【ラ・リーガ シーズンプレビュー】盤石王者マドリーに積極補強バルサが挑む! 久保建英は新天地で勝負の1年目
2022.08.12 20:00 Fri
2022-23シーズンのラ・リーガが8月12日(金)に開幕を迎える。昨シーズンはバルセロナ、アトレティコ・マドリーの大きな躓きもあり、シーズンを通して安定感際立ったレアル・マドリーが2シーズンぶり35度目の優勝を果たした。だが、今シーズンはその王者と、物議醸す大型補強を敢行したバルセロナとの壮絶な一騎打ちが期待されるところだ。

ディフェンディングチャンピオンにして、昨季のチャンピオンズリーグ(CL)王者でもあるレアル・マドリーが今季もタイトルレースの大本命だ。昨季はDFセルヒオ・ラモス、DFヴァランら長らくディフェンスラインを支えた重鎮の退団によって、守備面に不安を抱えて臨んだシーズンだったが、新加入DFアラバの圧倒的な存在感、DFミリトンの急成長、守護神クルトワのハイパフォーマンスによって、その課題をクリア。さらに、黄金の中盤による圧倒的な構成力、FWヴィニシウスのゴールスコアラーとしての覚醒により、破壊力を増した攻撃陣と、対戦相手に全く隙を与えない安定した戦いぶりで、余裕を残して優勝を決めた。
アンチェロッティ体制2年目で臨む今季に向けては前カピタンのマルセロやMFイスコ、FWベイル、FWヨビッチら控えメンバーが退団し、次代のフットボール界を担う逸材MFチュアメニ、チェルシーでワールドクラスに成長したDFリュディガーの2選手を補強。ディフェンスラインと中盤にクオリティと厚みを加えた。これにより、中盤ではMFバルベルデ、加入2年目のMFカマヴィンガを含めた質の高いターンオーバー、ディフェンスラインではDFアラバの左サイドバック起用が可能となった。
開幕前に行われたフランクフルトとのUEFAスーパーカップに完勝し、すでに今季初タイトルを獲得したエル・ブランコは、シーズン6冠達成に向けて最高の滑り出しを見せた。だが、史上初となるワールドカップ開催に伴うシーズン途中の中断と共に、エースFWベンゼマのバックアップ不在が唯一の懸念材料だ。
とはいえ、ディフェンスラインの安定、世界屈指の中盤の存在、ヴィニシウス、ロドリゴの伸びしろを考えれば、大崩れする可能性は限りなく低い。慌てず騒がず、的確に采配を振るう百戦錬磨の指揮官の手腕を含め、今季もリーグタイトル争いを牽引するはずだ。
◆未来を担保に超大型補強で覇権奪還期す~バルセロナ~

昨季の屈辱のシーズン無冠からの巻き返しを図り、今夏に物議を醸す大型補強を敢行したバルセロナがレアル・マドリーの対抗だ。
前経営陣による放漫経営のツケを払い、昨夏にFWメッシが電撃退団するなど大混乱に見舞われたバルセロナ。ロナルド・クーマン前監督の下では乏しい戦力、指揮官の求心力低下で不安定な戦いに終始した結果、昨年11月にチャビ監督を新指揮官に招へい。レジェンドによる戦術面の原点回帰、今冬の大型補強により息を吹き返したチームは、ヨーロッパリーグ(EL)での屈辱的な敗退はあったものの、ライバルの取りこぼしが目立つ中で順調に勝ち点を積み重ねて最低限のノルマだった2位フィニッシュに成功した。
2018–19シーズンの優勝から3シーズン遠ざかるラ・リーガ制覇に向け、捲土重来を期すブラウグラナは、引き続き深刻な財政難に喘ぐ中で今後のテレビ放映権の25%、クラブ子会社の一部株式売却などで6億ユーロ以上の資金を調達。これにより、FWレヴァンドフスキ、FWハフィーニャ、DFクンデを高額な移籍金で、DFクリステンセン、MFケシエをフリートランスファーで獲得。さらに、DFマルコス・アロンソやMFベルナルド・シウバの獲得に動いているとの報道もある。
プレシーズンではレヴァンドフスキやハフィーニャがMFペドリ、FWデンベレらと好連携を見せるなど、攻撃陣を中心に好調を維持。DFアラウホやFWアンス・ファティ、MFガビら自慢の若手も更なる成長の兆しを見せており、ピッチ内においては躍進に向けてポジティブな材料の宝庫だ。
その一方で、DFユムティティやFWブラースヴァイトら余剰人員の整理の遅れ、ラ・リーガのサラリーキャップに対するクラブサイドの見積もりの甘さにより、開幕直前にも関わらず、新戦力や契約更新を行ったMFセルジ・ロベルト、デンベレが登録できずにいる点は大きな懸念だ。ラポルタ会長を含むクラブ首脳陣はギリギリでの登録を楽観視するが、子会社の株式の追加売却やMFフレンキー・デ・ヨング、FWデパイ、FWオーバメヤンの売却、昨季に続く一部主力の減俸受け入れが必要となるかもしれない。
ただ、前述の問題がすべてクリアされたあかつきには、チャビ体制2年目のバルセロナは、リーグ戦ではレアル・マドリーの有力な対抗馬、2014–15シーズン以来タイトルから遠ざかるCLでは優勝候補の一角となる魅力的なチームとなるはずだ。
