連覇達成のU-17日本代表、韓国戦の勝因は?/六川亨の日本サッカーの歩み
2023.07.04 16:00 Tue
7月2日、タイで開催されたU-17アジアカップ決勝で、日本はライバルの韓国を3-0と一蹴して2018年に続き4回目のアジア制覇を果たした。
試合の詳報は現地で取材している記者の方々に任せるとして、やはりターニングポイントになったのは前半44分、CBコ・ジョンヒョンが2枚目のイエローカードで退場になったことだろう。コ・ジョンヒョンはすでにラグビータックルで警告を受けていたため、2枚目のイエローだから累積による退場は当然だ。
とはいえ、44分の道脇豊(熊本)へのタックルは確かにアフターだったが、それほど危険なプレーとは思えなかった。すでにコ・ジョンヒョンは警告を受けているのだから、タイ人の主審はその点を考慮しても良かったのではないかと思ってしまう。
ここらあたりは私のジャッジに関する感覚が古いようで、VARが導入されてからというもの、“人情”などは排除して判断しなければいけないようである。まあジャッジはジャッジとして、日本にとって大きかったのはこのFKから名和田我空(神村学園高)が先制点を奪ったことだ。リードできたことはもちろんだが、ここ数年、日本に苦手意識を持つ韓国に与えたダメージはかなりのものだったに違いない。
A代表だけでなくU-16代表も韓国は日本に0-3で連敗を喫している。原因は様々あるが、この試合でも韓国はGKを含め自陣からのビルドアップを試みた。中盤を経由してシンプルにサイドへと展開し、クロスというのがこの日の韓国の攻撃パターンだった。
かつて日本が韓国を苦手にしたのは、2012年ロンドン五輪の3位決定戦のように、ロングボールを蹴って空中戦を仕掛けて来るパターンだった。空中戦で競り負けたり、運悪くリバウンドが裏に抜けて独走されたりと、想定外のことが起こりやすいからでもある。ましてこの日はピッチコンディションもハプニングの起きやすい状況だった。
そんな攻撃も得意とする韓国がポゼッションスタイルを採用してくれているのだから、日本にとっては守りやすいはずだし、ありがたいことだ。それは他の国にも当てはまり、かつてアンジェ・ポステゴグルーがオーストラリアの監督を務めていた時、彼は“空中戦”ではなく“地上戦”を好んだため、W杯予選でのアルベルト・ザッケローニ監督は前線からのプレスを控えさせた。前からプレスを掛けるとロングボールを蹴ってくるため、敢えてプレスを仕掛けずにボールを回させた。
だが、それだけがU-17日本の勝因ではないのは言うまでもない。日本は、前線の選手が背後にマーカーを背負っていても、パサーは怖がらずに正確なパスを足元に送った。受け手もしっかりとマイボールにして次へと展開していく。その繰り返しとリターンで、日本は韓国の守備を剥がしにかかった。
“門の間”でフリーとなって受けることの連続で数的優位を作るよりも、よりアグレッシブな攻撃スタイルだろう。それをあの劣悪なピッチで苦もなく続ける技術の高さに驚かされた。次はそれを世界の舞台で証明できるか。個の圧力は高まることが予想されるだけに、それに負けないインテンシティを攻守に発揮できるかどうかである。
タイでの決勝を見て、インドネシアに行きたくなったサッカーファンも多いのではないだろうか。かくいう私もその1人である。
【文・六川亨】
試合の詳報は現地で取材している記者の方々に任せるとして、やはりターニングポイントになったのは前半44分、CBコ・ジョンヒョンが2枚目のイエローカードで退場になったことだろう。コ・ジョンヒョンはすでにラグビータックルで警告を受けていたため、2枚目のイエローだから累積による退場は当然だ。
ここらあたりは私のジャッジに関する感覚が古いようで、VARが導入されてからというもの、“人情”などは排除して判断しなければいけないようである。まあジャッジはジャッジとして、日本にとって大きかったのはこのFKから名和田我空(神村学園高)が先制点を奪ったことだ。リードできたことはもちろんだが、ここ数年、日本に苦手意識を持つ韓国に与えたダメージはかなりのものだったに違いない。
A代表だけでなくU-16代表も韓国は日本に0-3で連敗を喫している。原因は様々あるが、この試合でも韓国はGKを含め自陣からのビルドアップを試みた。中盤を経由してシンプルにサイドへと展開し、クロスというのがこの日の韓国の攻撃パターンだった。
こうしたオーソドックスな攻撃は、日本にとっても想定内のはず。まず中盤で執拗に潰しにかかり、サイドに展開されたらSBとサイドハーフのプレスバックで自由を奪う。クロスへの対応も日本のCBはほぼ完璧だった。
かつて日本が韓国を苦手にしたのは、2012年ロンドン五輪の3位決定戦のように、ロングボールを蹴って空中戦を仕掛けて来るパターンだった。空中戦で競り負けたり、運悪くリバウンドが裏に抜けて独走されたりと、想定外のことが起こりやすいからでもある。ましてこの日はピッチコンディションもハプニングの起きやすい状況だった。
そんな攻撃も得意とする韓国がポゼッションスタイルを採用してくれているのだから、日本にとっては守りやすいはずだし、ありがたいことだ。それは他の国にも当てはまり、かつてアンジェ・ポステゴグルーがオーストラリアの監督を務めていた時、彼は“空中戦”ではなく“地上戦”を好んだため、W杯予選でのアルベルト・ザッケローニ監督は前線からのプレスを控えさせた。前からプレスを掛けるとロングボールを蹴ってくるため、敢えてプレスを仕掛けずにボールを回させた。
だが、それだけがU-17日本の勝因ではないのは言うまでもない。日本は、前線の選手が背後にマーカーを背負っていても、パサーは怖がらずに正確なパスを足元に送った。受け手もしっかりとマイボールにして次へと展開していく。その繰り返しとリターンで、日本は韓国の守備を剥がしにかかった。
“門の間”でフリーとなって受けることの連続で数的優位を作るよりも、よりアグレッシブな攻撃スタイルだろう。それをあの劣悪なピッチで苦もなく続ける技術の高さに驚かされた。次はそれを世界の舞台で証明できるか。個の圧力は高まることが予想されるだけに、それに負けないインテンシティを攻守に発揮できるかどうかである。
タイでの決勝を見て、インドネシアに行きたくなったサッカーファンも多いのではないだろうか。かくいう私もその1人である。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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