【プレミアリーグ シーズンプレビュー】史上初の4連覇目指すシティにライバルの包囲網
2023.08.11 12:45 Fri
2023-24シーズンのプレミアリーグが8月11日(金)に開幕を迎える。昨シーズンはアーセナルとの熾烈なタイトルレースを制したマンチェスター・シティが3連覇の偉業を達成。今シーズンは史上初の4連覇を目指すシティを、アーセナルやマンチェスター・ユナイテッド、昨季苦杯を舐めたリバプールらライバルが全力で阻止にいく構図のタイトル争いとなるはずだ。
◆史上初の4連覇へ目立った死角なし~マンチェスター・シティ~

昨季、悲願のビッグイヤー獲得を含め宿敵マンチェスター・ユナイテッド以来のシーズントレブルを達成した3連覇王者が優勝候補の筆頭だ。
昨季はシーズンを通してアーセナルに首位の座を譲りながらも、優勝争いにおいて重要な終盤戦において傑出した勝負強さと安定感を見せつけ、クラブ史上初の3連覇を成し遂げたペップ・シティ。今シーズンはプレミアリーグ史上初の4連覇に向け、ライバルたちの包囲網突破を狙う。
今夏の移籍市場ではキャプテンのMFギュンドアンに加え、FWマフレズと近年の黄金期の立役者2選手が退団したものの、流出濃厚と思われたDFウォーカーとMFベルナルド・シウバの慰留に成功。一方、ギュンドアンの後釜にMFコバチッチ、ディフェンスラインに次代の世界最高DFの呼び声高いDFグヴァルディオルを補強。今後はマフレズの後釜となる右ウイング、MFパケタがトップターゲットとされる中盤の補強に動く可能性はあるものの、ディフェンスラインを中心にすでに世界屈指のスカッドを誇る。
CL決勝まで戦ったことによる休暇の短さやタフなアジアツアーの影響もあり、開幕直前のコミュニティ・シールドでアーセナルに敗れるなど、ここまでの仕上がりは今一つだが、例年スロースタートの傾向もあり、大きな問題はないはずだ。
◆最有力対抗馬も久々参戦CLの影響懸念~アーセナル~

その絶対王者に格の違いを見せつけられたものの、近年で最もポジティブなシーズンを過ごしたアーセナルは、今季は正真正銘のタイトルコンテンダーとして20シーズンぶりのリーグタイトルに再挑戦する。
青年指揮官アルテタと共に辛抱強く若手の育成、スカッド刷新を図った結果、昨季は最大の目標だったトップ4フィニッシュを大きく上回る2位フィニッシュという望外の結果を手にしたアーセナル。しかし、開幕からリーグタイトル獲得を至上命令としていた王者に比べ、シーズン中に目標を上方修正した感もあり、若手中心のスカッドは重要な終盤戦に脆さを露呈した。
今季はその反省を生かして開幕前からリーグタイトルを目標に掲げ、今夏の移籍市場ではシティとの争奪戦を制してMFライスを、チェルシーとアヤックスからMFハヴァーツ、DFティンバーという実力者をピンポイントで補強。さらに、守護神ラムズデールのライバルとしてGKラヤの獲得も決定的だ。MFジャカを除き主力に流出もなく、クラブとしてタイトル獲得への本気度を示している。
プレシーズン、前述のコミュニティ・シールドを含め、チームは昨季同様のロケットスタートを再現すべく早めの仕上がりを見せているが、9月中旬からのチャンピオンズリーグ(CL)開幕による過密日程を前にやや仕上げが早すぎる印象もあり、シーズンを通してのペース配分という部分はやや懸念材料。その反動か否かは不明だが、エースFWガブリエウ・ジェズスがすでに負傷離脱しており、アルテタ監督としてはDFサリバやDF冨安健洋が相次いで離脱した昨季終盤の二の舞は避けたいところだ。
◆テン・ハグ体制2年目で成熟進む。覇権奪還は若手アタッカー陣次第~マンチェスター・ユナイテッド~

シティとアーセナルの2強に水をあけられたものの、テン・ハグ体制1年目で3位フィニッシュに加え、久々のタイトルとなるEFLカップ制覇と上々のシーズンを過ごしたユナイテッド。テン・ハグ体制2年目で成熟進む中、今季はその差を埋めながら覇権奪還を目指す。
グレイザーファミリーの不誠実な対応によってクラブ売却は未だ実現せず、今夏の移籍市場ではライバルに後れを取る形となった。それでも、前守護神デ・ヘアの後釜に指揮官のアヤックス時代の教え子であるGKオナナを獲得し、中盤にチェルシーの生え抜きMFマウント、前線に“NEXTハーランド”の呼び声高いFWホイルンドを補強。あとは退団濃厚のMFフレッジ、DFマグワイアの後釜に、噂されるMFアムラバトやDFパヴァールかDFトディボを獲得できれば、補強はほぼ完了となる見込みだ。