◆11年目迎えるシメオネ体制は正念場迎える~アトレティコ・マドリー~

一昨シーズンの王者は連覇を期待された昨季の低迷により、正念場のシーズンを戦う。
2020-21シーズンは見事な勝負強さを発揮し、7シーズンぶりのプリメーラ制覇を成し遂げたアトレティコ。昨季は連覇に向けて積極的な補強を敢行して下馬評では本命に挙げられながらも、シメオネ体制ワーストの43失点を喫するなど、チームの根幹である堅守が崩壊。FWグリーズマンやFWクーニャの補強で充実を図った攻撃も、前シーズンの数字を下回り、戦術的なアップデートのなさも含めてサイクル終焉を感じざるを得ない厳しいシーズンを最終的に3位で終えることになった。
それでも、チョロ体制の継続を決断したコルチョネロスは今夏の移籍市場でFWルイス・スアレス、MFエクトル・エレーラのベテラン2選手らが契約満了によりチームを離れた一方、MFヴィツェル、DFモリーナの2選手を獲得。また、今後の去就は不透明も、FWモラタとMFサウールの実力者2人もレンタルバックという形でチームに復帰している。
DFトリッピアーの退団以降は泣き所となっていた右サイドの問題を解決するモリーナの加入は非常に大きいが、昨季から大きなメンバーの入れ替えはない。個人としてはグリーズマン、FWフェリックス、MFマルコス・ジョレンテらの奮起に期待しつつ、シメオネ監督を中心とする戦術面のアップデートが覇権奪還のカギを握るはずだ。
◆戦力的な上積み乏しく3強との差広がる~オトラ・リーガ~

前述の3強を除くオトラ・リーガは、いずれのクラブも財政面で少なからず問題を抱えており、開幕直前の現時点では3強との間で戦力差が広がっている印象だ。
そのため、セビージャ、ベティスのアンダルシア勢、ビジャレアル、レアル・ソシエダと昨季のヨーロッパコンペティション争いを演じた4チームが3強に挑む構図となりそうだ。
昨季4位のセビージャはリーグ最高の堅守を武器に、優勝したレアル・マドリーと同じリーグ最少の敗戦数(4敗)と安定したパフォーマンスを披露。しかし、後半戦に深刻な得点力不足に陥り、リーグ最多の16分けと勝ち切れない試合が続いた。これにより、アトレティコ同様にロペテギ体制終焉も噂されたが、最終的に続投が決定した。
ただ、今季に向けては堅守構築の立役者だったDFクンデとDFジエゴ・カルロスの主力センターバックコンビがいずれも移籍。代わってチームはガラタサライで評価を高めたDFマルコンを獲得し、手薄な左サイドバックにDFアレックス・テレス、前線のテコ入れとしてMFイスコを補強している。今後も引き続きセンターバックやストライカー、中盤の補強に動く構えだが、現時点での戦力値は昨季からマイナスと言わざるを得ない。ロペテギ監督としてはディフェンスライン、MFフェルナンドに依存するアンカー、イスコを中心とする攻撃と各ポジションでの再整備が求められる。
昨季のリーグ戦を5位で終え、コパ・デル・レイを制したベティスは、ペジェグリーニ3年目で継続路線を歩む。今夏の移籍市場ではDFベジェリン、FWテージョの主力クラスの2選手が退団し、代わってラツィオを退団したDFルイス・フェリペ、フルミネンセから若手逸材FWルイス・エンヒキを補強。ベジェリンの再獲得や中盤、ワイドのポジションでの更なる補強も見込まれるが、MFカナーレス、FWフェキル、FWフアンミ、MFギド・ロドリゲスら昨季の主力選手のパフォーマンスがカギを握る。
昨季は7位フィニッシュと期待外れの結果に終わるも、CLではベスト4進出の快挙を果たしたビジャレアルは、こちらも現時点では昨季の戦いがベースとなる。移籍市場ではGKアセンホ、DFガスパール、MFモイ・ゴメス、MFイボーラといった準主力が去り、GKレイナ、DFキコ・フェメニア、FWホセ・モラレスら経験豊富なベテランが加入。
DFパウ・トーレスやFWジェラール・モレノ、FWダンジュマといった市場の人気銘柄の残留は朗報だが、昨季以上の成績を残すためにはMFロ・チェルソの買い取りを含め中盤、ディフェンスラインの戦力拡充が求められる。また、昨季は離脱が少なくなかったジェラール・モレノやFWピノらアタッカー陣がシーズンを通してプレーすることも重要だ。
昨季6位のソシエダは魅力的なフットボールを披露し、CL出場権争いにも絡む上々のシーズンを過ごした。更なる躍進が期待される今季に向けては、メンバーの入れ替わりが激しい夏に。FWセルロートやMFラフィーニャがレンタル先に戻ったほか、MFヤヌザイやFWポルトゥ、MFグリディ、DFサルドゥアら準主力が退団。代わってMF久保建英、MFブライス・メンデス、リーグ・アン注目の逸材FWモハメド=アリ・チョ、自慢のカンテラから数選手が昇格した。
