毎日、試合は沢山あるけど…/原ゆみこのマドリッド

2022.11.23 13:00 Wed
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「これは他山の石にしないと」そんな風に私が気を引き締めていたのは火曜日、W杯3日目最初の試合で優勝候補の一角だったアルゼンチンがサウジアラビアに1-2と、予想外の敗戦を喫したのを知った時のことでした。いやあ、いつもことではありますが、スペインの試合は今回、全てTVE(スペイン国営放送)のオープンチャンネルで放送してくれるものの、他の試合はバル(スペインの喫茶店兼バー)に足を運ばないと見られず。グループリーグ中はビッグネームのチームが出ても相手は大抵無名ですし、いやはや、冬季開催W杯の落とし穴がこんなところにもあったとは!

そう、ここ数日は寒さが本格的になってきたせいで、家から出るのが億劫になり、スペイン戦以外、ニュースでサマリーを確認するだけいいやと思ってしまったんですが、もしかして今大会、マドリッドでオープンエアのパブリックビューイングをやるという話を一切、聞かないのもそのせいだった?それでもイングランドがイランに6-2のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)で勝ったなんて聞くと、試合を見に行けば良かったと後悔したりもするんですが、他は開幕戦のカタールvsエクアドル(0-2)、セネガルvsオランダ(0-2)とそこそこのスコアで順当勝ちしていましたからね。

うっかりアルゼンチンの試合などを見て、アトレティコではダメダメのデ・パウルやナウエルがフル出場で大貢献したり、追加招集となったコレアが、いえ、彼はサルジアラビア戦ではベンチ観戦だったんですけどね。シメオネ監督のチームでは滅多に決まらないゴールを挙げて、イラッとさせられるのもイヤだったんですが、大丈夫。2010年のスペインだって、初戦でスイスに負けた後、ホンジュラス、チリに連勝してグループを首位通過。そこから初優勝に向けて突っ走ったんですから、アルゼンチンも初戦、スコアレスで分けたメキシコとポーランドとの残り試合に勝てば、特に問題はないかと。
といっても水曜午後5時(日本時間翌午前1時)からのスペインデビューとなるコスタリカ戦では、ええ、チームで唯一、これが4回目のW杯参加、2010年優勝も経験しているブスケツ(バルサ)も「De todos los que he jugado ninguno lo he empezado ganado, ya va siendo hora/デ・トードス・ロス・ケ・エ・フガードー・ニングーノ・ロ・エ・エンペサードー・ガナードー、ジャー・バ・シエンドー・オラ(自分がプレーしたW杯はどれも白星スタートできていない。そろそろ勝つ頃だよ)」と前日記者会見で言っていたんですけどね。それこそ2014年ブラジル大会では初戦でオランダに1-5と大敗して、まだ挽回可能と言っている間に2戦目もチリに負けて、早々にグループ敗退が決定してしまいましたからね。

後々、焦らなくていいように、ここは初戦から必勝の心構えで行ってほしいところですが、かといって、ただ勝てばいいという訳でもなく、だってえ、2006年のW杯なんて、グループリーグ3連勝しながら、16強対決でフランスにコロッと負けちゃったんですよ。それどころか、開幕直前にロペテギ監督(現ウォルバーハンプトン)が解任されるという悲劇があった、直近の2018年ロシア大会ではポルトガルと引分けで始まって、イランには勝ったものの、モロッコとも引分け。とりあえず、1位通過で挑んだ16強対決では開催国と1-1で延長戦にもつれ込み、挙句の果てにPK戦でコケ(アトレティコ)とイアゴ・アスパス(セルタ)が失敗して敗退という最悪な終わり方もありましたっけ。

どちらにしろ、コスタリカ、ドイツに連勝してさっさと突破を決めて、最後の日本戦ではローテーションできるぐらいの展開の方が、16強対決に備えて、力を蓄えられるんじゃないかと思いますが、一応、先週金曜にドーハ入り。それからずっと、カタール大学の寮に籠り、キャンパス内にあるグラウンドまで電動キックボードで通って、月曜などはダブルセションもする程、熱心にトレーニングを続けているスペイン代表の近況をお伝えしていくことにすると。

実はその初日には、テストマッチだったヨルダン戦前日の練習で足首をネンザしたガジャ(バレンシア)が代表離脱しているんですが、それが当人も自身のツィッターで、「No es fácil de asimilar que uno de tus sueños de niño se va al traste por un esguince leveノー・エス・ファシル・デ・アシミラル・ケ・ウノ・デ・トゥス・スエニョス・デ・ニーニョス・セ・バ・アル・トラステ・ポル・ウン・エスギンセ・レベ(軽いネンザのせいで子供の頃からの夢が台無しになるのを受け入れることは簡単じゃない)」と呟いていたせいもあったんですけどね。クラブに戻って検査を受けたところ、上手くいけば、コスタリカ戦にも間に合うんじゃないかというぐらい軽度という診断だったため、とりわけバレンシアファンの間で物議を醸すことに。

まあ、それにはもう1人のバレンシア勢、ギジャモンも先週月曜に代表がラス・ロサス(マドリッド郊外)の協会施設に集まってから、ヒザの負傷のリハビリをずっとしていて、この火曜まで1度もチーム練習に参加せず。下手したら、応援するクラブの選手がいなくなってしまうかもしれないという危機感もあったんでしょうけどね。その辺りの経緯をルイス・エンリケ監督が詳しく話してくれたのは、火曜のコスタリカ戦前日記者会見でのことでした。

曰く、「代表の医者は全治10~15日、最初の2試合はプレーできないと言った。バレンシアファンやガジャ自身の意見を聞きいれて、y Jordi Alba se me lesiona. ¿No tengo laterales para debutar?/イ・ジョルディ・アルバ・セ・メ・レシオナ。ノー・テンゴ・ラテラレス・パラ・デブタル(それでジョルディ・アルバがケガしたら、デビュー戦にSBが1人もいないことにならないか?)。左SBは唯一、選手の回復を待つことができないポジションで、もし他の場所だったら、彼を残していただろう」とのことで、うーん、ヨルダン戦なんて、本職CBのラポールがプレーしていましたけどね。

ただ、確かにこれが右SBなら、カルバハル(レアル・マドリー)、アスピリクエタ(チェルシー)が同時に負傷しても、アトレティコでそのポジションの経験を積んでいるマルコス・ジョレンテがいたりと、融通が利きそうですが、ガジャの代わりに追加招集された19才のバルデ(バルサ)がU21代表から河岸を変えて、土曜にはもうドーハに到着。普通なら、ラス・ロサスでやっていたはずですが、今回は大会前期間が短いためでしょうね。月曜に行われたオフィシャルフォト撮影にも間に合いましたが、彼はこれが大人の代表初体験。いきなりの大舞台で物怖じせず、実力が発揮できるかは不明ですが、チームにはバルサの先輩が7人もいるとなれば、大船に乗った気でいていい?

ちなみにギジャモンの方はやはり、試合に出られるのは2戦目のドイツ戦以降になりそうで、そのせいですかね。ルイス・エンリケ監督は練習で本職ボランチのロドリ(マンチェスター・シティ)にCBの特訓を施しているのだとか。この辺はギジャモン自身、バレンシアではボランチを務めながら、代表にはCBとして招集されたという事情があるため、ちょっと面倒臭いんですが、まあ、中盤のスタメンはほぼ、コスタリカ戦の2日後に20才のバースデーを迎えるペドリ、18才のガビを33才のブスケツ率いるバルサトリオで決まりのよう。

そんな中、先日のライブ配信では、「en Catar tienen el aire puesto fortísimo y hay que ir apagando/エン・カタール・ティエネン・エル・アイレ・プエストー・フォルティシモ・イ・アイ・ケ・イル・アパガンドー(カタールじゃ、エアコンが強すぎて、消して回らないといけない)」とルイス・エンリケ監督が漏らしていたように、極端な低温設定のせいで風邪を引いたモラタ(アトレティコ)とカルバハルも回復と、いいニュースもあるスペインなんですが、そうそう。そのルイス・エンリケ監督の配信はTwitchで、午後8時過ぎ(日本時間翌午前4時)から、先週は金土日と3回あって、月曜はお休みした後、火曜にまた再開。

初日は24万人もいた視聴者も今は7万人ぐらいに落ち着いたようですが、一番驚かされたトークはルイス・エンリケ監督自身が、「Mi prolongación en el campo? Ferran Torres. Si no me coge mi hija y me corta la cabeza…/ミ・プロロンガシオン・エネル・カンポ?フェラン・トーレス。シー・ノー・メ・コヘ・ミ・イハ・イ・メ・コルタ・ラ・カベッサ(ピッチでの自分の延長役?フェラン・トーレス。彼を選ばないと娘が私のクビを切る)」と、バルサのFWと監督の21才の長女がお付き合いしていることをバラしていたことでしょうか。

うーん、丁度その翌日、定例会見で話すことになったフェラン自身は、「Lo sabemos diferenciar cuando es familiar o cuando somos seleccionador y jugador/ロ・サベモス・ディフェレンシアール・クアンド-・エス・ファミリアル・オ・クアンドー・ソモス・セレクシオナドール・イ・フガドール(ボクらは家族の時と代表監督、選手である時を分けることを知っている)」とあまり気にしていないようでしたけどね。そのおかげで、バルサで不調の時も代表に呼ばれていたんじゃないかとか、コスタリカ戦でもモラタ、サラビア(PSG)らと共に先発予定前線トリオに入ったんじゃないかと言われたりしても、あまり気にならない?