昨季はカウンター主体も足元の技術に長けたオナナの加入でビルドアップの質は大きく向上し、指揮官が志向する本来のスタイルをようやく体現できるはずだ。これにより、対戦相手に応じてより柔軟な戦い方ができる点は大きなプラスだ。ただ、昨季58得点に終わった得点力の改善に関してはプレミア初挑戦のホイルンド次第という部分もあり、エースFWラッシュフォードのシーズンを通しての安定したパフォーマンスに、FWガルナチョやFWアントニー、FWサンチョら若手アタッカー陣の決定力向上が必須だ。
◆捲土重来期す名門~リバプール、トッテナム、チェルシー~

昨季はトップ4フィニッシュを逃し、ビッグ6の敗者となった名門3クラブは今夏の大幅なスカッド刷新を経て捲土重来を期す。
昨季、多くの負傷者に悩まされて5位フィニッシュとなったリバプールはクロップ体制を継続。ただ、今夏の移籍市場ではFWフィルミノ、MFミルナーが契約満了で、キャプテンのMFヘンダーソンとMFファビーニョがサウジアラビアからの巨額オファーを受け入れて電撃退団。近年の黄金期を支えた多くのベテランがチームを離れることになった。補強に関してはMFマク・アリスター、MFソボスライという人気株を早い段階で獲得したものの、以降の獲得交渉は難航。ただ、開幕直前にチェルシーと競合したMFカイセドに巨額オファーを掲示し、3人目の補強に迫っている模様。この移籍が決まれば、中盤の刷新は成功と考えていいはずだ。
前線ではエースFWサラーに加え、負傷明けのFWルイス・ディアスとFWジョタ、加入2年目で真価発揮が期待できるFWヌニェス、FWガクポと多士済々な面々が揃っており、現状ではハイリスク・ハイリターンのDFアレクサンダー=アーノルドの“偽SB”起用をうまくマネジメントできれば、十分に優勝争いに絡む力はある。
コンテ体制2年目をヨーロッパ圏外の8位で終えたトッテナムは、前セルティック指揮官のポステコグルー監督を新指揮官に招へい。新守護神ヴィカーリオ、MFマディソン、DFファン・デ・フェンら6人の新戦力を迎え、ローンバックのMFロ・チェルソ、DFウドジェらもプレシーズンに好パフォーマンスを披露し、カウンター一辺倒だった昨季から指揮官が志向するポゼッションスタイルへの移行は比較的スムーズに進む。しかし、開幕直前に絶対的エースFWケインのバイエルン移籍が決定的となり、状況は一変。今夏の早い段階で流出を覚悟していたものの、このタイミングでのエース流出が与える影響は計り知れない。
1億ユーロ超えと言われる売却益の使い道は現時点で不明だが、世界屈指の万能型ストライカーの穴を埋めるのは容易ではなく、昨季リーグ戦1ゴールに終わったFWリシャルリソンやもう一人のエースFWソン・フンミンの既存戦力の奮起に加え、FWデイビッドやFWオルバン、FWワイら若手がリストアップされる新ストライカー補強が今季の成功のカギを握る。
トッド・ベーリー氏率いる新オーナーの下で臨んだ昨季は無軌道な補強や指揮官交代の影響で12位フィニッシュという屈辱を味わったチェルシー。巻き返しを狙う今季はポチェッティーノ監督を新指揮官に据え、移籍市場においては良くも悪くも最も活発な動きを見せている。
膨れ上がったスカッド、FFPの問題を抱えるクラブはマウントやMFロフタス=チークといった生え抜きに加え、MFカンテやコバチッチ、ハヴァーツ、DFアスピリクエタら近年の主力や功労者を相次いで放出。代わって若手偏重の補強方針の下、MFエンクンクやFWジャクソン、MFウゴチュク、GKロベルト・サンチェス、DFディザジといった新戦力を補強。大胆なスカッド刷新に踏み切った。また、今後も新ストライカー、手薄な中盤の補強を継続する見込みだ。若手育成に長けたアルゼンチン人指揮官だが、様変わりしたスカッド掌握にはそれ相応の時間を要する可能性が高く、シーズン序盤で躓くようなことがあれば、経験不足のチームの軌道修正は困難を極めることになる。
◆欧州との二足の草鞋履き更なる躍進狙う~ニューカッスル、ブライトン、アストン・ビラ~

昨季はビッグ6に比肩するパフォーマンスを見せ、それぞれヨーロッパコンペティション行きを決めたニューカッスル、ブライトン、アストン・ビラの3クラブはその欧州の大会と並行しつつ、リーグ戦での成功を目指す。
サウジアラビア政府系ファンドの買収以降、エディ・ハウ監督の卓越した手腕と的確な補強によって躍進を見せるニューカッスルは悲願のCL出場権を獲得。さらなる躍進を目指す新シーズンに向けてはミランの主力MFトナーリ、国内の有望な若手であるMFバーンズ、DFリヴラメントを補強。手薄なポジションにしっかりとテコ入れを図った。
