス時代の教え子であるGKオナナを獲得し、中盤にチェルシーの生え抜きMFマウント、前線に“NEXTハーランド”の呼び声高いFWホイルンドを補強。あとは退団濃厚のMFフレッジ、DFマグワイアの後釜に、噂されるMFアムラバトやDFパヴァールかDFトディボを獲得できれば、補強はほぼ完了となる見込みだ。
昨季はカウンター主体も足元の技術に長けたオナナの加入でビルドアップの質は大きく向上し、指揮官が志向する本来のスタイルをようやく体現できるはずだ。これにより、対戦相手に応じてより柔軟な戦い方ができる点は大きなプラスだ。ただ、昨季58得点に終わった得点力の改善に関してはプレミア初挑戦のホイルンド次第という部分もあり、エースFWラッシュフォードのシーズンを通しての安定したパフォーマンスに、FWガルナチョやFWアントニー、FWサンチョら若手アタッカー陣の決定力向上が必須だ。
◆捲土重来期す名門~リバプール、トッテナム、チェルシー~

Getty Images
昨季はトップ4フィニッシュを逃し、ビッグ6の敗者となった名門3クラブは今夏の大幅なスカッド刷新を経て捲土重来を期す。
昨季、多くの負傷者に悩まされて5位フィニッシュとなったリバプールはクロップ体制を継続。ただ、今夏の移籍市場ではFWフィルミノ、MFミルナーが契約満了で、キャプテンのMFヘンダーソンとMFファビーニョがサウジアラビアからの巨額オファーを受け入れて電撃退団。近年の黄金期を支えた多くのベテランがチームを離れることになった。補強に関してはMFマク・アリスター、MFソボスライという人気株を早い段階で獲得したものの、以降の獲得交渉は難航。ただ、開幕直前にチェルシーと競合したMFカイセドに巨額オファーを掲示し、3人目の補強に迫っている模様。この移籍が決まれば、中盤の刷新は成功と考えていいはずだ。
前線ではエースFWサラーに加え、負傷明けのFWルイス・ディアスとFWジョタ、加入2年目で真価発揮が期待できるFWヌニェス、FWガクポと多士済々な面々が揃っており、現状ではハイリスク・ハイリターンのDFアレクサンダー=アーノルドの“偽SB”起用をうまくマネジメントできれば、十分に優勝争いに絡む力はある。
コンテ体制2年目をヨーロッパ圏外の8位で終えたトッテナムは、前セルティック指揮官のポステコグルー監督を新指揮官に招へい。新守護神ヴィカーリオ、MFマディソン、DFファン・デ・フェンら6人の新戦力を迎え、ローンバックのMFロ・チェルソ、DFウドジェらもプレシーズンに好パフォーマンスを披露し、カウンター一辺倒だった昨季から指揮官が志向するポゼッションスタイルへの移行は比較的スムーズに進む。しかし、開幕直前に絶対的エースFWケインのバイエルン移籍が決定的となり、状況は一変。今夏の早い段階で流出を覚悟していたものの、このタイミングでのエース流出が与える影響は計り知れない。
1億ユーロ超えと言われる売却益の使い道は現時点で不明だが、世界屈指の万能型ストライカーの穴を埋めるのは容易ではなく、昨季リーグ戦1ゴールに終わったFWリシャルリソンやもう一人のエースFWソン・フンミンの既存戦力の奮起に加え、FWデイビッドやFWオルバン、FWワイら若手がリストアップされる新ストライカー補強が今季の成功のカギを握る。
トッド・ベーリー氏率いる新オーナーの下で臨んだ昨季は無軌道な補強や指揮官交代の影響で12位フィニッシュという屈辱を味わったチェルシー。巻き返しを狙う今季はポチェッティーノ監督を新指揮官に据え、移籍市場においては良くも悪くも最も活発な動きを見せている。
膨れ上がったスカッド、FFPの問題を抱えるクラブはマウントやMFロフタス=チークといった生え抜きに加え、MFカンテやコバチッチ、ハヴァーツ、DFアスピリクエタら近年の主力や功労者を相次いで放出。代わって若手偏重の補強方針の下、MFエンクンクやFWジャクソン、MFウゴチュク、GKロベルト・サンチェス、DFディザジといった新戦力を補強。大胆なスカッド刷新に踏み切った。また、今後も新ストライカー、手薄な中盤の補強を継続する見込みだ。若手育成に長けたアルゼンチン人指揮官だが、様変わりしたスカッド掌握にはそれ相応の時間を要する可能性が高く、シーズン序盤で躓くようなことがあれば、経験不足のチームの軌道修正は困難を極めることになる。
