もうちょっと日程を整頓してほしい…/原ゆみこのマドリッド

2022.01.19 20:00 Wed
「何だかややこしいことになってるのね」そんな風に私が眉をしかめていたのは火曜日、今週のミッドウィークはコパ・デル・レイ16強対決の残り試合だけと思いきや、並行してリーガ21節のカードが開催されているのに気がついた時のことでした。いやあ、元々、この節はアスレティクvsレアル・マドリー戦が2021年最後の試合として先行開催。ふと見れば、エルチェvsビジャレアル戦もこっそり、スペイン・スーパーカップ決勝のある日曜のお昼にプレーしていたりしたんですけどね。更に込み入ってしまったのは、スペイン・スーパーカップ参加4チームもコパをこなさないといけないため、この火水木には21節の残り5カードしかできず、あと3試合は後日開催になったという次第ですが、これって、また順位がわかりにくくなるのでは?

それどころか、先週末の土曜のアンダルシア・コパダービーでは、パプのゴールでセビージャに先制されたベティスがフェキルのgol olimpico/ゴール・オリンピコ(CKが直接入るゴールのこと)で追いついた直後、ベニト・ビジャマリンのスタンドから、プラスティック製の旗竿のようなものが飛んできて、ジョルダンの頭を直撃。幸い、大したケガではなかったんですが、プレー続行不可能ということで、前半39分で中断されることに。実はこのカード、2007年にもコパ準々決勝2ndレグでベティスファンの投げたペットボトルがセビージャのファンデ・ラモス監督の頭に当たり、当人は担架で搬送。中断された残りの部分を数日後、無観客のコリセウム・アルフォンソ・ペレスでプレーするのを私も見ることができたため、もしや今回もとちょっと期待したものの、いやいや。
というのも火曜にベティスはアラベス戦、セビージャも水曜にバレンシア戦とリーガ21節がすでに組まれていたためで、もう翌日の夕方にはベニト・ビジャマリンで再開していたんですよ。うーん、いくら最後はカナレスのゴールでベティスが2-1で勝ち上がったとはいえ、コロナ流行下のキャパ制限75%の席がすべて埋まった前夜と打って変わって、その日のスタジアムは無観客。これでは宿命のライバルを破っての準々決勝進出も喜び半減だったんじゃないかと思いますが、まあそれはそれ。同日中に異なる3大会の試合があったため、私も気が散ってしまいましたが、まずは日曜の夜に行われたスペイン・スーパーカップ決勝がどうだったか、お話ししていくことにしましょうか。

先週水曜のスーパーカップ準決勝、延長戦で決着がついたクラシコ(伝統の一戦、バルサ戦のこと)の後、カルバハルがコロナ陽性に、アセンシオも負傷してしまったレアル・マドリーはスタメンをそれぞれ、ルーカス・バスケス、ロドリゴに、ケガから回復したアラバがナチョに代わるという布陣でスタートしたんですが、この日はプレースタイルも変更。引いて自陣で必殺カウンターのチャンスを待つのではなく、ええ、あとでアンチェロッティ監督も「Para mí hoy, demasiada posesión/パラ・ミー・オイ、デマシアドー・ポセシオン(私にしてみれば、ポゼッションが高すぎた)」とジョークを言っていたくらいなんですけどね。

普通にボールを持って、木曜の準決勝アトレティコ戦と同じスタメンを並べたアスレティックにほとんどチャンスを与えなかったんですが、ようやく先制点が入ったのは前半38分になってからのこと。今季、マドリー入団4年目で開花したビニシウスに1年遅れているせいか、まだ右サイドのアタッカーのポジションを完全に自分のものにしたとは言えないロドリゴが、この時はいい判断をしました。ええ、敵エリア内右から折り返したところ、今月9日に21才になったばかりのブラジル人FWのパスを15才年上の大先輩、モドリッチがgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)に変えてしまったから、ビックリしたの何のって。
おかげで0-1とマドリーがリードして、後半に入ることができたんですが、追加点はそう時間がかかりません。今度はベンゼマのシュートがエリア内でジェライの腕に当たり、VAR(ビデオ審判)のモニターを見た主審がPKを宣告、ベンゼマがしっかり決めて、6分にはリードが2点になったため、何せ、マドリーはお隣りさんのようにマヌケな守備ミスはしませんからね。途中出場したラウール・ガルシアの2度のヘッドもGKクルトワを破るには至らず、そのまますんなり勝てるんじゃないかと思いきや、43分に遅ればせながら、見せ場がやって来るとは!