この補強によって各ポジションに主力クラスを2人ずつ揃えることになったが、CLとの二足の草鞋を履くタフなシーズンにおいて、昨季機能していたリーグ屈指のハイインテンシティのスタイルをシーズン通して維持できるかはやや疑問が残る。そのため、ハウ監督が本来志向するポゼッションスタイルでのゲームコントロールなどマイナーチェンジは不可欠か。
ビッグ6らに資金力では遠く及ばないものの、有能なフロントの下で適切な指揮官、選手の発掘によってクラブ史上初のヨーロッパリーグ(EL)出場権獲得にこぎ着けたブライトン。智将デ・ゼルビが率いる昨季の6位チームは、今夏もマク・アリスター、サンチェスに加え、カイセドという主力を引き抜かれる形となったが、ミルナーやDFイゴール、MFダフード、FWジョアン・ペドロら実力者を補強。さらに、移籍市場閉幕までにアヤックスのMFクドゥスの獲得にも動く模様だ。
前述の主力流出に加え、特異なポゼッションスタイルに対する対戦相手の分析も進んでおり、今季は真価が試されるシーズンとなる。そういった中、新戦力と共にチーム浮沈のカギを握るのが、MF三笘薫だ。ここ最近ではシティからの関心も報じられるが、現時点では残留が既定路線となっており、今やリーグ屈指のアタッカーとして認知されるシーガルズの左の翼は対戦相手の徹底マークが予想される中、攻撃を牽引する仕事が求められる。
2019-20シーズンのプレミアリーグ復帰以降、積極的に資金を投下して着実にチーム力を上げているアストン・ビラ。昨季はシーズン途中のウナイ・エメリ監督招へいが大きなターニングポイントとなり、後半戦で快進撃を見せると、最終的にカンファレンスリーグ(ECL)出場権を獲得。今夏、セビージャの辣腕スポーツディレクターのモンチ氏を招へいしたクラブは、DFパウ・トーレス、MFティーレマンス、FWムサ・ディアビと国内外のビッグクラブが獲得を狙ったタレントを獲得。さらに、MFブエンディアの長期離脱の影響もあり、ガラタサライのMFザニオーロの獲得にも動く。相手の長所を消すことに長けた指揮官の分析力と、カウンターを主体としたハイインテンシティのスタイルで今季もビッグ6を脅かすことが期待される。
◆予想困難な残留争い~その他クラブ~

上位争いは前述のクラブに限られる可能性が高いが、ヨーロッパで最も資金力と競争力を持つプレミアリーグにおいてはそれ以外のクラブも侮れない実力者が多く、中位争いや残留争いも予想が困難だ。
現状ではプレミアリーグ初昇格のルートン・タウンやシェフィールド・ユナイテッドの昇格組2クラブに、FFPの問題で多くの主力が流出した上、ロペテギ監督の電撃退任に伴い、前ボーンマスのオニール監督を急遽招へいしたウォルバ―ハンプトン辺りが難しい戦いを強いられそうだ。また、エースFWザハの退団に加え、MFオリーズにもビッグクラブ移籍の噂がある、老将ホジソン率いるクリスタル・パレス辺りも苦戦が見込まれる。
一方、コンパニ監督の下で昨季チャンピオンシップ(イングランド2部)を制したバーンリーや、マルコ・シウバ監督がサウジアラビア行きを拒否して残留したフルアム、前ラージョ指揮官のイラオラ監督を招へいし、逸材MFアレックス・スコットやDFアーロンズ、DFケルケズといった興味深いタレントを補強したボーンマスといったクラブの躍進が期待される。
◆史上初の4連覇へ目立った死角なし~マンチェスター・シティ~

Getty Images
昨季、悲願のビッグイヤー獲得を含め宿敵マンチェスター・ユナイテッド以来のシーズントレブルを達成した3連覇王者が優勝候補の筆頭だ。
昨季はシーズンを通してアーセナルに首位の座を譲りながらも、優勝争いにおいて重要な終盤戦において傑出した勝負強さと安定感を見せつけ、クラブ史上初の3連覇を成し遂げたペップ・シティ。今シーズンはプレミアリーグ史上初の4連覇に向け、ライバルたちの包囲網突破を狙う。
CL決勝まで戦ったことによる休暇の短さやタフなアジアツアーの影響もあり、開幕直前のコミュニティ・シールドでアーセナルに敗れるなど、ここまでの仕上がりは今一つだが、例年スロースタートの傾向もあり、大きな問題はないはずだ。
昨季は[3-2-4-1]の可変式の布陣やDFストーンズの“偽CB”と新たな引き出しを見せたグアルディオラ監督は、現状のスカッドに合わせて[4-3-1-2]気味のオプションを試すなど今季も新たなスタイルの追求に余念なく、加入2年目でさらなる爆発が期待される怪物FWハーランドの存在を含め、今季も熾烈タイトルレースの大本命だ。
◆最有力対抗馬も久々参戦CLの影響懸念~アーセナル~

Getty Images