それはともかく、監督がストリーミングで言っていた試合当日のチームの予定を紹介しておくと、「午前中、ランチまで選手たちは自由時間。それから敵チーム、コスタリカの情報を聞いて、スタジアムに出発する前に私が話すミーティングがある。会場ではアップして、キックオフでピッチに出る前にブスケツが檄を飛ばす」そうなんですが、その頃にはもう、同じグループのドイツvs日本戦(午後2時/日本時間午後10時)も終わっていますからね。次回の配信は水曜のマッチデーの夜はありませんが、木曜には日曜のライバルであるドイツ、そして最終戦の相手、日本についても意見が聞けるかもしれませんね。

そして最後にガジャ同様、W杯が始まる前に代表を諦めないといけなくなったベンゼマについても触れておくと、paron(パロン/リーガの中断期間)前から、しばらく筋肉疲労で試合に出ていなかった彼はフランス代表に合流してからもずっと個別調整していたんですけどね。初めてチーム練習に参加した土曜に左太ももを痛め、全治3週間ということで、日曜にはドーハを発ち、月曜から早速、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場にリハビリに通うことに。何せ、今はW杯に行っていないマドリー選手たちは12月1日までバケーションですからね。この期間、RMカスティージャのラウール監督の下で練習することにしたバジェホぐらいしか、トップチームの仲間と会えないのはちょっと淋しいかも。

まあ、それでもマドリッドの同僚チュアメニ、そしてアトレティコのグリーズマンも先発した火曜のオーストラリア戦でフランスは4-1の快勝で発進。せっかく2014年大会以来、2度目となるW杯出場をベンゼマが果たせなかったのは残念ですが、デシャン監督のチームには死角がなさそうですからね。当人もその点に関しては気が楽かと思いますが、逆にビニシウスやロドリゴ(ブラジル)やアセンシオ(スペイン)らがW杯で英雄になって帰って来たら、年末に再開するリーガで主役を奪われてしまう?何にせよ、マドリーは冬の移籍市場でFWを補強する予定はないそうなので、ベンゼマにはそれまでにじっくり、ケガを治してもらいたいところです。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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まずまずのスタートだったけど…/原ゆみこのマドリッド

「今のところ、あまり心配はしなくていいようね」そんな風に私がホッとしていたのは月曜日、先週木曜に始まったユーロ2024予選1節のスウェーデン戦に0-3と勝利した後、次は開催国としての出場が決まっているドイツとの親善試合ということもあってか、太ももの筋肉を傷めていたGKクルトワがベルギー代表を日曜に離脱。週明けに検査を受け、週末のバジャドリー戦までには回復しそうだと聞いた時のことでした。いやあ、ドメニコ・テデスコ新監督率いる新生ベルギー代表にはアトレティコから参加のカラスコもいるため、まだ目を離す訳にはいかないんですけどね。 ただ、レアル・マドリーの場合はparon(パロン/リーガの停止期間)直前のクラシコ(伝統の一戦)で2-1と負けてしまったため、首位との差が勝ち点12に拡大。これはもう、天変地異でも起こらない限り、残り12試合で引っくり返る可能性はほぼないため、クリステンセンがデンマーク代表で負傷したとか、オランダ代表に行かなかったデ・ヨングも実はケガをしていたとか、デンベレとペドリもまだ治っていないとか、バルサが戦力減退しているという話を聞いても、それこそ、来週水曜のコパ・デル・レイ準決勝クラシコ2ndレグで、0-1負けしている1stレグから、remontada(レモンターダ/逆転勝ち抜け)の可能性が増した程度にしか思えなくてねえ。 更に言うと、マドリーにとっては4月12、18日のCL準々決勝チェルシー戦の方がずっと重要で、それまでには絶対、クルトワが元気になってくれないとマズいんですよ。そう、「Ya he dicho muchas veces que continuaría toda mi vida en el Real Madrid/ジャー・エ・ディッチョー・ムーチャス・ベセス・ケ・コンティヌアリア・トーダ・ミ・ビダ・エン・エル・レアル・マドリッド(もう何度も一生、レアル・マドリーに居続けたいと言っている)」というアンチェロッティ監督も2024年までの契約をまっとうするには今や、CL2連覇の道しか残されていませんからね。となると、少しでも彼に不安があれば、ムリさせることはない? まあ、先日は親善試合でモロッコに負けた後、ブラジルのサッカー協会会長から直々、チッチ監督がW杯後に退任してから、暫定監督が率いている代表チームの新指揮官として、「カルロは選手たちにも、ファンにとっても一番の候補」とラブコールを贈られていたアンチェロッティ監督ですから、いくらかは気が軽くなったかもしれないんですけどね。それでもビニシウス、ロドリゴ、ミリトンが参加していたブラジル代表以外、まだインターナショナルマッチウィークは終わっていないだけに今はとにかく、モドリッチ(クロアチア)やチュアメニ(フランス)、バルベルデ(ウルグアイ)、そしてスペイン代表のカルバハル、セバージョス、ナチョらが無傷で戻って来るのを待つ日々が続くんでしょうね。 その一方でアトレティコの守護神、オブラクは木曜にカザフスタンに1-2、日曜にはサンマリノに2-0とスロベニアをユーロ予選2連勝に導いて、もう月曜にはマドリッドに帰還。週末休みだったマハダオンダ(マドリッド近郊)での練習は火曜に再開とあって、勝ち点差5のお隣さんから、2位を奪い取る戦いの準備を始めるのにまったく支障はないかと。ただ、金曜にはグリーズマンが先制点を挙げたフランスが4-0と大勝した反面、その相手のオランダにいたメンフィス・デパイはPKまで失敗するという、前線の選手の吉凶が完璧に分かれてしまったなんてこともあったんですが、大丈夫。 代表合宿中、「最高のフィジカル状態を保つには一定の練習が必要なんだが、バルサではいつもそうという訳にはいかなかった。でもアトレティコの練習方法は完璧に自分に合う。シメオネ監督はいつも全力を求めていて、それがボクをより強くしてくれた」というコメントを出していたFWは、月曜のジブラルタル戦で3-0の勝利を挙げたオランダの先制点をヘッドでゲット。その間、グリーズマンはアイルランド戦で1月から同僚になったばかり。まだ12分ぐらいしか、アトレティコでプレーしていないドハーティ(トッテナムを自由契約)と対決して、パヴァール(バイエルン)のゴールでフランスが0-1の辛勝をするのに貢献していたんですが、まあ、12人も各国代表選手がいると、イロイロありますって。 そして弟分ではヘタフェのエース、エネス・ウナルが1-2勝利の決勝点をアシストした土曜のアルメリア戦終盤でケガしたとの報が入り、未だに残留達成の道半ばにあるキケ・サンチェス・フローレス監督のチームをショックに陥れたんですが、幸い大したことはなく、土曜のアスレティック戦には出られるらしいというのは不幸中の幸いだったかと。ちなみにそのウナルはリーガ12得点で現在、ピチチ(リーガの得点王)であるバルサのレバンドフスキの15得点に次ぐ2位なんですが、その下、11得点で並ぶサモラ(スペイン人の最多得点者)、イアゴ・アスパス(セルタ)、ホセル(エスパニョール)、ボルハ・イグレシアス(ベティス)。更に10得点のモラタ(アトレティコ)を総動員したスペイン代表、デ・ラ・フエンテ新監督のデビューとなったノルウェー戦はどうだったかというと。 