J2再試合と鈴鹿の八百長疑惑/六川亨の日本サッカー見聞録

2022.04.07 21:30 Thu
©︎J.LEAGUE
今週の火曜、4月5日のこと。Jリーグは臨時の理事会を開催した。すでにご存じの方も多いと思うが、1件はJ2リーグの山形対岡山戦で審判団によるミスジャッジがあったこと。もう1件は昨年末から八百長疑惑がささやかれていたJFLの鈴鹿ポイントゲッターズの処分についてだった。

ミスジャッジとは、山形の選手がGKにバックパスしたところ、コースがそれてゴールに入りそうになり、GKが手で阻止したプレーである。主審は山形GKにレッドカードを出して退場処分とし、試合は90分にアウェーの岡山が決勝点を奪って1-0の勝利を収めた。
しかしJFA(日本サッカー協会)の審判委員会は「ルール(競技規則)の適用にミスがある」として、「主審の決定を最終であるとはできない」と判断した。ルール上、「味方選手からの意図的なバックパスをGKが手で処理した」場合は「決定機阻止」には該当せず、「間接FKでのプレー再開」で、なおかつGKに「罰則は与えない」のが本来のルールだった。

このため審議の結果、Jリーグ(JSLも含め)史上初の再試合という判断になった。そして最初から試合を始めるのか、GKが退場となった前半11分から再開するのか。スタメンは当時と同じに制限するのか、それとも制限しないのか。得点者や公式記録の扱い、遠征費用などの補填をどうするかは4月26日の理事会で決定することになっている。

この件に関して扇谷審判委員長は「あってはならないことだが、犯罪をおかしたわけではない。4名に研修プログラムを組んで、復帰のためのトレーニングをしないといけない。一ヶ月半か2ヶ月以上かかるかもしれないが、いい形で復帰できるようにサポートしたい」と気遣った。
すでにSNS上では主審に対する誹謗中傷が始まっていると聞いた。これまでも繰り返し言われてきたように、「サッカーはミスのスポーツ」である以上、判定のミスもつきものだ。そのためにVARも導入された。個人的にVARは試合の流れを削ぐし、「ミスジャッジも含めてサッカー」だと思うので反対だが、主審を責めたところで何も変わらないし、批判する人は自己満足に過ぎないだろう。誹謗中傷は慎むべきだし、むしろルールを再確認できて感謝したいくらいだ。

鈴鹿ポイントゲッターズの八百長疑惑の件については、すでに当サイトでも経緯は紹介されているので省略する。疑惑の中心人物である株式会社アンリミテッドの元執行役員はSNSなどで反論を試みていて、どのように収束するのか今後の推移を見守るしかない。

この一件で気がかりなのは、八百長を指示された当時のミラグロス・マルティネス・ドミンゲス監督(スペイン人の女性監督)や選手のメンタルだ。わざと負けるように指示されたのは、サッカー人生で初めてのことだっただろう。巨額の報酬も提示しないで負けるよう指示した人物の精神構造にも問題があるが、選手にとって八百長は道義的にも許されないし、選手生命を奪いかねないルール違反である。

八百長を指示されて、試合には参加せずに三重に戻った選手もいる。ミスジャッジをした審判団同様、鈴鹿の選手にもメンタルケアが必要ならJFAは手を差し伸べて欲しい。

【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた

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