その絶対王者に格の違いを見せつけられたものの、近年で最もポジティブなシーズンを過ごしたアーセナルは、今季は正真正銘のタイトルコンテンダーとして20シーズンぶりのリーグタイトルに再挑戦する。
青年指揮官アルテタと共に辛抱強く若手の育成、スカッド刷新を図った結果、昨季は最大の目標だったトップ4フィニッシュを大きく上回る2位フィニッシュという望外の結果を手にしたアーセナル。しかし、開幕からリーグタイトル獲得を至上命令としていた王者に比べ、シーズン中に目標を上方修正した感もあり、若手中心のスカッドは重要な終盤戦に脆さを露呈した。
今季はその反省を生かして開幕前からリーグタイトルを目標に掲げ、今夏の移籍市場ではシティとの争奪戦を制してMFライスを、チェルシーとアヤックスからMFハヴァーツ、DFティンバーという実力者をピンポイントで補強。さらに、守護神ラムズデールのライバルとしてGKラヤの獲得も決定的だ。MFジャカを除き主力に流出もなく、クラブとしてタイトル獲得への本気度を示している。
プレシーズン、前述のコミュニティ・シールドを含め、チームは昨季同様のロケットスタートを再現すべく早めの仕上がりを見せているが、9月中旬からのチャンピオンズリーグ(CL)開幕による過密日程を前にやや仕上げが早すぎる印象もあり、シーズンを通してのペース配分という部分はやや懸念材料。その反動か否かは不明だが、エースFWガブリエウ・ジェズスがすでに負傷離脱しており、アルテタ監督としてはDFサリバやDF冨安健洋が相次いで離脱した昨季終盤の二の舞は避けたいところだ。
◆テン・ハグ体制2年目で成熟進む。覇権奪還は若手アタッカー陣次第~マンチェスター・ユナイテッド~

Getty Images
シティとアーセナルの2強に水をあけられたものの、テン・ハグ体制1年目で3位フィニッシュに加え、久々のタイトルとなるEFLカップ制覇と上々のシーズンを過ごしたユナイテッド。テン・ハグ体制2年目で成熟進む中、今季はその差を埋めながら覇権奪還を目指す。
グレイザーファミリーの不誠実な対応によってクラブ売却は未だ実現せず、今夏の移籍市場ではライバルに後れを取る形となった。それでも、前守護神デ・ヘアの後釜に指揮官のアヤックス時代の教え子であるGKオナナを獲得し、中盤にチェルシーの生え抜きMFマウント、前線に“NEXTハーランド”の呼び声高いFWホイルンドを補強。あとは退団濃厚のMFフレッジ、DFマグワイアの後釜に、噂されるMFアムラバトやDFパヴァールかDFトディボを獲得できれば、補強はほぼ完了となる見込みだ。
昨季はカウンター主体も足元の技術に長けたオナナの加入でビルドアップの質は大きく向上し、指揮官が志向する本来のスタイルをようやく体現できるはずだ。これにより、対戦相手に応じてより柔軟な戦い方ができる点は大きなプラスだ。ただ、昨季58得点に終わった得点力の改善に関してはプレミア初挑戦のホイルンド次第という部分もあり、エースFWラッシュフォードのシーズンを通しての安定したパフォーマンスに、FWガルナチョやFWアントニー、FWサンチョら若手アタッカー陣の決定力向上が必須だ。
◆捲土重来期す名門~リバプール、トッテナム、チェルシー~

Getty Images
昨季はトップ4フィニッシュを逃し、ビッグ6の敗者となった名門3クラブは今夏の大幅なスカッド刷新を経て捲土重来を期す。
昨季、多くの負傷者に悩まされて5位フィニッシュとなったリバプールはクロップ体制を継続。ただ、今夏の移籍市場ではFWフィルミノ、MFミルナーが契約満了で、キャプテンのMFヘンダーソンとMFファビーニョがサウジアラビアからの巨額オファーを受け入れて電撃退団。近年の黄金期を支えた多くのベテランがチームを離れることになった。補強に関してはMFマク・アリスター、MFソボスライという人気株を早い段階で獲得したものの、以降の獲得交渉は難航。ただ、開幕直前にチェルシーと競合したMFカイセドに巨額オファーを掲示し、3人目の補強に迫っている模様。この移籍が決まれば、中盤の刷新は成功と考えていいはずだ。
前線ではエースFWサラーに加え、負傷明けのFWルイス・ディアスとFWジョタ、加入2年目で真価発揮が期待できるFWヌニェス、FWガクポと多士済々な面々が揃っており、現状ではハイリスク・ハイリターンのDFアレクサンダー=アーノルドの“偽SB”起用をうまくマネジメントできれば、十分に優勝争いに絡む力はある。