いやあ、昨年6月のネーションズリーグ、チェコ戦以来となる代表戦をマラガのファンは大歓迎。月曜にはレガネス戦を控えたラ・ロサレダ(2018年からずっと2部にいるマラガのホーム)も満員となったんですが、出だしと終わりは最高でしたね。そう、ルイス・エンリケ監督の4-3-3から、4-2-3-1にシステム変更したスペインはCFにモラタ、2列目にダニ・オルモ(ライプツィヒ)、イアゴ・アスパス、ガビ(バルサ)を並べたところ、早くも前半13分にはモラタが敵陣エリア前をドリブルでボールを運んでバルデ(バルサ)にパス。彼のスピードのあるクロスをゴール前にいたオルモが軌道を変え、クラブの同僚、GKナイランドを破って先制点を奪ったとなれば、何せ相手には今季、ヨーロッパで最高にノッていると言っていいFW、ハーランド(マンチェスター・シティ)が負傷離脱していませんでしたからね。 W杯で正GKを務めたウナイ・シモン(アスレティック)がケガでおらずとも、2016-18年には先輩として、アスレティックの守護神を務め、8000万ユーロ(約114億円)の契約破棄金額をクラブにもたらしてチェルシーに移籍。スタンフォード・ブリッジで出場機会に恵まれない時期が続いたせいもあったか、2020年10月以来、代表から遠ざかりながら、グラハム・ポッター監督の下でレギュラーを奪回し、来月のCLマドリー戦でもサンティアゴ・ベルナベウでゴールを守ることになるケパが苦労することはないかと思われたんですが、とんでもない。28分にはセルロート(レアル・ソシエダ)のクロスから、アウルスネス(ベンフィカ)にゴール左前至近距離のvolea(ボレア/ボレーシュート)を撃たれ、「Con el alma, con todo/コン・エル・アルマ、トードー(全身全霊を込めた)」(ケパ)のparadon(パラドン/スーパーセーブ)を披露する破目に。 そのすぐ後にはスペインもミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)のシュートがナイランドに弾かれ、追加点が取れないと、うーん、今回、アトレティコの選手はモラタしかいないんですけどね。リードしたら一歩後退する理由はどこにもないんですが、自陣でパスを回しているだけで、1-0のままハーフタイムに入ってしまったんですよ。後半10分にもケパがペデルセン(アサネ・フットボール)のシュートをゴールライン上から必死で掻き出すという、危ういシーンを目にしたデ・ラ・フエンテ監督は早めにプランBに移行。ええ、13分にはガビとアスパスに代え、セバージョスとオジャルサバル(レアル・ソシエダ)を入れると、13分にはカタールには行ったものの、W杯でルイス・エンリケ監督に出番をもらえなかったジェレミー・ピノ(ビジャレアル)とオルモをスイッチします。 ただ一番の効果があったのはセルロートがエリア内からフリーで撃ったシュートを外し、ソルバッケン監督を「彼がゴールを決めていれば、ノルウェー代表のアウェイ戦最高の出来の試合だったろう」と嘆かせた後の36分。ファビアン・ルイス(PSG)と月曜に33才のバースデーを控えての代表デビューとなったホセル(エスパニョール)の投入で、いやもう、それから僅か2分で前者のクロスを後者がヘッドでゴールにした時には一体、何の冗談かと思ったぐらい。おまけにその2分後にもホセルはオジャルサバルのシュートが弾かれてゴール前に転がったボールを押し込み、doblete(ドブレテ/1試合2得点のこと)を達成しているって、ちょっとお、こんなに簡単にゴールが決まっていいんでしょうか。 ええ、これにはホセルも「No me lo creo aún/ノー・メ・ロ・クレオ・アウン(ボク自身もまだ信じられないよ)」と言っていたんですが、おかげで試合は3-0でスペインの快勝。デ・ラ・フエンテ監督によると、代表には1人参加ながら、RMカスティージャからドイツのホッフェンハイムへのレンタル移籍中に仲を深めた、奥さん同士も姉妹というカルバハル(当時はレバークーゼン)やモラタといった親しい選手の多い彼は、「自信に溢れていて、ha tenido una concentración enorme, por eso ha marcado/ア・テニードー・ウナ・コンセントラシオン・エノルメ、ポル・エソ・ア・マルカードー(集中力がとても高かったから得点できた)」そうなんですけどね。 ただ、以前から代表にいる選手の「Quizá ahora apostamos por un juego más profundo, atacando más los espacios/キサ・アオラ・アポスタモス・ポル・ウン・フエゴ・マス・プロフンドー、アタカンドー・マス・ロス・エスパシオス(多分、今のウチはもっと奥行きのあるプレーをしていて、スペースを突いて攻撃している)」(オルモ)といった意見もあるんですが、ルイス・エンリケ監督時代によく見た、ただ横パスを出しているだけの時間帯もスペインにはなきにしろあらず。ええ、ゴールが入るか入らないかは結構、時の運だったりもしますからね。 実際、16才で入団したマドリーには定着することができなかったものの、24才の今はノルウェーのキャプテンとして、チームを引っ張っているウーデゴール(アーセナル)なども、「セルロートも今日は大きな仕事をしてくれたけど、ボクらにはハーランドの欠場が凄く痛かった。Al final es el mejor delantero del mundo/アル・フィナル・エス・エル・メホール・デランテーロ・デル・ムンド(とどのつまり、彼は世界一のFWだからね)」と言っていたように、スペインにはそういう絶対的FWがいないのが辛いところ。よって、これからもデ・ラ・フエンテ監督はコンビネーションプレーでゴールを探していくしかないと思いますが、とりあえず、予選なら近年のスペインはあまり苦労しないで突破できるはずなんですよ。 ええ、日曜にマラガでのリハビリトレを終え、チームは夜にグラスゴー入り。キプロス戦で3-0の勝利を目撃したハムデンパークで火曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分、先週末ヨーロッパは夏時間がスタート)に行われるスコットランド戦が済めば、残りの相手はジョージア、キプロスとかなり格下ですからね。この5チーム編成のグループで2位までがユーロ2024に行けるんですから、この3月の山場さえ越えればこちらのもんですが、中2日の試合とあって、デ・ラ・フエンテ監督は前日練習でオルモが筋肉痛で早退したのもあり、スタメン変更を考えているよう。 どうやらU21代表を率いていた時分から、それが習慣らしいんですが、今のところ、候補に挙がっているのは殊勲の2ゴールのホセル、途中出場で試合の流れを変えたセバージョス。そして本来は対ハーランドとして初招集されたダニ・ガルシア(オサスナ)が3人CB制でセットプレーや空中戦を武器とするスコットランド相手に先発デビューとなりそうですが、代表ファンとしては3人目のCF、ボルハ・イグレシアスも気になるかと。何はともあれ、まずはこのプレミアリーグでプレーする選手もいるチームとのユーロ予選2試合目を手堅く連勝で終えて、6月のネーションズリーグ・ファイナルフォー優勝への道筋を作ることができればいいですよね。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.03.28 20:00 Tue
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今度はどんなサッカーを見せてくれるのだろう…/原ゆみこのマドリッド