◆欧州との二足の草鞋履き更なる躍進狙う~ニューカッスル、ブライトン、アストン・ビラ~

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昨季はビッグ6に比肩するパフォーマンスを見せ、それぞれヨーロッパコンペティション行きを決めたニューカッスル、ブライトン、アストン・ビラの3クラブはその欧州の大会と並行しつつ、リーグ戦での成功を目指す。
サウジアラビア政府系ファンドの買収以降、エディ・ハウ監督の卓越した手腕と的確な補強によって躍進を見せるニューカッスルは悲願のCL出場権を獲得。さらなる躍進を目指す新シーズンに向けてはミランの主力MFトナーリ、国内の有望な若手であるMFバーンズ、DFリヴラメントを補強。手薄なポジションにしっかりとテコ入れを図った。
この補強によって各ポジションに主力クラスを2人ずつ揃えることになったが、CLとの二足の草鞋を履くタフなシーズンにおいて、昨季機能していたリーグ屈指のハイインテンシティのスタイルをシーズン通して維持できるかはやや疑問が残る。そのため、ハウ監督が本来志向するポゼッションスタイルでのゲームコントロールなどマイナーチェンジは不可欠か。
ビッグ6らに資金力では遠く及ばないものの、有能なフロントの下で適切な指揮官、選手の発掘によってクラブ史上初のヨーロッパリーグ(EL)出場権獲得にこぎ着けたブライトン。智将デ・ゼルビが率いる昨季の6位チームは、今夏もマク・アリスター、サンチェスに加え、カイセドという主力を引き抜かれる形となったが、ミルナーやDFイゴール、MFダフード、FWジョアン・ペドロら実力者を補強。さらに、移籍市場閉幕までにアヤックスのMFクドゥスの獲得にも動く模様だ。
前述の主力流出に加え、特異なポゼッションスタイルに対する対戦相手の分析も進んでおり、今季は真価が試されるシーズンとなる。そういった中、新戦力と共にチーム浮沈のカギを握るのが、MF三笘薫だ。ここ最近ではシティからの関心も報じられるが、現時点では残留が既定路線となっており、今やリーグ屈指のアタッカーとして認知されるシーガルズの左の翼は対戦相手の徹底マークが予想される中、攻撃を牽引する仕事が求められる。
2019-20シーズンのプレミアリーグ復帰以降、積極的に資金を投下して着実にチーム力を上げているアストン・ビラ。昨季はシーズン途中のウナイ・エメリ監督招へいが大きなターニングポイントとなり、後半戦で快進撃を見せると、最終的にカンファレンスリーグ(ECL)出場権を獲得。今夏、セビージャの辣腕スポーツディレクターのモンチ氏を招へいしたクラブは、DFパウ・トーレス、MFティーレマンス、FWムサ・ディアビと国内外のビッグクラブが獲得を狙ったタレントを獲得。さらに、MFブエンディアの長期離脱の影響もあり、ガラタサライのMFザニオーロの獲得にも動く。相手の長所を消すことに長けた指揮官の分析力と、カウンターを主体としたハイインテンシティのスタイルで今季もビッグ6を脅かすことが期待される。
◆予想困難な残留争い~その他クラブ~

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上位争いは前述のクラブに限られる可能性が高いが、ヨーロッパで最も資金力と競争力を持つプレミアリーグにおいてはそれ以外のクラブも侮れない実力者が多く、中位争いや残留争いも予想が困難だ。
現状ではプレミアリーグ初昇格のルートン・タウンやシェフィールド・ユナイテッドの昇格組2クラブに、FFPの問題で多くの主力が流出した上、ロペテギ監督の電撃退任に伴い、前ボーンマスのオニール監督を急遽招へいしたウォルバ―ハンプトン辺りが難しい戦いを強いられそうだ。また、エースFWザハの退団に加え、MFオリーズにもビッグクラブ移籍の噂がある、老将ホジソン率いるクリスタル・パレス辺りも苦戦が見込まれる。