コンテ体制2年目をヨーロッパ圏外の8位で終えたトッテナムは、前セルティック指揮官のポステコグルー監督を新指揮官に招へい。新守護神ヴィカーリオ、MFマディソン、DFファン・デ・フェンら6人の新戦力を迎え、ローンバックのMFロ・チェルソ、DFウドジェらもプレシーズンに好パフォーマンスを披露し、カウンター一辺倒だった昨季から指揮官が志向するポゼッションスタイルへの移行は比較的スムーズに進む。しかし、開幕直前に絶対的エースFWケインのバイエルン移籍が決定的となり、状況は一変。今夏の早い段階で流出を覚悟していたものの、このタイミングでのエース流出が与える影響は計り知れない。
1億ユーロ超えと言われる売却益の使い道は現時点で不明だが、世界屈指の万能型ストライカーの穴を埋めるのは容易ではなく、昨季リーグ戦1ゴールに終わったFWリシャルリソンやもう一人のエースFWソン・フンミンの既存戦力の奮起に加え、FWデイビッドやFWオルバン、FWワイら若手がリストアップされる新ストライカー補強が今季の成功のカギを握る。
トッド・ベーリー氏率いる新オーナーの下で臨んだ昨季は無軌道な補強や指揮官交代の影響で12位フィニッシュという屈辱を味わったチェルシー。巻き返しを狙う今季はポチェッティーノ監督を新指揮官に据え、移籍市場においては良くも悪くも最も活発な動きを見せている。
膨れ上がったスカッド、FFPの問題を抱えるクラブはマウントやMFロフタス=チークといった生え抜きに加え、MFカンテやコバチッチ、ハヴァーツ、DFアスピリクエタら近年の主力や功労者を相次いで放出。代わって若手偏重の補強方針の下、MFエンクンクやFWジャクソン、MFウゴチュク、GKロベルト・サンチェス、DFディザジといった新戦力を補強。大胆なスカッド刷新に踏み切った。また、今後も新ストライカー、手薄な中盤の補強を継続する見込みだ。若手育成に長けたアルゼンチン人指揮官だが、様変わりしたスカッド掌握にはそれ相応の時間を要する可能性が高く、シーズン序盤で躓くようなことがあれば、経験不足のチームの軌道修正は困難を極めることになる。
◆欧州との二足の草鞋履き更なる躍進狙う~ニューカッスル、ブライトン、アストン・ビラ~

Getty Images
昨季はビッグ6に比肩するパフォーマンスを見せ、それぞれヨーロッパコンペティション行きを決めたニューカッスル、ブライトン、アストン・ビラの3クラブはその欧州の大会と並行しつつ、リーグ戦での成功を目指す。
サウジアラビア政府系ファンドの買収以降、エディ・ハウ監督の卓越した手腕と的確な補強によって躍進を見せるニューカッスルは悲願のCL出場権を獲得。さらなる躍進を目指す新シーズンに向けてはミランの主力MFトナーリ、国内の有望な若手であるMFバーンズ、DFリヴラメントを補強。手薄なポジションにしっかりとテコ入れを図った。
この補強によって各ポジションに主力クラスを2人ずつ揃えることになったが、CLとの二足の草鞋を履くタフなシーズンにおいて、昨季機能していたリーグ屈指のハイインテンシティのスタイルをシーズン通して維持できるかはやや疑問が残る。そのため、ハウ監督が本来志向するポゼッションスタイルでのゲームコントロールなどマイナーチェンジは不可欠か。
ビッグ6らに資金力では遠く及ばないものの、有能なフロントの下で適切な指揮官、選手の発掘によってクラブ史上初のヨーロッパリーグ(EL)出場権獲得にこぎ着けたブライトン。智将デ・ゼルビが率いる昨季の6位チームは、今夏もマク・アリスター、サンチェスに加え、カイセドという主力を引き抜かれる形となったが、ミルナーやDFイゴール、MFダフード、FWジョアン・ペドロら実力者を補強。さらに、移籍市場閉幕までにアヤックスのMFクドゥスの獲得にも動く模様だ。
前述の主力流出に加え、特異なポゼッションスタイルに対する対戦相手の分析も進んでおり、今季は真価が試されるシーズンとなる。そういった中、新戦力と共にチーム浮沈のカギを握るのが、MF三笘薫だ。ここ最近ではシティからの関心も報じられるが、現時点では残留が既定路線となっており、今やリーグ屈指のアタッカーとして認知されるシーガルズの左の翼は対戦相手の徹底マークが予想される中、攻撃を牽引する仕事が求められる。
2019-20シーズンのプレミアリーグ復帰以降、積極的に資金を投下して着実にチーム力を上げているアストン・ビラ。昨季はシーズン途中のウナイ・エメリ監督招へいが大きなターニングポイントとなり、後半戦で快進撃を見せると、最終的にカンファレンスリーグ(ECL)出場権を獲得。今夏、セビージャの辣腕スポーツディレクターのモンチ氏を招へいしたクラブは、DFパウ・トーレス、MFティーレマンス、FWムサ・ディアビと国内外のビッグクラブが獲得を狙ったタレントを獲得。さらに、MFブエンディアの長期離脱の影響もあり、ガラタサライのMFザニオーロの獲得にも動く。相手の長所を消すことに長けた指揮官の分析力と、カウンターを主体としたハイインテンシティのスタイルで今季もビッグ6を脅かすことが期待される。