「今は休むが勝ちよね」そんな風に私が頷いていたのは金曜日、W杯以来のparon(パロン/リーガの休止期間)を迎えた今週末のアトレティコが土日月と練習をしないと知った時のことでした。いやあ、この3月のインターナショナルマッチウィークは代表常連だったコケ、マルコス・ジョレンテ(スペイン)、ビッツェル(ベルギー)、ヒメネス(ウルグアイ、W杯最後のガーナ戦での騒動で4試合の出場停止処分)がお留守番に。1月末にコパ・デル・レイ準々決勝でお隣さんに敗退して以来、ずっと週1ペースでしか試合をしていない彼らだけに却って、代表戦に行った選手たちの方が運動不足にならずにいいんじゃないかとも思ったんですけどね。 週中にはバリオスがスペインU21に、控えGKのゲルビッチもクロアチアに追加招集されたため、ここ数日は前述の4人に加え、サウール、レマル、エルモーソの7人と大量のカンテラーノ(下部組織の選手)たち、そしてピッチの隅で細々とリハビリを続けるレギロンといった陣容でマハダオンダ(マドリッド近郊)でのセッションは進行。おそらくシメオネ監督が週末に三男ジュリアーノのプレーするサラゴサ(2部)の試合を見に行きたかったとか、リーガ残り12試合で勝ち点差5あるレアル・マドリーに追いついて、2位にのし上がる計画の詳細を詰めたかったとか、3連休の理由はその辺にあるのかもしれませんが、まあ、見れば、弟分のラージョ、ヘタフェも金土日とお休みしていますしね。 各国代表選手はファルカオ(コロンビア)、ディミトリエフスキ(北マケドニア)、バリウ(アルバニア)、カメージョ(スペインU21)、シス(セネガル)と5人だけの前者には来週末のバレンシア戦に勝って、またヨーロッパの大会出場圏である7位以上に戻りたいという野望がありますし、出向中のエネス・ウナル(トルコ)、ジェネ(トーゴ)、アルデレテ(ポルトガル)抜きで木曜にはレアル・ハエン(RFEF3部/実質5部)と親善試合。マタの2ゴールとラタサの得点で2-3と勝利した後者もようやく、前節のセビージャ戦勝利で13位とジャンプアップしたものの、まだ降格圏とは勝ち点3差だけで残留への闘いはまだ道半ばなんですけどね。それでも皆、3連休にするんですから、別にいいかと思いますが、日曜のクラシコ(伝統の一戦)でバルサに負け、首位との差が勝ち点12に拡大。 リーガ逆転優勝がほぼ不可能となってしまったマドリーだけは土曜も練習するようなのはちょっと不思議なんですが、何せ、アンチェロッティ監督にはDecima(デシマ/CL優勝10回目)を達成した翌年、リーガ、コパ・デル・レイ、CLのメインタイトルを1つも獲れず、解任されたという、第1期2年目の悪夢の再来が迫っていますからね。もちろん当面は4月5日のコパ準決勝クラシコ2ndレグでremontada(レモンターダ/逆転劇)を果たし、オサスナかアスレティックと当たる決勝も制して、まさに当人の下で2014年に優勝して以来、ご無沙汰しているタイトルを獲るのも大切ですが、スペインのビッグ2ではあまりコパは高い評価をされないという傾向も。 よって、契約2年目をまっとうするにはCL2連覇、Decimoquinta/デシモキンタ(15回目のCL優勝)を達成するしかないんですが、それにはまず、4月12日、18日の準々決勝チェルシー戦で勝ち抜ける必要が。次の準決勝でもマンチェスター・シティかバイエルンと当たりますから、全然、楽な戦いではないんですけどね。折しも今はビニシウス、ロドリゴ、ミリトンがブラジル代表に参加中というのもあってか、チッチ監督がW杯後に退任してから、まだ正式な指揮官のいない同代表にアンチェロッティ監督が招聘されるのではないかという噂もチラホラと。それはそれとして、当面はフランス代表を引退したベンゼマ、スペイン代表に呼ばれなかったアセンシオ、その他、メンディ、リュディガー(オーストリア代表をお休み)、ルーカス・バスケスらをしっかり鍛えて、11人の各国代表選手たちがケガをせずに戻って来るのを祈るばかりじゃないでしょうか。 え、それで新監督を迎えたスペイン代表はどうしているのかって?いやあ、昨年のW杯16強対決ではモロッコにPK戦3人連続失敗で敗退して、ルイス・エンリケ監督の契約が延長されず。後任として2013年からU19代表、U21代表を率い、銀メダルを獲った2021年東京五輪の指揮も執ったルイス・デ・ラ・フエンテ監督に選ばれたA代表チームはユーロ2024の予選に備え、月曜にラス・ロサス(マドリッド近郊)にあるサッカー協会本部で合宿入りしたんですけどね。すでに最初の招集リストからは日曜のクラシコにも回復が間に合わなかったペドリ(バルサ)、オサスナ戦でまたしても負傷してしまったジェラール・モレノ(ビジャレアル)が落ちて、代わりにボルハ・イグレシア(ベティス)、U21に出戻りする予定だったジェレミー・ピノ(ビジャレアル)を追加招集で補った総勢26人はその日の夕方、施設のメイングランドでもう3年ぶりぐらいになる一般公開練習を行うことに。 もちろん私も張り切って見に行ったんですが、開始時間の10分前ぐらいに着いた時には入口に長蛇の列が。聞くと、すでに500人座れるスタンドが満員となり、入場制限がかかっていたそうで、いえ、幸い私はプレス用ゲートから入れもらえて助かったんですけどね。さすがにこれだけ大勢のファンが見学できなかったとなると、世間体が悪いと協会も考えたか、最後は彼らもゴール裏の壁の上に鈴なりになって立ち見するのを許されたんですが、コロナ禍と重なったのもあって、ルイス・エンリケ監督時代には昔は恒例だった初日の公開練習がなくなっていましたからね。 おまけにW杯から16人も選手が入れ替わっていたため、ファンもちょっと戸惑ったんじゃないかと思いますが、え?ブスケツ(バルサ)が代表引退、同僚のジョルディ・アルバも呼ばれずと、2008年から2012年までユーロ、W杯、ユーロとビッグタイトルを3連覇したスペイン黄金期を経験した選手がとうとう消滅。更に代表73キャップ、カタール大会ではキャプテンの1人にもなっていたコケ(アトレティコ)も落選し、1人参加となったモラタがメンバー最多の66キャップで新キャプテンになっていたのはビックリじゃないかって? そうですね、スペイン代表のキャプテンは出場試合の多い順で決まるんですが、今回の副キャプテンなんか、39キャップのロドリ(マンチェスター・シティ)、同33のカルバハル(マドリー)とかなり少なめ。第4キャプテンのオジャルサバル(レアル・ソシエダ)だけはダニ・オルモ(ライプツィヒ、29キャップ)、4年ぶりの代表復帰となるナチョ(マドリー、同22)を差し置いて、デ・ラ・フエンテ監督が指名したんですが、まあ、スビメンディ、ミケル・メリーノと選手を3人出しているのは、セバージョスも呼ばれたマドリーとレアル・ソシエダだけなので、クラブでもキャプテンを務めているオジャルサバルは結構、妥当な人選なのかもしれません。 ちなみに初日の練習で注目を浴びていたのは折しも前夜、カンプ・ノウでの試合でカルバハルにcodazo(コダソ/肘打ち)を見舞い、ボールがあるのとは全然違うところにいたセバージョスを後ろからド突くなど大暴れ。それでもイエローカードさえ受けず、「Esa jugada es de la roja clara/エサ・フガーダ・エス・デ・ラ・ロハ・クラーラ(あのプレーは明らかにレッドカードだ)」(セバージョス)と批判されていたガビとマドリー勢の関係だったんですが、もしや、他の選手たちがアップやロンド(輪の中に入った選手がボールを奪うゲーム)している間、ガビとバルデ、バルサのティーンエイジャー2人だけが自転車漕ぎだったのは用心のためだった? ただ、セバージョスによると、「監督はボクらの間にイザコザがあったことを知っていて、nos dijo que lo habláramos/ノス・ディホ・ケ・ロ・アブララモス(話し合うように言われた)」そうで、実は彼らはどちらもセビージャに近い村の出身。「Ya sabéis como somos en el sur. Somos muy calientes/ジャー・サベイス・コモ・ソモス・エン・エル・スール。ソモス・ムイ・カリエンテス(南部出身者がどんなだか知っているだろう。とても熱いんだ)」という訳のわかったような、わからないような理由で和解したそうですけどね。 以前、モウリーニョ監督率いるマドリーとグァルディオラ監督のバルサがクラシコ祭りになった時もプジョルやチャビ(現バルサ監督)、イニエスタ(ヴィッセル神戸)らとカシージャス、シャビ・アロンソ(現レバークーゼン監督)、セルヒオ・ラモス(PSG)らが代表にも険悪な雰囲気を引きずって、デル・ボスケ監督が仲立ちに一役買ったなんて話があったのを思い出しますが、大丈夫。選手たちが土曜試合組と日曜試合組に分かれ、後者が軽いランニングに入ったところからはガビとバルデも合流し、マドリー勢の横には行かなかったものの、これといったイザコザは起こりませんでしたっけ。 そして1時間ぐらいで公開セッションは終わったんですが、ファンにとって嬉しかったのはこの日は選手たちが全員、スタンドに近づいて、サインや写真に応じてくれたこと。逆に意外だったのは2月にデ・ラ・フエンテ監督から電話をもらい、「パフォーマンスとは無関係に自分を当てにしていないし、これからも当てにすることはないと言われた」ため、代表引退声明を出したラモスを惜しむ声がまったく上がっていなかったことなんですが、いやまあ、彼は36才という年齢差別を仄めかしていたんですけどね。今回は35才のイアゴ・アスパス(セルタ)や33才のナチョも再招集されていますし、やはり年とは関係なく、招集リスト発表時の記者会見ではただの電話ではなく、ビデオ電話だったと強調していたデ・ラ・フエンテ監督がまったく新しい代表チームを作りたかっただけ? そんなスペイン代表の練習は水曜のマスコミ向け15分限定公開セッションでも見ることができたんですが、やっぱりこの部分だけでは一体、誰が先発候補なのかとか、フォーメーションはどうなるのかとかいった辺りはまったくわからず。いえ、サッカー協会の施設は外に出されても、マハダオンダ(マドリッド近郊)のアトレティコ練習場のように周りをシートで覆われている訳ではないので、遠めながらグラウンドが見えるんですけどね。 それでわかったのかどうかは不明ですが、AS(スポーツ紙)などは木曜にスタメン予想を掲載。GKは負傷中のウナイ・シモン(アスレティック)の代わりに再招集となったケパ(チェルシー)、DFはカルバハル、ラポール(マンチェスター・シティ)、イニゴ・マルティネス(アスレティック)、そしてW杯開幕前に足首ネンザで涙の代表離脱したガヤ(バレンシア)、ボランチとしてロドリ、スビメンディ、その前にセバージョス、アスパス、ガビ、そしてモラタのワントップの4-2-3-1となっていたんですが、もしやそのせいでしょうか。 木曜にブライアン・ヒル(セビージャ)がケガで代表離脱した後、金曜にはユーロ2024予選1節のノルウェー戦が行われるマラガにチームは移動。ラ・ロサレダ(2部マラガのホーム)での前日練習の方は以前のように一般公開せず、デ・ラ・フエンテ監督は「プライバシーの必要なセッションをするから」と言っていたんですが、月曜からマルベージャ(マラガに近いビーチリゾート都市)で合宿していた相手もスペインマスコミはシャットアウトしていたようですしね。このグループはその他、スコットランド、キプロス、ジョージアという5チーム編成で、うち上位2チームが本大会に行けるという、またしても甘目の予選とはいえ、その辺は真剣勝負の公式戦っぽい? ちなみに今回、ノルウェーの目玉だったエースのハーランド(マンチェスター・シティ)は足の付け根のケガの回復が間に合わないことが判明して、火曜にはイギリスに帰還。彼を見るにはマドリーのCL準決勝まで待たないといけないことになったのは、私も残念なんですけどね。あとは2015年にマドリーに16才の若さで入団しながら、結局、定着できずに現在はアーセナルで活躍しているウーデゴールぐらいしか、楽しみがないのは何ですが、新生スペインのスタートとなるノルウェー戦は土曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)キックオフ。今度はただボールを持っているだけでなく、効率的に攻めていけるスペインになっていてくれたらと思います。 <hr> 【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.03.25 19:30 Sat
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リーガの焦点は優勝争いから2位争いになった…/原ゆみこのマドリッド