一方、コンパニ監督の下で昨季チャンピオンシップ(イングランド2部)を制したバーンリーや、マルコ・シウバ監督がサウジアラビア行きを拒否して残留したフルアム、前ラージョ指揮官のイラオラ監督を招へいし、逸材MFアレックス・スコットやDFアーロンズ、DFケルケズといった興味深いタレントを補強したボーンマスといったクラブの躍進が期待される。
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10シーズンチームの中心としてプレーしてきたベルギー代表MFケビン・デ・ブライネが退団することが決定したマンチェスター・シティ。後任候補が新たに浮上した。 『The Athletic』によると、その選手はノッティンガム・フォレストのイングランド代表MFモーガン・ギブス=ホワイト(25)とのことだ。 2022年8月にウォルバーハンプトンからフォレストに加入したギブス=ホワイト。創造性に溢れるプレーぶりは今シーズン一気に評価を上げ、プレミアリーグで27試合に出場し5ゴール9アシストを記録。リバプール、アーセナルに次ぐ3位に位置するチームを牽引している。 FAカップでも準決勝に駒を進めるなど、チームの好成績に大きく貢献しているギブス=ホワイト。イングランド代表も2024年9月にデビューしており、注目が高まっている。 ギブス=ホワイトはゲームメイクやチャンスメイクに長けているだけでなく、エネルギーやリーダーシップ、アグレッシブな中盤でのプレーもファンを魅了。フォレストのサッカーを支えている柱となっている。 今シーズン苦しんでいるシティにおいて、最大の要因とも言えるのがスペイン代表MFロドリの不在。バロンドーラーがケガで長期離脱していることで、その存在感の大きさを痛感しているしティは、ビルドアップやポゼッションに長けているだけでなく、フィジカルを活かしたプレーができるギブス=ホワイトを求めると見られている。 ゴールやアシストの数字だけを見れば多いとは言えないが、攻撃を司るプレーは十分い果たしており、フォレストの攻撃においては最も重要な役割を担うギブス=ホワイト。すぐにフィットとはいかない可能性が高いが、将来性とポテンシャルを考えれば、補強に値する選手と見られている。 2025.04.09 23:45 Wed3
【プレミア注目プレビュー】シティ司令塔のラストダンスに注目集まるマンチェスター・ダービー
プレミアリーグ第31節、マンチェスター・ユナイテッドvsマンチェスター・シティが、日本時間6日24:30にオールド・トラッフォードでキックオフされる。シティ司令塔のラストダンスに注目集まる今季2度目のマンチェスター・ダービーだ。 13位のユナイテッド(勝ち点37)は前節、ノッティンガム・フォレストとの一戦に0-1の敗戦。古巣対戦のエランガに恩返しゴールを許すと、後半最終盤の猛攻も実らず、上位相手に力負けとなった。週明けにはヨーロッパリーグ(EL)準々決勝1stレグのリヨン戦を控えるなか、ホーム開催のダービーマッチに臨む。現状でのプライオリティは間違いなくリヨン戦にあるが、体たらくが続くシーズンにおいてダービーでの不甲斐ない戦いは許されない。より守備的に堅守速攻型のスタイルで臨む可能性が高く、割り切ってターンオーバーを行うプランもなくはないが、ベストメンバーで宿敵を撃破しELに弾みを付けるような戦いを期待したい。 対する5位のシティ(勝ち点51)は前節、下位に沈むレスター・シティ相手に2-0の勝利を収めてリーグ3戦ぶりの白星。熾烈なチャンピオンズリーグ(CL)出場権争いにおいて5位をキープした。スコアは2-0も、80%近いボール支配率に相手シュートを1本に抑え込むなど余力を残した上での完勝だった。エースのハーランドら一部主力を欠くも、マーモウシュやオライリーら代役がしっかりと活躍しており、敵地でのダービーへ自信を持って臨めるはずだ。 なお、近年のリーグ戦績、タイトル数ではシティが圧倒的に優位に立っているが、プレシーズンマッチ的な色合いが強いコミュニティ・シールドはシティが勝利も、昨季のFAカップ決勝、直近のリーグ戦ではユナイテッドがいずれも2-1で勝利を収めている。そのため、今回の対戦も拮抗した展開も想定される。