昨季は守護神レミロ、DFル・ノルマン、MFメリーノのセンターラインを中心とする堅守が光った一方、攻撃はリーグ平均以下の40得点にとどまり、上位浮上に向けては攻撃面の改善が急務。エースFWオヤルサバルが昨季に負ったヒザ前十字じん帯の重傷により、シーズン序盤戦不在の中で久保ら新戦力と共に、昨季わずか6ゴールに終わったFWイサクの奮起が求められる。
その他のクラブではディエゴ・マルティネス監督、ガットゥーゾ監督を新指揮官に迎えたエスパニョール、バレンシア。今夏の積極補強が光るセルタに注目が集まる。
グラナダ時代にチームをEL出場権をもたらすなど、卓越した手腕を発揮したマルティネス監督は1年の休養期間にイングランドなどで指導者としての研鑽を積み、チームはMFダルデルとFWデ・トーマスの両エースの残留に加え、新守護神ルコントやFWホセルといった実力者を補強。少なくともEL出場権争いには絡みそうだ。
一方、わずか1年でボルダラス前監督と袂を分かったバレンシアは元イタリア代表MFでミラン、ナポリの指揮官を歴任した闘将を招へい。財政問題を抱えるクラブはエースFWゴンサロ・ゲデスらを売却し、代わりとなる新戦力を確保できていない状況だが、MFカスティジェホ、FWサムエウ・リーノに加え、市場閉幕までにレンタルなどを活用しながら指揮官をバックアップする構えだ。
昨季11位のセルタはブライス・メンデスやFWノリートら数選手がチームを離れたものの、GKマルチェシン、DFウナイ・ヌニェス、DFミンゲサ、MFオスカル・ロドリゲス、FWパシエンシア、FWカルレス・ペレスら各ポジションに好タレントを補強しており、昨季サラ賞を獲得したFWアスパスも健在なこともあり、上位進出が期待される。
グラナダ、レバンテ、アラベスに代わってプリメーラ昇格となったアルメリア、バジャドリー、ジローナの3チームは、ひとまず残留が目標となる。
セグンダ王者のアルメリアでは主砲サディク・ウマルら昇格に貢献した主力に加え、今夏加入したブラジル代表の次代を担う逸材センターバックのカイキに注目。1年でのプリメーラ復帰となったバジャドリーはここまで目立った補強はなく、FWヴァイスマン、FWセルヒオ・レオンら現有戦力の躍動に期待。昇格プレーオフを制したジローナは昨季セグンダ得点王のFWストゥアーニが健在で、『シティ・フットボール・グループ』が保有する若手タレントの活躍も期待される。
◆久保建英がラ・レアルに完全移籍~日本人選手~

今シーズンのラ・リーガは昨季に続きMF久保建英が唯一の日本人選手となる。ただ、レンタル先のマジョルカから保有元のレアル・マドリーに一旦復帰した久保は、レアル・ソシエダへの完全移籍という大きな決断を下し、キャリアにおいて重要なシーズンに臨む。
ソシエダはこれまで在籍したマジョルカやビジャレアル、ヘタフェに比べてボールポゼッションを重視するプレースタイル、チームメイトのレベルを含めて最もプレーしやすい環境と言える。
チームを率いるアルグアシル監督は[4-4-2]や[4-2-3-1]、[4-3-1-2]、[4-3-3]と複数のシステムを使い分けており、久保に関しては右サイドやトップ下、インテリオールでの起用が見込まれる。
右サイドではチョやブライス・メンデスの新加入組、トップ下ではMFダビド・シルバ、MFロベルト・ナバーロらがポジション争いのライバルとなる。
プレシーズンは上々のアピールを見せたが、ポジション奪取に向けては昨季マジョルカで27試合1ゴール1アシストにとどまった数字面の改善が必須だ。
PR
◆的確補強で大本命もエースのバックアップ不在が唯一の懸念~レアル・マドリー~
Getty Images
ディフェンディングチャンピオンにして、昨季のチャンピオンズリーグ(CL)王者でもあるレアル・マドリーが今季もタイトルレースの大本命だ。昨季はDFセルヒオ・ラモス、DFヴァランら長らくディフェンスラインを支えた重鎮の退団によって、守備面に不安を抱えて臨んだシーズンだったが、新加入DFアラバの圧倒的な存在感、DFミリトンの急成長、守護神クルトワのハイパフォーマンスによって、その課題をクリア。さらに、黄金の中盤による圧倒的な構成力、FWヴィニシウスのゴールスコアラーとしての覚醒により、破壊力を増した攻撃陣と、対戦相手に全く隙を与えない安定した戦いぶりで、余裕を残して優勝を決めた。
開幕前に行われたフランクフルトとのUEFAスーパーカップに完勝し、すでに今季初タイトルを獲得したエル・ブランコは、シーズン6冠達成に向けて最高の滑り出しを見せた。だが、史上初となるワールドカップ開催に伴うシーズン途中の中断と共に、エースFWベンゼマのバックアップ不在が唯一の懸念材料だ。
今夏の移籍市場では一時は獲得確実と見られたFWムバッペに加え、以前からターゲットにしていたFWハーランドという次代のバロンドール候補の獲得に失敗。また、ペレス会長、アンチェロッティ監督共に補強終了を明言しており、ベイル、ヨビッチが退団したセンターフォワードの選手層はより薄くなっている。イタリア人指揮官はFWアザールのファルソ・ヌエベ(偽9番)起用やFWロドリゴ、FWマリアーノを不在時に起用する意向だが、仮に昨季のピチーチ受賞FWが長期離脱を強いられれば、一転して厳しい戦いを強いられる。