「やっぱりこうなるか」そんな風に私が溜息をついていたのは火曜日、各国代表戦週間のparon(パロン/リーガの停止期間)前最後のリーガ26節はヨーロッパの大会敗退組がことごとく勝っているのに気がついた時のことでした。いやあ、確かに今季、タイトルが獲れる可能性がまったくなくなったとなれば、すでに昨年中にはCLグループ最下位敗退。早々とヨーロッパに別れを告げ、コパ・デル・レイでも準々決勝でお隣さん相手に敗退したアトレティコのように、目標がリーガ4位以内の来季CL出場権ゲットにシフトするのは当然なんですけどね。 この日曜にはEL16強対決で敗退した4位レアル・ソシエダが久保建英選手の先制ゴールなどでエルチェに2-0、同5位ベティスもマジョルカに1-0、コンレフェンス・リーグ敗退の6位ビジャレアルもオサスナに0-3と、3位のアトレティコを追う3チームが揃い踏みで勝利。まあ、シメオネ監督のチームもソツなく勝っていたため、勝ち点差はそれぞれ、3、6、10と変わらなかったものの、4月からは彼らだけが週1試合ペースを満喫という、アドバンテージがなくなりますからねえ。 それどころか、もちろんW杯程の影響はないはずですが、3月の代表戦もアトレティコからは各国代表に総勢11人が出向。ルイス・デ・ラ・フエンテ監督率いる新生スペインにはモラタしか呼ばれていないのとは対照的に、レアル・ソシエダからはオジャルサバル、ミケル・メリーノ、スビメンディの3人が招集されたとはいえ、日本代表に参加する久保選手を加えたって、そこまで多くないはずですからね。ちなみにベティスからは負傷で非招集となったバルサのペドリの代わりにボルハ・イルレシアスが呼ばれ、ビジャレアルは週末の試合でまたしてもふくらはぎを痛めたジェラール・モレノが落ちて、すでにU21スペインに招集されていたジェレミー・ピノがA代表に戻るなんてこともあったんですが、とりあえず、今は代表関連話は置いておくことにすると。 ええ、先週末のリーガでもマドリッド勢には悲喜こもごもがあって、先陣を切ったのは土曜の明るい時間、クラブのレジェンドであるミチェル監督率いるジローナをエスタディオ・バジェカスに迎えたラージョ。うーん、早くも前半23分にはイシがエリア外からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決め、3試合無得点のゴール日照りが終わったのは良かったんですけどね。スタンドのファンが「Isi Seleccion!/イシ・セレクシオン(イシをスペイン代表へ)」と歌っていたのも束の間、29分にはアトレティコからレンタル移籍中のリケルメがカステジャーノスへクロス。そのヘッドはGKディミトリエフスキが弾いたものの、こぼれたボールをツィハンコフに押し込まれ、あっという間に同点にされてしまうことに。 それでも34分にはアトレティコBの同僚、昨季はリケルメと共に2部のミランデスで修行し、3月のU21代表にも一緒に行くカメージョがトレホに繋ぐと、キャプテンが敵DFたちの隙間を縫ってゴールを決め、ラージョは再び勝ち越したんですが、悲劇が起こったのは38分のことでした。ええ、アルバロ・ガルシアがアルナウにエリア内で倒され、今季11本目という、PKを今季1度ももらっていないアトレティコなどにすれば、羨ましいチャンスを得た弟分だったんですが、トレホがGKガッサニガに弾かれてしまったから、さあ大変! というのもすでにラージョはPKを今季3回も失敗していた上、後でイシも「El ultimo fue yo, Raul de Tomas, Trejo/エル・ウルティモ・フエ・ジョ、ラウール・デ・トマス、トレホ(最後に入れられなかったのはボク、RdT、トレホだった)」と言っていた通り、他に自信のある選手もいなかったからでしょうかね。この時はジローナの選手が、トレホが蹴る前にエリア内に入ったとして、せっかく主審がPKのやり直しを命じてくれたにも関わらず、キッカーをリピートしたトレホはボールを横に出しただけ。後ろからイシが駆けつけて撃ったんですが、ゴール枠を大きく外してしまっては…。 後半7分にはハビ・エルナンデスのラストパスをツィハンコフに再び決められ、同点にされたラージョは、ラストプレーでサルビがエリア内でのハンドを取られる危険もあったものの、最後は2-2で引分けて終了。これにはイラオラ監督も「あの2度目のPKはトレホとイシが決めたこと。Lo único que puedo decir es que no lo hemos entrenado/ロ・ウニコ・ケ・プエド・デシール・エス・ケ・ノー・ロ・エモス・エントレナードー(唯一、言えるのは練習ではやっていなかったということ)。ああいうのをやるのもいいが、練習していればの話だ。PKについては心配している。おかげで幾つも勝ち点を失ったからね」とかなりおかんむりだったよう。 何せこれでラージョは6試合連続白星なしと、順位もヨーロッパの大会圏外の8位に落ちてしまいましたからね。ただ、降格圏とは勝ち点差9の余裕があるため、各国代表選手も5人に留まるこの2週間を利用して、4月3日(月)のバレンシア戦で再度、上を目指してもらいたいものですが、え?土曜の夜の試合でそのバレンシア相手に戦い方の見本を示してくれたのが、兄貴分のアトレティコじゃなかったかって? その通りで、バジェカスでは背中から吹きつける冷たい風に閉口して、シビタス・メトロポリターノに向かう前に家に寄って厚着してきた私だったんですが、この日は1月下旬のバジャドリー戦以来、ストを続けていた応援団が5試合ぶりに活動を再開。久々に入場時のクラブ歌合唱が終わってもスタンドが賑やかだったんですが、まあ、最近は一般のファンも応援団のリードなしに声を出すのに慣れてきていましたね。おかげで前回のホームゲーム、セビージャ戦など、チームは大量6点のgoleada(ゴレアダ/ゴ-ルラッシュ)を披露する程に成長。 よって、序盤からカラスコやメンフィス・デパイがシュートを放ち、とうとう前半23分にはマルコス・ジョレンテが出したスルーパスにグリーズマンが反応。見事に先制ゴールを決めてくれたのが、応援団のおかげだったかどうかは定かではないんですが、むしろ場内一斉、飛び跳ねて喜んでいたことの方が選手たちの気を散らしましたかね。ふと気がつくと、29分にはティエリのアシストでウーゴ・ドゥーロが同点ゴールを挙げていたから、ビックリしたの何のって! でも大丈夫。実はバレンシアのカウンターが進行している間、敵エリア付近でずっとデパイが倒れているのが私も気になっていたんですが、アトレティコの選手たちの猛抗議やスタンドのファンからのpito(ピト/ブーイング)を盛大に浴びた主審がVAR(ビデオ審判)の注進もあってか、モニターを見に行くことに。その結果、デパイを倒したフルキエのファールが判明し、ゴールは無効とされたため、試合は1-0のまま、ハーフタイムに入ることに。 そして後半も血気盛んなまま出て来たアトレティコは、いえ、バレンシアがなかなかピッチに現れなかったのには少々、私もイライラしたんですけどね。再開から4分もしないうち、今度はロッカルームでシメオネ監督が、「Lo habíamos hablado en el descanso para estar más fríos para definir/ロ・アビアモス・アブラードー・エン・エル・デスカンソ・パラ・エスタル・マス・フリオス・パラ・デフィニール(ハーフタイムにフィニッシュする時、もっと冷静でいるように話した)」というカラスコがデ・パウルからパスを受け、ゴール右側からのシュート。