◆予想困難な残留争い~その他クラブ~

Getty Images
上位争いは前述のクラブに限られる可能性が高いが、ヨーロッパで最も資金力と競争力を持つプレミアリーグにおいてはそれ以外のクラブも侮れない実力者が多く、中位争いや残留争いも予想が困難だ。
現状ではプレミアリーグ初昇格のルートン・タウンやシェフィールド・ユナイテッドの昇格組2クラブに、FFPの問題で多くの主力が流出した上、ロペテギ監督の電撃退任に伴い、前ボーンマスのオニール監督を急遽招へいしたウォルバ―ハンプトン辺りが難しい戦いを強いられそうだ。また、エースFWザハの退団に加え、MFオリーズにもビッグクラブ移籍の噂がある、老将ホジソン率いるクリスタル・パレス辺りも苦戦が見込まれる。
一方、コンパニ監督の下で昨季チャンピオンシップ(イングランド2部)を制したバーンリーや、マルコ・シウバ監督がサウジアラビア行きを拒否して残留したフルアム、前ラージョ指揮官のイラオラ監督を招へいし、逸材MFアレックス・スコットやDFアーロンズ、DFケルケズといった興味深いタレントを補強したボーンマスといったクラブの躍進が期待される。
マンチェスター・シティの関連記事
プレミアリーグの関連記事
|
マンチェスター・シティの人気記事ランキング
1
CLのGS組み合わせ決定! バイエルン、バルサ、インテル同居の死の組! 長谷部&鎌田vs守田の日本人対決実現へ
25日、チャンピオンズリーグ(CL)グループステージ抽選会がトルコのイスタンブールで行われた。 昨シーズンはリバプールを決勝で破ったレアル・マドリーの最多14度目の優勝で幕を閉じたCL。今夏の各クラブの積極補強もあり、例年以上の混戦が見込まれる。 その覇権争いの行方を左右するグループステージの抽選会がファイナルの開催地イスタンブールで行われた。 今グループステージ最激戦区となったのは、ブンデスリーガ王者のバイエルンと今夏積極補強を敢行したバルセロナ、昨季セリエA2位のインテル、チェコ王者のビクトリア・プルゼニが同居するグループCに。FWロベルト・レヴァンドフスキにとってはいきなりの古巣対戦に。 また、グループAはCL準優勝のリバプール、EL準優勝のレンジャーズのイギリス勢に、アヤックスとナポリが同居する激戦区に。 大会連覇を目指すレアル・マドリーは、昨季も同居したシャフタール・ドネツクに加え、RBライプツィヒ、FW古橋亨梧、FW前田大然、MF旗手怜央、MF井手口陽介の日本人選手4選手を擁するセルティックと同じグループFに入った。 その他の日本人選手ではEL王者フランクフルトのMF鎌田大地とMF長谷場誠、スポルティングCPのMF守田英正がトッテナム、マルセイユと同じグループDに入り、グループステージでの日本人対決が実現することに。 なお、今年11月のカタール・ワールドカップ開催に伴い、今季のグループステージは過密スケジュールとなり、第1節が9月6.7日に行われ、最終節が11月1.2日に終了する予定だ。今回決定したグループステージ抽選結果は以下の通り。 ◆グループA アヤックス(オランダ) リバプール(イングランド) ナポリ(イタリア) レンジャーズ(スコットランド) ◆グループB ポルト(ポルトガル) アトレティコ・マドリー(スペイン) レバークーゼン(ドイツ) クラブ・ブルージュ(ベルギー) ◆グループC バイエルン(ドイツ) バルセロナ(スペイン) インテル(イタリア) ビクトリア・プルゼニ(チェコ) ◆グループD フランクフルト(ドイツ) トッテナム(イングランド) スポルティングCP(ポルトガル) マルセイユ(フランス) ◆グループE ミラン(イタリア) チェルシー(イングランド) レッドブル・ザルツブルク(オーストリア) ディナモ・ザグレブ(クロアチア) ◆グループF レアル・マドリー(スペイン) RBライプツィヒ(ドイツ) シャフタール・ドネツク(ウクライナ) セルティック(スコットランド) ◆グループG マンチェスター・シティ(イングランド) セビージャ(スペイン) ドルトムント(ドイツ) コペンハーゲン(デンマーク) ◆グループH パリ・サンジェルマン(フランス) ユベントス(イタリア) ベンフィカ(ポルトガル) マッカビ・ハイファ(イスラエル) 2022.08.26 02:20 Fri2
シティとミランが対戦、遺恨を残したペップから声をかけられたイブラヒモビッチは...