とはいえ、ディフェンスラインの安定、世界屈指の中盤の存在、ヴィニシウス、ロドリゴの伸びしろを考えれば、大崩れする可能性は限りなく低い。慌てず騒がず、的確に采配を振るう百戦錬磨の指揮官の手腕を含め、今季もリーグタイトル争いを牽引するはずだ。
◆未来を担保に超大型補強で覇権奪還期す~バルセロナ~

Getty Images
昨季の屈辱のシーズン無冠からの巻き返しを図り、今夏に物議を醸す大型補強を敢行したバルセロナがレアル・マドリーの対抗だ。
前経営陣による放漫経営のツケを払い、昨夏にFWメッシが電撃退団するなど大混乱に見舞われたバルセロナ。ロナルド・クーマン前監督の下では乏しい戦力、指揮官の求心力低下で不安定な戦いに終始した結果、昨年11月にチャビ監督を新指揮官に招へい。レジェンドによる戦術面の原点回帰、今冬の大型補強により息を吹き返したチームは、ヨーロッパリーグ(EL)での屈辱的な敗退はあったものの、ライバルの取りこぼしが目立つ中で順調に勝ち点を積み重ねて最低限のノルマだった2位フィニッシュに成功した。
2018–19シーズンの優勝から3シーズン遠ざかるラ・リーガ制覇に向け、捲土重来を期すブラウグラナは、引き続き深刻な財政難に喘ぐ中で今後のテレビ放映権の25%、クラブ子会社の一部株式売却などで6億ユーロ以上の資金を調達。これにより、FWレヴァンドフスキ、FWハフィーニャ、DFクンデを高額な移籍金で、DFクリステンセン、MFケシエをフリートランスファーで獲得。さらに、DFマルコス・アロンソやMFベルナルド・シウバの獲得に動いているとの報道もある。
プレシーズンではレヴァンドフスキやハフィーニャがMFペドリ、FWデンベレらと好連携を見せるなど、攻撃陣を中心に好調を維持。DFアラウホやFWアンス・ファティ、MFガビら自慢の若手も更なる成長の兆しを見せており、ピッチ内においては躍進に向けてポジティブな材料の宝庫だ。
その一方で、DFユムティティやFWブラースヴァイトら余剰人員の整理の遅れ、ラ・リーガのサラリーキャップに対するクラブサイドの見積もりの甘さにより、開幕直前にも関わらず、新戦力や契約更新を行ったMFセルジ・ロベルト、デンベレが登録できずにいる点は大きな懸念だ。ラポルタ会長を含むクラブ首脳陣はギリギリでの登録を楽観視するが、子会社の株式の追加売却やMFフレンキー・デ・ヨング、FWデパイ、FWオーバメヤンの売却、昨季に続く一部主力の減俸受け入れが必要となるかもしれない。
ただ、前述の問題がすべてクリアされたあかつきには、チャビ体制2年目のバルセロナは、リーグ戦ではレアル・マドリーの有力な対抗馬、2014–15シーズン以来タイトルから遠ざかるCLでは優勝候補の一角となる魅力的なチームとなるはずだ。
◆11年目迎えるシメオネ体制は正念場迎える~アトレティコ・マドリー~

Getty Images
一昨シーズンの王者は連覇を期待された昨季の低迷により、正念場のシーズンを戦う。
2020-21シーズンは見事な勝負強さを発揮し、7シーズンぶりのプリメーラ制覇を成し遂げたアトレティコ。昨季は連覇に向けて積極的な補強を敢行して下馬評では本命に挙げられながらも、シメオネ体制ワーストの43失点を喫するなど、チームの根幹である堅守が崩壊。FWグリーズマンやFWクーニャの補強で充実を図った攻撃も、前シーズンの数字を下回り、戦術的なアップデートのなさも含めてサイクル終焉を感じざるを得ない厳しいシーズンを最終的に3位で終えることになった。
それでも、チョロ体制の継続を決断したコルチョネロスは今夏の移籍市場でFWルイス・スアレス、MFエクトル・エレーラのベテラン2選手らが契約満了によりチームを離れた一方、MFヴィツェル、DFモリーナの2選手を獲得。また、今後の去就は不透明も、FWモラタとMFサウールの実力者2人もレンタルバックという形でチームに復帰している。
DFトリッピアーの退団以降は泣き所となっていた右サイドの問題を解決するモリーナの加入は非常に大きいが、昨季から大きなメンバーの入れ替えはない。個人としてはグリーズマン、FWフェリックス、MFマルコス・ジョレンテらの奮起に期待しつつ、シメオネ監督を中心とする戦術面のアップデートが覇権奪還のカギを握るはずだ。
◆戦力的な上積み乏しく3強との差広がる~オトラ・リーガ~

Getty Images
前述の3強を除くオトラ・リーガは、いずれのクラブも財政面で少なからず問題を抱えており、開幕直前の現時点では3強との間で戦力差が広がっている印象だ。