ちなみに、ユナイテッドがシティ相手にシーズンダブルを決めたのは2019-20シーズン。ホームで5シーズンぶりのダブル達成となるか。 ◆マンチェスター・ユナイテッド◆ 【3-4-2-1】 ▽予想スタメン <div style="text-align:center;"><img src="https://image.ultra-soccer.jp/1200/img/2025/get20250406_100_tw2.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;">©超ワールドサッカー<hr></div> GK:オナナ DF:マズラウィ、マグワイア、ヨロ MF:ダロト、カゼミロ、ウガルテ、ドルグ MF:ブルーノ・フェルナンデス、ガルナチョ FW:ホイルンド 負傷者:DFマルティネス、ショー、エバンス、ヘヴン、デ・リフト、MFメイヌー、FWアマド 出場停止者:なし 出場停止者はいない。負傷者に関してはメイヌーに復帰の可能性がある一方、打撲の影響でデ・リフトの状態が懸念される。 ELを考慮してターンオーバーの可能性もあるが、前述のメンバーの起用を予想。デ・リフトが間に合う場合はマグワイアに代わって中央に入る可能性が高い。前線ではマウントやザークツィーにもチャンスがありそうだ。 ◆マンチェスター・シティ◆ 【4-2-3-1】 ▽予想スタメン <div style="text-align:center;"><img src="https://image.ultra-soccer.jp/1200/img/2025/get20250406_100_tw3.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;">©超ワールドサッカー<hr></div> GK:エデルソン DF:マテウス・ヌネス、クサノフ、ルベン・ディアス、グヴァルディオル MF:ギュンドアン、ニコ・ゴンサレス MF:サヴィオ、フォーデン、ドク FW:マーモウシュ 負傷者:DFストーンズ、アケ、アカンジ、MFロドリ、FWハーランド 出場停止者:なし 出場停止者はいない。負傷者に関しても直近数試合と大きな変化はない。 スタメンは前述の11名を予想。ディフェンスラインではリコ・ルイス、オライリー。中盤から前ではコバチッチ、ベルナルド・シウバ、デ・ブライネ、グリーリッシュとベテランの起用も十分にある。 ★注目選手 ◆マンチェスター・ユナイテッド:MFブルーノ・フェルナンデス <div style="text-align:center;"><img src="https://image.ultra-soccer.jp/1200/img/2025/get20250406_100_tw4.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;">Getty Images<hr></div> 赤い悪魔の主将の矜持で花道は飾らせない。リーグ戦での低迷に、週明けのリヨン戦の重要度を考えると、ユナイテッドにとっては難しいモチベーションで挑むダービーとなるが、ホーム開催の宿敵との一戦ということもあり、メンバー構成いかんは別として気概を示したい。 そのダービーの重要性を最も知る一人であるポルトガル代表MFとしては普段通りに中盤と前線のリンクマン、チャンスメイカー、フィニッシャーというマルチタスクをこなしながら、気持ちの部分でもチームを鼓舞し続けたい。 堅守速攻のスタイルで臨む可能性が高いなか、被カウンターの局面で脆さもある相手に対して、高精度のパスやクロスから味方の決定機を演出したい。 ◆マンチェスター・シティ:MFケビン・デ・ブライネ <div style="text-align:center;"><img src="https://image.ultra-soccer.jp/1200/img/2025/get20250406_100_tw5.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;">Getty Images<hr></div> 敵地で挑むラストダービー。