2点目を決めてくれたとなれば、相手はバラハ新監督になってから、1-0以外のスコアを知らないバレンシアだけにもう、大船に乗った気分になっていい? それでもシメオネ監督は手綱を緩めず、後半18分にはデパイ、デ・パウルをモラタ、レマルに交代。何せ、最近は控え選手がピッチに入るたびにゴールを挙げ、今季通算12得点となっているアトレティコですからね。この日も例外ではなく、22分にはグリーズマンのスルーパスから、エリア内に入ったモラタがクロスを上げ、小柄なレマルが悠々、ヘッドで3点目のゴールをゲットって、うんまあ、バレンシアの守備陣が崩壊していたのは事実ですけどね。最後は3-0の堂々勝利となり、ファンはここ10試合の無敗中、何度繰り返したかわからない、「どうしてW杯前にこのパフォーマンスを見せられなかったのだろう」という疑問をこの日も抱くことに。 何にせよ、試合後はジョレンテも「No podemos saberlo, seguimos trabajando igual, antes del Mundial no nos salía nada y ahora todo/ノー・ポデモス・サベールロ、セギモス・トラバハンドー・イグアル、アンテス・デル・ムンディアル・ノー・ノス・サリア・ナーダ・イ・アオラ・トードー(同じように取り組んでいるから、知りようがない。W杯前は何もかも上手くいかなくて、今は全部が上手くいく)」と言っていたように、選手たちもあれだけ不調だった理由はわからないようですし、後ろを振り返っても仕方ないんですけどね。この白星で一時的に2位のレアル・マドリーと勝ち点差が5に縮まったとはいえ、土曜の夜はやっぱりお隣さんを追い越すのは難しいだろうなと思っていた私でしたが…。 翌日曜はまず、コリセウム・アルフォンソ・ペレスで弟分のヘタフェとスペイン勢EL唯一の生き残り、セビージャの対戦を見に行ったんですが、開始数秒でせっかくエネス・ウナルがGKボノからエリア内でボールを奪ってチャンスを作ったものの、敵DFに取り返されてモノにできず。35分にはボルハ・マジョラルのパスをフリーでもらいながら、ムニルがシュートを外してしまい、0-0のままでハープタイムに入ったところで、泣く泣くスタジアムを出ることに。いやあ、次の時間帯だったマドリーはカンプ・ノウでプレーするため、バル(スペインの喫茶店兼バー)観戦だったとはいえ、そこは天下のクラシコ(伝統の一戦)ですからね。アトレティコのアウェイゲーム時のようにコリセウム近辺のお店で席を確保する自信がなかったため、万全を期して、キックオフ30分前に近所のバルに辿り着きたかったからですが、おかげで弟分の奮闘を見逃す破目になるとは! ええ、メトロに乗ってインターネットラジオを聞いていた後半5分、まったく同じ組み合わせで今度はムニルが先制点を挙げることに成功。ようやく自宅最寄り駅を出て、あと一歩でお店到着という瞬間、後半ロスタイム5分に終盤、交代出場したマタのスルーパスからウナルが2点目を決めたと聞き、何とかTVのリプレーには間に合ったんですが、このホーム3連勝となる2-0の勝利は効果抜群でした。18位にいた彼らが一気に13位までジャンプアップって、いや、ホントに今季は下位が大混戦で、ヘタフェもまだ降格圏とは勝ち点3しか離れていないんですけどね。代表戦明け、苦手のアウェイでのアスレティック戦でも白星を掴めれば、かなり安心できるんですが、こればっかりはねえ。 そして私がやっとこ、画面が見られる最後のストールを確保して観戦したクラシコはというと。うーん、開始早々にベンゼマやレバンドフスキが試し撃ちした後、前半9分にビニシウスのエリア内右奥からのシュートがアラウホの頭に当たり、オウンゴールとなってくれた時には先日、ミリトンのオウンゴールでバルサが0-1勝利したコパ準決勝1stレグの逆バージョンになってくれる気もしたんですけどね。やはり先週水曜にはCL16強対決リバプール戦2ndレグをこなし、しかもその試合と同じスタメンを並べたマドリーより、1週間丸々練習に当てられたバルサの方が元気だったんでしょうか。 サンティアゴ・ベルナベウでの専守防衛ぶりはどこへやら、積極的に前に行ったのが功を奏したか、ハーフタイム直前にはラフィーニャのシュートがDFにブロックされた後、セルジ・ロベルトに同点ゴールを決められてしまうのですから、困ったもんじゃないですか。後半が進むにつれ、アンチェロッティ監督はロドリゴ、メンディ、アセンシオ、セバージョス、チュアメニと次々、フレッシュなメンバーを投入し、自慢のremontada(レモンターダ/逆転劇)精神の発動を期待したんですが、え?そもそも1-1の同点なんだから、そんなの発動するはずないって?いえ、36分にはカルバハルのクロスをアセンシオがゴールにして、とうとう勝ち越し点が入ったかに見えたんですけどね。 これがVAR判定により、ミリメトロ単位でアセンシオがオフサイドだったとされたのが運の尽き。引き分けでは勝ち点差9のままですから、こうなるとなりふり構っていられず、バルサを自陣エリア内に囲い込む大攻勢に転じたマドリーだったんですが、まさか、「Fuimos más a lo loco, eramos casi todo jugadores de ataque/フイモス・マス・ア・ロ・ロコ、エラモス・カシー・トードー・フガドーレス・デ・アタケ(もうクレージーな状態で、ウチはほとんど選手全員がアタッカーだった)」(セバージョス)というロスタイム2分にカウンターを浴びてしまうとは!バルデのパスから、セルジ・ロベルトに代わって入っていたケシエが決め、一気に12差をつけられてしまうとは何と、運命は残酷なんでしょう(最終結果2-1)。 うーん、「Hay que ser honestos. Seguiremos peleando, pero hay cuatro partidos de diferencia/アイ・ケ・セル・オネストス。セギレモス・ペレアンドー、ペロ・アイ・クアトロ・パルティードス・デ・ディフェレンシア(正直にならないと。ボクらは戦い続けるけど、4試合の差がある)。難しいよ」とクルトワが言う前から、この時期に9差の時点でもそこから逆転優勝した前例はありませんでしたからね。この日はオフサイドによるゴール取り消しだけでなく、ガビがカルバハルの顔にcodazo(コダソ/肘打ち)を見舞っても、ボールを持っていないセバージョスを後ろからド突いてもお咎めなしだったりと不運なところもあったんですが、彼らもリーガ優勝はもう諦めて、アトレティコとの2位争いに専念した方がいいかと。 珍しくVAR判定に疑義を申し立てていたアンチェロッティ監督も「Si jugamos así, ganaremos algo. Seguro/シー・フガモス・アシー、ガナレモス・アルゴ。セグロ(今日みたいにプレーすれば、きっと何かは勝ち獲れる)」と言っていたんですが、チェルシーとの準々決勝を控えたCLに加え、マドリーには1stレグの0-1負けでレモンターダ条件を満たしたコパ準決勝2ndレグも4月5日にありますしね。実際、第1期では最初のシーズンにクラブの悲願だったDecima(デシマ/10回目のCL優勝)達成しながら、次のシーズン、リーガ、コパ、CLで無冠となるとあっさり、解任されてしまったアンチェロッティ監督となれば、かなり真剣にこの事態を受け止めていると思いますが…何はともあれ、今は13人と大量出向している各国代表選手たちが無事に帰って来てくれるのを待つばかりでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.03.22 20:00 Wed
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毎年、同じチームと対戦している気がする…/原ゆみこのマドリッド