そのため、セビージャ、ベティスのアンダルシア勢、ビジャレアル、レアル・ソシエダと昨季のヨーロッパコンペティション争いを演じた4チームが3強に挑む構図となりそうだ。
昨季4位のセビージャはリーグ最高の堅守を武器に、優勝したレアル・マドリーと同じリーグ最少の敗戦数(4敗)と安定したパフォーマンスを披露。しかし、後半戦に深刻な得点力不足に陥り、リーグ最多の16分けと勝ち切れない試合が続いた。これにより、アトレティコ同様にロペテギ体制終焉も噂されたが、最終的に続投が決定した。
ただ、今季に向けては堅守構築の立役者だったDFクンデとDFジエゴ・カルロスの主力センターバックコンビがいずれも移籍。代わってチームはガラタサライで評価を高めたDFマルコンを獲得し、手薄な左サイドバックにDFアレックス・テレス、前線のテコ入れとしてMFイスコを補強している。今後も引き続きセンターバックやストライカー、中盤の補強に動く構えだが、現時点での戦力値は昨季からマイナスと言わざるを得ない。ロペテギ監督としてはディフェンスライン、MFフェルナンドに依存するアンカー、イスコを中心とする攻撃と各ポジションでの再整備が求められる。
昨季のリーグ戦を5位で終え、コパ・デル・レイを制したベティスは、ペジェグリーニ3年目で継続路線を歩む。今夏の移籍市場ではDFベジェリン、FWテージョの主力クラスの2選手が退団し、代わってラツィオを退団したDFルイス・フェリペ、フルミネンセから若手逸材FWルイス・エンヒキを補強。ベジェリンの再獲得や中盤、ワイドのポジションでの更なる補強も見込まれるが、MFカナーレス、FWフェキル、FWフアンミ、MFギド・ロドリゲスら昨季の主力選手のパフォーマンスがカギを握る。
昨季は7位フィニッシュと期待外れの結果に終わるも、CLではベスト4進出の快挙を果たしたビジャレアルは、こちらも現時点では昨季の戦いがベースとなる。移籍市場ではGKアセンホ、DFガスパール、MFモイ・ゴメス、MFイボーラといった準主力が去り、GKレイナ、DFキコ・フェメニア、FWホセ・モラレスら経験豊富なベテランが加入。
DFパウ・トーレスやFWジェラール・モレノ、FWダンジュマといった市場の人気銘柄の残留は朗報だが、昨季以上の成績を残すためにはMFロ・チェルソの買い取りを含め中盤、ディフェンスラインの戦力拡充が求められる。また、昨季は離脱が少なくなかったジェラール・モレノやFWピノらアタッカー陣がシーズンを通してプレーすることも重要だ。
昨季6位のソシエダは魅力的なフットボールを披露し、CL出場権争いにも絡む上々のシーズンを過ごした。更なる躍進が期待される今季に向けては、メンバーの入れ替わりが激しい夏に。FWセルロートやMFラフィーニャがレンタル先に戻ったほか、MFヤヌザイやFWポルトゥ、MFグリディ、DFサルドゥアら準主力が退団。代わってMF久保建英、MFブライス・メンデス、リーグ・アン注目の逸材FWモハメド=アリ・チョ、自慢のカンテラから数選手が昇格した。
昨季は守護神レミロ、DFル・ノルマン、MFメリーノのセンターラインを中心とする堅守が光った一方、攻撃はリーグ平均以下の40得点にとどまり、上位浮上に向けては攻撃面の改善が急務。エースFWオヤルサバルが昨季に負ったヒザ前十字じん帯の重傷により、シーズン序盤戦不在の中で久保ら新戦力と共に、昨季わずか6ゴールに終わったFWイサクの奮起が求められる。
その他のクラブではディエゴ・マルティネス監督、ガットゥーゾ監督を新指揮官に迎えたエスパニョール、バレンシア。今夏の積極補強が光るセルタに注目が集まる。
グラナダ時代にチームをEL出場権をもたらすなど、卓越した手腕を発揮したマルティネス監督は1年の休養期間にイングランドなどで指導者としての研鑽を積み、チームはMFダルデルとFWデ・トーマスの両エースの残留に加え、新守護神ルコントやFWホセルといった実力者を補強。少なくともEL出場権争いには絡みそうだ。
一方、わずか1年でボルダラス前監督と袂を分かったバレンシアは元イタリア代表MFでミラン、ナポリの指揮官を歴任した闘将を招へい。財政問題を抱えるクラブはエースFWゴンサロ・ゲデスらを売却し、代わりとなる新戦力を確保できていない状況だが、MFカスティジェホ、FWサムエウ・リーノに加え、市場閉幕までにレンタルなどを活用しながら指揮官をバックアップする構えだ。
昨季11位のセルタはブライス・メンデスやFWノリートら数選手がチームを離れたものの、GKマルチェシン、DFウナイ・ヌニェス、DFミンゲサ、MFオスカル・ロドリゲス、FWパシエンシア、FWカルレス・ペレスら各ポジションに好タレントを補強しており、昨季サラ賞を獲得したFWアスパスも健在なこともあり、上位進出が期待される。
グラナダ、レバンテ、アラベスに代わってプリメーラ昇格となったアルメリア、バジャドリー、ジローナの3チームは、ひとまず残留が目標となる。