そう、今度はラウール・ガルシアのヘッドにミリトンの手がゴール前で当たったとして、こちらもVARチェックの後、PKが与えられることに。おまけにそのミリトンがレッドカードで退場になってしまったため、ここで1点差に迫られたら、ロスタイムにアスレティックが意地を見せて、2試合連続延長戦もありうるかもと、私も憂鬱になったもんでしたが…大丈夫。「En el penalty dudaba entre la derecha o el medio, deje el pie/エン・エルペナルティ・ドゥダバ・エントレ・ラ・デレッチャ・オ・エル・メディオ、デヘ・エル・ピエ(PKでは右側か、真ん中か迷って、足を残したんだ)」というクルトワが、ラウール・ガルシアの蹴ったボールを左足で弾いて失点を回避してくれるんですから、まったく有難いじゃないですか。

おかげで10人になりながらも、マドリーはそのまま0-2で勝利。ファイナルフォー形式となって初めてだった2020年にPK戦でアトレティコを破って優勝してから、2年ぶりにスペイン・スーパーカップ王者として返り咲くことに。いやあ、アンチェロッティ監督も「No tenemos una sola manera, esa es la fuerza/ノー・テネモス・ウナ・ソラ・マネラ、エサ・エス・ラ・フエルサ(ウチのプレースタイルは1つだけではない。それが強さだ)」と言っていたように、今季の彼らはカウンターサッカーもポゼッションサッカーも自由自在。となれば、リーガで首位を独走しているのも当然ですが、中でも36才になっても衰えないモドリッチにはただただ、感心するばかりかと。

ええ、ペレス会長からも「Modric está en un estado de forma envidiable, digno de volver a ganar el Balón de Oro/モドリッチ・エスサ・エン・ウン・エスアードー・デ・フォルマ・エンビディアブレ、ディグノー・デ・ボルベル・ア・ガナール・エル・バロン・デ・オロ(モドリッチは羨むばかりのいい状態で、再びバロンドールを獲るのにふさわしい)」と称賛されていましたしね。懸念は昨季、1年延長した彼の契約がこの6月で終わってしまうことだけだったんですが、それに関しては、当人が決勝のMVP受賞記者会見でコメント。

ええ、「これまで交渉に2分とかかったことがなかったし、契約延長の合意はできるだろう。Se sabe mi deseo y seguro que el club también quiere esto/セ・サベ・ミ・デセオ・イ・セグロ・ケ・エル・クルブ・タンビエン・キエレ・エスト(皆、ボクの望みは知っているし、クラブもきっとそれを望んでいるはずだから)」というのを聞けば、マドリーファンも安心できたかと。同じく今季で契約が切れ、退団見込みとなっているせいでのアンチェロッティ監督の心遣いか、キャプテンとしてトロフィーを掲げるため、終盤にピッチに入ったマルセロとは違い、コロナ禍が収まれば、来季こそ、サンティアゴ・ベルナベウにモドリッチの勇姿を見に行こうと計画している日本のファンにも、これで希望が出てきましたよね。

そして翌朝にはマドリッドに戻ったチームは火曜から、1日遅れでスペイン・スーパーカップ主催のサッカー協会のコロナ陽性者たちと一緒のチャーター機で着いたカルバハルはまだ自宅隔離ですが、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でコパ16強対決エルチェ戦に向けての準備をスタート。折しもその日の未明、クラブの名誉会長、リーガ12回、CL6回のマドリーで最多優勝記録を持つ、レジェンドでもあるパコ・ヘント氏が88才で亡くなるという訃報があったため、選手たちの情報は少なかったんですが、背筋痛でサウジアラビアに行かずにお留守番をしていたベイルは回復したよう。

欠場確実なのはアスレティックとの決勝前に負傷したアセンシオ、同様にリアドでの練習でケガをしたバジェホ、そしてマリアーノとなりますが、何せ相手のエルチェはビジャレアル戦ではボジェのゴールで勝利したとはいえ、まだまだ15位とリーガでは下の方にいるチームですからね。ここはスペイン・スーパーカップでまったく出番のなかったアザールやヨビッチらを起用しても良さそうですが、この木曜午後7時(日本時間翌午前3時)から、マルティネス・バレロでキックオフするコパの後、週末日曜のリーガでもマドリーはサンティアゴ・ベルナベウで22節のエルチェ戦というのは、何とも奇遇。エスクリバ監督から、フランシスコ監督になって、残留達成への光明が見えてきた相手も週3試合の過密日程は辛いかもしれませんね。