ズラタン・イブラヒモビッチ氏が、ジョゼップ・グアルディオラ監督に対して気まずそうな態度をとった。ドイツ『ビルト』が伝える。 イブラヒモビッチとペップ・グアルディオラ。 両者は2009-10シーズン、バルセロナのトップチームで共闘することになり、当時インテルからサミュエル・エトー氏との実質トレードで加入したイブラ氏は、ペップ・バルサ2年目の最前線でスタメン起用され始めた。 しかし、序盤戦のゴール量産から次第にコンディションを落とし、グアルディオラ監督はイブラ氏のベンチスタートを増やすことに。 結局、加入から1年でミランにレンタル放出され、さらにその1年後に完全移籍移行。 現在に至る「ミランの王・イブラヒモビッチ」が生まれることとなったが、イブラ氏はグアルディオラ監督に対する恨み辛みを、のちに余すことなく、何度も口にしている。 「グアルディオラは幼稚なコーチ…話しかけられることなどないし、見ようともしない…俺を見るなり逃げ失せるような男だ…」 時は流れて2024年夏、7月28日。 イブラ氏がシニアアドバイザーを務めるミランと、グアルディオラ監督率いるマンチェスター・シティが、米国でのプレシーズンマッチにて対戦。ミランが3-2と勝利した。 グアルディオラ監督から立ち寄る形で試合前に顔を合わせた両者。イブラ氏が作った笑顔はどう見てもよそよそしく、握手とハグもそこそこに、ペップの話しかけにも目線を合わせるのがしんどかったような印象が。 おそらくグアルディオラ監督のほうは、過去の確執をそこまで気にするタイプではないが、イブラ氏の「気まずい…」という表情は本当に印象的。 1年限りとなったバルセロナでの共闘から14年、イブラ氏は当時のグアルディオラ監督の年齢(38〜39歳)を超え、今や自身もチームを監督する側の立場。TVカメラも近づいてきたなか、大人の対応をした格好か。 <span class="paragraph-title">【動画】ペップに声をかけられ、この上なく気まずそうなイブラヒモビッチ</span> <span data-other-div="movie"></span> <blockquote class="twitter-tweet"><p lang="in" dir="ltr">Ibrahimovic tampak menghindari kontak mata dan Guardiola pun coba bersikap 'senormal' mungkin. Para fans sepakbola menilai, Zlatan Ibrahimovic tampak masih tidak menyukai Pep Guardiola <br><br>Ibrahimovic pernah terang-terangan menulis Guardiola sebagai pelatih yang tidak punya… <a href="https://t.co/skUHPxR4Wv">pic.twitter.com/skUHPxR4Wv</a></p>— detiksport (@detiksport) <a href="https://twitter.com/detiksport/status/1819330955708190859?ref_src=twsrc%5Etfw">August 2, 2024</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> 2024.08.02 20:35 Fri3
ウォーカー「欠けていたのはアシストとゴールだけ」、近年プレミアで“過小評価選手”の代表格に挙がる元スパーズMFに新たな賛辞
近年のプレミアリーグで“過小評価されていた選手”として常に名前が挙がる元スパーズMFに、新たな賞賛の言葉が送られている。イギリス『Sport Bible』が伝えている。 2022年に広州富力(現・広州城)で現役を引退した元ベルギー代表MFムサ・デンベレは、2010年8月から2019年1月までフルアムとトッテナムのロンドン2クラブで活躍。とりわけ、マウリシオ・ポチェッティーノが率いたスパーズ時代には中盤の絶対的な主力に君臨していた。 185cmの恵まれた体躯と強靭なフィジカルに加え、足元の技術が非常に高く、ボールを持てば圧倒的なキープ力と高精度の左足を駆使したドリブル、パスで易々と局面を打開。守備時もそのフィジカルを活かして簡単にボールを奪い切り、ハイレベルのボックス・トゥ・ボックスとして評価を得ていた。 ただ、少なくない負傷離脱やゴール、アシストという目に見える貢献の少なさもあって、そのパフォーマンスに見合う評価を得られなかった。 それでも、トッテナム、ベルギー代表の同僚、同時期にプレミアリーグで対峙してきた多くのライバルは、「最強のチームメイト」、「最もタフな対戦相手」といった表現で怪物MFを称賛。