「またチェルシーなんだ」そんな風に私がデジャブを覚えていたのは金曜日、丁度、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場外から、覆いのシート越しに今季はもう、ヨーロッパの大会とは何の関係もないアトレティコのセッションを覗き見していた時のことでした。いやあ、もう最近は何でもネットストリーミングしているため、UEFA本部で行われたCL準々決勝組み合わせ抽選会もスマホで眺めていたんですけどね。ご存知の通り、今季CLスペイン勢唯一の生き残り、レアル・マドリーはこのロンドンのチームとは昨季の同ラウンドでも当たり、1stレグでベンゼマのハットトリックで1-3と快勝しながら、2ndレグでは0-3と逆転までされた後、根性のremotanda(レモンターダ/逆転劇)精神が発動。 ロドリゴが総合スコアをタイにするゴールを挙げ、延長戦でベンゼマも決めて、2-3で負けながらも総合スコア5-4で突破すると、準決勝でもマンチェスター・シティを1stレグ4-3の負けから、2ndレグ3-1勝利で総合スコア6-5の逆転勝ち抜けをすることに。そして決勝ではリバプールを倒し、Decimocuarta(デシモクアルタ/14回目のCL優勝のこと)達成というのはまだ記憶に新しいところなんですけどね。そのせいで忘れがちですが、実はチェルシーとは2年前、ジダン監督時代の2020-21シーズンにも準決勝で対戦していて、この時は1stレグで1-1と引分けた後、2ndレグで2-0と負けて敗退しているんですよ。 その後、トゥーヘル監督率いるチェルシーがマンチェスター・シティを破って優勝したというのはともかく、注意すべきはホーム、アウェイの順番で、ええ、昨季決勝トーナメントの3連続レモンターダは全て、サンティアゴ・ベルナベウでの2ndレグあってのことでしたからね。逆に今季は4月12日の1stレグがベルナベウ、18日の2ndレグがスタンフォード・ブリッジと、これは敗退した2年前と同じパターン。もちろん、3週間前のCL16強対決リバプール戦1stレグではアンフィールドで前半14分までに2点奪われながら、大量5点を取って、1試合完結レモンターダも見せているマドリーとなれば、ホーム限定のお家芸とは言えないとはいえ、ちょっと気にならなくはない? どちらにしろ、アトレティコから1月にレンタル移籍したジョアン・フェリックスもいるチェルシーとのCL準々決勝はまだかなり先の話なので、今は水曜の16強対決2ndレグで敗退が決まったリバプールのクロップ監督が、「CLに優勝するにはマドリーとマンチェスター・シティに勝たないといけない」と発言。それが金曜の抽選では、マドリーがチェルシーに勝てば、マンチェスター・シティvsバイエルン戦の勝者と準決勝で当たることも決まることに。よって、アンチェロッティ監督のチームはライプツィヒ戦2ndレグでハーランドの5ゴールを始め、計7得点のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を披露したシティとの対戦を避けられるかもしれないのを喜ぶ程度にしておきますが、準決勝でもマドリーは1stレグがホーム開催となるため、今季はレモンターダのエクスタシーをベルナベウのファンが体験できないのは残念ですよね。 え、それでリバプール戦2ndレグはどんな試合だったのかって?そうですね、初戦で2-5と大差がついていながら、さすがCLだと気合が入るんでしょうか。午後7時半頃にはベルナベウ周辺にマドリーのチームバスをお出迎えするファンが大勢集まっていたようで、私はその光景を近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)のTVでコーヒーを飲みながら確認した後、メトロでスタジアムに向かうことに。クロップ監督がスタメンにサラー、ダルウィン・ヌニェス、ガプコ、ジオゴ・ジョタの4FWを並べる超攻撃的布陣できたと知った時にはちょっと、ワクワクしたものでしたが、アンフィールドで序盤に痛い目に遭ったマドリーの選手たちはよく学んでいたよう。 ええ、fondo sur/フォンド・スール(ゴール裏南側席)のファンが掲げるモザイクと昨季の決勝前にGKクルトワが口走り、アトレティコファンに不快感を与えた「El lado bueno de la historia/エル・ラドー・ブエノ・デ・ラ・イストリア(歴史のいい方の側)」と書かれた横断幕に迎えられてキックオフすると、6分にはリュディガーがエリア前で転倒。逃したヌニェスのシュートをクルトワがparadon(パラドン/スーパーセーブ)して、ドッキリさせられたなんてこともあったんですけどね。アンチェロッティ監督も「Me ha gustado el equipo, a nivel psicológico/メ・ア・グスタードー・エル・エキポ、ア・ニベル・シコロヒコ(チームの心理的なレベルが気に入った)。ウチは3点リードしていて、足が遅くなっても仕方なかったのにそうならなかった」と言っていたように、1stレグでザル状態だったアラバがまだ負傷中のため、最初からナチョを左SBに置いたのも功を奏し、そう簡単にリバプールも攻め込めません。 マドリーも早い時間にはビニシウスの至近距離シュートをGKアリソンが好セーブしたり、カマビンガのエリア外からの一撃がゴールバーで逸れたりしたものの、両チーム共、前半は無得点で終わります。これであと45分間、スローインやCKなどに時間をかけて、何事もなく過ごせば勝ち抜けるマドリーに対し、クロップ監督は後半11分には戦略を修正。ヌニェスとジョタをフィルミーノとエリオットに代えてきたんですが、ほとんど流れは変わることなく、いよいよ試合は最後の15分に残すばかりに。ゴール祝いができるのを今か今かと待っていたファンたちをようやく、満足させてくれたのはお馴染みの2人でした。 33分、足首を打撲して先週末のエスパニョール戦を休んでいたせいで、その日も本調子には見えなったベンゼマですが、そのシュートが敵に当たって転がったボールをビニシウスが拾ったところ、いやあ、自身で撃とうとして失敗し、彼は倒れてしまったんですけどね。地面から足を伸ばしてパスを送り、それを何故か、誰にもマークされていなかったベンゼマが蹴り込んで、ゴールを挙げているんですから、fondo norte/フォンド・ノルテ(ゴール裏北側席)の最上階に陣取った2500人のビジターファンを除いて、どんなに場内が沸いたことか。 これで総合スコアが6-2となったため、「Quería hacer los cambios para parar el partido si teníamos problemas al final/ケリア・アセール・ロス・カンビオス・パラ・パラール・エル・パルティードー・シー・テニアモス・プロブレマス・アル・フィナル(終盤に問題があった時、試合を止めるために交代カードは使いたかった)というアンチェロッティ監督も選手の温存を開始。何せ、週末にもリーガ・クラシコ(伝統の一戦)が控えていますからね。いくら、この日はモドリッチやクロースが良かったとはいえ、というか、良かったから尚更、疲労を抱えてカンプ・ノウに行ってほしくなかったんですが、やっと37分過ぎから、大きな拍手を浴びてモドリッチとベンゼマ、続いてクロースとビニシウス、そして最後はカルバハルもピッチを退くことができましたっけ。 え、試合が無事に1-0で終わり、アンフィールドでは1stレグ当日にお亡くなりになったマドリー名誉会長のアマンシオ氏にリバプールが花籠を捧げる気配り。それに感謝して、もうイギリス人たちはあまり残っていなかったものの、You’ll never walk aloneの歌が場内に流れたのは感動的だったとはいえ、ゴールを挙げた後、足を引きずっていたベンゼマは大丈夫なのかって?まあ、当人も「スネに強い打撲を受けただけ。Estaré el domingo/エスタレ・エル・ドミンゴ(日曜は出られるよ)」と言っていたため、多分、午後9時(日本時間翌午前5時)からのクラシコには問題ないはずなんですけどね。 その治療のせいか、決勝ゴールの殊勲者は試合後のミックスゾーンには現れず、クルトワが1人でTV、ラジオ、文字媒体メディアに延々と応対。折しもロスタイムにはマドリーエリア内でリバプールの選手の手にボールが当たり、ペナルティかどうかのVAR(ビデオ審判)判定(リバウンドでPKなし)があったせいもあるんでしょうかね。アンチェロッティ監督とクロップ監督も前日のマンチェスター・シティvsライプツィヒ戦でハーランドが1点目を挙げたPKの原因であるハンドについてありかなしか、話をしたそうですが、マドリーの守護神の思考は遥か先に。 まさか、その試合のスペイン人VAR担当審判が2年前のマドリーダービーの主審と同じと気がついて、「彼は同じようにはっきりしていたアトレティコのハンドを取らなかった。Me gustaría preguntarle por qué/メ・グスタリア・プレグンタールレ・ポル・ケ(どうしてなのか、訊きたいよ)」とはもしや、クルトワって結構、しつこい?マドリー番記者の間でもいつも試合後、マイクの前で喋るので有名な彼ですが、一旦、私がクロップ監督の記者会見を聞くため、ミックスゾーンを中座。終わって戻って来た時にもまだ話していて、最後はハーランド評までイギリス人記者たちに英語でペラペラやっていたのにはビックリさせられたかと。 まあ、現在、勝ち点9ある首位との差を縮めるにはバルサ戦でもクルトワの活躍が欠かせないため、当人が気分良く帰っていったのはいいことなんでしょうが、ペドリの回復が間に合わず、デンベレも欠場するとはいえ、EL16強対決プレーオフで敗退した相手は今週もミッドウィークフリーでしたからね。向こうの方が体力的に有利なのは気に入りませんが、そうそう、そのバルサを負かしたマンチェスター・ユナイテッドは木曜の16強対決2ndレグでもベティスに0-1と勝ち、総合スコア5-1で準々決勝に進出。レアル・ソシエダも1stレグでのローマの2-0勝利を引っくり返せず、コンフェレンス・リーグでもビジャレアルがアヤックスに敗退させられる中、奇しくも金曜の抽選では、フェネルバフチェに総合スコア2-1で勝って、マドリー以外唯一、ヨーロッパの大会のスペイン勢生き残りとなったセビージャと対戦することに。 おかげでリーガでは降格圏と勝ち点2差という、残留争いの渦中にあるサンパオリ監督のチームは気持ちがかなり、大会最多の7回優勝しているELの方に向くことになったんじゃないかと思いますが、それがもしかしたら、日曜にセビージャをコリセウム・アルフォンソ・ペレスに迎えるヘタフェの大きな味方になるかも。ええ、最近は毎節、一時的に降格圏を抜け出しても、全カード終了後にはまた戻ってしまうという蟻地獄状態から、弟分チームが脱出するにははっきりくっきり、2連勝ぐらいしないといけないからですが、アランバリが足首の再手術となり、代表戦明けまで戻って来られないのはちょっと辛いところでしょうか。 そしてもう1つの弟分、ラージョは土曜にジローナとエスタディオ・バジェカスで対戦なんですが、折しも相手はヘタフェ、アトレティコとマドリッド勢に2連敗中。このところ、5試合白星がないだけでなく、3試合連続無得点のイラオラ監督のチームとあって、いきなりゴール日照りを解消するのは難しいかもしれませんが、こちらで注目したいのはカメージョとリケルメ、アトレティコのレンタル移籍中カンテラーノ(Bチームの選手)対決でしょうか。ええ、彼らは昨季一緒に2部のミランデスで修行した後、今季はそれぞれラージョとジローナに分かれて1部での実戦を積んでいるんですけどね。2人共、サンティ・デミア監督に3月のスペインU21代表に招集されたため、その合宿中にはシメオネ監督のチームにどちらが先に戻れるか、話したりするのかも。 そう、金曜には来週から始まる国際マッチウィークでユーロ2024予選のノルウェイ戦とスコットランド戦に挑む、スペインA代表の招集リストの発表もあって、いやあ、それも私はマハダオンダでの練習伺い中にスマホで見ていたんですけどね。W杯後に退任したルイス・エンリケ監督の後を継いだ、それまでU21を担当していたルイス・デ・ラ・フエンテ監督はカタール大会のメンバーから15人もの選手を一気に変更。細かいことは省きますが、それでトバッチリを喰らったチームの1つがアトレティコで今回、招集されたのは何と、ここ2試合で3得点しているものの、土曜午後9時のバレンシア戦でも3試合連続控えとなる予定のモラタだけなんです! 実際、1月初旬にバルサに負けて以来、リーガ9試合で無敗の彼らは4位のレアル・ソシエダと勝ち点3、5位のベティスとは6の差をつけて、堂々と3位の座に君臨。コパ・デル・レイ準々決勝でお隣さんに負けて以来、2月からはずっと週1ペースで体力も余っているというのに一体、コケやマルコス・ジョレンテにこれ以上、休養日を与えてどうしようっていうのでしょう。いえ、もちろんグリーズマン(フランス)やカラスコ(ベルギー)、オブラク(スロベニア)、コレア、デ・パウル、モリーナらのアルゼンチン勢といった常連は各国代表に出向するんですけどね。もうこうなったら、paron(パロン/リーガの中断期間)を挟んでメトロポリターノで連続開催となるバレンシア戦、ベティス戦でも白星街道を維持。いずれは勝ち点差8のマドリーを抜かし、2位でリーガを終えるぐらいしないと、6月のネーションズリーグ・ファイナルフォーでもスペイン代表のアトレティコ勢は増やしてもらえない? ちなみに現在、ヘタフェと同じ勝ち点でギリ降格圏外の17位にいるバレンシアは今回、4試合を負傷で欠場していたカバーニが復帰。ボロ暫定監督をバラハ監督が引き継いでその間、全て1-0での2勝2敗と、メスタジャで勝って、アウェイでは負けているんですが、アトレティコも6点を奪って大勝した前回のホームゲーム、セビージャ戦以外、1試合1得点が最近の基調路線ですからね。恐らく渋い展開になるんじゃないかと思いますが、チケットの売れ行きもいいようですし、ファンが喜ぶ結果を出せるといいですよね。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.03.18 20:00 Sat
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もちろんゴールは多いに越したことはないけど…/原ゆみこのマドリッド