セグンダ王者のアルメリアでは主砲サディク・ウマルら昇格に貢献した主力に加え、今夏加入したブラジル代表の次代を担う逸材センターバックのカイキに注目。1年でのプリメーラ復帰となったバジャドリーはここまで目立った補強はなく、FWヴァイスマン、FWセルヒオ・レオンら現有戦力の躍動に期待。昇格プレーオフを制したジローナは昨季セグンダ得点王のFWストゥアーニが健在で、『シティ・フットボール・グループ』が保有する若手タレントの活躍も期待される。
◆久保建英がラ・レアルに完全移籍~日本人選手~

Getty Images
今シーズンのラ・リーガは昨季に続きMF久保建英が唯一の日本人選手となる。ただ、レンタル先のマジョルカから保有元のレアル・マドリーに一旦復帰した久保は、レアル・ソシエダへの完全移籍という大きな決断を下し、キャリアにおいて重要なシーズンに臨む。
ソシエダはこれまで在籍したマジョルカやビジャレアル、ヘタフェに比べてボールポゼッションを重視するプレースタイル、チームメイトのレベルを含めて最もプレーしやすい環境と言える。
チームを率いるアルグアシル監督は[4-4-2]や[4-2-3-1]、[4-3-1-2]、[4-3-3]と複数のシステムを使い分けており、久保に関しては右サイドやトップ下、インテリオールでの起用が見込まれる。
右サイドではチョやブライス・メンデスの新加入組、トップ下ではMFダビド・シルバ、MFロベルト・ナバーロらがポジション争いのライバルとなる。
プレシーズンは上々のアピールを見せたが、ポジション奪取に向けては昨季マジョルカで27試合1ゴール1アシストにとどまった数字面の改善が必須だ。
PR
レアル・マドリーの関連記事
ラ・リーガの関連記事
|
レアル・マドリーの人気記事ランキング
1
「あんな回転のかけ方をするとは」直接FK2発を叩き込まれたクルトワ、反省を口にするも2本目を称賛「これ以上の完璧なキックはできなかったと思う」
レアル・マドリーのベルギー代表GKティボー・クルトワが、完璧に決められた2つのFKを振り返った。クラブ公式サイトが伝えた。 8日、チャンピオンズリーグ(CL)準々決勝1stレグでマドリーはアーセナルとアウェイで対戦した。 2005-06シーズン以来の顔合わせとなった両者。当時はラウンド16で対戦しマドリーは敗れており、約20年ぶりにリベンジの機会を手にした。 試合は前半はマドリーがカウンターでゴールに迫るもGKダビド・ラヤのセーブもありゴールを奪えず。ホームのアーセナルもゴールに迫っていくが、GKクルトワが好セーブで凌いでいた。 ゴールレスのまま後半を迎えた中、アーセナルのデクラン・ライスが火を吹くことに。ボックス手前でFKを得ると2度続けて直接完璧なコースに蹴り込み2ゴール。さらにミケル・メリーノにもゴールを許し3-0で敗戦に終わった。 敵地での1stレグで敗れたマドリー。ゴールを守っていたクルトワはアーセナルの強さを認めながらも、2ndレグにしっかりと臨んでいくと意気込んだ。 「アーセナルはホームで強いチームだ。ライン間でのプレーが上手く、多くのチャンスを作り出してきた。前半は持ちこたえ、カウンターアタックで何度もチャンスを作った。しかし後半は、サッカーのやり方を忘れてしまい、相手をフリーにさせ、ボールを落ち着いて扱えなかった。フリーキックから2つの素晴らしいゴールを許し、3点目以降は良い対応ができなかった」 「0-3の敗北は辛いが、ホームでは強いチームだ。ファンのみんなはチームを信じてくれるはずだ。この結果を覆すために全力を尽くす。可能性はあるが、努力を重ね、ミスを正さなければならない」 また、完璧なコースに決められた2本のFKについても言及。ライスの実力を知っていたとし、危険な位置でのFKを相手に与えないことが大事だとした。 「アーセナルはマンチェスター・シティに勝利し、ホームでリバプールにも得点を挙げた。彼らは攻撃力の高いチームだ」 「最初の失点は、良い壁を築けたと思った。いつもはシュートを止めるために1人多く配置するけど、相手はシュートが強かった。責任を取って、壁に追加で1人配置する」 「彼がFKのキッカーとして非常に優れていることは知っていたけど、あんな回転のかけ方をするとは思わなかった」 「2点目のゴールも、これ以上の完璧なキックはできなかったと思う。危険のないところでの不必要なファウルだった。相手チームのキッカーが優れていると分かっているなら、ああいったファウルは犯すべきではない。第2戦に向けて、引き続き研究していく」 <span class="paragraph-title">【動画】ライスが衝撃のFK2発、アーセナルがレアルに快勝</span> <span data-other-div="movie"></span> <script>var video_id ="yHf6xP4ihKM";var video_start = 0;</script><div style="text-align:center;"><div id="player"></div></div><script src="https://web.ultra-soccer.jp/js/youtube_autoplay.js"></script> 2025.04.09 12:10 Wed2