リーグテーブル上は大一番とは言えない今回のダービーだが、シティにとってはCL出場権争いとともに、在籍10年のレジェンドMFのラストダービーという部分で非常に重要な一戦となる。 デ・ブライネは今回のダービー2日前に自身のSNSを通じて今季限りでのシティズンズ退団を発表。2015年8月にヴォルフスブルクから加入し、ここまで公式戦413試合で106ゴール174アシストを記録。6度のプレミアリーグ制覇や、CL初制覇など15のタイトルを獲得。2022-23シーズンにはトレブル“3冠”を達成し、シティで獲得できるタイトルを全て手にしていた。 しかし、近年は度重なる負傷によるパフォーマンスの低下もあって以前のような絶対的な存在にはなり切れず、33歳MFはこのタイミングでマンチェスターを離れる決断を下した。 なお、プレミアリーグでのダービーは15試合に出場し6勝4分け5敗の戦績。3ゴール4アシストと好相性とは言い難いが、2ゴール1アシストの活躍で4-1の快勝に導いた2022年3月の対戦以来の躍動を期待したい。 2025.04.06 15:20 Sun4
【プレミアリーグ第32節プレビュー】マドリー戦控えるアーセナルはビーズと対峙、首位リバプールはハマーズ戦
先週末に行われた前節は首位リバプールを始め上位5チームがいずれも勝ち点を取りこぼす波乱の一節となった。また、最下位のサウサンプトンが7節を残してプレミアリーグ史上最速での2部降格が決定した。 UEFAコンペティションの準々決勝2ndレグを控えるなか、今節はヨーロッパ参戦組の戦いに注目だ。 1stレグで明暗分かれたチャンピオンズリーグ(CL)勢の2位アーセナルと7位のアストン・ビラは、それぞれ12位のブレントフォード、最下位のサウサンプトンと対戦する。 リーグ前節はエバートン相手に消化不良の1-1のドローに終わったアーセナルだが、CL準々決勝1stレグでは前大会王者レアル・マドリーとのホームゲームで会心の3-0の勝利を挙げた。攻守両面で相手を上回った上、MFライスの圧巻の直接FK2発にMFメリーノにもゴールが生まれ、先勝に成功した。 アウェイチームに多くの悪夢を味わわせてきた要塞サンティアゴ・ベルナベウでのリターンレグに向けて細心の注意を払う必要はあるが、ベスト4進出へ大きなアドバンテージを得たことは間違いない。今回のホームゲームでは難敵ビーズ相手に勝ちたい気はやまやまではあるが、リーグ逆転優勝とCL準決勝進出を天秤にかけて割り切ったターンオーバーもありか。MFヌワネリやMFジョルジーニョ、FWスターリングらの活躍にも期待しつつ、良い形でマドリー戦に繋げたい。 アストン・ビラは前節、ノッティンガム・フォレストとの上位対決を2-1で制して公式戦7連勝を達成。しかし、CLではパリ・サンジェルマン(PSG)とのアウェイゲームではFWロジャーズのゴールで先制に成功も、そこからの3連続失点によって厳しい1-3の敗戦となった。これで公式戦連勝が「7」でストップしたエメリのチームは、ホーム開催の2ndレグで逆転を目指す。 プレミアリーグの来季CL出場権が5チームに確定したなか、熾烈なCL出場権争いにおいて勝ち点3を積み上げる必要があり、PSGとのリターンレグへ極端なターンオーバーは難しい。ただ、前線に関しては豊富なタレントが揃っており、やりくり上手のスペイン人指揮官が最適の組み合わせを選び出し、降格が決定したセインツ相手に勝ち切りたい。 一方、降格決定後初のホームゲームとなるセインツはユリッチ監督を即時解任。シーズン残りはラスク暫定監督の下で戦うことになる。DF菅原由勢の起用法にも注目したい。 ヨーロッパリーグ(EL)参戦組の13位マンチェスター・ユナイテッド、14位のトッテナムは5位のニューカッスル、17位のウォルバーハンプトンと対戦する。 ユナイテッドは前節、膠着のマンチェスター・シティとのダービーマッチを0-0のドローで終え、リーグ2戦未勝利に。続くEL準々決勝1stレグでは敵地リヨンに乗り込んだ一戦を2-2のドローで終えた。