恩師ポチェッティーノも「フットボールの天才」と激賞したこともあった。 そのデンベレに新たな賞賛の言葉を送ったのが、マンチェスター・シティのイングランド代表DFカイル・ウォーカー。 シティとイングランド代表で多くの名手と共演してきた右サイドバックは、元イングランド代表DFのリオ・ファーディナンド氏が運営するYouTube『Vibe with FIVE』で、これまで一緒にプレーした最高の選手について問われると、元スペイン代表MFダビド・シルバと共にスパーズ時代の同僚の名前を挙げた。 まずシティの元同僚で昨夏惜しまれながらも現役を引退したエル・マーゴについては「あなたが彼に悪いボールをパスしたとしても、彼はそれを良いボールのように見せてくれる。彼はあなたをより良く見せてくれる。ダビドはとても素晴らしかったよ。ケビン(・デ・ブライネ)はオールラウンダーだけど、ダビドは個人的なプレーヤーだった」と、称賛の言葉を送った。 多くの名手を抑え、そのシルバと共にすぐさま名前が挙がったデンベレについては、「スキャンダル」との独特な表現でその才能を絶賛している。 「ダビドあるいは、ムサ・デンベレのことは何度も言ってきた。彼はスキャンダルだ。デンベレに欠けていたのはアシストとゴールだけだけど、彼には馬鹿げたほどの才能があった。そんなことは許されるべきではなかったよ(笑)」 さらに、デンベレが現在のシティにフィットするかと問われると、「100万パーセント」と確信に満ちた返答を行っている。 2024.03.27 08:00 Wed4
「最強のスタジアムになる」シティのスタジアム改修計画が承認!総工費500億円で壮大なエンターテインメント施設へ「めっちゃ豪華」
マンチェスター・シティが本拠地エティハド・スタジアムに関する新たな提案が承認されたことを発表している。クラブ公式サイトが伝えている。 クラブによると、エティハド・スタジアムにエンターテインメント施設を開発する計画が、マンチェスター市議会の計画委員会により承認されたという。この計画は、2月と3月に行われたクラブのファンおよびコミュニティによる議論をもとに4月にクラブが申請していた。 この計画では、スタジアムに連結した全天候型施設が含まれるほか、拡張された北スタンドを中心に新たなフロアーが設けられ、収容人数は60,000人以上に増加する。 さらに、上層部の上には、ピッチを見渡せるスカイバーとスタジアム・ルーフウォークが設置。また、3,000人を収容できる屋根付きのファンゾーンに、さまざまな飲食店、新しいクラブショップ、ミュージアム、ワークスペース、400のベッドを完備するホテルも開発の一環として建設される。 これらの主な建設工事は2023年11月から開始され、ノーススタンドの完成とともに2025-26シーズン中にオープン予定。ホテル、ワークスペースなどの公共施設は、2026年後半までに完成する予定だ。 クラブは完成イメージについても改めて公開。SNS上では「最強のスタジアムになる」、「壮大だ」、「めっちゃ豪華」、「」とファンからも驚きの声が上がっていた。 なお、この計画の予算については約3億ポンド(約534億円)だと4月に伝えられていた。 <span class="paragraph-title">【写真】超豪華!スタジアム改修後の完成イメージ図</span> <span data-other-div="movie"></span> <blockquote class="twitter-tweet"><p lang="en" dir="ltr">How <a href="https://twitter.com/hashtag/ManCity?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#ManCity</a>’s redeveloped Etihad Stadium will look upon completion.<br><br>via <a href="https://twitter.com/TeleFootball?ref_src=twsrc%5Etfw">@TeleFootball</a> <a href="https://t.co/lY33NI0s1x">pic.twitter.com/lY33NI0s1x</a></p>— City Xtra (@City_Xtra) <a href="https://twitter.com/City_Xtra/status/1684640787944890371?ref_src=twsrc%5Etfw">July 27, 2023</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> 2023.07.28 16:35 Fri5