ラニエリ後任探すローマ、トッティはモウリーニョと並ぶ稀代の名将を推す
ローマのレジェンドであるフランチェスコ・トッティ氏が、古巣の新指揮官候補と目されるレアル・マドリーのカルロ・アンチェロッティ監督を推している。 今シーズンはダニエレ・デ・ロッシ、イバン・ユリッチと2人の指揮官をすでに解任するなど厳しいシーズンとなったローマ。それでも、現在はクラウディオ・ラニエリ監督の下ではチャンピオンズリーグ(CL)出場圏内の4位と4ポイント差の7位まで盛り返している。 ただ、ラニエリ監督は来シーズンの続投を否定しており、クラブアドバイザーとして新指揮官の選考にも深く関与している。 理想的な候補として当初から報じられているのは、現役時代にジャッロロッシでカピターノを務め、スクデット獲得に貢献した現マドリー指揮官。 マドリーとの現行契約は2026年までとなっており、招へいは現実的ではないとの見方が強いが、ここにきてラ・リーガ、CLでの苦戦によって今季限りでの解任の可能性も取り沙汰されており、わずかながらチャンスも出てきた状況だ。 そんななか、クラブレジェンドのトッティ氏はイタリア『La Repubblica』でラニエリ監督の後任人事について意見を述べ、アンチェロッティ監督を歓迎している。 「アンチェロッティとモウリーニョは世界最高の指揮官だ。どちらが好みか? モウリーニョはすでに試した。もしアンチェロッティが検討しているなら、歓迎するだろうね」 なお、アンチェロッティ監督以外ではアタランタのジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督などイタリア人指揮官を中心の複数の候補の名前が挙がるなか、渦中のラニエリ監督はイタリア『Il Messaggero』で「新監督の決定は間近だ」と具体的な名前は挙げていないものの、交渉が進んでいることを明かしている。 2025.04.10 07:30 Thu3
マドリー相手にキャリア初の直接FK弾を立て続けに2本、ライスは「数年後に今夜のプレーが本当に特別だったと実感するだろう」と夢見心地
アーセナルのイングランド代表MFデクラン・ライスが8日にホームで行われ、3-0で快勝したチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝1stレグのレアル・マドリー戦を振り返った。 ライスは優勢で迎えた後半、58分にボックス手前右から壁の右側を巻く見事な直接FKで先制弾をマーク。自身キャリア初の直接FK弾を決めると、70分に今度はボックス手前左から意表を突いてゴール右上に突き刺す鋭いシュートを叩き込んだ。 世界最高のGKであるティボー・クルトワから圧巻の直接FK弾を2本決めたライスは夢見心地に試合後コメントした。 「練習では何度も壁にぶつけたり、バーを越えたりしていた。最初は壁を越すつもりだったけど、壁とGKの位置を見てあのシュートを狙ったんだ。2本目は自信があった。興奮している。幸せでとても嬉しい。でも数年後に今夜のプレーが本当に特別だったと実感するだろう」 ライスの活躍でベスト4進出に大きく近づいたアーセナルは16日にアウェイで2ndレグを戦う。 <span class="paragraph-title">【動画】ライスが衝撃のFK2発、アーセナルがレアルに快勝</span> <span data-other-div="movie"></span> <script>var video_id ="yHf6xP4ihKM";var video_start = 0;</script><div style="text-align:center;"><div id="player"></div></div><script src="https://web.ultra-soccer.jp/js/youtube_autoplay.js"></script> 2025.04.09 09:15 Wed4
ライスが圧巻の直接FK2発! アーセナルが王者マドリーに3-0先勝でベスト4進出に王手【CL】