「やっぱりセビージャ戦のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)は例外だったのね」そんな風に私が納得していたのは火曜日、25節の最後を飾って月曜にアトレティコがジローナ戦を終えた後、直近の成績を振り返ってみたところ、コパ・デル・レイ準々決勝でお隣さんに負けて以来、彼らは無敗。リーガで5勝2分けなんですが、うち2点以上取ったのが先日、メトロポリターノでシメオネ監督のクラブ最多記録となる613試合達成を6-1で祝った、その試合しかないのに気づいた時のことでした。いやあ、今季は首位を独走するバルサもこの日曜のアスレティック戦を含め、1-0勝利がかなりあるんですけどね。 それにはシメオネ監督も「Últimamente veo que el 1-0 se valora mucho en otros equipos y me pone contento/ウルティマメンテ・ベオ・ケ・エル・ウノ・セロ・セ・バロラ・ムーチョ・エン・オトロス・エキポス・イ・メ・ポネ・コンテントー(最近は他のチームの1-0勝利も高評価されるようになって満足だ)」と皮肉っていたんですが、惜しむらくはもっと早く、今の調子に持っていけなかったこと。ええ、オブラクも「ウチはW杯の後から良くなって、試合に勝てるようになったけど、es una pena que estemos tan lejos de los dos primeros/エス・ウナ・ペナ・ケ・エステモス・タン・レホス・デ・ロス・ドス・プリメーロス(上位2チームとあれだけ差がついているのは残念だ)」と言っていたんですけどね。3位のアトレティコと2位のレアル・マドリーの差は勝ち点8、首位に至っては17の彼岸の彼方となれば、もう他の大会もありませんし、今季残りの目標がCL出場権獲得だけになるのも仕方がない? そんなことはともかく、そのジローナ戦がどんな試合だったか、お伝えしていくと、うーん、コパ敗退後の2月から延々と試合が週1ペースになった上、今回は週明けの月曜とかなり間が空いたのも相まったか、モンテリビでは軽快にスタートしたアトレティコだったんですけどね。マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でたっぷり磨いた高速パス回しのテクなども披露していたんですが、ふと気づくと敵目掛けて真っすぐ蹴っていたりするのはまあ、ご愛敬。それよりその日はセビージャ戦であれ程あった決定力が欠けていて、いやあ、20分にメンフィス・デパイがグリーズマンからのクロスをフリーで受けながら、volea(ボレア/ボレーシュート)を撃ち上げてしまった時など、私も口をあんぐり開けてしまったものでしたけどね。 デパイは36分にもゴール前からのシュートも外しているんですが、グリーズマンもGKガッサニガに止められ、エルモーソのヘッドも決まらずと、前半は両者無得点で終わることに。再開後すぐにもマルコス・ジョレンテが弾かれるわ、せっかくFKからエルモーソのヘッドが敵の腕に当たっても、そのエルモーソのファールで今季初となるはずだったPKはもらえないわと、スコアが動かなかったため、17分にはシメオネ監督が3人一斉交代の荒療治を決行。ええ、デパイ、ジョレテンテ、レマルから、モラタ、コレア、デ・パウルに代わったんですが、オブラクがツィハンコフ、ダビド・ロペス、リケルメらのシュートをparadon(パラドン/スーパーセーブ)する傍ら、どんどん時間は経つばかりで…。 そしていよいよ45分が過ぎて、8分のロスタイムが提示されたんですが、信じられないことにそこでドラマが起きたんですよ!そう、1分も過ぎないうちに、コレアがゴール前からシュートしようとしてアルナウにクリアされ、アトレティコにCKが与えられたところ、グリーズマンがニアポストに出したボールをコレアが繋ぎ、そのボールがストゥアーニに当たってファーサイドのゴール前へ。その場にいたモラタが足を出し、ネットに押し込んだんですが、いやもう、線審も彼が関わると反射的に旗を揚げてしまうんですかね。まずはオフサイドとされたそのゴールはもちろん、VAR(ビデオ審判)判定にかけられることに。 それに3分余りも時間がかかったため、その間、モラタも「Me echaban la bronca de por qué la toco/メ・エチャン・ラ・ブロンカ・デ・ポル・ケ・ラ・トコ(何で自分は蹴ったのかと腹が立った)。でもボールが来たら蹴らないのは難しいし、蹴らなくて逸れてしまったら、それも腹が立つし」と忸怩たる思いを噛みしめていたようですが、大丈夫。当人の位置はかろうじてオフサイドにならず、しかも直前に触ったのが敵だったため、しっかり得点として認められたとなれば、もうこっちのもんです。ロスタイムが12分まで延びたって、remontada(逆転劇)特異体質のお隣さんならいざしらず、ジローナ相手にこのぐらいの残り時間なら、アトレティコは逃げ切れますって(最終結果0-1)。 いえ、ミチェル監督のチームにはロメウとアレイクス・ガルシアを負傷で失うという不運もあったんですけどね。おかげで週末にマジョルカと引分けた4位のレアル・ソシエダとは勝ち点3、6位のビジャレアルと引分けた5位のベティスとは勝ち点6に差が開き、シメオネ監督もゆったりした気分で土曜のバレンシア戦の準備ができることになったんですが、これはもしかしたら、次節、マドリッド勢との3連戦最後を迎えるジローナと当たる弟分にもいい目が出たかも。 というのも土曜の夕方、セルタ戦をプレーしたラージョはいよいよ、ゴール日照りが深刻化。バライドスででは後半、RdT(ラウール・デ・トマス)のシュートがゴールバーを直撃したすぐ後、6分にはガランのクロスからイアゴ・アスパスに先制点を奪われ、その2分後にもセフェロビッチのシュートはGKディミトリエフスキが弾いたものの、シスの足に当たってオウンゴールを献上してしまうことに。更に40分にはトレホのバックパスをアスパスに奪われて、3点差にされていたのは困りもんですが、カメジョやファルカオを投入しても1点も返せないのではねえ(最終結果3-0)。 さすがにこれには前節0-0で引き分けたアスレティック戦の後には、チャンスは作っているからと太っ腹に構えていたイラオラ監督も、「Me preocupa que hemos dejado de hacer goles/メ・プレオクパ・ケ・エモス・デハードー・デ・アセール・ゴーレス(ウチがゴールを入れなくなったことを心配している)。シュート精度がなくなって、それはこれまでなかったことだから」と言っていましたが、まあ、それでも6位のビジャレアルと勝ち点3差で7位はキープしていますからね。金曜に土壇場でカディスと2-2と引分け、一旦は降格圏を脱出しながら、他の試合の結果で週明けにはまた18位と、蟻地獄状態に陥っている弟分仲間のヘタフェよりはずっとマシでは?とりあえず、ラージョとしてはこの1週間、シュート練習に精を出して、エスタディオ・バジェカスのファンの応援が期待できるこの土曜、ヘタフェ、アトレティコに連敗しているジローナ相手に巻き返しを図るしかありませんよね。 え、それで今週、マドリッド勢として唯一、ミッドウィークに試合があるレアル・マドリーはどうしているのかって?いやあ、彼らは土曜にサンティアゴ・ベルナベウでエスパニョール戦だったんですが、何より嬉しかったのは、もちろん先週末はかなり気温が上がり、ヒートテックを重ね着しなくてもよくなったこともあるんですけどね。今年は夜9時からの試合が多かったため、久々に午後2時というお日様の照る時間に観戦できたことだったかと。だからって、水曜のCL16強対決リバプール戦2ndレグの先乗り隊なのか、バケーションを兼ねて来ているらしい、結構な数のイギリス人ファンたちのようにショートパンツや生足サンダルで出歩く程、暑くはなかったはずですが、そんな陽気も影響したか、まさかマドリーの選手たちが眠ったまま、ピッチに出てしまうとは。 ええ、開始早々のブライトワイテのシュートはDFに当たって逸れたものの、7分には左SBに入っていたカマビンガがルーベン・サンチェスを逃し、そのラストパスをホセルにエリア内からワンタッチで決められてしまう始末。ただこの日はそのおかげで、持ち前のレモタンダーダ精神が早い時間から発揮されることになったんです!口火を切ったのはビニシウスで、後で当人も「Es una jugada que entreno bastante pero en los partidos es más difícil/エス・ウナ・フガダ・ケ・エントレノ・バスタンテ・ペロ・エン・ロス・パルティードス・エス・マス・ディフィシル(よく練習しているプレーなんだけど、試合では難しいんだ)。ボクには沢山の選手が付いてくるからね」と説明していたんですけどね。22分にはエリア内で前を塞ぐエスパニョールの選手4人の隙間を狙い、ゴールを決めてしまったから、ビックリしたの何のって。 それで当人も調子に乗ったか、32分には手をかけてルーベン・サンチェスを止め、イエローカードをもらい、FWながら今季もう8枚目という、不名誉な記録を作っていたりもしたんですけどね。実際、ここ数週、バルサが2001年から2018年まで、元審判で審判技術委員会の副委員長を務めていたネグレイラ氏の会社に730万ユーロ(約11億円)という大金を払い、ジャッジに手心を加えてもらっていたのではないかという疑惑がどんどん拡大。 検察がバルサやバルトメウ前会長らを贈賄で提訴することになったことから、マドリーもエスパニョール戦の前に役員会を開き、捜査が終わった暁には独自に訴えを起こすことを表明したせいもあったんでしょうか。スタンドには審判に対する不穏な空気が漂ったんですが、39分にチュアメニのクロスから、ミリトンが見事なヘッドで2点目を挙げ、あっさり逆転してくれたとなれば、場内はもう、お祭りムードですって。 2-1で始まった後半は割と落ち着いていて、いやあ、何せマドリーにはCLリバプール戦だけでなく、日曜にもリーガ・クラシコ(伝統の一戦)と大事な試合が控えていましたからね。25分過ぎにはアンチェロッティ監督もモドリッチ、クロース、チュアメニら、中盤の選手を休ませて、アセンシオ、セバージョス、リュディガーを投入。30分にはロドリゴのFKがゴールバーを直撃というドッキリもあったものの、そのままスコアは変わらずに終わるかと思ったところ…ロスタイムにまさか、マドリーの3点目を見ることができようとは! ええ、この時はカマビンガがボランチに戻るのに合わせ、CBから左SBに移っていたナチョが敵陣をドリブルで爆走。そのラストパスをアセンシオがエリア内から決めて、ここ2試合出番のなかった憂さを晴らしていたんですが、何せこのところ、3試合で1点しか取れていなかったマドリーですからね。しかもその日は足首を痛めたベンゼマがお休みしていただけに、首位との勝ち点差9を縮める役には立たなかったとはいえ、3-1での勝利はこの先のビッグゲームに向けて、いい励みになったのでは? え、水曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのリバプール戦はアンフィールドでの1stレグで2-5と大勝しているんだし、前節にはマンチェスター・ユナイテッドを7-0と粉砕した相手も同日はプレミアリーグ下位のボーンマスに1-0の最少得点差負け。やはりCL決勝を戦った昨季と比べると、安定してないため、気楽に構えていてもいいんじゃないかって?いやあ、それがアンチェロッティ監督も「Hemos tenido la experiencia del año pasado contra el Chelsea/エモス・テニードー・ラ・エクスペリエンシア・デル・アーニョ・パサードー・コントラ・エル・チェルシー(ウチには昨季のチェルシー戦の経験がある)」と言っていたように、その準々決勝1stレグでマドリーはスタンフォード・ブリッジで1-3と余裕の勝利。 ところが、相手のトゥーヘル監督が「もう結果は決まった」とその時、白旗を揚げていたのを信用してしまったか、サンティアゴ・ベルナベウでの2ndレグで後半30分までに3点を取られ、まさかの逆転をされてしまう破目に。最後はロドリゴのゴールで延長戦にもつれ込むと、ベンゼマが2-3として、総合スコア5-4で勝ち抜けたんですが、もしやその試合、ファンを喜ばすためにわざと、レモンターダのお膳立てをしたんじゃないかと疑ってしまったのは、私だけではなかった? どちらにしろ、マドリーは「Tenemos ventaja, por eso somos favoritos/テネモス・ベンタハ、ポル・エソ・ソモス・ファボリートス(ウチはアドバンテージを持っていて、だから勝ち抜け候補だ)。それでもあと90分間を1stレグと同じ態度でプレーしないといけない」(アンチェロッティ監督)んですが、エスパニョール戦をお休みしたベンゼマ、そしてようやくメンディもリバプール戦では復帰。1年ぶりのCL決勝トーナメントの晴れ舞台ですし、4月からスペインでCLが1試合も見られなくなるのもつまらないので、私も全力で彼らを応援していますが、当面はあまり心臓が引っくり返りそうな思いをファンにさせずに、順調に準々決勝に駒を進めてくれたらいいですよね。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.03.15 20:00 Wed
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