え、その木曜午後7時からは弟分のヘタフェもコリセウムで試合があるんだろうって?いやあ、その通りなんですが、こちらはリーガ21節のグラナダ戦で、何せ、コパ2回戦敗退組の彼らは先週末には試合がなく、もっぱら戦力補強に集中していましたからね。ええ、先週にはボリハ・マジョラルとゴンサロ・ビジャルがローマからレンタル移籍したのに続き、この月曜にもセビージャから、同様にレンタルでオスカル・ロドリゲスを獲得。こちらは2018年から2020年の2シーズン、2部に落ちるまで、お隣さんのレガネスに兄貴分のマドリーから出向していた選手なので、マドリッドのサッカーファンには彼の呆気に取られるような直接FKゴールの数々を覚えている向きも多いかと。

ただ、まだ放出選手がいないため、木曜までにリーガに登録できるかは微妙なんですが、今のヘタフェは17位で、降格圏との差はたった勝ち点1だけ。キケ・サンチェス・フローレス監督にしてもできるだけ早く、新戦力を活用したいところでしょうが、トップチーム所属選手が規定の25人枠一杯いると、その辺の調整が難しいんですよね。

そして逆にトリッピアーのニューキャッスル移籍の後、とうとうトップチーム総勢20人になってしまったアトレティコはというと。いやあ、これがスペイン・スーパーカップ準決勝でアスレティックに逆転負けしてすぐ、金曜にはマドリッドに戻っていたんですが、一向に補強が進まなくてねえ。水曜午後9時(日本時間翌午前5時)にコパ16強対決のレアル・ソシエダ戦があるため、私も前日にはマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に偵察に行ってきたんですが、そのキング・ファハドスタジアムでの試合で揃って左のハムストリングを痛めたマルコス・ジョレテンテとコンドグビアはもちろん、グリーズマンもまだリハビリ中。ようやくチーム練習に復帰してきたサビッチを含めても、フィールドプレーヤーが15人しかいないんですから、何とも淋しいじゃないですか。

アスレティック戦後半ロスタイムに退場したヒメネスも出られないとあって、前日夜にサン・セバスティアン(スペイン北部のビーチリゾートタウン、レアル・ソシエダのホーム)に移動したチームには、カンテラーノ(アトレティコBの選手)のヘルプが5人も入っていたんですが、彼らはRFEF3部(実質5部)所属。平たく言えば、EFEF1部(同3部)でプレーする、シャビ・アロンソ監督率いるレアル・ソシエダBの選手たちより、ランクが劣りますからねえ。頻繁にイマノル監督が徴用しているレアル・ソシエダや、若手満載のバルサ(こちらもBチームはRFEF1部)のように当てにできないのは仕方ないんですが、ここに来て、いよいよリーガ4位のCL出場権死守に専念する腹を決めたシメオネ監督が、コパを捨てるかもしれないという疑惑も聞こえだしたから、さあ大変。

いえ、彼自身は前日記者会見で、「Creo en mi equipo y no tengo dudas de que va a responder bien/コレオ・エン・ミ・エキポ・イ・ノー・テンゴ・ドゥーダス・デ・ケ・バ・ア・レスポンデル・ビエン(私のチームを信じているし、応えてくれることに疑いはない)」と言っていたんですけどね。今季は同じ過ちを繰り返してばかりの選手たちを見ていると、イマノル監督の「偉大なアトレティコにお目にかかるのは間違いないから、tendremos que hacer un partidazo para poder pasar/テンドレモス・ケ・アセール・ウン・パルティダソ・パラ・ポデール・パサール(勝ち抜けるのにウチはビッグな試合をしないといけない)」という言葉も体のいいお世辞に聞こえてしまう?ちなみにその火曜のセッションでは、私が敷地の裏に回って、目隠し越しに様子を伺っていた時間もセットプレー守備の練習はしていませんでしたっけ。

そして最後にこのミッドウィークは21節のバルサ戦が延期となったため、試合のないラージョなんですが、何せ、彼らは先週末の土曜にコパ16強対決でジローナ(2部)にセルジ・グアルディオラの2発で1-2と逆転勝利。マジョルカ、カディス、バレンシア、ベティスと並んで、すでに準々決勝の切符を勝ち取っていますからね。今は金曜の抽選会を待ちつつ、前節はベティスと1-1で分け、ホーム連勝を途切れさせてしまったのを反省。日曜に再び、エスタディオ・バジェカスにアスレティックを迎える試合に備えているところですが、相手がスペイン・スーパーカップ決勝のマドリー戦から、木曜はコパのバルサ戦と息もつく暇もないのは、7位の彼らにとって、EL出場圏に復帰する、いいチャンスになるんじゃないでしょうか。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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