チャンピオンズリーグ(CL)準々決勝1stレグ、アーセナルvsレアル・マドリーが8日にアーセナル・スタジアムで行われ、ホームのアーセナルが3-0で先勝した。 ラウンド16でPSVを圧勝で退けて8強入りを決めたアーセナル。ただ、プレミアリーグでは首位のリバプールに大きく水をあけられての2位と、今季獲得可能な唯一のタイトルとして悲願のビッグイヤーを目指す。アルテタ監督は1-1のドローに終わった直近のエバートン戦から先発5人を変更。ティンバー、サカ、トーマス、マルティネッリと主力が復帰し、ガブリエウの代役にはキヴィオルが起用された。 一方、前大会王者マドリーは前ラウンドでアトレティコとのマドリード・ダービーをPK戦の末に制し、ベスト8へ到達。ただ、ラ・リーガでは直近のバレンシア戦で痛恨の1-2の敗戦を喫し、優勝争いから一歩後退。その敗戦からバウンスバックを図った今回のアウェイゲームでは先発5人を変更。負傷明けの守護神クルトワ、ロドリゴとカマヴィンガ、アセンシオが復帰。両サイドバックにはバルベルデ、アラバが起用された。 開始直後にムバッペがファーストシュートを記録したが、以降はホームのアーセナルが相手のカウンターの脅威を感じながらも勇敢に前から圧力をかけて主導権を握る。 そして、ショートカウンターやセットプレー流れからトーマスが積極的に足を振っていく。ただ、マドリーの集中した守備を前に早い時間帯の先制点とはならず。 以降は右サイドのサカとウーデゴールのコンビネーションを軸にグラウンダーのクロスから際どいシーンを演出するアーセナル。これに対してマドリーは相手のビルドアップのミスを突きながら、要所で高速カウンターを発動。一進一退の攻防が続いていく。 31分にはベリンガムのスルーパスで背後を取ったムバッペがボックス左に持ち込んで右足シュートを放ってGKラヤに好守を強いる。 一方、44分にはマドリーを押し込んだアーセナルが波状攻撃。ティンバーの右クロスをゴール前のライスが頭で合わせるが、枠の左に向かったシュートはGKクルトワがビッグセーブ。さらに、こぼれに詰めたマルティネッリが左足シュートを放つが、これもクルトワにはじき出された。 全体的にはアーセナルペースも0-0で折り返した後半も試合展開自体に大きな変化はなし。51分には再びベリンガムとの連携でボックス左に抜け出したムバッペが左足シュートを放つが、これはサイドネットを叩いた。 後半は決定機まで持ち込めずにいたアーセナルだったが、圧巻の個人技でゴールをこじ開ける。58分、ボックス手前中央右の好位置で得たFKの場面でキッカーのライスが4枚の壁の外側を巻く右足シュートを狙うと、右ポストの外側から曲がってきた鋭いボールがゴール右隅に突き刺さった。 ライスの圧巻の直接FKによってホームチームが先制に成功すると、ここからマドリーがより前に出てきたことで試合はオープンな展開に。 67分には再びアーセナルにビッグチャンス。ボックス左で強引に仕掛けたルイス=スケリーからボールを引き取ったマルティネッリがゴール左でシュート。これはGKクルトワの好守に阻まれるも、ゴール前でこぼれに反応したメリーノが連続シュート。だが、1本目はDFアラバのゴールカバー、2本目はクルトワのビッグセーブに阻まれた。 その後の右CK流れのライスの決定機もゴールカバーに阻まれたが、再びガナーズの背番号41の右足が火を噴く。70分、サカの仕掛けで得たボックス手前中央左のFKの場面でキッカーのライスが壁のオープンサイドを狙って右足振り抜くと、これがゴール右上隅の完璧なコースに突き刺さった。なお、ノックアウトラウンドでの1試合2本の直接FKでのゴールはCL史上初の記録となった。 ライスの直接FK2発でリードを広げて完全に勢いづいたアルテタのチーム。さらに、75分も決定的な3点目が生まれる。左のハーフスペースをドリブルで持ち上がったライスがルイス=スケリーに繋ぐと、正確なグラウンダーの折り返しを最後はボックス中央のメリーノがうまく面を作った左足ダイレクトシュートでゴール左下隅に流し込んだ。 これで3点差となったことで、アーセナルは大事を取ってサカ、ライスを下げてトロサール、ティアニーを投入。前線と中盤の配置換えを行いながら逃げ切り態勢に入る。これに対して、後半に入って攻守にうまくいかないマドリーはモドリッチ、アラバ、ロドリゴを下げてルーカス・バスケス、フラン・ガルシア、ブラヒム・ディアスを続けて投入。両サイドバックをより攻撃的に変えた。 マドリーとしては2ndレグに望みを繋げるべく1点でも返したいところだったが、アーセナルの集中した守備を前に完全に攻撃が沈黙。さらに、試合終了間際にはカマヴィンガが2枚目のイエローカードをもらって退場となり、試合はこのままのスコアでタイムアップとなった。 この結果、ホームで3-0の快勝を収めたアーセナルがベスト4進出へ大きなアドバンテージを得た。一方、敵地で惨敗のマドリーは16日にサンティアゴ・ベルナベウで行われる2ndレグで奇跡のレモンターダを目指すことになる。 アーセナル 3-0 レアル・マドリー 【アーセナル】 デクラン・ライス(後13、後25) ミケル・メリーノ(後30) 2025.04.09 06:00 Wed5