DFヨロの加入後初ゴールにFWザークツィーのゴールで一時逆転に成功したが、GKオナナの2失点に絡むプレーなどもあり、後半アディショナルタイムの土壇場被弾で先勝を逃した。 ホームでのリターンレグへ弾みを付ける公式戦4試合ぶりの白星がほしい一方、リーグ戦でのUEFAコンペティション出場権獲得の現実味は薄く割り切ってターンオーバーを敢行する可能性は高そうだ。ただ、公式戦4連勝と絶好調のマグパイズ相手に大敗となれば、肝心のリヨン戦に響くことになるためメンバーは入れ替えながらもしっかりとした戦いは見せたい。 一方、スパーズは前節、サウサンプトン相手に3-1の快勝。リーグ4戦ぶりの白星を挙げた。ただ、ホームで戦ったELではフランクフルト相手に1-1のドローに終わった。開始早々に先制を許したなか、DFペドロ・ポロのゴールで同点に追いつき以降は再三の決定機を作り出したが、相手GKの好守にも阻まれて先勝を逃した。2ndレグを敵地で戦うためユナイテッド以上にシビアな状況となっており、リーグ3連勝と好調を維持するウルブスとのアウェイゲームではターンオーバーが濃厚だ。一部主力を温存しつつ、総力戦で挑む2ndレグへFWリシャルリソンやMFグレイ、FWオドベールら控え組の状態を上げたいところだ。 カンファレンスリーグ(ECL)参戦の4位チェルシーは前節、ブレントフォードとゴールレスドロー。リーグ連勝を逃した。ただ、ECLではレギア・ワルシャワとのアウェイゲームをFWジョージのファーストチーム初ゴールにFWマドゥエケの2ゴールの活躍で3-0の先勝。大きなアドバンテージを得てロンドンに帰還した。降格圏の18位イプスウィッチ・タウンをホームで迎え撃つ一戦ではECLで温存した主力を起用し、しっかりと勝ち切ってCL出場権獲得へ勝ち点3を積み上げたい。 前節、フルアム相手にまさかの2-3の敗戦を喫して優勝へ足踏みとなった首位のリバプールは、16位のウェストハムとのホームゲームでバウンスバックの勝利を目指す。フルアム戦では相手のパフォーマンスを褒めるべき部分はあったものの、らしくないミスも目立っておりその修正は必要だ。ただ、11日にはエースFWサラーの契約延長という最高の知らせが発表され、良い雰囲気が期待されるアンフィールドで白星を取り戻したい。 マンチェスター・ダービーをドローで終えて6位後退のマンチェスター・シティは、MF鎌田大地を擁する好調の11位クリスタル・パレスとのホームゲームに臨む。今季限りで退団のMFデ・ブライネのラストダービーというモチベーションはあったが、全体的なパフォーマンスは振るわず。同じ[3-4-2-1]で堅守速攻を貫くソリッドな相手に対して、メンバーの入れ替えも行いながらしっかりと結果を残したい。 対するパレスは前節、ブライトン&ホーヴ・アルビオン相手に2-1の勝利。FWエンケティア、DFグエイの退場は余計だったが、エースFWマテタに負傷明け後初のゴールが生まれるなど実りある内容での勝利でもあった。その一戦で決勝点の起点、相手の退場を誘発するなど存在感を示した鎌田には2試合連続のスタメンを期待したい。 そのパレスに敗れた9位のブライトンは、リーグ連敗という苦境のなかで19位レスター・シティ相手に公式戦5試合ぶりの勝利を目指す。対戦相手はリーグ8連敗と泥沼の状況にあるが、この一戦では出場停止のDFファン・ヘッケに加え、パレス戦の接触プレーで痛めたMF三笘薫にも欠場の可能性が報じられており、チームとしては総力戦で勝ち点3を掴みたい。 《プレミアリーグ第32節》 ▽4/12(土) 《20:30》 マンチェスター・シティ vs クリスタル・パレス 《23:00》 ブライトン vs レスター・シティ ノッティンガム・フォレスト vs エバートン サウサンプトン vs アストン・ビラ 《25:30》 アーセナル vs ブレントフォード ▽4/13(日) 《22:00》 チェルシー vs イプスウィッチ リバプール vs ウェストハム ウォルバーハンプトン vs トッテナム 《24:30》 ニューカッスル vs マンチェスター・ユナイテッド ▽4/14(月) 《28:00》 ボーンマス vs フルアム 2025.04.12 12:00 Sat5